心と体

ハードSFっぽいノリが好きか、ゾンビとBLが好きか、お好みによりチョイスしてみてください(屍者の帝国/パンチカード)

 ども、死して屍拾うものなしのおぢさん、たいちろ~です。
 さて、”ハーモニー”に続く伊藤計劃2冊目の了読です。フランケンシュタインモノと言いましょうか、ゾンビがくるりと輪をかいたホ~イのホイ♪とでも言いましょうか。屍がソロソロ歩き回る世界にスチームパンク(*1)をホイップしたスペキュレーションフィクション?!(*2) なんたって、題名がそのモノずばりの”屍者の帝国”ですから。
 ということで、今回ご紹介するのは伊藤計劃の遺作にして円城塔が完成させた異色のSF”屍者の帝国”であります。


写真はたいちろ~さん撮影。
レトロなコンピュータで使われていたパンチカードシステムです。

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【本】屍者の帝国(伊藤計劃、円城塔、河出文庫)
【DVD】屍者の帝国
 (原作 伊藤計劃、円城塔、出演 細谷佳正、菅生隆之、監督 牧原亮太郎、アニプレックス)
 ヴィクター・フランケンシュタインが屍を甦らせることに成功してから100年、屍者は、機械式解析機関とともに社会インフラとなっていた。医学生ワトソンは大英帝国の諜報員となり、フランケンシュタインの残した”ヴィクターの手記”と、彼が最初に復活させた屍者”ザ・ワン(*3)”を追うことになる・・・
 早逝した伊藤計劃が残した草稿を、円城塔が完成させたSF小説、第33回日本SF大賞・特別賞、第44回星雲賞日本長編部門を受賞。
【道具】パンチカード
 厚手の紙に開けた穴の位置や有無から情報を記録するメディア。原理的には試験で使っているマークシートみたいなのです。原作では穴の形や大きさがばらばらとのことですので、記憶ルールは全く異なるもののようです。
 コンピュータの記憶媒体としては現在ではほとんど使われることはありませんが、私が入社した1980年代中ごろではまだ使ってたんですけどねぇ


 さて、”屍者の帝国”です。原作読みました。DVDも観ました。ブログ書こうと思ってます。で、困っています。てか、なんでこんな違う話になっとんねん???
 いや、確かに原作もDVDも面白かったんですよ。原作っていわゆる屍者=ゾンビとかフランケンといったホラー物の系譜というよりハードSFの後継者って感じでしょうか。”ザ・ワン”ことフランケンシュタインの怪物と医学生ワトソンとの魂の在り方の対話なんて、シェリー版の”フランケンシュタイン”を彷彿とさせる哲学的ともいえる内容だし。
 DVD版は、ストーリー的にはかなりわかりやすくなってるし、クライマックスでの解析機関”チャールズ・バベッジ”をめぐる戦いなんてビジュアル的にはかなり良くできてるし。世界のネットワークを統べるスーパーコンピューターっぽい扱いなのに、入出力インタフェースはパイプオルガンにパンチカードシステムつ~ギャップがたまらんし。なんといっても白髭のナイスな老人”ザ・ワン”が沖田艦長の声で語るわライバルキャラはドメル将軍だわと、けっこうそっちの人にも受けそうだし(*4)

 登場人物はほぼ同じ、扱われているガジェットもほぼ同じながら、結果的にはかなり違うテイストの話になってんですな、この作品。言ってみれば”新世紀エヴァンゲリオン”と”碇シンジ育成計画(*5)”の違いみたいな。パロディ云々のレベルではなく語るべき”物語”がぜんぜん違うと。

  全員が絶望を感じることができなくなるのは、至福の一つの実現ではないかね
  そこにはにはもう争いはない。争いを知る機能も喪失されるからだ

 本作のキーワードになるセリフですが、原作では潜水艦ノーチラスの中でザ・ワンがワトソンに”魂のありよう”を語ったもの。これがDVDだとぜんぜん別な人が全然別のシーンで使われているんですね。ザ・ワンやワトソンの行動目的もまったく別物だし、そもそも語るべき内容がまったく別次元。でも、なまじキャラクターなんかがいっしょなんで原作とDVDを続けて観るとけっこう混乱しちゃったりします。

 内容は推理モノのノリもあるんで詳しくは書けませんが、両方とも面白いんですよ。別にどっちが良いとか悪いとかの話じゃないんで、両方お勧めですがあえて言うなら

〔原作〕
 どっちかというとSFファン向きハードSFっぽいノリや、生命(魂)の謎にせまるみたいなオールディズっぽい大上段に振りかぶったSFが好きな人にはよさそう。”ヴィクターの手記”とか”チャールズ・バベッジ”とかそのワード自体がけっこうディープな意味を持つとこがあるんで、SF的な知識がある人ならさらに突っ込めるかも。

〔DVD〕
 SFというより冒険活劇かな。ビジュアルもけっこういけてますが、ゾンビもまたリアルなんで”ゾンビ好き”ならOK。ワトソンとフライデーの人間関係を見ると”BL好き”には美味しいかも。”フランケンシュタインの花嫁”みたいな恋愛モノのノリはありますがデート向きの作品とは言えんだろうなぁ

 どっちを選ぶかはかなり好みがでそうですが、よろしければご一読のほどを

《脚注》
(*1)スチームパンク
 蒸気機関や機械式計算機などのテクノロジーが発展した世界観を持つSFのジャンル。時代的にはイギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝、日本だと明治~大正期あたり。インダストリアルデザインとしてはたいへん面白いんですが、あまり読んでいないジャンルです。すいません。
(*2)スペキュレイティブ・フィクション?!
 さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語(wikipediaより抜粋)
 日本語では思弁小説。略して”SF”。”SF(サイエンスフィクション)”とは違うんだ的なノリもありますが、面白ければどっちでもいいんじゃないかと。
(*3)ザ・ワン
 SFとかホラーを読まない人向けにに補足すると、メアリー・シェリーの小説”フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス”に登場する”フランケンシュタイン”というのは怪物(クリーチャー)を作った人の名前で、怪物そのものに名前はついていないんですね。ちなみに、この怪物は頭悪そうなイメージがありますが、原作では哲学的な会話も交わすとってもインテリジェンスな人。1994年に公開されたフランシス・コッポラ製作総指揮、ロバート・デ・ニーロ主演の”フランケンシュタイン”(ポニーキャニオン)が原作に近いのでこちらもどうぞ。
(*4)白髭のナイスな老人が沖田艦長の声で語るわ~
 ”ザ・ワン”のCVを担当したのはリメイク版の”宇宙戦艦ヤマト2199”で 沖田艦長を担当した菅生隆之。なんとなくこの声で言われると納得しちゃうんだな、これが。DVD版のライバルキャラの声の担当が同じく”宇宙戦艦ヤマト2199”で名将ドメル将軍を担当した”大塚明夫”。対決のシーンは本作の聴きどころです。
(*5)碇シンジ育成計画(原作 カラー、作画 高橋脩、カドカワコミックス・エース)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”を原作とした”学園エヴァ”モノ。登場人物はほぼ同じですがパロディとかスピンオフとかのレベルを超えてまったく別な次元にとんでっちゃってます。
 原作の出版社がこういう二次著作物っぽい本を出すってのは良い時代なんでしょうねぇ

そこまで自殺を悪く扱うことないやんか! みたいな話です(自殺について/火の鳥 鳳凰編/桑)

 ども、適当に生きてるンであんまし自殺しようとか考えたことないおぢさん、たいちろ~です。
 こんな先日”How Google Works(*1)”という本を読んでると、ショーペンハウアーの本からの引用が出てました。調べてみると”自殺について”に載っておるとのこと。あんまし哲学書読んだことないのでたまには読んでみようかな~と思って、読んでみたんですが、これがけっこう面白いんですな。むしろ引用のより他の方が面白かったりして。
 ということで今回ご紹介するのは当初の思惑と違っちゃいましたがショーペンハウアーの”自殺について”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影
遠野”伝承園”の桑畑
です

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【本】自殺についてショウペンハウエル(*2)、岩波文庫)
 表題の”自殺について”をはじめ、”生きんとする意志の肯定と否定に関する教説によせる補遺”など、生きていくこととは?みたいな話を5篇を収録。
【本】火の鳥 鳳凰編(手塚治虫 秋田書店他)
 生まれてすぐ隻眼片腕になった不良坊主の”我王”、彼に利き腕を傷つけられた仏師の”茜丸”、宗教的救済のために大仏建立に尽力する”良弁僧正”、そして自らの権勢拡大のために動く権力者たち。政治と権力者に翻弄される彼らを軸に手塚治虫が生命のドラマを描く名作。絶対オススメの1冊
【花】桑(クワ)
 クワ科クワ属の総称。葉はカイコの餌として使われます。小学校のころカイコの観察とかで葉っぱ採りに行ったことありますが、今でもやってるんでしょうか? 写真の遠野にある”伝承園”ではカイコを育てているので園内に桑畑がありました
 花言葉は”ともに死のう、知恵、彼女の全てが好き”など。


