この”解”の冷徹さが”冷たい方程式”なる所以なのかも(冷たい方程式/ニュートンのリンゴの木)

 ども、ランダムな人生を生きているおぢさん、たいちろ~です。
 なんかのSFで読んだんですが、宇宙船であれモビルスーツであれ、宇宙空間を飛ぶ飛翔体ってのは恐っそろしく物理法則に従うんだそうです。宇宙船は推進力を与えない限り、引力とかを勘案すればある時間後の予想到達地点ってのはほぼ算出できるし、無重力状態に見える衛星軌道上でもドックファイトなんかやった日にゃ落っこちると(*1)。
 地上だと空気抵抗やらなんやらでもっとランダムに動くみたいですが、宇宙空間ってのはもっと厳密な方程式に従う世界みたい。ニュートンが万有引力を発見してからこっち、人類は”方程式”の存在を意識せざるを得ないということです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな宇宙空間での冷徹な現実に直面する本”冷たい方程式”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
小石川植物園にあった”ニュートンのリンゴの木”です。

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【本】冷たい方程式(トム・ゴドウィン、ハヤカワ文庫SF)
 災害の薬を待つ人の星まで、パイロット”バートン”一人分の燃料しか積んでいない緊急発進艇(EDS)。その中で若い娘”ミーミア”が密航者として発見された。EDSが星までたどり着ためには彼女を”船外遺棄”するしかない。バードンとミーミアが出した結論は・・・
 SF史に残る名作短編。アンソロジー”冷たい方程式(新版)”に収録
【花】ニュートンのリンゴの木
 ニュートンの生家にあったリンゴの木は、接ぎ木により各国の科学機関に分譲されていますが、小石川植物園の株は、1964年に英国物理学研究所所長サザーランド卿から、日本学士院長 柴田雄次博士に贈られたものです(小石川植物園のHPより抜粋)


 あらすじを兼ねて解くべき方程式を説明すると

・惑星ウォードンで病気が発生し血清がとどかなければ6人が死ぬ
・バートン乗るEDSには一人分の燃料しか積んでいない
・現在のEDSにはミーミアの重量分の燃料がなく、このままだと墜落して2人は死ぬ
・40光年以内にEDSを救出できるクルーザー(宇宙船)はない

この方程式の一般解はというと、星間法規に定められている

  EDS内で発見された密航者は、発見と同時にただちに艇外に遺棄する

というもの。つまり密航者は死を持って償うということです。

 まあ、むさ苦しいオッサン(私みたいな?)だったら速攻遺棄していいかつ~とそういう問題ではないですが、これが美しい少女となるとどうしても”特殊解”がないモンかと考えちゃうわけです。で、本書での密航者はというと二十歳にもならない娘”ミーミア”。ウォードンにいる兄に会いたくて密航を企てたと。規則を破っているという自覚はあるものの、安全な地球育ちの彼女はそれが死に直結するような重要なこととは考えていません。そこにあるのは

  燃料の量hは、質量mプラスxのEDSを
  安全に目的地に運ぶ推力を与えることができない

という”冷たい方程式”だけ。
 この状況の中で、バートンたちはミーミアを救う手立てを検討するんですが、その方程式の”解”が何だったかというのはぜひ本書を読んでみてください。

 解説で編者の伊藤典夫も書いていますが、日本では”方程式もの”といれるジャンルができたほど魅力的なテーマで私もいくつか読んだ記憶があるんですが、まさか本家本元の”解”がこんなんだったのはな~とちょっと驚き。でもこの”解”の冷徹さが”冷たい方程式”なる所以なのかも。
 名作です。ぜひご一読のほどを

 余談ですが、”冷たい方程式”は”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(*1)”という本でSFマニアの空さんが話題にしてて、今回読んでみたんですが、他にもいろんな本の話題が出てきます。その中の1冊に”それどんな商品だよ! 本当にあったへんな商標(*2)”ってのがありました。変なネーミングを扱った本なんですが、まだ読んでなかったのでamazonで調べてみると”この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています”で”冷たい方程式”のみならず、アニメの”RWBY”や、SFの”ゲームウォーズ”が!(*3) ネーミングの話をSFではコンテンツベースのフィルタリング(*4)で引っかかるはずはないんで、きっと”BISビブリオバトル部 4”を読んだ人が、この本に関連したビックデータを元に”協調フィルタリング(*5)”とかを使ってクールな方程式で抽出された結果なんでしょうね、きっと

《脚注》
(*1)君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。集まる本好きが集まるクラブ。ここに集う若者たちの日常を描いた本好きイチオシの小説です。
(*2)それどんな商品だよ! 本当にあったへんな商標(友利昴、文庫ぎんが堂)
 特許庁に登録商標として届けられた笑える珍ネーミングを集めた本。まだ読んでませんが、なんだかおもしろそう
(*3)アニメの”RWBY”や、SFの”ゲームウォーズ”が!
 RWBY:監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース
 ゲームウォーズ:アーネスト・クライン、SBクリエイティブ
(*4)コンテンツベースのフィルタリング
 本の内容や著者などが似ているかどうかを判別して、推薦するものを決めるというやり方
(*5)協調フィルタリング
 多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザと嗜好の類似した他のユーザの情報を用いて自動的に推論を行う方法論(wikipediaより抜粋)
 これを使うと、上記のように関連する本を次々と紹介したり、個人ごとに好みの本を推してくれたりすることが可能になります。

知れ、息子よ。老いて旅するのは賢明ではない(カーブースの書/タビビトノキ)

 ども、まだ60歳前ですが、いいかげん枯れているあるおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、文春砲でもって不倫ネタにされてるおぢさん世代の人が続出しています。まあ、若けりゃいいとか言うつもりはなかですし、個人の話なんでほっときゃよさそうなモンですが、なんだかな~~という感じ。てなことを思っていると、ある本にこんな話が

  かつてある老人がいったとおりである
  年寄りになったら、美女たちが私に見向きもしないだろうと長年悲しんできたが
  いざ年をとってみると。私自身彼女らをほしくないし、
  またほしかったら無様である

 まあ、年をとったら相応に枯れるってことでしょうか。また、このようにも

  

老いて若気のふるまいをする者は、退却時に進軍らっぱを吹くに似る

とも。
 といくことで、今回ご紹介するのは”知れ、息子よ”で始まる人生の忠言集”カーブースの書”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。羽田空港にあるタビビトノキです

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【本】カーブースの書(カイ・カーウース、平凡社)
 著者の”カーウース”はセルジューク朝時代の地方王朝ズィヤール朝の七代目の王(*1)。この君主が愛する息子のために残した人生の忠言集が”カーブースの書”。11世紀ごろの本です。
 老いた王が”別離の文が届く前に運命の叱責、名声獲得の益について書を記して”おかれた父性愛にあふれた内容ですが”時代の風潮として、息子は父親の忠言を実践しない”とも。今も昔も変わらんなぁ・・
 ”ペルシア逸話集(平凡社)”に収録
【花】タビビトノキ(旅人の木)
 英名はまんま”トラベラーズツリー”。羽田空港のプレートによると原産地はマダガスカルで、”大きな葉が扇状に広がって一定の方角を示すことから、旅人に方角を示す木として、各国で旅人を意味する名前が付けられている”とのこと


 本書は44章にわたり、神や富、恋愛、作法からいろんな職業に就き時の心得など広範にわたるもの。さすがに、結婚するなら”処女を娶とらねばならぬ”とか”欲情のためなら市場で女奴隷を買うことができる”といった今の時流に合わないもの、”金のない恋人は目的を果たせない”みたいな身も蓋もないものもありますが、全体的にはたいへん”なるほど”と思わせる内容。お国柄イスラム教的なものもでてきますが、虚心で読めばそれもまた忠言です。

 全部を扱うと多すぎるので、ここでは第九章”老齢と青春について”から”老い”の話題を。冒頭の老人の話もこの章からです。
 で、気にいった忠言をいくつか

〔老人は死なぬ限り老齢の病から安らげない〕
 まずは、老齢に関するもの

  老人とは見舞客がいない病人で、老齢とは死以外に癒す薬がわからぬ病気である
  そこで老人は死なぬ限り老齢の病から安らげない

けっこう老齢についてのぼやきが多いんですが、決して死そのものを恐れてはいないんですな。太陽が昇り沈んでいくようにそれは必然だということ。”老齢は私の敵であり、敵については嘆くだけ”との達観も。
 だからこそ

