アニメ・コミック

オタクの本質と探偵って意外にあってそう、でも文章にするのって難しいんじゃないかい?(体育館の殺人/水族館の殺人/”ちはやふる”のラッピング電車)

 ども、ミステリーはマニアってほどじゃないですし、アニメもヲタクってほどじゃないおぢさん、たいちろ~です。
 さて、アニヲタってどんなイメージをお持ちでしょうか?

  コミュ障、ただしスイッチが入るととっても饒舌
  小太りまたはヤセ型にメガネ
  部屋の中にはマンガとDVDとフィギュアの山。壁にはアニメのポスターが・・
  ファッションセンス皆無。Tシャツは萌え絵のプリント
  背にはナップサック、手にはアニメの紙袋
  自分のジャンルには熱心だけど、それ以外には無関心
  意外と頭が良かったりする(趣味の範囲では超人的な記憶力とか観察力とか)

あくまで個人の感想であり、個人差があります(笑)(*1)

 ステレオタイプな人物像ですいません。まあ、これだけ見るとなかなかに残念な人っぽいですが、これで意外と向いてるかもしれんお仕事が。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなアニヲタが名探偵役を務めるミステリー”体育館の殺人”と”水族館の殺人”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。京阪電車の”ちはやふるのラッピング電車”です
(浜大津駅付近 2013年11月)

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【本】体育館の殺人(青崎有吾、創元推理文庫)
 風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部の部長が刺殺された。現場は実質的に密室状態であり、”仙堂警部”と部下の”袴田優作”現場にいた女子卓球部の部長の犯行だと考える。部長の無罪を証明すべく卓球部員の”袴田柚乃(はかまだゆの)”は部長の嫌疑を晴らすため全科目満点をとった”裏染天馬(うらぞめ・てんま)”に解決を依頼する。しかし彼は百人一首研究会の部室を私物化して住み着くアニメオタクの駄目人間だった・・・
【本】水族館の殺人(青崎有吾、創元推理文庫)
 風ヶ丘高校新聞部の向坂香織達は夏休みのを利用して丸美水族館の取材に出掛ける。取材中に巨大水槽の前でサメが飼育員と思われる男性に食らいついているシーンに遭遇。容疑者である11人にはそれぞれアリバイがあった。困り果てた仙堂警部は”体育館の殺人”を解決に導いた”裏染天馬”に事件の解決を依頼するが・・・
【乗り物】”ちはやふる”のラッピング電車
 裏染天馬が住み着いている”百人一首研究会”ということでチョイスしてみました(本書には出てきません、すいません)。百人一首って人気なさそうなんで部室を不法占拠できたっぽいですが”ちはやふる”(*2)がブレイクした今ではどうなんでしょうね? 
 聖地巡礼のおかげでしょうか、電車とアニメ/マンガって意外と相性がよいのか、最近この手のラッピング電車増えましたよね~~

 さて、探偵役の”裏染天馬”ですが、部室に住み着いて漫画やDVDをしこたまため込み、授業には真面目に出ないという引きこもりアニメオタクの駄目人間。基本的にはめんどくさがりで、やる気なし。でも頭脳は優秀で、自分の推理には饒舌やる気をだせば凄い人。

  ちょっと興味が出たんだよ。俺は興味のあることには全力で取り組む

 こういうのって、名探偵向きなんじゃないかな。事件をえり好みするとか、ムラっ気があるのって、名探偵の魅力の一つだし・・・
 推理方法は、”細かいことに異常にこだわる”。普通ならスルーしそうな枝葉末節、ちょっとした矛盾に徹底的にツッコ入れるスタイル。”刑事コロンボ(*3)”に似てるかな~ って思っちゃいました。