 ショーペンハウアーの考えるってもともと世界が意志をもっていて、人間が意志を持って生きているってのはそれを切り取ったことにおける現象にすぎない、人間が死んでもその外に意志があるけどそれは知ることはできない、ってことみたいです(本書を読んだだけでの感想ですので、間違ってたらごめんなさい)

  生きんとする意志は、全く無になってしまうような現象の中だけに現れてくる
  ところが、その無も現象とともに生きんとする意志の内部にあって
  その基礎の上に立っているのである
  無論このことは明るみには出てこない

   (”現存在の虚無性に関する教説によせる補遺”より)

 本人も引用してますが、これって仏教の輪廻(人は別の人や動物に生まれ変わるけど以前のことは覚えていない)に似てる気がするんですが。
 これを突き詰めると、自殺も含めて死そのものがいけないことなんだろうかと。で批判の対象が自殺を禁止する宗教に向かうわけです

  私の知っている限り、自殺を犯罪と考えているのは、
  一神教の即ちユダヤ教の宗教の信者達だけである
  ところが、旧約聖書にも新約聖書にも、自殺に関する何らかの禁令も、
  否それを決定的に否認するような何らの言葉さえ見出されえないのであるから
  いよいよもってこれは奇異である

   (”自殺について”より)

 寡聞にして聖書に自殺がタブーであることが書いてないのは知りませんでした。余談ですが、このブログではよく花言葉を載せるんですがこんだけ色々な花言葉があるのに”自殺”にあたるのって見つかんないんですな。あえて近いのが”ともに死のう(心中)”の桑ぐらい。”ピュラモスとティスベ”という話がモトネタ。イギリスの作家シェイクスピアの”ロミオとジュリエット”のモチーフだそうです。今の花言葉って西欧社会の慣行がベースらしいんですが、文化的なのか宗教的なのかこの手の言葉ってタブーなんですかねぇ・・

 これが仏教だと”即身仏”って外形的には自殺みたいなのがシステムとして組み込まれているんですがね。”火の鳥 鳳凰編”に出てくる良弁僧正なんてほとんど自殺みたいなこと言ってるし・・ 自分が宗教としてではなく政治の道具として使われただけだったと気付いた絶望から、即身仏の行に入った良弁僧正が我王に語りかけるシーン

  良弁:そして、わしはいまになって目がさめたのじゃ
     わしは、ただ政治に利用された道具だったのだとな・・・
  我王:そんなことはねえです 上人さまはえらいかただ
  良弁:いや我王、わしに残された道は・・・ これしかない

 話は戻って、どうもショーペンハウアーという人は、人の意志というのは人間という形をとる前と後があって、その一瞬を切りだしたのが人生みたいな考えのようです。本書の中でも”輪廻”と”再生”を区別する話がでてきます

  輪廻:霊魂がそっくりそのまま別の肉体の中に移りゆくこと
  再生:個体の解体と再建の謂い。
     ただその意志だけが持続し、新しい存在の形態をとり新しい知性を獲得する

      (”我々の真実の本質は死によって破壊せられえないものであるという
        教説によせて”より)

 ショーペンハウアーは知性は不滅ではないということで輪廻に近い考え方のもようです。なんで、自殺であってもその形が変わるだけなんだから、卑怯だとか、精神錯乱だとか、ましてや犯罪者扱いだとか言われる筋合いはない、むしろ自分自身の体と生命をどうするかは個人の権利だと。誤解のないように言っとくと、ショーペンハウアーは別に自殺がいいとか勧めてるってわけではなくって、不当に貶められるいわれはないってことと言ってるだけみたいです。

 元々キリスト教でも”殉教”っていう宗教的後追い自殺みたいのがありましたが、これをNGにするって見解がでたもんで、ことさら厳しく取り締まる必要があったようです。このへんが文化的宗教的に自殺に寛容な(心中モノやら(*3)哲学的自殺やら(*4))日本人の感覚と違うとこなんでしょうかね?

 偉大な哲学者の重厚な思想をこんなぺらんぺらんなブログでつくせるわけではないんで、ご興味がありましたらぜひ原典のほうに手を出してみてください。


《脚注》
(*1)How Google Works
(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル 日本経済新聞出版社)
 グーグル現会長の”エリック・シュミット”、前プロダクト担当シニア・バイスプレジデント”ジョナサン・ローゼンバーグ”によるGoogleの仕事というより企業文化を紹介した本。サブタイトルは”私たちの働き方とマネジメント”。
 引用されていたのは”世界の苦悩に関する教説によせる補遺”から
  二世代乃至また三世代にもわたって人間の世代を生きてきたような人であれば
   (中略)
  あらゆる種類の手品師の演技を
  それもその演技が二度も三度もひきつづき繰り返されるのを
  見ていた人のような気持ちにさせられることであろう

 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)ショーペンハウアー(Schopenhauer)
 ドイツの哲学者。”意志と表象としての世界”(中公クラシックス)の著者(読んでないけど)。名前の記載は”ショーペンハウアー”(wikipedia、新潮文庫、中公クラシックス)”、”ショウペンハウエル(岩波文庫)”と微妙に違いますが、本文中ではショーペンハウアーで記載します
 ニーチェや、ワーグナー、フロイト、アインシュタインなどに多大な影響を与えた人らしいです。今の若い人ならエヴァンゲリオンに出てきた”ヤマアラシのジレンマ”の寓話のモトネタの人といったほうが受けがいいかも。
(*3)心中モノやら
  未来成仏うたがひなき恋の手本となりにけり
お初と徳兵衛の心中を扱った近松門左衛門”曽根崎心中”より。この作品により心中ブームが起ったため、江戸幕府は厳罰をもって取り締まりにあたります
(*4)哲学的自殺やら 
  萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」
 1903年、日光の華厳滝で自殺した藤村操の”巌頭之感(がんとうのかん)”より。このために華厳滝ってのは今だに自殺の名所として知られることになります。
 心中モノにしろ哲学的自殺にしろ後追っかけのブームになるってことは、何がしか日本人の感性に触れるものがあったんでしょうなぁ


”エースをねらえ!”ってより”ブラックジャック”でしょうか? でもすんごい面白いんだ、これが(さよならドビュッシー/ブラックジャック/月)

 ども、一時はクラシックにはまってた(*1)おぢさん、たいちろ~です。
 会社の人と読書好きな人の呑み会ってのをやってます。まあ、今何を読んでるだの、最近読んだのではこの本が面白かっただのを話題にぐだぐだ酒を呑むという、まあ言ってしまえば”堕落した文芸部”みたいなモンです。
 で、前回に行った時に参加した女性の人から”今、中山七里読んでる”って話がでました。そういや”さよならドビュッシー”とかクラシックがらみで読みたいな~~と思ってたんですがまだ手が出てなかったんで、これを機に読んで見たんですが、面白かったんですな~これが。
 ということで、今回ご紹介するのは”さよならドビュッシー”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。サラリーマンの聖地、新橋から見上げた満月です。
まあ、しがないサラリーマンのおぢさんだって、たまには空を見上げてお月見ぐらいはするもんです、はい。

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【本】さよならドビュッシー(中山七里、宝島社文庫)
 ピアニスト志望の”香月遥”は不慮の火事のため従姉妹の”片桐ルシア”と祖父の”香月玄太郎”を喪い、自身も全身大火傷の大怪我を負う。生き残った彼女はピアノコンクールの優勝にめざし不自由な体ながら師匠であるピアニストの岬洋介とレッスンに励む。しかし周囲では彼女を傷つけようとする細工や、母が殺される事件が発生し・・・
 第8回”このミス大賞(*2)”を受賞した岬洋介シリーズの第一作。
【本】ブラック・ジャック(手塚治虫 秋田書店)
 天才的な技術を持ちながら無免許、高額な手術料を要求する孤高の医師”ブラック・ジャック”を主人公とする手塚治虫の代表作の一つ。この人も少年時代に不発弾の事故で母親は死亡、自身も瀕死の重傷を負いで大手術の末奇跡的に助かったという過去の持ち主です。
【自然】
 香月遥がコンクールで演奏するのがドビュッシーの”月の光”ですが、月をモチーフにした曲って結構あります。そういや、30年前に初めてCDを買ったのがベートーヴェンのピアノソナタ”月光”だったっけ(ピアノ演奏はホロヴィッツ)
 ”Blow Up!”(細野不二彦、ビッグコミックス)に出てきたリー・モーガンの”Desert Moonlight(”月の砂漠”のジャズ版)”なんかも聞いてみたいんですが見つかんなくってねぇ。


