小説

生首に関する、とあるミステリーでの考察について(数奇にして模型/生首)

 神奈川県座間市の某殺人事件に触発されてってわけではないんですが、先日読んだ、森博嗣の”数奇にして模型(森博嗣、講談社文庫)”というミステリーに、首の切断に関する考察めいた話が出ています。あらすじをいうと

  模型交換会の会場で首が切断されて持ち去られたモデル女性の死体が発見される
  殺された部屋は密室で、中には大学院生”寺林高司”が昏倒して倒れていた
  時を同じくしてM工業大学の密室では女子大生の死体が発見された
  この事件の容疑者として”寺林高司”の名前が挙がる
  不可能犯罪に見えるこの事件にN大学助教授”犀川創平”と女子大生”西之園萌絵”が挑む・・

といった内容。
 本書の中でキーになっている一つが”何故、首が切断されて持ち去られたのか”という謎。本書の中での考察

〔被害者の身元を分からなくするため〕
 ミステリーの常道ですが、本書の中では否定的。指紋やDNA鑑定があたりまえの昨今。そんなに時間稼ぎにはなんないんではないかと。座間市の某殺人事件でも事件発覚から10日そこそこで警察が特定したと発表してるんで確かに効果は限定的かも。裏付け捜査もやってるはずなので、実際はもっと早くから分かっていたんでしょうし

〔子供と同じ〕
 ”首が欲しかったんでしょう”、”ただ単に首を切り離したかっただけ”という意見。前者については”興味はありますし、やってみたいと思うこともありますね”、後者については”子供が人形の首を引きちぎるのと同じなんじゃないの? 残虐な行為にそもそも理由なんてないと思うな”とも。わからん理屈でもないですが、警察はこれでは納得してくれんでしょうな

〔殺したいほど憎いから〕
 殺したいほど憎いなら顔だって嫌いなはず、そんな人の首を欲しがる感情が生まれるか? ということで、これは否定。理系らしい犀川創平の考察

〔好きでしかたがないから〕
 私は好きだけど、相手からは嫌われている。嫌われることは許せない。殺してしまえば嫌われることもない。抜け殻になった人形としての相手を自分のものとして所有したい、という心理。犀川創平の疑問は”そのあと、どうするのだろう?” そもそも相手が歳をとってしまう前に現状維持で保存したいのなら、ドライフラワーみたいなものだと。
 これに比較的近いのは、オスカー・ワイルドの”サロメ”でしょうか。王女”サロメ”は踊りの礼として王に自分の愛を拒絶した”預言者ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)”の首を所望し、その生首に口づけするという物語です。

  写真はビアズリーによる”サロメ”のイラスト
  おそらく世界で最も有名な”生首”の絵ではないかと

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〔首を切る行為が必要だった〕
 視点を変えて、首が必要だったのではなく”首を切る”という行為のほうに意味かある場合。さらに”首を持ち去る行為”の理由が必要だとも。

 本書の考察以外にも

・殺害の証拠にするもの
 いわゆる”首実検”。戦国時代などで、部下が敵方の首級の身元を大将が判定し論功行賞を決定するために行われたもの。体ごと持って帰るのがたいへだから首だけ。写真も冷蔵車もない時代ですし

・杯の材料
 いわゆる”髑髏杯”。織田信長が、浅井久政らの髑髏に漆を塗って作成したものが有名。はっきり言って悪趣味だと思います。

などでしょうか・・・

 さて、本書での犯人の動機はというと・・・
 それは本書を読んでいただくということで

 別に某事件の犯人の動機がどうしたこうした言うつもりはないんですが、たまたま某事件と本書を読んだのがあまりにもタイミングが合ってたんで書いてみました。ビブリオマニアの業とでもいいましょうか。申し訳ない。

 文末になりますが、被害にあわれた方のご冥福を謹んで祈りします

P.S.
 本書のもう一つのテーマは”型(かた)”と”形(かたち)”。模型は”型”で人形は”形”。

  それも我々の型にはめようとすると理解できない事象だった
  自分で作った”形”でも次の瞬間には壊そうとしている

 ということで、今回はいつもの型と形を変えて書いてみました。どうでしょう

自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと(ナイフを失われた思い出の中に/鶴岡八幡宮)

 ども、心に闇を持つおぢさん、たいちろ~です。
 2016年、17年と平成犯罪史に残るような大事件が立て続けに発生しています。2016年7月には神奈川県相模原市の知的障害者施設で発生した大量殺人事件。19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせたのは戦後では最も犠牲者の多い事件でした。
 2017年は先日神奈川県座間市で発生した連続殺人・死体遺棄事件。男女9人の遺体が見つかったこの事件も連続殺人としては過去最多。前者は知的障害者を後者は自殺願望のある人を対象とするという陰鬱な事件です
 で、ちょっと気になったのが初期の報道におけるイメージの違い。相模原市の大量殺人の容疑者って、当初から”障害者の抹殺”なんていうとんでもない主張をする人物ということが報道されていて、犯行=容疑者像(*1)もなんとなく納得感みたいな空気があったんですが、後者はあんまりこれがなかったようで。たまたま今読んでる本でこの報道で感じたような話がありまして。
 ということで、今回ご紹介するのは犯罪にまつわる記者の目の話”ナイフを失われた思い出の中に”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。鎌倉の鶴岡八幡宮です

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【本】ナイフを失われた思い出の中に(米澤穂信、東京創元社)
 ”ヨヴァノヴィッチ”は妹の友人で今はフリーの”記者”である”大刀洗万智”の元を訪れてきた。彼女は浜倉市で発生した16歳の少年”松山良和”が姪で3歳の少女”松山花凛”を刺殺した事件を取材中で、彼もその取材に同行することになる。目撃者があり逮捕された犯人は犯行を認める手記を残している。一見簡単に見える事件だったが、その真相は・・・
 ”さよなら妖精(*2)”に登場する大刀洗万智を主人公とした短編推理小説集。
 ”真実の10メートル手前(米澤穂信、東京創元社)”に収録
【旅行】鶴岡八幡宮
 本書で事件が発生したのが浜倉市。モデルになっているのは記載の内容から鎌倉市と思われます。松山良和が逮捕されたのが”浜倉八幡宮”で万智はヨヴァノヴィッチに”神殿”と説明しています。神社の建物なので”神殿”っていうのは間違いじゃないんでしょうが、日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・(*3)


 座間市の死体遺棄事件の初期での報道の違和感ってのは”容疑者を知る人”へのインタビューの答えが”普通にあいさつする普通の子”、”おとなしくていい子”といった”善良な普通の知人”だったこと。このような常軌を逸した事件の容疑者が”普通の人”でSNSを使いこなす今ドキの若者だったってことに驚きを感じたのは私だけじゃないと思うんですがどうでしょう?
 宮﨑勤の事件(*4)なんかが代表的な例なんでしょうが、”やっぱりこんな人間がこんな犯罪をするんだ”的な微妙な納得感、露悪的に言うと安心感ってのが社会にあったんじゃないかと。まあ、善良だと思っていた隣人が実は凶悪犯だと思うより、”あいつはヤバそう”と思って防衛に出たほうが精神的に安定できるってのはわからんでもないですが、それはそれで危険なこと。偏見と憎悪がかえって社会的な不安を招いている例は歴史に数多くあります。まあ、現代もそうですが・・・

 で、本書ですが大刀洗万智がこの事件を追いかける理由ってのが、容疑者である松山良和の本棚が社会にさらされ、それが大量でも特別異常なもでなかったにも関わらず、趣味と犯罪が結び付けられて、多くの人嗜虐的な幼児性愛者と信じてしまって、それが殺人の動機の根幹根幹であると考えられていること、それをマスコミがそのように伝えたこと。 事態は松山良和の手記が無加工のまま流されたことによって事態はさらに深刻に。

 大刀洗万智がヨヴァノヴィッチに”記者の仕事は人間の器官の延長か?”という問答をするんですが、ヨヴァノヴィッチが”目、でしょう”という回答に対して大刀洗万智はこんな反論をしています

  目とは、人が見たいと思っているものを見るための器官なのです
  錯覚にまみれ、そこにあるものを映さない。
  それは決して、目という器官の物理的限界によるものではありません
  見たくないものをカットし、見たいように見るからこそ
  そうしたことが起きるのです