 ことほどさように、オタクの本質と探偵って意外にあってそうなんですが、問題が一つ。”オタク”のディープさ文章で表現するってけっこう難しそうなんですな。これがマンガやアニメみたいなビジュアルだと、コレクションの山だとか萌え絵だとか、ださいファッションセンスだとかわかりやすそうなんですが、これを文字にしちゃうとなんだか薄っぺらな感じになりそう。だからオタク的なアイコンって、しかもあまりパンピーが知らなさそうな作品が元ネタになってるとかが必要になるんじゃないかと。さらにこれがどのあたりの時代の作品かなんて絡んでくるとさらに読む側にとって難しくなんじゃないかと

 本作品での裏染天馬の発言から

  ・ユノね。二〇一号室の住人かヤンデレヒロインみたいな名前だな
  ・一刻も早く今週の『絶望先生』を読んであびるちゃんの包帯属性を愛でてから~
  ・逃げちゃダメだ、か。確かにこりゃ、名ゼリフだな
  ・ハカイダーかよ。色は何色だよ。黒か、銀か
  ・おま・・・ お前、馬鹿野郎! ダンクーガをよくも! 買ったばかりなのに!
  ・おかげでこの部屋、灼熱地獄だよ・・・ 火の二日間だよ、畜生・・・
  ・テレ朝でスマプリを見なきゃいかんからな

これ以外にもいっぱい出てくんですけど、半分もわかんなかったかな~~ しかたがないのでググりましたが(この辺も度し難いと自覚はあんですけどねぇ)
 ”体育館の殺人”は2012年、”水族館の殺人”は2013年の出版なので当時ならまだわかりやすいネタも、読書層が入れ替わりの早い中高生世代だったら5年もたてばわかんないネタもけっこうあったんじゃないかと・・・
 アニメや漫画、ドラマネタなんて劣化が早そうなんで、この手でキャラ設定するのって作家的には結構リスキーなんじゃなかなと思いつつ。

 ”体育館の殺人”ミステリーの新人文学賞である”鮎川哲也賞”を2012年に受賞。”本格モノ”ミステリーとしても高い評価を受けています。実際、面白かったし!
 でもよくオタク探偵で受賞したよな~~ 審査員の中でも日本アニメ界のレジェンド”辻真先”ならいざしらず(*5)、芦辺拓、北村薫がよくOKだしたよね~~~

 裏染天馬シリーズは現在4冊発刊されているんで、あと2冊。がんばって読みまっしょい!

《脚注》
(*1)”あくまで個人の感想であり、個人差があります”(笑)
 健康食品やダイエットのCM番組に必ず出てくるこのフレーズ。これは効果効能をを明示(あるいは暗示)して”薬事法”や”景品表示法”に抵触する恐れがあるため。
 ツッコミ所満載であっても、あえて笑ってスルーするのが大人のマナーというものです、はい
(*2)ちはやふる(末次由紀、BE LOVE KC)
 競技かるたに没頭する少女の青春を描いた漫画。2007年12月から連載中で、2011年にアニメ化、2016年に広瀬すず主演で映画化。すいません、見てません。
(*3)刑事コロンボ
 ロサンゼルス市警察殺人課の刑事”コロンボ”を主人公としたサスペンス・テレビ映画。主演はピーターフォーク風采の上がらないユーモラスなおっさんのコロンボが完全犯罪をたくらむ一流の犯人をじわじわ追い詰めていくストーリーが圧巻。
 倒叙物ミステリーの傑作です。お勧めです。
(*4)ユノね。二〇一号室の住人か~
 二〇一号室の住人:”ひだまりスケッチ”に登場する女子高校生”ゆの”
 ヤンデレヒロイン:”未来日記”に登場する”我妻由乃”。実はストーカー。
 あびるちゃん:”さよなら絶望先生”に登場する包帯まみれの”小節あびる”
 逃げちゃダメだ:”新世紀エヴァンゲリオン”の主人公”碇シンジ”のセリフ
 ハカイダー:”人造人間キカイダー”シリーズに登場する悪役ロボット
 ダンクーガ:”超獣機神ダンクーガ”に登場する合体/巨大ロボット
 火の二日間:”風の谷のナウシカ”で人類を滅亡の淵に追い込んだ”火の七日間”
 スマプリ:”スマイルプリキュア!”の略
多分、モトネタはこの辺りではないかと。私も全部見たわけじゃないですし、正解が書いてあるわけでもないので・・・
(*5)日本アニメ界のレジェンド”辻真先”ならいざしらず
 なんせ、”鉄腕アトム”の脚本を執筆してたという筋金入りの人。wikipediaに作品一覧が載ってますが、SF、ロボット、特撮、伝奇、ギャグ、スポコン、魔女っ子、少女モノなどなど。ジュブナイルやミステリーも多数。改めて凄い人だと感心しました

