小説

ビジネスシーンでも使えそうな”ジャック・リーチャー”の名言 かな?(警鐘/UH-1 ヘリコプター)

 ども、学校で真面目に訓練(勉強)しなかったのであまり出世しなかったおぢさん、たいちろ~です。
 さて、最近”ジャク・リーチャーシリーズ”にはまっています。この小説は元軍の憲兵隊少佐で今は放浪者の”ジャック・リーチャー”がいろんな事件に巻き込まれてそれを解決するハードボイルドな話ですが、軍のメソッドを使って行動するせいかビジネスでも通じそうな名言がけっこう出てきます。”ビジネスも一種の戦争だ”なんて青いことは言いませんが、読んでるとけっこう役に立つというか一度は使ってみたい名言ってのがちらほら。
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第三作”警鐘”から拾った名言集であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。アメリカ軍横田基地のUH-1ヘリコプターです

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【本】警鐘(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ”ジャック・リーチャー”を探しに来た私立探偵が殺された。彼の捜索を依頼したのは元上司で恩人でもある”リオン・ガーバー中将”の娘で、かつて恋心をいだいていた”ミセス・ジェイコブ”こと”ジョディ・ガーバー”であった。二人がヴェトナム戦争中にヘリコプターの墜落で行方不明になった”ヴィクター・ホビー”の生死を調べることになるが、その影に会社の乗っ取りを企む陰謀と国家機密に関わる黒い闇が広がっていた・・・
【乗り物】UH-1 ヘリコプター
 アメリカのベル・エアクラフト社が開発した汎用ヘリコプター。愛称”ヒューイ”。本書は現代(原書は1999年発刊)とヴェトナム戦争(~1975年)の間をいったりきたりするんですが、UH-1は物語のきっかけとなったヴェトナム戦争中の撃墜シーンで登場。この機体は1959年にアメリカ陸軍で採用され、ベトナム戦争でも活用され、モデルチェンジを重ねつつ現在でも自衛隊を始め現役で活躍中という超ロングセラー機。ほんとに軍って物持ちいいですな~~


 さて、ビジネスでも使えそうな名言を

〔当面の仕事に集中しろ〕
 悪漢に待ち伏せされている中、ジョディをオフィスに送り届けるリーチャー。相手があまりに隙だらけなので反撃できそうなんですが・・・ というシーンでの言葉。
 当たり前のようですが、色々仕事をしているとこっちのほうもうまくいきそうだとか目移りしることもままあります。状況しだいなんで絶対ではないんですが”二兎を追うもの一兎も得ず”とも言いますし。

なにごともなめてかかるな、って
 上記の悪漢が思いもよらぬ攻撃を仕掛けてきた時のリーチャーの言葉。優秀な刺客を送り込んでくる可能性を失念したことに対しての反省の弁。”リオンにこのヘマを見られていたら私に失望しただろう”とのこと。”油断大敵”とも言いますし

〔われわれの見るところ、SASですね〕
 捜査のためにかつてヴィクターの同僚だったデヴィット将軍を訪れたリーチャー。そこの基地で門番をしていた軍曹に”将軍はどんな感じの人だ”と質問。で、軍曹の答えがこれ。SASは”Stupid Asshole Sometimes(*1)”の略で日本語だと”ときどき愚かなことをするアホなやつ”。あまりお上品な言葉じゃなさそうですが、リーチャーは”好意的”との評価

  自分をみくださずにきちんと接してくれれば、
  こちらも協力的になれる上官、ということだった

上官たるもの、部下には多少の隙を作っとかないといけないのかも。”優れたリーダーは部下に弱みを見せる”とも言いますし。まぁ、逆も言うんですけンド・・

〔勇気のあるやつは、恐怖心を克服できる男だ。ヴイックは、何も感じない男だった〕
 同じくデヴィット将軍がヴィクター(ヴイック)を評しての言葉。勇気があることと、なにも感じないことば別で、ヴィクターは後者だと。それでも(それゆえ)、ヴィクターって人はヘリのパイロットとしては優秀だったようです。”恐怖は心を殺すもの(*2)”とも言いますし。

〔狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ〕

 同じくデヴィット将軍の言葉。訓練所でトップの成績で卒業した若き日の将軍ですが、実戦ではヴィクターのほうが優秀だったと。ヴィクターは”UH-1 ヒューイ”のパイロットとしてヴェトナム戦争に赴き、実戦に即したやり方を開発してそれが標準操作手順に採用されるほど優れていたとのこと。ヴィクターの優秀さを表すのに使ったのがこの言葉。

  私たちは訓練ですべてを学んだ。言わば極めた。
  だが、じつはあんな訓練はなんの役にも立たなかった
  狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ

で、自分達がそうだったようになんの準備もなく若者たちを戦場に送りたくないと将軍はヘリの養成所の運営やってます。まあ”実戦証明済み(*3)”が重要とも言いますし

〔なぜまちがったなどと考えるな。ただまちがいを正せばよい〕

 拉致されたジョディを助けるために閉じ込められている部屋の前で悩むリーチャーが思い出したリオンの言葉。前作の”キリング・フロアー(*4)”でも、犯人探しや原因分析ななど”そんなことはあとでやればいい”という言葉が出てきますが、どうも陸軍のメソッドは行動第一主義のようです。”First things first(最初にやるべき大切なことは最初に)”とも言いますし

〔一度だけ訊け、どうしても必要なら二度訊け。だがぜったいに三度訊いてはならない〕
 上から続いて部屋に突入したリーチャーが悪漢の部下を捕まえて、”協力するか、死ぬか”を選択させる質問をしたシーン。この言葉はリオンの教えから。二度訊いても抵抗するようなら何度訊いても無駄だから時間を浪費するなということでしょうか? これが敵ならまあ許されるかもしれませんが、部下との間でここまで厳しくやったら、けっこう軋轢ありそうだな~~ ”仏の顔も三度まで”とも言いますし。(仏様は優しいので一回分増量のようです)

〔放浪の最大のよさは、選択肢などいっさいないことを
  幸せな気分で受動的に受け入れることなのだ〕

 リオンに遺産として家を譲られ、ジョディと良い雰囲気になっているリーチャーのモノローグ。このまま、ジョディーと一緒に暮らすか放浪の旅に戻るか逡巡するシーンから。 結局、リーチャーが怪我で入院したこともあって、ラストシーンはジョディーと一つ所に落ち着くような雰囲気ですが、次回作があるってことはやっぱり放浪生活にもどんだろうなぁ

 ということで、次回作は映画の原作にもなった”アウトロー(*5)”に続きます

《脚注》
(*1)Stupid Asshole Sometimes
 ”Stupid”は愚かな、ばかな、”Asshole”は直訳すると”尻の穴”でスラングとしては”嫌な奴”
(*2)恐怖は心を殺すもの
 ”デューン 砂の惑星”(フランク・ハーバート、早川文庫)より
(*3)実戦証明済み
 ”コンバットプルーフ(Combat Proof)”、”バトルプルーフ(Battle Proof)”とも。武器などが実戦で使用され、その性能や信頼性などがカタログスペックどおり(またはそれ以上)であることが証明されること。ビジネス現場で学校の成績が良いからといって、実績が上がるかというとそうとは限んないんでしょう。それ以前に”学校の成績が良かったかどうか”なんて話題がそもそも出てきませんし。
(*4)キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”と女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・ 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)アウトロー(監督 クリストファー・マッカリー、主演 トム・クルーズ、パラマウント)
 ピッツバーグ近郊で起きた銃乱射事件で、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕される。証拠はすべて揃い、事件は解決へ向かうかに見えた。しかしバーは黙秘を続け、「ジャック・リーチャーを呼べ」と紙に書いて要求する・・・
 2012年にトム・クルーズ主演で公開された映画。原作では9作目。

”霊的な祝福付き”の首都大改造計画、ってありでしょうか?(帝都物語/日本橋)

 ども、自分の結婚式はキリスト教ですが、葬式はたぶん仏教になりそうなおぢさん、たいちろ~です。
 おそらく、日本人ってのは世界でも類をみないほど宗教や占い、おまじないに関してよく言えば寛容、悪く言えば無節操な国民性なんじゃないかと思います。
 生まれたら神社にお宮参りに七五三、結婚式はキリスト教、葬式は仏教。正月に初詣に行って、夏にはお盆、秋にはハロウィン(*1)、年末の一大イベントがクリスマス・イブ。神社に行けばおみくじを引くけど、恋愛運は星占い、結婚式や葬式は六曜にこだわるけど、家を買う時は風水云々言い出すし。まあ、バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!(*2)みたいのもありますが。
 こんだけ無節操だと”霊的に祝福された都市計画”なんつ~のも滑稽無糖って訳でもないのかな~なんて。まあ、議会で予算が通るかどうかはビミョ~ですが。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな都市計画から始まるサイキック奇伝小説”帝都物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。東京の日本橋(上)と欄干に飾られている麒麟です。

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【本】帝都物語(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 明治40年、東京を軍事のみなならず霊的にも祝福された都市に改造する、渋沢栄一を中心に秘密裏にプロジェクトが開始された。集められたメンバーは天皇家に使える”土御門一門”、理学博士”寺田寅彦”、平将門の復権を目指す”織田完之”、若き大蔵官僚の宮辰洋一郎”など。そして陸軍からは陰陽道にも通じる”加藤保憲”の姿もあった・・・
 平将門の怨霊により帝都破壊を目論む”加藤保憲”とその野望を阻止すべく立ち向う人々との物語がここから始まる(第一巻”神霊編)
【旅行】日本橋(東京)
 東京都中央区の日本橋川に架かる橋。読み方は”にほんばし”。大阪にも道頓堀川にかかる”日本橋”というのがありますが、これの読み方は”にっぽんばし”。初代は1603年(慶長8年)に徳川家康の全国道路網整備計画によって作られた五街道の起点。そのため、今でも国道1号線を始めとする7つの国道の起点となっています。

 さて、”帝都物語”の第一巻ですがまずは主要キャラクターの登場編。上記以外にも文学者の”幸田露伴”に”森鷗外”、物理学者の”長岡半太郎”、地政学者”カール・ハウスホーファー”など、実在の人物がキャラクター化して話を紡ぐってのは”文豪スレイドックス(*3)”の御先祖様って感じでしょうか?

