自然

このお嬢様、変人の探偵というより、マッドサイエンティストの系譜かな(櫻子さんの足下には死体が埋まっている/蝶形骨)

 ども、骨折り損のくたびれ儲けな人生を送るおぢさん、たいちろ~です。
 さて問題です。  

誰もがみんな持っていて、食器にもネックレスにも武器にもなるもの、な~んだ? 

 答えは”骨”。いやマジで。”食器”というのは頭蓋骨を加工して盃にする”髑髏杯”というもの。織田信長が使ったのは有名ですが、最近読んだのだと”光圀伝(*1)”にも出てたな~。同じく頭蓋骨を”ネックレス”にしたのは沙悟浄。作品や場面にもよりますが9ケの骸骨をネックレスにしています。”武器”にしたのは”2001年宇宙の旅(*2)”より。人類の祖先のヒトザルが謎の物体”モノリス”に接触することで知恵を得て、動物の骨を武器に敵対する群れを攻撃するってシーン(THE DAWN OF MAN 人類の夜明け)から映画は始まります(シーンを観たい方はこちらから

 ことほど左様にけっこう使い勝手のある”骨”ですが、一般的にはあまり愛される存在ではなさそうです。ここにそんな”骨”を偏愛する美女がいたら?
 ということで、今回ご紹介するのはそんな骨愛ずる姫君を主人公にした本”櫻子さんの足下には死体が埋まっている”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影
小樽の北一ヴェネチア美術館にあった”仮面”です

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【本】櫻子さんの足下には死体が埋まっている(太田紫織、角川文庫)
【本】櫻子さんの足下には死体が埋まっている
   (原作 太田紫織、作画 水口十、角川コミック・エース)
【DVD】櫻子さんの足下には死体が埋まっている
   (原作 太田紫織、CV 伊藤静、監督 加藤誠、KADOKAWA)
 その笑顔は太陽のように、花のように輝くように綺麗で、無邪気で可愛い。眼力のある美人でスタイルもいいお嬢様。そんな彼女が大好きなものは”骨”。あらゆる生き物の”骨に恋焦がれ、耽溺している。彼女の名前は”九条櫻子。そんな彼女の我儘振り回される”僕”は平凡な高校生”館脇正太郎”。二人の訪れるところにはなぜか事件が・・
【動物】蝶形骨
 目から鼻のあたりにある骨。形が蝶の羽を広げている形に似ているのでこの名前がついたそうです。上記の写真のように仮面舞踏会に出てくる蝶の形をした目隠し(マスク)をイメージしてもらえると近いかも。これを美しいと感じるか不気味と感じるかは意見の分かれそうなところです。恐いもの見たさで正確な形を見たければWikipediaでどうぞ。


 さてこのシリーズ、前から気にはなってたんだよな~ 表紙は黒髪ロングのクール&ビューティなお嬢様だし(すいません、ドストライクなんです)。アニメ化もされたみたいだし、でも手を出したらはまっちゃいそうだし。で、たまたま図書館で見つけちゃいまして1冊目を読んだら、ダメでしたね~~ DVD6巻まとめてイッキに見ちゃったし、原作は立て続けに3巻まで読んでるし、コミックも買っちゃったし・・・

 お話はというと裏表紙の”最強キャラ×ライトミステリ!”とあるように推理系ライトノベルかな。事件そのものは”ライト”でもないけど。主人公は優秀だけど残念な性格のお姉さんとそれに振り回される弟キャラってところ。姉萌えですか? 出色なのはやはり主人公の”櫻子さん”。すごい美人で、古いお屋敷に住むお嬢様で、法医学の知識も豊富で、並はずれた推理力を持っていると書くと完璧超人のようですが、性格的にはかなり残念な人。”骨”を愛するあまり、拾った頭蓋骨を持って帰ると言いだすわ、見つけた死体をたまに見にきたいから警察に黙っとこうといってすねだすわ。保護者役の正太郎少年から”それは犯罪です!(*3)”と言われ”いいじゃないか、黙っていればきっとバレやしない”と言いだす始末。まあ、性格もそうですが、櫻子さんの行くところなぜか死体と出会うはめに 

  私の足下には、いつだって死体が転がっているんだよ

と自覚はあるもよう。まるで行く先々で殺人事件が起るどこぞの小学生のような・・・

 櫻子さんが偏愛する”骨”ですが、なぜ一般の人から愛されないかというとやはり”死”を連想させるからでしょうか。普通の人なら本物の骨って”納骨”の時ぐらいしか見ることないし、子供時代にギャートルズを見てた世代だと死神ってホネホネだし(*4)。
 でも、いったん”死”というイメージをはずして”骨”を見ると意外と美しいモノかもしれません。作中で櫻子さんがカレイの骨格標本をして

  どうだ? 非常に美しいだろう?
  平べったくて滑稽な外見からは、想像つかない繊細さだとは思わないかね?

こんな目で見てカレイの煮つけを食べたこたないですが、確かに骨って美しいフォルムをしてますね。”鎖骨美人”って言葉もあるぐらいだし。
 本書には”蝶形骨”をコレクションするために犯罪を教唆するおっさんてのが出てきますが、ここまでくるとかなりビミョ~。確かに蝶の形には似てるんですが実物見せられたらちょっと引きそうだなぁ まあ、他の骨でも引きそうだけどね

 このお嬢様、変人の探偵というより、マッドサイエンティストの系譜かな。私が見ると一般人より膨大な知識はあるけど、死などの感情に対する常識がないとか、自分の”骨”に対する偏愛が全ての価値判断に優先するとか。このあたりって、科学的興味だけで危ない実験とか平気でやっちゃったりする由緒正しき?マッドサイエンティストって感じがすんですけどね~ まあ、面白いシリーズですんで、ぜひ読んでみてください。
 とりあえず3巻目まで読みましたが、9巻目が出たとこなんでもうちっと楽しめそうです。ということで、残り6巻も骨骨(コツコツ)読んでいきます
 つまらん落ちですいません・・・


《脚注》
(*1)光圀伝(冲方丁、角川書店)
 ”光圀伝”ではのっけからこのエピソード。徳川光圀といえば好々爺の”水戸黄門様”であらせられますが、本書ではガチムチの肉体派のイメージ。まあ黄門様って実態と虚像がかなりかけ離れた人ではありますが、ここまで違うとはなぁ
(*2)2001年宇宙の旅(監督 スタンリー・キューブリック、ワーナー・ホーム・ビデオ)
 言わずと知れた不朽の名作SF映画。1968年公開とかれこれ半世紀前の映画ですが、今だに古さをまったく感じさせないのはさすが。ぜひご一見のほどを。
(*3)それは犯罪です!
 調べてみたんですが
 ・遺骨、遺髪、または棺内に蔵置した物を損壊、遺棄または領得した者は、
  三年以下の懲役に処する
(刑法第190条 礼拝所及び墳墓に関する罪)
 ・自己の占有する場所内に死体があることを知りながら公務員(警察官等)に
  速やかに通報せず放置していた場合は、軽犯罪法違反

だそうです(wikipediaより)
(*4)子供時代にギャートルズを見てた世代だと~
 園山俊二原作のアニメ”はじめ人間ギャートルズ”に登場する死神は骨の馬に乗って骨の槍をもってます。調べてみると実は”神様の使い”だそうです。まあ死に”神”ですから

窓際に居場所があったのって、中高年のおぢさんにはまだましな時代だったんかも(窓際のスパイ/遅い馬)

 ども、会社でも窓際のおぢさん、たいちろ~です。
 これでも一応会社では幹部社員(中間管理職)をやっっておりましたが、規定の年齢になりましたんですでに離任をしております。本来でしたら後進に道を譲ってのんびりさせてもらえっかな~と甘いことを考えておりましたが、やることは変わらんわ給料は下がるわとホントに甘かったな~~
 まあ、人生年をとって引退するとかリストラ喰らうとか閑職に追いやられるとかいろいろありますが、その姿って職業や組織によってまあ様々。
 ということで、今回ご紹介するのは閑職に追いやられた”スパイ”のお話”窓際のスパイ”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
北海道、苫小牧市にある”ノーザンホースパーク”の馬車です

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【本】窓際のスパイ(ミック・ヘロン、ハヤカワ文庫NV)
 英国情報部(保安局)の窓際の部署”泥沼の家(Slough House)”に集められた”遅い馬(Slow Horse)”達。訓練中にドジを踏んだ若き諜報部員”リヴァー・カートライト”もその一人。くだらない任務を与えられた彼だが、その任務はやがて保安局を揺るがしかねないミッションに変貌する。一発逆転を狙う”泥沼の家”のメンバーがとった行動とは・・・
 原題は”窓際のスパイ”とはまったく関係のない”Slow Horse(遅い馬)
【動物】遅い馬
 馬というとどうしても”サラブレッド”をイメージしちゃいますが、農耕や重量物の運搬のために改良された”重種”という品種というのもあります。写真の馬車を引いている”クライスディール種”がこれに当たるそうです。昔は重装備の騎士を乗せたり”ばんえい競馬 (*1)”で使われているのがこの種類。ですんで必ずしも”遅い”わけではないんでしょうが、サラブレットよりは遅そうなイメージです。


 話はいきなり飛びますが、冷戦終結以降”スパイ”ってのはなかなか辛い立場に置かれている話ってのが出てきます。最近だと”007 スペクター(*2)”でも時代遅れの00セクションを解体するって話が出てくるぐらいし。
 この手の話で思い出されるのは”フレデリック フォーサイス”の”マクレディ・シリーズ(*3)”。イギリス情報機関で優秀なエージェント”サム・マクレディ”が冷戦終結に伴い閑職に追いやられることになるなり、これに対抗して聴聞会を開き過去を振り返る・・・みたいな話。出版が1991年とソビエト連邦が消滅した年。当時読んだ時にはそれはそれなりに寂寥感のあるリアリティがありましたねぇ・・・

 さて、”窓際のスパイ”ですが、主人公のリヴァー・カートライトは昇級試験として与えられたミッションでキングス・クロス駅(*4)を大混乱に陥れるというドジをふんで泥沼の家送りになった人。言ってみりゃ入社早々、研修完了の試験で会社に大損害を与えて将来を閉ざされた若者って感じでしょうか。
 その他にも、機密扱いの磁気ディスクを置き忘れたミン・ハーバーとか、酒びたりになってリハビリ施設に収容されていたキャサリン・スタンディッシュとか、コンピュータオタクで性格悪しのローデリックミン・ホーとか、まあ、閑職に回されてもしょうがないな~って人や、なんでここに送られたんかわからん人までさまざま。まあ、一様に今の仕事に満足してないのは確かですが。

 ここまで書いてて思ったんですが、”じゃあなぜこの人達はクビにならないんだろう?”ってこと。まあよくよく考えてみりゃ国家機密レベルの汚れ仕事をやってた面々を簡単にクビにしちゃったら今だったらネットに何書き出すかわかんないリスクもあるし、本人だって履歴書に”スパイやってました”とは書けないだろうし(スパイの再就職先ってどんなんあんだろう?) で、妥協の産物ってのが泥沼の家ってことでしょうか?