旅に終わりはない、Oh! Our trip would never end(深夜特急6/横浜港大さん橋 国際客船ターミナル)

 ども、最近旅といったら温泉かな~ななおぢさん、たいちろ~です。
 今の日本で”帰るべき場所”のない人ってのは少数派でしょうか。確かに”家を失くした人”ってのはいますが、それは”住所不定”というロマンもなんもない言い方で、”旅をしているのとはちょっと意味合いが違うかも。
 つまり、ほとんどの人にとって”旅”とは終りのあるものです
 ということで、今回ご紹介するのは1年を超えた貧乏旅行の終わり”深夜特急”の最終巻であります

写真はたいちろ~さんの撮影。横浜港大さん橋ビルです

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【本】深夜特急 第6巻(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。最終巻の第6巻では沢木ははたしてロンドンに到着して日本に到着の電報は打てたのか?
【旅行】横浜港大さん橋 国際客船ターミナル
 横浜港にある外航客船に対応する客船ターミナル。1964年に東京オリンピック開催に合わせて、外航客船に対応した客船ターミナルの新設など大改造、2002FIFAワールドカップサッカー大会に合わせて現在の”横浜港大さん橋国際客船ターミナル”をオープンしたとのこと(横浜市hpより抜粋)。

 ”深夜特急”は全6巻からなりますが、最終巻ではいよいよヨーロッパの中心へ。第五巻トルコあたりからずいぶん雰囲気も変わってきた印象。それはアジア大陸の貧しくもどこか熱っぽい後進国から、ヨーロッパの洗練されたクールな先進国へ来たこともあるかもしれませんが、大きくは”旅の終わり”に近づいてきたからでしょうか。

 沢木の旅というのはかなりいいかげんで、ゴールがロンドンと決まっている以外はフリーダム。ひとところにかなり滞在してたかと思うと、有名な観光地であってもおもいっきりすっとばしたり。でも、あまり”帰る”という選択肢はなかったような。それが、ゴールに近づくにつれて、帰ることを意識し始めたのかも。リスボンの港で見つけた英字新聞で見つけたケープタウン回りで横浜に帰る船の記事に心動いた様子。もし、ここでこの船に乗っていたら、横浜大さん橋に戻ってきたんでしょうか?
 でも、結局乗らずに前に進むことに

  確かにリスボンかわ船に乗って帰ることはできる
  リスボンでもロンドンでも大して変わらない。
  しかし、やはり、同じではないのだ。
  それに、私はこのリスボンが最後の地になることに納得していない
  ここではないのだ

 旅の終わりというか”終わる”ことに対する達成感と同時に寂寥感みたいなのがあるんでしょうかね。イランのヒッピーバスに乗っていた若者が長い旅から故郷に帰るバスを指さして別れ際に投げかけてきた言葉

  From Youth to Death!(青春発墓場行)

を書いていいるのって、こんなむちゃな旅は若いからこそできるからとか、旅が終わり日常という大人の世界へ戻ることへの認めがたいなにかがあるのかとか、いろいろ考えちゃいます。