 本作の悪役といえば”加藤保憲”。あらゆる魔術に精通し、陰陽道を始め暗殺術の蠱毒だの式神使いもよくし、剣も達人。中国語や朝鮮語にも通じてるんだから大陸進出には重宝されたんでしょうな。確かに有能な人のようで登場時には陸軍少尉ですぐに中尉に昇進しています。
 悪者感満載の”加藤保憲”ですが、ちょっと意外だったのはこの人少尉とか中尉ってことで軍隊組織の中では意外と偉くないんですな。態度はLサイズで、大佐ぐらいの感じなんですけど。本を読んでいて困るのが”組織の中での地位”ってのがけっこう分かりにくいことです。これによって組織の中での権力(意志決定への影響力、動員できるリソースなど)がどの程度あるかが決まるンでリアリティが違ってきちゃうんで。調べてみると時代や組織でかなり異なりますが”少尉”だと小隊長(10~50人)、”中尉”だと中隊長(4個小隊相当 200人程度)だそうです。現在の会社組織だと200人の部下がいるならかなりの偉いさんですが・・・ 偉そうな加藤中尉ではありますが、原隊に帰れば中間管理職としていろいろ苦労してんでしょうかねぇ・・・

 さて、第一巻のメインの話は東京を”霊的に祝福された都市”に改造するための基礎設計をするってことです。渋沢栄一をリーダーとするプロジェクトですが、初期段階なんで防災計画の専門家、裏付けとなる財政の担当者、防衛の観点から軍部の関与なんかはわかりますが、これに”霊的”が混じると陰陽道の専門家が入るわ、なぜだか物理学の専門家まで。まあ、こんだけ専門の違うメンツを集めてのプロジェクトだからまとめんの大変だろうな~~ という出だしです

 ところで、平安時代や江戸時代ならともかく、”霊的に祝福された建築”なんてできるかというと実は近代でもあったりなんかするんですな。その一例が本書の中でもちらっと出てくる”日本橋”がそれ。写真では上に走っているのが首都高速道路でその下が日本橋です。橋のたもとにあるのが”獅子”で、橋の中央にあるのが霊獣”麒麟”。麒麟は東京市の繁栄を、獅子は守護を表しています(中央区教育委員会の看板より)。橋の完成は1911年(明治44年)で、時代的には日露戦争終了後(1905年)、江戸幕府が締結した不平等な”日米修好通商条約(*4)”から脱却し新しい”新日米通商航海条約”を締結した年で、議会制民主主義を推進する第一次護憲運動(憲政擁護運動 1912年~)の直前あたりです。日本史の授業でやりましたが覚えてますか? 私はまったく忘れてましたが
 ”合理主義”的なメンタリティとしては江戸時代よりは現代に近いと思われる時代なんですが、それでも守護獣たる”獅子”や霊獣たる”麒麟”が登場するんですな。”橋”を”河川を横断する道”という機能に限定すれば多少の意匠はあっても獅子や麒麟である必要はないはずなんですが、それでもこの獣にしたのはやっぱり”霊的な祝福”を望むメンタリティが色濃くあるんではないかと。さすがに現在で”霊的に祝福された都市計画”を正面切って国会や東京都議会に提出したら会議はけっこう紛糾しそうだし、ネットでは格好の炎上ネタになりそうですが、個別建築物の意匠レベルで極小化しちゃえば意外とすんなり通っちゃうかも。まあ、最後は小○さん次第ってことになりそうですが・・・

 本書の中で語られる都市計画のなかでユニークさでは出色なのが”寺田寅彦”の提案した”地下都市構想”。約100尺(約30m)の地下に建築物の基礎を作って帝国の中枢建築物を移し地下道路や鉄道で結んで、地上には緑地や水路を作るというもの。渋沢栄一はノリノリですが、大蔵官僚の宮辰洋一郎は渋い顔ですが、当たり前です。国家財政の困窮でストップしていたのが、事業公債の発行でやっとこ財源の裏付けできたのに、地下都市なんか作った日にゃいったいいくら掛かるネン!!
 現在、2020年の東京オリンピック目指して首都高速道路の老朽化対策をどうするかの議論をやっていますが、高架のまま改築すると約1,400億円で、地下化すると約5,000億円かかるんだとか。予算ベースでこれですから実際にやったらもっと掛かるんでしょうね。たかだか道路の改修工事でこんだけかかるんだから、街ごと地下化すればいったいどんだけ掛かるんでしょう?? 学者の論としてはありうるんでしょうが、国家財政を預かる大蔵官僚としては”はい、わかりました”と言えるシロモノではないんだろ~な~

 ”帝都物語”における加藤保憲の悪者話はこれからのようですが、前から一度読んでみたかったので(*5)、これからが楽しみです

《脚注》
(*1)ハロウィン
 最近盛り上がっているハロウィンですが、元々は古代ケルト人が起源の秋の収穫祭り兼悪霊なんかから身を守る行事。でも、正確に理解できる人ってどれぐらいいんだろ? どう見ても政府公認のコスプレイベントとしか思えんが・・・
(*2)バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!
 元々はローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌス(バレンタイン)に由来する記念日ですが、日本式の女性から男性にチョコレートを贈るというのはモロゾフ製菓が考案したんだとか。まあ、土用の丑の日にウナギを食べるを定着された平賀源内みたいなもんかと。
(*3)文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川コミックス・エース)
 横浜を舞台に異能と呼ばれる超能力を駆使して戦う福沢諭吉率いる”武装探偵社”と森鷗外をボスに仰ぐ”ポートマフィア”の抗争を描くサイキックアクションコミック自殺マニアの太宰治やらやたらコンプレックス丸出しの芥川龍之介など、文豪をイメージしたキャラ設定が秀逸。お勧めです。
(*4)日米修好通商条約
 1858年(安政5年)に日本とアメリカの間で結ばれた通商条約。日本に関税自主権がないなど不平等な内容でした。で、関税自主権を回復したのが”新日米通商航海条約”(1911年)です。
(*5)前から一度読んでみたかったので
 本書は1985年の発表、1987年に日本SF大賞受賞、映画がヒットしたのが1988年なんで、30年近くほったらかしにしてたんだなぁ。ちなみに本書を読む気になったのは、”虚実妖怪百物語(京極夏彦、KADOKAWA)”のモトネタだったから。こちらも面白い本。詳しくはこちらをどうぞ。

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

ジャック・リーチャー=ハードボイルド+ウェスタン?(キリング・フロアー/偽札)

 ども、ハードボイルドものけっこう好きなあるおぢさん、たいちろ~です。
 夏休みのヒマつぶしということで、DVD大処分。溜まってるのを何本か見まして、その中にトム・クルーズ主演の”アウトロー(*1)”と”ジャク・リーチャー(*2)”の二本立て入ってました。こういうドンパチやってるアクション物ってのもけっこうお気になんですが、wikipedia読んでるとどうも原作と映画ではキャラが違っていると。原作だと巨漢でダークなキャラを小柄で明るいトム・クルーズが演じているということで(*3)、こりゃ原作も読んでみんことには!
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第一作”キリング・フロアー”であります。
 しかし、映画版の原作は9作目だというに律儀に1作目から読みだすって、ビブリオマニアの因果なとこなんでしょうかねぇ


写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀海軍基地にあるATMです
偽札の写真を載っけたかったンですが、そんなの持っていると警察きそうなんで・・

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【本】キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・
【道具】偽札(ニセ札)
 偽造貨幣。細かく言うと偽造された貨幣が”偽金(贋金)”でそのうち紙幣の偽造が”偽札”。当然ながら偽造又は変造のみならず使っても(まあ、使うために作るんですが)犯罪行為です。対象には自動販売機などの機械も含まれます。
 本書の中で偽札を作成する4つの問題として”印刷機、金属板(原版)、インク、紙”とありますが、実際に偽造防止のため、紙、インク、透かし、ホログラムなどかなり高度な技術が使われています。これに対応するATM等なども高度な技術が採用されているのでほとんど偽造紙幣が使えない仕様になっています。”ほとんど”というのは鑑別技術自身がトップシークレットのため、一般市民どころか機械を作っている社内でも一部の関係者以外どうやってるのか知らないからです。