  軽薄な年寄りになるな、また不潔で不正な老人になるな
  老人は知性、行動に若気があってなならぬ。老人はつねに情け深くせよ
  若いうちは若者らしく、年をとったらと年よりらしくせよ
  年をとってから若者らしくするのはみっともない

などなど。まあ、健康に気をつけて長生きするにこしたことはないですが、アンチエイジングとかで若モンになんとかしがみつこうとするのもなんだかなと。”年相応”って意外と重要なのかもね。まあ、行動の話ですが。

 ただし、若者に対しても脅しのひとことも

  老人を敬い、老人に対して下らぬ口をきくな
  老人と賢者の返報は厳しいぞ

〔老いて旅するのは賢明ではない〕
 次は”老人と旅”に関する話。

  老いたら一つの場所に落ち着くよう心掛けよ
  老いて旅するのは賢明ではない
  特に資力のないものはそうである
  老齢は敵であり、貧困もまた敵である
  そこで二人の敵と旅するは賢くなかろう

 ただし、どうしても旅に出ないといけないなら、神の恵みがあれば”異郷を旅することは家にいるよりもよい”とのフォローはしてますが、それでも”決して家を恋しがらず、好きな場所に落ちつけ”とも。

 少し補足すると、カーウースの時代は11世紀なんで、現代みたいに飛行機とかに乗って、安全で快適な旅がホイホイできる時代じゃなかったんですな。大国に挟まれた弱小王朝なんで政情も不安定だったようですし、また交通機関も安全じゃなかったでしょうし。また、”商取引について”の章で商人が利益を得るために商品を運ぶのに”盗賊、追い剥ぎ、人食い動物や道の危険”てのをあげてるし。そんなとこに老人がひょこひょこ旅をするってのは確かにリスキー。

 また、カーウース自身が王族ということもあるんでしょうが、けっこう貧乏人に対してシビアなんですな。”富によりいっそう信仰に励むことについて”の章より巡礼=旅に関してのコメント

  神は体力も資力もない貧しい者には旅を命じなかった
   (中略)
  知れ、息子よ。もし貧しい者が巡礼をしたら身を破滅に陥れよう
  金持ちのすることをする貧乏人は、健康な人がすることをする病人を同じである

 実はこの本を読むきっかけになったのは、沢木耕太郎の”深夜特急(*2)”の4巻に出てたんですな。沢木がイランのシラーズのモスクで日本人から譲り受けた本がこれ。この時沢木はまだ20代半ばですが、貧乏旅行の真っ最中。時代も1974年ごろの話です。
 特に上記の”老いたら一つの場所に落ち着くよう心掛けよ”はこの本の中でも引用されていて、まだ年が若いとはいえ、お金もなく将来の展望もない中、異郷の地で一人この本を読むのってどんな気持ちだったんだろうと思ってこの本を読む気になりました。

 まあ、私も老齢と貧困のダブルパンチ喰らってる人ですが、定年したら、キャンピングカーとか乗って、旅を住処とする生活もいいかな~とか思ってたりもするんですがね。一応”異郷を旅することは家にいるよりもよい”とかも言ってくれているし・・・

 今回は引用が多くなってすいません。まあ、私のつたない文章より本書のほうがよっぽど面白かったんで。
 収録している”ペルシア逸話集”は1969年と古い本ですが、図書館で探すか、高くてもよければオンデマンドで入手が可能。好き嫌いはあるかもしれませんが、私は楽しく読ませんていただきました。

《脚注》
(*1)地方王朝ズィヤール朝の七代目の王
 解説によるとズィヤール朝が927~1090年頃、カーウースが1049年~?。本書が書かれたのは諸説あるようですが、1082~83年ごろだそうです。
(*2)深夜特急(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。なけなしのお金、全6巻中第3巻でやっとスタート地点のデリーに到着というスピード感、この無計画さがこの手の旅行の醍醐味なんでしょう、たぶん。
 発刊当時はバックパッカーの間でいわばバイブル的な存在だったそうです。

「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、自立とは何者にも依存しないということではない(超ソロ社会/海街diary/ヒトリシズカ)

 ども、夫婦と子供2人、有業者が世帯主1人だけという典型的な標準世帯(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 人が結婚しようがしまいが、いくつで結婚しようが、子供を作ろうが作るまいが、結局それは個人の勝手で人様がどうこう言う話ではないはずです。いかにマクロ的(社会)に少子化がど~したとか、高齢化がこ~したといった議論があっても、ミクロ的(個人)に見ればそんなことは知ったこっちゃないはずなんですが、どうも人ってのは”標準幻想”から自由になるのは難しいのか、そこそこの年齢になってくると”既婚”と”未婚”というカテゴリ分けが出てきちゃいます。言ってるほうは善意でもあるんでしょうが、それだけにタチが悪い面も・・
 ということで、今回ご紹介するのは今や次世代の標準になりつつある独身社会を扱った本”超ソロ社会”と読んで思い出した”海街diary”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。向島百花園のヒトリシズカです

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【本】超ソロ社会(荒川和久、PHP新書)
 サブタイトルは”「独身大国・日本」の衝撃”。
 未婚化、非婚化、離婚率の上昇、配偶者との死別による高齢単身者の増加など、今後ますますソロ社会化する日本を分析した本。
【本】海街diary(吉田秋生、小学館)
 父の死をきっかけに腹違いの姉”香田幸、佳乃、千佳”達とともに生活することになった中学生の”浅野すず”。鎌倉を舞台に繰り広げられる彼女と取り巻く人々との恋と日常を描いた青春グルアフィティ。
【花】ヒトリシズカ(一人静)
 センリョウ科 チャラン属の多年草。写真を撮ったのが秋でしたので花は咲いてませんが春になると白いブラシ上の花が咲きます。
 ”独りで静かに暮らす”ってイメージで今回載っけたんですが、名前の由来は吉野山で歌舞した”静御前”の美しさになぞらえたからだとか。”静御前”は源義経の子を産み、その子と引き離された悲劇の女性ですが決してソロだったわけではなさそうです。


 この本を読んだ感想ですが”人生前期おひとりさま”と”人生後期高齢単身者”に大きく分かれるんかな、って感じです。”人生前期おひとりさま”ってのは若い人達が結婚するのしないの、子供を産むのうまないのという話”人生後期高齢単身者”ってのは結婚せず、子供を持たずに高齢世代になった人、離婚や死別などので単身者になった人の話。同じ”独身”ではありますが実はそうとう色合いが違います。”独身=若い”、”独身=未婚”ってなテンプレな話じゃないってことのようです。まずは”人生前期おひとりさま”の話から。

〔”人生前期おひとりさま”の話〕

 上記で”そこそこの年齢”って書きましたが、これってけっこう時代によって感覚違うんですな。1970年代ぐらいの本を読んでると”行き遅れ”、”オールドミス”なんてのが出てきます、今では完全なNGワードですが。で、これがいくつぐらいかというと感覚的には20代後半ぐらいだったでしょうか。29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます(*2)。1980年にトップアイドルだった”山口百恵”が結婚したのが21歳でしたがめちゃくちゃ早いって感じでもなかったですね。1975年に発表された”22才の別れ”とういフォークソングは22才の彼女が彼氏の知らないところお嫁にいく曲ですがめちゃくちゃ早婚ってわけでもなかったですし。
 これが現代だと、この歳で結婚したら相当な早婚って感じでしょうか。先日結婚を発表した武井咲が23歳。東京都にお住まいの超セレブなお嬢様が婚約したのが25歳。武井咲はデキ婚という事情があるにしても、お二方とも早婚ってイメージじゃないかと。アラサー世代はどうかというと、”東京タラレバ娘(*4)”なんか読んでると33歳(原作)のお嬢様方が多少のあせりはあるものの、めちゃくちゃテンパってる感があるわけでもなさそうだし。
 まあ、はっきり言って社会背景がこの数十年で相当変わってきてるんですな。年代別初婚年齢を見ると、1970年で男性 26.9歳、女性 24.2歳、1980年で同じく27.8歳、25.2歳、2014年で31.1歳、29.4歳。あくまで平均値なんで、それぞれバラツキ具合も違うんでしょうけど。
 で、何が言いたいかつ~といくつで結婚するかなんて個人の勝手の上に社会背景が違うんだから、いくつだと結婚しているべきみたいなのにそれほどこだわる必要はないと。おぢさん世代から”オレが若い頃はお前の歳には結婚していた”とか、”結婚して、家庭を持ち、子供を育ててこそ一人前”みたいなお説教(結婚規範)をそんなに気にすることはないんじゃないかと。むしろ本書でも言及してますが、こういった”結婚したら幸せになれる”みたいなある種の宗教的な思い込みがむしろ問題だと。