 なんだかんだでロンドンにたどりついた沢木ですが、こんな感想を

  日本に帰ることはできる。だが帰ることに現実感がない
  喜びも湧いてこなければ寂しさがあるわけでもない
  妙に無感動なのだ

 きっとベクトルが反対の両方の感情が引っ張り合って無感動になるのかな~
それとも第三の感情があったなのかな~とか・・・
こんな気持ちの沢木がとった行動はなんだっかのか?
 そこは本書でお楽しみください

 本書を読み終わって、ふと思い出したのがこの曲

  旅に終わりはない
  Oh! Our trip would never end
  友と旅立とう
  The trip with all my friends
  There’s no end

   ”飛翔 NEVER END”(作詞 藤原月彦、作曲/歌 西松一博)

 1983年に公開された”クラッシャージョウ”(*1)という映画のエンディングテーマ。もう35年近く前なんですが、この本の雰囲気に合ってるのかふと聞きたくなっちゃって・・・あ
 (曲はこちらからどうぞ)

 本書は日常に飽き足らず旅に出ようかなと思ってる若者にはお勧めの本。1974年ごろの旅行なので現在とはずいぶん事情は違うでしょうし、ここまでダイナミックな旅がいいとは言いませんが、”旅”が一つの成長の糧、あるいは成長儀礼になるんじゃないかと思える本です。

《脚注》
(*1)”クラッシャージョウ”(原作 高千穂遙、バップ)
 恒星間飛行が可能となった宇宙時代、クラッシャーと呼ばれる惑星改造を始めとする宇宙の何でも屋”クラッシャー”という職業集団が登場した・・
 ジョーをリーダーとする”クラッシャージョウ”チームの活躍を描く日本のスペースオペラ。原作の小説は高千穂遙&イラスト 安彦良和(ハヤカワ文庫JA)。映画版は監督&キャラクターデザイン 安彦良和、メカデザイン 河森正治、原画 板野一郎、CVは主役の竹村拓、佐々木るんに加え、脇を固めるのが小林清志、小原乃梨子、納谷悟朗と結構豪華メンバーでした。

アニメ版と実写版”破裏拳ポリマー”の違いって、肉弾戦に対する美意識の違いかも(破裏拳ポリマー/蟹の甲殻)

 ども、子供のころは”あちょ~~”をやってたおぢさん、たいちろ~です。
 時は1974年、”カンフーブーム”に沸いておりました。もちろん火付け役となったのはブルース・リー主演の”燃えよドラゴン(*1)”であります。日本中の男の子はこぞって”あちょ~~”を叫びながらリーのまねっこを。中には手製のヌンチャク振り回すのもいました。
 そして同じ1974年、タツノコプロによって作成されたアニメが”破裏拳ポリマー(*2)”。カンフー・アクションばりの”破裏拳”を駆使し、高分子重化合物”ポリマー”でできたポリマースーツで”破裏拳ポリマー”に転身するヒーロー。いや~、けっこう当時は入れ込みましたね~~
 ということで、今回ご紹介するのは40数年の時を超え実写化された”破裏拳ポリマー”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。新千歳空港で売ってたカニです

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【DVD】破裏拳ポリマー(主演 溝端淳平、 監督 坂本浩一、KADOKAWA)
 激増の一途をたどり過激化する組織犯罪に対抗するため、警視庁と防衛省は単体での攻撃力、機動力を兼ね備えた特殊装甲スーツ”ポリマースーツ”を開発した。しかし軍隊をも破壊できる力を危険視した警視総監は、開発を中止し完成していたポリマースーツを封印した。
 数年後、ポリマースーツの開発が再開されるがテスト版ポリマースーツのうち3体が盗まれ、犯罪に利用される。彼らに対抗できるのは、封印されしオリジナル版ポリマースーツを使える破裏拳の唯一の継承者”鎧武士(溝端淳平)”だけだった・・・
【動物】蟹の甲殻
 ”ポリマー(重合体 polymer)”というのは複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のこと。接頭語”poly”は”たくさん”を意味します。身近なところではナイロン、ポリエチレンなどの合成樹脂。自然界ではカニ(甲殻類)の外骨格(殻)を形成する”チキン”で、これはN-アセチルグルコサミンの重合体。
 すいません、書いてる本人がよくわかっていません。