 さて、原作読んでみた感想なんですが、ジャック・リーチャーって”ダークなキャラ”というより”ハードボイルド”と”ウェスタン(西部劇)”の今風なハイブリッドって感じでしょうか。

〔減らず口はハードボイルドな男の特権!〕
 ”ハードボイルド”てのはタフガイな探偵が犯人とガチでやり合うってものありますが、その魅力の一番ってのは”名文句”言い換えると”減らず口”にあるんじゃないかと。読んだ中だと海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”あたりがいいですねぇ(*3)
 本書に出てくるジャック・リーチャーの減らず口から

  浮浪者じゃない。放浪者だ、フィンレイ。えらいちがいだ

   (尋問をする刑事部長のフィンレイに)

  働きたくないからさ。十三年働いたあげくが、このありさまだ
  軍の言いなりになっていた気がする
  だから、もうごめんだ。これからは自分のやりたいようにやる

   (”どうして働いていないんだ”というフィンレイの質問に対して)

  三人だけだ。四人目は生かしておいて、質問に答えさせる
   (留守中の家を4人の犯人に襲われたロスコーの”四人とも殺した?”という
   問いに対して)

  ゴキブリ退治の薬をまくとき、なにか感じるか?
   (犯人5人を返り討ちにしたことに対して問い詰めるフィンレイに対して)

 いや~、渋いですな。特に2番目なんかは定年退職後にさらに働けとか奥様に言われたら、言い返すのに使ってみたい名言です。

〔流れ者はウェスタンの基本フォーマット〕

 ある日、どこからか流れ者がやってくる。困っている町の人を助けるために町を支配する悪者をやっつけて、またいずれかへ去っていく・・・ ウェスタンの基本フォーマットです。子供の頃に見た”シェーン(*4)”なんかが代表作です。
 ジャック・リーチャーも同じく”放浪者”。どっかからやってきて悪の組織と対決するってのはウェスタンの基本フォーマットって感じですね。本書ではロスコーとけっこういい雰囲気でチョメチョメしてますが、最後どうすんだろ~な~って読みながらも気になってました。

〔一介の民間人のはずが、問答無用で犯人を射殺してますが・・・〕
 当たり前ですが、アメリカや日本の警察官というのは地方公務員です(警察庁は国家公務員)。ウェスタンに出てくる保安官というのもまあ郡とかの公務員。これに対しウェスタンに出てくる”賞金稼ぎ”というのは調べてみたら州法務省の許可を受けた民間業者(許可のいらない州もあるらしい)。
 で、我らがジャック・リーチャーと言えば、元軍人ではあるものの完全な民間人。事件に関係した発端は完全に巻き込れ型で、殺されたのが兄とかでなければたぶんそのまま町を出てった可能性のが高そう。にもかかかわす襲ってきた敵をあっさり射殺してんですな~~ いいんだっけ、これ?
 考えると、私立探偵の前職って警察官という設定はよくあるんですが、これだと職業倫理として”逮捕(生きて捉える)”が前面にでるのに前職が軍人のリーチャーだと”まず自分が生き残る(ためには相手を殺すのもやむねし)”っていう発想になっちゃうんでしょうかね。
 ジャック・リーチャーの行動原理をまとめたセリフがこれでしょうか

  状況判断。長い経験から、私は状況判断をする術をみにつけていた
  予期せぬことが降りかかったら、時間をむだにしてはならない
  どうしてそんなことになったのかなどと考えてもしかたがない
  だれかのせいにしてもしかたがない
  だれが悪いのか突きとめようとしてもしかたがない
  二度と同じまちがいをしないためにどうすればいいか考えてもしかたがない
  そんなことはあとでやればいい
  生き残りたかったら、まずは状況判断をすることだ
  事態を分析する。マイナス面を見定める。プラス面はなにかと考える。
  それをしたうえで、あとからほかのことをするチャンスを見つければいい

 引用が長くなってすいません。でもこのセリフ、すごくアバウトに聞こえるかもしれませんが、ビジネスでも犯人探しとか原因究明やってて判断が遅れるってのが、実はあったりなんかして・・・

 ”ジャック・リーチャーシリーズ”、けっこうはまりました。まだ、続編あるんで読んでこっと!

《脚注》
(*1)アウトロー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ピッツバーグでライフルによる無差別殺人事件が発生した。元アメリカ陸軍のスナイパー、ジェームズ・バーが容疑者として逮捕されるが、彼は弁護のために元米軍憲兵隊捜査官で、現在は流れ者のジャック・リーチャーを呼ぶことを要求する。
 ジャック・リーチャーシリーズの第9作を原作とする映画第1作
(*2)ジャク・リーチャー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ジャック・リーチャーの後任、スーザン少佐が国家反逆罪で逮捕される。リーチャーは彼女の無実を証明し、元部下を殺害した真犯人を追い詰めるべく捜査を開始する。そこには政府の陰謀が隠されていた・・・
 ジャック・リーチャーシリーズの第18作を原作とする映画第2作
(*3)海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”~
 ”フィリップ・マーロウ”は、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に登場する探偵。ハンフリー・ボガート主演の映画なんか渋いですな~~
 ”沢崎”は原りょうの”沢崎シリーズ”に登場する探偵。極端に寡作な作者なので作品数は少ないですが、ハードボイルド小説としてはイチ押しです
(*4)シェーン(主演 アラン・ラッド、監督 ジョージ・スティーヴンス、パラマウント)
 流れ者のシェーンは悪徳牧畜業者のライカーに苦しめられるジョー一家の息子”ジョーイ”の為ライカー立ち向かい、彼を倒した後にワイオミングの山へと去っていく・・・
 去っていくシェーンに必死に呼びかけるジョーイのシェーン! カムバック!”は映画史に残る名シーン

”夜は若く、彼も若かった” やっぱりミステリには名言が良く似合う(ミステリ国の人々/パイプ)

 ども、けっこうミステリなんかも読んでるおぢさん、たいちろ~です。
 最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”、不思議なものなどない”百鬼夜行シリーズ”、科学調査の”リンカーン・ライムシリーズ”、アニメではまった”櫻子さんシリーズ”、読書好き垂涎の”ビブリア古書堂シリーズ”、学園ミステリの”古典部シリーズ”や”鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ”などなど。昔は”刑事コロンボシリーズ”、”館シリーズ”なんぞもはまりました~~(1)
 人の死なないミステリも好きですが、やはりミステリといえば殺人事件(できれば連続!) 1841年、エドガー・アラン・ポーによる”モルグ街の殺人”から始まったミステリ

  

殺しも殺したり176年分かぁ~。ナンマンダブ、ナンマンダブ(*2)

 ということで、今回ご紹介するのはそんなミステリの登場人物を扱った本”ミステリ国の人々”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。パイプ屋さんで売ってたパイプです

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【本】ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で52回に渡って連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。いや~、政治経済中心の日経読書欄でこんなくだけた企画をやってくれるとはと最初はちょっと驚きました
【道具】パイプ
 タバコを吸うための道具。シャーロック・ホームズのトレードマークでもありますが、これは寡黙で考え込んでるイメージがあるからでしょうか?
 以前パイプを吸ってたことがありますが、パイプってのは紙巻タバコと違ってうまく吸い続けないと火が消えるんですな。で咥え続けることになりますが、これだと喋ってらんないから勢い寡黙になります
 まあ、ヘビースモーカーの探偵ってのはいますが、これからはIC○Sに移行すんですかねぇ・・・


 本書に掲載されているミステリ国の人々を分類すると

  探偵(謎を解く/事件を解決する側の人)      :29名/組(51%)
  犯人(犯罪を起こす/謎を提示する側の人)     :15名/組(26%)
  相棒(探偵の話相手、間違った推理をする盛り上げ役): 6名/組(11%)
  被害者(犯行などの犠牲になる人)         : 4名/組( 7%)
  その他(証言者、立ち位置不明など         : 3名/組( 5%)

   ※組は複数人で1カテゴリのもの(黒後家蜘蛛の会など)

 出典を読んでないのも多いので本書の紹介の印象で分けました。一人の人物が複数に入る場合があったり(アルセーヌ・ルパンなど)と分けるとなるとけっこうめんどう。すいません、ヒマなんです。

 連載時は気づきませんでしたが、ミステリ国の人々ってライバルや脇を固める人も魅力的な人が多いんですなぁ。確かに底の浅い犯罪やトリックしか仕掛けられない犯人しかいなかったら名探偵が名探偵たりえないし、謎の解けない探偵だったら犯人はんばりがいなさそうだし。何でもひとりで解決しているようなハードボイルドな探偵でも協力者(しかも美人!)がいたりするし。ミステリって意外と群像劇なんだな~とか妙に納得しちゃいました

 で、本書から気にいったネタを

〔ミステリの推理は人間心理をふまえた「もっともらしさ」が重要〕
 まずは、名探偵の代名詞たるシャーロック・ホームズ。不思議な謎を鮮やかに解く推理力の人ですが、有栖川が小学生の時にすら”そんなふうに言い切れるものだろうか?”とのツッコミ。ホームズに限らず、偶然に頼っているとか、分・秒単位での正確さがないと成り立たないとか(電車が遅延したらどうなんねん、時刻表トリックみたいな)、ホントにそれが可能?ってトリックもありますが、それはそれで読んで面白ければOK!