  「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている
  そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた

  ネット上では、なんの根拠もなく、「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」
  などどいう記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる

 もうひとつ、本書で言及しているのは”女性の結婚動機(離婚も)として経済的理由が大部分を占める”との話。身も蓋もないと思われるかもしれませんが・・ 
 結婚という観点でターニングポイントになっているのが”男女雇用機会均等法(1987年)”と時を同じくして発生したバブル景気。女性の社会進出を推し進めたこの法律とバブル景気で女性の収入が上昇したんですが、統計データとしては年収が高い女性ほど生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向にあるそうです(*4)。つまり仕事に生きがいを感じてバリバリ働いて金を稼ぐ女性ほど結婚しない傾向にあると。ですんで、今少子化高齢化対策として勧められている”女性活躍のための重点方針”が女性の希望や夢を実現させるのに有効でも少子化対策になるかというとどうなんだかな~、というのはまた別の話。

〔”人生後期高齢単身者”の話〕
 実は本書を読んで根が深いと思ったのはこっちの話
 上記の未婚者がそのまま歳をとっていくこともそうですが、離婚で独身に戻ることもあるります。男女の平均余命の差+夫婦の年齢差を考えると統計的には高齢女性が単身になる場合が多いし、夫が妻に先立たれることになれば同じく単身だし。
 こっちはおぢさんの説教でどうにかなる話ではなく、本書で指摘しているように”ソロ充(*5)”つまり”ソロで生きる力”、精神的な自立をどう作るか

  「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、
  自立とは何者にも依存しないということではない。
  むしろ、依存することのできる多くのモノや人に囲まれて、
  自ら能動的に選択し、自己決定できる人こそが「精神的自立」と解釈したい

 これを読んで思い出したのが”海街diary”でのエピソード
 恋人だった海猫食堂のおばちゃん”幸子さん”を末期ガンで亡くした”山猫亭”の主人の福田さん。口は悪くて偏屈な関西人ですが、意外にいろんな人に慕われている人。突然、遺言状を作ると言いだして相談にのっているのが幸子さんの相続でいろいろ世話になった信用金庫の坂下さん(すず姉 佳乃さんの恋人)。福田さんの言葉

  天涯孤独て気取ってみても そう簡単に人は独りっきりになれるわけやない
  それは多分 ありがたういことなんやろな

これに対しての坂下さんのコメント

  孤立と孤独は別なものだ
  あの人は孤独を好んではいるけれど 孤立してるわけじゃないからね

 私自身、リアル老後がひたひたと忍び寄る昨今、肝に銘じておきたいものです

 本書は独身の人のみならず、中高年の単身者、それと高齢単身者予備群(全ての人に可能性があります!)が一度は読んどいた方がいいかもの本です

p.s.
 本書に”結婚しない(したがらない)男の見分け方”の12の質問ってのが載ってます。○が8ケ以上なら真正ソロ男で結婚したい女性は近づかないほうがいい、3ケ以下なら良き夫になる資質あり。キーになる3つの質問に○がつく男はそれだけでソロ男なのでお付き合いしないほうが良いというチェックリスト。ちなみに私は○が9ケ、キーの3つは全て○でした・・・(笑)

《脚注》
(*1)標準世帯
 総務省統計局の定義。”標準”が”あるべき姿”と誤解を招くという理由で最近は”モデル家族”というんだそうですが、この手の言い換えってなんだかな~~ ”夫は一生サラリーマン、妻は専業主婦で離婚しない”というライフコースは同じだそうですが、今やこんな人生は少数派だそうです(知恵蔵の解説より)
(*2)29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます
 水谷ミミが1979年に発表した”もうすぐ30”って曲があるんですが、これなんか29歳でもう”もうすぐ30! だんだんババァだ♪”と歌ってます。恐いもの見たさで聴いてみたい方はこちらをどうぞ
(*3)東京タラレバ娘(東村アキコ、講談社)
 ”あの時こうしてタラ・・”、”あそこでこうしてレバ・・”脚本家の鎌田倫子(33歳独身)は高校時代からの親友の香や小雪と焦りながらも”女子会”をを繰り返す毎日。そんな所に人気モデルのKEYが現れ・・・
 第二巻のあとがきマンガで作者が友人から
  マンガだとしても もうホラーマンガですよ コレ!!
 と責められているシーンがあるんで、独身女性にとってはホラーマンガみたいです
(*4)生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向~
 ”生涯未婚率”とは日本の人口統計で”50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合”を意味しますが、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと。
(*5)ソロ充
 言いだしっぺは恋人と破局したあとのしょこたんこと中川翔子
  最近”ぼっち”っていう言葉を”ソロ活動”って言い換えると強くなれた気がする
  毎日”ソロ充”してます

から。こう言う言い換えはとっても賛成です!

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(書楼弔堂 炎昼/時計草)

 ども、”私の一冊”を求めて流離うおぢさん、たいちろ~です。
 家族で買い物に行くんですが、奥様や娘と違って洋服を買う趣味がないもんで、だいたい本屋さんで待っています。手間のかからない旦那といやそうなんですが、なんだかな~と思うことも。まあ、店の外待たれるよりはましだろうと割り切っています。
 まあ、新しい本をぷらぷら見るなら本屋さん、掘り出し物を探すなら古書店ってとこでしょうか。まあ、Kindleを買ってからこっち、本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(1)
 本屋でぷらぷらする最大の魅力は、思いがけなく面白そうな本を見つけることAmazonのリコメンデーション(*1)も悪くはないんですが、意外性って言う意味では本屋で適当にやってるほうが高いかも。Amazonも本屋さんもどっちも捨てがたい魅力ではあります。
 ということで、今回ご紹介するのは、究極の貴方にお勧めの一冊を紹介してくれる本屋さんの話”書楼弔堂”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。宮城県やくらいガーデンで見かけた”時計草”です

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【本】書楼弔堂 炎昼(京極 夏彦、集英社)
 明治30年代初頭。塔子お嬢さんは道端で体調を崩していた”なきと”と名乗る老人を休ませるために、書舗”弔堂”に案内する。陸灯台と見紛う外見、吹き抜け三階建の壁面一面は全て本で埋め尽くされる書楼。そして弔堂主人は僧侶から還俗し、その人の一冊を売るという人物。そして、意外にも主人と”なきと”は旧知の間柄だった・・・(探書拾壱”無常”より)
 後に歴史に名をなす明治の偉人達と弔堂主人と本との出会いがやがてその人の人生に影響を与える”書楼弔堂”シリーズの第二巻。
【花】時計草(とけいそう)
 トケイソウ科・トケイソウ属の植物の総称。名前の由来は花の雌しべが時計の長針、短針、秒針のように見えるから。英語では”passion flower”でこっちは”キリストの受難の花”という意味。子房柱が十字架、3つに分裂した雌しべが釘、副冠は茨の冠に見えるからだとか。いろいろあるもんですな。
 本書では、牧野富太郎の植物のイラストが使われていて、その一つからあんまし見たことなさそうな花をチョイス。ちなみに塔子お嬢様に言わせると、充分に美しい範疇にはいるものの、何処か作り物めいていてでき過ぎのわざとらしさがあって気味悪いと。さんざんな言われようです。けっこう面白い造形の花だと思うんですけどねぇ(探書拾”変節”より)

