経済・政治・国際

バブル雑感、現場から見た”総量規制”について、かな(バブルと生きた男/水門)

 ども、総量規制いっぱいにお金を借りたら返せそうにないおぢさん、たいちろ~です。
 先日新聞を読んでたら”カードローン 地銀も総量規制”という記事が出てました(日経産業新聞 2017年9月27日)。ちょっと説明すると消費者金融などは、年収の1/3までしかお金を貸せない”総量規制”が貸金業法により決まっているのに対し、銀行は貸金業ではないのでこの規制の対象外。でもお金の融資先と低金利で困っている銀行がカードローンを推進しすぎると”過剰融資”になるとの批判があるため、自主的に年収比で1/2とか1/3とかに抑えようというもの。実際に年収の1/3も借りた日にゃ返すのはとっても大変なんですが・・・(*1)
 金融庁は総量規制の銀行への適用に慎重だったが、それを覆す可能性が出てきたと。
 てな感じの”総量規制”ですが、この言葉を聞いてある業界の中高年の方は昔もあったな~と思われたかも。
 ということで、今回ご紹介するのはバブル時代に大蔵省に出向し”総量規制”に関わった元日銀マンによる本”バブルと生きた男”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
藤子・F・不二雄ミュージアム付近にある水門です。

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【本】バブルと生きた男(植村修一、日本経済新聞出版社)
 サブタイトルは”ある日銀マンの記録”。バブル前夜の1979年に日本銀行に入行し、大蔵省銀行局への出向などでバブルの発生から崩壊とその後始末、さらにはリーマンショックまでを官僚として”当事者”だった男の”体験的バブル論”
【旅行】水門
 河川や用水路などに作られた水の流れや量を制御する建造物。構造的にほとんど同じ”可動堰(せき)”というのがありますが、洪水時には門扉を閉めて堤防となるのが”水門”、逆に洪水時には門扉を開けてせき止めた水を流すのが”堰”なんだとか。まあ、洪水みたいなリスクを考えなきゃ気にするようなことではなさそうですが・・・


 さて、中高年の方向けにバブルのおさらいを(若い人には歴史のお勉強?)
 上記の日経新聞の記事と同じ日に載ってた朝日新聞のバブル年表にちょっと追記をしたものです。

 1985年 9月 ドル高是正の”プラザ合意
 1986年    三大都市圏における地価、日経平均株価が上昇局面へ
 1987年 2月 NTT株上場
 1987年10月 史上最大規模の世界的株価大暴落”ブラックマンデー
 1989年12月 日経平均株価の最高値 38,915円87銭
 1990年 3月 大蔵省が金融機関に対し不動産融資の”総量規制”を通達
 1990年12月 ”バブル経済”が新語・流行語大賞の流行語銀賞を受賞
 1991年 5月 東京芝浦のウォーターフロントに”ジュリアナ東京”開店
 1991年12月 ”総量規制”の解除
 1992年 4月 半沢直樹が産業中央銀行に入行
 1995年 1月 東京共同銀行設立(経営破綻した東京協和信組と安全信組の受け皿)
 1995年12月 住宅金融専門会社処理に6,850億円の公的資金導入決定
 1997年11月 北海道拓殖銀行と三洋証券が破綻山一証券自主廃
 1998年 3月 21の銀行に1兆8千億円の公的資金注入
 1998年10月 日本長期信用銀行が一時国有化
 1998年12月 日本債券信用銀行が一時国有化
 1999年 3月 15の銀行に7兆5千億円の公的資金注入

 何を言いたいかというと、”バブル”と”バブル崩壊”って実態とイメージとでビミョ~にずれてるんですな。バブル景気というのは統計的には1986年12月から91年2月までの4年3ケ月(上記朝日新聞より)。始まり感がいつごろかというと1987年の”NTT株で一発儲けようぜ!”的なノリはあったかな~~(*2) 
 終わり感がいつからあったというとけっこう難しいんですぜ、これ。株のピークが89年12月(大納会)なんで、こっから下がりだしてはいるんですが、まだまだ”持ち直すんじゃね?!”的な期待感があって。90年の流行語で”バブル経済”ってでてくるってことは”もうすぐ弾ける”という危機感自体はあったんでしょうが、ユーフォリアの残照がまだまだ強かったような気がします。年表を見て意外感があるのがバブルのアイコンでもある”ジュリアナ東京(*3)”のオープンも、花のバブル入行組の”半沢直樹”(*4)の入行も正確にはバブル景気終了後。
 その後は株価も地下もどんどん下落して、95年の住専問題で混乱する国会あたりで”にっちもさっちもいかない感”が出て、大手金融機関の破綻が続出した97~8年の”どん底感”はまあ異論のないところかと。

 前置きが長くなってすいません。”総量規制”の話です。総量規制ってのは土地の値段が上がり過ぎてまともな国民が家を買えない水準まで上昇しちゃったのを是正するためのものというのがお題目。”土地神話の打破”、”適正な地価水準の実現”、”適正かつ合理的な土地利用の確保”が目的。で、土地取引自体を規制するのではなく、資金の出し元である金融機関側でコントロールしようというもの。不動産業者、建設業者、ノンバンクの三業種に対し融資の伸び率を総貸出の増加以下に抑制するよう金融機関を規制する、つまり銀行から流れるお金の水門を閉めることで、川下にある不動産業者の活動を抑え込もうとしたわけです。感覚的にズレがあるとすれば、この規制は①元々国民の要請(と考えた政治家)に合わせたもの、②”地下を下げる”というより”適正化”するのが目的(当時、土地が下がるなんて発想じゃなかった)、③”貸してはいけない”とは言っていない(伸び率を他と同じぐらいに抑えろと言ってるだけ)。それと時期的には④株価がピークアウトした後で出されて、バブル崩壊でにっちもさっちも行かなくなるずっと前に解除されてること(といっても90年の1年間で株価は1万5千円下がってますが・・・)

 筆者はこの総量規制に大蔵省へ出向してあれやこれや対応した人で、銀行局長のカバン持ちで国会対応の随行なんぞやってた、まさに現場の人です。本書によると当時の大蔵省は金融の量的規制は時代に逆行するもので慎重な姿勢だったそうですが、土地高騰で”庶民は家を持てない”、”これ以上格差が開くことはがまんできない”といった国民感情が政治問題化してやらざるを得なくなったと。導入直後に着任した筆者はこんどはこれを解除するのに四苦八苦するはめにことに。
 元々大蔵省としては長くこの規制を続けるつもりはなかったようですが、あまりに効果がありすぎて関連業界からこんどは解除要請がくるんですが、実際に解除するにはするの理屈付けが必要で、その基準作りを筆者がやって、やっとこさ解除に至ると。つまり、大蔵省自身はもろ手を挙げてやりたかった政策でもないのに、あっちからはやれと言われ、こっちからは止めれと言われ、本来なら土地政策全体では金融はわき役のはずなのに主役を演じさせられた上、バブル失政の主犯扱いされれば、現場の人としてはぐちのひとつも出ようなもの。
 本書でのぐち

  後世、総量規制がバブル潰しの主犯であり、
  その後の長い経済の低迷をもたらす失政だったとの論点がみられることに
  私を含め当時の関係者は強い違和感をいだいています

 本書は、大臣や官僚トップという意思決定を下す立場でもなく、評論家や記者といったアウサイダーでもない、まさに”現場”感覚で書かれてる点では多くのバブル本とは異色な感じでしょうか。官僚としての苦しい言い訳や反省なんかをこの本に期待するのは間違い。むしろ淡々と現場の中心にいた人の意見として読むのが良いかと。
 最後に日銀で考査(*5)を担当した経験からの言葉

  考査を通じて感じた、ジレンマというかパラドックスは
  リスク管理のセンスがある人(組織)は、いわれなくてもわかる
  一方、センスのない人(組織)は痛い目にあわないとわからない、というものです
  そういう中での仕事としてのリスク管理のアドバイス
  なかなか悩ましいものがありました


《脚注》
(*1)返すのはとっても大変なんですが・・・
 仮に年収300万円(手取り)の人が1/3の100万円を借りたとして、年利がアッパーの14%、元利均等、月額返済(ボーナス払いなし)だとすると、だいたい
  返済期間   総返済金額   月額返済金  年収対比
   3年   123.0万円  3.4万円 13.7%
   5年   139.6万円  2.3万円  9.3%
になります。年収を12ケ月になべると25万円なので、3年がかりで返すとなるとけっこうきついんじゃないかと
(*2)”NTT株で一発儲けようぜ!”的なノリはあったかな~~
 会社の先輩に証券会社担当の人がいて、NTT株の購入希望申込書みたいなのを頼まれて書いた覚えがあります。抽選には当たったんですが、金も興味も(主に金が)なかったのでとっとと権利放棄しましたが、あんとき買ってたらきっと大損してたんじゃないかなぁ・・・
(*3)ジュリアナ東京
 いまでもバブル系の番組で出てくる伝説のディスコワンレンボディコンのおねいさんがシュリ扇持ってお立ち台で踊りまくってるのって確かに分かりやすいアイコンです。ただ、オープンしていたのはバブルのピーク後の91年5月からどん底手前の94年8月。今にして思えば、話のタネに一回ぐらい行っといてもよかったなかぁ
(*4)花のバブル入行組の”半沢直樹”
 テレビでも大ヒットした”半沢直樹”シリーズですが池井戸潤による小説の原作第一作は”オレたちバブル入行組”、第二作は”オレたち花のバブル組”。入行はバブル時代でもそのあとえらい目あってんでしょうねぇ
(*5)考査
 日本銀行が取引先金融機関等に立ち入って調査を行うもの。本書によると経営実態の把握、リスク管理体制の検証、及び必要に応じて改善を促すことを通じて金融システムの安定性確保につなげようというものだそうです。似たようなのに金融庁(旧大蔵省)検査ってのがあって、これは”半沢直樹”で片岡愛之助が演じていた”黒崎駿一”がやってたの。

「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、自立とは何者にも依存しないということではない(超ソロ社会/海街diary/ヒトリシズカ)

 ども、夫婦と子供2人、有業者が世帯主1人だけという典型的な標準世帯(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 人が結婚しようがしまいが、いくつで結婚しようが、子供を作ろうが作るまいが、結局それは個人の勝手で人様がどうこう言う話ではないはずです。いかにマクロ的(社会)に少子化がど~したとか、高齢化がこ~したといった議論があっても、ミクロ的(個人)に見ればそんなことは知ったこっちゃないはずなんですが、どうも人ってのは”標準幻想”から自由になるのは難しいのか、そこそこの年齢になってくると”既婚”と”未婚”というカテゴリ分けが出てきちゃいます。言ってるほうは善意でもあるんでしょうが、それだけにタチが悪い面も・・
 ということで、今回ご紹介するのは今や次世代の標準になりつつある独身社会を扱った本”超ソロ社会”と読んで思い出した”海街diary”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。向島百花園のヒトリシズカです

