小説

幼少のころに本書を読んだことでお嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします(大どろぼうホッツェンプロッツ/ソーセージ&ザワークラウト)

 ども、大人になっても児童文学も読むおぢさん、たいちろ~です。
 先日会社の人と山登りにいきました。で、泊まったペンションでなぜだか子供のころに読んだ本の話になりましで、お嬢様方2人(*1)が”ホッツェンプロッツが面白かった”と。お嬢様の一人は

 ツワッケルマンがじゃがいもをむいている姿がかわいい!

となかなかマニアックなポイントを突いておりました。私自身、本の名前は聞いたことありましたが読んだことなかったんで、今回図書館の児童コーナーで借りてきました
 ということで、今回ご紹介するのは、ドイツの児童文学”大どろぼうホッツェンプロッツ”であります
 あと、山登りにお嬢様方2人が参加しているのは奥様公認ですので、文春ネタにはなりません、はい


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜赤レンガ倉庫で開催されたフリューリングスフェスト(*1)で食べたフィッシャーマンズプレートです(右下がソーセージ、その上の白いのがザワークラウト

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【本】大どろぼうホッツェンプロッツ(オトフリート・プロイスラー、偕成社文庫)
 大どろぼうホッツェンプロッツを捕まえようとしたカスパールと友人のゼッペル、警察官アロイス・ディンペルモーザー氏。逆にホッツェンプロッツに囚われたカスパール達ははゼッペルは悪い魔法使い”ペトロジリウス・ツワッケルマン”をやっつけたり、カエルに変えられて7年間も閉じ込められていた妖精アマリリスを助けたり、最後はホッツェンプロッツを逮捕したりと大活躍!
 留置場所からホッツェンプロッツが脱走し、カスパール達に復讐する”大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる”、改心したホッツェンプロッツのためにカスパール達が奮闘する”大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる”とあわせた三部作。
【料理】ソーセージ&ザワークラウト
 ともにドイツを代表する料理。ソーセージは日本では要冷蔵のものが多いですが、湯煮や燻製してあるので保存食なのが多いそうです。ザワークラウトはドイツのキャベツの漬物。”すっぱいキャベツ”という意味ですが、これは酢漬けではなくて乳酸発酵によるものだそうです。

 さて、”大どろぼうホッツェンプロッツ”ですが思いのほか大人が読んでも面白かったんですね。思わず3冊一気読みしました。
 ボスキャラの”ホッツェンプロッツ”は大どろぼう。”あなたの心”なんかは盗みませんが、カスパールのおばあさんからコーヒーひきを強奪したり(以外のせこい?)、カスパールとゼッペルを捕まえて召使にしたり、魔法使いツワッケルマンに売りとばしたり。そんなホッツェンプロッツを捕まえるためにカスパールは友人のゼッペルと協力して知恵を絞って対決するワクワク感! それに、ちょっと間抜けな巡査部長”アロイス・ディンペルモーザー氏”、美しい妖精”アマリリス”に千里眼師の”シュロッターベック夫人”、魔法の失敗でワニの姿になっているダックスフンドの”バスティ”と魅力的なキャラが満載!! 大人た読んでもそうなんだから、子供ゴゴロに楽しかったんでしょうね

 で、もうひとつのワクワクがこの本、けっこうたくさんドイツの料理が出てるんですな。お嬢様方がこの本を読んでたのは1970年代の後半か80年代の前半を推定されますので(そこ、年齢計算しないように!)、ドイツ料理なんて子供には珍しかったんじゃないでしょうか? 今見たくドイツ料理をアテにビールを呑んだくれていなかったはずですし。ですから、この本を読んでドイツ料理に憧れたんじゃないかな~~
 登場する主だった料理はこんなの

〔焼きソーセージとザワークラウト〕
 ホッツェンプロッツがカスパールのおばあさんの家に押し入って食べたのがこれ
 写真のようにザワークラウトは付け合わせに添えるものらしく、おばあさんも最初に出す時にはソーセージ1本にザワークラウトひとさじのっけてますが、ホッツェンプロッツはひと鍋まるごと食べています。いかにお腹がすいてそうとはいえ、そんなにがばがば食べるものではなさそう?

〔マッシュポテト〕
〔じゃがいもだんごをタマネギソースにひたしたの〕

 お嬢様のツボだった悪い魔法使い”ツワッケルマン”が食したのがじゃがいも
 じゃがいもの皮をむいて湯がいて潰したのがマッシュポテトで、これに小麦粉を混ぜて丸めたものがじゃがいもだんごです
 ツワッケルマンがゼッペルを召使にしたのは、なぜだか魔法でジャガイモの皮むきができないからという理由から。確かにじゃがいもの皮むきってけっこうたいへんです

〔タマネギ、ベーコン、ニンニクどっさりの炒め物〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルにふるまったもの。カスパールのおばあさんが作る料理を上回るごちそうとはカスパールの弁。考えてみると、どろぼうの森で一人暮らしのホッツェンプロッツですから自炊派のはず。腕前もそうとうなもののようです

〔太ったガチョウの丸焼〕
 ホッツェンプロッツが捕まえてきて、毛をむしって串刺しにして丸焼にしたの。美味しそう!
 ドイツではガチョウの丸焼ってのはクリスマス料理だそうです。

〔ロートカッペのスープ〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルを拉致して帰る途中で見つけたロートカッペ(食用キノコ)を使ったスープ。犯行中にキノコ狩りをするとは意外に余裕かましてます。ロートカッペは毒キノコのクナルピルツに似ているので注意が必要。
 とはいっても、ロートカッペもクナルピルツもググってもそれらしいのありませんでした。どんなキノコなんだろ?

〔紅茶とパンにソーセージをはさんだの〕
 シュロッターベック夫人がカスパールとゼッペルをもてなすのにだしたの
 食べざかりの子供相手なので、けっこうガッツリ系?

〔塩漬けのキュウリ〕
 菜食主義のダックスフンド・ワニのバスティの好物がこれ。日本のキュウリの浅漬けみたいなもんでしょうか? 制服を盗まれたアロイス・ディンペルモーザー氏が移動するのに八百屋から借りてきたキュウリの漬物樽にはいるって話が出てますが、わりとありふれてんですかね、キュウリの漬物って。

〔生クリームのかかったプラムケーキ〕
 カスパールのおばあさんがカスパールとゼッペルのための作ってくれたお菓子
 クックパッドを見てるとドイツ風はプラム(プルーン)を使ったちょっと固めのケーキみたいです

ウイキョウ入りソーセージに、外側はスイスチーズ&内側酢漬けニシン巻きの味のするカボチャ、、シュトロイゼルクーヘンチョコレートドーナッツといっかお菓子、ハタンキョウのお酒ポンスなどおいしそうなのてんこ盛り!(*5)

 しかもまた、悪役たちの食べっぷりが見事なことといったら! ホッツェンプロッツは焼きソーセージ9本と鍋いっぱいザワークラウトとかガチョウの丸焼とか。レシピを見てるとガチョウって5~6Kgぐらいあるんで一人で食べるとけっこうな量
 ツワッケルマンは昼はマッシュポテト7皿、夜は六ダース半のじゃがいもだんご。こんだけ食べるならバケツ単位で皮むきもいるんでしょうね。まったくこの魔法使いはどんだげジャガイモ好きやネン!

 幼少のころに本書を読んだことで、お嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします!

 今回は料理ネタメインでしたが、お話自体もとっても面白い本。子供のみならず大人の方もぜひどうぞ


《脚注》
(*1)フリューリングスフェスト
 ドイツで開催される”春祭り”。”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。これが秋になると”オクトーバーフェスト(10月の祭り)”になって、”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。要は呑めりゃいいんです、呑めりゃ!
(*2)ウイキョウ入りソーセージに~
ウイキョウ:別名フェンネル。ピクルスなどに入れる甘い香りのするハーブ
シュトロイゼルクーヘン:表面がそぼろ状(シュトロイゼル)になっているケーキ
ハタンキョウ:別名アーモンド調べたらちゃんとレシピもありました。
ポンス:ラム酒にレモン、砂糖を混ぜた熱い飲み物

このご時世”PAC-3”のネタで書いてお咎めなしってのは日本はいい国なんでしょうね(PAC-3/「シン・ゴジラ」私はこう読む/空飛ぶ広報室)

 ども、自衛隊のメカニズムは好きですが、戦争は嫌いなおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、ア○リカと北○鮮の間がきな臭くなってます。言葉の応酬がますます過激になってきて、方やグアム周辺へ弾道ミサイルを4発ぶっぱなす用意があるとゆーとるわ、方や核攻撃をちらつかせたことをゆーとるわ。まあ言ってるのが小学生のガキ大将同士のケンカならまだしも、やってるのが核保有国のトップ同士、しかも方っぽがこの前までなら止める立場の先生がやってんだからなぁ
 で、こちらニッポンは”島根県、広島県、高知県の上空を通過する計画がある”ってことで”PAC-3”を島根、広島、高知、愛媛の陸上自衛隊の駐屯地に移動して迎撃体制を整えることに。国防上、やるべきことはやってるんでしょうが、なんだかこの手の話があったな~~~
 ということで、今回ご紹介するのは、元国防大臣が語る配備計画の問題”「シン・ゴジラ」私はこう読む”とPAC-3移送ネタの”空飛ぶ広報室”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。
海上自衛隊の”ヨコスカサマーフェスタ(*1)”にて(2010年、2016年)

【道具】PAC-3
 ややこしいんですが、PAC-3って”ペトリオットミサイル”そのものの”PAC-3弾”と、”PAC-3弾”を発射するためのペトリオットミサイル発射システム”PAC-3形態”ってのがあるんだそうです。”PAC-3形態”はトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はペトリオット発射中隊、10台以上の車両(ミサイル発射機トレーラー、電源車輌等)で構成されてます。

PAC-3の解説パネル (2016年撮影)

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発射機(Launching Station,LS) (2016年撮影)
 PAC-3等のペトリオットミサイルを最大16発発車する装置
 テレビとかで”PAC-3”というと出てくるのがこの車両