 本書の中で秀逸なのが泥沼の家のリーダー”ジャクソン・ラム”。この人が泥沼の家に来た経緯は書いてないんですが、なかなかに喰えないおっさん。腹が出てるわよれよれのレインコート(刑事コロンボか?!)、仕事はせんわ口は悪いわと良い上司とは言えんわな~~ でも昔はかなりブイブイ言わしてた人みたいです。物語後半では状況を正確に把握して上司である保安局のナンバー2のダヴァナーを追い詰める手腕なんかはなかなかのモノ。落ちこぼれ集団が意外な実力を発揮してサラブレッド集団のエリート達をやりこめるって、ストーリーはスパイ小説というよりサラリーマン小説として読んだ方が面白いかも(半沢直樹か!)

 本書って”窓際のスパイ”という表題が気になって読んだんですが、邦題としては秀逸でしょうね。原題の”Slow Horse(遅い馬)”だったら読んでないかも。
 ”窓際族”ってのは調べてみると1970年代後半に出てきた言葉のようで、終身雇用制の時代に一見すると管理職席のような窓際に実際は厄介払いされてるということだとか。成果主義だリストラだとせちがない昨今、窓際に居場所があったのって中高年のおぢさんにはまだましな時代だったのかもしれません。
 ”働いたら負け”的発想の今の若者にとって、大した働きもせずに給料の貰える”窓際”が勝ち組に見えるという意見もあるようですが、そんなに甘かね~ぞ~ たぶん遅い馬だって馬車ぐらい引かなきゃメシだって出てこないんだろうしな~~


《脚注》
(*1)ばんえい競馬
 競走馬がそりをひきながら力や速さなどを争う競馬。公営競馬としては北海道帯広市が主催する”ばんえい十勝”が唯一という世界的にみても珍しいものなんだそうです。
 hpはこちらからどうぞ
(*2)007 スペクター
 (主演 ダニエル・クレイグ、監督 サム・メンデス、20世紀フォック)
 ”007シリーズ”第24作目の老舗のスパイ映画
 第一作の”ドクター・ノオ”が1962年とアメリカとソ連が一触即発だった”キューバ危機(1962年)”の時代ソ連のゴルバチョフとアメリカのジョージ(パパ)ブッシュが冷戦の終結を宣言した1989年に公開されたのが16作目の”消されたライセンス”。時代とともに敵の組織も変わっていきますが、スパイ組織そのものが無用の長物扱いされてくってのも時代なんでしょうか
 そういや”007 スカイフォール”では兵器開発担当者で若造の”Q”が、ネットを重視して昔のスパイ道具を”古い”の一言で片づけてるのも時代なんですかねぇ・・・
(*3)マクレディ・シリーズ(フレデリック・フォーサイス、角川文庫)
 ”騙し屋”、”売国奴の持参金”、”戦争の犠牲者”、”カリブの失楽園”の4部作。現在は全て絶版の様子。フォーサイスと言えば”ジャッカルの日”とか”オデッサ・ファイル”とか”戦争の犬たち”とかけっこうブームだったんですがねぇ。ご興味のある方は図書館ででも探してみてください。
(*4)キングス・クロス駅
 読んでないんですが、ハリー・ポッターシリーズではホグワーツ特急の始発駅です。
年間乗降客数約24.6百万人と、JRだけでカウントするとだいたい新橋、大宮、秋葉原と同じぐらいです。このクラスの駅で大混乱を引きおこしゃ、そりゃ閑職にも回されるわなぁ

”位牌なんてただの板きれです。神も仏も、幽霊も祟りも、何もかも嘘っぱち”ですという人向けの推理小説です(陰摩羅鬼の瑕/鶴)

 ども、死体ではないですが、人生死に体(*1)なおぢさん、たいちろ~です。
 まだ20代の頃にネパールのカトマンズに行ったことがあります。パシュパティナートというヒンドゥー教の寺院があるんですが、そこは火葬場になっていて台の上で死体を荼毘に付すんですな。私が見た時には火葬はしてませんでしたが、まだ煙が残ってる状況。残った灰はそのままバグマティ川(聖なるガンジス河の支流)に流します。火葬が外から見えるってのも驚きでしたが、さらに驚いたのはその灰を流してるすぐ横の河ん中で沐浴をしてるんですな。日本人の感覚とはかなりかけ離れてはいるんですが、”死”と”死体”に対する宗教感ってさまざまだな~と思った記憶があります。
 ということで、今回ご紹介するのはある殺人事件に関する”死”と”死体”の大いなる齟齬の話、百鬼夜行シリーズの第8作”陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。日比谷公園雲形池にある”鶴の噴水”
黒い鶴ってこんな感じでしょうかね。

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【本】陰摩羅鬼の瑕(京極夏彦、講談社ノベルズ)
 巨大な屋敷””鳥の館”を受け継ぐ伯爵”由良昂允(ゆらこういん)”は過去に4度、新婚初夜に花嫁を殺されていた。5人目の花嫁との婚姻にあたり、探偵”榎木津礼二郎”に護衛を依頼する。旅先で一時的な失明状態になった彼を補佐するため小説家”関口巽”もまた鳥の館を訪れる。
 はたしてふたりは花嫁を守れるのか? ”京極堂”こと中禅寺秋彦が語る事件の真相とは・・・
【動物】鶴
 ツル目・ツル科の鳥の総称。なんとなく霊鳥とか吉兆瑞祥ってイメージから純白ってイメージがありますが、黒い羽根も混じってます。逆に”黒鶴”というのもありますが、真っ黒じゃなくって灰色みたい。
 小説の題になっている”陰摩羅鬼”は”そのかたち鶴の如くして、色くろく”とありますが、イラストに使われている古今画圖續百鬼之中の図だと鶴には見えんなぁ。色が黒でもあのフォルムは美しいと思うんですが・・・


 本書でポイントになっているのが”死とはどういう状態”のことかってのが意外とはっきりしないってのがあります。動かなくなったら死んでるのかというとそんなに簡単じゃないし、心臓が止まったからといってその時点で細胞がすべて死滅しているわけでもないし。逆に脳が活動をとめても心臓は動いている”脳死状態”ってのもあるし、最近の新聞だと”心肺停止状態(*2)”なんて記事もあるし。物理学の世界では”シュレーディンガーの猫”みたく”生きていながら死んでいる”というわけのわからん話もあるし・・
 理屈をつければつけるほど”死”ってなに、”生命”ってなにってことになりますが、突っ込んでくと意外に説明ができないんですな、これが。京極堂の説明

  僕達は死に就いて何ひとつ確実には語れないのです。知らないのですから。
  精精魂が肉体から抜けることですなどと、子供騙しの方便しを述べるしか出来ない

   (中略)
  曰く心臓が止まる。曰く意識がなくなる。曰く動かなくなる‐--
  それはいずれも、正確には死ではない
  生命活動が停止するとこと説明したなら-‐-
  生命とは何かと問われてしまいます

そうはいっても、殺人事件は成立するんですが・・・

 百鬼夜行シリーズ”の特徴である膨大な蘊蓄は本書でも健在。今回面白かったのは”葬儀”つまり、死体に対する考え方。一つの考え方として肉体と精神とを分離して考えるというもので京極堂曰く”霊魂と云う発明”。肉体から霊魂が抜けると死ぬと考えると話が簡単で、霊魂も死後も不滅であるとすると安心だから。輪廻転生なんてのはこっち。なんで、死体に魂が戻ってこないんなら死体を取っといてもしょがないんで片付ける。上記のカトマンズで見たのはこれでしょうか。

 ところが、日本でややこしいのが仏教的な輪廻転生の文化と、儒教的な魂魄(こんぱく 魂=精神、魄=肉体)の文化がまざっちゃってること。本作中で京極堂が”位牌って何”って話をしてます

  京極堂 :板きれでしょう。字が書いてあるだけだ、それ以外の何でもない
        漆は塗ってあろうと金箔が張ってあろうと板きれは板きれです

        (中略)
  楢木刑事:霊がーー依り付くんじゃないんですか?
  京極堂 :霊なんてないですよ。仏教に於いては死者は六道を輪廻する
        成仏すれば仏になる。何が何処に依り付くんです?