 弔堂主人ですが、古今東西の書物に限らず、錦絵から新聞に至るまで博学なことこの上ない人。同じく京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”に登場する”京極堂”こと”中禅寺秋彦”も古書店主人で大概物知りですがこっちは宗教、伝承、民俗学、妖怪学方面の人。弔堂主人というと、文学、芸術、哲学、科学の分野までとオールジャンルの人。とても凡人のよくする所ではありません。こんな主人がお客との会話の中から人となりを推理して勧める本だから、まあ、はずれはない模様。さらに恐ろしいのは主人が勧める本がその人の人生を変えてしまう、その人が後に偉人となって結果として社会まで変えてしまう、そんなお話です。まあ、その人が誰かを考えながら読むのも本書のお楽しみでしょうか。

 まあ、中身は本書を読んでいただくとして、今回は弔堂主人となきと老人が会話した”忠臣蔵”の解釈が面白かったのでそっちの話を。
 ”忠臣蔵”の中で吉良邸討ち入りの合図に叩いた”山鹿流陣太鼓”つーのが出てきますが、この”山鹿流”ってのは山鹿素行による”兵法”だとなんとなくイメージしてたんですが、本来は修身治国を説いた士道学なんだとか。のちに勤皇の志士の理を支えるものになり、なきと老人のバックボーンになってます。
 で、弔堂主人が指摘したのが、志と兵法の矛盾

  志はどうあれ、あらゆる軍略は勝つために立てられるものではございませぬか
  ならば、相手が何者であれ、不意打ちだろうが待ち伏せだろうが一向に構いますまい
  時には退却も計略のうち。逃げること自体は卑怯なことではないのでございましょう

   (中略)
  しかし、時に高い志や精神性はそれを禁じ手としてしまうのです。
  勝つために死ね、そんなものは策でも何でもない、計略でもない、死んだら負けです

 さらに忠臣蔵の義士たちの死に関して武士ならば”義に生き義に殉じる”生き方も正しいかもしれないが近代的戦争でそれは時代遅れ精神論だけでは立ちいかぬと断じています。”一命を投じても通さねばならん義とてあろう”と食い下がるなきと老人に対し、浅野内匠頭に切腹を命じ、お家再興の願いを退けたのは幕府で、吉良上野介は契機に過ぎない、本来は幕府に抗議すべきで吉良を討つは単なる腹癒せと見ることもできると

  弔堂主人 :吉良は討たれても幕府は無傷。
        家が滅びようが藩が取り潰されるようが
        幕府は痛くも痒くもない
  なきと老人:だが諸民は喝采した

         (中略)
  弔堂主人 :義は、命と引き換えにできるほどに重い
        そうした在り方は幕府にとっても有り難かったというだけのこと
        その方が都合が良かっただけです
  なきと老人:都合とは、誰の都合だね
  弔堂主人 :幕府ですよ

 引用が長くなってすいません。でも、忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(*3)
 一つは、戦略的思考と道徳ってのがあるべき姿として一致すりゃいいですが、必ずしもそうとは限んないということ。ましてや国家の一大事とか企業の存亡にかかわるとなりゃなおさらのこと。修身の教育が国家戦略に組み込まれていいようにされたってのは歴史の良く知るところです。
 もう一つは、大衆が喝采するような出来事が、実は裏で誰かさんにいいように利用されている可能性があるってこと。表向き”よくやった!”みたいな論調で書かれていても裏側に回ると、うさんくせ~何かがあるんじゃないかと考えとかないとかなりヤバイんじゃね?って気になります。最近の国際情勢なんか見てるとねぇ・・・

 さて、この”なきと老人”とは誰でしょう? 
 回答は本書にてお楽しみください
 ”『書楼弔堂』シリーズガイドブック”としてKindle版でさわりの部分と著者インタビューが無料で読めますん。ご興味がありましたら、そっちからでもどうぞ。

《脚注》
(*1)本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(
 本屋で本かって、古本屋で本買って、Amazonで本買ってたら財布が持ちましぇ~~ん!
(*2)リコメンデーション
 ”ほしい物リストにある商品に基づくおすすめ商品”ってあれです。協調フィルタリングにデータマイニング、ビックデータの活用など最先端テクノロジーてんこもり。最近では人工知能なんかの技術も使ってそうな。中身は聞かないでください。分かっていないんで・・
(*3)冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると
 マキャヴェリズムとは”どんな手段や非道徳的な行為も、国家の利益を増進させるのであれば肯定されるという思想”(wikipediaより)。マキャヴェリの”君主論(岩波文庫他”の内容に由来するそうですが、この本もまだ読んでないなあ。

カレル・チャペックのパーソナリティとは無関係に職業選択の自由が保障されている以上、SF作家が園芸家だってよい訳で・・・(園芸家12ヶ月/カレル・チャペックの家)

 ども、こう見えてIT企業に勤めるおぢさん、たいちろ~です。
 ある仕事をしている人ってのは、なんとなく特定の趣味を持っているようなイメージがあります。IT企業に勤めていると家でも日長夜長パソコンをいじっているような感じがしますし、自動車メーカーに勤めていると休日にはドライブに行ってそうだし。職業的にも警察官は推理小説がお好みだったり、本屋さんだと寸暇を惜しんで本を読んでたり。作家だと、恋愛小説家は恋を夢見る妄想にふけり、SF作家は科学の専門書を読みふけり。まあ、推理小説家が趣味で殺人を企てているとは言いませんが・・・
 実際は職業的イメージと本人の趣味が必ずしも一致するわけではないでしょうが、さすがに最先端のSF作家の趣味が園芸だとなるとちょっと意外感があろうかと
 ということで、世界で最も有名はSF作家による園芸の本”園芸家の12ヶ月”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。花菜ガーデンにあるカレル・チャペックの家です

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【本】園芸家12ヶ月(カレル・チャペック、中公文庫)
 チェコの作家カレル・チャペックによる園芸マニアの生態を描いた?エッセイ。今風だと園芸オタク?? エスエフのエの字も出てきませんのでSFファンの方には肩すかしかもしれませんが、そのマインドはSFオタクに通じるものがあるかと。
【旅行】カレル・チャペックの家
 神奈川県平塚市の神奈川県立花と緑のふれあいセンター”花菜ガーデン”にあるカレル・チャペックの家と庭をイメージした建物(休憩所)です。私が行った時にはチューリップ祭りやってて、そのほかにもネモフィラ、やフロックス、アネモネ、梨、レンギョウなんてのが咲いてました。結構広い公園で入場料520円(5月のピークシーズンは880円)とリーズナブル。園芸マニアの方はぜひどうぞ

 カレル・チャペックという人、今さらですが戯曲”R.U.R(*1)”の中で世界で初めて”ロボット”という言葉を使った人です(本人曰く、ロボットという言葉を作ったのは兄のヨゼフだとか)。チャペック自身は作家、劇作家、ジャーナリストですので(wikipediaより)必ずしも理系の人という訳ではなさそうですが。
 まあ、チャペックのパーソナリティとは無関係に職業選択の自由が保障されている以上、チャペックにはなんの責任もない訳ですが(*2)、それにしてもSF作家と園芸家のギャップってけっこう大きいよなぁ・・・

 でも、本書を読んでると園芸家の生態と現在のSFオタクの生態って微妙にオーバーラップするところがあるかと。
 なんせ、ありとあらゆる種類の苗を植え、マニアックな品種の違いにこだわり、所狭しと苗を植え、隙間があろうもんならさらに新しい苗を植え、人には珍しい苗を自慢し、人が自慢するのはなんとか手に入れようとし、品種にこだわるとすべての種類を集めないと居ても立ってもおられず、普通の人なら見向きもしないような土壌の改良に情熱を傾け、お休みするはずの冬にもカタログで集めるべき苗の注文にいそしみ etc、etc、etc

 これってSFオタクと同じ?!
 ありとあらゆるSFを読み、マニアックなストーリの見解にこだわり、所狭しと本を並べ、隙間があろうもんなら更に新しい本を買い、人にはレアアイテムを自慢し、人が自慢するアイテムは古本屋を駆けずり回っても手に入れようとし、ジャンルにこだわるとすべての本を読了しないと居ても立ってもおられず、普通の人なら見向きもしないようなマイナーな知識の吸収に情熱を傾け、お休みするはずの(しないけど)のレジャーシーズンにも読むべき本をAmazonでポチットし etc、etc、etc
 そこ、炎上させないように!