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【本】超ソロ社会(荒川和久、PHP新書)
 サブタイトルは”「独身大国・日本」の衝撃”。
 未婚化、非婚化、離婚率の上昇、配偶者との死別による高齢単身者の増加など、今後ますますソロ社会化する日本を分析した本。
【本】海街diary(吉田秋生、小学館)
 父の死をきっかけに腹違いの姉”香田幸、佳乃、千佳”達とともに生活することになった中学生の”浅野すず”。鎌倉を舞台に繰り広げられる彼女と取り巻く人々との恋と日常を描いた青春グルアフィティ。
【花】ヒトリシズカ(一人静)
 センリョウ科 チャラン属の多年草。写真を撮ったのが秋でしたので花は咲いてませんが春になると白いブラシ上の花が咲きます。
 ”独りで静かに暮らす”ってイメージで今回載っけたんですが、名前の由来は吉野山で歌舞した”静御前”の美しさになぞらえたからだとか。”静御前”は源義経の子を産み、その子と引き離された悲劇の女性ですが決してソロだったわけではなさそうです。


 この本を読んだ感想ですが”人生前期おひとりさま”と”人生後期高齢単身者”に大きく分かれるんかな、って感じです。”人生前期おひとりさま”ってのは若い人達が結婚するのしないの、子供を産むのうまないのという話”人生後期高齢単身者”ってのは結婚せず、子供を持たずに高齢世代になった人、離婚や死別などので単身者になった人の話。同じ”独身”ではありますが実はそうとう色合いが違います。”独身=若い”、”独身=未婚”ってなテンプレな話じゃないってことのようです。まずは”人生前期おひとりさま”の話から。

〔”人生前期おひとりさま”の話〕

 上記で”そこそこの年齢”って書きましたが、これってけっこう時代によって感覚違うんですな。1970年代ぐらいの本を読んでると”行き遅れ”、”オールドミス”なんてのが出てきます、今では完全なNGワードですが。で、これがいくつぐらいかというと感覚的には20代後半ぐらいだったでしょうか。29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます(*2)。1980年にトップアイドルだった”山口百恵”が結婚したのが21歳でしたがめちゃくちゃ早いって感じでもなかったですね。1975年に発表された”22才の別れ”とういフォークソングは22才の彼女が彼氏の知らないところお嫁にいく曲ですがめちゃくちゃ早婚ってわけでもなかったですし。
 これが現代だと、この歳で結婚したら相当な早婚って感じでしょうか。先日結婚を発表した武井咲が23歳。東京都にお住まいの超セレブなお嬢様が婚約したのが25歳。武井咲はデキ婚という事情があるにしても、お二方とも早婚ってイメージじゃないかと。アラサー世代はどうかというと、”東京タラレバ娘(*4)”なんか読んでると33歳(原作)のお嬢様方が多少のあせりはあるものの、めちゃくちゃテンパってる感があるわけでもなさそうだし。
 まあ、はっきり言って社会背景がこの数十年で相当変わってきてるんですな。年代別初婚年齢を見ると、1970年で男性 26.9歳、女性 24.2歳、1980年で同じく27.8歳、25.2歳、2014年で31.1歳、29.4歳。あくまで平均値なんで、それぞれバラツキ具合も違うんでしょうけど。
 で、何が言いたいかつ~といくつで結婚するかなんて個人の勝手の上に社会背景が違うんだから、いくつだと結婚しているべきみたいなのにそれほどこだわる必要はないと。おぢさん世代から”オレが若い頃はお前の歳には結婚していた”とか、”結婚して、家庭を持ち、子供を育ててこそ一人前”みたいなお説教(結婚規範)をそんなに気にすることはないんじゃないかと。むしろ本書でも言及してますが、こういった”結婚したら幸せになれる”みたいなある種の宗教的な思い込みがむしろ問題だと。

  「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている
  そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた

  ネット上では、なんの根拠もなく、「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」
  などどいう記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる

 もうひとつ、本書で言及しているのは”女性の結婚動機(離婚も)として経済的理由が大部分を占める”との話。身も蓋もないと思われるかもしれませんが・・ 
 結婚という観点でターニングポイントになっているのが”男女雇用機会均等法(1987年)”と時を同じくして発生したバブル景気。女性の社会進出を推し進めたこの法律とバブル景気で女性の収入が上昇したんですが、統計データとしては年収が高い女性ほど生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向にあるそうです(*4)。つまり仕事に生きがいを感じてバリバリ働いて金を稼ぐ女性ほど結婚しない傾向にあると。ですんで、今少子化高齢化対策として勧められている”女性活躍のための重点方針”が女性の希望や夢を実現させるのに有効でも少子化対策になるかというとどうなんだかな~、というのはまた別の話。

〔”人生後期高齢単身者”の話〕
 実は本書を読んで根が深いと思ったのはこっちの話
 上記の未婚者がそのまま歳をとっていくこともそうですが、離婚で独身に戻ることもあるります。男女の平均余命の差+夫婦の年齢差を考えると統計的には高齢女性が単身になる場合が多いし、夫が妻に先立たれることになれば同じく単身だし。
 こっちはおぢさんの説教でどうにかなる話ではなく、本書で指摘しているように”ソロ充(*5)”つまり”ソロで生きる力”、精神的な自立をどう作るか

  「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、
  自立とは何者にも依存しないということではない。
  むしろ、依存することのできる多くのモノや人に囲まれて、
  自ら能動的に選択し、自己決定できる人こそが「精神的自立」と解釈したい

 これを読んで思い出したのが”海街diary”でのエピソード
 恋人だった海猫食堂のおばちゃん”幸子さん”を末期ガンで亡くした”山猫亭”の主人の福田さん。口は悪くて偏屈な関西人ですが、意外にいろんな人に慕われている人。突然、遺言状を作ると言いだして相談にのっているのが幸子さんの相続でいろいろ世話になった信用金庫の坂下さん(すず姉 佳乃さんの恋人)。福田さんの言葉

  天涯孤独て気取ってみても そう簡単に人は独りっきりになれるわけやない
  それは多分 ありがたういことなんやろな

これに対しての坂下さんのコメント

  孤立と孤独は別なものだ
  あの人は孤独を好んではいるけれど 孤立してるわけじゃないからね

 私自身、リアル老後がひたひたと忍び寄る昨今、肝に銘じておきたいものです

 本書は独身の人のみならず、中高年の単身者、それと高齢単身者予備群(全ての人に可能性があります!)が一度は読んどいた方がいいかもの本です

p.s.
 本書に”結婚しない(したがらない)男の見分け方”の12の質問ってのが載ってます。○が8ケ以上なら真正ソロ男で結婚したい女性は近づかないほうがいい、3ケ以下なら良き夫になる資質あり。キーになる3つの質問に○がつく男はそれだけでソロ男なのでお付き合いしないほうが良いというチェックリスト。ちなみに私は○が9ケ、キーの3つは全て○でした・・・(笑)

《脚注》
(*1)標準世帯
 総務省統計局の定義。”標準”が”あるべき姿”と誤解を招くという理由で最近は”モデル家族”というんだそうですが、この手の言い換えってなんだかな~~ ”夫は一生サラリーマン、妻は専業主婦で離婚しない”というライフコースは同じだそうですが、今やこんな人生は少数派だそうです(知恵蔵の解説より)
(*2)29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます
 水谷ミミが1979年に発表した”もうすぐ30”って曲があるんですが、これなんか29歳でもう”もうすぐ30! だんだんババァだ♪”と歌ってます。恐いもの見たさで聴いてみたい方はこちらをどうぞ
(*3)東京タラレバ娘(東村アキコ、講談社)
 ”あの時こうしてタラ・・”、”あそこでこうしてレバ・・”脚本家の鎌田倫子(33歳独身)は高校時代からの親友の香や小雪と焦りながらも”女子会”をを繰り返す毎日。そんな所に人気モデルのKEYが現れ・・・
 第二巻のあとがきマンガで作者が友人から
  マンガだとしても もうホラーマンガですよ コレ!!
 と責められているシーンがあるんで、独身女性にとってはホラーマンガみたいです
(*4)生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向~
 ”生涯未婚率”とは日本の人口統計で”50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合”を意味しますが、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと。
(*5)ソロ充
 言いだしっぺは恋人と破局したあとのしょこたんこと中川翔子
  最近”ぼっち”っていう言葉を”ソロ活動”って言い換えると強くなれた気がする
  毎日”ソロ充”してます

から。こう言う言い換えはとっても賛成です!

歴史への転換点。バブルに踊った人達の記憶が記録になっていく時期に来てんでしょうか(バブル 日本迷走の原点/経団連会館とフクロウのモニュメント)

 ども、バブル時代を駆け抜けたはずなんですが、な~~んも良い思いした記憶のないおぢさん、たいちろ~です。
 時代には”歴史への転換点”てのがあるような気がします。”歴史の”ではなく”歴史への”です。まあ、散文的な言い方をすると、リアルな”思い出”とか”体験”といった”記憶”から俯瞰的に事実を見つめる”記録=歴史”に転換する時かと。
 まあ、”歴史の転換点”というのは第二次世界大戦終結とか、9.11テロみたいに、振り返って見た時に”この時、時代が動いた”っぽい社会的なコンセンサスがありそうですが、”歴史への転換点”ってのは個人的な関わり方(影響の規模、関わりの深さなどなど)に依存するので個人的にばらつきがありそうです。第二次世界大戦だって戦前・戦中派にとってはあるいは死ぬまで歴史にはならないでしょうし、戦後派にとってはすでに歴史かも。
 で、何の話をするかというと”バブル”の話です。”バブル弾けて20年♪(*1)”、いや四半世紀か・・・ 中高年のおぢさん世代にとってなんとなく”バブル”がぼちぼち”歴史への転換点”に来ているんじゃないかな~~ って感じしてます
 ということで、今回ご紹介するのは最近出版されたバブル本から”バブル 日本迷走の原点”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。
経団連会館(上)とそこにあるフクロウのモニュメント(下 拡大版)です

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【本】バブル 日本迷走の原点(永野健二、新潮社)
 住銀、興銀、野村、山一・・・ 日本を壊した「真犯人」は誰だったのか?(本書の帯より)
 日本経済新聞証券部の記者としてリアルタイムでバブル時代の取材をした永野健二によるバブル史の本。エスタブリッシュ側の政治中枢から一流銀行・証券会社のトップ、バブル紳士と呼ばれた時代の寵児にして破滅していった人まで広範な登場人物たちによって織りなされるバブルの物語は圧巻です
【旅行】経団連会館とフクロウのモニュメント
 ”経団連(日本経済団体連合会)”は東証第一部上場企業を中心に構成される企業の団体で、日本経済の中枢をになう総本山ってとこでしょうか。
 下のフクロウは御手洗冨士夫キヤノン会長が退任時に寄贈したものだそうで、なぜフクロウかというと”フクロウは知恵の使者で経済の象徴”なんだとか。