 大森望による解説では

  ハンディキャップを背負いながらピアノ・コンクール優勝を目指す少女の音楽青春小説
  (中略)
  物語のパターンとしてはいわゆる”スポ根もの”に属する。
  少女漫画で言えば、山本鈴美香『エースをねらえ!(*3)』~(中略)の系列ですね

ってあります。まあ、香月遥が岡ひろみで、岬洋介が宗方コーチだとするとそんな感じかな。お蝶夫人や藤堂さんはいないけど音羽さんはいるし(*4)。
 でも、これ読んだ時に最初に思い出したのはブラックジャックかな~~ けっこう香月遥のリハビリの話が書いてあるんですが、ブラックジャックの子供のころってこんな感じかな。”アリの足(*5)”で、かなりむちゃをやったリハビリのエピソードが出てきますがそれ思い出しちゃいました

 それに香月遥の指がPTSD(心的外傷後ストレス障害 Posttraumatic stress disorder)で動かなくってのが出てきますが、ブラックジャックでも精神的な理由で指が動かなくなるエピソードがあります(*6)。 まあ、香月遥もブラックジャックも、そして魔法使い(*7)こと岬洋介もこういったいろいろな十字架を背負いながら神技のようなテクニックを身につけるっていいな~と思います。


  闇をふりはらえ 立ち上がって戦え

 香月遥が岬洋介の演奏を聴いての言葉。そう、ブラックジャックも香月遥も岬洋介も戦ってるんですね。でもそれってコンサートで勝ち抜くってより、異質なる人に対する悪意に。

  君の言う通り、世界は悪意に満ちている
  現代は不寛容の時代だ。誰もが自分意外の人間を許そうとしない
  咎人には極刑を、穢れた者、五体満足でないものは陰に隠れよ
  周囲に染まらぬ異分子は抹殺せよ。今の日本はきっとそういう国なんだろう

   (中略)
  ただ、神様は一部の人間に粋な計らいをしてくれた。
  怒りを吐露する文章の代わりに音譜を、非情を嘆く声の代わりにメロディーを与えてくれた。

   (中略)
  音楽という素晴らしい武器を与えてくれた。
  そして今、君もその武器を手にしている

 引用がちょっと長くなりましたが、これは理不尽な悪意にさらされる香月遥に岬洋介が諭した言葉。こういうのが出てくるってとこが単なるスポ根じゃなくってブラックジャクウかなぁ。

 とにかく、すんごく面白い小説です。もっと早く読んどきゃよかった。
 でも、最後のどんでん返しでブラックジャックの第1話もってくるか!!(*8)


《脚注》
(*1)一時はクラシックにはまってた
 本を読みながらかけっぱにするというふざけた聴き方です。クラシックファンの方、すいません。
(*2)このミス大賞
 ”このミステリーがすごい! 大賞”の略。創設メンバーが宝島社ってのはわかるんですが、電機メーカーのNECと光ディスクを受託製造会社のメモリーテックが入ってる自体がミステリー。浅倉卓弥の”四日間の奇蹟”や海堂尊の”チーム・バチスタの栄光”、乾緑郎の”完全なる首長竜の日”(映画版は”リアル?完全なる首長竜の日?”)なんて話題作を出してるんですが、読んでないな~。読んでるのは岡崎琢磨の”珈琲店タレーランの事件簿”ぐらい。昨日3巻買ってきたので次に読みましょう!(いずれも宝島社より発刊)
(*3)エースをねらえ!(山本鈴美香、集英社他)
 テニスの強豪校、県立西高テニス部に入部した岡ひろみが、宗方コーチの指導の元いじめや苦難にめげずに一流テニスプレーヤーに成長するという女性版スポ根漫画。連載は1973~75年ですが、このころの少年少女はこの漫画の影響でテニスを始めたモンです(どうもうちの奥様もそうらしい?!)
(*4)お蝶夫人や藤堂さんはいないけど音羽さんはいるし
 ”お蝶夫人”はひろみの先輩でテニスの実力と美貌を誇る正真正銘のお嬢様。そんな高校生はおらんぞ! と突っ込んじゃいそうなスーパーレディ。藤堂さんは生徒会長にしてテニス部副キャプテンというひろみの憧れの人。私も高校時代は生徒会長をやってましたが、月とスッポンぐらい差がありましたね~~
 ひろみにいろいろいじわるする敵役が音羽さん。ある年代のお嬢様方には”音羽さん”というだけでわかるというメジャーな存在です。ちなみに”音羽”というのはエースをねらえ!が連載されていた”週刊マーガレット”の出版社”集英社”のライバルだった”講談社”の所在地です。
(*5)アリの足
 第54話。小児麻痺(ポリオ)に苦しむ少年が、自分と同じように手足の不自由な子供が歩いて旅をしたというブラックジャックを手術した本間丈太郎医師の本に感動を受けて自分も同じコースをたどる旅をするというお話。(秋田文庫版 第1巻に収録)
(*6)精神的な理由で指が動かなくなるエピソードがあります
 治療中の医師の不用意な発言から指が動かなくなるとか(第201話 ”20年目の暗示”秋田文庫版 第15巻に収録)、子供の頃のトラウマから気胸の手術中に痙攣を起こすとか(第71話”けいれん” 秋田文庫版 第11巻に収録)
(*7)魔法使い
 なんで、香月遥は”魔法使いの弟子”ですが、これってデュカスの”魔法使いの弟子”思い出しますね。ディズニーのアニメ”ファンタジア”でミッキーマウスがほうきに水汲みさせて大騒ぎになるので有名な曲です。こういったクラシック好き向けの小ネタがちりばめられてるのもお気に入りです。
(*8)ブラックジャックの第1話もってくるか!!
 ”医者はどこだ!”より。内容なネタバレになるので、ぜひオリジナルを読んでください(秋田文庫版 第1巻に収録)

”発育途上の女の子が好きで”と供述されてもねぇ・・・(鉄鼠の檻/青い果実)

 ども、品行方正な単身赴任生活を送るおぢさん、たいちろ~です。
 単身赴任なんぞをしていると風俗関係のお世話になっているんじゃないかとおっしゃる向きもあろうかと思いますが、生まれてこのかたそういうとこにいったことがありません。まあ、その手のお店に興味がないのも確かですが、最大の原因はお金がないからです。B○○K○FFやTSU○A○Aに使っているお金を1ケ月分でも貯めときゃ行けないこともないんでしょうが・・・
 で、テレビのニュースを見てますと最近の風俗で”JKお散歩”というものがあるんだとか(*1)。なんでも女子高生(JK)とお散歩するというお店だそうですが、次から次へとよく考えるものです。正直言って、何が悲しゅ~て女子高生相手にお金を払ってお散歩したいのかよくわかりません。で、このお店の少女とわいせつ行為をして逮捕された容疑者が”発育途上の女の子が好き”と供述してるそうですが、なんだかなぁ。まあ、貧乳がブームになりそうな時代らしいので(*2)、なんでもありなんでしょう。ぶっちゃけ個人がどんな趣味趣向を持ってるかなんて人様がどうこう言う話ではないんでしょうが(*3)、これが坊主となるといかがなものか。ということで、今回ご紹介するのはそんな坊主の登場する話”鉄鼠の檻(てっそのおり)”であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
長野県善光寺近くで見つけた発育途上の姫りんごです。


【本】鉄鼠の檻(京極夏彦、講談社文庫)
 古本屋の主人にして憑物落とし(つきものおとし)を営む”京極堂”こと中禅寺秋彦は知人に頼まれ埋もれていた古書の鑑定のために妻の千鶴子と友人の関口、その妻の雪絵を伴い箱根を訪れる。一方、”姑獲鳥の夏(*4)”の事件で妻と娘を亡くした久遠寺嘉親が居候をしていた旅館で、忽然と坊主の死体が現れると言う事件が発生。またそこには13年前と同じ姿で現れる少女”鈴”の姿が。久遠寺は事件解決のため東京から探偵榎木津礼二郎を呼び寄せる・・・
 ”京極堂”を主人公とする”百鬼夜行シリーズ”の第四作
【花】青い果実
 上の姫りんごのの場合だと青い実が成熟して赤くなるように、発育途上の状態を”青い”と表現する場合がままあります。おぢさん世代だと山口百恵の”青い果実”(*5)なんかを思い出す所でしょうか。
 ”あなたが望むなら、私、何をされてもいいわ、いけない娘だと噂されてもいい♪”とか歌ってますが、今どき、こんな言葉に迷わされて何かをしちゃったらとんでもないことになります