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レーダー装置(Radar Set、RS) (2010年撮影)
 多機能フェーズド・アレイ・レーダーを装備し目標の捜索、発見、追尾、識別及びペトリオットミサイルの誘導を行う装置

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発電機(Electric Power Plant、EPP) (2010年撮影)
 ECS及びRSに電力を供給する機械。トラックに車載したままでも運用可能

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 写真はないですが、その他射撃管制装置(Engagement Control Station, ECS)、情報調整装置(Information Coordination Central, ICC)、無線中継装置(Communication Relay Group, CRG)なんてのもあるようです。

【本】「シン・ゴジラ」私はこう読む(日経ビジネス、日経BP社)
 2016年に公開された”シン・ゴジラ(*2)”をネタに、ビジネス情報中心の(はず)の日経BP社が”日経ビジネスオンライン”で連載された各界のキーマンへのインタビューなどをまとめた本石破元防衛大臣、枝野元内閣官房長官、梅澤TAカーニー日本法人会長などそうそうたる顔ぶれ。何を考えてんだか日経BP社?!
【DVD】空飛ぶ広報室(原作 有川浩、主演 新垣結衣、綾野剛)
 いきすぎた報道姿勢が元で報道から外されたディレクター”稲葉リカ”はTV番組”働く制服シリーズ”の作成のために防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室=”空飛ぶ広報室”を訪れる。そこには”詐欺師 鷺坂”の異名を持つ鷺坂室長以下、個性あふれる?面々が。そしてリカの担当になったのは交通事故でパイロットの道を断たれた”空井大祐”だった。
 自衛隊員という実態があまり知られていない職業の中でもさらにマイナーな広報室(失礼!)を舞台にした非戦闘系ラブコメ。2013年にTBSでドラマ化。主演は新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵。


 当然のことですが、あらゆる兵器には物理的な限界があります。ミサイルには射程距離があり、戦車には最高時速があり、飛行機には航続処理があり。また量的な限界ってのもあります。予算が無限ではなく、人的教育には時間がかかり、工場の生産力の制限がある以上、兵力や機器を装備する量にはおのずと上限値が(少なくとも短期的には)設定されます。

 てなことを踏まえて”「シン・ゴジラ」私はこう読む”の石破元防衛大臣の発言です。ゴジラが上陸して東京への侵攻を食い止めるために多摩川河川敷に最新鋭の戦車がズラーッと並んべて迎撃するってシーンがあるんですが、これに対して

  あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね
  本州にはあんな数の戦車がないんですけどね
  日本では、最新鋭の戦車はだいたい北海道に配備してある

   (中略)
  北海道から戦車が駆けつける頃には、みんな終わっている

 なんで北海道に戦車が配備されてるかというと、ロシアが攻めてきて北海道内で戦車同士でドンパチやるって想定だからだそうです。この想定にリアリティがあるんかどうかはわかりませんが、要はある戦略思想に基づいてリソースを配置するってことです。
 で、今回みたく島根、広島、高知の上空をミサイルが通過するってことになると、そこにPAC-3を移動して防空体制を引くってことになるわけです。

 まあ、書くのは簡単ですがいざ移動するとなると簡単ではないみたい。”空飛ぶ広報室”の第五話で”パトリオット部隊の展開訓練(*3)”て話がありました。これは入間基地から武山分屯基地、習志野分屯基地から入間基地へそれぞれの高射隊が移動するって訓練をマスコミに公開するって内容。
 航空自衛隊の全面協力ってことで、防衛省航空幕僚監部やら各基地やらのロケで各装備がバンバンでてきてわりとマジで作っている作品ですが、それでも移送されてるのメインって発射機なんですな。TVのニュースもそんな感じだったし。これだけ見てると発射機だけ持っていきゃよさそうなんですが、実際は機材をいっぱい持ってってそれを動かす人も移動しなきゃなんなさそう。なんせ超爆発物なんだからテロ対策やなんやらもやんなきゃいけなさそうだし。つまり、素人目に見てもほいほいお出かけできるシロモノじゃなさそうってコトです。
 それだけやってもパトリオットミサイルの有効射程距離が20~30kmってんですから、有効性を求めるにはしこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・(*4)

 で、何を言いたいかとゆ~と、日本ってないい国ですな~~ってこと。
 広報の一環とはいえ基地の公開があって、最新鋭のPAC-3の展示があって写真撮り放題。こうやって写真をブロクにのっけてもお咎めうけることなさそうだし。テレビはテレビで自衛隊の航空機なんぞ出っぱなしだし・・・ あまつさえ元防衛大臣がゴジラネタにひっかけて国防上の問題点を語っても問題にならないって、けっこういい国だと思いませんか? このへんの話題って世が世なら国家機密ですぜ!(*5)

 改めて言いますが、私は自衛隊のメカニズムが好きなだけで、戦争はやっちゃいけないと思ってます。核兵器のみならず兵器なんてのは理屈の上での抑止力としては成り立つんかもしれませんが撃っちまったら終わりです。まあ、こんなことぐらいチキンレースやってる人はわかっちゃいると思いたいんですがねぇ

《脚注》
(*1)ヨコスカサマーフェスタ
 海上自衛隊横須賀地方総監部で開催される基地開放のイベント。毎年8月の第一土曜日の”よこすか開国祭”に合わせて開催されます。2017年度開催は8月5日(土)。この日は米海軍横須賀基地にて”ヨコスカフレンドシップデー”も開催されて軍艦乗船もできるとあって、この手のんが大好きなオタクが朝から群れております。私は違いますが・・
(*2)シン・ゴジラ(総監督 庵野秀明、監督 樋口真嗣、東宝)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明と”ローレライ”、”日本沈没(2006年版)”の樋口真嗣によるSFファン注目のゴジラ映画。2016年公開
 ゴジラ登場にあたふたする政治とか、超科学兵器(オキシジェン・デストロイヤーとか)なんぞ登場せず、自衛隊ががんばってゴジラを倒すこだわりなどSFゴコロをくすぐる名作です。
(*3)パトリオット部隊の展開訓練
 ミサイルの愛称”Patriot”は”Phased array Tracking Radar to Intercept on Target(目標物迎撃用追跡位相配列レーダー)”の略。発音は”ペイトリオット”に近いですが、マスコミは”パトリオット”、政府や自衛隊は”ペトリオット”を使っています(wikipediaより)。ですんで、本ブログ内で混在しているのは出典に忠実なだけで間違いではないです、はい
 ちなみにPAC3だったりPAC-3だったり、あぁややこしい
(*4)しこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・
 仮に島根県を通る山陰本線の米子駅~益田駅間に一列で配備したとして、この距離が192Kmあるんで、射程距離20km(直径で40km)で割ると5単位必要。これをメッシュでやったら何単位ありゃ足りるんでしょうね??
(*5)世が世なら国家機密ですぜ!
 まあ、地図や天気予報が機密情報だった時代もあるみたいなんで何が機密って難しいんですけンドね

どうせ何時かは執行される自分の葬式なんだから、それまでの猶予期間を旅でもするかってこの本読んで考えちゃいました(深夜特急/サテー)

 ども、歳を取るといたって出不精になっているおぢさん、たいちろ~です。
 かつて、有吉先生が猿岩石だった頃、”進め!電波少年(*1)”というテレビ番組で”ユーラシア大陸横断ヒッチハイク”という企画をやっておりました。これは当時売れていない若手お笑いコンビ猿岩石(有吉弘行、森脇和成)のふたりが香港からロンドンまでヒッチハイクで旅行するというもの。大して真面目に見てたわけではないですが、いかに売れていないとはいえ、けっこうきつい事やらせんだな~と思った記憶があります。
 ふと思ったんですが、昔はこういったヒッチハイクというか貧乏旅行みたいな本とかけっこうあったような気がすんですが。私がその手の本を読まなくなっただけなのか、実際世の中でも少なくなってんだか?
 ということで、今回ご紹介するのはそんな貧乏旅行系の本、ちょっと昔の話ですが”深夜特急”でありますあ


写真はたいちろ~さんの撮影。
シンガポール料理の”海南鶏飯(HAINAN CHI-FAN)の”サテ”です

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【本】深夜特急(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。といっても私が読んでる2巻ではまだデリーどころかマレー半島あたりでうろうろしてますが。まあ、こういう無計画さがこの手の旅行の醍醐味なんでしょう。
 1974年ごろの旅行なので事情がだいぶん違うんでしょうが、今読んでも充分面白いです。
【料理】サテー(Sate)
 マレーシア、シンガポールなど東南アジア諸国で食される串焼き料理
 本書では”マレー風焼き鳥といった趣”と記されていますが、他の肉でもあり。海南鶏飯では鳥と豚のセットでした。
 ほんのりとしたカレーの香りのする小ぶりの鳥肉や豚肉に甘辛ピーナッツソースをつけて食べるというもの。ピーナッツソースは日本だと肉味噌に近い食感でしょうか。美味しゅうございました。


 沢木耕太郎の経歴ってのが大概で、横浜国立大学経済学部卒業で富士銀行入行が決まっていたのに大学紛争で卒業が遅れ初日出社の日に”雨のせい”という理由で退社(企業名はwikipediaより)。就職もせずぶらぶらしていたのを見かねた大学のゼミの教官が雑誌社を紹介してくれたのをきっかけにルポライターに。仕事は増えてきたものの、こなしきれなくなって、”間もなく外国に行くので仕事が受けられない”と苦し紛れに嘘をつき。これもある人物の”男は26歳までに一度は日本から出た方がいい”という言葉から。
 ここまででも凄いですが、さらに輪をかけてすごいのがこのおかん。家にまで外国旅行の問い合わせ電話がかかってくるに及んで息子に申し渡した一言がこれ