 別に”平野ノラ(*2)”がきっかけって訳ではないんでしょうが、昨今バブル本ブームのような感じがします。まあ今までだってバブル本ってのは山ほど出版されてるんですが、ここんとこのはどうも”時代の当事者”が書いているのが多いような。
 ”住友銀行秘史(國重惇史、講談社)”、”バブルと生きた男 ある日銀マンの記録(植村修一、日本経済新聞出版社)”、”野村證券第2事業法人部(横尾宣政、講談社)”まどなど。本書も当時一線で働いていた記者の著者なんでかあ、このくくりかな。本書以外はまだ読んでないんですが、これからぼちぼち読んでいこうかと。

  本書の”おわりに”で書いているんですが、本書で取り上げた事実には新しいニュースがあると。

   あの頃には書けなかったこと
   あの頃には見えていなかったこと
   今の時代になって明らかになったこと

があるからだと
 この話でいくと最近の書き手って”あの頃には書けなかったこと”が今になって書いたりできるようになったんじゃないかな~~ って。本書に出てくる懐かしい名前の方ってけっこう鬼籍に入られた方も多いんですよね。それに書き手そのものが一線を離れて自分自身も鬼籍に入ることにリアリティーを感じているのだとしたら(*3)、振り返って”あの時代を記録に残す”ことにある意味での意義を見出しているんじゃないかと・・・

 てなことを考えながら、本書から印象に残ったのを(コトの重要性ではないです)

〔なんでこんなおばちゃんに金貸したんや? 尾上縫〕
 かつて大阪に”東洋信用金庫”という信用金庫がありました。当時確か3,000億円を超える大阪有数の信金だったんですが、預金量に匹敵する3,240億円の架空預金証書を発行して破綻。で、東洋信用金庫を分割して、大阪のほとんどの信用金庫総がかりで救済合併をすることに。この仕事に一時期携わっておりました。
 この事件を引き起こしたのは 章のタイトルに”謎の相場師”と書かれている料亭の女将”尾上縫”。この人に合った事がある訳じゃないですが、破綻を聞いた時には”何でまた、料亭の女将に日本興業銀行を始めそうそうたる金融機関が金かしたんやろか?”と不思議に思ったもんです。他の金融機関も踊ったってのはある意味時代そのものがどっかおかしかったんでしょうね。バブルの狂気の代表的な事件だったのかも

〔他のバブル紳士と一線を画す慶応ボーイ 高橋治則〕
 ずいぶん昔ですがお仕事で”イ・アイ・イ・インターナショナル(EIE)”経由で営業をしたことがあります(まっとうな商取引です)。商談の最終局面でEIE経由の商流が決まったんですが、当時のEIEといえば不動産の買い占めのほうが有名だったので、”なんでまた?(*4)” まあ、当時はそれがお約束だったとしか言いようないんですが。で、この会社の社長が高橋治則。
 なんでこの人が印象に残ったかというと、上記のこともありますが、秀和の小林茂、麻布建設の渡辺喜太郎、光進の小谷光浩といった俗にいうバブル紳士たちとちがって何が夢だったかいまだにわからんという話

  彼ら(他のバブル紳士)はみな、貧しさのなかで生まれ育ち、
  反骨の精神を持って社会と向き合う”まじめさ”があった
  激しい成り上がりの精神があった
  恐喝、、相場操作で逮捕・投獄された小谷光浩でさえ
  私は犯罪にいたる過程と心象風景を正確に理解できると思っている

   (中略)
  (高橋治則は)あえて名付けるなら「慶応ボーイ」の人生だった
  慶応ボーイの世界を軽やかに生きながら
  同時に薄っぺらな「アメリカンドリーム」を実現しようとしていた

    ( )内はたいちろ~さん補記

ざっくりくくると、バブル紳士のメンタリティって戦前戦中生まれで戦後の高度成長期っぽいのに対して、高橋治則はエリート型のそれっぽいのかと。
 サブプライム・バブルとかITバブル、起業家ブームみたいのの動機というかモチベーションの底がいまいち分かりにくい構図に似てんですかね? このあたりもあと四半世紀もすればいろいろ見えてくるかなぁ

〔以外と時代が見えていた人 田淵節也と宮沢喜一 でも知恵だけでは解決できんと〕
 さて、エスタブリッシュ側から2名。一人目は野村証券会長の”田淵節也”。バブルがピークをつける直前の1989年11月に発した”海の色が変わった”、つまり熱狂相場が終わるぞという読み。でもこのままつき進んじゃうんですな。証券会社のトップなんだから相場はある程度読めるのは確かなンでしょうが”これから下がります”とも言えない立場。田淵節也が自嘲気味につぶやいた言葉が印象的

  阿波踊りのようなものだな 踊る阿呆に見る阿呆
  踊っても踊らなくても、その後の暴落局面での投資家の損失は変わらない
  だから、踊らにゃ損々となるのだよ

 至言ではありますが、踊らされて大損喰らった投資家はいい面の皮です

 もう一人が 後に平成の三悪人となった一人”宮沢喜一”首相不良債権処理のために公的資金をぶち込もうとして、大蔵省や金融機関の反対でとん挫した人。その理由は大蔵省の問題先送り論理金融機関トップの保身だというのだからなんだかな~~ 公的資金投入を宮沢首相から相談されたことを元住友銀行会長の西川善文は”ザ・ラストバンカー(講談社)”の中で書いてるそうですが

  頭取は皆、反対したよ。当時は財界も否定的だったからね
  あの時に決めておけば、
  こんな(不良債権処理をめぐって)大騒ぎにならなかっただろうに

といったそうですが、後の祭り。タイミングを外した戦力の投入は役に立たない好例です
 まあ、組織のトップまで上り詰めた人なんだから、それなりに知恵はあったようですが、そんだけでは自体は良い方向にもってけないんでしょうな。
 そういえば、知恵の象徴”フクロウ”の生態って日中は枝などにとまってほとんど動かず目を閉じて休息しているんだとか。フクロウ気取ってっととんでもないことになるってことかしら・・・

 本書は当時を知る人は記憶と重ね合わせて読むとなるほど感のある本。記憶にない若い人も現代史として読んでも面白いです。ご一読の程を

《脚注》
(*1)バブル弾けて20年♪
 おばちゃんたちが”バブル弾けて20年♪”と歌いながら踊っている”キンチョー 虫コナーズ バブル篇”の登場が2012年4月。バブルがいつはじけたかは諸説あるようですが、日経平均株価のピークをつけた1989年大納会(12月29日)の日と考えるとあながち四半世紀というのもはずれではなさそうです。
(*2)平野ノラ
 バブルネタでブレイクしたお笑い芸人。肩パッドスーツロングソバージュ太い眉強い色味の口紅ショルダーホンで”しもしも~”なんつーのはある世代以上の方には懐かしいアイコンで笑わせてくれます。まあ、今から見ると笑っちゃえる時代だったんでしょうなぁ・・・
(*3)自分自身も鬼籍に入ることに~
 國重惇史が最年長で72歳、永野健二が68歳、横尾宣政が63歳、植村修一が最年少で61歳。鬼籍に入るはさすがに失礼ですが定年で第一線を離れるのは確かではないかと・・
(*4)なんでまた?
 EIEの本業は電子周辺機器商社なので、コンピュータ関連の売買をするのがむしろ本業だったんですが、まったくそんな印象なかったですねぇ

このご時世”PAC-3”のネタで書いてお咎めなしってのは日本はいい国なんでしょうね(PAC-3/「シン・ゴジラ」私はこう読む/空飛ぶ広報室)

 ども、自衛隊のメカニズムは好きですが、戦争は嫌いなおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、ア○リカと北○鮮の間がきな臭くなってます。言葉の応酬がますます過激になってきて、方やグアム周辺へ弾道ミサイルを4発ぶっぱなす用意があるとゆーとるわ、方や核攻撃をちらつかせたことをゆーとるわ。まあ言ってるのが小学生のガキ大将同士のケンカならまだしも、やってるのが核保有国のトップ同士、しかも方っぽがこの前までなら止める立場の先生がやってんだからなぁ
 で、こちらニッポンは”島根県、広島県、高知県の上空を通過する計画がある”ってことで”PAC-3”を島根、広島、高知、愛媛の陸上自衛隊の駐屯地に移動して迎撃体制を整えることに。国防上、やるべきことはやってるんでしょうが、なんだかこの手の話があったな~~~
 ということで、今回ご紹介するのは、元国防大臣が語る配備計画の問題”「シン・ゴジラ」私はこう読む”とPAC-3移送ネタの”空飛ぶ広報室”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。
海上自衛隊の”ヨコスカサマーフェスタ(*1)”にて(2010年、2016年)

【道具】PAC-3
 ややこしいんですが、PAC-3って”ペトリオットミサイル”そのものの”PAC-3弾”と、”PAC-3弾”を発射するためのペトリオットミサイル発射システム”PAC-3形態”ってのがあるんだそうです。”PAC-3形態”はトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はペトリオット発射中隊、10台以上の車両(ミサイル発射機トレーラー、電源車輌等)で構成されてます。

PAC-3の解説パネル (2016年撮影)

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発射機(Launching Station,LS) (2016年撮影)
 PAC-3等のペトリオットミサイルを最大16発発車する装置
 テレビとかで”PAC-3”というと出てくるのがこの車両

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レーダー装置(Radar Set、RS) (2010年撮影)
 多機能フェーズド・アレイ・レーダーを装備し目標の捜索、発見、追尾、識別及びペトリオットミサイルの誘導を行う装置

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発電機(Electric Power Plant、EPP) (2010年撮影)
 ECS及びRSに電力を供給する機械。トラックに車載したままでも運用可能

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 写真はないですが、その他射撃管制装置(Engagement Control Station, ECS)、情報調整装置(Information Coordination Central, ICC)、無線中継装置(Communication Relay Group, CRG)なんてのもあるようです。

【本】「シン・ゴジラ」私はこう読む(日経ビジネス、日経BP社)
 2016年に公開された”シン・ゴジラ(*2)”をネタに、ビジネス情報中心の(はず)の日経BP社が”日経ビジネスオンライン”で連載された各界のキーマンへのインタビューなどをまとめた本石破元防衛大臣、枝野元内閣官房長官、梅澤TAカーニー日本法人会長などそうそうたる顔ぶれ。何を考えてんだか日経BP社?!
【DVD】空飛ぶ広報室(原作 有川浩、主演 新垣結衣、綾野剛)
 いきすぎた報道姿勢が元で報道から外されたディレクター”稲葉リカ”はTV番組”働く制服シリーズ”の作成のために防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室=”空飛ぶ広報室”を訪れる。そこには”詐欺師 鷺坂”の異名を持つ鷺坂室長以下、個性あふれる?面々が。そしてリカの担当になったのは交通事故でパイロットの道を断たれた”空井大祐”だった。
 自衛隊員という実態があまり知られていない職業の中でもさらにマイナーな広報室(失礼!)を舞台にした非戦闘系ラブコメ。2013年にTBSでドラマ化。主演は新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵。