だから真実を明らかにするのは”目”の仕事ではないと。だから記者は”目”ではないと。だから、”目”の言い分としてではなく記者は事実は加工されるべきだと。

 念のためいっときますが、だから偏向報道やフェイクニュースがいいと言ってるわけではないですし(そんなのはもってのほかです!)、そもそも偏見を持つなということ自体人間が多かれ少なかれヒューリスティクス(*5)な思考方法をとる以上、まったく排除するのは困難でしょう、たぶん。

 重要なのは、自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと。この事件の真犯人が容疑者だっかたどうかという話ではなく、気をつけないと99人の断罪と1人の冤罪を生み出しかねないな~という自戒をこめて書いてみました。

 先日、朝日新聞の記事で”「理想の貧困」に苦しむリアル当事者”って話が出てましたが、これは自分のイメージにある”理想の貧困”と当事者の状況が合っていないと”お前は貧困じゃない”と批判する”貧困たたき”になっちゃうと。もともとは善意からなのかもしれませんが・・・ うっかりすると自分もこの手の話をやっちゃいかねないので、ちょっと怖くもあります。

 本書は”さよなら妖精”の続編ですが、これだけ読んでも大丈夫。
 ご一読のほどを

《脚注》
(*1)容疑者像
 ”容疑者”は犯罪を犯した容疑があるとして捜査対象になっていてまだ公訴が提起されていない者、法律用語では”被疑者”。起訴された後は”被告人”。
(*2)さよなら妖精(米澤穂信、創元推理文庫)
 1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる(amazon.comより)
(*3)日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・
 私の場合だと”神殿”ってパルテノン神殿あたりをイメージしちゃうんですが・・・
 一般的に神体を安置する社殿は”本殿”、”本堂”あたりでしょうか。鶴岡八幡宮のhpだと本殿を日本語では”本宮(上宮)”、英語だと”Main Shrine(主となる聖なる場所や建物)”になっています。
(*4)宮﨑勤の事件
 1988年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。犯人の宮﨑勤がおたく・ロリコン・ホラーマニアと報道されたことで”オタクバッシング”の元となりました
(*5)ヒューリスティクス
 必ず正しい答えはだせないにしても、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法のこと。答えの正しさは保証しないかわりに、答えを出す時間が少なくできます。行動経済学なんかの本を読むとよく出てきます。

この”解”の冷徹さが”冷たい方程式”なる所以なのかも(冷たい方程式/ニュートンのリンゴの木)

 ども、ランダムな人生を生きているおぢさん、たいちろ~です。
 なんかのSFで読んだんですが、宇宙船であれモビルスーツであれ、宇宙空間を飛ぶ飛翔体ってのは恐っそろしく物理法則に従うんだそうです。宇宙船は推進力を与えない限り、引力とかを勘案すればある時間後の予想到達地点ってのはほぼ算出できるし、無重力状態に見える衛星軌道上でもドックファイトなんかやった日にゃ落っこちると(*1)。
 地上だと空気抵抗やらなんやらでもっとランダムに動くみたいですが、宇宙空間ってのはもっと厳密な方程式に従う世界みたい。ニュートンが万有引力を発見してからこっち、人類は”方程式”の存在を意識せざるを得ないということです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな宇宙空間での冷徹な現実に直面する本”冷たい方程式”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
小石川植物園にあった”ニュートンのリンゴの木”です。

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【本】冷たい方程式(トム・ゴドウィン、ハヤカワ文庫SF)
 災害の薬を待つ人の星まで、パイロット”バートン”一人分の燃料しか積んでいない緊急発進艇(EDS)。その中で若い娘”ミーミア”が密航者として発見された。EDSが星までたどり着ためには彼女を”船外遺棄”するしかない。バードンとミーミアが出した結論は・・・
 SF史に残る名作短編。アンソロジー”冷たい方程式(新版)”に収録
【花】ニュートンのリンゴの木
 ニュートンの生家にあったリンゴの木は、接ぎ木により各国の科学機関に分譲されていますが、小石川植物園の株は、1964年に英国物理学研究所所長サザーランド卿から、日本学士院長 柴田雄次博士に贈られたものです(小石川植物園のHPより抜粋)


 あらすじを兼ねて解くべき方程式を説明すると

・惑星ウォードンで病気が発生し血清がとどかなければ6人が死ぬ
・バートン乗るEDSには一人分の燃料しか積んでいない
・現在のEDSにはミーミアの重量分の燃料がなく、このままだと墜落して2人は死ぬ
・40光年以内にEDSを救出できるクルーザー(宇宙船)はない

この方程式の一般解はというと、星間法規に定められている

  EDS内で発見された密航者は、発見と同時にただちに艇外に遺棄する

というもの。つまり密航者は死を持って償うということです。

 まあ、むさ苦しいオッサン(私みたいな?)だったら速攻遺棄していいかつ~とそういう問題ではないですが、これが美しい少女となるとどうしても”特殊解”がないモンかと考えちゃうわけです。で、本書での密航者はというと二十歳にもならない娘”ミーミア”。ウォードンにいる兄に会いたくて密航を企てたと。規則を破っているという自覚はあるものの、安全な地球育ちの彼女はそれが死に直結するような重要なこととは考えていません。そこにあるのは

  燃料の量hは、質量mプラスxのEDSを
  安全に目的地に運ぶ推力を与えることができない

という”冷たい方程式”だけ。
 この状況の中で、バートンたちはミーミアを救う手立てを検討するんですが、その方程式の”解”が何だったかというのはぜひ本書を読んでみてください。

 解説で編者の伊藤典夫も書いていますが、日本では”方程式もの”といれるジャンルができたほど魅力的なテーマで私もいくつか読んだ記憶があるんですが、まさか本家本元の”解”がこんなんだったのはな~とちょっと驚き。でもこの”解”の冷徹さが”冷たい方程式”なる所以なのかも。
 名作です。ぜひご一読のほどを

 余談ですが、”冷たい方程式”は”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(*1)”という本でSFマニアの空さんが話題にしてて、今回読んでみたんですが、他にもいろんな本の話題が出てきます。その中の1冊に”それどんな商品だよ! 本当にあったへんな商標(*2)”ってのがありました。変なネーミングを扱った本なんですが、まだ読んでなかったのでamazonで調べてみると”この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています”で”冷たい方程式”のみならず、アニメの”RWBY”や、SFの”ゲームウォーズ”が!(*3) ネーミングの話をSFではコンテンツベースのフィルタリング(*4)で引っかかるはずはないんで、きっと”BISビブリオバトル部 4”を読んだ人が、この本に関連したビックデータを元に”協調フィルタリング(*5)”とかを使ってクールな方程式で抽出された結果なんでしょうね、きっと

《脚注》
(*1)君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。集まる本好きが集まるクラブ。ここに集う若者たちの日常を描いた本好きイチオシの小説です。
(*2)それどんな商品だよ! 本当にあったへんな商標(友利昴、文庫ぎんが堂)
 特許庁に登録商標として届けられた笑える珍ネーミングを集めた本。まだ読んでませんが、なんだかおもしろそう
(*3)アニメの”RWBY”や、SFの”ゲームウォーズ”が!
 RWBY:監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース
 ゲームウォーズ:アーネスト・クライン、SBクリエイティブ
(*4)コンテンツベースのフィルタリング
 本の内容や著者などが似ているかどうかを判別して、推薦するものを決めるというやり方
(*5)協調フィルタリング
 多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザと嗜好の類似した他のユーザの情報を用いて自動的に推論を行う方法論(wikipediaより抜粋)
 これを使うと、上記のように関連する本を次々と紹介したり、個人ごとに好みの本を推してくれたりすることが可能になります。

怪物にだって論理は通用します

 ども、最近ミステリー小説読む数が増えてきているおぢさん、たいちろ~です。
 ミステリー界の中には”ノックスの十戒”と呼ばれるお約束が存在します。これは
聖職者にして推理作家でもあった”ロナルド・ノックス”という人が発表した”推理小説を書く際のルール”で、その一つに

  探偵方法に超自然能力を用いてはならない

てのがあります。まあ、超能力で犯人を当てたり、占いで”犯人はお前だ!”やったり、幽霊が出てきて”私を殺したのはこの人です・・ 恨めしや~~”では興ざめというもの。まあ、うまく書けばないわけじゃないですが(*1)正統派ミステリーとは違うかなと
 ただ、これはあくまで普通の人間相手の話で、これが犯人も被害者も、そして探偵も普通の人間じゃなかったら・・・

 ということで、今回ご紹介するのはそんな怪物を専門に扱う探偵チームのお話”アンデッドガール・マーダーファルス”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所のペットショップでみかけた鳥かごです