そう言われりゃそうですが、実も蓋もないな~~ だいたい

  神も仏も、幽霊も祟りも、何もかもーーー そんなものは全部嘘です

って、断定してんだものな~~ この人。
まったく、神も仏もないものかってぐらい・・・

 相変わらず分厚い百鬼夜行シリーズですが、本書もノベルズ版で約750ページ。で、実際に事件が起るのは約550ページ目、京極堂が現場に登場するのは660ページ目というスローペース。つまりここまで延々いろんな蘊蓄が繰り返されてるんですな。やっと登場した京極堂がまた事件の解決にかこつけた蘊蓄話。でも、この手の話が好きな人にはとっても面白いシリーズです。敬虔な仏教徒には向かないかもしれませんが・・


《脚注》
(*1)死に体
 英語だと”lame duck(レイムダック)”。足の不自由なアヒルという意味で、こっちも鳥つながりでした
(*2)心肺停止状態
 心臓と肺が両方とも機能を失っているのが”心肺停止”。救命措置などで心肺機能が甦る可能性はまだ残っているので”死”ではないんだとか。法律的に医師が死亡宣告を出すまでは”心肺停止状態”という表現が用いられるそうです。

少子・高齢化への対応は”撤退戦”であり、どこに”防衛線”を設定するかが重要です(地方消滅/七人の侍/ブラックホール)

 ども、毎年本部方針を策定しているおぢさん、たいちろ~です(これは本当)。
 この手のモンはお決まりのフォマーットてものがありまして、だいたいは

   環境分析 ⇒ SWOT分析(*1) ⇒ 基本戦略の決定 ⇒ 具体的な施策

という手順でやります。
 で、この”環境分析”の中に出てくるお約束のワードに”少子・高齢化”ってのがあります。生産年齢人口(*2)が減る、将来の生産年齢人口=子供が減る、非生産的で介護が必要な高齢者が増えることにより社会構造が急速に変化するぞ、だからそんな社会で成長を続けるにはどんな戦略が必要かなんつ~議論をやるわけです。そんなことやってる時に”消滅可能性都市が896自治体”なんていうニュースがでました。で、これは読んでみねばなるまい、ということで、今回ご紹介するのはこのレポートを作成した日本創成会議座長、増田寛也編集による”地方消滅”であります。


写真はブラックホールの概念図。すばる天文台のHPより。

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【本】地方消滅(増田寛也、中公新書)
 このまま推移すると急激な人口減少に遭遇すると”消滅可能性都市”は896自治体、49.8%に及ぶ、といういう日本創成会議のによるレポートをわかりやすくまとめた本。サブタイトルが”東京一極集中が招く人口急減”とあるように、出生率の問題だけでなく都市/地方の格差問題なんかも取り上げています
 発表当時はかなりセンセーショナルに報道されましたが、みんな薄々感じてたことを名指しであからさまにダメ出しくらってちょちょまっているってのが本当のとこじゃないでしょうか?
【DVD】七人の侍(監督 黒澤明、主演 志村喬、三船敏郎、東宝)
 戦国時代、盗賊と化した野武士に襲われた村はある決断をする。”侍を雇って野武士を退治する”と。そして初老の浪人”島田勘兵衛(志村喬)”、山犬のような男”菊千代(三船敏郎)”ら七人の侍が村を守りるために集まった・・・
 今なお絶大な人気を誇る黒澤明監督による日本映画の金字塔。
【自然】ブラックホール
 質量の大きな恒星が進化した最晩年の天体の一種。質量の大きな星はその重力により周りのものをすいよせながら星自体が縮小限界が来て一気にはじけ飛んじゃいます(超新星爆発)。そのあとに残るのが中心核が中性子でできている中性子星。
 これよりさらにでかい恒星だと光さえ脱出できない星”ブラックホール”になります。(wikipediaより要約。合ってるかな、これで)


 ”消滅可能性都市”というのは子供を産む”20~39歳の女性人口”を説明変数にして、この人口が50%以下になる自治体で、急激な人口減少に見舞われることになります。非常に話を単純化すると、将来の人口というのは

  将来の総人口=現在人口 + 人口移動 + 出生者数 - 死亡者数
   人口移動=他の自治体から入ってくる人数 - 他の自治体へ出ていく人数
   出生者数=20~39歳の女性人口 × 出生率
   死亡者数=高齢者を中心に死亡する人数

という計算式になります。で地方と東京圏の人口の推移メカニズムというと

〔地方における若年人口の減少〕
 高度経済成長やバブル経済期に地方の若者は都市圏に移動した
 低成長期には地方で若者の雇用状況が悪化し、地方から都市圏へ若者が移動した

〔極点社会と、都市圏における出生率(新生児数)の低下〕
 人口移動に伴い、東京圏への人口増の一極集中(極点社会)が発生した
 若者が集中した都市圏は、非正規雇用の増大に代表される経済的な不安定、親の子育て支援が期待できない、女性の社会進出などなどによる晩婚化、未婚人口の増加(*3)、出生率の低下(東京の出生率は全国最低の1.06)で少子化が進展

〔高齢化率の上昇〕
 若者の減少と高齢者層の増加により総人口における高齢化率上昇。特に東京圏はかつて流入した若者層が高齢化し2040年には388万人の高齢者(高齢者率 35%)が発生する。

〔若年人口減少+高齢者の死亡による総人口の現象〕
 上記の結果により都市、地方でタイムラグがあるものの総人口そのものが減少

ということになります。
 まあ、若者が超重力の星に吸い込まれるように集中して、その星がボン! あとに残るのはさらに周りの物を限りなく吸い込んでしまうブラックホールだけみたいな・・・
 この本を読んであらためてわかったのは生産年齢人口(労働者)だけでなく総人口も急速に減ってくってこと。仮に出生率を上げる施策が成功して2030年に人口を維持するに必要な2.1を実現しても(現在は1.43)、人口減少が9,900万人で安定するのはさらに60年後の2090年になるんだとか。つまり、当面(てか相当長い間)人口はどうしようもなく減り続けるんですな。

 じゃあどうするかというので、ユニークな論だと思ったのは当面(てか相当長い間)は人口減少を前提に対応を”撤退戦”と位置づけ、”防衛・反転線”をどこに設定するかを考えるという点。ぶっちゃけ生産人口は減少するし、経済のポテンシャルを決める総人口は減るんだから成長戦略なんか言ってないで、出生率を上げるとともに、東京への一極集中を回避するための”ダム機能”を有する中核都市にリソースを集中して適度な分散を図ろうってことです(だいぶ丸めて書いてますが)
 まあ、言うは易し行うは難し、総論賛成各論反対になりそうな話ではありますが。”話はわかったが、で、おらの村はどうなんだっけ?!”ってなことになりそうだなぁ

 この話を読んで思い出したのが不朽の名作”七人の侍”です。”リーダーシップ育成セミナー”なんかだと、勘兵衛のリーダーシップがど~のとか七人の侍のチーム力がこ~のだとか出てくるおぢさん大好きなネタのあれです。
 この映画の中であんまし取り上げられない(てか、私はあんまし聞いたことない)ネタにこんなのがあります。野武士が攻めてくる村を防衛するために勘兵衛は川を防衛線として設定、離れ屋までは守りきれないからという理由で橋向うの離れ屋と長老の住む水車小屋を引き払うよう指示する。当然、橋向うに住む茂助は反対するワケです

  茂助 :へっ、ばかばかしくって話にならねえ
      おう、橋向うの者は ここさ来い! みんな、投げれ
      自分の家捨てて人の家守るためにこんな物かつぐこたあねえ!
      来い! おら達はおら達だけで家守るだ!
      (槍を捨てて、自分の家に走り帰ろうとする百姓)
  勘兵衛:待て! この槍をとれ! 列へ戻れ!
      (刀を抜いて、百姓を追う勘兵衛)
  勘兵衛:離れ屋は三つ、部落の家は二十だ
      三軒のために、二十軒を危うくはできん
      また、この部落を踏みにじられて 離れ屋の生きる道はない
      いいか、戦とはそういうものだ 人を守ってこそ自分も守れる
      己のことばかり考える奴は 己をも滅ぼす奴だ!
      今後 そういう奴は・・・

と村人を前に説得(てか、抜き身の刀もって脅しかけてる?)するんです。まあ、全体最適のために一部の民意に逆らって強硬にでも政策を進めるリーダーシップってのはこれぐらいやらないとうまくいかないんでしょうなぁ。今年(2014年)の年末になんの為かわからん総選挙があるようですが、こんだけ気骨のある政策を掲げて立候補する政治家が(以下自主規制)

 どっちにしても、グーローバル化や新規マーケットの拡大とかはあっても当面(てか相当長い間)は高度な成長を期待するのは難しいわけです。だから、相変わらず右肩上がりのビジネス戦略なんて作っちゃいけないんじゃないかなぁ 偉い人は聞いてくれなさそうだけど・・・

 ”地方消滅”は現代日本の抱える問題をわかりやすく説明した本。孫子の代まで祟られないためにもぜひ読んどいた方がいいです。

《脚注》
(*1)SWOT分析
 戦略策定に考慮すべき要因を内部(自分自身による要因)と外部(環境による要因)に分けて、内部”強み(Strengths)”、”弱み(Weaknesses)”、”機会(Opportunities)”、”脅威(Threats)”の4つのカテゴリーで分析するもの。やってみるとわかりますが、”それって、ホントに強みかよ?”とか、”これ、今や弱みじゃね?!”ってのがけっこうあったりなんかします。
(*2)生産年齢人口
 生産活動に従事する年齢の人口のこと。日本では15歳以上65歳未満の人。おいおい、年金もらえず65歳まで働けって織り込み済みかよ!
(*3)晩婚化、未婚人口の増加
 あまり議論されることないんですが、結婚生活に期待するスタートアップコストがかなりあがってるんじゃないかと。私が子供の頃って、家は六畳四畳半長屋、風呂は銭湯、家具はと言えばタンス一竿に水屋にちゃぶ台、これで一家四人で生活してましたが、今のお嬢様方にこっからスタートするってのは根性がいるでしょうなぁ。だいたい安月給の20代の男にトレンディードラマ(死語)のような新婚生活を期待するのは無茶ぶりってモンじゃないかと・・・