  レトリックで言いくるめられる快感にひたればばよい

 至言です

〔男たるもの、一度は雇ってみたい有能な”執事”〕
 優秀で博識で万能に近く主人に忠実な執事のジーヴス。”ジーヴスの事件簿”に登場。すいません。本書を読むまで知りませんでした。ジーヴスの主人が爵位継承をまっている頼りない青年、バーティ・ウースター。ウースターが困った時にジーヴスに泣きついて解決してもらうという話だそうです。のび太君とドラえもんか、君たちは?!
 しかしまあ、有能な執事ってのは男のロマンですな。これが”秘書”となると会社の雇用ですが、”執事”は完全に個人契約。優秀な男が忠実に仕えてくれるってシチュは憧れです。まあ、同じ有能でも”影山(*3)”ではナンですが・・・

〔ミステリには名言が良く似合う〕
 本書の表題では登場ませんが(リュウ・アーチャーの欄でちょっと言及)な”フィリップ・マーロウ”なんぞ渋い名言で有名”男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない(*4)”のあれです。ことほど左様にミステリには名言が良く似合います。本書でのMyNo.1はウィリアム・シュタイリシュの”幻の女”から

  The night was young,and so was he.
  But the night was sweet,and he was sour.
  夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

 いや~、このセリフだけでこの本読んでみようって気になります

〔名探偵はパイプのけむり?〕
 さて、この本の著者は有栖川有栖ですが、もう一人重要な著者が大路浩美表紙、イラストを担当された人です。しかしまあ、こんだけ広範囲なミステリの本を扱っていて、有栖川有栖は少なくとも過去に読んだことある本に追随してたぶん読まれて、しかもそれをイラストにするって相当大変だったんじゃないかと思います。
 名探偵や怪盗、名作なんてなそれぞれ読者がイメージしているアイコンってのがありそう。ホームズならパイプ、ルパンならシルクハットにモノクルハードボイルド(リュウ・アーチャー)だったら拳銃など。作品自体もその作品を代表するビジュアルってのがありそうで”鋼鉄都市”なら脳に電子基板の組み合わせ”太陽がいっぱい”ならヨットとかそれらを組み合わせて描かれる、往年の真鍋博を彷彿とさせるクールなイラストがベストマッチンング。
 Amazonとかでは表紙イラストの人の名前が掲載されないんですが、ぜひこの人の名前も載せて欲しいものです

 本書は、連載終了していますが、ぜひ続編をやって欲しい! 前回は物故されたかた限定で選んだそうですが、次回はぜひご存命の方を含めて長期連載を日経新聞社にお願いするものであります

《脚注》
(*1)最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”~
S&Mシリーズ(森博嗣)
 大学助教授の”犀川創平”と学生の”西之園萌絵”による理系ミステリ
百鬼夜行シリーズ(京極夏彦)
 古本屋主人にて憑物落としの”中禅寺秋彦”による妖怪系ミステリ
リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー)
 科学捜査のスペシャリストで四肢麻痺の”リンカーン・ライム”による安楽椅子探偵ミステリ
櫻子さんシリーズ(太田紫織)
 標本士にして骨大好きな美女”九条櫻子”によるボーンコレクター系ミステリ
ビブリア古書堂シリーズ(三上延)
 美貌の古本屋店主”篠川栞子”によるマニアック古書系ミステリ
古典部シリーズ(米澤穂信)
 省エネ高校生”折木奉太郎”と「わたし、気になります」の”千反田える”による学園ミステリ
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ(東川篤哉)
刑事コロンボシリーズ(作成 NBC、ABC、出演者 ピーター・フォーク)
 ロサンジェルス市警察殺人課で「うちのカミさんがね」なコロンボ警部による倒叙ミステリ
館シリーズ(綾辻行人)
 建築家”中村青司”が設計した奇妙な”館”で起こる殺人事件を扱う密室系ミステリ
(*2)殺しも殺したり176年分かぁ~
 元ネタは”ルパン三世 カリオストロの城”(監督 宮崎駿、製作 東京ムービー新社)です。
(*3)影山
 ”謎解きはディナーのあとで”(東川篤哉)に登場する執事。警視庁国立署の新米刑事にして世界的な企業グループ総帥の一人娘というお嬢様”宝生麗子”の話を聞くだけで犯人を言い当てるという安楽椅子探偵。推理の前に主人公。推理の前のお嬢様を慇懃無礼な罵詈雑言で罵倒するセリフが魅力のS気質の人です。
(*4)男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない
 レイモンド・チャンドラーの”プレイバック”に登場する私立探偵フィリップ・マーロウのセリフ。正式には
 If I wasn't hard, I wouldn't be alive.
 If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.
  しっかりしていなかったら、生きていられない。
  やさしくなれなかったら、生きている資格がない
 (清水俊二訳)
これを高倉健主演の角川映画”野性の証明”のキャッチコピーに流用したのが上記です
(*5)真鍋博
 戦後を代表するイラストレーターの一人。日本SF作家クラブ会員
 新潮文庫版の星新一のショートショートの表紙なんかはまだ使われているようです

京極堂で南極夏彦で妖怪馬鹿のお話。でも実写でやって欲しいな~~ これ!(虚実妖怪百物語/妖怪お守り)

 ども、早く人間になりた~いなおぢさん、たいちろ~です。
 このブログでは花を紹介するのに、”○○科XX属”というのが出てきます。これは生物学・分類学での”階級”というものでまあ近しいもののくくりなんですが、どこまで実感とあっているかというとけっこうアバウト。たとえばサクラだと”バラ科モモ亜科スモモ属”(wikipediaより)なんですが、サクラを見てバラとか、スモモとか言われてもそ~なんだとは感じにくいんじゃないかな。
 で、なんの話かというと”妖怪”の話です。一言で妖怪といっても亜人ちゃんやら、動物の化けたんやら、物が歳を経てなっちゃったんやらひとくくりにするんかこれみたいな。これに文化的な背景がからんじゃうと何がなんだか。日本では”人魚”は立派な妖怪ですが(*1)、人魚姫の”ア○エル”を見て妖怪扱いしたらディ○ニー・ファンから石投げられんダろうな~~(*2)
 ということで、今回ご紹介するのは、そんな妖怪がいきなり現れたらどうなるかという話”虚実妖怪百物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。イベントで展示されていた妖怪お守りです
写真上は境港にある”妖怪神社”にある金運上昇?!ねずみ男がモチーフのお守り
写真下は赤城神社にある厄災守護の”磐筒雄命(いわつつおのみこと)お守り
ゲゲゲの鬼太郎のチャンチャンコがモチーフ

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【本】虚実妖怪百物語(うそまこと ようかいひゃくものがたり)
   (京極夏彦、KADOKAWA)
 シリアの砂漠に現れた男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲(*3)に、よく似ているように見えた――。妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげる氏の叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。(序)
 という話のはずなんですが・・・
【道具】妖怪お守り
 妖怪とお守りの組み合わせって冗談っぽいですがホントにありました
 鬼太郎のチャンチャンコ柄のお守りは磐筒雄命をお祀りしている東京の赤城神社のもの。水木しげる大先生が、”ゲゲゲの鬼太郎”アニメ化の時にこの神社でヒット祈願をしたことが由来だそうです。
 まあ、こっちはわかるんですが、妖怪神社のねずみ男お守りってのはどうなんでしょう。コレクターズアイテムていう意味ではありですが・・・


 で、妖怪ってのは何かというと水木しげる大先生曰く”気配”とのこと

  妖怪というのは、気配デスよ、気配
  それに相応しい気配があって、その中にいて、漸くこう、うっすらと感じるもんデすよ
  そこで、ハッ、と思うワケです。見えないんです!