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【本】アンデッドガール・マーダーファルス(青崎有吾、講談社タイガ)
 齢962歳、不死の美少女”輪堂鴉夜(りんどうあや)”、半人半鬼の”鬼殺し”こと”真打津軽(しんうちつがる)”、薙刀銃をあやつるクールなメイドさん”馳井静句(はせいしずく)”の3人による”怪物専門の探偵”チームの活躍を描く推理小説シリーズ。いや、マジで。
【道具】鳥かご
 文字どおり鳥を飼うかご。たまに生首が入ってたりします・・・

 さて、犯人や被害者が人間ならざる能力の持ち主だったら、”ノックスの十戒”よろしく通常の推理小説は成立しません。なぜならテレポーターに密室は必要ないですし、タイムリーパーにアリバイ工作は無意味です(*2)。とはいっても、万能ではないんでいろいろ制約条件を設定することで推理小説にすることもできはしそう。同じく、無敵の怪物といってもそれはそれでいろいろ制約条件ってのがあります。
 たとえば、怪物の王”吸血鬼”もしかり。強靭な肉体の持ち主で、心臓に杭を打たれても死なないし、腕がちぎれても2日で再生する。ただし、太陽は苦手で銀や聖水は触れないし、銀の杭で貫かれれば死ぬ(本書での設定)。ここんとこがミソで、じゃあこの怪物が殺されてたらその犯行は? ってのが第一章”吸血鬼”のお話。

 人類と共存を図ろうとする”人類親和派”の吸血鬼”ハンナ”が何者かに殺され、夫であるゴダール卿が犯人を捜すために”怪物専門の探偵”である輪堂鴉夜達を雇うってのがあらすじ。ハンナは杭で殺され、聖水をかけられて死んでいるのが発見されるんですが、凶器と思われる銀の杭は屋敷内で発見されます。外部からの犯行が難し状況で、屋敷内の人間の犯行とも思われにくく、銀や聖水を忌み嫌うい吸血鬼の犯罪とも考えにくく・・
 一種の不可能犯罪に近い状況で輪堂鴉夜が下した推理はなんだってのがこのお話の面白い所。怪物でなければ起りえないHowdunit(ハウダニット)つまり、”どのように犯罪を成し遂げたのか”がすごいオチなんですな。なにがすごいって”怪物”の特性あるいは制約条件をクリアしつつ、実に論理的というか
 第二章の”人造人間”で、グリ警部と輪堂鴉夜が密室の中で発見された首なし死体の謎を解明する時の会話

  グリ警部:なるほど、これがあたなの捜査法というわけですか
       怪物を人間の世界に引きずり下ろし、論理に当てはめる
  輪堂鴉夜:別に引きずり下ろしてなんかいませんよ
       怪物にだって論理は通用します

 つまり怪物であっても、人間であっても従うべき論理は同じ。ただ従う前提条件が違っているだけだと。でも、考えようによっちゃこのひねり方って普通の推理小説より書くの難しいんじゃないか??

 で、この犯人を追いつめる輪堂鴉夜ご一行様ですが、この人たちもまたユニーク。バディーもの、いわゆるホームズ+ワトソンみたいなのの頭脳労働と肉体労働の役割分担って意外にまちまちなんですが、まったく肉体労働しかしないってちょっと珍しいかも。アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)の代表作”隅の老人(*3)”だって多少は肉体労働はやってるし、頭脳派探偵のシャーロック・ホームズだってフェンシングやボクシングができるなんていう武道派の面もあります。二人で一人の仮面ライダー探偵”仮面ライダーW(*4)”だって、肉体労働=翔太郎、頭脳労働=フィリップの組み合わせですが、フィリップもまったく肉体労働やってないってことないです。まあ、私の読んだ中でほんとに体を動かさないってのは”リンカーン・ライム(*5)”ぐらいでしょうか
 輪堂鴉夜というとホントに肉体労働をまったくしないという完全”頭脳労働”オンリー。なんたって、現場に行っても歩きもしない。闘うなんてもってのほか。本人曰く

  なにしろ、頭を使うこと以外できない体でしてね

 でもって、肉体労働担当が真打津軽。”鬼殺し”という芸をやっていただけあってバリバリの武道派なんですが、けっこうお調子モノで寒いギャクをかます人。
 真打津軽が”ボケ”、輪堂鴉夜が”ツッコミ”でちょくちょく二人で漫才を。頭脳労働と肉体労働の分業体制ってのもあって、最初は”染之助・染太郎か!(*6)”とつっこんじゃいましたよ

  津軽は肉体労働、鴉夜は頭脳労働、これでギャラは同じなの

とかね。
 少し読み進むと意外や意外、おいしいとこ持ってってるのがクールメイドの馳井静句。寡黙ながら鴉夜の指示で津軽をブルボッコするし、敵への戦闘ではけっこうな大活躍。第四章ではかなかなに艶っぽいシーンも出てきますし。普段は目立たないけどやるときゃやるタイプです。
 この三人見てるとまさにミステリー界の”レツゴー三匹(*7)”ですなぁ。寒いギャグでボケる津軽に、辛辣なツッコの鴉夜、締めるとこは締めるフリの静句とか。なかなか秀逸なキャラ設定です。

 ”アンデッドガール・マーダーファルス”はモンスターとか登場するんでホラーモノっぽいですが、実はけっこう本格モノの推理小説かも。面白い本です。ぜひご一度のほどを。

《脚注》
(*1)うまく書けばないわけじゃないですが
 ”鎌倉ものがたり(西岸良平、双葉社)”には”恐山妖介”という降霊術を使って事件を解決する鎌倉の刑事さんが登場します。ただ、この作品には一色正和というミステリー作家がいて、鎌倉という人間と魔物、妖怪と普通に住んでいる土地柄が舞台になっているから成立するお話。ここまでうまくやってくれるとむしろ感心してしまいます
(*2)テレポーターに密室は必要ないですし~
 ”テレポーター”(空間跳躍者)なら密室だろうがなんだろうが侵入できますし、”タイムリーパー”(時間跳躍者)なら、アリバイ工作なんかしなくても任意の時間に移動できるだろうし。
(*3)隅の老人(バロネス・オルツィ、創元推理文庫)
 女性新聞記者のポリー・バートンが喫茶店の隅にすわる老人に事件の話をすると、その老人が事件を解決するという推理小説。アームチェア・ディテクティブの先駆にして代表的な小説です。
(*4)仮面ライダーW
 左 翔太郎とフィリップの二人がUSBメモリみたいのを使って合体するという平成仮面ライダーシリーズ第11作目の作品。子供向けとは思えないミステリマニアも楽しめる番組です。フィリップを演じたのは今をときめく人気俳優”菅田将暉”。しかし、この人がここまで売れるとは思わなんだな~~~
(*5)リンカーン・ライム
 ”リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)”に登場する科学捜査のスペシャリスト。捜査中の事故により左手の人差し指と首から上だけしか動かないという典型的なアームチェア・ディテクティブ。
(*6)染之助・染太郎か!
 かつてお正月の名物だた漫才コンビ”海老一染之助・染太郎”師匠です。傘の上ので枡を回すのが弟の染之助、横ではやし立てるのが兄の染太郎。上記のギャクの元ネタは
  弟は肉体労働、兄は頭脳労働、これでギャラは同じなの
(*7)レツゴー三匹
 ツッコミ役の正児、ボケ役のじゅん、フリ役の長作による昭和を代表するトリオ漫才。そういえば、最近トリオ漫才のビックネームってあんましみないですな。お笑い番組の1組あたりの時間が短くなってるせいですかねぇ・・

本には、人生を変える力がある(君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4/”文豪スレイドックス”ポスター)

 ども、こう見えて(どう見えて?)子供の頃にはあんまし本を読まなかったおぢさん、たいちろ~です。
 人間、誰しも人生にインパクトを与えた本ってのが存在するのではないかと。私の場合は”デビルマン(*1)”でしょうかね。小学校の頃ですが、たぶんはじめて自分おこずかいで買ったマンガじゃなかったかと。こっから本の爆買が始まったような・・・
 活字の本だったら”空とぶ家(*2)”かな(”カールじいさんの空飛ぶ家(*3)”じゃなくて!) 10歳のニッキィ、9歳のリンダ、そしてベンおじさんの3人が、新発明のために浮き上がった家に乗ってジャングルまで飛んでいってしまうお話で、子供向けのSFってとこでしょうか。
 ことほどさように本にはまるってのは教科書に載っているような名作とは限らず、SFだってマンガだってかまわないワケですし、今ならライトノベルだってぜんぜんOKではないかと。
 ということで、今回ご紹介するのはビブリオバトル部で自分の人生を変えた本を紹介するお話”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜市立図書館の巡回展示で飾られていた”文豪スレイドックス”のポスターです