  私はもう弁解したり嘘をついたりするのはいやだから
  とにかく日本を出ていってくれないか、
  どこでもいいから外国とやらに行ってくれないか・・・

 本書ではサラッと書いてますが、これってすごい発言ですぜ! 一流大学を卒業して一流企業に就職するハズだった息子が、ブラブラしたあげくルポライターになったのに、息子の弁護をするのがイヤだからどこでもいいから外国に行って来いって、凡百の親がはける発言じゃないって! 普通の親なら”関係にワビ入れてマジメに働け!”でしょ?
 まあ、それで出ていく息子ってのも思い切りがいいのは確かですが・・・

 で、一方息子の方。シンガポールのサテー屋でニュージーランドから大学を中退して世界一周に出かけた若者二人にいろいろ蘊蓄たれることに。そこで何気なく聞いた”どのくらいの期間でまわるつもり?”の答え”三年か、四年”にショックを受けることに。”旅行から帰ったらどうするつもり?”と聞くと暗い顔つきで”わからない”と・・・

 沢木耕太郎のモノローグ

  あるいは、彼らも人生における執行猶予の時間が欲しくて旅に出たのかもしれない
  だが、旅に出たからといって何かが見つかると決まったものでもない
  まして、帰ってからのことなど予測できるはずもない
  わからない。それ以外に答えられるはずがなかったのだ
  そして、その状況は私にも大して変わらないものだった
  わからない。すべてがわからない
  しかし人には、わからないからこそ出ていくという場合もあるはずなのだ
  少なくとも、私が日本を出てきたことのなかには、
  何かが決まり、決められてしまうことへの恐怖ばかりではなく
  不分明な自分の未来に躙り寄っていこうという勇気も
  ほんの僅かながらあったのではないかという気がするのだ・・・

 引用が長くなってすいません。”執行猶予”って言葉がココロに引っかかったモンで
に登場する”モラトリアム”や”ニート”のようになんだかオブラードにつつんだような語感とは違って(*3)、もっとストレートで切迫感のある状態っぽくって。
 雑駁ないい方ながら”モラトリアム”が大人になることへの拒絶であり、”ニート”が通学も就業もしていない状態(*3)とまったく同じではないですが、時代を経るほど”働たらかない”ということへの意識が自覚的でなくなっていくような
 少なくとも本書では”何かが決まり、決められてしまうこと”=”執行”をされてしまうことへの恐怖を自覚してるようだし、”未来に躙り寄っていこうという勇気”をもって今の状況を選択している自覚があるようだし。

 まあ、なんとなくですが、1970~80年代には猶予期間にお金ももたずに海外に行くってアクティブさがあったし、もうちょっと前だとヒッピームーブメント(*4)みたいな政治的メッセージみたいのもあったようですし(さすがにこの時代は良く知らんですが・・) つまり”外向的”な若者イメージがあったんじゃないかと
 それに比べて今だと”引きこもり”が増えていますみたいな”内向的”なイメージが前面にでているような(まあ、社会問題化しているのはたしかですが)
 ”執行猶予”ってのは必ずどこかで”執行”されるわけで、別に執行されなくなる訳じゃない。であれば、執行までの時間をどう作るか、使うかが重要なんだろ~な~と思う訳であります。

 なんでこんなこと考えるかというと、定年を指折り待ってる歳になってくっと、その後の人生って自分の葬式までの執行猶予期間かな~~とこの本を読んで思っちゃったからかも。どうせ何時かは執行される葬式なんだから、定年したあとにできる自由な時間に旅暮らしなんかも悪くないかもなんて考えちゃいます。ということで、キャンピングカーに乗って全国旅に出ている人の本なんかも読みだしちゃって。
 あとは残った住宅ローンをどう片付けるだけか・・・

《脚注》
(*1)進め!電波少年
 1992年から98年に日本テレビ系で放送されたテレビ番組。アポなしでいろんなとこ押し掛けてムチャぶりなお願いするという企画などで当時はけっこう人気あったような。上記のユーラシア大陸横断ヒッチハイクは1996年の放映だそうです。
 しかしこの企画もももう20年以上前なんだな~~
(*2)”モラトリアム”や”ニート”のように~
 ”モラトリアム”は1978年の”モラトリアム人間の時代(小此木啓吾、中公文庫)、)の”ニート”は2004年の”ニート―フリーターでもなく失業者でもなく(玄田有史、曲沼美恵 幻冬舎文庫)”が出始めだとか(wikipediaより)。
(*3)”ニート”が通学も就業もしていない状態
 誤解のないように補足しますが、”ニート”は”15〜34歳の非労働力人口の中から、求職活動に至っていない者(専業主婦を除く)”であって、決して労働意欲がないわけではないそうです
(*4)ヒッピームーブメント
 既成の価値観に縛られない生活信条とかベトナム戦争への反対からの徴兵拒否とかがベースにあったようです。

”狼”のイメージってブレ幅が大きいですが、”狼王ロボ”は暴虐の王から夫婦愛まで大ジャンプ?

 ども、子供時代はあんまし本を読んでなかったかもしれないおぢさん、たいちろ~です。
 先日”うちは寿!(*1)”というマンガを読んでたら、”シートン動物記(*2)”の”狼王ロボ”を読んで三人の孫たちが涙するってシーンが出てきました。そういえば、”シートン動物記”って読んでないな~。そういや、本好き小学生の通過儀礼ともいえる”ドリトル先生航海記”も”楽しいムーミン一家”も”ファーブル昆虫記”もみんな読んでないな~~(*3) 対して外に出て遊んでた記憶もないんでいったい何してたんだろう? 寝てばっかいたのかなぁ
 ということで、今回ご紹介するのは反省をこめていいおぢさんになってから読んでみました”シートン動物記”より”狼王ロボ”であります
 

写真はたいちろ~さんの撮影。日比谷公園にある”ルーパロマーナ(ローマの牝狼)像”です

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【本】狼王ロボ(シートン、集英社他)
 巨大な体躯と人間の罠をものともしない狡知にたけたコランポーに君臨する狼の王”ロボ”。白くて美しくロボの妻である牝狼の”ブランカ”。ロボが率いる群れによりコランポー一帯の牧場は多大な被害を受けていた。そんなロボを捕まえるべくシートンはある計画を実行する・・・
 原題は”Lobo, the King of Currumpaw(ロボ、カランポーの王)。
【動物】狼
 ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。
”一匹狼”という言葉があるので単独行動する動物かと思っていましたが、実際は雌雄のペアを中心とした平均4~8頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成し、通常は繁殖するペアが最上位に位置するんだそうです(wikipediaより)


 多くの人にとって”狼”に対するイメージってその精神性のブレ幅が大きい動物ってそうそういないんじゃないかと(*4)。いやいや、”狐”は狡賢いから神の眷属まであるし、猫だって癒しのペットから化けて出るしと他にもいるだろうと反論はありそうです。でも、狼ってのは残虐から、勇猛果敢、慈愛、あるいは夫婦愛まで”精神のありよう”みたいなとこでは真逆に近いとこまで広がっているんじゃないかと

 残虐のイメージの筆頭は童話”赤ずきんちゃん”や”三匹の子豚”。なんせおばあちゃんやら子豚やらなんでも食べちゃうし。勇猛果敢つまり強さの象徴としてはスポーツや軍隊なんかでとく見かけるかと。故横綱”千代の富士”のあだ名が”ウルフ”とか、旧ドイツ海軍の”ウルフパック(群狼作戦)(*5)”とか。慈愛となると、上記の写真にある古代ローマを建国した双子”ロムルス”と”レムス”を育てた牝狼とか(あんまし詳しくは知らんけど)
 まあ、私自身は中学時代に”ウルフガイ・シリーズ(*6)”にはまった口なんで孤高のヒーローってイメージが強いですけどね。

 前置きが長くなりましたが、”夫婦愛”の代表格が今回ご紹介の”狼王ロボ”でしょうか。あらすじを続けます(ネタバレになりますのでご注意ください)

 シートンはボロの群れの足跡を観察することで、ブランカがロボの妻ではないかと考える。そしてまずブランカを捕獲することに成功する。悲しみの咆哮をあげるロボ。復讐に燃え、妻の探索をあきらめきれないロボは、取り乱し仕掛けられた罠にかかってしまう。仲間にも見捨てられ、抵抗するも力つきてしまうロボ。
 捕獲したロボを殺すことをおもいとどまったシートンだった。だが、力を奪われ、自由を奪われ、そして妻を失った悲しみの三重苦の中、老いた狼の王は死んでしまった。ロボの死骸をブランカの死骸のそばに寄り添わせるシートン。ロボを運んだカウボーイは大声で言った

  ほれ、お前はこいつのそばに来たかったんだろう
  これで、また、いっしょってわけだ

なんという名シーン。寿家の三人の孫たちが涙するのも納得です。

 でも、ちょっと待って。前半のロボたちって相当な悪役じゃなかったっけ? 5年間に牛を2000頭以上殺したとか、一晩で羊を250頭殺したとか。しかも遊び半分で。これらをして”狂暴なロボの一隊の暴虐ぶり”って書いてあるし。なんせ”人狼”だの”悪魔と結託している”だのさんざんな言われような王様なはずなんだけどなぁ
 小説だと他人には冷酷だけど家族には優しいキャラだとか、歴史上にもアイヒマンみたく残虐なナチス将校が実は平凡なおぢさんだったりとかあるけど(*7)、ロボやブランカって筋金入りの悪役だったのに、夫婦愛ですべてチャラってのはなぁ・・・

 いかんなぁ、大人になると本の読み方がひねくれてきて。少年のころのあの純粋な魂は失われてしまったんでしょうか・・・
 元からなかったのかもしれませんが

 なにはともあれ”シートン動物記”って面白い本です。私の読んだ集英社版に収録された”灰色グマの伝記”や”サンドヒルの雄ジカ”も良かったし。今更ながらですがお勧めの1冊です。