 このブログで園芸家向けの人も読むかもしんないんでそっちの話も一つ。
 私自身、土地を借りて園芸ってか野菜作りをしてた時期もありまして。てか花は一切植えず食べられるものしか植えてないというのが正確な表現です。
 チャペック自身はアンチ野菜作りの人のようで、一時期野菜作りをした時のことがトラウマみたいです

  むろん、一種のローマンチシズムから、
  自分は百姓になったような幻想にひたりたいためだった。
  ところが、間もなくわたしは、
  一日に百二十個の廿日ダイコンをひとりで平らげなけねばならないことがわかった
  うちじゅうでもう、みんなが食べようとしなくなったからだ

 野菜というのは一度育ててみれば分かりますが、ある時期にいっぺんに大量に収穫できます。まあ、長期間にわたってずっと採れるものもありますが、それでも1~2ケ月というレンジです。まあ我が家の場合は少なくとも家族は喜んで食べてくれましたんで、一人で平らげることはなかったですが(*3)、それでも会社におすそ分けするとかしないとさばききれんかったですねぇ。確かにある程度の面積で家庭菜園やる時のネックかもしれません

 本書は、まったく園芸の本なので図書館で探される場合は日本十進分類法で”園芸(620)”のコーナーにあります(私が借りた時はそうでした)。SFとはまったく縁のない本ですが、それをさっぴいても面白いですよ。

P.S.
 最近、近所で土地を貸していただけることになり家庭菜園を再開いたしました
 久しぶりの鍬使いで筋肉痛でピキピキですが・・・

《脚注》
(*1)R.U.R
 岩波文庫で”ロボット(R.U.R)”で読めるみたいですが、すいません、まだ読んでません。ちなみに”R.U.R”は”ロッサム万能ロボット会社”の略です
(*2)チャペックのパーソナリティとは無関係に~
 モトネタは川原泉の”空の食欲魔人(白泉社文庫)”より
  しかしながら、それ自体彼のパーソナリティとは無関係に
  職業選択の自由が保障されている以上、彼にはなんら責任はない
  なぜなら、彼はパイロットだった・・・

(*3)一人で平らげることはなかったですが
 その代わり手伝ってくれることもなかったですが・・・

植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。毒薬もできます(スキン・コレクター/有毒植物/キョウチクトウ)

 ども、温泉に入れなくなるので刺青はしないおぢさん、たいちろ~です。
 タトゥーをしている外国の人が温泉に入れる入れないでもめてるニュースが時々流れます。入場規制の張り紙に”暴力団ならびに関係者、刺青の方”と暴力団=刺青みたいに扱ってますが、なんでそこまで神経質になりますかねぇ。外国の人にとってはファッションの一種にすぎないんじゃないかと。そもそも、私が子供の頃って銭湯に行けばだいたい一人や二人、背中にりっぱなもんもん背負ったお兄さんやおっちゃんがいたもんですが(*1)。さすがにじ~っと見ることはなかったですが、”すんげ~かっこいい”みたいなのと、”でも、彫ったらすんごい痛そう”みたいなのとないまぜになった感じだったでしょうか。まあ、個人が彫るなら”痛い”かどうかで済む話ですが、これを使っての殺人事件となると話は別
  ということで、今回ご紹介するのは殺人の手段として被害者にタトゥーを彫るというシリアルキラーのお話”スキン・コレクター”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所で見かけたキョウチクトウ。てか、小学校の校庭だったんですけど・・

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【本】スキン・コレクター(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 科学捜査官”リンカーン・ライム”と刑事”アメリア・サックス”の元に、天才的犯罪者”ウォッチメイカー”が死亡したとの報が届けられた。一方、腹部に毒薬で刺青された女性の死体が発見される。残された証拠物件の中にかつてライムが関わった連続殺人事件に関する書籍の切れ端が発見される。そして第二の殺人事件が発生した・・
【花】有毒植物
 全体あるいは一部に毒を持つ植物。毒草。致死性のある毒性の強いのものから、かぶれや、痙攣、嘔吐を引き起こす程度の弱いものまで様々。一律有害というわけではなく、ちゃんと処理すれば食べれるもの(銀杏、ジャガイモ等)から、量によっては薬になる(チョウセンアサガオ)、蚊取り線香の原料になる(除虫菊)など役に立つものも。
 ”有毒植物”自体はそんなに珍しいということもなく”スズラン”、”ヒガンバナ(曼珠沙華)”、”福寿草”なんかもこの仲間。園芸店で”ジギタリス”が売っていた時にはちょっと驚きましたが。
【花】キョウチクトウ(夾竹桃)
 キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。葉が”竹”に、花が”桃”に似ているのでこの名前がついたとか。花、葉、果実などすべての部分に加え周辺土壌にも毒性があり、嘔吐、脱力、倦怠感などの中毒症状を起こすそうです。
(wikipediaより抜粋)


 本書の内容は微小な証拠物件を元にリンカーン・ライムとアメリア・サックス達のチームが”スキン・コレクター”というシリアクキラーを追い詰めていくというもの。相変わらず最後の最後までどんでん返しの連続というディーヴァーならではの推理小説。今回の犯人”スキン・コレクター”はというと、殺人現場で被害者の肌に謎の文字を、しかも毒薬で刺青するという人。単純に殺人だけなら銃やナイフで方が付くものを、わざわざ時間をかけてタトゥー(しかもかなりの出来栄え)をいれるなんてのは、推理小説史上、もっともめんどくさい殺し方の一つではないかと。

 で、今回のネタはそんなユニークな犯人を離れてちょっと毒薬の話を。なぜだかスキン・コレクターは植物から作った毒物がお好みなんですな。前半に登場するだけでも

〔シクトキシン〕
 ドクセリに含まれる。激しい吐き気、強直性の痙攣を引き起こす
〔悪魔の吐息〕
 エンジェルストランペットに含まれる。全身麻痺、記憶喪失を引き起こす
〔ストリキニーネ〕
 マチン科の樹木等から採取される。大きな苦痛を与える

などなど。他にもナス科の植物から採取されるニコチン、ホワイトホコシュから採取されるドールズ・アイズなど続々と(説明は本書での説明)。植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。で、困ってしまうのはリンカーン・ライム。本書より抜粋すると

  工業プロセスで使用され、一般市場で流通している業務用の有害物質であれば
  まずメーカーを突き止め、そこから購入者を追跡することも可能だ
  製造者を識別するための化学標識が含まれていて、
  それが手がかりになって犯人の氏名が書かれた領収書が手に入れることもある。
  しかし、今回の犯人が凶器を自分の手で地中から掘り出したのだとすれば、
  それは期待できない
  地域を絞り込むのがせいいっぱいだろう

 つまり、自分で毒薬を製造するから証拠の追跡ができないと。確かに今の分析技術ってかなりのことができるようで、”和歌山毒物カレー事件(*2)”ではカレーに混入した亜ヒ酸の異同識別をするのに”SPring-8(*3)”つー大型放射光施設までひっぱりだしてやってたし。

 リンカーン・ライムのチームの凄いのは、ほとんど塵のような残留証拠物件をガスクロマトグラフィーやらなんやらで分析して、どこから来たかをデータベースなんかも駆使して解析して、その証拠が持っている意味や犯人の手口、さらには次の犯行を予測する(しかもかなりの確率で当たっている)とこ。そんな天才ライムにとっても”植物由来”ってけっこうやっかいっぽいんですね

 だからといって、一般人が毒物で殺人なんかやっちゃまず捕まるでしょうし(毒物でなくてもNGです)、下手に植物から成分抽出なんぞやった日にゃ、作っている人が真っ先に毒物にやられそうだし。この手の話は推理小説の中だけで楽しむのんが無難なんでしょうなぁ