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【本】君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。<驚異の翼(ウィング・オブ・ワンダー)>伏木空、<燃える氷(バーニング・アイス)>埋火武人、<天然の狙撃手(ナチュラル・スナイパー)>輿水銀、<双面の話者(ヤヌス・トーカー)>安土聡、<愛の伝道師(ラブ・ミショナリー)>小金井ミーナ、<科学の魔女(ウイッチ・オブ・サイエンス)>菊地明日香など、本好きが集まるクラブ。空さんに告白してつきあうことになった銀くんですが、それを見ていた武人くんは心落ち着かない様子で・・・
【ポスター】”文豪スレイドックス”ポスター
 ”文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、KADOKAWA)は横浜を舞台に”異能”と呼ばれる超能力を駆使する武装探偵社とポートマフィアの抗争を描くバトルアクションコミック
 このポスターは横浜市立図書館と文豪ストレイドッグスのコラボ企画として作成されたもので、キャッチコピーが

  本には、人生を変える力がある

なかなか粋なことするじゃん、横浜市立図書館!
ちなみに、左が太宰治、中央が中島敦、右が芥川龍之介です


 さて、今回のお話は空をめぐる武人くんと銀くんとの恋愛バトル。空さんは地味キャラながら、SFに喰いつくと話の止まらない超弩級のSFオタク武人くんは祖父の残したお宝SF本を持ちながらノンフィクションしか読まないという超堅物銀くん学園のショタコンのお姉さま方から愛でられる美少年。学園行事のコスプレ大会では”RWBY(*4)”のコスプレをして、ミーナさんから”美少女三人がかりで、男の娘一人に勝てんとは”と、悔しがられています。空さんはお宝SF本目当てに足しげく武人くんちに通って、”武人くんにSFを読ませる!”ことになって、いい雰囲気なのかと思いきや、銀くんの空さんへの交際申し込みで、一気に流れが変わって・・・というのが前巻までのお話。

 今回はみごとヒロイン役に大抜擢?の空さんですが、中学校の時にはいじめにあってたという過去を持つ少女。同じく空の恋を応援する(三角関係を面白がってるだけ?)のミーナさんもハーフや母親のことできついことを言われた過去があり。そんな彼女たちの人生を変えた本がビブリオバトルのイベントで紹介されます

〔空さんの紹介した本”ゲームウォーズ(アーネスト・クライン、SB文庫)〕
 人々が”オアシス”と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいる未来。”オアシス”を運営する億万長者”ジェームズ・ハリデー”が死亡し、遺言か公開される。それは”オアシス内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずる”というものだった・・・
 というのが本書のあらすじ。まだ読んでませんけど
 このオアシスを作ったハリデーって人はガチのオタクで、この宝探しを解くにはビデオゲームからRPG、アニメに至るまで80年代のサブカルの膨大な知識が必要だと。で、主人公のウェイドは社会の最下層の人間で希望なんかもてない高校生ですが、この謎に挑戦していくと。空さんの紹介する話に出てくるだけでも、マクロスにエヴァにメカゴジラにと。ウェイドがミッションクリアで手に入れるのが実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”(*5)ってんですから、どんだけやねん!!

 こんだけ読んだらとんでもないバカ話に聞こえますが、でも、空さにとっては”あきらめずに戦い続けたら、きっと未来を手にできる”という本書のメッセージが、死んでしまいたいぐらい苦しい状況から救ってくれたと

  確かにこれは荒唐無稽なSFです。オタクの夢です。願望充足です
  でも、未来への希望が詰まっています
  だから、今も苦しんでいる人たちに、
  この小説を読んで、希望を持ってほしいと願います。
  あきらめず、希望を持ってほしいと。
  生きていればいつか、チャンスが訪れるから・・・

〔ミーナさんの紹介した本”ラノベ部(平坂 読、MF文庫)〕
 とある高校にある軽小説部、ライトノベルを愛好するクラブを舞台にした日常系ライトノベル、らしいです。まだ読んでませんけど
 本書の登場人物にボーイズラブ(BL)大好きな腐女子がいて、これに興味を持ったミーナさんがBLに手を出してずぶずぶどころか”垂直にストーン”とBLにハマリましてっと
 上記のようにミーナさんも人と違うことでつらかった過去があるんですが、BLを読むことで”自由”を知った

  でもね、BLを知って変わりました。自由、というものを知りました
  男が男と愛し合ったってかまわないじゃないか。
  そんなマンガや小説を好きになったってかまわないじゃないか
  それどころか、”私はBLが好きだ”って胸を張って開き直ったってかまわない
  素晴らしい世界じゃないか。
  そうだ、他人と違ったっていいんだって--それ以来、人生が少し楽になりましたね

”いきなりそっちに行きますか?!”感はありますが、いいじゃないですか、それで人生が楽になるなら

 まあ、ライトノベルで人生が変わっちゃったってぜんぜんいいんですが、ただな~、最近のライトノベルって全然軽く(light)ないんだよな~。本書で空さんが銀くんから借りた”俺の妹がこんなに可愛いわけがない(*6)”で12巻。名前の出てきた”ソードアート・オンライン”で24巻、”はたらく魔王さま!”で19巻。本書では名前出てませんが”境界線上のホライゾン”なんて26巻というボリュームもさることながら、1冊がとってもぶ厚い!(*7) ゼクシィかおまいわ!!(*8)
 空さんが”ラノベでしょ? 1日2冊は読める”と言ってるように、まあ読むほうはなんとかなりそうなんですが、お財布にゃきついですね。空さんは銀くんから”俺妹”を借りる約束してますが、おぢさんにゃそんな知り合いいないですし(貸してくれそうな女子高生がお知り合いなら、そっちのが問題っぽいですが・・・

 本書を読んでると、確かに”本には、人生を変える力がある”っての信じる気になりますね。”ビブリオバトル部”は本好きにはたまらない本です。ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)デビルマン(永井豪、講談社)
 テレビアニメもありましたが、1972~3年に少年マガジンに連載された永井豪の原作のほう。主人公の不動明が親友の飛鳥了の頼みを受けてかつて地球を支配した人類”悪魔”と合体することで人類を救うというお話。当初は美しい裸体の悪魔”シレーヌ”やら居候先の美少女”美樹”ちゃんのお風呂シーンにムフフしてたのが途中から壮大な黙示録の世界に。日本SF・コミック史に残る名作です
(*2)空とぶ家(ウォルター・ホッジス、イラスト 久里洋二、学研プラス)
 ニッキィとリンダは発明好きのベンおじさんの家に遊びに行きました。
 今回のベンおじさんの発明は大型気球用のガス。ちょっとだけ試してみるはずが、うっかりガスが止まらなくなって、家が浮き出しちゃった!!!
 すでに絶版ですので、図書館で探してみてください。名作です
(*3)カールじいさんの空飛ぶ家
(製作総指揮 アンドリュー・スタントン、ピクサー、ウォルトディズニースタジオ)
 頑固者のカールじいさんは、亡き妻エリーとの約束を守るために人生最初で最後の冒険に挑む。それは我が家に風船を大量にくくりつけて家ごと南米に旅にでることだった!
 2009年に公開されたアニメなので私の子供の頃ってことはないです、はい。
(*4)RWBY(監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース)
 異形の生命体”グリム”と人類の戦士”ハンター”との戦いを描くSFバトルアニメ。てか、アメリカ版”プリキュアシリーズ”?(男性も出てますけど)。本書ではヒロインの4人をビブリオバトル部の女性陣がコルプレしてます。現在、DVDで見てますが、けっこう面白い! これはまた別の話で
(*5)実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”
 1978年に放映された東映の特撮テレビドラマシリーズ。スーパー戦隊シリーズではないものの”ジャッカー電撃隊”の放映後に登場し、等身大ヒーロー=スパイダーマン(マーベル・コミック社公認!)が変形する巨大ロボット”レオパルドン”に乗り込んで戦うという、後のスーパー戦隊モノのフォーマットを確立した記念碑的作品いやマジで
 画像を見たい方はこちらをどうぞ
(*6)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(伏見つかさ、イラスト かんざきひろ、電撃文庫)
 勝ち気でかわいいけど”隠れオタク”とその妹や個性的な女性たちに振り回される兄によるコメディらしいです、まだ読んでないんで。電撃文庫の小説で全12巻、コミカライズが電撃コミックスから全4巻、DVD(アニプレックス)が2期16巻、その他スピンオフ多数となかなかのボリューム。作品にはまるとわりとコンプする方なので、うかうか手を出すととんでもないことに・・・
(*7)名前の出てきた”ソードアート・オンライン”~
・ソードアート・オンライン:川原礫、イラスト abec、電撃文庫
・はたらく魔王さま!:和ヶ原聡司、イラスト 029、電撃文庫
・境界線上のホライゾン:川上稔、 イラスト さとやす、電撃文庫
すいません、3作ともまだ読んでません。
しかしまあ、KADOKAWA/アスキー・メディアワークスの本を宣伝してるんだから東京創元社も太っ腹だな~~
(*8)ゼクシィかおまいわ!!
 リクルートが発行している結婚情報誌。とってもぶ厚い。結婚をないがしろにする彼氏を彼女が”ゼクシィの角”で殴るというネタがありますが、とっても痛そうです・・・