《脚注》
(*1)うちは寿!(小池恵子、竹書房)
 イケメン大好きなおばあちゃん”寿かめ”さんと、優秀なキャリアウーマンで家事ダメダメな長女”万里(32歳)”、クール&ビューティにして家事万能、時々マニアックな次女”美鶴(17歳)”、元気いっぱい、絵日記が得意な長男”千宏(7歳)”という3人の孫たちがおりなす日常系4コママンガ。
 本エピソードは4巻から。結構お勧めです。
(*2)シートン動物記(シートン、講談社他)
 アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンによる動物物語の総称。
 ”シートン動物記”という名前は日本でつけられた題名で、これに正確に対応する原題はないんだそうです(wikipediaより)。まあ、小学校の図書館に行けば必ずある本だから気にすることないけど
(*3)本好き小学生の通過儀礼ともいえる~
ドリトル先生航海記(岩波少年文庫他)
 アメリカの小説家ヒュー・ロフティングによる”ドリトル先生シリーズ”より
たのしいムーミン一家(講談社)
 フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによる”ムーミンシリーズ”より
ファーブル昆虫記
 フランスの博物学者、作家のジャン・アンリ・ファーブルの代表作
(*4)”狼”に対するイメージって~
 ニホンオオカミに限って言うと1905年に捕獲されたのが確実な情報としては最後のものだそうで、110年以上前の話。つまり、生きている狼を見た人はほとんどいないということです。したがって現在の”狼”のイメージは文学や映画などにより形作られたものかと
(*5)ウルフパック(群狼作戦)
 ドイツ海軍潜水艦隊司令カール・デーニッツ少将により考案された敵輸送船団を攻撃する通商破壊戦術の一つ。偵察機からの情報で輸送艦隊の進行方向を予測し、複数の潜水艦により予測海域にて各艦が包囲陣形を取りこれを撃滅するというもの。
(*6)ウルフガイ・シリーズ(平井和正、 早川書房他)
 名前と裏腹に暴力の渦巻く私立中学 博徳学園に転校した”犬神明”。彼は、満月が近づくと不死となる人狼(狼男)だった。彼を執拗に狙う不良グループのボス”羽黒獰”、そして二人の対立に巻き込まれる美しき教師”青鹿晶子”の運命は・・・
 初期のころのははまって読みましたが、”黄金の少女”以降まだ読んでないなぁ
(*7)アイヒマンみたく
 アドルフ・オットー・アイヒマンはナチスドイツ親衛隊中佐でホロコーストに関与して数百万の人々を強制収容所へ移送する指揮的役割を担った人物。戦後に逮捕されてみると小役人的で、家族を愛する凡人であったことが判明。
 詳しくは”ホロコーストの実行者はサディストではなくノーマルだった。我々と同じようにをどうぞ。

忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(書楼弔堂 炎昼/時計草)

 ども、”私の一冊”を求めて流離うおぢさん、たいちろ~です。
 家族で買い物に行くんですが、奥様や娘と違って洋服を買う趣味がないもんで、だいたい本屋さんで待っています。手間のかからない旦那といやそうなんですが、なんだかな~と思うことも。まあ、店の外待たれるよりはましだろうと割り切っています。
 まあ、新しい本をぷらぷら見るなら本屋さん、掘り出し物を探すなら古書店ってとこでしょうか。まあ、Kindleを買ってからこっち、本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(1)
 本屋でぷらぷらする最大の魅力は、思いがけなく面白そうな本を見つけることAmazonのリコメンデーション(*1)も悪くはないんですが、意外性って言う意味では本屋で適当にやってるほうが高いかも。Amazonも本屋さんもどっちも捨てがたい魅力ではあります。
 ということで、今回ご紹介するのは、究極の貴方にお勧めの一冊を紹介してくれる本屋さんの話”書楼弔堂”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。宮城県やくらいガーデンで見かけた”時計草”です

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【本】書楼弔堂 炎昼(京極 夏彦、集英社)
 明治30年代初頭。塔子お嬢さんは道端で体調を崩していた”なきと”と名乗る老人を休ませるために、書舗”弔堂”に案内する。陸灯台と見紛う外見、吹き抜け三階建の壁面一面は全て本で埋め尽くされる書楼。そして弔堂主人は僧侶から還俗し、その人の一冊を売るという人物。そして、意外にも主人と”なきと”は旧知の間柄だった・・・(探書拾壱”無常”より)
 後に歴史に名をなす明治の偉人達と弔堂主人と本との出会いがやがてその人の人生に影響を与える”書楼弔堂”シリーズの第二巻。
【花】時計草(とけいそう)
 トケイソウ科・トケイソウ属の植物の総称。名前の由来は花の雌しべが時計の長針、短針、秒針のように見えるから。英語では”passion flower”でこっちは”キリストの受難の花”という意味。子房柱が十字架、3つに分裂した雌しべが釘、副冠は茨の冠に見えるからだとか。いろいろあるもんですな。
 本書では、牧野富太郎の植物のイラストが使われていて、その一つからあんまし見たことなさそうな花をチョイス。ちなみに塔子お嬢様に言わせると、充分に美しい範疇にはいるものの、何処か作り物めいていてでき過ぎのわざとらしさがあって気味悪いと。さんざんな言われようです。けっこう面白い造形の花だと思うんですけどねぇ(探書拾”変節”より)

 弔堂主人ですが、古今東西の書物に限らず、錦絵から新聞に至るまで博学なことこの上ない人。同じく京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”に登場する”京極堂”こと”中禅寺秋彦”も古書店主人で大概物知りですがこっちは宗教、伝承、民俗学、妖怪学方面の人。弔堂主人というと、文学、芸術、哲学、科学の分野までとオールジャンルの人。とても凡人のよくする所ではありません。こんな主人がお客との会話の中から人となりを推理して勧める本だから、まあ、はずれはない模様。さらに恐ろしいのは主人が勧める本がその人の人生を変えてしまう、その人が後に偉人となって結果として社会まで変えてしまう、そんなお話です。まあ、その人が誰かを考えながら読むのも本書のお楽しみでしょうか。

 まあ、中身は本書を読んでいただくとして、今回は弔堂主人となきと老人が会話した”忠臣蔵”の解釈が面白かったのでそっちの話を。
 ”忠臣蔵”の中で吉良邸討ち入りの合図に叩いた”山鹿流陣太鼓”つーのが出てきますが、この”山鹿流”ってのは山鹿素行による”兵法”だとなんとなくイメージしてたんですが、本来は修身治国を説いた士道学なんだとか。のちに勤皇の志士の理を支えるものになり、なきと老人のバックボーンになってます。
 で、弔堂主人が指摘したのが、志と兵法の矛盾

  志はどうあれ、あらゆる軍略は勝つために立てられるものではございませぬか
  ならば、相手が何者であれ、不意打ちだろうが待ち伏せだろうが一向に構いますまい
  時には退却も計略のうち。逃げること自体は卑怯なことではないのでございましょう

   (中略)
  しかし、時に高い志や精神性はそれを禁じ手としてしまうのです。
  勝つために死ね、そんなものは策でも何でもない、計略でもない、死んだら負けです

 さらに忠臣蔵の義士たちの死に関して武士ならば”義に生き義に殉じる”生き方も正しいかもしれないが近代的戦争でそれは時代遅れ精神論だけでは立ちいかぬと断じています。”一命を投じても通さねばならん義とてあろう”と食い下がるなきと老人に対し、浅野内匠頭に切腹を命じ、お家再興の願いを退けたのは幕府で、吉良上野介は契機に過ぎない、本来は幕府に抗議すべきで吉良を討つは単なる腹癒せと見ることもできると

  弔堂主人 :吉良は討たれても幕府は無傷。
        家が滅びようが藩が取り潰されるようが
        幕府は痛くも痒くもない
  なきと老人:だが諸民は喝采した

         (中略)
  弔堂主人 :義は、命と引き換えにできるほどに重い
        そうした在り方は幕府にとっても有り難かったというだけのこと
        その方が都合が良かっただけです
  なきと老人:都合とは、誰の都合だね
  弔堂主人 :幕府ですよ

 引用が長くなってすいません。でも、忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(*3)
 一つは、戦略的思考と道徳ってのがあるべき姿として一致すりゃいいですが、必ずしもそうとは限んないということ。ましてや国家の一大事とか企業の存亡にかかわるとなりゃなおさらのこと。修身の教育が国家戦略に組み込まれていいようにされたってのは歴史の良く知るところです。
 もう一つは、大衆が喝采するような出来事が、実は裏で誰かさんにいいように利用されている可能性があるってこと。表向き”よくやった!”みたいな論調で書かれていても裏側に回ると、うさんくせ~何かがあるんじゃないかと考えとかないとかなりヤバイんじゃね?って気になります。最近の国際情勢なんか見てるとねぇ・・・

 さて、この”なきと老人”とは誰でしょう? 
 回答は本書にてお楽しみください
 ”『書楼弔堂』シリーズガイドブック”としてKindle版でさわりの部分と著者インタビューが無料で読めますん。ご興味がありましたら、そっちからでもどうぞ。

《脚注》
(*1)本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(
 本屋で本かって、古本屋で本買って、Amazonで本買ってたら財布が持ちましぇ~~ん!
(*2)リコメンデーション
 ”ほしい物リストにある商品に基づくおすすめ商品”ってあれです。協調フィルタリングにデータマイニング、ビックデータの活用など最先端テクノロジーてんこもり。最近では人工知能なんかの技術も使ってそうな。中身は聞かないでください。分かっていないんで・・
(*3)冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると
 マキャヴェリズムとは”どんな手段や非道徳的な行為も、国家の利益を増進させるのであれば肯定されるという思想”(wikipediaより)。マキャヴェリの”君主論(岩波文庫他”の内容に由来するそうですが、この本もまだ読んでないなあ。

潜水艦は”沈む”ではなくて”潜る”。ではオスプレイは”墜落”なのか”不時着”なのか?(クジラの彼/オスプレイ)