 で、観た感想ですが”なんか、思ってたのとちょっと違う?”。まあ、原作派のお約束のセリフなんで気にしていただかなくてもいいんですが、なんか当時と入れ込み度合いが違うな~と。厨房と60歳前のおぢさんが同じ入れ込みってのもなんなんですが、なんでかな~~

 主演の”溝端淳平”は思ってた以上にアクションしてるし、ストーリーは大人が見ても楽しめるし。まあ、アニメ版に比べて”車探偵長”みたいなギャグの要素が減ってるとか、どっか間抜けなとこのあるタツノコアニメの悪役に対して実写版は真面目すぎるとかいろいろ突っ込みどころはあるんですが・・・
 つらつら考えると、どうもこれは

  肉弾戦に対する美意識の違い

じゃないかと。
 アニメ版の”破裏拳ポリマー”がブルース・リーへのオマージュって感じなのに対して、実写版の”破裏拳ポリマー”は洗練された仮面ライダーや戦隊モノ、宇宙刑事シリーズ(*3)ってイメージかな、これが。アニメ版の”破裏拳ポリマー”って造形的には全身タイツみないた素材で”肉体”そのものをイメージさせる作りなのに対し、実写版のはまさに”プロテクター”。柔軟な素材に甲殻っぽいプロテクトパーツの組み合わせは”肉体感覚”が希薄になってるって感じ。確かにアニメ版の造形をそのまま実写化したらおそらくチープなもんになったのはわかりますが・・・(*4)
 逆説的かもしれませんが、肉体の露出度が高く”ポリマースーツ”としては最も脆弱性が高そうな”ポリマーアルテミス”が一番”肉弾戦”ってことではオリジナルの雰囲気に近いのかも。決しておっぱいの谷間見えてるとか、フトモト綺麗とか、二の腕が・・・ とかじゃないですから(笑)

 もうひとつあるとしたら、カンフーブームに沸いていた1974年という時代性でしょうか。当時の”燃えよドラゴン”というフォーマットが”裸の肉体の戦闘力”というのに信仰的ともいえる熱を与えていたんですが、今はそういうのないかな。そんな中で”カンフーアクション”を持ってくると、”肉体が強いのか、ポリマースーツが優秀なのか”がビミョ~な感じに。ましてや”ポリメットに学習機能を付けて、データをAIに記録させて、技を盗む”とか言われるとポリマースーツが優秀って側に寄っちゃいそうだしねぇ

 実写版”破裏拳ポリマー”はアクションは結構切れてるし、SFXも良くできていて作品としては面白いです。おぢさん世代のノスタルジーなんか気にせず、若い人が素直に見りゃ面白いでしょうね。おぢさん世代だって上記のようなひねくれた観方しなけりゃ楽しめると思いますよ