人類滅亡テーマのSFに”少子高齢化系”ってのもありでしょうか?(イン・ザ・ヘブン/黄昏)

 

えっと、あとがきです(*1)
 すいません、間違えました。2人の子持ちのおぢさん、たいちろ~です。
 図書館で新井素子の新作をめっけたんで読みました。けっこうこの人の作品ファンなんでだいたい読んでたんですが、この本出てたの知らなくて。なんでも33年ぶりの短編集だとか。読みだすとかつての新井文体そのままでやっぱしいいな~とか思ってましたが、中身は油断してましたね~ なんたって少女同士の会話だと思ってたらなんと80代と50代の女性同士。で、読み進めるとこれって人類滅亡の物語?!
 ということで今回ご紹介するのは、そんな新井素子のファンタジ~っぽいSF小説”イン・ザ・ヘブン”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。黄昏時の富士山。丹沢山系塔ノ岳山頂付近にて

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【本】イン・ザ・ヘブン(新井素子 新潮社)
 余命少ない今日子さんにこう尋ねられた。
  ”ねえ、史子ちゃん、天国ってあると思う?
 答えにこまった私は、天国では自分の好きな歳になれるとか、小さい時に死んだ子供を育てる”天国互助会”があるとか、物故作家による天国図書館(*2)とか、今日子さんを励ますお話をいっぱい考えた。
 やがて今日子さんの心臓の鼓動が止まる時、若き日の旦那さん”ノリさん”が現れ・・・
(イン・ザ・ヘブン)
【自然】黄昏(たそがれ)
 夕方。wikipediaでは”日没直後の雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯”だそうです。このイメージから”盛りを過ぎて終わりに近づこうとする”の比喩に。”神々の黄昏(*3)”なんかです。


 さて、SFファンにとって、人類滅亡テーマってのはメインストリームのネタです。これを滅亡する原因別に分類すると、

〔宇宙人が攻めてくる系〕
 別名、”侵略モノ”。それこそ”宇宙戦争”から始まって”宇宙戦艦ヤマト”だの”宇宙の戦士”だの”エンダーのゲーム”だの作品てんこもり。このジャンルでの最大の謎は近場の火星人ならいざしらず、なんでわざわざ14万8千光年の遥かかなたから攻めてこにゃならんのだ?

〔訳のわからんモノが攻めてくる系〕
 代表例が”新世紀エヴァンゲリオン”。使徒という訳のわからん生物?が攻めてきて、ジオフロントにいるリリスと接触するとサードインパクトが起きるという設定。まあ起爆装置みたいなもんでしょうか?

〔隕石が落ちてくる系〕
 ”ディープ・インパクト”(馬の名前じゃありません)や”アルマゲドン”など。なぜだかこの2本の映画は同じ1998年に公開されましたが、この年何かあったっけ? まあ、”ノストラダムスの大予言(*4)”の前の年ではありましたが・・・

〔コンピューターの反乱系〕
 コンピューターが自我をもってじゃまな人類を排除するってモノ。”ターミネーター”なんかがこれ。フランケンシュタイン・コンプレックス(*5)の代表例です。

〔パンデミック系〕
 致死率が高い病気が流行して人類が滅亡しかけるというもの。最近だと”天冥の標”とか。咬まれると伝染するという意味では、ゾンビ映画の”ワールド・ウォーZ”も広義ではこのジャンルかな?

〔核兵器系〕
 いわゆる核ミサイルが飛びまわって地球が滅亡するもの。確信的に発射ボタンを押すってより、きっかけは精神に異常をきたした指揮官の命令だった”博士の異常な愛情”とか、コンピューターがかってに戦争始めちゃった”火の鳥 未来編”だったり。
 だいたい戦争なんて相手の国のリソース(地下資源、農工業生産物、人、土地)を利用したいわけであって、人も住めないような土地を占領したってしょうがないワケで・・

 まあ、書き出すときりがないですがここにきてちょっと気になるのが”少子高齢化系”としか言いようのないのがでてきてること。(ここからが本題です。前置き長くてすいません)

 今回ご紹介の”イン・ザ・ヘブン”で描かれているのは超少子化、つまり出生率が急激に下がって=社会全体として子供が生まれなくなって、最後にはきわめて少数のお年寄りしかいなくなった世界。本書に掲載されている”つつがなきよう”も同様で人口が飽和してしまい衰退に至る世界です。
 ”少子高齢化系”の特徴って、明確な敵(宇宙人とか)や脅威(核兵器とか隕石とか)が不在で、長期的かつゆるやかに進行するとこ。少子高齢化の議論って、原因が経済的な理由(給料が安くて家庭が持てない)とか、社会的な風潮とか(結婚するより自由な独身)とか、子育て環境が弱い(待機児童が多い)とかいろいろ複雑に絡み合ってってしかも決定打がないような、連帯責任のノリだとか。それに今日明日ど~のこ~のという話ではなく何十年、百年単位の話なんで、なんとなくなっちゃったな~的なノリもあるし。

 それだけにこの系ってみょ~に達観したような明るさがありそうな気がします(いや、見方によっては悲劇的ではあるんですけど)。上記の”宇宙人が攻めてくる系”だの”隕石が落ちてくる系”ってのはそれを阻止するのに(あるいは滅亡の危機から立ち上がるのに)がんばるぞ!的なドラマがあるわけですが、”少子高齢化系”って”いろいろやってみたけどダメでした”みないにさらっと流れちゃってるような気がします。
 それだけに、責任者出て来い!みたいなノリじゃなくて、”長い間でこ~なっちゃったから、まっ、しょうがないか”みたいな空気かな。最近だと”人類は衰退しました”みたく、新人類”妖精さん”に”あとはよろしくね”って感じでとけっこう仲良く暮らしてく感じ。まあ、今更じたばたしたってしょうがないし、人類より優秀な種があればいいんじゃねってのはあんましなかったノリですね。

 SFってジャンルも社会から独立して存在してる訳ではないので、世相(冷戦、核戦争の脅威、世界的な疫病の流行、テクノロジーへの不信感うんぬん)を繁栄してはやりすたりはありそうです。そういった観点で見ると”少子高齢化系”ってのは今風なのかなぁ
 新井素子がこの系の名作”チグリスとユーフラテス(*6)”を書いたのは1996~98年。書籍になった1999年ってのは”少子化対策推進基本方針”だとか”新エンゼルプラン”なんかが策定された年。つまり、国家レベルでさすがにヤバイからなんかせんといかんと動き出した頃。まあ、十数年以上前の話ですからテーマとしてはなかったわけではないんですが、当時と切迫感が違うというかあんまし効果上がってないんじゃね? ってとこでしょうか・・・

 ”イン・ザ・ヘブン”はSFファンでなくても面白い本ですが、こんなことうだうだ考えちゃうってのは古いSFファンの性なんでしょうかねぇ。 ああ、これって”せい”じゃなくて”さが”ですから。


・宇宙戦争:H・G・ウェルズ 創元SF文庫
・宇宙戦艦ヤマト:西崎義展、松本零士 バンダイビジュアル
・宇宙の戦士:ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫
・エンダーのゲーム:オースン・スコット・カード ハヤカワ文庫
・新世紀エヴァンゲリオン:庵野秀明、GAINAX キングレコード
・ディープ・インパクト:ロバート・デュヴァル、ミミ・レダー パラマウント
・アルマゲドン:ブルース・ウィリス、マイケル・ベイ ブエナ・ビスタ
・ターミネーター:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェームズ・キャメロン
         20世紀フォックス
・天冥の標:小川一水 ハヤカワ文庫
・ワールド・ウォーZ:ブラッド・ピット、マーク・フォースター 角川書店
・博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
     :ピーター・セラーズ、スタンリー・キューブリック ソニー・ピクチャーズ
・火の鳥 未来編:手塚治虫 小学館他
・人類は衰退しました:田中ロミオ ガガガ文庫


《脚注》
(*1)えっと、あとがきです
 初期の新井素子の本にでてくるあとがきの書き出し。現在は”あとがきであります”。往年のSFファンならこれ読んだだけで”新井素子だ!”とわかる有名なフレーズです
けっこう、このあとがき読みたくて新井素子の本読んだんだよな~
(*2)物故作家による天国図書館
 シェイクスピアや紫式部ら物故作家による新刊が納められてる図書館。読んでみて~
そういえば落語のネタに天国の寄席には名人上手が多数出演! ってのがあって、その看板を見た天国の新参者が”○○って、まだ生きてまっせ?”って質問に”横に書いてあるやろ、近日来演予定って”というブラックなのが。けっこう好きな笑いです。
(*3)神々の黄昏
 リヒャルト・ワーグナーの楽劇”ニーベルングの指環”四部作の四作目。ワーグナー好きでレーザーディスク買ったんだけどまだ見てないな~~ プレーヤー、まだ動くかな?
(*4)ノストラダムスの大予言
 ”1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう”で有名な予言書。
五島勉が”ノストラダムスの大予言”(祥伝社)を執筆したのは意外と早く1973年。そのころはまだ先のことと思ってましたが、98~99年頃はマジなネタで盛り上がってましたな~~
(*5)フランケンシュタイン・コンプレックス
 神にかわってロボットや知性を創造するあこがれと、それに反乱を起こされるんじゃないかという不安がまじった感情のこと。命名はロボットSFの大家”アイザック・アシモフ”で、これへのアンチテーゼが有名な”ロボット工学三原則”だそうです。
(*6)チグリスとユーフラテス
 惑星ナインに移住した人類は原因不明の人口減少をたどる。最後に生き残った子供”ルナ”は話相手を求めてコールドスリープ装置で眠る人を次々に起こしていく・・
 1999年日本SF大賞受賞の名作