ビジネスシーンでも使えそうな”ジャック・リーチャー”の名言 かな?(警鐘/UH-1 ヘリコプター)

 ども、学校で真面目に訓練(勉強)しなかったのであまり出世しなかったおぢさん、たいちろ~です。
 さて、最近”ジャク・リーチャーシリーズ”にはまっています。この小説は元軍の憲兵隊少佐で今は放浪者の”ジャック・リーチャー”がいろんな事件に巻き込まれてそれを解決するハードボイルドな話ですが、軍のメソッドを使って行動するせいかビジネスでも通じそうな名言がけっこう出てきます。”ビジネスも一種の戦争だ”なんて青いことは言いませんが、読んでるとけっこう役に立つというか一度は使ってみたい名言ってのがちらほら。
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第三作”警鐘”から拾った名言集であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。アメリカ軍横田基地のUH-1ヘリコプターです

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【本】警鐘(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ”ジャック・リーチャー”を探しに来た私立探偵が殺された。彼の捜索を依頼したのは元上司で恩人でもある”リオン・ガーバー中将”の娘で、かつて恋心をいだいていた”ミセス・ジェイコブ”こと”ジョディ・ガーバー”であった。二人がヴェトナム戦争中にヘリコプターの墜落で行方不明になった”ヴィクター・ホビー”の生死を調べることになるが、その影に会社の乗っ取りを企む陰謀と国家機密に関わる黒い闇が広がっていた・・・
【乗り物】UH-1 ヘリコプター
 アメリカのベル・エアクラフト社が開発した汎用ヘリコプター。愛称”ヒューイ”。本書は現代(原書は1999年発刊)とヴェトナム戦争(~1975年)の間をいったりきたりするんですが、UH-1は物語のきっかけとなったヴェトナム戦争中の撃墜シーンで登場。この機体は1959年にアメリカ陸軍で採用され、ベトナム戦争でも活用され、モデルチェンジを重ねつつ現在でも自衛隊を始め現役で活躍中という超ロングセラー機。ほんとに軍って物持ちいいですな~~


 さて、ビジネスでも使えそうな名言を

〔当面の仕事に集中しろ〕
 悪漢に待ち伏せされている中、ジョディをオフィスに送り届けるリーチャー。相手があまりに隙だらけなので反撃できそうなんですが・・・ というシーンでの言葉。
 当たり前のようですが、色々仕事をしているとこっちのほうもうまくいきそうだとか目移りしることもままあります。状況しだいなんで絶対ではないんですが”二兎を追うもの一兎も得ず”とも言いますし。

なにごともなめてかかるな、って
 上記の悪漢が思いもよらぬ攻撃を仕掛けてきた時のリーチャーの言葉。優秀な刺客を送り込んでくる可能性を失念したことに対しての反省の弁。”リオンにこのヘマを見られていたら私に失望しただろう”とのこと。”油断大敵”とも言いますし

〔われわれの見るところ、SASですね〕
 捜査のためにかつてヴィクターの同僚だったデヴィット将軍を訪れたリーチャー。そこの基地で門番をしていた軍曹に”将軍はどんな感じの人だ”と質問。で、軍曹の答えがこれ。SASは”Stupid Asshole Sometimes(*1)”の略で日本語だと”ときどき愚かなことをするアホなやつ”。あまりお上品な言葉じゃなさそうですが、リーチャーは”好意的”との評価

  自分をみくださずにきちんと接してくれれば、
  こちらも協力的になれる上官、ということだった

上官たるもの、部下には多少の隙を作っとかないといけないのかも。”優れたリーダーは部下に弱みを見せる”とも言いますし。まぁ、逆も言うんですけンド・・

〔勇気のあるやつは、恐怖心を克服できる男だ。ヴイックは、何も感じない男だった〕
 同じくデヴィット将軍がヴィクター(ヴイック)を評しての言葉。勇気があることと、なにも感じないことば別で、ヴィクターは後者だと。それでも(それゆえ)、ヴィクターって人はヘリのパイロットとしては優秀だったようです。”恐怖は心を殺すもの(*2)”とも言いますし。

〔狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ〕

 同じくデヴィット将軍の言葉。訓練所でトップの成績で卒業した若き日の将軍ですが、実戦ではヴィクターのほうが優秀だったと。ヴィクターは”UH-1 ヒューイ”のパイロットとしてヴェトナム戦争に赴き、実戦に即したやり方を開発してそれが標準操作手順に採用されるほど優れていたとのこと。ヴィクターの優秀さを表すのに使ったのがこの言葉。

  私たちは訓練ですべてを学んだ。言わば極めた。
  だが、じつはあんな訓練はなんの役にも立たなかった
  狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ

で、自分達がそうだったようになんの準備もなく若者たちを戦場に送りたくないと将軍はヘリの養成所の運営やってます。まあ”実戦証明済み(*3)”が重要とも言いますし

〔なぜまちがったなどと考えるな。ただまちがいを正せばよい〕

 拉致されたジョディを助けるために閉じ込められている部屋の前で悩むリーチャーが思い出したリオンの言葉。前作の”キリング・フロアー(*4)”でも、犯人探しや原因分析ななど”そんなことはあとでやればいい”という言葉が出てきますが、どうも陸軍のメソッドは行動第一主義のようです。”First things first(最初にやるべき大切なことは最初に)”とも言いますし

〔一度だけ訊け、どうしても必要なら二度訊け。だがぜったいに三度訊いてはならない〕
 上から続いて部屋に突入したリーチャーが悪漢の部下を捕まえて、”協力するか、死ぬか”を選択させる質問をしたシーン。この言葉はリオンの教えから。二度訊いても抵抗するようなら何度訊いても無駄だから時間を浪費するなということでしょうか? これが敵ならまあ許されるかもしれませんが、部下との間でここまで厳しくやったら、けっこう軋轢ありそうだな~~ ”仏の顔も三度まで”とも言いますし。(仏様は優しいので一回分増量のようです)

〔放浪の最大のよさは、選択肢などいっさいないことを
  幸せな気分で受動的に受け入れることなのだ〕

 リオンに遺産として家を譲られ、ジョディと良い雰囲気になっているリーチャーのモノローグ。このまま、ジョディーと一緒に暮らすか放浪の旅に戻るか逡巡するシーンから。 結局、リーチャーが怪我で入院したこともあって、ラストシーンはジョディーと一つ所に落ち着くような雰囲気ですが、次回作があるってことはやっぱり放浪生活にもどんだろうなぁ

 ということで、次回作は映画の原作にもなった”アウトロー(*5)”に続きます

《脚注》
(*1)Stupid Asshole Sometimes
 ”Stupid”は愚かな、ばかな、”Asshole”は直訳すると”尻の穴”でスラングとしては”嫌な奴”
(*2)恐怖は心を殺すもの
 ”デューン 砂の惑星”(フランク・ハーバート、早川文庫)より
(*3)実戦証明済み
 ”コンバットプルーフ(Combat Proof)”、”バトルプルーフ(Battle Proof)”とも。武器などが実戦で使用され、その性能や信頼性などがカタログスペックどおり(またはそれ以上)であることが証明されること。ビジネス現場で学校の成績が良いからといって、実績が上がるかというとそうとは限んないんでしょう。それ以前に”学校の成績が良かったかどうか”なんて話題がそもそも出てきませんし。
(*4)キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”と女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・ 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)アウトロー(監督 クリストファー・マッカリー、主演 トム・クルーズ、パラマウント)
 ピッツバーグ近郊で起きた銃乱射事件で、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕される。証拠はすべて揃い、事件は解決へ向かうかに見えた。しかしバーは黙秘を続け、「ジャック・リーチャーを呼べ」と紙に書いて要求する・・・
 2012年にトム・クルーズ主演で公開された映画。原作では9作目。