《脚注》
(*1)立派なもんもん背負った~
 ”もんもん”というのは”くりからもんもん”の略で漢字で書くと”倶利迦羅紋紋”。不動明王の変化身”倶利伽羅竜王”を背中に彫った入れ墨から転じて”入れ墨”も指すようになったとか。(語源由来辞典より
(*2)和歌山毒物カレー事件
 1998年、和歌山県園部で行われた夏祭りで出されたカレーを食べた人が腹痛や吐き気などを訴え、4人が死亡した事件。主婦の林眞須美がカレーへの亜ヒ酸の混入による殺人及び殺人未遂の容疑で逮捕、2009年に死刑が確定(再審請求中)
(*3)SPring-8(スプリングエイト)
 兵庫県播磨科学公園都市内に位置する大型放射光施設140mの線形加速器に周長1.4Kmにおよぶ蓄積リングで8GeVの電子エネルギーを生み出すという施設。書いてる本人は理解できてませんが、すごい施設みたいです。詳しくは公式hpをご参照

このろくでもない、すばらしき世界に住む住民はエコン(ホモエコノミカス)にはなれないらしい(行動経済学の逆襲/切り株)

 ども、根がチキンハートなんで株式取引をしたことないおぢさん、たいちろ~です。 まあ、最大の理由は”お金がない”ことなですが。
 トランプ氏 VS クリントン氏によるアメリカ大統領選挙が終わりました。この結果が今後の世界経済にどう影響するかはわかりませんが、瞬間的にはすんげ~大波乱になっとります。密接な関係にある日米経済とはいえ、選挙当日11月9日の日経平均株価はトランプ氏優勢が伝えられると前日比919円(5%)下げ、現実路線の政策になりそうとなった翌日10日には前日比1,092円(7%)上昇。(日本経済新聞 11月12日より)
 先行き不透明とはいえ1~2日で日本経済のファンダメンタルズがこんなに変化するワケもなく、外から見てると相場がちょちょまっているんじゃね~かと思っちゃいます。なんでこんなことになっちゃうんでしょうね?!
 ということで、今回ご紹介するのは合理的とは程遠い経済の動きを経済学的なアプローチで解明しようとしている経済学者の本”行動経済学の逆襲”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影(2014年8月頃)
鶴岡八幡宮の大銀杏の切り株です(*1)

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【本】行動経済学の逆襲(リチャード・セイラー、早川書房)
 合理的な考え方をする人間を前提に構築された伝統的な経済学に異を唱えた”行動経済学”の第一人者であるリチャード・セイラーによる、”行動経済学”の説明を伝記的な歴史解説の側面を加えて解説した本。
 原題は”Misbehaving:The Making of Behavioural Economics”。Behavioural Economicsの訳は”行動経済学”ですが”Misbehave”は”行儀の悪いことをする、不正を働く”という意味。まあ、伝統的な経済学から見ると行動経済学で扱う人間像って”正しくない”行動をする人なんでしょうなぁ
【花】切り株
 木を切った後の根元の部分。
 ”株式”の名前の由来は”株の部分がずっと残っている”という意味から世襲などによって継続的に保持される地位や身分を”株”というようになり、そこから共同の利権確保のための同業組合を”株仲間”というようになり、出資持分割合に応じて権利が保持されることを”株式”と呼ぶようになったとのこと(”語源由来辞典”より抜粋)
 現代でも相撲の親方になるのに”年寄株”ってのを耳にしますが、根っこは同じみたいです


 伝統的な経済学で扱う人間ってのは”ホモエコノミカス(homo economicus 合理的経済人)”、本書では略して”エコン”というモデルを想定しています。これはどんな人かというと,すべての選択を

 合理的期待(Rationarl Exprctations)

に基づいて行う人。簡単に言うと、自分で買うものはすべての財やサービスから最も最良な物を選び、余計なバイアス(偏り)がなく、自信過剰にはならず、どこまでも合理的で冷徹に行動する人。本書では”スタートレック”に登場する”ミスタースポック(*2)”のような存在を例に上げています。
 で、実際の人間(本書ではヒューマン)はどうかというと、モノを選ぶのはいいかげんだし、目先の利益にとらわれるし、同額なら利益を得るより損失のほうが悲しいし、自信過剰だしと、エコンとは似ても似つかない存在。つまり、

  このろくでもない、すばらしき世界に住む住民は
  エコン(ホモエコノミカス)にはなれないらしい
(*3)

ですな。
 本書では、行動経済学に登場する原点から左右非対称な価値関数だの、プロスペクト理論だの保有効果だの、サンクコストの誤謬だの、メンタル・アカウンティングだの、現在バイアスだの損失回避性などの各種のバイアスだのといったトピックが出てきます。単語だけ見るとおどろおろどしいですが、合理的に見ると正しくないけど実際にはやっちゃいそうな行動の説明なんで、意外なほどわかりやすいです。それぞれを説明してるとたいへんなので、本書を読んでいただければと。

 まあそんだけだと投げっぱなので気にいったトピックをひとつ。よく株価って美人コンテストに例えられますが(*4)、それのちょっと数学的バージョンを。セイラーがフィナンシャルタイムスで行ったクイズです。問題はこちら

  参加者は0から100までの中から任意の数字を1つ選びます
  全部の数字の平均値の2/3に一番近い数字を選んだ人が勝ちとなります
  あなたはどの数字を選びますか?

 一応、この問題には数学的な解き方が存在します。まず全員がまったくランダムに数字を選んだとすると、平均値は50になります。ですので2/3の答えは33。ところがもう少し頭のいい人がいると、”みんなが33を選んだら答えは22になるはず”という答えになります。これに気がついて2/3の掛け算を繰り返すと最終的には”0”に収束します(これをナッシュ均衡(*5)というそうです)
 実際にとうなったかというと、結果を多い順に並べると、”22”を選んだ人約8%、(2段階思考をした人)、”1”を選んだ人約7%&”0”を選んだ人約5%、合わせて約12%(経済学の訓練を受け過ぎている人)、”33”を選んだ人約6%、(1段階思考をした人)(カッコ内は本書でのコメント)。最終結果は約2%の人が選択した”13”になったそうです。
 この結果がなぜ気にいったかというと、世の中には頭の良い人だけじゃないんだな~ってのと、頭の悪い人がどう行動するかの”読み”ってのは計算だけじゃ出てこないんだな~と。セイラーはこの結果でフィナンシャルタイムスの読者は頭の良い人が多くてナッシュ均衡に気付いた(0や1を選択した)と言っていますが、実際には世の中には頭の悪い人(1~2段階で思考を止めた人や絶対出ない66以上を回答した人も僅かながらいた)がいてかなり平均を押し上げる結果になってます。さらにいうと”99”とか”100”を答えたいたずら行為をした人もいて(合計で約3弱%)、結果的には数学的な結果と一致しなかったと。

 まあ、考えてみりゃ世の中みんな頭のいい人ばっかりとは限んないし、いちびりもいてなかなか計算どおりにゃいかないんでしょうね。エコンをベースにした(このクイズだとナッシュ均衡の結果に賭けた人)ばっかりじゃないってのは当たり前っちゃ当たり前です。実際に自分のお金をかけて投資をするとなれば、同じ相場を見てもブルと判断する人もいれば、ベアと見る人間もいるんだろうから(*6)もっと数字通りにゃいかないんでしょうなぁ

 と、ここまで書いていて最近の気になる記事から。日経新聞が人工知能(AI)を使った対話型対応エンジン”日経DeepOcean”を提供するとのこと(日経新聞 2016年11月7日 HPはこちら)。データに基づいた数理統計的なAIの分析なんて、まさに究極の”エコン”かも。こいつの言う通りに動いたら伝統的な経済学の世界になっちゃうんでしょうか? それとも”第3の経済学”みたいのが登場するんでしょうかね?