 で、本作はというと、

  憑物落とし、坊主集めてさてと言い

状態。作中でも”箱根山連続僧侶殺害事件”と呼ばれているように被害者、容疑者ともども坊主がてんこ盛り。なぜなら、この事件は存在するはずのない禅寺での事件だから。もちろん”百鬼夜行シリーズ”の特徴である禅宗のウンチク満載です。
 でも、その話は横に置いといて、今回ネタにするのは登場する坊主の性癖。ネタバレになりますが、一言でいうと”ロリコン”に”シスコン”に”ホモ”(こう書くと身も蓋もないなぁ)

 で、今回の事件で殺された一人が”ロリコン”の坊主。”姑獲鳥の夏”の事件の遠因を作り失そうした人です。その人物がこの寺で土牢に閉じこめられているのを久遠寺嘉親が発見し、問い詰めるシーンから。

 ○○坊主:お察しの通り、野拙は若き頃より他人に云えぬ性癖を持っておりました。
      性愛の対象を幼女にしか見いだせぬ-- そういう男でありました。
      それは悪いことだと、若いうちはそう思っていた。
      しかしそれは本当に悪いことなのだろうかという疑問も同時に湧いた。
        (中略)
 ○○坊主:その時は悪いことだなどと思わないのです。お解かりいただけるとは
      思わないが、本当に思わないのです。道徳も倫理も知性もない訳ではない
      欲情だけがある訳でもない
        (中略)
 ○○坊主:子供が限りなく清らかなものに見える
        (中略)
      そして自分が最悪の冒涜者であることを思い知るのです。
      汚い、けがらわしい汚物のように見える
      罪悪感と云うか、嫌悪感と云うか---
        (中略)
 ○○坊主:鬼--いや、怖かったのです。同じでした。昔と同じでした。
      道徳も倫理も知性もちゃんと働いている。しかし止められぬ。
      それが違う娘だと、理屈では解かっている。
      でも、止まらぬ。止まらぬ---
 久遠寺 :修行なんか役にたっていないではないか。十年何をしておった!
      おのれ、儂はいい。娘も死んだ。しかし、あの鈴さんは--
 ○○坊主:解かっております
 久遠寺 :何が解かっとるか!
 ○○坊主:解かっております。己がどれ程浅ましき畜生道に堕ちておるかは
      善っく承知しております。
      野拙は三度鈴を辱め、止める托雄和尚を殴りここに入れられた。
      その時にはもう、凡ては終わった
 久遠寺 :終わった?
 ○○坊主:そして私は半ばのぞんで壊れたのです。佯狂ではない。
      本当に狂うた。意思の力で狂うたのです。

 引用が長くなりましたが、別にロリコンの擁護をしたいわけではないわけで。およそ修行の厳しいであろう禅寺で10年修行をしてもぬぐい去りえない煩悩のなんと恐ろしいことか
 これに対する探偵榎木津の容赦のないツッコミ

 榎木津 :早い話あんたは幼女強姦魔と云われたくないだけだろうが
      いい加減に認めろよ、幼女強姦魔なんだから
      世間には同性愛者も倒錯者もいっぱいいるんだ。
      あんただけ苦悩を背負っている訳じゃないぞ幼女強姦魔!
        (中略)
      何がそんなに気に入らないんだ。
      その気になれば幼女強姦魔だって立派な医者や坊主になれるだろうが!

なれるのかなぁ?と疑問ではありますが、それでもこの坊主が”大悟致しました”と言ってるところを見ると、榎木津の発言は救いになってるんでしょう。

 まあ、今回のJKお散歩事件?!はここまで大げさではないんでしょうが、容疑者のやったことの割には失ったものた大きいんでしょうねぇ。社会的信用とか。なんせ全国ネットのニュースで実名報道だし。まあ、どんな趣味を持つかは自由ですが、実行するには自制も必要ということで。

 ”百鬼夜行シリーズ”はお勧めの名作なんですが4作目の”鉄鼠の檻”までこればっか読んで約1ケ月かかりました。まあ、根性を決めて読んでみてください。

《脚注》
(*1)”JKお散歩”というものがあるんだとか
 17歳の女子高校生から着用していた下着を購入し、わいせつな行為をしたとして東京都青少年健全育成条例違反の疑いで30歳の男が逮捕されたそうです。もっとも、JKお散歩の店で働いていた少女のほうもは、ネットの掲示板で下着を購入する客を募ってたそうなので、どっちもどっちですが。
(*2)貧乳がブームになりそうな時代らしいので
 ”AERA”の広告では”ヒンヌー教”というんだとか、記事は読んでないけど。まあ”貧乳はステータスだ!”という名言もあるので、一定の需要はあるんでしょう、たぶん。
(*3)個人がどんな趣味趣向を持ってるか~
 趣味趣向を持っていることと実行するのは別。18歳未満の未婚者にわいせつ行為をすると青少年保護育成条例によって6ケ月~2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(県により罰則はことなります)。
(*4)姑獲鳥の夏(京極夏彦、講談社文庫)
 戦後間もない昭和二十七年夏、作家の関口巽は古くからの友人”京極堂”こと中禅寺秋彦の家を訪ねる。関口は”二十箇月もの間子供を身籠っていることができると思うか”と京極堂に問う。身籠った女性”久遠寺梗子”、梗子の姉”久遠寺涼子”、その母”久遠寺菊乃”・・・ 憑物筋の家系”久遠寺”にまつわる呪いを京極堂は祓うことができるか?(詳しくはこちらをどうぞ)
(*5)山口百恵の”青い果実”
 1973年にリリースされた山口百恵のセカンドシングル。これを歌っていたのが当時”花の中三トリオ”と呼ばれた年齢ですがら、けっこう物議をかもしたもんです。


ところで、この美少女達はなぜ戦っているのでせう??(ビビッドレッド・オペレーション/魔法少女まどか☆マギカ/戦闘美少女の精神分析/サクラソウ)

 ども、訳の分らんものと戦うこともなくだらだらした日常をすごしているおぢさん、たいちろ~です。
 この前、たまたま深夜のテレビを見てますと”ビビッドレッド・オペレーション”というのがやってました。その時出てたのが”黒騎れい”という子でなんとなく”暁美(あけみ)ほむら”っぽかったので(*1)気になってDVDを見ましたが、これがけっこう面白かったんですね。というか、今までの戦闘系アニメとか特撮の集大成みたいな感じで。色違いの戦隊ってのは言うに及ばず、エヴァンゲリオンの”使途”のような訳の分らんモノが攻めてくるわ、子ども二人が合体して大人キャラになるという”超人バロム・1(*2)”っぽい変身だとか。
 で、ふと思ったんですが、この子たちはいったいなぜ戦っているんだ? というとこ。命がけで戦う以上、それなりの戦う理由がありそうなもんですが、なんとなくあやふやなんですね、これが。
 ということで、今回のお題は”この美少女達はなぜ戦っているのでせう??”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。近所のサクラソウです

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【DVD】ビビッドレッド・オペレーション(監督 高村和宏、アニプレックス)
 世界中にエネルギーを供給する“示現エンジン"。これを破壊しようとする謎の敵”アローン”が出現した。“示現エンジン"を発明した一色博士の孫娘、中学2年生の”あかね”は祖父から託された”パレットスーツ”でアローンと戦い始める
【DVD】魔法少女まどか☆マギカ(監督     新房昭之、シャフト)
 中学2年生の少女”鹿目(かなめ)まどか”は謎の生き物”キュゥべえ”から望みをひとつ叶えるかわりに魔法少女となって魔女と戦うという”契約”をして欲しいと頼まれる。一方、転校生の”暁美ほむら”からはキュゥべえと契約してはいけないと忠告される。次々と現れる魔女と戦う魔法少女たち。次第に明かされる魔法少女の秘密とキュゥべえの真の目的とは・・・
【本】戦闘美少女の精神分析(斎藤環 ちくま文庫)
 戦う美少女たちと、それを愛好する”おたく”を扱った研究書。書名はおたくっぽいですが作者が精神科医だけあって、かなりまじめな本です。アウトサイダー・アーティストの画家ヘンリー・ダーガーの紹介に一章をさくなどなかりマニアックな内容です。
【花】サクラソウ
 サクラソウ科サクラソウ属の多年草。西洋サクラソウがプリムラ。
 花言葉は”青春のはじまりと悲しみ、早熟と非哀、運命を拓く”ですが、ドイツではサクラソウが”お城の門を開く鍵”というお話もあるようです。


 ”戦闘美少女の精神分析”によると戦闘美少女ってのは13の系統に分類できるんだそうです(*3)。で、戦う理由というとけっこうばらばら。まあ、あんましとりとめがないのもなんなので、推理小説よろしく”Who,How,Why”でまとめてみました(*4)。