”霊的な祝福付き”の首都大改造計画、ってありでしょうか?(帝都物語/日本橋)

 ども、自分の結婚式はキリスト教ですが、葬式はたぶん仏教になりそうなおぢさん、たいちろ~です。
 おそらく、日本人ってのは世界でも類をみないほど宗教や占い、おまじないに関してよく言えば寛容、悪く言えば無節操な国民性なんじゃないかと思います。
 生まれたら神社にお宮参りに七五三、結婚式はキリスト教、葬式は仏教。正月に初詣に行って、夏にはお盆、秋にはハロウィン(*1)、年末の一大イベントがクリスマス・イブ。神社に行けばおみくじを引くけど、恋愛運は星占い、結婚式や葬式は六曜にこだわるけど、家を買う時は風水云々言い出すし。まあ、バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!(*2)みたいのもありますが。
 こんだけ無節操だと”霊的に祝福された都市計画”なんつ~のも滑稽無糖って訳でもないのかな~なんて。まあ、議会で予算が通るかどうかはビミョ~ですが。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな都市計画から始まるサイキック奇伝小説”帝都物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。東京の日本橋(上)と欄干に飾られている麒麟です。

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【本】帝都物語(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 明治40年、東京を軍事のみなならず霊的にも祝福された都市に改造する、渋沢栄一を中心に秘密裏にプロジェクトが開始された。集められたメンバーは天皇家に使える”土御門一門”、理学博士”寺田寅彦”、平将門の復権を目指す”織田完之”、若き大蔵官僚の宮辰洋一郎”など。そして陸軍からは陰陽道にも通じる”加藤保憲”の姿もあった・・・
 平将門の怨霊により帝都破壊を目論む”加藤保憲”とその野望を阻止すべく立ち向う人々との物語がここから始まる(第一巻”神霊編)
【旅行】日本橋(東京)
 東京都中央区の日本橋川に架かる橋。読み方は”にほんばし”。大阪にも道頓堀川にかかる”日本橋”というのがありますが、これの読み方は”にっぽんばし”。初代は1603年(慶長8年)に徳川家康の全国道路網整備計画によって作られた五街道の起点。そのため、今でも国道1号線を始めとする7つの国道の起点となっています。

 さて、”帝都物語”の第一巻ですがまずは主要キャラクターの登場編。上記以外にも文学者の”幸田露伴”に”森鷗外”、物理学者の”長岡半太郎”、地政学者”カール・ハウスホーファー”など、実在の人物がキャラクター化して話を紡ぐってのは”文豪スレイドックス(*3)”の御先祖様って感じでしょうか?

 本作の悪役といえば”加藤保憲”。あらゆる魔術に精通し、陰陽道を始め暗殺術の蠱毒だの式神使いもよくし、剣も達人。中国語や朝鮮語にも通じてるんだから大陸進出には重宝されたんでしょうな。確かに有能な人のようで登場時には陸軍少尉ですぐに中尉に昇進しています。
 悪者感満載の”加藤保憲”ですが、ちょっと意外だったのはこの人少尉とか中尉ってことで軍隊組織の中では意外と偉くないんですな。態度はLサイズで、大佐ぐらいの感じなんですけど。本を読んでいて困るのが”組織の中での地位”ってのがけっこう分かりにくいことです。これによって組織の中での権力(意志決定への影響力、動員できるリソースなど)がどの程度あるかが決まるンでリアリティが違ってきちゃうんで。調べてみると時代や組織でかなり異なりますが”少尉”だと小隊長(10~50人)、”中尉”だと中隊長(4個小隊相当 200人程度)だそうです。現在の会社組織だと200人の部下がいるならかなりの偉いさんですが・・・ 偉そうな加藤中尉ではありますが、原隊に帰れば中間管理職としていろいろ苦労してんでしょうかねぇ・・・

 さて、第一巻のメインの話は東京を”霊的に祝福された都市”に改造するための基礎設計をするってことです。渋沢栄一をリーダーとするプロジェクトですが、初期段階なんで防災計画の専門家、裏付けとなる財政の担当者、防衛の観点から軍部の関与なんかはわかりますが、これに”霊的”が混じると陰陽道の専門家が入るわ、なぜだか物理学の専門家まで。まあ、こんだけ専門の違うメンツを集めてのプロジェクトだからまとめんの大変だろうな~~ という出だしです

 ところで、平安時代や江戸時代ならともかく、”霊的に祝福された建築”なんてできるかというと実は近代でもあったりなんかするんですな。その一例が本書の中でもちらっと出てくる”日本橋”がそれ。写真では上に走っているのが首都高速道路でその下が日本橋です。橋のたもとにあるのが”獅子”で、橋の中央にあるのが霊獣”麒麟”。麒麟は東京市の繁栄を、獅子は守護を表しています(中央区教育委員会の看板より)。橋の完成は1911年(明治44年)で、時代的には日露戦争終了後(1905年)、江戸幕府が締結した不平等な”日米修好通商条約(*4)”から脱却し新しい”新日米通商航海条約”を締結した年で、議会制民主主義を推進する第一次護憲運動(憲政擁護運動 1912年~)の直前あたりです。日本史の授業でやりましたが覚えてますか? 私はまったく忘れてましたが
 ”合理主義”的なメンタリティとしては江戸時代よりは現代に近いと思われる時代なんですが、それでも守護獣たる”獅子”や霊獣たる”麒麟”が登場するんですな。”橋”を”河川を横断する道”という機能に限定すれば多少の意匠はあっても獅子や麒麟である必要はないはずなんですが、それでもこの獣にしたのはやっぱり”霊的な祝福”を望むメンタリティが色濃くあるんではないかと。さすがに現在で”霊的に祝福された都市計画”を正面切って国会や東京都議会に提出したら会議はけっこう紛糾しそうだし、ネットでは格好の炎上ネタになりそうですが、個別建築物の意匠レベルで極小化しちゃえば意外とすんなり通っちゃうかも。まあ、最後は小○さん次第ってことになりそうですが・・・

 本書の中で語られる都市計画のなかでユニークさでは出色なのが”寺田寅彦”の提案した”地下都市構想”。約100尺(約30m)の地下に建築物の基礎を作って帝国の中枢建築物を移し地下道路や鉄道で結んで、地上には緑地や水路を作るというもの。渋沢栄一はノリノリですが、大蔵官僚の宮辰洋一郎は渋い顔ですが、当たり前です。国家財政の困窮でストップしていたのが、事業公債の発行でやっとこ財源の裏付けできたのに、地下都市なんか作った日にゃいったいいくら掛かるネン!!
 現在、2020年の東京オリンピック目指して首都高速道路の老朽化対策をどうするかの議論をやっていますが、高架のまま改築すると約1,400億円で、地下化すると約5,000億円かかるんだとか。予算ベースでこれですから実際にやったらもっと掛かるんでしょうね。たかだか道路の改修工事でこんだけかかるんだから、街ごと地下化すればいったいどんだけ掛かるんでしょう?? 学者の論としてはありうるんでしょうが、国家財政を預かる大蔵官僚としては”はい、わかりました”と言えるシロモノではないんだろ~な~

 ”帝都物語”における加藤保憲の悪者話はこれからのようですが、前から一度読んでみたかったので(*5)、これからが楽しみです

《脚注》
(*1)ハロウィン
 最近盛り上がっているハロウィンですが、元々は古代ケルト人が起源の秋の収穫祭り兼悪霊なんかから身を守る行事。でも、正確に理解できる人ってどれぐらいいんだろ? どう見ても政府公認のコスプレイベントとしか思えんが・・・
(*2)バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!
 元々はローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌス(バレンタイン)に由来する記念日ですが、日本式の女性から男性にチョコレートを贈るというのはモロゾフ製菓が考案したんだとか。まあ、土用の丑の日にウナギを食べるを定着された平賀源内みたいなもんかと。
(*3)文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川コミックス・エース)
 横浜を舞台に異能と呼ばれる超能力を駆使して戦う福沢諭吉率いる”武装探偵社”と森鷗外をボスに仰ぐ”ポートマフィア”の抗争を描くサイキックアクションコミック自殺マニアの太宰治やらやたらコンプレックス丸出しの芥川龍之介など、文豪をイメージしたキャラ設定が秀逸。お勧めです。
(*4)日米修好通商条約
 1858年(安政5年)に日本とアメリカの間で結ばれた通商条約。日本に関税自主権がないなど不平等な内容でした。で、関税自主権を回復したのが”新日米通商航海条約”(1911年)です。
(*5)前から一度読んでみたかったので
 本書は1985年の発表、1987年に日本SF大賞受賞、映画がヒットしたのが1988年なんで、30年近くほったらかしにしてたんだなぁ。ちなみに本書を読む気になったのは、”虚実妖怪百物語(京極夏彦、KADOKAWA)”のモトネタだったから。こちらも面白い本。詳しくはこちらをどうぞ。