カエル男、こんなゆるキャラは嫌だ!(連続殺人鬼 カエル男/蛙)

 ども、カエルのゆるキャラと聞かれたら”ケロヨン”(*1)と答えちゃうおぢさん、たいちろ~です。
 世の中、ゆるキャラブームです。まあ、動物系の”くまモン”や”ぐんまちゃん”、鳥系の”バリィさん”、植物系の”ふなっしー”、人間系の”ちっちゃいおっさん”となんでもあり~の状態ですが、立場がビミョ~なのが両生類系。カエルなんて”けろけろけろっぴ(サンリオ)”やコルゲンコーワの”ケロちゃん”や”ケロロ軍曹”なんてメジャー所がそろっているのに意外といないんですな(*2) 。
 だからってこんなゆるキャラはできればご勘弁を、ということで今回ご紹介するのは、”きょう、かえるをつかまえたよ”という犯行声明を残す連続殺人事件の本”連続殺人鬼 カエル男”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。水戸にある別雷皇太神の”六福六蛙”です。

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【本】連続殺人鬼 カエル男(中山七里、宝島社文庫)
 口にフックをかけられ全裸で吊るされた死体。これが飯能市連続殺人事件の始まりだった。”きょう、かえるをつかまえたよ”という幼児性を持った犯人はマスコミから”カエル男”と名付けられた。埼玉県警捜査一課の渡瀬警部と若手刑事の古手川は捜査に従事するが犯人の手掛かりは杳として知れず、警察への不信はつのる一方だった・・・
【動物】蛙(カエル)
 三角形の頭に上に飛び出た目、丸っこい胴体に、分類だと無尾目とあるようにシッポがない生き物。デフォルメされたキャラはかわいいですが、リアルでかわいいかはちょっと微妙
 名前の連想からか縁起物になっていて、上記の六福は交通安全(無事かえる)、金運上昇(金かえる)、不老長寿(若がえる)、学業成就(良く考える、無病息災(体がもとにかえる)、出世開運(卵→オタマジャクシ→蛙)だそうです。


 最近は知りませんが、おぢさん世代では学校の授業で”カエルの解剖”ってのがありました。まあ、大き目のカエルに麻酔をかけてメスでお腹を開くだとか、脚に電気を流すとピッっと伸びるだとか、今考えるとけっこうグロいことやってたんですな。どうもカエルって昔はありふれた生き物だったんで、男の子にとっては被虐の対象だったようで。やれ、お尻の穴からストローつっこんでふくらますだとか、爆竹突っ込んで爆死させる(*3)だとか、板に挟んで潰しちゃうだとか、紐で吊るしてザリガニ釣りのエサにするだとか、こ手のネタには事欠きませんでしたね。決して褒められた行為ではないですが・・・

 で、これを人間相手にやりゃ立派な犯罪ですが(カエルだって動物虐待です)、これが本書に出てくる”連続殺人鬼 カエル男”。ネタバレになりますがフックで吊るす、プレス機で自動車ごと潰す、解剖して臓器を並べる、火で焼くとまあ、やりたい放題。しかも子供の日記のような犯行声明が残されてるんだから、ほとんどサイコな世界です。

 ここでサイコホラーに行くのかなと思っていると、これがパニック映画のノリに。
渡瀬警部と若手刑事の古手川刑事の会話

 渡瀬 :人が人を殺める理由は数々あるが煎じ詰めれば三つしかない
     愛憎、カネ、そして狂気だ
     このうち愛憎とかねは絞り込みが楽だ。そいつが死んで笑う奴を探せば良い
     だが狂気の場合、こいつは厄介だ。容疑者の絞り込みができん

      (中略)
     異常者全てに動機があるようなものだからな
 古手川:でも、そうやって苦労して犯人捕まえたって
     相手が狂ってたら三十九条(*4)で結局無罪になっちまうんでしょ?

 まあ、愛憎やカネによる犯罪ってのはある意味合理的というか”なんでやねん?”というのが一般人にも理解できんことはないわけですが、”狂気”っていうのは理解できないノリなわけで、”ワケのわからんものには恐怖を感じる”って心理はあるわけです。そのくせ、目撃者もいないような周到さがあったり、ミョ~な規則性があったりなんかすると被害者予備軍はもうパニック状態。で、”ヤラレル前にヤレ! 犯人予備軍は誰だ?”ってことになって普段は善良な(はずの)一般市民がリスト持ってそうなトコに押し掛け狼藉の限るなんて言う狂気の再生産ループに入っちゃうわけです。
 確かに最近は”人を殺して、自分も死刑になりたかった”だの”誰でもよかった”など訳のわからん供述をする犯人がいるからな~ しかも、この手の犯罪はおおむねヤラレ損になる可能性が高いわけで(まあ、どの犯罪もヤラレ損ではありますが)、犯人の罪にすら問えないってのは被害者感情としてはわからんでもないですが・・・

 この予備軍ってのがまた曲者で、正気と狂気の間に明確な区別があるのかとか、狂気は完治できるのかだとか、京極堂なら延々と能書き喋りそうな内容(*5)。話がそっちに行くのかな~と思ってたら、落ちはマジな推理小説に。へぇ~~

 中山七里という作家は2009年に”さよならドビュッシー(宝島社文庫)”で”このミステリーがすごい!大賞”を受賞した人ですが、この時に最終ノミネートに残ったのが”連続殺人鬼カエル男(原題は”災厄の季節”)”。最終選考で同じ作者の作品がダブルノミネートされたのは初めてだそうですが、甲乙つけがたいとの評価だったとか。結局、商業的により広い読者が見込まれると理由で”さよならドビュッシー”の受賞が決まったそうですが、両方読みましたが確かに両方とも面白い。この2作がほとんどデビューしたての新人の作品だっていうんだから、確かに才能のある人なんでしょうね。私なんかきっちりハマってるし!

 あらすじだけ読むとホラー系苦手な人に向かなさそうですが、中身はけっこう本格推理系です。ぜひご一読のほどを


《脚注》
(*1)ケロヨン
 1966年から70年に放映された”木馬座アワー”の中の”カエルのぼうけん”に登場するカエルのキャラクター。ご年配の方には懐かしい名前かと(こんなキャラです)。
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 影絵作家”藤城清治”のプロデュースという由緒あるキャラですが、今回調べて原作(ケネス・グレアム ”たのしい川べ”)があるって初めて知りました。
(*2)意外といないんですな
 ネットで見ると愛媛県の”一平くん”なんてのがいましたが、正直ちょっと不気味。
 ”ぴょこたん”なんつ~カエルになる事を夢見るヒヨコという”お前はいったいどっちなんや!”とツッコミ入れたくなるようなキャラのいましたし・・・
(*3)爆竹突っ込んで爆死させる
 5センチぐらいの長さの紙の細い円筒の中に火薬を詰めて導火線のついたモノ。昔は駄菓子屋なんかで売ってましたが今はどうなんだろう? ネットでは買えるようですが。
 大きな音で驚かすとか、そこそこ破壊力があっていろんなものを壊したりとか、鉄管の中に入れて弾を飛ばすとか使いでのあるアイテムだったんですがねぇ・・
(*4)三十九条
 刑法第39条:1.心神喪失者の行為は、罰しない。
          2.心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
(*5)京極堂なら延々と能書き喋りそうな内容
 京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”の探偵役にして憑物落としの”京極堂”こと中禅寺秋彦のこと。この人にこの手の能書きを語らせると、延々何十ページ続きます。
 そういや、本書の市民の暴動も憑物みたいなモンだったな~~

”エースをねらえ!”ってより”ブラックジャック”でしょうか? でもすんごい面白いんだ、これが(さよならドビュッシー/ブラックジャック/月)

 ども、一時はクラシックにはまってた(*1)おぢさん、たいちろ~です。
 会社の人と読書好きな人の呑み会ってのをやってます。まあ、今何を読んでるだの、最近読んだのではこの本が面白かっただのを話題にぐだぐだ酒を呑むという、まあ言ってしまえば”堕落した文芸部”みたいなモンです。
 で、前回に行った時に参加した女性の人から”今、中山七里読んでる”って話がでました。そういや”さよならドビュッシー”とかクラシックがらみで読みたいな~~と思ってたんですがまだ手が出てなかったんで、これを機に読んで見たんですが、面白かったんですな~これが。
 ということで、今回ご紹介するのは”さよならドビュッシー”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。サラリーマンの聖地、新橋から見上げた満月です。
まあ、しがないサラリーマンのおぢさんだって、たまには空を見上げてお月見ぐらいはするもんです、はい。

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【本】さよならドビュッシー(中山七里、宝島社文庫)
 ピアニスト志望の”香月遥”は不慮の火事のため従姉妹の”片桐ルシア”と祖父の”香月玄太郎”を喪い、自身も全身大火傷の大怪我を負う。生き残った彼女はピアノコンクールの優勝にめざし不自由な体ながら師匠であるピアニストの岬洋介とレッスンに励む。しかし周囲では彼女を傷つけようとする細工や、母が殺される事件が発生し・・・
 第8回”このミス大賞(*2)”を受賞した岬洋介シリーズの第一作。
【本】ブラック・ジャック(手塚治虫 秋田書店)
 天才的な技術を持ちながら無免許、高額な手術料を要求する孤高の医師”ブラック・ジャック”を主人公とする手塚治虫の代表作の一つ。この人も少年時代に不発弾の事故で母親は死亡、自身も瀕死の重傷を負いで大手術の末奇跡的に助かったという過去の持ち主です。
【自然】
 香月遥がコンクールで演奏するのがドビュッシーの”月の光”ですが、月をモチーフにした曲って結構あります。そういや、30年前に初めてCDを買ったのがベートーヴェンのピアノソナタ”月光”だったっけ(ピアノ演奏はホロヴィッツ)
 ”Blow Up!”(細野不二彦、ビッグコミックス)に出てきたリー・モーガンの”Desert Moonlight(”月の砂漠”のジャズ版)”なんかも聞いてみたいんですが見つかんなくってねぇ。