 なんで、ホイホイ見えちゃいかんモンだそうです。ところがこれがみんなにはっきり見えちゃって、しかもデジタル媒体に記録されちゃう。これがまた見た人が見た感じのものを記録されちゃうんだから大混乱、ってのが本書で起こっている事柄です。

 こんだけ読むと”虚実妖怪百物語”という本の名前っぽいんですが、実際読んでみるとなっじゃこりゃ! ざっくりまとめると、南極夏彦テイストのノリ(*4)に京極堂の蘊蓄のっけて(*5)、オタクネタをばら撒いたような妖怪馬鹿話! しかも登場人物がほとんど実在の人物。京極夏彦本人に始まって、水木しげる大先生に荒俣宏。平山夢明に村上健司に黒史郎なんといった妖怪・ホラー系ライターとかも、読んだことないけど。なあ、ほとんど楽屋オチな面々が集まってほとんど妖怪馬鹿の面目躍如な大騒ぎ!!! 
 だいたい”加藤保憲”ドコいったんや! 1巻目”序”の冒頭でオイシイ出方してるのにあと登場するのは2巻目、3巻目の冒頭。最後の最後での登場は荒俣宏に呼ばれて飛び出てジャジャジャヤジャ~ンの8ページのみ。1400ページ近くあんですぜ、この本

 こんだけ読むと単なるふざけている馬鹿本かと思われるでしょうが、実はその背景ってかなり今の世相を反映してそうでけっこうホラー。妖怪という対象がなくなったとたん、社会がお互いを監視し、無駄を憎み、冗談に苦情をいい、駄洒落だけで教師を懲戒免職にするという殺伐とした世の中に・・・

  全員、自分が善だと信じ込んでいるのである 誰一人、人の話ををきこうとしない
   (中略)
  国民共通の敵・悪の権化たる妖怪を失ってしまったために
  怒りや不満のはけ口がなくなってしまい、
  仕方なく大衆はその矛先を隣人へと向け始めたのだろう
  溜まりに溜まったフラストレーションをお互いにぶつけ合っているだけなのだ
  なんちゅう乾いた人間関係だろうか

 冷戦構造の崩壊からこっち(*6)、対立構造が多極化、局所化していく中、国民共通の敵・悪の権化というような大物キャラクターが消失してった中で、インターネットやSNSなんつーイージーな発信ツールが登場することで、ネットの炎上やクレーマーといった自己主張をぶつける人が(以下自主規制)

 ”虚実妖怪百物語”はふざけているようで、実はけっこう真面目にヤバいネタを扱った本。京極夏彦はじめての人でもけっこう楽しめます。ぜひご一読の程を

 余談ですが、この本実写化せんかな~~~
 お亡くなりになられた水木しげる大先生はどなたか役者の方でもしょうがないですが、それ以外の方はほとんど実在の人物。俳優は嶋田久作に佐野史郎に室井滋、声優は野沢雅子に八奈見乗児に千葉繁に高山みなみに山本圭子と夢のラインナップ。キャラクターでも水木大先生を始め、高橋留美子に藤子・F・不二雄に魔夜峰央に藤田和日郎となれば著作権なんぼのモンじゃい! 鈴木光司がいるから貞子もご出演ok! ”シン・ゴジラ”や”図書館戦争”、”空飛ぶ広報室”とかにも協力してるんだから、自衛隊もけっこうノリノリで協力してくれそうだし。あとはKADOKAWAの財力とメディアミックス力があれば怖いモンなしだと思うんですが。ぜひご検討の程を


《脚注》
(*1)日本では”人魚”は立派な妖怪ですが
 京極夏彦の本でよく引用される鳥山石燕の妖怪画集”今昔百鬼拾遺”に載ってます。ビジュアル的には上半身が人間で下半身魚ってのはア○エルと同じですが、顔はネズミっぽいし水かきあるし背びれあるし・・・
(*2)人魚姫の”ア○エル”を見て~
 ”ア○エル”の父親はギリシア神話に登場する海神”トリ○ン”ということなので、ア○エルは妖怪ではなくて神様の一族ってことになります。いちおうフォローしましたよ
(*3)加藤保憲
 ”帝都物語(荒俣宏、角川文庫)”に登場する強力な霊力持ち魔術に精通する悪役。関東大震災を引き起こしたという結構アブナイ人。1988年に嶋田久作が主演で映画化されるなどけっこう流行ったんだけど、まだ読んでないな~~ これから読みます。
(*4)南極夏彦テイストのノリ
 京極夏彦の”南極探検隊シリーズ(集英社)”に登場する簾ハゲ。最初は単なる四流小説家だったのが、どんどん妖怪化しているような・・・
(*5)京極堂の蘊蓄のっけて
 京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ(講談社)”に登場するで古本屋主人にて憑物落とし。京極夏彦の小説が超長いのはこの男が延々蘊蓄語るからといっても過言ではないかと
(*6)冷戦構造の崩壊からこっち
 アメリカ合衆国を盟主とする資本主義・自由主義陣営と、ソビエト社会主義共和国連邦連邦を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立構造。1989年のアメリカのパパ・ブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長がマルタでの会談で終結。ってな話を脚注で書いとかんと、若い人にはわからんかもねぇ。なんたってもう四半世紀も昔の話だし・・・

幼少のころに本書を読んだことでお嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします(大どろぼうホッツェンプロッツ/ソーセージ&ザワークラウト)

 ども、大人になっても児童文学も読むおぢさん、たいちろ~です。
 先日会社の人と山登りにいきました。で、泊まったペンションでなぜだか子供のころに読んだ本の話になりましで、お嬢様方2人(*1)が”ホッツェンプロッツが面白かった”と。お嬢様の一人は

 ツワッケルマンがじゃがいもをむいている姿がかわいい!

となかなかマニアックなポイントを突いておりました。私自身、本の名前は聞いたことありましたが読んだことなかったんで、今回図書館の児童コーナーで借りてきました
 ということで、今回ご紹介するのは、ドイツの児童文学”大どろぼうホッツェンプロッツ”であります
 あと、山登りにお嬢様方2人が参加しているのは奥様公認ですので、文春ネタにはなりません、はい


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜赤レンガ倉庫で開催されたフリューリングスフェスト(*1)で食べたフィッシャーマンズプレートです(右下がソーセージ、その上の白いのがザワークラウト

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【本】大どろぼうホッツェンプロッツ(オトフリート・プロイスラー、偕成社文庫)
 大どろぼうホッツェンプロッツを捕まえようとしたカスパールと友人のゼッペル、警察官アロイス・ディンペルモーザー氏。逆にホッツェンプロッツに囚われたカスパール達ははゼッペルは悪い魔法使い”ペトロジリウス・ツワッケルマン”をやっつけたり、カエルに変えられて7年間も閉じ込められていた妖精アマリリスを助けたり、最後はホッツェンプロッツを逮捕したりと大活躍!
 留置場所からホッツェンプロッツが脱走し、カスパール達に復讐する”大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる”、改心したホッツェンプロッツのためにカスパール達が奮闘する”大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる”とあわせた三部作。
【料理】ソーセージ&ザワークラウト
 ともにドイツを代表する料理。ソーセージは日本では要冷蔵のものが多いですが、湯煮や燻製してあるので保存食なのが多いそうです。ザワークラウトはドイツのキャベツの漬物。”すっぱいキャベツ”という意味ですが、これは酢漬けではなくて乳酸発酵によるものだそうです。

 さて、”大どろぼうホッツェンプロッツ”ですが思いのほか大人が読んでも面白かったんですね。思わず3冊一気読みしました。
 ボスキャラの”ホッツェンプロッツ”は大どろぼう。”あなたの心”なんかは盗みませんが、カスパールのおばあさんからコーヒーひきを強奪したり(以外のせこい?)、カスパールとゼッペルを捕まえて召使にしたり、魔法使いツワッケルマンに売りとばしたり。そんなホッツェンプロッツを捕まえるためにカスパールは友人のゼッペルと協力して知恵を絞って対決するワクワク感! それに、ちょっと間抜けな巡査部長”アロイス・ディンペルモーザー氏”、美しい妖精”アマリリス”に千里眼師の”シュロッターベック夫人”、魔法の失敗でワニの姿になっているダックスフンドの”バスティ”と魅力的なキャラが満載!! 大人た読んでもそうなんだから、子供ゴゴロに楽しかったんでしょうね

 で、もうひとつのワクワクがこの本、けっこうたくさんドイツの料理が出てるんですな。お嬢様方がこの本を読んでたのは1970年代の後半か80年代の前半を推定されますので(そこ、年齢計算しないように!)、ドイツ料理なんて子供には珍しかったんじゃないでしょうか? 今見たくドイツ料理をアテにビールを呑んだくれていなかったはずですし。ですから、この本を読んでドイツ料理に憧れたんじゃないかな~~
 登場する主だった料理はこんなの

〔焼きソーセージとザワークラウト〕
 ホッツェンプロッツがカスパールのおばあさんの家に押し入って食べたのがこれ
 写真のようにザワークラウトは付け合わせに添えるものらしく、おばあさんも最初に出す時にはソーセージ1本にザワークラウトひとさじのっけてますが、ホッツェンプロッツはひと鍋まるごと食べています。いかにお腹がすいてそうとはいえ、そんなにがばがば食べるものではなさそう?

〔マッシュポテト〕
〔じゃがいもだんごをタマネギソースにひたしたの〕

 お嬢様のツボだった悪い魔法使い”ツワッケルマン”が食したのがじゃがいも
 じゃがいもの皮をむいて湯がいて潰したのがマッシュポテトで、これに小麦粉を混ぜて丸めたものがじゃがいもだんごです
 ツワッケルマンがゼッペルを召使にしたのは、なぜだか魔法でジャガイモの皮むきができないからという理由から。確かにじゃがいもの皮むきってけっこうたいへんです

〔タマネギ、ベーコン、ニンニクどっさりの炒め物〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルにふるまったもの。カスパールのおばあさんが作る料理を上回るごちそうとはカスパールの弁。考えてみると、どろぼうの森で一人暮らしのホッツェンプロッツですから自炊派のはず。腕前もそうとうなもののようです

〔太ったガチョウの丸焼〕
 ホッツェンプロッツが捕まえてきて、毛をむしって串刺しにして丸焼にしたの。美味しそう!
 ドイツではガチョウの丸焼ってのはクリスマス料理だそうです。

〔ロートカッペのスープ〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルを拉致して帰る途中で見つけたロートカッペ(食用キノコ)を使ったスープ。犯行中にキノコ狩りをするとは意外に余裕かましてます。ロートカッペは毒キノコのクナルピルツに似ているので注意が必要。
 とはいっても、ロートカッペもクナルピルツもググってもそれらしいのありませんでした。どんなキノコなんだろ?