 ども、ブログを書くのに”言葉”を大切にするおぢさん、たいちろ~です。
 2016年12月13日に沖縄の海岸近くにオスプレイが落っこちました。何かと話題になる機体ではありますが、今回の報道で気になったのが同じ事象について登場する人やマスコミによって言葉の使い方がまったく違うんですな。沖縄県や一部のマスコミは”墜落”という言葉を使い、アメリカの司令官や日本政府、他のマスコミは”不時着”という言葉を使い。朝日新聞の天声人語(2016年12月15日)では、アメリカ軍と日本政府が”不時着”という言葉を使うのは”正常性バイアス(*1)”ではないかとう論調で書いてたんですが、ある本を思い出してそ~なんか~とちょっと気になりまして。
 ということで、今回ご紹介するのはOLと自衛官のレンアイを描いた有川浩の”クジラの彼”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
2015年の横田基地日米友好祭(*2)で展示されていたオスプレイ(MV-22)です

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【本】クジラの彼(有川浩、角川文庫)
 平凡なOL”中峰聡子”が人数合わせで参加した合コンで潜水艦乗りの自衛官”冬原春臣”と出会う。彼女の何気ない一言で意気投合した二人。行方がわからない、いつ帰ってくるかもわからない、メールも電話もほとんどつながらないというハードル高い春臣の職場環境の中、二人のレンアイの行方は??
 名作”海の底(*3)”のスピンオフ、自衛隊系ベタ甘ラブコメです。
【乗り物】オスプレイ(V-22)
 アメリカのベル・ヘリコプター社とボーイング・ロータークラフト・システムズが共同で開発した垂直/水平飛行が可能な垂直離着陸機。可変式のティルトローターが特徴。カテゴリーとしては”輸送機”になります。
 アメリカ海兵隊所属だと”MV-22”アメリカ空軍所属だと”CV-22”と別の組織による運用。事故率が高いと言われているのは”CV-22”の方。任務が違うので一概には言えませんが、これとて他機種に比べてことさら高い訳ではないとの意見もあります(wikipediaより)。細かい話のようですが、このへんもごっちゃにすると話がかみ合わなくなるので・・・


 さて、上記の潜水艦の話題での中峰聡子と冬原春臣の会話から。

  春臣 :潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。
       潜水艦が『潜る』って言う人と『沈む』って言う人。
       素人さんは半々ぐらいの確率で『沈む』って言いがちなんだけど、
       君は違うんだなって
  聡子  :え、だって クジラが沈むとか言わないじゃない
  春臣  :・・・そこで更にクジラが出てくるか

        (中略)
  春臣  :潜水艦はね、沈むって言わないの。必ず浮上するから。
       潜水艦乗りの生理として沈むって言われるのは我慢ならないんだよね。
       潜水艦が沈むのは撃沈されたときだけだから
  自衛官:・・・しつこいようですが、潜水艦は『潜る』です

 外見的には”潜水艦が海上から水中に進んでいく”という事象でありながら、立場が違うと似たような言葉でもまったく違うニュアンスになるってことです。

 てなことを踏まえて、今回のオスプレイの事故をつらつらと。報道されている内容を最大公約数でみると

 ・12月13日に、アメリカ海兵隊の新型輸送機オスプレイ(MV22)が
  沖縄県名護市沖に着水、大破
 ・市街地への直接的な被害はなし。パイロット等は無事脱出

あたり。この事象に対して、沖縄としては

  海上に”墜落”して大破している。そんな危ない飛行機を我々の上空で飛ばすな!

だし、アメリカ軍としては

  あれだけ機体が損傷していても県民や搭乗者に被害を出さなかったで”不時着”
  オスプレイやパイロットが優秀さの証明で、表彰ものだ!

というとこでしょうか。
 飛行機が操作不能あるいは困難な状況の中で目的以外の場所に着地することを指すことまでは同じでも、”墜落”は最悪の事態を引き起こしたってニュアンスがあるのに対し、”不時着”となると最悪の事態を回避できたってニュアンスで使われる言葉じゃないかと。ですんで、御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは”墜落事故”と呼ばれるし(*4)、一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は”ハドソン川の奇跡”と称賛されることになります(*5)。両機長とも最悪の事態を避けるべく最大限の努力を行ったことは想像に難くないですが、結果によって使われる”言葉”が違ってしまうのは仕方がないとはいえ、残念なことでもあります。

 今回の事故に関して言えば、発言する人の立場も違うし、事象へ評価姿勢も違うので使われる言葉が異なるのはわかりますが、言葉の使い方をちゃんと踏まえとかないと重要なモノが見えてこないんじゃないかとちょっと不安になります。マスコミですら半月近くたった今でも、”墜落”を使っているとこと”不時着”を使っているとこが混在。議論がかみ合あっていないのがわかります。

 ことわっておきますが、私は”墜落”か”不時着”のどっちの言葉が適切かとか言うつもりはないし、アメリカや沖縄のどっちかに与するモンでもありません。事故を起こすことは避けなければならないし、事故に対する原因究明と再発防止が重要な課題だと思っとります(だから炎上などさせないように!) ただ、”言葉”がなんとなく軽く使われているんじゃないかな~という昨今の状況をちびっと気にしているだけであります。

《脚注》
(*1)正常性バイアス
 事故や災害が起こったとき「きっと大したことじゃない」と自らに都合よく解釈し、事の深刻さを見誤ることをいう。同時多発テロの時、高層ビルから「ここは大丈夫」。「すぐに収まる」という思い込みで避難しなかった人がいたのもこの心理によるもの(本紙より抜粋)
(*2)横田基地日米友好祭
 毎年9月に横田基地でアメリカ空軍/航空自衛隊により開催される基地開放のイベント。マニア垂涎の航空機の展示や飛行訓練の様子を見ることに加え、都心からのアクセスも良いことからけっこうな人出。福生市観光協会のhp(2016年度)はこちら
(*3)海の底(有川浩、角川文庫)
 横須賀米軍基地が巨大な甲殻類に襲撃された。次々と人が襲われていく中、海上自衛隊潜水艦”きりしお”の夏木三尉、冬原三尉は逃げ遅れた少年少女とともに潜水艦に避難する。一方、神奈川県警の明石警部と警察庁烏丸参事官は状況を打開するためある秘策を実行する・・・
 有川浩の”自衛隊三部作”の”海”オチオシの名作です!
(*4)御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは~
 1985年8月12日に羽田発伊丹行きのボーイング747が御巣鷹の高天原山の尾尾根(通称御巣鷹の尾根)に墜落した事故。乗員乗客524名中520名が死亡するという惨事となりました。
(*5)一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は~
 2009年1月15日にニューヨーク発シアトル行きのUSエアウェイズのエアバスA320がエンジントラブルによりハドソン川に不時着水した事故。
 2016年にクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で”ハドソン川の奇跡”として映画化。この映画もまだ観ていないなぁ。

”理系あるある”の名探偵と犯人、似た者同士なんでしょうか?(すべてがFになる/UNIX)

 ども、人生すべてがFinishしそうなおぢさん、たいちろ~です。
 先日、森博嗣の”作家の収支(*1)”という本を読みました。まあ、それは普通なんですが、問題はこの人の小説をまったく読んだことながなったんですな。けっこうなベストセラー作家で300冊近い小説を出しているにもかかわらずです。これは本読みとしては猛省せねばならん! ということでさっそく代表作を。
 ということで、今回ご紹介するのは森博嗣のデビュー作にして代表作”すべてがFになる”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
カリフォルニア大学バークレー校
(UCB University of California,Berkeley)のセイザータワー(Sather Tower)です。

本書には関係ないんですが、行ったことあるので自慢したくて載せました。すいません

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【本】すべてがFになる(森博嗣、幻冬舎新書)
 孤島にある研究所の密室で天才工学博士”真賀田四季”が死体となって発見された。偶然、居合わせた建築学科の助教授”犀川創平”と彼の生徒である建築学科1年生”西之園萌絵”はその謎を解こうとするが・・・
 1996年に出版、第一回メフィスト賞(*2)を受賞した理系ミステリーの名作です
【コンピューター】UNIX
 本書にコンピューターのOSとして”レッド マジック(red magic)”というUNIX系のオリジナルバージョンが出てきます。このUNIX系のバージョンのひとつが上記のUCBで開発された”BSD(Berkeley Software Distribution)”。多数のノーベル賞受賞者を輩出し、孫正義をはじめとするハイテク系企業の起業者も多い名門大学とタメはることをやってんですから真賀田四季ってのはやっぱ天才なんでしょうな。
 ちなみにUNIXライクなLinuxというOSのディストリビューションに”レッド ハット(Red Hat)”ってのが実在します。(提供するレッドハット社の起業は1993年)

 さて、本書の建てつけは”密室の謎とき””孤島モノ”といわれるジャンルになります。交通や通信が途絶し、出ることも入ることもできない孤島や閉ざされた館の中で次々起る殺人事件・・・ ってとこですが、従来の孤島モノと違うのが、古びた洋館じゃなくて孤島にある最新のコンピューターで制御されたハイテク研究所が舞台だって所です。密室を証明?するのに画像データや操作ログを確認するだの、メール発信ができない原因を調べるのにプログラムをチェックするだの、普通の推理物とはかなり違うアプローチ。それ以外にもロボットに殺人ができるって話題は出てくるわ、自然言語解析によるコントロールを実用化してるだとかテクノロジーの話題が満載。さすがに1996年の出版なのでIT系のガジェットは一昔前のものもありますが、そんなに古いって感じじゃないです。

 本書は”理系ミステリー”と称されているそうですが、こういうテクノロジー系の話題が多いからかって~と、読んだ感じはちょっと違うかな。確かに本書は探偵役にワトソン役が建築学、殺された真賀田四季を始め研究所の人はコンピュータ関係者、本書では唯一文系の記者”儀同世津子”もパズル好きと理系資質、登場人物がほとんどすべて”理系”の人です。じゃあ理系を集めると理系ミステリーになるかというとそんなことはないわけで、キャラクターが”理系あるある”っぽい造詣だってことのほうが大きいからでしょうか。
 推理小説の”推理”ってのは”ことわり(理)を推し量る”ですんで、名探偵の多くは与えられた状況に対して分析的で推論を組み立てる、つまり”理系的なアプローチ”をやっています(やっていない人もいますが(*3))。ですんで、名探偵が理系的であることには感心しないんですが、本書に出てくる人達の感情や行動パターンがあまりにもあまりにも”理系あるある”っぽいんで。
 偏見に満ちた”理系あるある”がこんな感じ