《脚注》
(*1)燃えよドラゴン(監督 ロバート・クローズ、主演 ブルース・リー、ワーナー)
 1973年12月に公開、世界中で大ヒットしてカンフーブームを巻き起こした記念碑的映画。国際情報局から犯罪組織の疑いがあるハンの島の内偵を依頼され、これを単身壊滅させるというスッキリなストーリーなんですが、ここで繰り広げられるカンフーアクションが圧倒的に魅力的超人的な強さとオリエンタルな精神性を兼ね備えたブルース・リーがたまらんかったです
(*2)破裏拳ポリマー
 1974~75年にNETテレビ(現・テレビ朝日)で放映されたアニメ。
 ワシンキョウ市に三流ヘボ探偵”車錠(CV 青野武)”を探偵長とする車探偵事務所があった。メンバーは探偵長に新米助手の”鎧武士(CV 曽我部 和恭)”、探偵事務所があるビルのオーナーで美少女の”南波テル(CV 落合美穂)”、車の飼い犬”男爵(CV 立壁和也)”。車探偵事務所は”鬼河原長官(CV 雨森雅司)”率いる国際警視庁を出し抜いて事件解決を図ろうとする。
 そして鎧武士は実は破裏拳の使い手で、ポリメットを使って6つの形態に転身する”破裏拳ポリマー”としてひそかに犯罪者たちと戦うのだった・・
 今気がついたんですが、南波テルの中の人を除いて全員物故されてるんですね。時代が流れているワケだ・・・
(*3)宇宙刑事シリーズ
 1982年~85年に東映が制作した特撮テレビドラマ”宇宙刑事ギャバン”、”宇宙刑事シャリバン”、”宇宙刑事シャイダー”の総称。赤いコンバットスーツだから”宇宙刑事シャリバン”かな?!
(*4)おそらくチープなもんになったのはわかりますが
 その好例が”バットマン”。私が子供のころ見てたのは1966年のTVシリーズですが、このころのバットマンはほとんど全身タイツ状態。現在映画に登場する腹筋割れてるプロテクターから見ると隔世の感があります
 ”GOISBLOG” でその変遷がわかるのあったのでご参考にしてください

この世界は精巧で美しすぎるんだ。何を撮ったって正解にきまっている(東京シャッターガール/手塚治虫記念館)

 ども、小学校の時には写真部だったおぢさん、たいちろ~です。
 というわけでもないんですが、高校時代に写真部の先輩や同期の知り合いがけっこういます。まあ、写真部というより光画部(*1)といったメンツでしたが・・
 私自身もけっこう写真を撮るほうですが、どっちかつ~とブログのネタ用。このブログ自身が本やDVDにからんで花とか風景とかを掲っけてるんですが、文書が主で写真が従って感じなんで。お世辞にも真面目に写真に向き合ってる人とは言えんでしょうが・・
 芸術だろうがブログのネタだろうが綺麗に撮れるにこしたことはないし、人の心の琴線に触れるものであればなおのこと。でもまあ、どんな写真であっても、写真への人の接し方は人それぞれあってもいいんじゃないかと思いますけど、どうでしょうね。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな写真が好きな高校生を主人公とした漫画”東京シャッターガール”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。宝塚市の”手塚治虫記念館”です
手前は歩さんも撮影していた”火の鳥”のモニュメント

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【本】東京シャッターガール(桐木憲一、日本文芸社)
 写真部に所属する女子高生”夢路歩(ゆめじ・あゆみ)”。趣味は街の風景やそこにクラス人々や動物を撮影する”街撮り”。同じクラブには”撮り鉄”の玉城(たまき)君やデジカメ派の河合美佳子さん、幽霊部員ながら写真誌投稿の常連と自由奔放な春名窓花さんたち。今日もカメラを片手に街を散策しながら写真に残していきます・・・
【旅行】手塚治虫記念館
 兵庫県宝塚市で約20年間を過ごした手塚治虫のマンガやアニメなどを展示したミュージアム。JR宝塚駅から徒歩8分。なぜ”東京シャッターガール”なのに宝塚かというと、写真部の合宿が宝塚で歩さんと玉城君が訪れているからてのと、作者の桐木憲一氏が手塚治虫先生の長女、手塚るみ子さんとつい先日ご結婚されたので。おめでとうございます


 本書は前々から一度読もうと思ってたんですがamazonのキャンペーンやってたのでイッキ読みしました、いや~名作でしたね。ストーリーもそうですが、作風はどっちかというと静的というか写真的というか。マイブームだった”平凡&陳淑芬(*2)”の画集を思い出しちゃいました。

 さて、写真への向き合い方ってそれぞれですが、本書の人たちの例だとこんな感じでしょうか。

〔出会いや想い出、驚きを記録したい人〕
 誰でも目の前に流れる風景や人々に何がしか感じる一瞬ってのはあろうかと。それを記録にとどめたいと思うってのは写真を撮りたい動機の一つではないでしょうか。歩さんってそんな感じの人でしょうかね。綺麗に撮りたいとか、珍しいものを撮りたいっていうより、そこにある心象風景を正直に撮りたいってことかな。気負いがない分だけ写真を撮ることそのものを楽しんでいるんじゃないかと