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

ジャック・リーチャー=ハードボイルド+ウェスタン?(キリング・フロアー/偽札)

 ども、ハードボイルドものけっこう好きなあるおぢさん、たいちろ~です。
 夏休みのヒマつぶしということで、DVD大処分。溜まってるのを何本か見まして、その中にトム・クルーズ主演の”アウトロー(*1)”と”ジャク・リーチャー(*2)”の二本立て入ってました。こういうドンパチやってるアクション物ってのもけっこうお気になんですが、wikipedia読んでるとどうも原作と映画ではキャラが違っていると。原作だと巨漢でダークなキャラを小柄で明るいトム・クルーズが演じているということで(*3)、こりゃ原作も読んでみんことには!
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第一作”キリング・フロアー”であります。
 しかし、映画版の原作は9作目だというに律儀に1作目から読みだすって、ビブリオマニアの因果なとこなんでしょうかねぇ


写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀海軍基地にあるATMです
偽札の写真を載っけたかったンですが、そんなの持っていると警察きそうなんで・・

P8050463


【本】キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・
【道具】偽札(ニセ札)
 偽造貨幣。細かく言うと偽造された貨幣が”偽金(贋金)”でそのうち紙幣の偽造が”偽札”。当然ながら偽造又は変造のみならず使っても(まあ、使うために作るんですが)犯罪行為です。対象には自動販売機などの機械も含まれます。
 本書の中で偽札を作成する4つの問題として”印刷機、金属板(原版)、インク、紙”とありますが、実際に偽造防止のため、紙、インク、透かし、ホログラムなどかなり高度な技術が使われています。これに対応するATM等なども高度な技術が採用されているのでほとんど偽造紙幣が使えない仕様になっています。”ほとんど”というのは鑑別技術自身がトップシークレットのため、一般市民どころか機械を作っている社内でも一部の関係者以外どうやってるのか知らないからです。


 さて、原作読んでみた感想なんですが、ジャック・リーチャーって”ダークなキャラ”というより”ハードボイルド”と”ウェスタン(西部劇)”の今風なハイブリッドって感じでしょうか。

〔減らず口はハードボイルドな男の特権!〕
 ”ハードボイルド”てのはタフガイな探偵が犯人とガチでやり合うってものありますが、その魅力の一番ってのは”名文句”言い換えると”減らず口”にあるんじゃないかと。読んだ中だと海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”あたりがいいですねぇ(*3)
 本書に出てくるジャック・リーチャーの減らず口から

  浮浪者じゃない。放浪者だ、フィンレイ。えらいちがいだ

   (尋問をする刑事部長のフィンレイに)

  働きたくないからさ。十三年働いたあげくが、このありさまだ
  軍の言いなりになっていた気がする
  だから、もうごめんだ。これからは自分のやりたいようにやる

   (”どうして働いていないんだ”というフィンレイの質問に対して)

  三人だけだ。四人目は生かしておいて、質問に答えさせる
   (留守中の家を4人の犯人に襲われたロスコーの”四人とも殺した?”という
   問いに対して)

  ゴキブリ退治の薬をまくとき、なにか感じるか?
   (犯人5人を返り討ちにしたことに対して問い詰めるフィンレイに対して)

 いや~、渋いですな。特に2番目なんかは定年退職後にさらに働けとか奥様に言われたら、言い返すのに使ってみたい名言です。

〔流れ者はウェスタンの基本フォーマット〕

 ある日、どこからか流れ者がやってくる。困っている町の人を助けるために町を支配する悪者をやっつけて、またいずれかへ去っていく・・・ ウェスタンの基本フォーマットです。子供の頃に見た”シェーン(*4)”なんかが代表作です。
 ジャック・リーチャーも同じく”放浪者”。どっかからやってきて悪の組織と対決するってのはウェスタンの基本フォーマットって感じですね。本書ではロスコーとけっこういい雰囲気でチョメチョメしてますが、最後どうすんだろ~な~って読みながらも気になってました。

〔一介の民間人のはずが、問答無用で犯人を射殺してますが・・・〕
 当たり前ですが、アメリカや日本の警察官というのは地方公務員です(警察庁は国家公務員)。ウェスタンに出てくる保安官というのもまあ郡とかの公務員。これに対しウェスタンに出てくる”賞金稼ぎ”というのは調べてみたら州法務省の許可を受けた民間業者(許可のいらない州もあるらしい)。
 で、我らがジャック・リーチャーと言えば、元軍人ではあるものの完全な民間人。事件に関係した発端は完全に巻き込れ型で、殺されたのが兄とかでなければたぶんそのまま町を出てった可能性のが高そう。にもかかかわす襲ってきた敵をあっさり射殺してんですな~~ いいんだっけ、これ?
 考えると、私立探偵の前職って警察官という設定はよくあるんですが、これだと職業倫理として”逮捕(生きて捉える)”が前面にでるのに前職が軍人のリーチャーだと”まず自分が生き残る(ためには相手を殺すのもやむねし)”っていう発想になっちゃうんでしょうかね。
 ジャック・リーチャーの行動原理をまとめたセリフがこれでしょうか

  状況判断。長い経験から、私は状況判断をする術をみにつけていた
  予期せぬことが降りかかったら、時間をむだにしてはならない
  どうしてそんなことになったのかなどと考えてもしかたがない
  だれかのせいにしてもしかたがない
  だれが悪いのか突きとめようとしてもしかたがない
  二度と同じまちがいをしないためにどうすればいいか考えてもしかたがない
  そんなことはあとでやればいい
  生き残りたかったら、まずは状況判断をすることだ
  事態を分析する。マイナス面を見定める。プラス面はなにかと考える。
  それをしたうえで、あとからほかのことをするチャンスを見つければいい

 引用が長くなってすいません。でもこのセリフ、すごくアバウトに聞こえるかもしれませんが、ビジネスでも犯人探しとか原因究明やってて判断が遅れるってのが、実はあったりなんかして・・・

 ”ジャック・リーチャーシリーズ”、けっこうはまりました。まだ、続編あるんで読んでこっと!

《脚注》
(*1)アウトロー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ピッツバーグでライフルによる無差別殺人事件が発生した。元アメリカ陸軍のスナイパー、ジェームズ・バーが容疑者として逮捕されるが、彼は弁護のために元米軍憲兵隊捜査官で、現在は流れ者のジャック・リーチャーを呼ぶことを要求する。
 ジャック・リーチャーシリーズの第9作を原作とする映画第1作
(*2)ジャク・リーチャー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ジャック・リーチャーの後任、スーザン少佐が国家反逆罪で逮捕される。リーチャーは彼女の無実を証明し、元部下を殺害した真犯人を追い詰めるべく捜査を開始する。そこには政府の陰謀が隠されていた・・・
 ジャック・リーチャーシリーズの第18作を原作とする映画第2作
(*3)海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”~
 ”フィリップ・マーロウ”は、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に登場する探偵。ハンフリー・ボガート主演の映画なんか渋いですな~~
 ”沢崎”は原りょうの”沢崎シリーズ”に登場する探偵。極端に寡作な作者なので作品数は少ないですが、ハードボイルド小説としてはイチ押しです
(*4)シェーン(主演 アラン・ラッド、監督 ジョージ・スティーヴンス、パラマウント)
 流れ者のシェーンは悪徳牧畜業者のライカーに苦しめられるジョー一家の息子”ジョーイ”の為ライカー立ち向かい、彼を倒した後にワイオミングの山へと去っていく・・・
 去っていくシェーンに必死に呼びかけるジョーイのシェーン! カムバック!”は映画史に残る名シーン

”夜は若く、彼も若かった” やっぱりミステリには名言が良く似合う(ミステリ国の人々/パイプ)