 本書はちょっとお堅いような本ですが、物語っぽくなってる分だけ”行動経済学”の入門書としても良いかも。経済に興味を持っている人にはお勧めです

《脚注》
(*1)鶴岡八幡宮の大銀杏の切り株です
鶴岡八幡宮の大銀杏は、源頼家の子の公暁がこの銀杏の木に隠れて源実朝を殺害した(1219年)という伝説がある樹。2010年の強風により根元から倒れました。写真は根元から高さ4mまでの部分を元の樹の横に移植したものです
(*2)ミスタースポック
 アメリカのSF映画&TV”スタートレック”シリーズに登場する宇宙船エンタープライズ号の副長兼技術主任を務めるヴァルカン人(宇宙人)と地球人とのハーフ。普段は感情を抑制し表情に出さない、非常に合理的な思考のすが、持ち主ながら、時々感情に流されるのが魅力。
 13作目の映画”スター・トレック BEYOND”が公開中ですがまだ観に行ってないな~~
(*3)このろくでもない、すばらしき世界に住む住民は~
 缶コーヒー”BOSS”のCM”宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ”より。宇宙人ジョーンズはトミー・リー・ジョーンズが演じています。ちなみジョーンズの吹き替えを担当している菅生隆之は2009年からの新”スター・トレック”シリーズでは老年期ミスタースポックの声も担当してます、はい
(*4)美人コンテストに例えられますが
 たとえば100人の中から最も美しいと思われる人を6人選んで全体の平均的な選好に最も近い選択をした人に賞金を与えるというゲームをやるとします。賞金を貰おうとすると、自分が最も美しいと感じる人ではなく、他の参加者が最も美しいと感じるであろう人を予測(場合によっては数次にわたって)することになるというもの。ケインズの説明だそうです。
(*5)ナッシュ均衡
 ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない(wikipediaより抜粋)。まあ、ボールの中に入ったピンポン球みたいな状態かと。
(*6)同じ相場を見てもブルと判断する人もいれば、ベアと見る人間もいるんだろうから
 相場などで上がると見る(強気)ことを角を下から上に突き上げる雄牛に見立てて”ブル(Bull)”、下がると見る(弱気)を爪を振り下ろして攻撃する熊に見立てて”ベア(Bear)”と言います。凶暴そうな動物にたとえていますが、ブルもベアもどっちも食べちゃう人間が一番凶暴なんですけどね

人間は頭で考えるより権威には服従するみたい。だとするといじめやハラスメントの問題に関心のある方は読んどいて損のない本です(服従の心理/トネリコ)

 ども、偉い人にへ~こらしないんで、あんまし出世してないおぢさん、たいちろ~です。
 大方の予想を裏切ってトランプ氏が第45アメリカ大統領になりました。どうも彼の国は閉塞感の漂う社会に強力なリーダーシップを求めたようです。まあ、リーダーシップのあることは別に悪いこっちゃないですが、かつて”カリスマ的なリーダーシップ”と”服従の国家システム”を構築することで後から考えると”なんでそんな非道なことをやったんや!”てことをやっちゃった国もあったんでね。
 別にトランプ氏が第二のヒットラーになるなんて言う気は毛頭ないんですが、状況がリーダーの思惑を超えておっとっとな過剰適用をしちゃうこともあります。歴史から教訓を学びうるのであれば、ちゃんと見るべきとこは見といて、嫌なものは嫌だと言わないとって~話です。まあ、彼の国だけの話ではないですが・・・
 ということで、今回ご紹介するのは人間というのは意外なほど権威に服従してひどいことをちゃっやいかねないという話”服従の心理”であります。

写真は”sasikiの雑記帳”のhpより。トネリコの木です

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【本】服従の心理(河出文庫、スタンレー・ミルグラム、訳 山形浩生)
 1960年から63年にかけて、アメリカのイェール大学である実験が行われた。通称”アイヒマン実験”。ナチス親衛隊中佐”アドルフ・アイヒマン”の名を冠するこの実験は、人間の権威に服従する心理を検証するものだった。そしてこの実験の結果は大方の予想を裏切るほど”人間は権威に服従する”ものだった・・・
 心理学者ミルグラムによる実験結果とその考察をレポートした本。
【花】トネリコ
 モクセイ科トネリコ属に分類される落葉樹。花言葉は”偉大、高潔、服従”など
 北欧神話に登場する世界を内包する”世界樹(ユグドラシル)”はセイヨウトネリコの樹だそうです。この樹から枝を1本折り取って”グングニル”という槍を作ったのが主神にして戦争と死の神”オーディン”、その枝の傷が元でこの樹は枯れてしまったそうです。なんだか象徴的だなぁ


 実験の名前の元となった”アドルフ・アイヒマン”という人ですが、”ユダヤ人問題の最終解決”という何百万人ものユダヤ人虐殺に関与し戦犯として処刑されたナチス親衛隊中佐。これだけ聞くと極悪非道の大悪人のように聞こえますが、この人がある意味有名なのは、その実態が大方の人がイメージしたような人物ではなく、家族を愛し、上からの命令で淡々と仕事をこなす普通の人だったこと。今風に言うと残虐なラスボスだと思って倒したら、実はその後ろにいる真のラスボスにへ~こらしているだけの小物だったみたいな・・・
 この人に興味がある方はハンナ・アーレントによる”イエルサレムのアイヒマン(*1)”を読んでいただければ。

 この実験の内容を簡単に説明すると

 ・外見は”人が正しく学習するのは、間違えたら罰を受ける場合”という主張の調査
 ・メンバーは
  被験者:学習に関する実験と称して公募された一般人
  学習者:学習をする人(被害者。実は役者だが被験者には内緒。以下被害者)
  実験者:権威としての実験を指揮する人
 ・学習者は15~450ボルトの電撃を発生させる機械と接続される
   (命に別条はないと説明されている)
 ・被験者は学習者が間違えるた電撃のスイッチを入れる
 ・電撃は答えを間違えるたびに15ボルトづつ強くなる
 ・被害者は75ボルトでうめきだし、150ボルトで助けてくれと叫び、
  270ボルトで苦悶の絶叫を上げ、330ボルトで何の反応も示さなくなる
 ・被験者が電撃を上げることに拒絶を示した場合、実験者は実験を続けるよう促す

このような条件の元での真の実験の目的は”被験者はどこまで電撃をあげるか”、つまり”被験者はどこまで権威に服従して加虐的な行為を取りうるか”を調べるというもの。あなたならどこまでボルトを上げますか?

 この実験に対し、どのぐらいまで電撃を上げるかを別のグループに聞いたところ、ほとんどの人が150ボルトは超えず、最高の450ボルトまで上げる人は0.125%しかいないだろうと予想されたとのこと。
 で、いろいろなシュチエーションで行われた実験の結果はというと、主だったものは

〔高位の結果〕
 ・被害者と離れている場合:65.0%(40人中26名)
 ・音声が聞こえている場合:62.5%(40人中25名)
 ・被験者以外にスイッチを押す人(同僚)がいる場合
             :92.5%(40名中37名)

〔低位の結果〕
 ・抵抗したら押さえつけて電撃を流す場合:17.9%(40人中12名)
 ・実験者が不在の場合  :20.1%(40人中9名)
 ・被験者が電撃レベルを選択できる場合:2.5%(40人中1名)
 ・実験者がただの人の場合:20%(20人中4名)
 ・実験者の一人が続行、一人が中止を指示した場合:0.0%(20人中0名)
 ・被験者以外に2名の同僚(役者)がいて同僚が中止を主張した場合
             :10.0%(40名中4名)

 最も強い電撃まで続ける人は1000に1人ぐらいしかいないだろうという大方の予想を裏切ってそこまでやっちゃった人が実に2/3に達しているという結果に。被害者と離れているほど、責任を感じなくていいほど最高レベルまで上げちゃう傾向と。まあ、押さえつけてでも電撃を与え続けた人ですら20%弱いますが。

 単にサディスティックな人間が集まっただけと考える方もあるかもしれませんが、電撃レベルを選択できる場合だとそこまでいったのはたった一人(まあ、この人はそっち系の人かもしれませんが)。分布で見ると、うめきだしてる75ボルト以下までしか上げなかった人の累計が70%(40名中28名)助けてくれと叫ぶ150ボルトのレベルで同じく95%(40名中28名)。そんなにS系の人が集まっているとは言えなさそう
 逆に”実験者がいない”、”実験者が権威でない”、”実験者の意見が分かれている”あるいは”周囲が反対”の場合は最も強い電撃まで続ける人は減ってしまうようです。