〔チョロスナの人〕
 おもいっきし肩の力の抜けているのがチョロスナの人。”チョロスナ”ってのは
宝塚の合宿の時に心斎橋であった撮影研究部の川西君から窓花さんが教わった言葉で”チョロっと撮ったスナップ写真”の事。まあ、カメラはクラブの備品でしかもデコレーションしちゃってる自由な人ですが、写真という点では実はこの人が一番評価が高いんでいかな。写真投稿の常連で、写真甲子園ので優勝するうるま高校の与那原さんから”凄く期待してる”って言われたり。

〔勝負写真の人〕
 チョロスナと対極をなすのが上記のうるま高校の与那原さん。大会に向けて”勝つための写真の撮影”の仕方を先生が指導してくれているんだそうです。常連校の宿命なんでしょうが、技術の向上を勝負の文脈で考えるのってなんだかな~。歩さんは”写真で勝負する”ってことがこの大会で少し分かったといった話をしていますが、歩さんにはあんまし似合わないんでないかと・・・

〔ネットへアップする人〕
 本書は2010年頃からの不定期連載ですから、デジカメやスマホで写真を撮るってのはもう普通だったんじゃないかな? で、写真部はというとさすがに銀塩アナログ派とデジカメ派が半々。この中でも進歩派なのが美佳子さん。バレンタインチョコを撮った写真をネットにさっさと上げるとこなんか、FaceBookやインスタグラムの先駆者(*3)ってとこでしょうか。今はこっちが主流派なのかな

 ”ネットへアップする人”で、ちょっと気になっているのが昨今のインスタグラムを中心とした写真ブーム。2017年度の”ユーキャン新語・流行語大賞”の有力候補に”インスタ映え”が入ってるぐらい盛り上がってます。ただニュースとかで”ここはインスタ映えする若者の人気スポット”とか紹介されるとなんだかな~と思っちゃうのはおぢさんだからですかねぇ。綺麗な写真をみんなに見てもらいたいとか、”いいね”で賛同を得たいという気持ちはOKなんですが、そのために”インスタ映え”を求めて回るのってなんだか写真の楽しみとはちょっと違うんじゃないかな?っと、ちょっと心配。単なるおぢさんのぼやきです、すいません

 思うところ、歩さんのつぶやいた

  時々考えるんだ いい写真ってなんなのかなって

に対する玉城君のお返事

  うーん・・
  答えなんかないんじゃないか?
  俺はこう考えてるよ カメラは「神の目」だってね
  空の色 木々のざわめき 渡り鳥の群れ 街行く人々の表情・・
  どこをどんなに切り取ったって そこには必ず光に映し出された生命の影がある
  アニミズムの精神に近いのかもしれないよ
  神様が七日間で創造したかどうかはわからないけど
  それにしてもこの世界は精巧で美しすぎるんだ
  何を撮ったって正解にきまっている

なかなかの名言だと思います

 本書は予想以上に面白かったです。東京都内の近場が中心の街撮りですんで、近郊の人なら休みの日にカメラでもスマホでも持ってお出かけしようかって気にさせてくれる本
 また、インスタグラムにちょっと疲れた人が休憩して飲む清涼剤にもなるかもです。ご一読の程を