〔殺人事件ごときでは動揺しない〕
 さすがに死体を見つけたすぐは動揺をみせていますが、すぐに日常モードに移行。だって、手足を切りとられたウェディングドレスを着た死体ですぜ、これ。普通だったら冷静か行動なんかできないんじゃないかと

〔殺人犯がいるはずなのに、あんまし心配していない〕
 ”孤島モノ”の最大のドキドキポイントは、今いる人の中に殺人犯がいるってこと。”次は自分が殺されるかもしれない”という不安や、”犯人はあいつかもしれない”つ~疑心暗鬼がいやがうえでもストーリーを盛り上げるモンですが、そんな様子は皆無。文系だったら、もっとオロオロしそうですが・・・

〔コンピューターを全面的に信じていない〕
 密室トリックを調べるのにやってるのが”プログラム改竄”や”バグ探し”。さすがに最近は”コンピューターは間違えない”と思う人は少ないでしょうが、このアプローチは理系ならではかも。

〔ホワイダニットよりハウダニット〕
 推理小説ってのはおおまかに”フーダニット(Whodunit 犯人は誰か)”、”ホワイダニット(Whydunit 犯行の動機は何か)”、”ハウダニット(Howdunit どのように犯行を行ったか)”に分類されます。で、本書の特徴は完全に”ハウダニット”偏重。”ホワイダニット”が完全に希薄なんですな。まあ、やり方がわかれば誰が、なぜが解き明かされるんでしょうが、”なぜ(何のために)”という話はほとんどなし。てか、謎ときが終わった後でも”なんでそんなことの為に殺人まで犯して!?”と感じちゃうレベルです。まあ、”ホワイダニット”がないから、自分が殺されるって危機感が薄いのかもしれません。

〔存在場所がどんどんバーチャル〕
 本書の冒頭でディスプレイを介した面談てのが出てきます。だいたい面談って目の前に人間がいるモンだと思いますが、これだと相手の人がどこにいるかは問わない状態。後半になると謎とき場面で、ゴーグル型ディスプレイを使ったヴァーチャル・リアリティってのが出てきます。まあ、技術自体は1990年代前半には存在していたし(*4)、登場人物がぜんぜん違和感なく使っているのはいいんですが、問題はシステムがネットワークに接続されるとアリバイを含めたリアルな所在場所の感覚が希薄になるんですな。しかも、それに違和感を感じてなさそう。このへんのネットワーク当たり前感覚は理系的かも。
 ”名探偵、皆を集めてさてと言い”という川柳がありますが、すでにリアルで集まる必要すらないわけで。集まった人の前で”犯人はお前だ!”ってカタルシスすらないんだから・・・ 

 犯人による、犀川助教授の評価

  貴方の回転の遅さは、貴方の中にいる人格の独立性に起因しているし
  判断力の弱さは、その人格の勢力が均衡しているからです
  でも、その独立性が優れた客観力を作った。
  勢力の均衡が指向性の方向に対する鋭敏さを生むのです

 まあ、名探偵をこんな風に分析した犯人ってそういないんじゃないかな。しかも、犀川助教授は”分析していただいて光栄です”と肯定モード。犯人とどこが違うのかという質問に対し”よく似たアーキテクチャーのCPUですけれど・・・”と返すとこなんか似た者同士なんでしょうなぁ

 本書はS&Mシリーズとしてまだまだ続くようですので、がんばって読んでみましょい!


《脚注》
(*1)作家の収支(森博嗣、幻冬舎新書)
 ベストセラ作家と呼ばれながらこれといった大ヒット作もないマイナな作家(本人申告)な”森博嗣”による、自身の収入(印税+もろもろ)と支出(経費)に関する考察。
 詳しくはこちらからどうぞ
(*2)メフィスト賞
 講談社による”面白ければ何でもあり”の文学新人賞(wikipediaより)
 本書以外にも西尾維新(クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い)、辻村深月(冷たい校舎の時は止まる)、新堂冬樹(血塗られた神話)なんてのが受賞。このへんもまだ読んでないな~~
(*3)やっていない人もいますが
 最近読んだのだと、京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”に登場する私立探偵”榎木津礼二郎”なんかがこれ。人の記憶を見る能力を持っているため、推理もなんもないというトンデモ迷探偵です。
(*4)技術自体は1990年代前半には存在していたし
 ただし、リアルに近づけようとするとけっこうな処理能力が必要(最近ではゲーム機でもやってますが、最近のゲーム機の能力ってすごいんですぜ!)。本書の中で背景を雲にすることで計算量を節約しているという記載がありますが、当時のコンピュータの性能を考慮しててほほえましいです、はい。

”小説家で食っていけるか?”どうかを考えるには参考になる本です(作家の収支/ダンボー)

 ども、密かにベストセラー作家になることを夢見るおぢさん、たいちろ~です。まっ、妄想ですけど。
 ”ブロガー”を強引に”表現者”だと言いきってしまえば、”小説家”だの”エッセイスト”なんぞになって見たいと思うこともあろうかと。まあ、小説を書くだけだったらがんばりゃできんこたなさそうだし、発表するだけだったら、自分のホームページに掲載すりゃ”発表”したと言いきれるし。ここまではOKなんですが、”××家”と名乗る以上食えないまでも、収入になってなきゃ恥ずかしいかと。このハードルってけっこう高そうなんですな。そもそも作家ってどれくらい稼いでるんだっけ? ってことすらよくわかりません。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな作家の収支報告に関するお話”作家の収支”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。

2015国際ロボット展(*1)”で見かけた”ロボダンボー”です。

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【本】作家の収支(森博嗣、幻冬舎新書)
 ベストセラ作家と呼ばれながらこれといった大ヒット作もないマイナな作家(本人申告)な”森博嗣”による、自身の収入(印税+もろもろ)と支出(経費)に関する考察
 ちなみに、19年間に出版した本は278冊、総部数約1400万冊、稼いだ総額は約15億円だそうです。
【道具】ダンボー
 あずまきよひこの漫画”よつばと!(*2)”登場するロボットというかダンボール製の着ぐるみ。よつばの友達の恵那とみうらが作成。写真の”ロボダンボー”はダンボーをホントにロボットにして動かしちゃうというお茶目なスグレモノ。作製している”ヴィストン”のhpによると11個のサーボモータによりうなずく、首をふる、首をかしげるなどの動きが可能とのこ
と。

 先に謝っときます。実は森博嗣の本読むのこれが初めてで、代表作の”すべてがFになる(*3)”すら読んでおらず、森雅裕(*4)とごっちゃにする始末。心入れ替えて今度読みます。

 森博嗣という人は本人はベストセラ作家ではないと言ってますが、実際には2010年の”Amazon10周年記念 人気商品ランキング”の和書部門20名に選出され、Amazon仕様の”ダンボー”(*5)を贈呈された作家ですんで、まあ、日本でも有数の作家のひとりと言えます(すいません、私はまだ読んでないけど)。

 さて、本代もとい本題に戻って作家の収入の話。本書によると、大まか収入は”印税”、”原稿料(雑誌への掲載、ブログ等)”、”講演料”、”著作権料(漫画、映画、ノベルティ他での使用許諾)”、”対談料”など、どの収入が多いかは人それぞれだそうです。原稿料は1枚4,000~6,000円ぐらいだそうで、ベストセラー作家とそれ以外の人の差が1.5倍程度しかないってのは大きいと見るか小さいと見るか・・・

 よく名前の出る”印税”ですが、これは本の値段に対する作家の取り分。ですんで

 印税 =(本の単価 × 売れた冊数) × 印税率

つ~計算になります。印税の率は出版物の形態により異なっていて

 ・単行本   :10%(雑誌などに発表された場合)
 ・文庫/ノベルズ:10%(最初から文庫だと12%)
 ・ライトノベル:8%(イラストレーター 2%)←噂です
 ・書き下ろし :12%
 ・電子書籍  :15~30%(定価の15%、最終価格の30%)

 面白いのが、どの作家や売れ行きに関わらず印税率は一定で、印税は印刷された部数に対して支払われるんだとか(電子書籍は実売数に対して支払われる)。
 この式でいうと、とにかく”本が売れなきゃお金にならない”、逆に言うと”本が売れれば「不労所得」” まあ、本書でも”不謹慎な言い方”とことわっていますが、作家は追加の労働なしで、出版社は輪転機を回せば商品ができる(限界コストが低い)ので、美味しい商売になると。     松田奈緒子の漫画”重版出来!(*6)”で増刷が決まると大喜びしてますが、作品が世に中に受け入れられたってのもありますが、実利的な部分も大きいんでしょうね。

 ここまで書いててふと思ったんですが、本の形ってこれからどうなってくんでしょう? 一般的には、”単行本→ノベルズ→文庫”の順に出版されて、お値段も”単行本>ノベルズ>文庫”になってます。販売部数もほぼほぼこの順番みたい。でも電子書籍化が進んでいる昨今、本の形にこだわる必要があるんでしょうか?
 ”ライトノベル”というジャンルはマーケットが中高生中心(まあ、大きいお友達もいますが)ってこともあるのか、ほとんど文庫版で出版されているみたいですが、これって”単行本”で出版する(電子書籍版なら単行本の価格で販売する)のってどうなんでしょう?
 最近読んだ初野晴の”惑星カロン(*6)”って本があるんですが、これは”ハルチカシリーズ”っていう青春ミステリーの1冊。これを”ライトノベル”ジャンルとするかどうかはありますが、高校生が主人公のミステリーで、実際読んでみた感じはラノベっぽいし、深夜アニメ化やマンガ化で萌え絵系にもなっているんで、まあ中高生がメインターゲットだとは思います。この本の表紙の変遷ってのがユニークで