 大森望による解説では

  ハンディキャップを背負いながらピアノ・コンクール優勝を目指す少女の音楽青春小説
  (中略)
  物語のパターンとしてはいわゆる”スポ根もの”に属する。
  少女漫画で言えば、山本鈴美香『エースをねらえ!(*3)』~(中略)の系列ですね

ってあります。まあ、香月遥が岡ひろみで、岬洋介が宗方コーチだとするとそんな感じかな。お蝶夫人や藤堂さんはいないけど音羽さんはいるし(*4)。
 でも、これ読んだ時に最初に思い出したのはブラックジャックかな~~ けっこう香月遥のリハビリの話が書いてあるんですが、ブラックジャックの子供のころってこんな感じかな。”アリの足(*5)”で、かなりむちゃをやったリハビリのエピソードが出てきますがそれ思い出しちゃいました

 それに香月遥の指がPTSD(心的外傷後ストレス障害 Posttraumatic stress disorder)で動かなくってのが出てきますが、ブラックジャックでも精神的な理由で指が動かなくなるエピソードがあります(*6)。 まあ、香月遥もブラックジャックも、そして魔法使い(*7)こと岬洋介もこういったいろいろな十字架を背負いながら神技のようなテクニックを身につけるっていいな~と思います。


  闇をふりはらえ 立ち上がって戦え

 香月遥が岬洋介の演奏を聴いての言葉。そう、ブラックジャックも香月遥も岬洋介も戦ってるんですね。でもそれってコンサートで勝ち抜くってより、異質なる人に対する悪意に。

  君の言う通り、世界は悪意に満ちている
  現代は不寛容の時代だ。誰もが自分意外の人間を許そうとしない
  咎人には極刑を、穢れた者、五体満足でないものは陰に隠れよ
  周囲に染まらぬ異分子は抹殺せよ。今の日本はきっとそういう国なんだろう

   (中略)
  ただ、神様は一部の人間に粋な計らいをしてくれた。
  怒りを吐露する文章の代わりに音譜を、非情を嘆く声の代わりにメロディーを与えてくれた。

   (中略)
  音楽という素晴らしい武器を与えてくれた。
  そして今、君もその武器を手にしている

 引用がちょっと長くなりましたが、これは理不尽な悪意にさらされる香月遥に岬洋介が諭した言葉。こういうのが出てくるってとこが単なるスポ根じゃなくってブラックジャクウかなぁ。

 とにかく、すんごく面白い小説です。もっと早く読んどきゃよかった。
 でも、最後のどんでん返しでブラックジャックの第1話もってくるか!!(*8)


《脚注》
(*1)一時はクラシックにはまってた
 本を読みながらかけっぱにするというふざけた聴き方です。クラシックファンの方、すいません。
(*2)このミス大賞
 ”このミステリーがすごい! 大賞”の略。創設メンバーが宝島社ってのはわかるんですが、電機メーカーのNECと光ディスクを受託製造会社のメモリーテックが入ってる自体がミステリー。浅倉卓弥の”四日間の奇蹟”や海堂尊の”チーム・バチスタの栄光”、乾緑郎の”完全なる首長竜の日”(映画版は”リアル?完全なる首長竜の日?”)なんて話題作を出してるんですが、読んでないな~。読んでるのは岡崎琢磨の”珈琲店タレーランの事件簿”ぐらい。昨日3巻買ってきたので次に読みましょう!(いずれも宝島社より発刊)
(*3)エースをねらえ!(山本鈴美香、集英社他)
 テニスの強豪校、県立西高テニス部に入部した岡ひろみが、宗方コーチの指導の元いじめや苦難にめげずに一流テニスプレーヤーに成長するという女性版スポ根漫画。連載は1973~75年ですが、このころの少年少女はこの漫画の影響でテニスを始めたモンです(どうもうちの奥様もそうらしい?!)
(*4)お蝶夫人や藤堂さんはいないけど音羽さんはいるし
 ”お蝶夫人”はひろみの先輩でテニスの実力と美貌を誇る正真正銘のお嬢様。そんな高校生はおらんぞ! と突っ込んじゃいそうなスーパーレディ。藤堂さんは生徒会長にしてテニス部副キャプテンというひろみの憧れの人。私も高校時代は生徒会長をやってましたが、月とスッポンぐらい差がありましたね~~
 ひろみにいろいろいじわるする敵役が音羽さん。ある年代のお嬢様方には”音羽さん”というだけでわかるというメジャーな存在です。ちなみに”音羽”というのはエースをねらえ!が連載されていた”週刊マーガレット”の出版社”集英社”のライバルだった”講談社”の所在地です。
(*5)アリの足
 第54話。小児麻痺(ポリオ)に苦しむ少年が、自分と同じように手足の不自由な子供が歩いて旅をしたというブラックジャックを手術した本間丈太郎医師の本に感動を受けて自分も同じコースをたどる旅をするというお話。(秋田文庫版 第1巻に収録)
(*6)精神的な理由で指が動かなくなるエピソードがあります
 治療中の医師の不用意な発言から指が動かなくなるとか(第201話 ”20年目の暗示”秋田文庫版 第15巻に収録)、子供の頃のトラウマから気胸の手術中に痙攣を起こすとか(第71話”けいれん” 秋田文庫版 第11巻に収録)
(*7)魔法使い
 なんで、香月遥は”魔法使いの弟子”ですが、これってデュカスの”魔法使いの弟子”思い出しますね。ディズニーのアニメ”ファンタジア”でミッキーマウスがほうきに水汲みさせて大騒ぎになるので有名な曲です。こういったクラシック好き向けの小ネタがちりばめられてるのもお気に入りです。
(*8)ブラックジャックの第1話もってくるか!!
 ”医者はどこだ!”より。内容なネタバレになるので、ぜひオリジナルを読んでください(秋田文庫版 第1巻に収録)

潜水艦モノの魅力って、制約の多い中で頭脳戦を孤高に戦う艦長の魅力でしょうか(ファントム 開戦前夜/カナリア)

 ども、潜水艦というと金沢明子の”イエロー・サブマリン音頭(*1)”を思い出しちゃうおぢさん、たいちろ~です。
 閉所恐怖症(*2)ぎみでありますのであまり乗ろうとは思いませんが、けっこう潜水艦モノが好きです。小説だとジュール・ヴェルヌの”海底二万里”から始まって”終戦のローレライ”や”レッド・オクトーバーを追え”、”海の底”、コミックだと”沈黙の艦隊”、”潜水艦スーパー99”、”ブルーシティー”、DVDだと上記の映画版や渋いところでは”眼下の敵”なんかも見ましたな~~(*3)
 そういや最近潜水艦の出てくるDVD見てなかったんですが新作がありましたね。ということで、今回ご紹介するのは名優エド・ハリス主演の”ファントム 開戦前夜”であります。


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写真は”ファントム”の1シーン。潜水艦に積み込まれるカナリアです。


【DVD】ファントム 開戦前夜(主演 エド・ハリス、 監督 トッド・ロビンソン、角川書店)
 冷戦時代、核ミサイルを搭載したソビエトの潜水艦が消息を絶った。この潜水艦をめぐりアメリカとソ連は情報戦を展開した。果たして消えた核ミサイル搭載艦は南太平洋で何をしていたのか? そしてデミトリ艦長(エド・ハリス)のとった行動とは?
【動物】カナリア
 アトリ科に分類される小鳥。昔は”炭鉱のカナリア”といって炭鉱でメタンや一酸化炭素といった窒息ガスや毒ガス早期発見のための警報として使われていました。ご年配の方だとオウム真理教事件で上九一色村の第7サティアン強制捜査の時に警察がカナリアを持ってたのを覚えているかと思いますが、これは毒ガス検知のためのものでまさにこれです。


 なんで、潜水艦モノが好きかというと非常に制約の多い中で、頭脳戦を孤高に行うってとこでしょうか。

〔制約の多い戦い〕
 潜水艦の最大の強みってのは発見されにくい(ステルス性)です。まあ、見つかっちまうと魚雷一発でおしまいみたいなとこがあるんで、火力の強弱よりもいかに相手に見つからないか、あるいは索敵能力の向上をさせるかに重点が置かれます。前者の例が”ファントム”に出てくる敵をごまかす秘密兵器だったり、レッド・オクトーバーみたく音がほとんどしない推進装置だったり、潜水艦スーパー99の撃沈されたふりをする機能だったりします。後者の例は”ローレライ”に登場する超能力による索敵能力なんかが代表。
 まあ、このあたりのテクノロジーの持って行き方が面白いところです。

〔頭脳戦が重点〕
 上記のように”見つかったら終わり”だもんですから、いかに相手を出し抜くかがポイント。”眼下の敵”なんかが代表例でしょうか。見えない敵がどう行動するかの読み、アクティブソナー(*4)一発打つにも細心の注意を払い、補給のままならない魚雷をいかに有効に使うかってのはチェスでもやっているような緊迫感があります。
 また、原子力潜水艦以前のディーゼルタイプだと酸素補強のために浮上せねばならず、それをどこに設定するかも知恵の見せ所。”ファントム”でもどこで浮上するだ、あと何分動かせるだの会話をやってす。