〔紅茶とパンにソーセージをはさんだの〕
 シュロッターベック夫人がカスパールとゼッペルをもてなすのにだしたの
 食べざかりの子供相手なので、けっこうガッツリ系?

〔塩漬けのキュウリ〕
 菜食主義のダックスフンド・ワニのバスティの好物がこれ。日本のキュウリの浅漬けみたいなもんでしょうか? 制服を盗まれたアロイス・ディンペルモーザー氏が移動するのに八百屋から借りてきたキュウリの漬物樽にはいるって話が出てますが、わりとありふれてんですかね、キュウリの漬物って。

〔生クリームのかかったプラムケーキ〕
 カスパールのおばあさんがカスパールとゼッペルのための作ってくれたお菓子
 クックパッドを見てるとドイツ風はプラム(プルーン)を使ったちょっと固めのケーキみたいです

ウイキョウ入りソーセージに、外側はスイスチーズ&内側酢漬けニシン巻きの味のするカボチャ、、シュトロイゼルクーヘンチョコレートドーナッツといっかお菓子、ハタンキョウのお酒ポンスなどおいしそうなのてんこ盛り!(*5)

 しかもまた、悪役たちの食べっぷりが見事なことといったら! ホッツェンプロッツは焼きソーセージ9本と鍋いっぱいザワークラウトとかガチョウの丸焼とか。レシピを見てるとガチョウって5~6Kgぐらいあるんで一人で食べるとけっこうな量
 ツワッケルマンは昼はマッシュポテト7皿、夜は六ダース半のじゃがいもだんご。こんだけ食べるならバケツ単位で皮むきもいるんでしょうね。まったくこの魔法使いはどんだげジャガイモ好きやネン!

 幼少のころに本書を読んだことで、お嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします!

 今回は料理ネタメインでしたが、お話自体もとっても面白い本。子供のみならず大人の方もぜひどうぞ


《脚注》
(*1)フリューリングスフェスト
 ドイツで開催される”春祭り”。”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。これが秋になると”オクトーバーフェスト(10月の祭り)”になって、”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。要は呑めりゃいいんです、呑めりゃ!
(*2)ウイキョウ入りソーセージに~
ウイキョウ:別名フェンネル。ピクルスなどに入れる甘い香りのするハーブ
シュトロイゼルクーヘン:表面がそぼろ状(シュトロイゼル)になっているケーキ
ハタンキョウ:別名アーモンド調べたらちゃんとレシピもありました。
ポンス:ラム酒にレモン、砂糖を混ぜた熱い飲み物

このご時世”PAC-3”のネタで書いてお咎めなしってのは日本はいい国なんでしょうね(PAC-3/「シン・ゴジラ」私はこう読む/空飛ぶ広報室)

 ども、自衛隊のメカニズムは好きですが、戦争は嫌いなおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、ア○リカと北○鮮の間がきな臭くなってます。言葉の応酬がますます過激になってきて、方やグアム周辺へ弾道ミサイルを4発ぶっぱなす用意があるとゆーとるわ、方や核攻撃をちらつかせたことをゆーとるわ。まあ言ってるのが小学生のガキ大将同士のケンカならまだしも、やってるのが核保有国のトップ同士、しかも方っぽがこの前までなら止める立場の先生がやってんだからなぁ
 で、こちらニッポンは”島根県、広島県、高知県の上空を通過する計画がある”ってことで”PAC-3”を島根、広島、高知、愛媛の陸上自衛隊の駐屯地に移動して迎撃体制を整えることに。国防上、やるべきことはやってるんでしょうが、なんだかこの手の話があったな~~~
 ということで、今回ご紹介するのは、元国防大臣が語る配備計画の問題”「シン・ゴジラ」私はこう読む”とPAC-3移送ネタの”空飛ぶ広報室”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。
海上自衛隊の”ヨコスカサマーフェスタ(*1)”にて(2010年、2016年)

【道具】PAC-3
 ややこしいんですが、PAC-3って”ペトリオットミサイル”そのものの”PAC-3弾”と、”PAC-3弾”を発射するためのペトリオットミサイル発射システム”PAC-3形態”ってのがあるんだそうです。”PAC-3形態”はトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はペトリオット発射中隊、10台以上の車両(ミサイル発射機トレーラー、電源車輌等)で構成されてます。

PAC-3の解説パネル (2016年撮影)

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発射機(Launching Station,LS) (2016年撮影)
 PAC-3等のペトリオットミサイルを最大16発発車する装置
 テレビとかで”PAC-3”というと出てくるのがこの車両

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レーダー装置(Radar Set、RS) (2010年撮影)
 多機能フェーズド・アレイ・レーダーを装備し目標の捜索、発見、追尾、識別及びペトリオットミサイルの誘導を行う装置

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発電機(Electric Power Plant、EPP) (2010年撮影)
 ECS及びRSに電力を供給する機械。トラックに車載したままでも運用可能

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 写真はないですが、その他射撃管制装置(Engagement Control Station, ECS)、情報調整装置(Information Coordination Central, ICC)、無線中継装置(Communication Relay Group, CRG)なんてのもあるようです。

【本】「シン・ゴジラ」私はこう読む(日経ビジネス、日経BP社)
 2016年に公開された”シン・ゴジラ(*2)”をネタに、ビジネス情報中心の(はず)の日経BP社が”日経ビジネスオンライン”で連載された各界のキーマンへのインタビューなどをまとめた本石破元防衛大臣、枝野元内閣官房長官、梅澤TAカーニー日本法人会長などそうそうたる顔ぶれ。何を考えてんだか日経BP社?!
【DVD】空飛ぶ広報室(原作 有川浩、主演 新垣結衣、綾野剛)
 いきすぎた報道姿勢が元で報道から外されたディレクター”稲葉リカ”はTV番組”働く制服シリーズ”の作成のために防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室=”空飛ぶ広報室”を訪れる。そこには”詐欺師 鷺坂”の異名を持つ鷺坂室長以下、個性あふれる?面々が。そしてリカの担当になったのは交通事故でパイロットの道を断たれた”空井大祐”だった。
 自衛隊員という実態があまり知られていない職業の中でもさらにマイナーな広報室(失礼!)を舞台にした非戦闘系ラブコメ。2013年にTBSでドラマ化。主演は新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵。


 当然のことですが、あらゆる兵器には物理的な限界があります。ミサイルには射程距離があり、戦車には最高時速があり、飛行機には航続処理があり。また量的な限界ってのもあります。予算が無限ではなく、人的教育には時間がかかり、工場の生産力の制限がある以上、兵力や機器を装備する量にはおのずと上限値が(少なくとも短期的には)設定されます。

 てなことを踏まえて”「シン・ゴジラ」私はこう読む”の石破元防衛大臣の発言です。ゴジラが上陸して東京への侵攻を食い止めるために多摩川河川敷に最新鋭の戦車がズラーッと並んべて迎撃するってシーンがあるんですが、これに対して

  あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね
  本州にはあんな数の戦車がないんですけどね
  日本では、最新鋭の戦車はだいたい北海道に配備してある

   (中略)
  北海道から戦車が駆けつける頃には、みんな終わっている

 なんで北海道に戦車が配備されてるかというと、ロシアが攻めてきて北海道内で戦車同士でドンパチやるって想定だからだそうです。この想定にリアリティがあるんかどうかはわかりませんが、要はある戦略思想に基づいてリソースを配置するってことです。
 で、今回みたく島根、広島、高知の上空をミサイルが通過するってことになると、そこにPAC-3を移動して防空体制を引くってことになるわけです。

 まあ、書くのは簡単ですがいざ移動するとなると簡単ではないみたい。”空飛ぶ広報室”の第五話で”パトリオット部隊の展開訓練(*3)”て話がありました。これは入間基地から武山分屯基地、習志野分屯基地から入間基地へそれぞれの高射隊が移動するって訓練をマスコミに公開するって内容。
 航空自衛隊の全面協力ってことで、防衛省航空幕僚監部やら各基地やらのロケで各装備がバンバンでてきてわりとマジで作っている作品ですが、それでも移送されてるのメインって発射機なんですな。TVのニュースもそんな感じだったし。これだけ見てると発射機だけ持っていきゃよさそうなんですが、実際は機材をいっぱい持ってってそれを動かす人も移動しなきゃなんなさそう。なんせ超爆発物なんだからテロ対策やなんやらもやんなきゃいけなさそうだし。つまり、素人目に見てもほいほいお出かけできるシロモノじゃなさそうってコトです。
 それだけやってもパトリオットミサイルの有効射程距離が20~30kmってんですから、有効性を求めるにはしこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・(*4)