 ども、けっこうミステリなんかも読んでるおぢさん、たいちろ~です。
 最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”、不思議なものなどない”百鬼夜行シリーズ”、科学調査の”リンカーン・ライムシリーズ”、アニメではまった”櫻子さんシリーズ”、読書好き垂涎の”ビブリア古書堂シリーズ”、学園ミステリの”古典部シリーズ”や”鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ”などなど。昔は”刑事コロンボシリーズ”、”館シリーズ”なんぞもはまりました~~(1)
 人の死なないミステリも好きですが、やはりミステリといえば殺人事件(できれば連続!) 1841年、エドガー・アラン・ポーによる”モルグ街の殺人”から始まったミステリ

  

殺しも殺したり176年分かぁ~。ナンマンダブ、ナンマンダブ(*2)

 ということで、今回ご紹介するのはそんなミステリの登場人物を扱った本”ミステリ国の人々”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。パイプ屋さんで売ってたパイプです

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【本】ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で52回に渡って連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。いや~、政治経済中心の日経読書欄でこんなくだけた企画をやってくれるとはと最初はちょっと驚きました
【道具】パイプ
 タバコを吸うための道具。シャーロック・ホームズのトレードマークでもありますが、これは寡黙で考え込んでるイメージがあるからでしょうか?
 以前パイプを吸ってたことがありますが、パイプってのは紙巻タバコと違ってうまく吸い続けないと火が消えるんですな。で咥え続けることになりますが、これだと喋ってらんないから勢い寡黙になります
 まあ、ヘビースモーカーの探偵ってのはいますが、これからはIC○Sに移行すんですかねぇ・・・


 本書に掲載されているミステリ国の人々を分類すると

  探偵(謎を解く/事件を解決する側の人)      :29名/組(51%)
  犯人(犯罪を起こす/謎を提示する側の人)     :15名/組(26%)
  相棒(探偵の話相手、間違った推理をする盛り上げ役): 6名/組(11%)
  被害者(犯行などの犠牲になる人)         : 4名/組( 7%)
  その他(証言者、立ち位置不明など         : 3名/組( 5%)

   ※組は複数人で1カテゴリのもの(黒後家蜘蛛の会など)

 出典を読んでないのも多いので本書の紹介の印象で分けました。一人の人物が複数に入る場合があったり(アルセーヌ・ルパンなど)と分けるとなるとけっこうめんどう。すいません、ヒマなんです。

 連載時は気づきませんでしたが、ミステリ国の人々ってライバルや脇を固める人も魅力的な人が多いんですなぁ。確かに底の浅い犯罪やトリックしか仕掛けられない犯人しかいなかったら名探偵が名探偵たりえないし、謎の解けない探偵だったら犯人はんばりがいなさそうだし。何でもひとりで解決しているようなハードボイルドな探偵でも協力者(しかも美人!)がいたりするし。ミステリって意外と群像劇なんだな~とか妙に納得しちゃいました

 で、本書から気にいったネタを

〔ミステリの推理は人間心理をふまえた「もっともらしさ」が重要〕
 まずは、名探偵の代名詞たるシャーロック・ホームズ。不思議な謎を鮮やかに解く推理力の人ですが、有栖川が小学生の時にすら”そんなふうに言い切れるものだろうか?”とのツッコミ。ホームズに限らず、偶然に頼っているとか、分・秒単位での正確さがないと成り立たないとか(電車が遅延したらどうなんねん、時刻表トリックみたいな)、ホントにそれが可能?ってトリックもありますが、それはそれで読んで面白ければOK!

  レトリックで言いくるめられる快感にひたればばよい

 至言です

〔男たるもの、一度は雇ってみたい有能な”執事”〕
 優秀で博識で万能に近く主人に忠実な執事のジーヴス。”ジーヴスの事件簿”に登場。すいません。本書を読むまで知りませんでした。ジーヴスの主人が爵位継承をまっている頼りない青年、バーティ・ウースター。ウースターが困った時にジーヴスに泣きついて解決してもらうという話だそうです。のび太君とドラえもんか、君たちは?!
 しかしまあ、有能な執事ってのは男のロマンですな。これが”秘書”となると会社の雇用ですが、”執事”は完全に個人契約。優秀な男が忠実に仕えてくれるってシチュは憧れです。まあ、同じ有能でも”影山(*3)”ではナンですが・・・

〔ミステリには名言が良く似合う〕
 本書の表題では登場ませんが(リュウ・アーチャーの欄でちょっと言及)な”フィリップ・マーロウ”なんぞ渋い名言で有名”男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない(*4)”のあれです。ことほど左様にミステリには名言が良く似合います。本書でのMyNo.1はウィリアム・シュタイリシュの”幻の女”から

  The night was young,and so was he.
  But the night was sweet,and he was sour.
  夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

 いや~、このセリフだけでこの本読んでみようって気になります

〔名探偵はパイプのけむり?〕
 さて、この本の著者は有栖川有栖ですが、もう一人重要な著者が大路浩美表紙、イラストを担当された人です。しかしまあ、こんだけ広範囲なミステリの本を扱っていて、有栖川有栖は少なくとも過去に読んだことある本に追随してたぶん読まれて、しかもそれをイラストにするって相当大変だったんじゃないかと思います。
 名探偵や怪盗、名作なんてなそれぞれ読者がイメージしているアイコンってのがありそう。ホームズならパイプ、ルパンならシルクハットにモノクルハードボイルド(リュウ・アーチャー)だったら拳銃など。作品自体もその作品を代表するビジュアルってのがありそうで”鋼鉄都市”なら脳に電子基板の組み合わせ”太陽がいっぱい”ならヨットとかそれらを組み合わせて描かれる、往年の真鍋博を彷彿とさせるクールなイラストがベストマッチンング。
 Amazonとかでは表紙イラストの人の名前が掲載されないんですが、ぜひこの人の名前も載せて欲しいものです

 本書は、連載終了していますが、ぜひ続編をやって欲しい! 前回は物故されたかた限定で選んだそうですが、次回はぜひご存命の方を含めて長期連載を日経新聞社にお願いするものであります

《脚注》
(*1)最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”~
S&Mシリーズ(森博嗣)
 大学助教授の”犀川創平”と学生の”西之園萌絵”による理系ミステリ
百鬼夜行シリーズ(京極夏彦)
 古本屋主人にて憑物落としの”中禅寺秋彦”による妖怪系ミステリ
リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー)
 科学捜査のスペシャリストで四肢麻痺の”リンカーン・ライム”による安楽椅子探偵ミステリ
櫻子さんシリーズ(太田紫織)
 標本士にして骨大好きな美女”九条櫻子”によるボーンコレクター系ミステリ
ビブリア古書堂シリーズ(三上延)
 美貌の古本屋店主”篠川栞子”によるマニアック古書系ミステリ
古典部シリーズ(米澤穂信)
 省エネ高校生”折木奉太郎”と「わたし、気になります」の”千反田える”による学園ミステリ
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ(東川篤哉)
刑事コロンボシリーズ(作成 NBC、ABC、出演者 ピーター・フォーク)
 ロサンジェルス市警察殺人課で「うちのカミさんがね」なコロンボ警部による倒叙ミステリ
館シリーズ(綾辻行人)
 建築家”中村青司”が設計した奇妙な”館”で起こる殺人事件を扱う密室系ミステリ
(*2)殺しも殺したり176年分かぁ~
 元ネタは”ルパン三世 カリオストロの城”(監督 宮崎駿、製作 東京ムービー新社)です。
(*3)影山
 ”謎解きはディナーのあとで”(東川篤哉)に登場する執事。警視庁国立署の新米刑事にして世界的な企業グループ総帥の一人娘というお嬢様”宝生麗子”の話を聞くだけで犯人を言い当てるという安楽椅子探偵。推理の前に主人公。推理の前のお嬢様を慇懃無礼な罵詈雑言で罵倒するセリフが魅力のS気質の人です。
(*4)男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない
 レイモンド・チャンドラーの”プレイバック”に登場する私立探偵フィリップ・マーロウのセリフ。正式には
 If I wasn't hard, I wouldn't be alive.
 If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.
  しっかりしていなかったら、生きていられない。
  やさしくなれなかったら、生きている資格がない
 (清水俊二訳)
これを高倉健主演の角川映画”野性の証明”のキャッチコピーに流用したのが上記です
(*5)真鍋博
 戦後を代表するイラストレーターの一人。日本SF作家クラブ会員
 新潮文庫版の星新一のショートショートの表紙なんかはまだ使われているようです

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