〔Who=立場〕
 王族である”風の谷のナウシカ”のナウシカや前世が月の王女だった”美少女戦士セーラームーン”の月野うさぎ、将軍の娘であるがために近衛隊長をやっている”ベルサイユのばら”のオスカルがとか、ようするに立場として戦いの矢面に立つってケースがこれ。

〔How=能力〕
 ”エヴァンゲリオン”の綾波レイのように戦うためのキーデバイスがこの人(あるいは限定的な少数の人)にしか使えないとか、高い能力を見出された”エースをねらえ!”の岡ひろみ、そのオマージュの”トップをねらえ”のタカヤ・ノリコなんかがこれ。

〔Why=動機〕
 正義や人々を守るためという漠然としたものから、生き伸びるためには敵を倒さなければならないキューティハニーや”サイボーグ009”のフランソワーズみたく切羽詰まったものまでさまざま。

 ”ビビッドレッド・オペレーション”を見ていて”なぜ戦うか”という点で理由が希薄であると感じるかというと、この3点が明確に提示されてないような気がするから。
 ”Who”では示現エンジンの発明者の孫娘という立場はあるもののそれが一介の中学2年生が戦う必然性にはならないし、"How”ではパレットスーツのメインキー(鍵型アイテム)はあかねにしか使えないと言ってますが、それ以外の人はあかねと心を通わせられればOKというラフさ。そもそもパレットスーツがたった一人にしか起動できないってのは防衛システムとしては致命的な欠点ではないかと。”Why”では示現エンジンと街を守りたいという動機は分かりますが、パレットスーツが私しか起動できないという制限を外してしまえば”私"が戦う動機としては弱くなっちゃいます。

 ただ、この希薄さってのは日本の戦闘美少女には共通の特徴だそうで、”戦闘美少女の精神分析”によると、日本の戦闘美少女=ファリック・ガールは元々外傷のない空虚な存在で、戦う動機に欠けているんだそうです。ここでいうファリック・ガールとはペニスに同一化した少女で外傷=レイプされることのない存在。ゆえに外傷を根拠として戦うファリック・マザー(*5)に比べて十分な動機に欠けているんだそうです。その象徴的な存在が綾波レイ

  彼女の空虚さは、おそらく戦う少女すべてに共通する空虚さの象徴ではないか。
  存在の無根拠、外傷の欠如、動機の欠如・・・
  彼女はその空虚さゆえに、虚構世界の永遠の住処とすることができる。

 まあ、論としては賛否があるでしょうが、わからんでもない話です。

 ここまで見てて思ったのがもう一つ、美少女が戦闘美少女になるか否かって選択肢があるケースってあんなりないんですね。まあ、そこで”嫌だ!”といったらドラマは始まんないわけですが、これに対するアンチテーゼっぽいのが”魔法少女まどか☆マギカ”。このアニメってのは”魔法少女=戦闘美少女になるか否か”に徹底的にこだわった作品で”Why"=叶えたい望みがあるかどうかがキーで、しかも選択肢が与えられているから、望みの見いだせないまどかが実に最終回になるまで魔法少女にならないという異色のストーリー。それゆえに、ガンダムに匹敵するインパクト(*6)のある作品だと思います。

 まあ、戦闘美少女ってのはアニメで見てる分には面白いですが、実際に自分の娘とかがなるとどうなんでしょうねぇ。”世界の平和の鍵を握る”なんてややこしいことなんかせずに、サクラソウを愛でる美少女あたりで止めといて欲しいモンですが・・・


《脚注》
(*1)”黒騎れい”という子でなんとなく”暁美ほむら”っぽかったので~
 ”黒騎れい”は”ビビッドレッド・オペレーション”に登場する主人公”一色あかね”達とと敵対するするキャラ、”暁美ほむらは”魔法少女まどか☆マギカ”に登場する主人公”鹿目まどか”の願いを叶えるためながら対立するキャラ。
 両名とも黒髪で物静かなクール&ビューティ。すいません、ストライクど真ん中なんです。
(*2)超人バロム・1
 原作が”ゴルゴ13”のさいとう・たかをという漫画&特撮テレビドラマ。子供2人が友情エネルギーで合体して正義のエージェント”超人バロム・1”に変身、悪の化身”ドルゲ”と戦うというもの。
 第5話で一色あかね”ギュンギュギュン♪”って歌ってますがこれは”超人バロム・1”のオープニングで”ぶっとばすんだ ギュンギュギュン”のパロディーかな?
(*3)戦闘美少女ってのは13の系統に
 13の系統と主な作品は下記のとおり。ひとつひとつの細かい説明は本書をお読みください。まあ、本書が出たのが2000年ですので、作品リストはちょっと古いですがまあ、そんなテイストの作品群ってことです。
 紅一点系 :サイボーグ009、宇宙戦艦ヤマト、科学忍者隊ガッチャマン
 魔法少女系:魔法使いサリー、魔法のプリンセス ミンキーモモ
 変身少女系:キューティーハニー、好き!すき!!魔女先生
 チーム系 :キャッツアイ、ダーティペア、サイレントメビウス
 スポ根系 :サインはV!、アタックNo.1,エースをねらえ!
 宝塚系  :リボンの騎士、ベルサイユのばら
 服装倒錯系:ハレンチ学園、セーラー服と機関銃、スケバン刑事、らんま1/2
 ハンター系:ルパン三世、エイリアン、GS三神、攻殻機動隊
 同居系  :うる星やつら、電影少女
 ピグマリオン系:Dr.スランプ、銃夢
 巫女系  :風の谷のナウシカ、もののけ姫、ジャンヌ・ダルク
 異世界系 :幻夢戦記レダ、ふしぎ遊戯
 混合系  :トップをねらえ!、美少女戦士セーラームーン、エヴァンゲリオン
(*4)推理小説よろしく”Who,How,Why”
 推理小説では何を解明するかによって下記の3つに分類されます。
  フーダニット(Whodunit) :誰が犯人なのか
  ハウダニット (Howdunit) :どのように犯罪を成し遂げたのか
  ホワイダニット (Whydunit):なぜ犯行に至ったのか

(*5)ファリック・マザー
 ペニスを持った母親。本書では権威的に振る舞い一種の万能感、完全性を持つ、しかし外傷(たとえばレイプのような)を追っている女性と定義しています。海外の戦う女性はファリック・マザーであり日本のそれとはかなり違うんだそうです。
(*6)ガンダムに匹敵する
 モビルスーツをウエポンシステムとして考えると、予備パーツの存在やメンテナンス、ロジスティックは重要な要素ですがこのような当たり前のことをストーリーの中で当たり前に位置付けたのは実はガンダムが初めて。同様に命がけの戦闘をしたいかどうかというシビアな選択をきわめて真面目に展開した”まどか☆マギカ”が熱狂的なファンを生んだのはよく分かります。

「男の娘」が生きにくい時代もあったんですよ、ちょっと前まで(桐に赤い花が咲く/吾輩は「男の娘」である!/桐)

 ども、どう見ても女装は似合わないおぢさん、たいちろ~です。
 先日、近所の公園に釣鐘状の薄青色の花が咲きました。奥様に尋ねたところ(*1)”桐ではないか”とのこと。

えぇ!、桐の花って赤くないの?

 そう、この年になるまで桐の花は赤いと思ってたんですね。なぜ、このような誤解をしていたかというと、昔読んだん本の題名のせいです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな誤解を与えた本、渡辺淳一の”桐に赤い花が咲く”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所の桐の木(たぶん)です。


【本】桐に赤い花が咲く(渡辺淳一 集英社文庫他)
 新宿のマンションで若い女性が局所が無惨に切り刻まれた死体で発見された。担当の桑島刑事は犯人を恋人の”関屋利夫”と断定しその行方を追うが、ようとして知れなかった。その1年数ケ月後、今度は局所を傷つけられた男の絞殺死体が発見された。犯人と目される若い女性のモンタージュを見た桑島刑事はあることに気づく。”関屋利夫に似ている”。はたして犯人は同一なのか、男なのか女なのか・・・
 恋愛小説の大家、渡辺淳一による異色のミステリー
【本】吾輩は「男の娘」である!(いがらし 奈波 コンペイトウ書房)
 「男の娘(おとこのこ)」とは、女の子のように可愛い2次元の女装少年のこと。
 女装男子”いがらし 奈波”によるコミックエッセイ。扉にご本人の写真が載ってますが、マジきれい。30歳近い男性には見えません。
【花】桐(きり)
 キリ属の落葉広葉樹。
 湿気を通さず、割れや狂いが少ないため、高級箪笥の材料として使われます。成長が早いので女の子が生まれると、桐の木を植えて結婚する時にその桐で嫁入り道具の箪笥を作ったそうです。