 当然のことですが、あらゆる兵器には物理的な限界があります。ミサイルには射程距離があり、戦車には最高時速があり、飛行機には航続処理があり。また量的な限界ってのもあります。予算が無限ではなく、人的教育には時間がかかり、工場の生産力の制限がある以上、兵力や機器を装備する量にはおのずと上限値が(少なくとも短期的には)設定されます。

 てなことを踏まえて”「シン・ゴジラ」私はこう読む”の石破元防衛大臣の発言です。ゴジラが上陸して東京への侵攻を食い止めるために多摩川河川敷に最新鋭の戦車がズラーッと並んべて迎撃するってシーンがあるんですが、これに対して

  あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね
  本州にはあんな数の戦車がないんですけどね
  日本では、最新鋭の戦車はだいたい北海道に配備してある

   (中略)
  北海道から戦車が駆けつける頃には、みんな終わっている

 なんで北海道に戦車が配備されてるかというと、ロシアが攻めてきて北海道内で戦車同士でドンパチやるって想定だからだそうです。この想定にリアリティがあるんかどうかはわかりませんが、要はある戦略思想に基づいてリソースを配置するってことです。
 で、今回みたく島根、広島、高知の上空をミサイルが通過するってことになると、そこにPAC-3を移動して防空体制を引くってことになるわけです。

 まあ、書くのは簡単ですがいざ移動するとなると簡単ではないみたい。”空飛ぶ広報室”の第五話で”パトリオット部隊の展開訓練(*3)”て話がありました。これは入間基地から武山分屯基地、習志野分屯基地から入間基地へそれぞれの高射隊が移動するって訓練をマスコミに公開するって内容。
 航空自衛隊の全面協力ってことで、防衛省航空幕僚監部やら各基地やらのロケで各装備がバンバンでてきてわりとマジで作っている作品ですが、それでも移送されてるのメインって発射機なんですな。TVのニュースもそんな感じだったし。これだけ見てると発射機だけ持っていきゃよさそうなんですが、実際は機材をいっぱい持ってってそれを動かす人も移動しなきゃなんなさそう。なんせ超爆発物なんだからテロ対策やなんやらもやんなきゃいけなさそうだし。つまり、素人目に見てもほいほいお出かけできるシロモノじゃなさそうってコトです。
 それだけやってもパトリオットミサイルの有効射程距離が20~30kmってんですから、有効性を求めるにはしこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・(*4)

 で、何を言いたいかとゆ~と、日本ってないい国ですな~~ってこと。
 広報の一環とはいえ基地の公開があって、最新鋭のPAC-3の展示があって写真撮り放題。こうやって写真をブロクにのっけてもお咎めうけることなさそうだし。テレビはテレビで自衛隊の航空機なんぞ出っぱなしだし・・・ あまつさえ元防衛大臣がゴジラネタにひっかけて国防上の問題点を語っても問題にならないって、けっこういい国だと思いませんか? このへんの話題って世が世なら国家機密ですぜ!(*5)

 改めて言いますが、私は自衛隊のメカニズムが好きなだけで、戦争はやっちゃいけないと思ってます。核兵器のみならず兵器なんてのは理屈の上での抑止力としては成り立つんかもしれませんが撃っちまったら終わりです。まあ、こんなことぐらいチキンレースやってる人はわかっちゃいると思いたいんですがねぇ

《脚注》
(*1)ヨコスカサマーフェスタ
 海上自衛隊横須賀地方総監部で開催される基地開放のイベント。毎年8月の第一土曜日の”よこすか開国祭”に合わせて開催されます。2017年度開催は8月5日(土)。この日は米海軍横須賀基地にて”ヨコスカフレンドシップデー”も開催されて軍艦乗船もできるとあって、この手のんが大好きなオタクが朝から群れております。私は違いますが・・
(*2)シン・ゴジラ(総監督 庵野秀明、監督 樋口真嗣、東宝)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明と”ローレライ”、”日本沈没(2006年版)”の樋口真嗣によるSFファン注目のゴジラ映画。2016年公開
 ゴジラ登場にあたふたする政治とか、超科学兵器(オキシジェン・デストロイヤーとか)なんぞ登場せず、自衛隊ががんばってゴジラを倒すこだわりなどSFゴコロをくすぐる名作です。
(*3)パトリオット部隊の展開訓練
 ミサイルの愛称”Patriot”は”Phased array Tracking Radar to Intercept on Target(目標物迎撃用追跡位相配列レーダー)”の略。発音は”ペイトリオット”に近いですが、マスコミは”パトリオット”、政府や自衛隊は”ペトリオット”を使っています(wikipediaより)。ですんで、本ブログ内で混在しているのは出典に忠実なだけで間違いではないです、はい
 ちなみにPAC3だったりPAC-3だったり、あぁややこしい
(*4)しこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・
 仮に島根県を通る山陰本線の米子駅~益田駅間に一列で配備したとして、この距離が192Kmあるんで、射程距離20km(直径で40km)で割ると5単位必要。これをメッシュでやったら何単位ありゃ足りるんでしょうね??
(*5)世が世なら国家機密ですぜ!
 まあ、地図や天気予報が機密情報だった時代もあるみたいなんで何が機密って難しいんですけンドね

良くも悪くも”ブロックチェーンと共にあらんことを”ってノリでしょうか?!(ブロックチェーン レボリューション/ちょいと古い日本銀行券)

 ども、ビットコインどころが紙のお札にも事欠くおぢさん、たいちろ~です。
 先日、ブロックチェーンの第一人者”ドン・タプスコット”という人の講演がありました。行けなかったんですが。その講演の事務局の人と話をしてる時に”この人の本を図書館で予約してんですけど、何カ月も順番回ってこなくてね~~”と言うと、”ご存知なんですか?!”とのお言葉。ご存知ってほど詳しくはないんですが、まあ本は読んでみようかと思った訳で。
 ことほど左様に、モノやコト、人の価値感っていうのは共有できる認識、知識、あるいは共同幻想の上に成り立っているモンです。
 ということで、今回ご紹介するのは、私自身はイマイチ価値の認識ができてない”ビットコイン(*1)”の技術的バックボーンのひとつ”ブロックチェーン”を扱った本”ブロックチェーン レボリューション”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。
日本銀行旧小樽支店金融資料館に展示されているちょいと古い日本銀行券

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【本】ブロックチェーン レボリューション
 (ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット、ダイヤモンド社)
 サブタイトルが”ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか”、紹介文が”世界経済に将来、最も大きなインパクトを与える技術が誕生した。人工知能でも、自動運転車でもない。IoTでも、太陽エネルギーでもない。それは、「ブロックチェーン」と呼ばれている”とあるように、ブロックチェーンの可能性と課題についてを論じた本。
 でも帯のアオリの”社会の全分野で起きる革命の予言書(*2)”はちょっとやりすぎ。凄く真面目な本なのになぁ
【道具】ちょいと古い日本銀行券
 なんだかを読んでた時にちょいと古い日本銀行券を見た若者が”おもちゃのお金だと思った”ってネタがありました。まあ、これが”お札”だという知識(認識)がなければ”日本銀行券”といえどおもちゃ扱いだもんな~~ ”聖徳太子”と言えばお金の代名詞だった時代もあったんですけどねぇ・・ ちなみに上記の写真のお札はお金としてちゃんと通用します。
 一万円札、五千円札、千円札は1986年、五百円札は1971年に発行停止(日本銀行hpより)


 ”ブロックチェーン”というのは”データ”を”ブロック”という形で取引を記録した帳簿みたいなもので、サーバを介さないP2Pネットワーを使って、ネットワークの参加者が取引の正しさを承認するというもの。その特徴は”分散されている”、”パブリックである”、”高度なセキュリティが備わっている”こと。技術的にはかなり難しそうなんで、とりあえずこんなもんと思ってください。

 さて、”ブロックチェーン レボリューション”という本は”ブロックチェーン”というテクノロジーをかなりポジティブに捉えています。金融、契約、企業活動、政治、ビジネスモデルなどさまざまな分野でイノベーションを引き起こし、いろんな問題解決の糸口につかうことができるだろうとの論調です。まあ、課題もちゃんと整理されているので、明るさ一辺倒ではないですが全体的には”レボリューション(revolution 革命)”を引き起こし、より良い社会を生み出すだろうと。
 読んだ感じとしては、ちょっと楽観的すぎかな~と思いつつ肯定的に受け取っています。まあ、テクノロジーだけでいろんな問題が解決するワケでもないですが、人や社会がうまく使っていければ道具としてはかなり使えそうだと。

 いろんなテーマが満載の本ですが、ちょっち気になったのを一つ。”ブロックチェーン”に記録されたデータってのは”改竄”あるいは”消去”できないんですな。まあ、できないからこそ”ビットコイン”のような”通貨”としての価値が保全できるし、”契約”などの利用もできるわけで、それ自体は良い事です。ただ、これがインターネット上での”忘れられる権利(*3)”と重ね合わせるとちょっと複雑。それこそ若い時のやんちゃの自慢話からリベンジポルノみたいな犯罪性の高いものまで”消したい過去”ってのはあるものです。今の仕組みだと、GoogleやYahoo!のような大手の検索会社の検索結果からはずせば、あるいは掲載hpを削除すれば、過去の記録をほぼほぼ消去できなくはなさそうですが、これが”ブロックチェーン”となるとほほできなさそう。
 フィナンシャル・タイムズ紙のイザベラ・カミンスカがユーロの例をあげていた言葉が印象的

  お金の世界では、記録を消去することも一つの伝統です
  なぜなら、人は10年以上も前の行動で責められつづけるべきではないからです
  人生はやり直しがきくものでなくてはいけません
  ですから、記録が永遠に消えないシステムというのはどこか異常な感じもするのです

 確かに、相手が病んだり自殺したりならともかく小中学校でいじわるされた(した)記録なんて中高年まで引っ張られたら嫌でしょうし、離婚訴訟まっただ中に、若い時の元カノとよろしくやっている写真が発見されるなんてのはできれば避けたいモノです。今だってSNSやHP上にある消せないんが問題になってるのに、こんなんがさらに堅確になったらどうなんでしょうねぇ・・・
 まあ、”M.I.B(*4)”みたく職業的に過去を消す人ってのもいるのかもしれませんが、こんなんもある程度集中的なデータ管理がなされているからこそ。ブロックチェーン時代になると難しいんでしょうなぁ

 別にこの点をあげつらって”だからブロックチェーンはダメなんだ”とか言うつもりはないです。むしろ技術面ではいろんな可能性を秘めていると考えています。ただ、功罪考えておかないとまずいんじゃね~かな~と思った次第。

  行く手には希望と危険が待ち受けている
  世界は光の側に進むのか、それとも闇に堕ちるのか
  それを決めるのは、今の僕たち一人ひとりの行動だ

   (本書より)

 まさに、

   May the Blockchain be with you(*5)
    (ブロックチェーンと共にあらんことを)

ってノリかと。繰り返しますが、テクノロジーだけで解決する問題はそんなに多くはありませんぜ! 問題を解決するのはあくまで価値認識、知識あるいは幻想を共有する人や社会であります