 で、何を言いたいかとゆ~と、日本ってないい国ですな~~ってこと。
 広報の一環とはいえ基地の公開があって、最新鋭のPAC-3の展示があって写真撮り放題。こうやって写真をブロクにのっけてもお咎めうけることなさそうだし。テレビはテレビで自衛隊の航空機なんぞ出っぱなしだし・・・ あまつさえ元防衛大臣がゴジラネタにひっかけて国防上の問題点を語っても問題にならないって、けっこういい国だと思いませんか? このへんの話題って世が世なら国家機密ですぜ!(*5)

 改めて言いますが、私は自衛隊のメカニズムが好きなだけで、戦争はやっちゃいけないと思ってます。核兵器のみならず兵器なんてのは理屈の上での抑止力としては成り立つんかもしれませんが撃っちまったら終わりです。まあ、こんなことぐらいチキンレースやってる人はわかっちゃいると思いたいんですがねぇ

《脚注》
(*1)ヨコスカサマーフェスタ
 海上自衛隊横須賀地方総監部で開催される基地開放のイベント。毎年8月の第一土曜日の”よこすか開国祭”に合わせて開催されます。2017年度開催は8月5日(土)。この日は米海軍横須賀基地にて”ヨコスカフレンドシップデー”も開催されて軍艦乗船もできるとあって、この手のんが大好きなオタクが朝から群れております。私は違いますが・・
(*2)シン・ゴジラ(総監督 庵野秀明、監督 樋口真嗣、東宝)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明と”ローレライ”、”日本沈没(2006年版)”の樋口真嗣によるSFファン注目のゴジラ映画。2016年公開
 ゴジラ登場にあたふたする政治とか、超科学兵器(オキシジェン・デストロイヤーとか)なんぞ登場せず、自衛隊ががんばってゴジラを倒すこだわりなどSFゴコロをくすぐる名作です。
(*3)パトリオット部隊の展開訓練
 ミサイルの愛称”Patriot”は”Phased array Tracking Radar to Intercept on Target(目標物迎撃用追跡位相配列レーダー)”の略。発音は”ペイトリオット”に近いですが、マスコミは”パトリオット”、政府や自衛隊は”ペトリオット”を使っています(wikipediaより)。ですんで、本ブログ内で混在しているのは出典に忠実なだけで間違いではないです、はい
 ちなみにPAC3だったりPAC-3だったり、あぁややこしい
(*4)しこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・
 仮に島根県を通る山陰本線の米子駅~益田駅間に一列で配備したとして、この距離が192Kmあるんで、射程距離20km(直径で40km)で割ると5単位必要。これをメッシュでやったら何単位ありゃ足りるんでしょうね??
(*5)世が世なら国家機密ですぜ!
 まあ、地図や天気予報が機密情報だった時代もあるみたいなんで何が機密って難しいんですけンドね

どうせ何時かは執行される自分の葬式なんだから、それまでの猶予期間を旅でもするかってこの本読んで考えちゃいました(深夜特急/サテー)

 ども、歳を取るといたって出不精になっているおぢさん、たいちろ~です。
 かつて、有吉先生が猿岩石だった頃、”進め!電波少年(*1)”というテレビ番組で”ユーラシア大陸横断ヒッチハイク”という企画をやっておりました。これは当時売れていない若手お笑いコンビ猿岩石(有吉弘行、森脇和成)のふたりが香港からロンドンまでヒッチハイクで旅行するというもの。大して真面目に見てたわけではないですが、いかに売れていないとはいえ、けっこうきつい事やらせんだな~と思った記憶があります。
 ふと思ったんですが、昔はこういったヒッチハイクというか貧乏旅行みたいな本とかけっこうあったような気がすんですが。私がその手の本を読まなくなっただけなのか、実際世の中でも少なくなってんだか?
 ということで、今回ご紹介するのはそんな貧乏旅行系の本、ちょっと昔の話ですが”深夜特急”でありますあ


写真はたいちろ~さんの撮影。
シンガポール料理の”海南鶏飯(HAINAN CHI-FAN)の”サテ”です

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【本】深夜特急(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。といっても私が読んでる2巻ではまだデリーどころかマレー半島あたりでうろうろしてますが。まあ、こういう無計画さがこの手の旅行の醍醐味なんでしょう。
 1974年ごろの旅行なので事情がだいぶん違うんでしょうが、今読んでも充分面白いです。
【料理】サテー(Sate)
 マレーシア、シンガポールなど東南アジア諸国で食される串焼き料理
 本書では”マレー風焼き鳥といった趣”と記されていますが、他の肉でもあり。海南鶏飯では鳥と豚のセットでした。
 ほんのりとしたカレーの香りのする小ぶりの鳥肉や豚肉に甘辛ピーナッツソースをつけて食べるというもの。ピーナッツソースは日本だと肉味噌に近い食感でしょうか。美味しゅうございました。


 沢木耕太郎の経歴ってのが大概で、横浜国立大学経済学部卒業で富士銀行入行が決まっていたのに大学紛争で卒業が遅れ初日出社の日に”雨のせい”という理由で退社(企業名はwikipediaより)。就職もせずぶらぶらしていたのを見かねた大学のゼミの教官が雑誌社を紹介してくれたのをきっかけにルポライターに。仕事は増えてきたものの、こなしきれなくなって、”間もなく外国に行くので仕事が受けられない”と苦し紛れに嘘をつき。これもある人物の”男は26歳までに一度は日本から出た方がいい”という言葉から。
 ここまででも凄いですが、さらに輪をかけてすごいのがこのおかん。家にまで外国旅行の問い合わせ電話がかかってくるに及んで息子に申し渡した一言がこれ

  私はもう弁解したり嘘をついたりするのはいやだから
  とにかく日本を出ていってくれないか、
  どこでもいいから外国とやらに行ってくれないか・・・

 本書ではサラッと書いてますが、これってすごい発言ですぜ! 一流大学を卒業して一流企業に就職するハズだった息子が、ブラブラしたあげくルポライターになったのに、息子の弁護をするのがイヤだからどこでもいいから外国に行って来いって、凡百の親がはける発言じゃないって! 普通の親なら”関係にワビ入れてマジメに働け!”でしょ?
 まあ、それで出ていく息子ってのも思い切りがいいのは確かですが・・・

 で、一方息子の方。シンガポールのサテー屋でニュージーランドから大学を中退して世界一周に出かけた若者二人にいろいろ蘊蓄たれることに。そこで何気なく聞いた”どのくらいの期間でまわるつもり?”の答え”三年か、四年”にショックを受けることに。”旅行から帰ったらどうするつもり?”と聞くと暗い顔つきで”わからない”と・・・

 沢木耕太郎のモノローグ

  あるいは、彼らも人生における執行猶予の時間が欲しくて旅に出たのかもしれない
  だが、旅に出たからといって何かが見つかると決まったものでもない
  まして、帰ってからのことなど予測できるはずもない
  わからない。それ以外に答えられるはずがなかったのだ
  そして、その状況は私にも大して変わらないものだった
  わからない。すべてがわからない
  しかし人には、わからないからこそ出ていくという場合もあるはずなのだ
  少なくとも、私が日本を出てきたことのなかには、
  何かが決まり、決められてしまうことへの恐怖ばかりではなく
  不分明な自分の未来に躙り寄っていこうという勇気も
  ほんの僅かながらあったのではないかという気がするのだ・・・

 引用が長くなってすいません。”執行猶予”って言葉がココロに引っかかったモンで
に登場する”モラトリアム”や”ニート”のようになんだかオブラードにつつんだような語感とは違って(*3)、もっとストレートで切迫感のある状態っぽくって。
 雑駁ないい方ながら”モラトリアム”が大人になることへの拒絶であり、”ニート”が通学も就業もしていない状態(*3)とまったく同じではないですが、時代を経るほど”働たらかない”ということへの意識が自覚的でなくなっていくような
 少なくとも本書では”何かが決まり、決められてしまうこと”=”執行”をされてしまうことへの恐怖を自覚してるようだし、”未来に躙り寄っていこうという勇気”をもって今の状況を選択している自覚があるようだし。

 まあ、なんとなくですが、1970~80年代には猶予期間にお金ももたずに海外に行くってアクティブさがあったし、もうちょっと前だとヒッピームーブメント(*4)みたいな政治的メッセージみたいのもあったようですし(さすがにこの時代は良く知らんですが・・) つまり”外向的”な若者イメージがあったんじゃないかと
 それに比べて今だと”引きこもり”が増えていますみたいな”内向的”なイメージが前面にでているような(まあ、社会問題化しているのはたしかですが)
 ”執行猶予”ってのは必ずどこかで”執行”されるわけで、別に執行されなくなる訳じゃない。であれば、執行までの時間をどう作るか、使うかが重要なんだろ~な~と思う訳であります。

 なんでこんなこと考えるかというと、定年を指折り待ってる歳になってくっと、その後の人生って自分の葬式までの執行猶予期間かな~~とこの本を読んで思っちゃったからかも。どうせ何時かは執行される葬式なんだから、定年したあとにできる自由な時間に旅暮らしなんかも悪くないかもなんて考えちゃいます。ということで、キャンピングカーに乗って全国旅に出ている人の本なんかも読みだしちゃって。
 あとは残った住宅ローンをどう片付けるだけか・・・