 表題の”桐に赤い花が咲く”ってのは、犯人が自分の体の特徴に対する質問に診断したお医者さんが、

  どうしてもといわれても、生まれつきとしかいえません。
  まあ、桐に赤い花が咲いたようなものです。

 と答えたことから。この本を読んだ当時は桐の花がどんなのか知らなかったので”そんなもんか”と思って読み飛ばしてたんですが違ってたんですねぇ。

 ネタバレになるのであんまり詳しく書けませんが、犯人は自分の体のコンプレックスから犯行に至るわけですが、このお医者さんは犯人に対してこんなことを言ってます。

  このごろのように考え方が自由になってくると、
  男とか女とか、必ずしもどちらかでなけれはならないといった考え方は、
  次第に消えてきている。
  今日は男、明日は女というように、どちらでもいい。
  自分は好きなほうになってかまわない。しかもそれを誰も気にしない。
  いまにそんな時代がくるかもしれない。

 桑原刑事はそれが満更、遠い先のことでないような気がすると思ってます。
 この本が出たのは1981年のことですので、ほぼ30年前。そんなに遠い昔とは言えない時代です。

 で、今はどんなんかというと、もう一冊の本”吾輩は「男の娘」である!”です。美人で巨乳のOLの彼女がいて、ちゃんとエッチもしている立派な男性ですが趣味が女装。女の子のファッションを楽しむのが「男の娘」なんだそうですが、いがらし 奈波は元ジャニーズJr.に所属というイケメンなので、女装してもかなりの美形。
 さらに、本来は反対に回るはずの彼女が応援してて、さらに深みに誘っているとこ。まあ、彼女からしてコスプレイヤー(*2)なのでわからんでもないですが・・

 その上すごいのが、いがらし 奈波のオカン。何の前触れもなく女装のコスプレの写メを送られても

  ぶぅわっはっはっ! いいぞー! もっとやれ!

 と応援する始末。
 名前を聞いてひょっとしたらと思ったらおばさん世代。そう、奈波のオカンってのは”キャンディ・キャンディ(*3)”の作者、”いがらしゆみこ”です。さすがに漫画家ってのはまともな神経ではないらしい・・・

 まあ、この本を読んでると、お医者さんや桑原刑事の予想は当たったんだろうって気になりますねぇ。

 でも、”桐に赤い花が咲く”の犯人がこの本を読んだらどう思うんでしょう。
 もし犯人が今の時代に生きてたら自分は犯罪者じゃなくて、ヒーロー(ヒロイン?)になれたかもとか思ったりして・・・

 ”桐に赤い花が咲く”は、トリックとか、犯人探しとかの要素は希薄なのでミステリーとは言い難いかもしれません。むしろ最終章に凝縮された犯人のキャラクター造形を楽しむ本かと。お暇な時にでもどうぞ。

《脚注》
(*1)奥様に尋ねたところ
 奥様は”フラワークラフト作家”というものをやっておりまして、この分野は本職です。その影響で私が花のブログ(いちおう)を書いてるってわけではありませんが。
 ご興味のある方は奥様ブログ「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」をご覧ください。
(*2)コスプレイヤー
 アニメなどのキャラクターの衣装を着るのがコスプレ。これを行う人がコスプレイヤー (cosplayer) です。
 会社の後輩にコスプレイヤーの人がいて、機動戦士ガンダムに登場する”セイラさん”のコスプレ写真を見せてもらいましたが、ジャストミートでした。
(*3)キャンディ・キャンディ
 1970年代後半に大ヒットした漫画&アニメ。大学時代に友人(♂)から”妹の本だから”とわざわざ言い訳付きで借りたのを読みました。泣かせるストーリーです。
 ちなみに、アニメ版でキャンディの想い人であるアンソニーの声を演じたのがいがらし 奈波の父”井上和彦”です。

心理学なんか知らないで素直に恋愛を誤解してる奴のほうが幸せだったりして(マナゴコロ/カップヌードルミュージアムの錯覚の部屋)

 ども、”私はブログの王様じゃ~~”のおぢさん、たいちろ~です。
 昨年の東日本大震災があった当日のことですが、会社で緊急で買出しをすることになりました。行動は2人でするように指示したところUさん(独身♂)とKさん(独身♀)が行くことになりました。で、Uさんに

 つり橋狙ってる?(*1)

と聞いたところ、お返事はなし。狙ってたんだな~~、きっと
 ということで、今回ご紹介するのはそんな錯覚を扱った本”マナゴゴロ”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。横浜の”カップヌードルミュージアム”にある錯覚の部屋です。


【本】マナゴコロ(藪野続久 メディアワークス)
 ポップル錯視(*2)な名前を持つ”杏(からもも)マナ”は巨乳の美女にして文学部社会心理学ゼミの院生という心理学マニア。そんな彼女にひとめぼれ(つり橋効果?!)した”桜坂仁”は、彼女にふりまわされっっぱなし。そこに桜坂に恋する占い大好き少女の後輩”岡崎亜夢”が現われて・・・
 ラブコメものなんでしょうが、どっちかというとノリは理系マンガ(*3)かなぁ。
【旅行】カップヌードルミュージアムの錯覚の部屋
 ”カップヌードルミュージアム”はインスタントラーメンの発明者にして日清食品創業者の安藤百福の業績を展示した博物館。上の写真はその中にある錯覚の部屋のもの。
 右端に立ってる女の子が巨大に見えるのは部屋の作りによる錯覚によるもの。お友達といっしょの普通の女の子です。


 さて、ヒロインの杏マナですが、学内では「悪女伝説」として語られてますが、単なる天然の人。ただ、女性らしいウィークポイントがあって実は貧乳。うっかり彼女の胸に触った桜沢君が

  この感じは・・そう・・
  まるで3D画像に触ろうとした時のような実感のなさ・・

といっていますが、これは彼女が愛用している胸にハート型の模様のついた”膨らみの錯視図”というトリック。

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 小さな正方形の配置により膨らんで見えるというもの(画像は”錯視ニュース”より)
 こんな模様のブラとか作ったら売れるんだろうなぁ。貧乳(着衣)⇒巨乳(下着姿)⇒貧乳(中身)の3段逆スライド方式とか。

 で、杏マナが岡崎亜夢の恋愛感情を心理学的に解説してるのがけっこう笑えます。

①ヒューリスティック
 相手の情報が少ない状況の時、単純な見た目だけで即断的に相手への評価を決め付けてしまうこと(例:眼鏡=まじめ)

②ロミオとジュリエット効果
 恋愛は周囲に反対されるほど、自己実現を達成したくなる心理法則(例:あばたもえくぼ)

③誤認の防衛機能(デナイアル・ディフェンス・メカニズム)
 周囲の反対を押し切って好きになった手前、目の前のなさけない姿を認めてしまうと、心理的な矛盾が発生するため、無意識に都合の良い情報を集めて心的なストレスを防ごうとする心理(例:あやまる=平和主義)

④顕著性効果
 異質な存在があると無意識に気をとられる(例:さぼっている=あの人は違う)

⑤単純接触効果
 生理的な好き嫌いに関係なく接触する回数が多いものに本能的に行為を感じてしまう(例:見かけるたびに好きになる)

 まあ、学問的には正しいんでしょうが恋愛もこう言ってしまっては身も蓋もないですねえ。恋愛に燃えてる奴に何言ってもムダだし(ロミオとジュリエット効果)
 心理学とか錯覚とかってのは意思決定をしたり(*4)、騙されたりしないためにも知識として知っていることは良いことです。そういった意味では心理学に興味を持つにはこのマンガは有効なんでしょう。その点ではオススメのマンガ。
 恋愛してる奴へのツッコミにも使えそうだし。

 ただ、心理学なんか知らないで素直に恋愛を誤解してる奴のほうが幸せだったりして・・・

 てなことを、ブログの王様は考えてしまうのであります(これは錯覚じゃなくて、妄想か・・・)

《脚注》
(*1)つり橋狙ってる?
 人間は恐怖や驚きのドキドキ感を恋愛のドキドキと勘違いして、目の前の異性を好きになってしまうことがあるそうです。これを”つり橋効果”というそうです。
 まあ、地震直後でかなり緊張してたしなぁ。
(*2)ポップル錯視
 文字の上の横棒がだんだん下がるような組み合わせだと、斜めに見えるという錯覚。
 実際に書くとこんな感じです

  杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ
  杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ
  杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ杏マナ