人の価値っていうのは共有できる認識、知識、あるいは共同幻想
 本書は400P近くある本ですが、素人にも読みやすい本です。ぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)ビットコイン(bitcoin)
 コンピューターシステム上に存在する”仮想通貨”。通常のお金と違って国家などの権威の裏付けがないのが特徴の一つ。ビットコインの仕様変更に伴うなんだかんだで”ビットコイン”と”ビットコインキャッシュ”に分裂(2017年8月1日)。まあ、民主的ちゃ民主的なプロセスなんでしょうが、素人にはよくわからん・・・
(*2)予言書
 未来の物事を予測して言うこと。また、その言葉。が”予言”。
 キリスト教で、神託を聴いたと自覚する者が語る神の意志の解釈と予告。また、それを語ることが”預言”(デジタル大辞泉)
 ”予言”が外れてもごめんなさいで済みますが(済まないか?)、”預言”が外れると”神の代弁者を語る詐欺師”として断罪されます、はい
(*3)忘れられる権利
 データそのものを完全に消すことはできませんが、少なくとも”検索結果”から外すことで過去のデータを見られなくすること、これが”忘れられる権利”です。
最高裁で初の判決が出たんで(2017年1月31日)、一定の指針は固まったようです。個別案件ごとにプライバシーと公共の利益を判断することになるので、ほいほい検索されなくできるシロモノではなさそうです
(*4)M.I.B(メン・イン・ブラック)
 (主演 トミー・リー・ジョーンズ、ウィル・スミス、監督 バリー・ソネンフェルド)
 UFOや宇宙人の目撃者の記憶をピッカリ光線で消してまわって、宇宙人との共存を秘密裏に図る黒づくめの集団”M.I.B”の活躍を描いたSF映画。ウィル・スミス演じるエドワーズが”エージェントJ”になる場面でコンピュータ上の記録を削除するってシーンが出てきます。
(*5)May the Blockchain be with you
元ネタはスターウォーズの
 May the force be with you
  (フォースと共にあらんことを)

ここでもフォースの暗黒面がどうのってやっていましたな

外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな(クラウド時代の思考術/狐)

 ども、広大なネットにたゆたうおぢさん、たいちろ~です。
 ”攻殻機動隊 S.A.C.(*1)”というアニメにこんなシーンが出てきます。電脳化という技術で人間の脳とインターネットがダイレクトに接続されている未来。通称”笑い男事件”とよばれるサイバーテロ事件の首謀者”笑い男”と、その事件を追う公安9課の”草薙少佐”が図書室(草薙少佐曰く”まるで情報の墓場”)で対峙する場面での会話ですが、なんせ会話に出てくるのがドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフにフレドリック・ジェイムソンに大澤真幸(*2)。後から登場した公安9課の”荒巻課長”の一言がこれ。

  さっきから聞いていたが、外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな

 その通りで、私もまったくついて行けませんでした。
 最近のネット技術だとダイレクトに脳と接続まではいきませんが、テキストのみならず会話や画像なんかも検索できる社会にはなっとりますが、だからといってそれが知的な会話や判断に結びつくかどうかはまた別。
 ということで、今回ご紹介するのは、クラウド化する社会と知性のお話”クラウド時代の思考術”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。京都”伏見稲荷”で見かけた狐の絵馬です
多くの絵馬がいろいろ見つめている図はちょっと象徴的かも

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【本】クラウド時代の思考術(ウィリアム・パウンドストーン、青土社)
 ”検索”によりさまざまな情報が調べれる現代における知のあり方をまとめた本。
 原題は”Head in the Cloud:Why Knowing Things Still Matters When Facts Are So Easy to Look Up(クラウドの中の頭脳。事実を調べるのがとても簡単である時、まだものを知っていることが重要ですか
 邦題で見るとなんかのノウハウ本のようですが、これはミスリードじゃないかなぁ
【動物】
 ネコ目イヌ科イヌ亜科の一部。狭義にはキツネ属のこと。
 本書ではキツネを”さまざまな要素を取り入れる折衷主義者で、多くのアプローチに開かれていて、矛盾をこともなく容易にこなすことができる”象徴として出てきます。(これに対するのが”ハリネズミ(*3)”)


 本書から面白かったトピックをいくつか

〔無知の人は自分の無知を知らない:ダニング=クルーガー効果〕
 ”ダニング=クルーガー効果”というのは心理学者のダニング教授と大学院生のクルーガーが1999年に発表した”未熟さと無知 自分の無能力を認識できないことが思い上がった自己評価を導く”という実も蓋もない論文によるもの。簡単に言うと

 知識や技術にもっとも欠けた者の特徴は、知識や技術の欠損をまったく理解できない
 獲得点数の低い人は高い自己評価をし、高い人は低い自己評価をする

というもの。確かに知らないということを知らなければ”自分は知ってる”と勘違いすることもあるんでしょが、予想以上の結果だったとか

〔知識がある人のほうが所得が高い傾向がある(但し書き付き)〕
 質問事項にもよりますが、知識を豊富な人々はたくさんのお金をかせぐんだとか。
 いろんなパターンで実証してみるとそんな傾向があるようで、同じモデル(パターン)の人で比較したケースでは倍ほど違うなんてのが記載されてます
 これは、知識のある人のほうがない人よりさまざまな質問に対してクリエイティブな解決策を導き出せるからとか、お金の扱いを学んでいるとかなんて理由が指摘されています。

〔相関関係と因果関係は違う〕
 上記の但し書きがこれ

  相関関係は因果関係を証明していない
  相関関係の欠如を因果関係が間違いであることを証明する

というもの。上の例だと知識があることが理由で裕福になっている可能性以外に、裕福だと余暇の時間が十分にあるのでニュースを観たり本を読んだりできるので知識が豊富とか、親が裕福(第三の理由)で子供が金持ち、知識があるという理由も推察されています。
 概して統計データってのは事実は同じでも解釈が違ったりするんで、このへんもちゃんと突っ込んでいるのが好感できます。

〔学ぶことの意義:グーグル効果〕
 覚えておかなくてもアーカイブで保存できる(グーグルみたいの)だと非常にしばしば忘れ去られてしまうってこと。まあ”検索すりゃかわる”と思えばいちいち記憶しようなんて思わないのもわかりますが。
 受験生時代(はるか昔ですなぁ)だと、まず”覚えること”が山ほどあったんで、”なんでこんなこと覚えにゃならんのだ!、これを覚えてなんの得があるんだ!!”と思ったもんですが、今の若い人ならなおさらでしょうなぁ。
 知識を身につけるためにかかるコストが、知識を身につけたことによる利得を上回ることはままあること(てか、ほとんどの知識ってそうじゃね?)。まあ、覚えなきゃ受験に合格はしないんですけどね・・・ 本書でもロンドンのタクシードライバーが仕事に付くために要求されるテストがGPSナビにとって代わられるなんて話が出てきますが、クラウド化すりゃますますこのアンバランスが拡大するんでしょうね

〔学ぶことの意義:学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす〕
 上記に対しての救いの言葉(かな?)がこれ
 知識と所得の相関関係について考えられる説明として

  学習が認識能力を改善するということだ
  この能力はほとんどどんな仕事―― 一生従事する職業も含めて ――にも役に立つ
  学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす

ってのが書いてます。ちょっとは気休めになりますか、受験生のみなさん

〔キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風に。だが・・・〕
 本書の最終章には、キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風にさらされていて、ハリネズミのような大きな概念に関連づけるやり方のほうが支持されているてな記述があります。なぜなら情報はクラウド(ネット)にあって必要に応じて利用できるから。本書の結論としてはこれではダメなんだとか。これは情報をきちんと持っていることは、その文脈についても情報をもっているということ。

  それ(文脈)は、個々のものの評価を可能にしてくれ
  われわれが知らないことに、きわめて重要な洞察を与えてくれる全体への展望だ

 まあ、ブチブチの情報だけではなくって、全体の流れを含めた情報や認識能力がなきゃ、ネットにつながってるだけじゃ不十分ってことなんでしょうかね

 まあ、冒頭の笑い男と草薙少佐の会話もみたいに電脳空間にダイレクトにつながってなけりゃ成立しそうにないってのもありますが、これって単なる知識のひけらかしじゃないんですね。

  草薙少佐:それは経験から導きだされた貴方の言葉?
  笑い男  :Yes

 ネットと検索がはびこる世の中、この質問ってより重要になるんでしょうね、きっと

《脚注》
(*1)攻殻機動隊 S.A.C.(原作 士郎正宗、監督 神山健治、バンダイビジュアル)
 正式名称は”攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX”。現代のネットワーク社会が究極進化するとこうなりそうな未来社会を描いたSF。テレビ版は全26話ありますが、160分にまとめた総集編”攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man(バンダイビジュアル)”もありますので、初めての方はこちらをどうぞ。上記のセリフは総集編版のです。
(*2)ドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフに~
ドアノー:ロベール・ドアノー。フランスの写真家
J.D.サリンジャー:アメリカ合衆国の小説家。”ライ麦畑でつかまえて(白水社)”など
ジガ・ヴェルトフ:ソビエト連邦の映画監督。”カメラを持った男(メディアディスク)”など
フレドリック・ジェイムソン:アメリカの思想家。”政治的無意識(平凡社)”など
大澤真幸:日本の社会学者。”ナショナリズムの由来(講談社)”など。
 すいません、どれも読んだり観たりしてません。
(*3)ハリネズミ
 ハリネズミ目ハリネズミ科ハリネズミ亜科に属する哺乳動物の総称。
 本書では”すべてのことを、ある一つの中心となる大きな概念に関連づけるエキスパート”と記されています

ア・ア・ア デジタル・ゴールド お金と思~う今年の人よ~♪(デジタル・ゴールド/通貨)

 ども、Fintech(フィンテック)にちょっとだけからんでるおぢさん、たいちろ~です。
 Fintech(FinTech)つーのは金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語”IT技術を使った新たな金融サービス”という意味。ところがこれがまた分かりにくいんですな。融資や資産形成のアドバイスをAIでやるだとか、スマホを使った決済や家計簿管理だとか、まあお金の処理に絡んだITだと何でもありの様相。群雄割拠というか玉石混交というか・・・ この中でも分かりやすそうで、実はよく分かんないのが”仮想通貨”というシロモノ。ちょっち真面目に勉強してみましょうということで、この本を読んでみました。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな仮想通貨の歴史を扱った本”デジタル・ゴールド”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。松山城天守閣に展示されていた”藩札”です