《脚注》
(*1)進め!電波少年
 1992年から98年に日本テレビ系で放送されたテレビ番組。アポなしでいろんなとこ押し掛けてムチャぶりなお願いするという企画などで当時はけっこう人気あったような。上記のユーラシア大陸横断ヒッチハイクは1996年の放映だそうです。
 しかしこの企画もももう20年以上前なんだな~~
(*2)”モラトリアム”や”ニート”のように~
 ”モラトリアム”は1978年の”モラトリアム人間の時代(小此木啓吾、中公文庫)、)の”ニート”は2004年の”ニート―フリーターでもなく失業者でもなく(玄田有史、曲沼美恵 幻冬舎文庫)”が出始めだとか(wikipediaより)。
(*3)”ニート”が通学も就業もしていない状態
 誤解のないように補足しますが、”ニート”は”15〜34歳の非労働力人口の中から、求職活動に至っていない者(専業主婦を除く)”であって、決して労働意欲がないわけではないそうです
(*4)ヒッピームーブメント
 既成の価値観に縛られない生活信条とかベトナム戦争への反対からの徴兵拒否とかがベースにあったようです。

”狼”のイメージってブレ幅が大きいですが、”狼王ロボ”は暴虐の王から夫婦愛まで大ジャンプ?

 ども、子供時代はあんまし本を読んでなかったかもしれないおぢさん、たいちろ~です。
 先日”うちは寿!(*1)”というマンガを読んでたら、”シートン動物記(*2)”の”狼王ロボ”を読んで三人の孫たちが涙するってシーンが出てきました。そういえば、”シートン動物記”って読んでないな~。そういや、本好き小学生の通過儀礼ともいえる”ドリトル先生航海記”も”楽しいムーミン一家”も”ファーブル昆虫記”もみんな読んでないな~~(*3) 対して外に出て遊んでた記憶もないんでいったい何してたんだろう? 寝てばっかいたのかなぁ
 ということで、今回ご紹介するのは反省をこめていいおぢさんになってから読んでみました”シートン動物記”より”狼王ロボ”であります
 

写真はたいちろ~さんの撮影。日比谷公園にある”ルーパロマーナ(ローマの牝狼)像”です

1300066

【本】狼王ロボ(シートン、集英社他)
 巨大な体躯と人間の罠をものともしない狡知にたけたコランポーに君臨する狼の王”ロボ”。白くて美しくロボの妻である牝狼の”ブランカ”。ロボが率いる群れによりコランポー一帯の牧場は多大な被害を受けていた。そんなロボを捕まえるべくシートンはある計画を実行する・・・
 原題は”Lobo, the King of Currumpaw(ロボ、カランポーの王)。
【動物】狼
 ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。
”一匹狼”という言葉があるので単独行動する動物かと思っていましたが、実際は雌雄のペアを中心とした平均4~8頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成し、通常は繁殖するペアが最上位に位置するんだそうです(wikipediaより)


 多くの人にとって”狼”に対するイメージってその精神性のブレ幅が大きい動物ってそうそういないんじゃないかと(*4)。いやいや、”狐”は狡賢いから神の眷属まであるし、猫だって癒しのペットから化けて出るしと他にもいるだろうと反論はありそうです。でも、狼ってのは残虐から、勇猛果敢、慈愛、あるいは夫婦愛まで”精神のありよう”みたいなとこでは真逆に近いとこまで広がっているんじゃないかと

 残虐のイメージの筆頭は童話”赤ずきんちゃん”や”三匹の子豚”。なんせおばあちゃんやら子豚やらなんでも食べちゃうし。勇猛果敢つまり強さの象徴としてはスポーツや軍隊なんかでとく見かけるかと。故横綱”千代の富士”のあだ名が”ウルフ”とか、旧ドイツ海軍の”ウルフパック(群狼作戦)(*5)”とか。慈愛となると、上記の写真にある古代ローマを建国した双子”ロムルス”と”レムス”を育てた牝狼とか(あんまし詳しくは知らんけど)
 まあ、私自身は中学時代に”ウルフガイ・シリーズ(*6)”にはまった口なんで孤高のヒーローってイメージが強いですけどね。

 前置きが長くなりましたが、”夫婦愛”の代表格が今回ご紹介の”狼王ロボ”でしょうか。あらすじを続けます(ネタバレになりますのでご注意ください)

 シートンはボロの群れの足跡を観察することで、ブランカがロボの妻ではないかと考える。そしてまずブランカを捕獲することに成功する。悲しみの咆哮をあげるロボ。復讐に燃え、妻の探索をあきらめきれないロボは、取り乱し仕掛けられた罠にかかってしまう。仲間にも見捨てられ、抵抗するも力つきてしまうロボ。
 捕獲したロボを殺すことをおもいとどまったシートンだった。だが、力を奪われ、自由を奪われ、そして妻を失った悲しみの三重苦の中、老いた狼の王は死んでしまった。ロボの死骸をブランカの死骸のそばに寄り添わせるシートン。ロボを運んだカウボーイは大声で言った

  ほれ、お前はこいつのそばに来たかったんだろう
  これで、また、いっしょってわけだ

なんという名シーン。寿家の三人の孫たちが涙するのも納得です。

 でも、ちょっと待って。前半のロボたちって相当な悪役じゃなかったっけ? 5年間に牛を2000頭以上殺したとか、一晩で羊を250頭殺したとか。しかも遊び半分で。これらをして”狂暴なロボの一隊の暴虐ぶり”って書いてあるし。なんせ”人狼”だの”悪魔と結託している”だのさんざんな言われような王様なはずなんだけどなぁ
 小説だと他人には冷酷だけど家族には優しいキャラだとか、歴史上にもアイヒマンみたく残虐なナチス将校が実は平凡なおぢさんだったりとかあるけど(*7)、ロボやブランカって筋金入りの悪役だったのに、夫婦愛ですべてチャラってのはなぁ・・・

 いかんなぁ、大人になると本の読み方がひねくれてきて。少年のころのあの純粋な魂は失われてしまったんでしょうか・・・
 元からなかったのかもしれませんが

 なにはともあれ”シートン動物記”って面白い本です。私の読んだ集英社版に収録された”灰色グマの伝記”や”サンドヒルの雄ジカ”も良かったし。今更ながらですがお勧めの1冊です。


《脚注》
(*1)うちは寿!(小池恵子、竹書房)
 イケメン大好きなおばあちゃん”寿かめ”さんと、優秀なキャリアウーマンで家事ダメダメな長女”万里(32歳)”、クール&ビューティにして家事万能、時々マニアックな次女”美鶴(17歳)”、元気いっぱい、絵日記が得意な長男”千宏(7歳)”という3人の孫たちがおりなす日常系4コママンガ。
 本エピソードは4巻から。結構お勧めです。
(*2)シートン動物記(シートン、講談社他)
 アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンによる動物物語の総称。
 ”シートン動物記”という名前は日本でつけられた題名で、これに正確に対応する原題はないんだそうです(wikipediaより)。まあ、小学校の図書館に行けば必ずある本だから気にすることないけど
(*3)本好き小学生の通過儀礼ともいえる~
ドリトル先生航海記(岩波少年文庫他)
 アメリカの小説家ヒュー・ロフティングによる”ドリトル先生シリーズ”より
たのしいムーミン一家(講談社)
 フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによる”ムーミンシリーズ”より
ファーブル昆虫記
 フランスの博物学者、作家のジャン・アンリ・ファーブルの代表作
(*4)”狼”に対するイメージって~
 ニホンオオカミに限って言うと1905年に捕獲されたのが確実な情報としては最後のものだそうで、110年以上前の話。つまり、生きている狼を見た人はほとんどいないということです。したがって現在の”狼”のイメージは文学や映画などにより形作られたものかと
(*5)ウルフパック(群狼作戦)
 ドイツ海軍潜水艦隊司令カール・デーニッツ少将により考案された敵輸送船団を攻撃する通商破壊戦術の一つ。偵察機からの情報で輸送艦隊の進行方向を予測し、複数の潜水艦により予測海域にて各艦が包囲陣形を取りこれを撃滅するというもの。
(*6)ウルフガイ・シリーズ(平井和正、 早川書房他)
 名前と裏腹に暴力の渦巻く私立中学 博徳学園に転校した”犬神明”。彼は、満月が近づくと不死となる人狼(狼男)だった。彼を執拗に狙う不良グループのボス”羽黒獰”、そして二人の対立に巻き込まれる美しき教師”青鹿晶子”の運命は・・・
 初期のころのははまって読みましたが、”黄金の少女”以降まだ読んでないなぁ
(*7)アイヒマンみたく
 アドルフ・オットー・アイヒマンはナチスドイツ親衛隊中佐でホロコーストに関与して数百万の人々を強制収容所へ移送する指揮的役割を担った人物。戦後に逮捕されてみると小役人的で、家族を愛する凡人であったことが判明。
 詳しくは”ホロコーストの実行者はサディストではなくノーマルだった。我々と同じようにをどうぞ。

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