(*3)ノリは理系マンガ
 数学、工学、薬学など理系分野が大好きな女性を扱ったマンガ。最近けっこうはやりのようです。
 ”心理学科”は文学部など文系に含まれることが多いですが、認知心理学などになると工学部の分野、経済学に心理学を取り入れた行動経済学なんかは経済学部になるので”心理学”そのものはけっこう学際的な要素が強いようです。
(*4)意思決定をしたり
 ”人間は思っているほど合理的に行動するわけではない”ってのが最近の経済学のトレンド。
 人間を”経済活動において自己利益のみに従って行動する完全に合理的な存在=ホモ・エコノミクス(homo economicus)”を前提とした従来の経済学では説明できない行動を、人間はもっと愚かだという前提から考え直したのが”行動経済学”のアプローチです。

狂気の果ての正気やら、正気の果ての狂気やら(脱走と追跡のサンバ/ブドウ)

 ども、自分は正気だと思い込んでるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、東 浩紀の”クォンタム・ファミリーズ(*1)”を読みました。
 一言でいうと並行世界をあっちこっちに引きずり回されるといったお話ですが、そういえば、あっちこっちの世界を逃げ回るといった話を昔に読んだよな~ということで、今回ご紹介するのSFの古典的名作、筒井康隆の”脱走と追跡のサンバ”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。福島で見かけた夏の”ブドウ”です。


【本】脱走と追跡のサンバ(筒井 康隆 新潮社)
 どんなことがあっても脱走してやる。このいやらしい世界から逃げ出してやる。こんなところに閉じこめられてたまるものか。汚物の墓場の下水管を通り抜けもとの世界からこっちの世界へ入り込んでしまったおれは…。情報による呪縛、時間による束縛、空間による圧迫にあえぐ現代をパロディ化し、境界のゆらぎはじめた現実と虚構の「世界」を疾走する傑作長編。(Amazon.comより)
【花】ブドウ(葡萄)
 ブドウ酒(ワイン)や干しぶどう、生食に利用されるブドウですが、ブドウ酒の起源は古く紀元前6000年頃とのこと(*2)。
 花言葉は”酔いと狂気”。たぶんブドウ酒からの連想。


 ”クォンタム・ファミリーズ”はその根本に”青い鳥症候群(*3)”がありそうですが、”脱走と追跡のサンバ”はそんなのはな~なんもなし。
 情報と時間と空間がぐじょぐじょにねじれ、渦巻き、混じり、逆流し、奔流し、流離し、混乱し、錯乱し(以下延々)・・・ といったお話。
 あらすじといえば、いつのまにか以前いた世界から元の世界に脱走する”おれ”、それを追跡するみどり色の背広の”追跡者”。逃げるおれに尾行する男が追いつ追われつ、立場を入れ替えつつ、先回りしつつ、多重化しつつ、重ねあわせつつ(以下延々2)・・・ それにこの世界に引きずり込んだ”正子”が恋人になり、人質になり、殺される人になり、合体する人になり、精神世界の主になり(以下延々3)・・・
 一昨年以来、200ケ以上のブログネタを書きました、これほどあらすじの書きにくい話はなかったです。
 でも、面白いんですなあ、これが

 なぜ、こんな状況になったのかは一切説明なし。脱走する目的もなければ、手段の正当性もな~んもなし。前出の”クォンタム・ファミリーズ”が並行世界の移動を一所懸命理屈付けして、その目的を明らかにしようとしてかえって中途半端の印象になったのに対し、こちらはそんな賢しさをすっとばして、あるのは正気と狂気の狭間だけ
 でもこっちのほうがSFマインドを感じてしまうのはなぜでしょう???

 酒に酔った”狂気”なんていう生易しいものではなく、脅迫神経症的、パラノイア的、自我崩壊的、神経脱毛症的(以下延々4)・・・
 まあ、ようはワケのわからない”狂気”であります。

 とにかく、読んでみないと判らないという類の本。角川文庫では”リバイバルコレクション エンタテインメントベスト”で出版されていましたが、ジャンル的には不条理SF    (*4)。筒井康隆が狂気の天才であることを改めて認識させられた本であります。

《脚注》
(*1)クォンタム・ファミリーズ(東 浩紀 新潮社)
 量子コンピュータが実用化された高度情報化社会。それは、コンピューターからの情報が信用できない、並行世界と行き来することのできる社会でもあった。
 壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。
(*2)紀元前6000年頃とのこと
 Wikipediaによると、ヨーロッパでは中石器時代とのこと。ということは、人類ってのはその頃から酔っ払っていたんでしょうなぁ。
(*3)青い鳥症候群
 今の自分は本当の自分じゃないので、本当の自分や幸せを求めてあちこちをさまよう人のこと。SFになるとifモノになりますが、あんましハッピーエンドってのがないです。
(*4)不条理SF
 昔は、筒井康隆の一連の作品や、赤塚不二夫のギャグマンガ、吾妻ひでおの”不条理日記(*5)”なんてのがありましたが、最近はあんまりこの手のものは見ないですねぇ。私が知らないだけかもしれませんが。ある意味、1970年代という時代の空気を反映したジャンルだったのかもしれません。
 この分野につっこむと、日常生活も破綻する危険がありそうです。
(*5)不条理日記(吾妻ひでお 早川文庫)
 吾妻ひでおによるSFや漫画をモトネタにしたギャグマンガ。相当なSFマニアでもモトネタが判らないと言うディープな作品でもあります。1979年に星雲賞コミック部門を受賞。”アズマニア2”に収録されているので、現在も入手可能です。
 吾妻ひでおは自殺未遂やアル中のはてに失踪、その経験を書いた”失踪日記”で再ブレークしました。

こんなに情けなくて卑怯な僕を、広い心で許したりしないでくれよ(パズルの軌跡/笹)

 ども、なんも考えずにぼ~っと生きてるおぢさん、たいちろ~です。
 とはいえ、何にも悩みがないわけではなくて、例えばお金がないとか、お金がないとか、お金がないとか。それにつけても金の欲しさよ・・・(*1)
 まあ、死んでしまいたいと思うほどの悩みがあるわけはないので、そういった意味ではまずまず幸せな人生なんでしょうなあ。
 死んでしまわないまでも、人生を上書きしたいと思う人はいらっしゃるようで(*2)、それをハイテクノロジーで実現しましょうというのが、今回ご紹介するSF”パズルの軌跡”であります。


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 左の写真はたいちろ~さんの撮影。近所の笹です


【本】パズルの軌跡(機本 伸司、ハルキ文庫)
 大学のゼミで天才美少女物理学者”穂端沙羅華(ほずみさらか)と共に”宇宙作り”をやろうとした綿さんこと、”綿貫基一(わたぬきもとかず)”。彼の元に届いた依頼は、資産家の子息たちの失踪事件を調査して欲しいというものだった・・・
 小松左京賞受賞の”神様のパズル”の続編。
【花】(ささ)
 イネ科タケ亜科(タケ科)なんですが、タケ亜科にはタケ、ササ、バンブーが属しています。地下茎が横に伸びず大型のがバンブー、竹の子のように鞘がむけて大きくなるのがタケで、剥けなくて小さいのが笹なんだそうです。だから、オトコの人のナニを見て”笹!”とか言わないように。


 ネタバレになりますが、この話のテクノロジーのキモは、加速器による粒子線を照射することで、脳細胞の一部を破壊し、自我を上書きするといったもの。原理的には癌の放射線治療と同じ様なものと言ってますが、やっているのはトレパネーション(*3)
 個人の自我をジグソーパズルのピースにたとえると、ひとつだけだと、何の絵かわからなくて形も歪、それを粒子線を使って自我を司る脳細胞変化させて、全体の一部であるという自覚を与えると言うもの。これを”全体我”と呼んでいます。

 仏教で言うところの「自他一如」とか「涅槃」(*4)みたいなものをハイテクノロジーで実現しましょうというのがウリです。現状に対して希望を失っているけど、自殺するほどの覚悟がない(*5)といった中途半端な状態の人には魅力的な提案なんでしょうな。相手がいままでの生活を捨てて失踪を希望する人たちとはいえ、作中では”断った人はいない”と言っているし。
 クールなようですが、このような自我を喪失するような処置を受けるかどうかはその本人に”生きていることの意味”が見出せるかどうか。それは、自分だけでなく自分を取り巻く人たちを含めてのことです。だから、真剣に止める人がいれば思いとどまるべきなんでしょうね。