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【本】デジタル・ゴールド(ナサニエル・ポッパー、 日本経済新聞出版社)
 ”ビットコイン”と呼ばれる仮想通貨。その始まりは謎の人物”サトシ・ナカモト”がネットにアップした論文だった。2009年、この論文を元に発行された”ビットコイン”は2016年12月には時価総額140億ドルを超える・・・
 サブタイトルは”ビットコイン、その知られざる物語
【道具】通貨
 流通貨幣の略称で、国家などによって価値を保証された、決済のための価値交換媒体(wikipediaより)。この”保証”と”媒体”ってのがミソで、昔の金貨ならいざしらず、現在の”紙幣=媒体”そのものの物理的価値なんか無いに等しく、じゃあなんでこれがありがたがられるかというと日本銀行(日本政府)が価値を保証してくれてっから。
 価値を保証してくれれば別に国家(中央銀行)でなくてもいい訳で、実際に明治の廃藩置県以前は”藩札”ってのがありました。この中には代官所や旗本領が発行する紙幣ってのもあったそうで、こうなるとポイントカードのノリに近いんでしょうか?(*1)


 さて、本書ですが著者がニューヨーク・タイムスの記者ということもあって非常にリアル、ってか生々しい話(原書の副題に”Inside Story”ぐらい)。なにかって~と、技術の発展と思想的側面に支えられた初期の開発者たちが夢見た世界の発展と挫折、後半に登場する資本家たちの利益追求の姿勢がきわめて対照的なんですな。元々”ビットコイン”が開発された思想的基盤ってのはリバタリアン(自由至上主義者)により国家や金融機関などの権力から通貨を解放し、ネットワーク上で自由に使える通貨を手に入れる”ってあたりに合ったんですが、現実は国家や資本主義とは無縁ではいられなかったと。気になったトピックをいくつか

〔発行主体を持たない”ビットコイン”の価値〕
 ”ビットコイン”が生まれた背景には”国家に通貨の発行を任せていると、価値が安定しない”という思想があります。これは初期のメンバにはハイパーインフレの国にいた人がいたり、アメリカ国内でもリーマンショック(経済危機)を目の当たりにしてたりなどがあったから。国家(政策)に振り回されなけりゃこんなことにならないだろうというのがそもそもの発想です。
 ”ビットコイン”そのものは”マイニング”と呼ばれるコンピューターをブンまわして計算される一連の文字列として表記され、これが有限の個数(そういう仕様)なので問題はないと初期の開発者は考えてました。実際は有限の資産に対する獲得競争があって1BTC(ビッコトコイン)あたりの価値は膨らんでますがインフレよりはまし?

〔金遣いの履歴を見られない権利〕
 一般論で言うと、現金ってのは誰がどこで何を買ったかはわかりません(*2)。でもカード決済や銀行経由の送金だとこれが一目瞭然。まあ、リコメンデーションあたりだと罪はないんでしょうが(*3)、考えようによっては不気味でもあります。ビッコトコインでは”ブロックチェーン(*4)”という技術を使って匿名性を確保する仕組みになっています。
 ただ、ヤバイもんに手を出すとはいろいろ問題がありそうで、実際ビットコイン普及の原動力になったののひとつは不法薬物のネット販売の決済利用ってのがあり、これが政府に目をつけられた原因に。マネーロンダリングやテロ組織への送金など匿名であるがゆえに政府がピリピリしている状況です。

〔手数料が高いんじゃね?!〕
 ”ビットコイン”が生まれた背景のもう一つに”送金手数料”や”カード手数料”が高いし、処理に時間がかかるってのがあります。これは”銀行”や”カード会社”といったハブ機能を持つ寡占的・規制的な存在があり、その背景には集権的で高コストなシステムが存在するからだと。”ビットコイン”はこのようなハブが存在しなくても成立するので手数料が安くできると。
 ですが、実際には本来は不要であるはずの交換所(ビットコインを預けたり払い戻しをするネット上の企業)が立ち上がって、マウントゴックス(*5)のように、ここが破綻すると払い戻しができなくなるという事態が発生します。

〔銀行 vs IT企業〕

 銀行というのは典型的な規制企業なので、どっちかとゆ~と新しいコトをやるのが苦手な業界ではないかと思われます。昨今はそうも言ってられないのでFintechに積極的に取り組んでる銀行も増えてきていますが。これは彼の国も同じだったようで。JPモルガン・チェース(アメリカの銀行持株会社)とIT企業とを対比した本書の記載。

  JPモルガンが新規事業に参入する際にもっとも重視するのは
  どれだけ儲かるかではなく、規制当局がどう思うかに変わっていった

   (中略)
  金融危機に巻きこまれなかったシリコンバレーの姿勢は180度違った
  アップル、グーグル、フェイスブックなどの成功に意を強くしたIT業界は、
  世界を変える自らの能力への自信を深めていた

   (中略)
  むしろほかの業界と比べて、既存のプレーヤーが規制を破ることを極端に恐れている金融は、
  変革の機会にあふれていると思われた

 はてさて、次世代の覇者はどっちなんでしょうかね?

 さて、本書を読んだ最大の理由が”ところで、ビットコインって何に使えるんだっけ?”なんですが、読んでもよく分かりませんでした。確かに、送金なんかの手数料は安くできそうだし、資産蓄積には使えそうなんで役には立つってのはわかるんですが、今ンとここれでモノが買えるとこがそんなにあるわけじゃなし、呑み代の支払いで受け取ってもらえるとこもあんましありそうでなし、誰かがその価値を担保してくれるわけでなし。
 お金で物が買えるってのはその通貨に何か価値があると考える”共同幻想”の賜物だと考えれば、今のお金だってビットコインだって大した違いがないっちゃないのかもしれませんが・・・


  ア・ア・ア デジタル・ゴールド お金と思~う今年の人よ~♪
  円と違う ドルと違う 元と違う ユーロと違~う♪
  ごめんね 今のお金と又比べている~~♪
(*6)

まっ、これを書いている12月30日の日経新聞に国内最大のビットコイン取引所”bitFlyer”が日経新聞に3面ぶち抜き+1/3広告×3という大広告を出してたんで実体経済にも認知されつつあるようなので、もうちっとでいろいろ使えるようになるんでしょうかね。期待して新年を迎えてみましょう

《脚注》
(*1)ポイントカードのノリに近いんでしょうか?
 カードのポイントは値引きや景品との交換に使えるので通貨っぽいと言えます。じゃあ、この価値を保証する企業が倒産するとどうなるかつ~と会計処理上”引当金”を積んでいれば無価値になることはない(はず)です。逆に言うとこれを積んでいなければ無価値になることも・・・
(*2)誰がどこで何を買ったかはわかりません
 推理小説なんかだと、銀行強盗で奪ったお金は番号が控えられているので使うと足が付くなんてのがありますので、全く分かんないわけではないんでしょうが。
(*3)リコメンデーションあたりだと罪はないんでしょうが
 リコメンデーション(推奨)の例としてはAmazonの”おすすめの商品”がこれ。ただし、アイドルの写真集なんかを立て続けに見てると”おすすめ商品”にそれっぽいのがいっぱい表示されちゃうのはちょっと困りモンかも。
(*4)ブロックチェーン
 インターネット上の複数のコンピュータで取引情報を共有し正しい記録を鎖(チェーン)のようにつないで蓄積する仕組み。日本語では”公開分散元帳”と訳されます。
 技術的な詳しい内容はでんでん理解してませんが、まあ物理学を理解してなくても自転車には乗れるようなもんだと思えば気にはなりませんが・・・
(*5)マウントゴックス
 2013年には世界のビットコイン取引量の70%を占めた交換所。ハッキングによりビットコインを喪失し、支払い不能になり2014年に破産。
(*6)ア・ア・ア デジタル・ゴールド~
 昭和の名曲”イミテイション・ゴールド”作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童、歌:山口百恵)です。すいません、悪ノリしました。こんな曲です

このろくでもない、すばらしき世界に住む住民はエコン(ホモエコノミカス)にはなれないらしい(行動経済学の逆襲/切り株)

 ども、根がチキンハートなんで株式取引をしたことないおぢさん、たいちろ~です。 まあ、最大の理由は”お金がない”ことなですが。
 トランプ氏 VS クリントン氏によるアメリカ大統領選挙が終わりました。この結果が今後の世界経済にどう影響するかはわかりませんが、瞬間的にはすんげ~大波乱になっとります。密接な関係にある日米経済とはいえ、選挙当日11月9日の日経平均株価はトランプ氏優勢が伝えられると前日比919円(5%)下げ、現実路線の政策になりそうとなった翌日10日には前日比1,092円(7%)上昇。(日本経済新聞 11月12日より)
 先行き不透明とはいえ1~2日で日本経済のファンダメンタルズがこんなに変化するワケもなく、外から見てると相場がちょちょまっているんじゃね~かと思っちゃいます。なんでこんなことになっちゃうんでしょうね?!
 ということで、今回ご紹介するのは合理的とは程遠い経済の動きを経済学的なアプローチで解明しようとしている経済学者の本”行動経済学の逆襲”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影(2014年8月頃)
鶴岡八幡宮の大銀杏の切り株です(*1)

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【本】行動経済学の逆襲(リチャード・セイラー、早川書房)
 合理的な考え方をする人間を前提に構築された伝統的な経済学に異を唱えた”行動経済学”の第一人者であるリチャード・セイラーによる、”行動経済学”の説明を伝記的な歴史解説の側面を加えて解説した本。
 原題は”Misbehaving:The Making of Behavioural Economics”。Behavioural Economicsの訳は”行動経済学”ですが”Misbehave”は”行儀の悪いことをする、不正を働く”という意味。まあ、伝統的な経済学から見ると行動経済学で扱う人間像って”正しくない”行動をする人なんでしょうなぁ
【花】切り株
 木を切った後の根元の部分。
 ”株式”の名前の由来は”株の部分がずっと残っている”という意味から世襲などによって継続的に保持される地位や身分を”株”というようになり、そこから共同の利権確保のための同業組合を”株仲間”というようになり、出資持分割合に応じて権利が保持されることを”株式”と呼ぶようになったとのこと(”語源由来辞典”より抜粋)
 現代でも相撲の親方になるのに”年寄株”ってのを耳にしますが、根っこは同じみたいです


 伝統的な経済学で扱う人間ってのは”ホモエコノミカス(homo economicus 合理的経済人)”、本書では略して”エコン”というモデルを想定しています。これはどんな人かというと,すべての選択を

 合理的期待(Rationarl Exprctations)

に基づいて行う人。簡単に言うと、自分で買うものはすべての財やサービスから最も最良な物を選び、余計なバイアス(偏り)がなく、自信過剰にはならず、どこまでも合理的で冷徹に行動する人。本書では”スタートレック”に登場する”ミスタースポック(*2)”のような存在を例に上げています。
 で、実際の人間(本書ではヒューマン)はどうかというと、モノを選ぶのはいいかげんだし、目先の利益にとらわれるし、同額なら利益を得るより損失のほうが悲しいし、自信過剰だしと、エコンとは似ても似つかない存在。つまり、

  このろくでもない、すばらしき世界に住む住民は
  エコン(ホモエコノミカス)にはなれないらしい
(*3)

ですな。
 本書では、行動経済学に登場する原点から左右非対称な価値関数だの、プロスペクト理論だの保有効果だの、サンクコストの誤謬だの、メンタル・アカウンティングだの、現在バイアスだの損失回避性などの各種のバイアスだのといったトピックが出てきます。単語だけ見るとおどろおろどしいですが、合理的に見ると正しくないけど実際にはやっちゃいそうな行動の説明なんで、意外なほどわかりやすいです。それぞれを説明してるとたいへんなので、本書を読んでいただければと。

 まあそんだけだと投げっぱなので気にいったトピックをひとつ。よく株価って美人コンテストに例えられますが(*4)、それのちょっと数学的バージョンを。セイラーがフィナンシャルタイムスで行ったクイズです。問題はこちら

  参加者は0から100までの中から任意の数字を1つ選びます
  全部の数字の平均値の2/3に一番近い数字を選んだ人が勝ちとなります
  あなたはどの数字を選びますか?