〔孤高の戦い〕
 潜水艦の戦いってのはだいたいが1対1か1対n。もちろん潜水艦側が”1”です。潜水艦同士の艦隊決戦ってのはまずないですね。中には”沈黙の艦隊”に出てくるニューヨーク沖海戦みたくアメリカ米大西洋艦隊40艦対”やまと”1艦”みたいなのもあります。もっとも”ファントム”みたいに索敵メインでドンパチほとんどなしってのも珍しいですが。
 まあ、外部からの指示もなく単騎で戦うとなるとその優劣は艦長の能力というかキャラクターに依存するのも当たり前。”ファントム”の見どころもそんな感じです。

 ところで、このDVDを見た理由が実は艦長役が”エド・ハリス”だったから。この人が演じた”ザ・ロック(*5)”のハメル准将や”アポロ13(*6)”のジーン・クランツ主席飛行管制官がまたカッコイイんだ! 沈着冷静にして明晰な頭脳、目的を達成する鉄の意志の持ち主なんて役をやらせるとこの人に匹敵する人はなかなかいません。”ザ・ロック”ではショーン・コネリーの風格にタメはるにはエド・ハリスぐらいの威厳のある人じゃないとダメだし、”アポロ13”では現場でがんばるトム・ハンクスより管制センターで指揮をとるエド・ハリスのほうが”すんごいですね~”とか思っちゃいました。
 洋画版”理想の上司”みたいなのがあったら絶対投票するんですがねぇ。

 ところで”ファントム”って、ソ連の潜水艦が行方不明ってことで”レッド・オクトーバーを追え”みたいな話かと思ってましたが(*7)、ずいぶんテイストが違いますね。前半のシーンで潜水艦にカナリアが積み込まれるシーンがありますが、これ見た瞬間に”ひょっとしてこの潜水艦、窒息するような事故が起こるんじゃね?”とか考えましたがそのとうりになっちゃいました。

 まあ、”ファントム”って潜水艦同士の戦いってよりソ連内部の内輪もめのとばっちりをデミトリ艦長がまきこまれたってとこでしょうか。 潜水艦モノってより人生に後悔を抱えた老艦長を演じたエド・ハリスをお楽しみいただくDVDかと。


《脚注》
(*1)イエロー・サブマリン音頭
 ビートルズの”イエロー・サブマリン”を音頭にアレンジした金沢明子の曲。
 当然ながら作詞・作曲はジョン・レノン&ポール・マッカートニーですがプロデュースが大滝詠一、日本語訳詞が松本隆というビックネームが手掛けた曲でもあります。
 お聴きになりたい方はこちらからどうぞ。
(*2)閉所恐怖症
 暗いよ~ 狭いよ~ 怖いよ~(面堂終太郎)
(*3)小説だとジュール・ヴェルヌの”海底二万里”から始まって
・海底二万里:小説、ジュール・ヴェルヌ、福音館古典童話シリーズ他
・終戦のローレライ:小説、福井晴敏、講談社文庫
          映画(題名”ローレライ)、監督 樋口真嗣、ポニーキャニオン
・レッド・オクトーバーを追え
      :小説、トム・クランシー、文春文庫
      :映画、主演 ショーン・コネリー、CICビクター
・海の底  :小説、有川浩、角川文庫
・沈黙の艦隊:漫画、かわぐちかいじ、講談社
・潜水艦スーパー99:漫画、松本零士、秋田文庫
・ブルーシティー:漫画、星野之宣、光文社コミック叢書
・眼下の敵 :映画、主演 ロバート・ミッチャム、20世紀フォックス
 あれを潜水艦と呼ぶか?ってのも入れると、”海底軍艦(監督 円谷英二、東宝)、”マイティジャック (円谷プロ、ビクター)”なんかもありましたね
(*4)アクティブソナー
 自ら音波を出し、反射してくる音波を調べて敵の位置を知るモノ。当然ながら自分で音を出すんで、敵に発見される危険性が高くなります
(*5)ザ・ロック(主演 ショーン・コネリー、ニコラス・ケイジ、ブエナ・ビスタ)
  脱獄不可能の元刑務所のアルカトラズ島”ザ・ロック”に、毒ガスを奪ったハメル准将(エド・ハリス)らがテロリストが人質にしてたてこもった。その解決のためにFBIBIは化学兵器のスペシャリスト(ニコラス・ケイジ)と、アルカトラズ島を唯一脱獄したメイソン(ショーン・コネリー)を送り込む。
(*6)アポロ13(主演 トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン、ジェネオン)
 月へ打ち上げられたアポロ13号で爆発事故が発生。酸素や電気などが不足する中”、乗組員を生きて地球に返す”ミッションのためにジム・ラヴェル船長(トム・ハンクス)らと地球の管制センターの主席飛行管制官ジーン・クランツ(エド・ハリス)のとぎりぎりの戦いが始まる。
(*7)”レッド・オクトーバーを追え”みたいな話かと思ってましたが
 冷戦時代に最新鋭潜水艦”レッド・オクトーバー”をマルコ・ラミウス艦長(ショーン・コネリー)が奪取、亡命を企てるというお話。もうすぐ公開になる”エージェント:ライアン”の主人公ジャック・ライアンによるシリーズの第一作。

最近、殺人事件の話を読んでないなぁと思ったので”だ~れが殺したクックロビン♪”を読んでみました(僧正殺人事件/マザー・グース/コマドリ)

 ども、抑圧された人生を送るおじさん、たいちろ~です。
 けっこうミステリーも読むんですが、ふと気が付くと最近ってあんまし”殺人事件”の起こるミステリーって読んでないな~~ 今の流行って ”ビブリア古書堂の事件手帖(*1)”とか”古典部シリーズ(*2)”とか、今読んでる”珈琲店タレーランの事件簿(*3)”とか、日常系のミステリーが多い気がします。人が死ぬのって”謎解きはディナーのあとで(*4)”とか”探偵はバーにいる(*5)”もあるけど、江戸川乱歩や横溝正史みたいな欲にからんだどろどろの人間模様って、むしろ”名探偵コナン(*6)”が引きうけてる感じだし。ということで、やっぱり正統派連続殺人事件を読んでみたいな~~ということで”僧正殺人事件”のご紹介であります。


Photo

 写真は”GATAG”のホームページより。コマドリ(ヨーロッパコマドリ・ロビン)です。


【本】僧正殺人事件(ヴァン・ダイン、訳 日暮雅通、創元推理文庫)
 だあれが殺したコック・ロビン?
 「それは私」とすずめが言った。
 「私の弓と矢でもって、コック・ロビンを殺したの」
 ディラード教授の家でロビンが矢で殺された。スパーリング=スズメが容疑者として逮捕されたが、その後も”マザーグース”をモチーフとした連続殺人事件が発生する。
 アマチュア探偵”ファイロ・ヴァンス”の推理した事件の真相とは・・・
【本】マザー・グース
 英米を中心に親しまれている英語の伝承童謡の総称。
 北原白秋をはじめ、いくつかの訳がでてますが、私の読んだのは翻訳 谷川 俊太郎、イラスト 和田 誠版(講談社文庫)。ハンプティ・ダンプティのイラストだとルイス・キャロルの”鏡の国のアリス”に書かれたテニエル版が有名ですが、和田誠版もずんぐりむっくりで意外といけます。
【鳥】コマドリ(駒鳥、コック・ロビン)
 スズメ目ヒタキ科の鳥。
 発音ではコック・ロビンのが正解ですが、”ポーの一族”&”パタリロ!”の影響で(*7)今では”クック・ロビン”のほうが一般的なか?


 ”僧正殺人事件”はずいぶん昔に読んだんですが、内容をまった~~く覚えていなくて(年はとりたくないもんです・・・)、再読はけっこう新鮮。いわゆる見立て殺人モノ(*8)の代表作ですが、ベースになっているのが”マザー・グース”。本書では”駒鳥(コック・ロビン)の死と埋葬を悼む挽歌”、”小さな男が昔いた”、”ハンプティ・ダンプティ”、”ジャックの建てた家”、”かわいいマフェットちゃん”(歌の題名は本書のものより)。日本でいうなら、”かごめかごめ”や”とおりゃんせ”にあわせて殺人事件が起こるようなもんでしょうか。
 なんでも、欧米では聖書やシェイクスピアに並んで基礎的な教養らしいんですがほとんど聴いたことなかったですねぇ。谷川 俊太郎訳版が出た時に”マザーグースのうた(*9)”というカセットテープ(時代です)が出たんで、和田慎二の”左の眼の悪霊(*10)”に出てくる”六ペンスのうたをうたおう ” を聴きたくて買いましたが、正直初めてでしたねぇ、マザーグースを音楽で聴いたのって。

 さて、”僧正殺人事件”ですがトリックや動機を推理するってよりも、その舞台設定の雰囲気とか探偵”ファイロ・ヴァンス”の語る犯罪哲学を楽しむって感じでしょうか(実際、謎解きや動機の解明ってとってもあっさりしてるし)。

 ファイロ・ヴァンスが犯人が数学者であるとの推理する言葉

  多くの現代の数学者が、いっさいの因習、義務、倫理性、善、
  その他それに類するものは
  自由意思の虚構以外には存在しえないとまで主張している。
  彼らにとって、倫理学は概念の幽霊が跳梁する世界なんだ。

   (中略)
  こういうものの考えたに加えて、俗世界のひねくれた根性があると、
  より高度の数学的仮説からは人間の命への軽視が生まれてきやすい。
  これで、今取り組んでいる犯罪のタイプに、
  完全に当てはまる条件がそろったじゃないか

数学を学ぶ人を犯罪者予備軍扱いしてるような文章ですが、さまざまなガジェットとともにヴァンス語るとみょ~にリアリティがあるんですな、これが。
 逆に皮肉屋の容疑者を擁護する発言では

  平常の、口先に表れる嗜虐的な皮肉な態度と、急激な殺人衝動とは、
  冷笑癖を思うぞんぶん発揮していれば、抑圧された感情の不断のはけ口となって、
  情緒のバランスを維持できる。
  皮肉で嘲弄癖のある人間はつねに安全なんだ。