 で、この処理を受けようとする沙羅華を止めようとする綿さんのセリフ。ほぼ3ページにわたる中から一部を抜粋すると

  それにまた、喧嘩もしよう。
  いつもみたいに、僕のことを馬鹿にしてくれていい。
  僕は怒った顔をすると思うけど、気にしなくていいからさ。
  そうやって喧嘩して、相性も合わなくても、
  ずっと友だちでいようや、なあ沙羅華
  お前の裸を想像して興奮している、駄目な僕を叱っておくれ。
  こんなに情けなくて卑怯な僕を、広い心で許したりしないでくれよ。
  僕に今まで通り、高飛車で意地の悪いお前の言うことを聞きながら、
  陰でブツブツ言わせてくれ。
  お前だけ、悟って立派な世界に行かないでくれよ。
  馬鹿な僕を見捨てて、自分だけ立派にならないでおくれ。
  お願いだから・・・ お願いだから・・・

 はっきり言って、精神的なドMです。
 でも、こういったセリフを言ってもらえるってのは、やはり幸せなんでしょうねぇ。

 このSFのメインテーマは”宇宙とは何か、自分とは何か”。宇宙が変えれないのであれば、自分の中の内宇宙を変えてみるって所です。”神様のパズル”では宇宙を作ってみるってことをやってますが、今回は内宇宙側をいじってみるってお話です。
 そういえば、作品中に沙羅華のお兄さんが、無限大の形に似た笹舟を作るシーンがありますが、これって見ようによっては、メビウスの帯(*6)を連想させます。表と裏が一体となった形って、意外に外宇宙と内宇宙の関係みたいなものかも。

 ハードSFしながらコミカルでちょっとラブコメな面白い作品。前作の”神様のパズル”とあわせてどうぞ。

《脚注》
(*1)それにつけても金の欲しさよ・・・
 江戸時代の狂歌師、大田南畝の
  世の中は いつも月夜に米の飯 さてまた申し金の欲しさよ
 がオリジナルで、どんな上の句にも繋がる下の句の代表例として有名。
 ちなみに、この人の辞世の歌は
  今までは 人のことだと 思ふたに 俺が死ぬとは こいつはたまらん
 死に際にこれぐらい、しゃれっ気のある言葉をはいてみたい物です。
(*2)人生を上書きしたいと思う人は~
 以前、何かのアンケートで”ドラえもんに出して欲しい道具は?”という質問に”過去を消せる消しゴム”と答えた人がいました。なかなかシュールな回答です。
(*3)トレパネーション
 頭皮を切開して頭蓋骨に穴を開ける民間療法の一種で、特に治療を目的とした行為というよりも、神秘主義観におく物(Wikipediaより抜粋)。
 SFファンにはロボトミー手術における前頭葉切断といったほうが通りが良いかも。
(*4)「自他一如」とか、「涅槃」
・自他一如(じたいちによ):自分と他人は一つ如しだということ
・涅槃(ねはん):人間の本能から起こる精神の迷いがなくなった状態。さとり。
 あまり、この分野は詳しくないんですが、だいたいこんな感じのようなものです。
(*5)自殺するほどの覚悟がない
 自殺を宗教的に禁止しているキリスト教およびイスラームなどと、輪廻転生の仏教では感じ方が違うのかもしれませんが。
(*6)メビウスの帯
 帯状の紙の片方を180°ねじってもう片方にくっつけたもの。
 身近なところだと、リサイクルのシンボルマークはこのデザインなんだそうです。

ところで、お雛様って右だっけ左だっけ?(灼眼のシャナS/豆雛)

 ども、性格はオバチャンでもおぢさんの、たいちろ~です。
 今年は過ぎてしまいましたが、娘がおりますので雛人形は飾ります。狭いマンションですので、お内裏様とお雛様だけですが、ところでお雛様って右に飾るんだっけ、左だっけ? 入れ替わっちゃいけないんだっけ?
 ということで、今回ご紹介するのは、男と女が入れ替わるお話”灼眼のシャナS”より”リシャッフル”であります。

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 写真と作成は奥様より。豆雛(まめひな)です。
 奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」より

【DVD】灼眼のシャナS(原作:高橋弥七郎 イラスト:いとうのいぢ 制作:J.C.STAFF)
 高橋弥七郎によるライトノベル”灼眼のシャナ”のアニメ化。
 人間の“存在の力”を喰らう“紅世の徒”と戦うフレイムヘイズ”炎髪灼眼の討ち手 シャナ”と、宝具”零時迷子”を有する坂井 悠二の物語(*1)
 今回のサブタイトル”リシャッフル”は、”リシャッフル”という宝具によって心と身体が入れ替わってしまったシャナと悠二のドタバタコメディの番外編。
【花】豆雛
 小さな雛人形のこと。”豆”には小さいもののたとえに使うので、別に豆でできているわけではありません。

 男の子と女の子が入れ替わる話としては、大林宣彦監督の映画”転校生(*2)”や古くは弓月光の”ボクの初体験(*3)”とか、けっこう面白い作品が多いです。こういった”男と女が入れ替わる”というありえないシチュエーションになった時、どんな行動をとるかがお楽しみ。パニくる奴、冷静な奴、やりたい様にやる奴、まあどんな行動をとってもはたから見てると面白いんですが。

 さて今回のシャナちゃんと悠二くんですが、二人とも戦う人なのでさすがにパニくったりはしませんし、元に戻るためにちゃんと努力はします。でも、こういう状況になると普段はタカビーなシャナと、普段はヘタレな悠二の関係ばびみょ~に変化するのもお約束。

 初めてスカートをはいた経験の悠二くん、

  しかし、スカートってのは涼しくていいんだけど
  いやにパンツがぴったりすぎるんだよなぁ

 はいたことないからわなんないけど、そうなんですか?! 変なところで冷静な悠二くんです。

 気絶した悠二くんの上に覆いかぶさるシャナちゃん、シャナちゃん(自分の身体)の唇をみつめて

  今、悠二の身体は私の思いのままに動く・・・

 といって、キスを迫ります。お母さんの声で思いとどまりますが、自分の身体にキスして嬉しいんでしょうか?(嬉しいんでしょうね、きっと)
 この人は、根っからやりたいことをやる派です。

 ところで、今回のお話で最大の謎はこの”リシャッフル”なる宝具、何のために作られたのでしょうか。”心の入れ替わりは、二人の心の間に壁があると効果が発動しない”という武器としては致命的な欠点があるので、それはなさそう。
 ひょっとして、えっちぃことするため?
 同じく弓月光の”みんなあげちゃう(*4)”の中で主人公の悠乃と六郎が心と身体を入替えてエッチするってネタがありましたが、まさかねぇ・・・
 だとしたら、“紅世の徒”もあなどれません。

 最後に”ところで、お雛様って右だっけ左だっけ?”の答えですが、これは”どちらでもいい”が正解。
 社団法人日本人形協会のホームページによると”京都など古い土地柄で行われる古式(向かって右が男雛)と、昭和以降、昭和天皇のご即位の方式にならった現代式(向かって左が男雛)とがあり、いずれを用いるのも自由です”とのこと。
 上記の写真を含めて、奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」には2枚の写真が載っていますが、豆雛は古式、雛人形は現代式で飾っています。

 話が豆雛なので、”豆知識”でした。

《脚注》
(*1)人間の“存在の力”を喰らう“紅世の徒”~
 こういう独特の世界観を一言で表すのはとっても難しいです。たぶん、作品を見てないとなんのことかでんでんわかなないだろ~な~
  存在の力   :人間が存在するためのエネルギー
  紅世の徒(ぐぜのともがら):この世ではない世界から渡ってきた生命体
  フレイムヘイズ:紅世の徒と戦う異能を得た元人間
  宝具(ほうぐ):ドラえもんの便利道具みたいなものと思ってください
  零時迷子(れいじまいご):午前零時に存在の力を復活させるという
          ”エネルギー保存の法則”を無視した存在
(*2)転校生
 監督:大林宣彦、出演:小林聡美, 尾美としのりによる1982年上映の映画。
 斉藤一夫(尾美としのり)のクラスに転校生がやってきた転校生の斉藤一美(小林聡美)は、石段を転げ落ちたことによって、二人の身体と心は入れ替わってしまう。
 のちに”時をかける少女”、”さびしんぼう”とともに”尾道三部作”と称される作品。見たかったのでTUTAYAに行ったんですが置いてないとこのこと。なぜだ?
(*3)ボクの初体験
 失恋したショックで自殺しかけた英太郎は、怪しげな医学博士に助けられて、博士の亡き幼妻の体に脳を移植されてしまった!?
 マーガレットに連載された少女マンガ。
 弓月光は、今でこそ”甘い生活”とか青年向けのマンガを描いてますが、昔は少女マンガ家だったんですよ~~
(*3)みんなあげちゃう
 予備校生、地下中六郎と、世界的な富豪の女子高校生、間宮悠乃によるちょっとエッチなラブコメディ。元々は少女マンガ誌に掲載予定だったそうです、内容が内容なだけに”ヤングジャンプ”に連載が決まったとのこと。そうだろうな~~

 奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」はこちら

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