 一応、この問題には数学的な解き方が存在します。まず全員がまったくランダムに数字を選んだとすると、平均値は50になります。ですので2/3の答えは33。ところがもう少し頭のいい人がいると、”みんなが33を選んだら答えは22になるはず”という答えになります。これに気がついて2/3の掛け算を繰り返すと最終的には”0”に収束します(これをナッシュ均衡(*5)というそうです)
 実際にとうなったかというと、結果を多い順に並べると、”22”を選んだ人約8%、(2段階思考をした人)、”1”を選んだ人約7%&”0”を選んだ人約5%、合わせて約12%(経済学の訓練を受け過ぎている人)、”33”を選んだ人約6%、(1段階思考をした人)(カッコ内は本書でのコメント)。最終結果は約2%の人が選択した”13”になったそうです。
 この結果がなぜ気にいったかというと、世の中には頭の良い人だけじゃないんだな~ってのと、頭の悪い人がどう行動するかの”読み”ってのは計算だけじゃ出てこないんだな~と。セイラーはこの結果でフィナンシャルタイムスの読者は頭の良い人が多くてナッシュ均衡に気付いた(0や1を選択した)と言っていますが、実際には世の中には頭の悪い人(1~2段階で思考を止めた人や絶対出ない66以上を回答した人も僅かながらいた)がいてかなり平均を押し上げる結果になってます。さらにいうと”99”とか”100”を答えたいたずら行為をした人もいて(合計で約3弱%)、結果的には数学的な結果と一致しなかったと。

 まあ、考えてみりゃ世の中みんな頭のいい人ばっかりとは限んないし、いちびりもいてなかなか計算どおりにゃいかないんでしょうね。エコンをベースにした(このクイズだとナッシュ均衡の結果に賭けた人)ばっかりじゃないってのは当たり前っちゃ当たり前です。実際に自分のお金をかけて投資をするとなれば、同じ相場を見てもブルと判断する人もいれば、ベアと見る人間もいるんだろうから(*6)もっと数字通りにゃいかないんでしょうなぁ

 と、ここまで書いていて最近の気になる記事から。日経新聞が人工知能(AI)を使った対話型対応エンジン”日経DeepOcean”を提供するとのこと(日経新聞 2016年11月7日 HPはこちら)。データに基づいた数理統計的なAIの分析なんて、まさに究極の”エコン”かも。こいつの言う通りに動いたら伝統的な経済学の世界になっちゃうんでしょうか? それとも”第3の経済学”みたいのが登場するんでしょうかね?

 本書はちょっとお堅いような本ですが、物語っぽくなってる分だけ”行動経済学”の入門書としても良いかも。経済に興味を持っている人にはお勧めです

《脚注》
(*1)鶴岡八幡宮の大銀杏の切り株です
鶴岡八幡宮の大銀杏は、源頼家の子の公暁がこの銀杏の木に隠れて源実朝を殺害した(1219年)という伝説がある樹。2010年の強風により根元から倒れました。写真は根元から高さ4mまでの部分を元の樹の横に移植したものです
(*2)ミスタースポック
 アメリカのSF映画&TV”スタートレック”シリーズに登場する宇宙船エンタープライズ号の副長兼技術主任を務めるヴァルカン人(宇宙人)と地球人とのハーフ。普段は感情を抑制し表情に出さない、非常に合理的な思考のすが、持ち主ながら、時々感情に流されるのが魅力。
 13作目の映画”スター・トレック BEYOND”が公開中ですがまだ観に行ってないな~~
(*3)このろくでもない、すばらしき世界に住む住民は~
 缶コーヒー”BOSS”のCM”宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ”より。宇宙人ジョーンズはトミー・リー・ジョーンズが演じています。ちなみジョーンズの吹き替えを担当している菅生隆之は2009年からの新”スター・トレック”シリーズでは老年期ミスタースポックの声も担当してます、はい
(*4)美人コンテストに例えられますが
 たとえば100人の中から最も美しいと思われる人を6人選んで全体の平均的な選好に最も近い選択をした人に賞金を与えるというゲームをやるとします。賞金を貰おうとすると、自分が最も美しいと感じる人ではなく、他の参加者が最も美しいと感じるであろう人を予測(場合によっては数次にわたって)することになるというもの。ケインズの説明だそうです。
(*5)ナッシュ均衡
 ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない(wikipediaより抜粋)。まあ、ボールの中に入ったピンポン球みたいな状態かと。
(*6)同じ相場を見てもブルと判断する人もいれば、ベアと見る人間もいるんだろうから
 相場などで上がると見る(強気)ことを角を下から上に突き上げる雄牛に見立てて”ブル(Bull)”、下がると見る(弱気)を爪を振り下ろして攻撃する熊に見立てて”ベア(Bear)”と言います。凶暴そうな動物にたとえていますが、ブルもベアもどっちも食べちゃう人間が一番凶暴なんですけどね

人間は頭で考えるより権威には服従するみたい。だとするといじめやハラスメントの問題に関心のある方は読んどいて損のない本です(服従の心理/トネリコ)

 ども、偉い人にへ~こらしないんで、あんまし出世してないおぢさん、たいちろ~です。
 大方の予想を裏切ってトランプ氏が第45アメリカ大統領になりました。どうも彼の国は閉塞感の漂う社会に強力なリーダーシップを求めたようです。まあ、リーダーシップのあることは別に悪いこっちゃないですが、かつて”カリスマ的なリーダーシップ”と”服従の国家システム”を構築することで後から考えると”なんでそんな非道なことをやったんや!”てことをやっちゃった国もあったんでね。
 別にトランプ氏が第二のヒットラーになるなんて言う気は毛頭ないんですが、状況がリーダーの思惑を超えておっとっとな過剰適用をしちゃうこともあります。歴史から教訓を学びうるのであれば、ちゃんと見るべきとこは見といて、嫌なものは嫌だと言わないとって~話です。まあ、彼の国だけの話ではないですが・・・
 ということで、今回ご紹介するのは人間というのは意外なほど権威に服従してひどいことをちゃっやいかねないという話”服従の心理”であります。

写真は”sasikiの雑記帳”のhpより。トネリコの木です

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【本】服従の心理(河出文庫、スタンレー・ミルグラム、訳 山形浩生)
 1960年から63年にかけて、アメリカのイェール大学である実験が行われた。通称”アイヒマン実験”。ナチス親衛隊中佐”アドルフ・アイヒマン”の名を冠するこの実験は、人間の権威に服従する心理を検証するものだった。そしてこの実験の結果は大方の予想を裏切るほど”人間は権威に服従する”ものだった・・・
 心理学者ミルグラムによる実験結果とその考察をレポートした本。
【花】トネリコ
 モクセイ科トネリコ属に分類される落葉樹。花言葉は”偉大、高潔、服従”など
 北欧神話に登場する世界を内包する”世界樹(ユグドラシル)”はセイヨウトネリコの樹だそうです。この樹から枝を1本折り取って”グングニル”という槍を作ったのが主神にして戦争と死の神”オーディン”、その枝の傷が元でこの樹は枯れてしまったそうです。なんだか象徴的だなぁ


 実験の名前の元となった”アドルフ・アイヒマン”という人ですが、”ユダヤ人問題の最終解決”という何百万人ものユダヤ人虐殺に関与し戦犯として処刑されたナチス親衛隊中佐。これだけ聞くと極悪非道の大悪人のように聞こえますが、この人がある意味有名なのは、その実態が大方の人がイメージしたような人物ではなく、家族を愛し、上からの命令で淡々と仕事をこなす普通の人だったこと。今風に言うと残虐なラスボスだと思って倒したら、実はその後ろにいる真のラスボスにへ~こらしているだけの小物だったみたいな・・・
 この人に興味がある方はハンナ・アーレントによる”イエルサレムのアイヒマン(*1)”を読んでいただければ。

 この実験の内容を簡単に説明すると

 ・外見は”人が正しく学習するのは、間違えたら罰を受ける場合”という主張の調査
 ・メンバーは
  被験者:学習に関する実験と称して公募された一般人
  学習者:学習をする人(被害者。実は役者だが被験者には内緒。以下被害者)
  実験者:権威としての実験を指揮する人
 ・学習者は15~450ボルトの電撃を発生させる機械と接続される
   (命に別条はないと説明されている)
 ・被験者は学習者が間違えるた電撃のスイッチを入れる
 ・電撃は答えを間違えるたびに15ボルトづつ強くなる
 ・被害者は75ボルトでうめきだし、150ボルトで助けてくれと叫び、
  270ボルトで苦悶の絶叫を上げ、330ボルトで何の反応も示さなくなる
 ・被験者が電撃を上げることに拒絶を示した場合、実験者は実験を続けるよう促す

このような条件の元での真の実験の目的は”被験者はどこまで電撃をあげるか”、つまり”被験者はどこまで権威に服従して加虐的な行為を取りうるか”を調べるというもの。あなたならどこまでボルトを上げますか?