 この結果から

  権威ある人からの指示があり、責任を感じにくい状況であれば人は従順になる
  権威が機能しにくい状況や、廻りの意見に同調できる環境では従順度は下がる

ことが見てとれます。なんだか、本の紹介ってより実験内容の説明ばっかになってすいません。本書はこの実験の内容を踏まえ、このようなことが起るメカニズムなどを詳しく紹介しています。実験が行われたのはもう半世紀以上前、本書の原典の出版ですら1974年と40年以上前ですが、そのショッキングな内容は今でも十分読み応えがあります。翻訳を担当した評論家”山形浩生”による現代的な視点での訳者あとがき”服従実験批判”も出色(というか、かなりえぐいツッコミ?)
 特にいじめやハラスメントの問題に関心のある方は読んどいて損のない本です。

《脚注》
(*1)イエルサレムのアイヒマン(ハンナ・アーレント、みすず書房)
 ナティ政権下でユダヤ人問題の”最終的解決”=ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を行ったアドルフ・アイヒマン親衛隊(SS)中佐の裁判記録の本。サブタイトルは”悪の陳腐さについての報告”。アイヒマンの裁判が行われたのが1961年、本書が出版されたのは1963年のことです。
 一般受けするような本ではないですが、それでも”アイヒマン・ショー”(まだ観てません)という映画が公開された時に本屋の特設コーナーに置いてあったのはちょっと驚きました。
 詳しくはこちらをどうぞ

正論も度が過ぎるとろくな社会にならんのでしょうかね(ハーモニー/コーヒーの木)

 ども、尿酸値と糖尿病と高血圧の薬を飲んでるおぢさん、たいちろ~です。
 別に自覚症状があるわけじゃないんですが、会社の健康診断でひっかかちまいまして・・・ この手の薬でめんどくさいのは完治するというより、状況を悪化させないために一生飲み続けないといけないってこと。まあ、処方箋も必要なので月々お金もかかるしねぇ。医者にも行かず、家で手に入れば楽ができんですけど。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな夢の医療社会が実現したユートピアのお話、伊藤計劃(いとう けいかく)の”ハーモニー”であります。


写真はたいちろ~さん撮影。
北海道大学植物園のコービーの木です。

0245


【本】ハーモニー(伊藤計劃、早川書房)
 21世紀後半、人類は医療の発達によりほぼ全ての病気が放逐された福祉国家を実現していた。そんな中、6000人以上の人間が自殺するという事件が勃発する。WHOの上級監察官”霧慧トァン”はその事件の陰に、かつて共に自殺を図った友人”御冷ミァハ”の存在を感じる・・・
 デビュー2年、34歳の若さで病没したで伊藤計劃の長編第3作にして、第40回星雲賞及び第30回日本SF大賞を受賞した現代SFの名作。
【花】コーヒーの木
 アカネ科コーヒーノキ属に属する植物の総称。種子から採れるコーヒー豆はカフェインを多く含む
 カフェインは興奮作用を持つ精神刺激薬の一種で、コーヒ、緑茶、紅茶などの飲料や医薬品では総合感冒薬や鎮痛薬に用いられる一方、副作用として不眠、めまいなどを引き起こす(wikipediaより抜粋)


 伊藤計劃って前から読んでみたかったんですが、たまたまこの前読んだ”BISビブリオバトル部 2(*1)”にその話がでてまして(*2)、さっそく了読。で、感想としては”SFにおけるリアリティってずいぶん変わってきてるんだな~~”ってこと。SFってのは他のジャンルと違って、けっこう好き勝手に社会や歴史を組み立てるってことをやります。”ハーモニー”で語られている世界というのは究極の福祉・健康社会。<大災禍(ザ・メイルストローム)(*3)>という世界規模での大暴動や流出した核弾頭の爆発で破滅の危機に瀕した人類が、健康の保全を最大の責務とする”生命至上主義”のもとに作った社会。健康監視システム(WatchMe)によりモニターされ、薬や医療が大量に消費され、生活習慣病などを未然に防ぐ助言がされる社会。

 まあ、マクロレベルでは高齢化による福祉予算の増大問題を抱える国家から、ミクロレベルでは成人病に悩むおぢさんまで、夢のような社会ではありますが、”羹に懲りてなますを吹く”感もあります。でも、この社会に一定のリアリティを感じてしまうのは、今の社会が一種の正論に安易になびいているんじゃないかな~という漠然とした不安があるからかも。イ○リスのEUからの独立とか、○メリカ大統領選挙におけるトラ○プ氏の躍進とか、国家財政が破綻しても援助でなんとかなんじゃね?的なギリ○ャとか。それぞれの主張には一定の正論を持って国民の支持を得ているわけですが(ポピュリズムうんぬんの話ではなく)それはそれで不気味なものを感じちゃいます。

 本書の中で出てくるカフェインの摂取についての道義的な問題ってのが出てきます。某夫人は控えめに

  某婦人はカフェインがパニック障害を引き起こすことを指摘した
  某婦人はカフェインが睡眠障害を引き起こすことも指摘した
  某婦人はカフェインが痙攣を引き起こすことまでも指摘した
  某婦人はカフェインが頭痛や健忘症などの症状のトリガーになると指摘した

と発言。これに対して科学者にして霧慧トァンの父親でもある霧慧 ヌァザは、ある業務においてカフェインが必要であり、軽減されるストレスもあると訴えるものの受け入れてはもらえない。まあ常識的な発言ではあります。婦人の発言は

  礼を失しない、とても控えめでいて、どこまでも極端で、
  それゆえに人が惹きつけられやすく、何よりも決めつけにあふれていた

 引用が長くなりましたが、実は私にとって本書の中で一番怖かったのがこの場面なんですね。激昂するタイプなら感情的な反発もありますが、礼儀正しくしてるわりには発言の根拠が希薄でそのくせ結論だけ押し付けてくるような。しかもそれが正論だったりすると”空気”として勝ち組みたいな。それが結果として良い結果に結びつくか~てとそれもまた疑問。

 こんな話を受けてのナチスドイツの話題。霧慧トァンに対して父ヌァザの研究仲間である冴紀ケイタの話

  国家的に癌撲滅や禁煙を大々的に始めたのがナチスドイツだって知ってるか
   (中略)
  癌患者登録所というものを作って、癌にり患した人間を把握し、分類し、検査して
  ナチスは人類史上初めて癌を撲滅しようとしたんだ

   (中略)
  まさにその連中が二十世紀はじまって以来の、人類虐殺を行ったにしてもだ
  物事には色々な面があるっていうことだよ
  潔癖症も度が過ぎると民族の純血とかぬかしだすわけだ

正論の行き着く先がこれだったらたまらんですなぁ

 まあ、こういった社会が嫌だって人は当然出てくるわけで、そんな人が究極の調和="ハーモニー”がどんなもので、どうやって実現するかってのが本書の内容。多分に推理小説的な要素のある小説なので詳しくは書きませんが、けっこう面白かったです。伊藤計劃にもうちょっと付き合ってみましょうかと、コーヒーをがぶ飲みしながら思うのであります。


《脚注》
(*1)BISビブリオバトル部 2(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校のビブリオバトル部は、自分のお勧めしたい本を紹介しあい、どれが一番読みたいかを競うクラブ。SFだのノンフィクションだのBLだのいずれ劣らぬ濃ゆい本好きが集まるクラブです。
(*2)その話がでてまして
 死んでしまったSFマニアのじーちゃんと、SF大好き伏木空の会話で、亡くなった伊藤計劃が死後の世界で新作書いてるっていう”地獄八景亡者戯”みないなネタが出てきます。詳しくはこちらをどうぞ
(*3)大災禍(ザ・メイルストローム)
 メイルストローム(maelstrom)はノルウェーのモスケン島周辺海域に存在する極めて強い潮流(大渦巻)。(wikipediaより)。エドガー・アラン・ポーの短編小説”メエルシュトレエムに呑まれて”に渦巻きに巻き込まれて難破した船から脱出する漁師の話ってのがありますが、関連ありそうですねぇ

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