 単行本:女子高生の写真が表紙など
 文庫本:表紙イラスト 丹地陽子
 文庫本:表紙イラスト 山中ヒコ(現在はこのバージョンに戻ってます)
 文庫本:表紙イラスト アニメ版(P.A.WORKS制作のアニメバージョン)

実物が”その日、その時のはまり事”のhpに載ってたんで見比べると、出版社側が”文芸→ジュブナイル→一般小説→ライトノベル→一般小説”として売ろうとしてる意図がなんとなく透けて見えそうな・・・
 でもね~、中高生に売りたいんだったら初手から低価格の文庫と電子書籍で出してくれたっていいんじゃないかね~ とか思っちゃいます。まあ、おぢさんも読んでるけど。
 1冊ごとの収入を増やすか、価格を下げて売れる数を増やして収入を伸ばすかは出版社と作家の戦略なんでしょうが、読み手の側から見ると単価を下げてもらった方が助かるんですけどねぇ

 さて、小説家になりたいと思う人にとって最大の問題は”小説家で食っていけるか?”かどうかでしょう。他に収入があって別に印税だけで生活することができればいいんでしょうけど、”プロ”と名乗りたいならそれなりの収入を小説家として確保したいもの。そのへんの話を含め、本書は役立ちそうです。
 この業界に興味のある方は、ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)2015国際ロボット展
 2015年に東京ビックサイトで開催されたロボットショー。446社が参加し、人型ロボットから、最新の産業工作機械などいろんなジャンルのロボットが展示・デモされていてけっこう楽しめました。次回は2017年11月に開催されるそうです。hpはこちら
(*2)よつばと!(あずまきよひこ、電撃コミックス)
 5歳の女の子”よつば”と”とーちゃん”が織りなす日常を描いた漫画。トラマチックな何かがおこる訳でもなく、爆笑するようなネタがある訳でもないにもかかわらず、面白んダよな~~。読むとなんだか幸せな気分になる本です。
(*3)すべてがFになる(森博嗣、講談社文庫)
 犀川助教授とお嬢様学生萌絵によるミステリィ。森博嗣のデビュー作にして最大のヒット作。今、読んでます。総出版部数 約78万部、印税合計6,000万円(本人申告 電子書籍除く)
(*4)森雅裕
 ”モーツァルトは子守唄を歌わない”で江戸川乱歩賞を受賞した推理小説家。クラシックをテーマにした作品なのに講談社文庫版の表紙が”パタリロ”の魔夜峰央というアンバランスさで、こっちも読もうと思ってたのにまだだな~ (講談社文庫版はすでに絶版。ワニの本版で読むことはできるみたいです)
(*5)Amazon仕様の”ダンボー”
 ダンボーの頭が”Amazon”の箱になっているフィギュア。本書には写真が掲載されています。”Amazon”=ダンボール箱でお荷物届くイメージなんで、けっこう素敵なアイデアだと思います!
(*6)重版出来!(松田奈緒子、ビッグコミックス)
 新人女性漫画編集者”黒沢心”を主人公にしたお仕事系コミック。黒木華の主演でテレビドラマ化。ちなみに”じゅうばんでき”ではなく”じゅうはんしゅったい”と読みます
(*7)惑星カロン(初野晴角、角川書店)
 清水南高吹奏楽部に所属する上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)はふとしたきっかけで中学3年生のフルート奏者”倉田あゆみ”と知り合う。彼女はコンクールで”惑星カロン”の演奏許可をもらう為に新藤誠一のブログにアクセスする。誠一は演奏許可のお礼にある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。この謎ときに協力することになったハルタとチカだが・・・
 ハルタとチカを主人公とする青春ミステリー”<ハルチカ>シリーズ”第五巻に収録

植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。毒薬もできます(スキン・コレクター/有毒植物/キョウチクトウ)

 ども、温泉に入れなくなるので刺青はしないおぢさん、たいちろ~です。
 タトゥーをしている外国の人が温泉に入れる入れないでもめてるニュースが時々流れます。入場規制の張り紙に”暴力団ならびに関係者、刺青の方”と暴力団=刺青みたいに扱ってますが、なんでそこまで神経質になりますかねぇ。外国の人にとってはファッションの一種にすぎないんじゃないかと。そもそも、私が子供の頃って銭湯に行けばだいたい一人や二人、背中にりっぱなもんもん背負ったお兄さんやおっちゃんがいたもんですが(*1)。さすがにじ~っと見ることはなかったですが、”すんげ~かっこいい”みたいなのと、”でも、彫ったらすんごい痛そう”みたいなのとないまぜになった感じだったでしょうか。まあ、個人が彫るなら”痛い”かどうかで済む話ですが、これを使っての殺人事件となると話は別
  ということで、今回ご紹介するのは殺人の手段として被害者にタトゥーを彫るというシリアルキラーのお話”スキン・コレクター”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所で見かけたキョウチクトウ。てか、小学校の校庭だったんですけど・・

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【本】スキン・コレクター(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 科学捜査官”リンカーン・ライム”と刑事”アメリア・サックス”の元に、天才的犯罪者”ウォッチメイカー”が死亡したとの報が届けられた。一方、腹部に毒薬で刺青された女性の死体が発見される。残された証拠物件の中にかつてライムが関わった連続殺人事件に関する書籍の切れ端が発見される。そして第二の殺人事件が発生した・・
【花】有毒植物
 全体あるいは一部に毒を持つ植物。毒草。致死性のある毒性の強いのものから、かぶれや、痙攣、嘔吐を引き起こす程度の弱いものまで様々。一律有害というわけではなく、ちゃんと処理すれば食べれるもの(銀杏、ジャガイモ等)から、量によっては薬になる(チョウセンアサガオ)、蚊取り線香の原料になる(除虫菊)など役に立つものも。
 ”有毒植物”自体はそんなに珍しいということもなく”スズラン”、”ヒガンバナ(曼珠沙華)”、”福寿草”なんかもこの仲間。園芸店で”ジギタリス”が売っていた時にはちょっと驚きましたが。
【花】キョウチクトウ(夾竹桃)
 キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。葉が”竹”に、花が”桃”に似ているのでこの名前がついたとか。花、葉、果実などすべての部分に加え周辺土壌にも毒性があり、嘔吐、脱力、倦怠感などの中毒症状を起こすそうです。
(wikipediaより抜粋)


 本書の内容は微小な証拠物件を元にリンカーン・ライムとアメリア・サックス達のチームが”スキン・コレクター”というシリアクキラーを追い詰めていくというもの。相変わらず最後の最後までどんでん返しの連続というディーヴァーならではの推理小説。今回の犯人”スキン・コレクター”はというと、殺人現場で被害者の肌に謎の文字を、しかも毒薬で刺青するという人。単純に殺人だけなら銃やナイフで方が付くものを、わざわざ時間をかけてタトゥー(しかもかなりの出来栄え)をいれるなんてのは、推理小説史上、もっともめんどくさい殺し方の一つではないかと。

 で、今回のネタはそんなユニークな犯人を離れてちょっと毒薬の話を。なぜだかスキン・コレクターは植物から作った毒物がお好みなんですな。前半に登場するだけでも

〔シクトキシン〕
 ドクセリに含まれる。激しい吐き気、強直性の痙攣を引き起こす
〔悪魔の吐息〕
 エンジェルストランペットに含まれる。全身麻痺、記憶喪失を引き起こす
〔ストリキニーネ〕
 マチン科の樹木等から採取される。大きな苦痛を与える

などなど。他にもナス科の植物から採取されるニコチン、ホワイトホコシュから採取されるドールズ・アイズなど続々と(説明は本書での説明)。植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。で、困ってしまうのはリンカーン・ライム。本書より抜粋すると

  工業プロセスで使用され、一般市場で流通している業務用の有害物質であれば
  まずメーカーを突き止め、そこから購入者を追跡することも可能だ
  製造者を識別するための化学標識が含まれていて、
  それが手がかりになって犯人の氏名が書かれた領収書が手に入れることもある。
  しかし、今回の犯人が凶器を自分の手で地中から掘り出したのだとすれば、
  それは期待できない
  地域を絞り込むのがせいいっぱいだろう

 つまり、自分で毒薬を製造するから証拠の追跡ができないと。確かに今の分析技術ってかなりのことができるようで、”和歌山毒物カレー事件(*2)”ではカレーに混入した亜ヒ酸の異同識別をするのに”SPring-8(*3)”つー大型放射光施設までひっぱりだしてやってたし。

 リンカーン・ライムのチームの凄いのは、ほとんど塵のような残留証拠物件をガスクロマトグラフィーやらなんやらで分析して、どこから来たかをデータベースなんかも駆使して解析して、その証拠が持っている意味や犯人の手口、さらには次の犯行を予測する(しかもかなりの確率で当たっている)とこ。そんな天才ライムにとっても”植物由来”ってけっこうやっかいっぽいんですね

 だからといって、一般人が毒物で殺人なんかやっちゃまず捕まるでしょうし(毒物でなくてもNGです)、下手に植物から成分抽出なんぞやった日にゃ、作っている人が真っ先に毒物にやられそうだし。この手の話は推理小説の中だけで楽しむのんが無難なんでしょうなぁ

《脚注》
(*1)立派なもんもん背負った~
 ”もんもん”というのは”くりからもんもん”の略で漢字で書くと”倶利迦羅紋紋”。不動明王の変化身”倶利伽羅竜王”を背中に彫った入れ墨から転じて”入れ墨”も指すようになったとか。(語源由来辞典より
(*2)和歌山毒物カレー事件
 1998年、和歌山県園部で行われた夏祭りで出されたカレーを食べた人が腹痛や吐き気などを訴え、4人が死亡した事件。主婦の林眞須美がカレーへの亜ヒ酸の混入による殺人及び殺人未遂の容疑で逮捕、2009年に死刑が確定(再審請求中)
(*3)SPring-8(スプリングエイト)
 兵庫県播磨科学公園都市内に位置する大型放射光施設140mの線形加速器に周長1.4Kmにおよぶ蓄積リングで8GeVの電子エネルギーを生み出すという施設。書いてる本人は理解できてませんが、すごい施設みたいです。詳しくは公式hpをご参照