 この実験に対し、どのぐらいまで電撃を上げるかを別のグループに聞いたところ、ほとんどの人が150ボルトは超えず、最高の450ボルトまで上げる人は0.125%しかいないだろうと予想されたとのこと。
 で、いろいろなシュチエーションで行われた実験の結果はというと、主だったものは

〔高位の結果〕
 ・被害者と離れている場合:65.0%(40人中26名)
 ・音声が聞こえている場合:62.5%(40人中25名)
 ・被験者以外にスイッチを押す人(同僚)がいる場合
             :92.5%(40名中37名)

〔低位の結果〕
 ・抵抗したら押さえつけて電撃を流す場合:17.9%(40人中12名)
 ・実験者が不在の場合  :20.1%(40人中9名)
 ・被験者が電撃レベルを選択できる場合:2.5%(40人中1名)
 ・実験者がただの人の場合:20%(20人中4名)
 ・実験者の一人が続行、一人が中止を指示した場合:0.0%(20人中0名)
 ・被験者以外に2名の同僚(役者)がいて同僚が中止を主張した場合
             :10.0%(40名中4名)

 最も強い電撃まで続ける人は1000に1人ぐらいしかいないだろうという大方の予想を裏切ってそこまでやっちゃった人が実に2/3に達しているという結果に。被害者と離れているほど、責任を感じなくていいほど最高レベルまで上げちゃう傾向と。まあ、押さえつけてでも電撃を与え続けた人ですら20%弱いますが。

 単にサディスティックな人間が集まっただけと考える方もあるかもしれませんが、電撃レベルを選択できる場合だとそこまでいったのはたった一人(まあ、この人はそっち系の人かもしれませんが)。分布で見ると、うめきだしてる75ボルト以下までしか上げなかった人の累計が70%(40名中28名)助けてくれと叫ぶ150ボルトのレベルで同じく95%(40名中28名)。そんなにS系の人が集まっているとは言えなさそう
 逆に”実験者がいない”、”実験者が権威でない”、”実験者の意見が分かれている”あるいは”周囲が反対”の場合は最も強い電撃まで続ける人は減ってしまうようです。

 この結果から

  権威ある人からの指示があり、責任を感じにくい状況であれば人は従順になる
  権威が機能しにくい状況や、廻りの意見に同調できる環境では従順度は下がる

ことが見てとれます。なんだか、本の紹介ってより実験内容の説明ばっかになってすいません。本書はこの実験の内容を踏まえ、このようなことが起るメカニズムなどを詳しく紹介しています。実験が行われたのはもう半世紀以上前、本書の原典の出版ですら1974年と40年以上前ですが、そのショッキングな内容は今でも十分読み応えがあります。翻訳を担当した評論家”山形浩生”による現代的な視点での訳者あとがき”服従実験批判”も出色(というか、かなりえぐいツッコミ?)
 特にいじめやハラスメントの問題に関心のある方は読んどいて損のない本です。

《脚注》
(*1)イエルサレムのアイヒマン(ハンナ・アーレント、みすず書房)
 ナティ政権下でユダヤ人問題の”最終的解決”=ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を行ったアドルフ・アイヒマン親衛隊(SS)中佐の裁判記録の本。サブタイトルは”悪の陳腐さについての報告”。アイヒマンの裁判が行われたのが1961年、本書が出版されたのは1963年のことです。
 一般受けするような本ではないですが、それでも”アイヒマン・ショー”(まだ観てません)という映画が公開された時に本屋の特設コーナーに置いてあったのはちょっと驚きました。
 詳しくはこちらをどうぞ

オリンピックって究極の”街おこし”みたいなもんでしょうか?!(地域再生の失敗学/駒沢オリンピック公園)

 ども、地方出身、首都圏在住のおぢさん、たいちろ~です。
 相変わらず東京オリンピックの競技会場をどこにするかでごたごたもめているようです(2016年10月末現在)。競技をやるほうの委員会とかは”せっかく開催するなら新しくて立派な会場を作って、いっぱいお客さんが入るとこでやりたい”と言ってるし、東京都(というか東京都知事)は”このままだとお金がかかる過ぎるのでコスト削減を図りたい”と言ってるし。まあ、見てると論点が違いすぎて、議論がぜんぜんかみ合ってないな~~って感じです。が、この議論ってどっかで聞いたような?!
 ということで、今回ご紹介するのは話題になっているというか、やらざるを得ないことなのになんだかうまくいく気がしない感のある地方創生を扱った本”地域再生の失敗学”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。駒沢オリンピック公園中央広場にて。
この日は”東京ラーメンショー2016(*1)”をやっておりました。
後ろにあるのは陸上競技場です

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【本】地域再生の失敗学(飯田泰之他、光文社新書)
 少子高齢化が進む右肩下がりの日本において、必要不可欠なはずの地方創生(地域再生)。それがなぜうまくいかなかったのかを分析し、今後どうしていくべきかを対談した本。耳がいたそうな話がいっぱいですが、避けては通れんのだろうなぁ・・・
【旅行】駒沢オリンピック公園
 東京都世田谷区および目黒区にある、サッカー場、野球場、体育館などを含む運動公園。その名の通り1964年の東京オリンピック大会の第二会場としてレスリング、バレーボール、サッカー、ホッケーなどで使用され、現在でもさまざまな大会で使用されています(公式hpはこちら)。2009年からは”東京ラーメンショー”の会場にも使われています。


 考えてみると、オリンピックって究極の”街おこし”みたいなもんでしょうか。スポーツ選手(とその団体)から見れば、”スポーツ振興”だし、地元や旅行会社・交通機関から見れば全世界からお客さんが来て”お金を落とし”てってくれるし、会場を作るとなると建築会社や土木会社が儲かるし(*2)。いいことだらけのようなんですが、問題はイベントベースな発想に偏ると、継続的なコスト意識が甘くなんじゃないかな~~って点。某都知事が”コストがかかり過ぎ”な点をさかんに問題視してますが、いったん作っちまった設備を少なくとも数十年は維持しないといけない立場とすれば、言いたくもなるよな~~って気持ちはわかります。まあ、ちゃんと考えてくれてればですけど・・・(*3)

 で、もうちっとコンパクトな地域再生を扱った本書ですが、かなり辛口の話題が。気になったのをいくつか

〔損得勘定ができてない?!〕
 以前、”横手の焼きそば(*4)”を食べに横手市に行ったことがあるンで(美味しゅうございました)ツッコミしにくいんですが、本書ではB級グルメ大会にもダメ出し。なぜなら昔みたくこじんまりやってる時は良かったけど、現在のようにイベント自体が巨大化しちゃうと、売上(1店舗 5~600円の単価で数百食)では、もう儲かる構造にはなっていないんだとか。このイベントで観光客を地元までひっぱってきてお金を落とさせるとこまで持っていかないと、地域PRの持ち出しだけに終わっちゃう。
 本書ではこういった”イベント型”とか”ゆるキャラ”には否定的。道の駅の運営なんかもそうです。本書の著者木下氏と明治大学の飯田準教授の対談

  木下:儲かるように設計もせずに、ひたすら派手なことをやるのは、
     活性化策ではなく飯田さんの言う通り単なる”消費”です。趣味の世界。
     それは結局のところ、その地域の衰退を助長する策になってしまうわけです

      (中略)
  飯田:結局のところ、入ってくるお金と出ていくお金を
     プロジェクト全体で評価するという、民間なら当然の視点がないわけです

別にイベントをやるなと言っとるワケではないんですが、やるならやるでちゃんと損得勘定を考えろと。肝に銘じるべきなんでしょうね

〔地方(議員)には増税のインセンティブがない〕
 行政てのは税金で運用されています。税金の総額を増やすには地域の収入総額を増やすか税率を上げないといけない。はずなんですが、どうもそうはなっていないみたい。たらなきゃ地方交付税交付金をもってくればいいから。本書を読んで一番えぇ!っと思ったのがこの点でしょうか。税率を上げるのって嫌われる政策なので議員はやりたくない。地域収入を増やすために税金を使った施策=投資をするんでしょうが、地方交付税交付金=自分とこのお金と思わにゃ甘くもなりそうなもの。知らなかったんですが、上記の街おこしイベントなんかも100%国の補助金なんてのもあるそうで、企画自体も代理店まかせとか。なんだか丸投げ体質のような・・・

〔次善の策としての自主再建型移転〕
 いきなりですが、アーサー・C・クラークのSFに”都市と星(*5)”ってのがあります。広大な宇宙の版図を維持できなくなった人類が”ダイアスパー”という都市を作ってそこに集まって住むという舞台設定です。なにかというと、これって究極のコンパクトシティなんですな。つまり、分散・拡散された地域を維持できないなら集中させるとこで生き残りをはかろうと。まあ、あたりまえですが、人の少ない所に公共交通機関を残すとか、買い物場所等を置いとこうとかするとコスト的に見合わないところがどうしても出てきちゃうと。であれば、にっちもさっちもいかなくなる前に、地域ブロックごと中心部に計画的に移住させてコミュニティを維持させようというのが”自主再建型移転”です。
 本書でも”嫌われる次善策”として”そんな弱腰でどうするんだ”的な精神論で嫌われる案との指摘がありますが、代替案なしにただ頑張るだけよりは選択肢があるほうがまだマシだろうと。
 あと、これをやるには外からの押し付けではなく住民をまとめるリーダーシップが必要だろうと。以前書きましたが、”七人の侍(*6)”の例で志村喬演じる”島田勘兵衛”が村を守るために橋向うの家を見捨てる判断をして、従わない人には刀を振りかざして言うことを聞かせるというシーンがあります。現代でここまではできないでしょが、プロジェクトを完遂するにはこれぐらいの気合が必要なんでしょうかね。

 まあ、地域再生=経済活性化という訳ではないんでお金の話ばっかししててもしょうがないし、必要なお金は投資すべきなんでしょうけど、お金がなきゃ遅かれ早かれ行き詰るのも確か。本書の結論の中で必要なものの一つとして”リーダーシップを執れる人がいるかどうか”というのを上げていますが、”島田勘兵衛”みたいなリーダーと、安易なポピュリズムに陥らず、住民が協力でしてコトにあたんないと課題の解決にゃなんないんでしょうね。あんまり時間もないことだし・・・

《脚注》
(*1)東京ラーメンショー
 毎年秋に開催されるラーメンイベント。全国のご当地ラーメンを一堂に集めて食することができるというラーメン好きにはたまらんお祭りです。主催者側としては街おこしの狙いもあるようですが。2016年度は10月27日~11月6日まで、前後半のお店入替で36種類が食べられます。
(*2)会場を作るとなると建築会社や土木会社が儲かるし
 1964年の東京オリンピックにより社会インフラの整備やテレビなどの普及による”オリンピック景気”という好景気状態になったのは確か。その後に反動で”証券不況(昭和40年不況)”があったのってあんまし話題になってないけど。今はなき山一證券の破綻危機に対して時の大蔵大臣田中角栄が日銀特融で救済したころです(1965年)
(*3)いったん作っちまった設備を少なくとも数十年は維持~
 作っちまったはいいけど、嵐か福山雅治の全国ツアーでもやんない限り満員御礼にならない施設ってけっこうありそうですなぁ、例えば(以下自主規制)
(*4)横手の焼きそば
 秋田県横手市周辺で販売されている焼きそば。片面焼きの目玉焼き、福神漬けのトッピングが特徴。”B-1グランプリ(B級グルメ大会)”で優勝1回、準優勝1回だそうです。
(*5)都市と星(アーサー・C・クラーク 早川書房)
 遙か未来、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた人類は、誕生・死さえも完全管理する驚異の都市ダイアスパーを建造、安住の地と定めた。住民は都市の外に出ることを極度に恐れていたが、ただひとりアルヴィンだけは、未知の世界への憧れを抱きつづけていた(amazon.comより)。詳しくはこちらをどうぞ
(*6)七人の侍(監督 黒澤明、主演 志村喬、三船敏郎、東宝)
 戦国時代、盗賊と化した野武士に襲われた村はある決断をする。”侍を雇って野武士を退治する”と。そして初老の浪人”島田勘兵衛(志村喬)”、山犬のような男”菊千代(三船敏郎)”ら七人の侍が村を守りるために集まった・・・
 詳しくはこちらをどうぞ

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