 こういう理屈っぽさって、押井守(*11)あたりなんががやると似合いそうだな~~
 もしこの作品をアニメ化するなら、ぜひ押井監督でやって欲しい物です。

 科学捜査の発達や、そこここにある監視カメラ網の普及で論理的な推理に依存する探偵小説ってだんだん成立しにくくなってるのかもしれませんが、本書のような古典もたまにはいいものです。

 ところで皮肉の多い私のブログ、抑圧された感情の不断のはけ口となって情緒のバランスを維持しているということで、ご容赦のほどを・・・


《脚注》
(*1)ビブリア古書堂の事件手帖(三上延 メディアワークス文庫)
 北鎌倉にあるビブリア古書堂の女性店主にして古書に対する博学な知識を持つ篠川栞子を探偵役にしたミステリー。賛否両論を巻き起こしつつ剛力彩芽の主演でテレビドラマ化。
(*2)古典部シリーズ(米澤穂信 角川書店)
 「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする省エネ高校生”折木奉太郎”を探偵役とした青春ミステリー。京都アニメーションにてアニメ化。最近のアニメでは一押しです。
(*3)珈琲店タレーランの事件簿(岡崎琢磨
 京都にある珈琲店”タレーラン”の女性バリスタ”切間美星”を探偵役としたミステリー。美星の大叔父、タレーランのマスターにしてすちゃらかぢぢぃの藻川又次(もかわ またじ≒モカ・マタリ)がいい味だしています。
(*4)謎解きはディナーのあとで(東川篤哉  小学館)
 セレブにして国立署の新米警部である宝生麗子と、執事にして安楽椅子探偵の影山を主人公にしたミステリー。謎解きより執事の主人に対する罵詈雑言を楽しむ短編集。
(*5)探偵はバーにいる (東直己 ハヤカワ文庫JA)
 ススキノのバー”ケラー・オオハタ”を根城にして仕事を受ける探偵兼便利屋の”俺”を主人公にした”ススキノ探偵シリーズ”の第一作。第二作の”バーにかかってきた電話”を原作として大泉洋主演で映画化。
(*6)名探偵コナン(青山剛昌 小学館)
 組織の男が飲ませた毒薬のせいで小学生の体になってしまった高校生探偵”工藤新一”を主人公とした漫画。アニメ化&映画化&実写化と今や日本ではもっともメジャーなミステリーのひとつ。
(*7)”ポーの一族”&”パタリロ!”の影響で
 ”ポーの一族(萩尾望都 小学館文庫)”のエピソード”小鳥の巣”の中で、エドガーとアランがロビン・カーの死をさして”だあれが殺した? クック・ロビン・・”と歌ってます。これがモトネタで”パタリロ!(魔夜峰央 白泉社)”のアニメ版で”クックロビン音頭”が登場。だ~れが殺したクックロビン♪
(*8)いわゆる見立て殺人モノ
 童謡などの歌詞にあわせて殺人事件が発生する推理小説のこと。日本だと横溝正史”悪魔の手毬唄”なんか。今だったら劇場型殺人事件とか言われそうです。
(*9)マザーグースのうた
 訳詞 谷川俊太郎、絵 和田誠というコラボ版。歌っているのがボニー・ジャックスにペギー葉山に熊倉一雄に水森亜土にと、まあ時代ですなぁ
 1995年にキングレコードよりCD版が発売されました。
(*10)左の眼の悪霊(和田慎二 白泉社他)
 ロン髪でイケメンの私立探偵”神恭一郎”を主人公とする短編シリーズ。この探偵は”スケバン刑事”にも登場します。”左の眼の悪霊”は織永家の跡継ぎ候補でオッド・アイのケイと友人の潤子が”つぐみ館”でおこる猟奇事件に巻き込まれるというもの。マザーグースが恨み歌として登場します。
(*11)押井守
 日本のアニメ監督。代表作としては”攻殻機動隊シリーズ”、”スカイ・クロラ”、”機動警察パトレイバー(劇場版)”、など。暗い雰囲気と独特の理屈っぽさがけっこうお勧めです。


きっといるのだ。絵本を大事にする書店には、粋な神様が(平台がおまちかね/豚)

 ども、昔は営業をやっていたおぢさん、たいちろ~です。
 営業といっても装置系でしたので買う人=使う人なので、小売系の営業ってのはやったことはありません。身近な小売というと食料品店や衣料なんかがありますが、私がよく使うのが本屋さん。どのような本を仕入れてどう売るかは本屋さんの裁量のようですが、当然本屋さんに本を売り込む営業の人もいるわけです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな本屋さんの営業を扱ったミステリー”平台がおまちかね”であります。


071315

 写真はたいちろ~さんの撮影。近所の畜産祭で見かけた豚です。


【本】平台がおまちかね(大崎梢、創元推理文庫他)
【本】平台がおまちかね(原作 大崎梢、絵 久世番子、新書館)
 中堅出版社”明林書房”の営業マン”井辻智紀(いつじともき)は初めて東北への出張にでかけた。前任者が写した写真を渡すために”ユキムラ書店”を訪れたがひと月前に閉店したとのこと。すると近所の蕎麦屋の親父が先日も同様にこの書店を訪れた若者がいるという・・・(”絵本の神さま”より)
 ”平台がおまちかね”は井辻智紀を主人公とした”出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ”の第一作。
 元本屋の店員”久世番子(*1)”によりコミック化。
【動物】
 哺乳綱ウシ目イノシシ科の動物で、イノシシを家畜化したもの。
 見た目はかわいいですが、意外と筋肉質で(体脂肪率は14~18%程度)でまともに攻撃されると大人でも数メートル飛っとばされるそうなのでご注意ください。


 ネタバレになりますが、謎解きのキーになるのが”ユキムラ書店”の看板に書かれている4匹の動物と、知り合いの営業マンから聞いた”5番目は子豚だった”という言葉。4匹の動物というのは駅ビルの階段で小さな女の子が歌っていた(*2)”のんたん、ばばーる、じょーじ、はりー”です。ちっちゃい子がいる(いた)親ならご存知でしょうが、これはメジャーな絵本の登場人物

〔ノンタン〕
 キヨノサチコの絵本のシリーズに登場するウサギ。
 フジテレビで放送された”ウゴウゴルーガ(*3)”の中でアニメ化されたのでそっちで見られた方もいらっしゃるかと。ちなみにノンタンの声はココリコの遠藤との離婚ネタでいじられまくっている”千秋”です。

〔ババール〕
 フランス人絵本作家ジャン・ド・ブリュノフの”ぞうのババール”に登場する点目のゾウ。すいません、これ読んだことないです。

〔ジョージ〕
 ハンス・アウグストとマーガレットのレイ夫妻による絵本のシリーズ”おさるのジョージ(ひとまねこざる)”に登場する猿。
 途中で絵が変わってるそうですが、私が見てたのはレイ夫妻のほう。

〔ハリー〕
 ジーン・ジオン(ジーク・ジオンではありません)マーガレット・ブロイ・グレアムによる”どろんこハリー”に登場する犬。 日本での出版は1964年とビミョ~に読み損ねたみたいです。

 こんな絵が看板に書かれているように、この本屋さんは絵本に力をいれています。本屋さんってみんな同じじゃなくてお店ごとに棚作りって店主の個性がでるんだそうで、しょっちゅう何軒かの本屋さんを回ってますけど、あんまり気にしたことなかったですねぇ。改めて言われてみると確かに会社の近くのビジネス街ではビジネス書っぽいのが多いし、近所だと一般書が多かったり、コミックが充実していたり。ショッピングモールだと子供向けのスペースが大きかったりもしています。まあ、見に行く棚が偏向してるからあんまし気付かなかったけど。で、お店の中でも一番目立つ入り口近くの棚とか平積みをしている平台に何を置くかはう店主と営業の腕の見せどことみたいです。

 ”絵本の神様さま”に出てくる5番目は子豚っていうのは店主の甥っ子だった人の書いた絵本のキャラクターですが、昔進学にからんですれ違ってしまった作家とその人と本屋さんの想いが絵本を通じてつながっていたというお話。ほろっとさせてくれます

 同じ大崎梢のミステリーで”成風堂書店事件メモ(*4)”というシリーズがありますが、こっちは本屋の店員さんのお話。”ときめきのポップスター”では設定がクロスしていて、このシリーズを読んでる人にはニヤッとしてしまうサービス編。同じ本屋さんの話でも本屋と営業の違いが楽しい一編。両シリーズとも気楽に読める本ですので、ぜひご一読のほどを。


《脚注》
(*1)久世番子(くぜばんこ)
 作者の大崎梢も漫画家の久世番子も元本屋で働いた経験のある人。
 こういった職業モノって、やっぱり働いた人のリアリティが違います。
 詳しくは”暴れん坊本屋さん”をどうぞ。
(*2)小さな女の子が歌っていた
 ”わらべ歌”などを使った見たて殺人というのは推理小説の定番。
 横溝正史の”悪魔の手毬唄”やマザー・グースをテーマにしたヴァン・ダイン”僧正殺人事件”なんかがお約束。でも井辻智紀のシリーズではそんなおどろおどろなのは出ませんのでご安心を。
(*3)ウゴウゴルーガ
 1992年から94年まで放送された子供向けバラエティ番組。子供向けとは思えないシュールなネタでけっこう気にいってました。またやんないかな~~ みかん星人とかのキャラや笑いって絶対今ウケしそうなんだけど。
(*4)成風堂書店事件メモ(創元推理文庫 他)
 本屋のバイトの大学生店員”多絵さん”をホームズ役に店員の”杏子さん”をワトスン役にした本屋を舞台にしたユーモアミステリー。こちらも久世番子がコミック化しています。詳しくはこちらをどうぞ。お勧めです。

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