チャットボットで蘇った魂は、人を幸せにするのでせうか?(惑星カロン/ブラックジャック/ロボホン)

 ども、さすがにこの年で女子高生ボット(*1)で遊ぶのはな~~と思っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日、チャットボットの説明ってのを聞きました。チャットボットつーのはLINEなどのチャットのインタフェースを使ってロボット(人工知能)が会話をしてくれるというシステム(サービス)チャット+ロボット=チャットボットだそうです。
 説明を聞いた個人的な感想としては、フレーム問題が発生しにくいように問題を設定してやれば実用には耐えうるかな~ってレベルには達しているようです(*2)。”フレーム問題”ってのは、人工知能が問題解決するのにあらゆるケースを全て想定してると情報処理できないので、問題の枠(フレーム)を設定してあ~でもないこ~でもないやりだすのを回避しないといけないという考え方。人間だと”常識”を使って無意識にやっていることを人工知能だと意図的に設定しないといけないつ~話です。
 最近は何度目かのAIブームだそうで、IBMのスーパーコンピューターがアメリカの”ジェパディ!”というクイズ番組で人間代表相手に優勝しただの、プロ棋士とコンピュータソフトによる”将棋電王戦”でプロ棋士に勝っただの、”ロボットは東大に入れるかプロジェト”で偏差値57.1をたたき出しただの(*3)、いろいろ盛り上がっています。
 実際、範囲を限定すればかなりのとこまでできそう。ですが、この先何をやるかて~と”実在の人間の人格をモデルにシミュレーションできないか?”なんてことをやりだしそうかな~なんて思っています。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなソフトの出てくる話”<ハルチカ>シリーズ”より”惑星カノン”であります。
 ※今回の話はネタバレを含みますので、まだ読まれていない方は本書を読んでからどうぞ


写真はたいちろ~さんの撮影。ロボット型携帯電話”ロボホン”です。キハチ青山本店で開催された”ロボホン・カフェ”にて

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【本】惑星カロン(初野晴角、角川書店)
 清水南高吹奏楽部に所属する上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)はふとしたきっかけで中学3年生のフルート奏者”倉田あゆみ”と知り合う。彼女はコンクールで”惑星カロン”の演奏許可をもらう為に新藤誠一のブログにアクセスする。誠一は演奏許可のお礼にある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。この謎ときに協力することになったハルタとチカだが・・・
 ハルタとチカを主人公とする青春ミステリー”<ハルチカ>シリーズ”第五巻に収録
【本】ブラック・ジャック(手塚治虫、秋田文庫)
 ”忠明”は愛する恋人”さより”を電車事故で喪ってしまう。忠明は天才外科医”ブラック・ジャック”に対し、テープに残されたさよりの声をペットのプードル”ヌーピー”にしゃべらせて欲しいと依頼する。気が進まないブラック・ジャックだが、声をミニテープレコーダーにセットし犬の声帯に埋め込む手術を施すが・・・
 ”犬のささやき”より。秋田文庫版第11巻に収録
【道具】ロボホン
 SHARPの提供するロボット型携帯電話おしゃべりするロボットのイメージキャラクターとして登場いただきました(ロボホン自体はチャットボットではありません
 身長19.5cmという小型ながら、歩くわ踊るわ喋るわとめちゃかわういロボット。デザインはロボットクリエーターの第一人者”高橋智隆”氏。携帯電話なのでちゃんと電話出来るし、おでこにプロジェクタがついていて、画面やカベに写真や動画を投影することもできます。最近はロボホンに話しかけると日記にまとめてくれる機能なで出来たとか。いたれりつくせりです。


 今回の”実在の人間の人格をモデルにシミュレーションできないか?”というネタですが、本書にでてきた内容をふまえ、3つに分けて考えてみます

〔人格をシミュレーションできるか?〕
 本書には”デジタルツイン”というAIが登場します。これは既に死んでしまっっている人の情報を埋め込んでチャット上で生き返らせようというオープンソースソフトウェア。本書の説明だと

  行動、思考、癖、声をコンピュータに模倣させ意思決定を行わせる技術

ということになります。死者の思考をコンピュータに移植して復活させるというアイデアそのものはSFなんかではけっこう昔からありますし、日本のTVアニメの最初期作品”8マン(*4)”なんていう名作もあります。
 まあ、お話するだけだったら、現在でもけっこういいセンいってそうですが、問題は特定の人格にどこまで似せられるかということ。本書でのミソはこのデータを

  メールやブログの記録、フェイスブックといったソーシャルネットワークでの情報
  パソコンやスマートフォンでの操作履歴などから集めたデータを基に
  自分自身の物の見方、考え方、癖、好き嫌いを学習させていきます

こう言われるとなんとなくできちゃうかな~って気になります。

〔シミュレーションした人格はオリジナルの人格と同じものか?〕
 これには”正直”と”成長”というのが絡んできます。
 ”正直”てのは、上記のようにネットに書かれた情報がはたして本心なのかどうかというテーマ。ブログやFBのようなデータは誰かに見られることを前提に書かれているのであくまで”表現”でありどうしても修飾や虚勢がまじっちゃう、これは自分だけのために書かれる日記とは本質的に違うものではないかという疑問です。
 ここではハルタ達の音楽の先生による会話なので

  モーツァルトやシューベルトの楽譜は読めても、
  彼らの日記の秘めたる内容まで読み解くことはできないと?

確かに、モーツァルトはあんなにすばらしい音楽を残していますが品行方正とは言い難い人だったようですし、文学の世界なんて文豪レベルの人でも人格的にはどうなのよ? って人が山ほど出てきます。

 ”成長”の問題も実はやっかい。特に死んじゃっている人の場合は。本書の中でデジタルツインの欠点に”復活を遂げた人格は年を取らない”ってのを上げていますが、これは正確ではないんじゃなかろかと。会話によるデータの蓄積や、オープンソースでロジックをアップデートしていけば学習=成長は起こります。むしろ成長した結果がオリジナルと乖離してないかどうかを検証できないこと。だってオリジナルは既にこの世の人じゃないんだし・・・

〔シミュレーションした人格は人を幸せにするか?〕
 非常に漠然とした問いですが、これは目的をどう設定するかにもよるでしょうか。本書での”デジタルツイン”の利用目的を

  後継者が助言を必要をしたとき、自分を見失ったとき、判断に迷ったとき
  イエスかノーかだけ導いてくれればいい
  私たちの心は弱い。だれだって身近な人間を亡くせば
  『あのひとだったらどうするのか?』
  と問いたい瞬間や転機はおとずれるはずです

まあ、気持ち的にはわからんでもないですが、それが良いことかどうか、生きてる人間のエゴイズムではないかという疑問が・・・
 この話でふと思い出したのが、ブラック・ジャックの”犬のささやき”という作品。犬に恋人の声を喋らせた忠明ですが、同じ言葉しか喋らないヌーピーにだんだん飽きてきちゃいます。さらに新しい恋人ができると、その恋人の為にヌーピーを捨てに行くことに

  やれやれ これでやっとさよりの亡霊からのがれられた・・・

ですから、まあひどっちゃひどいですが、自分がそうならないかどうかと問われたら、どうなんでしょうねぇ。 愛する人を失った悲しみを乗り越えて前に進むってことと、愛する人を忘れることとは別なことだと思うんですがね、冷たいかもしれませんが・・・
 結局、チャットボットを使って魂を蘇えらせたとしても、それが人を幸せにするかどうかは結局わかんない。それは技術レベルやデータの揺らぎより、移ろいゆく人間の心のゆらぎのほうが大きいってことでしょうか・・・

 ”惑星カノン”は”<ハルチカ>シリーズ”の中でもかなり異色作ですが、これはこれとしてこっこう面白かったです。

《脚注》
(*1)女子高生ボット
 ”りんな”という女子高校生がチャットしているという設定のサービスを、日本マイクロソフトが開発したって話です、やったことないけど。hp等で公開されてるのを見ると確かに面白そう(まあ、面白そうなのを集めてるサイトなんで)。でも、おぢさん世代が電車の中で遊ぶにゃ、ちっと世間様の視線が・・・
(*2)フレーム問題が発生しにくいように問題を設定してやれば~
 主人:番頭さん、金魚が2匹いなくなったんだが、おまえさん知らないかい
 番頭:あたしは食べていませんよ
 主人:誰がおまえが食べたと言った
    縁側に金魚を置いとくと猫が食べてしまうから、高いところに置いとくれ
 番頭:それじゃ、湯屋の煙突の上へ
 主人:私が眺められないじゃないか。金魚鉢を湯殿の棚の上に上げてくれといってるんだ
 番頭:金魚鉢を湯殿の棚の上に上げてきました。
    ところで金魚はどこへ上げましょう?
落語”猫と金魚”より。話はいろんなバリエーションがありますが、これってフレーム問題の例じゃね?
(*3)偏差値57.1をたたき出したの~
 人間のチャンピオンに勝つというのは”あらゆる人間を凌駕する”ということの比喩であって、コンピューターの方が既に凡人では勝てないとこまで行っています。単純計算だと偏差値”57”というのはおおむね上位から1/4(24.2%)。実際の大学入試だと、”関関同立”、”MARCH”など難関校を含む535大学への合格がA判定(合格率80%以上)に相当するそうで、”俺の方が勉強できる!”と胸を張って言える受験生ってやっぱ少数派じゃないかと・・・Yahoo!ニュースより抜粋
(*4)8マン
 原作はSF作家の平井和正と漫画家の桑田次郎。漫画版は1963年に少年マガジンに連載、アニメ版は1964年に放映。”8マン”は凶悪犯により殺された刑事”東八郎”の人格と記憶を電子頭脳に移植し蘇ったスーパーロボットという設定です。

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