《脚注》
(*1)光画部
 ”究極超人あ~る”(ゆうきまさみ、小学館)の主人公達が所属する高校のクラブ。一般的に言う写真部ですが、個性的なメンバー(+OB)ぞろいのクラブです。
 2017年10月に発売された”アニメと鉄道(旅と鉄道2017年増刊12月号”に飯田線の撮影旅行という本作のOVAが特集されていて、ちょっと驚きました。
(*2)平凡&陳淑芬(ピンファン&チェン・シュウフェン)
 台湾のイラストレーターのご夫婦。一時期はまって画集集めてましたねぇ。今はほとんど絶版ですが2012年出版の”ヒヤシンス”はまだ入手可能なようなので、今度読んでみよう。
(*3)インスタグラムの先駆者
 インスタグラムの登場が2010年10月なのでまさにこの頃。2017年4月には7億人を突破したそうです(公式HPより)

昭和の映画にまつわる今は昔。まあそれが良かったというつもりはありませんが(木根さんの1人でキネマ 4/シネマコンプレックス)

 ども、昭和レトロなビブリオマニアのおぢさん、たいちろ~です。
 本も読みますが、まあわりとDVDも見ます。てか、”DVD”と言ってる時点ですでに時代に遅れてる感あるんでしょうか。まあ、根っこが昭和だからしょうがないんですけどね~~ ”本”が発明されて5,500年、”映画”が発明されて1世紀+四半世紀、テクノロジーの発達は間違いなく趣味の世界に影響を与え続けています
 ということで、今回ご紹介するのはちょっと懐かしい映画ネタにまつわるマンガ”木根さんの1人でキネマ4”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。川崎駅前の”ラ・チッタ・デッラ”です

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【本】木根さんの1人でキネマ 4(アサイ、白泉社)
 木根真知子、独身。趣味 映画鑑賞。実態は映画愛をこじらせちゃってる残念な人。子供の頃から大の映画好きで、三十歳超えても大の映画好き。第四巻は初登場のお母さん(元スケ番)との映画をめぐる母娘バルトが!
【旅行】シネマコンプレックス(cinema complex)
 同一の施設に複数のスクリーンが同居する映画館のこと。ラ○ポートやイ○ンモールみたく商業施設なんかといっしょになってるケースが多いようです。これ書いているのがちょうどハロウィンなんで、これで有名な川崎のにしました。撮影は2012年でちょうど”貞子 3D”のプロジェクションマッピング(*2)やってました。


 本書は映画の中身をあ~じゃこ~じゃしてるんですが、今回はちょっと本筋と離れて古今東西、媒体としての映画の話を

〔映画の収集癖、今は昔〕
 30歳を過ぎても映画に耽溺する娘(真知子さん)VSそんな娘にキレまくる母(千里さん)。部屋を片付けろという母に対して真知子さんの言いきったセリフ

  私、一人暮らし始めてから収集癖なくなったの
  今は純粋な観るマシーン

   (”エクソシスト”より)

実は、最初この意味分かんなかったんです。本書にも出てくるアノ事件(*3)を引くまでもなく、昔は映画やテレビを観る(フロー)以外で映像をストックするにはVHS(これも説明必要かなぁ?)という媒体でとっとくしかを収集するしかなかったんで、”収集癖”うんぬんはわかるんですが。で他の話を読んでわかりました。

  今は有料放送の録画と動画配信サービスがあれば
  BD並みの品質で映画が常に楽しめちゃう

   (”トイ・ストーリー”より)

そうなんですね、別に媒体に頼らなくてもネットで事足りちゃう。録画もハードディスクかな。ネット社会の進展は着々とオタク文化を侵食してんですなぁ

〔VHS 今は昔〕
 子供の頃の真知子さん。子供番組を録画するフリをして実は”エクソシスト”を録画。その時にしかるお母さんの言葉

  しかも3倍じゃなく標準で!
  どうりでテープの減りが早いと思ったわ!!

   (”エクソシスト”より)

若い人にはわからんネタなんだろうな~ VHSって標準モードで120分(長時間160分)、これを3倍モードで録画すると3倍の長さ録画できるのでリーズナブル(その分画質は落ちますが)。真知子さんは”標準モード”で録画してるってことは子供ながらに画質にこだわるってことでしょうね。テープ代は馬鹿にならんけど・・

〔DVD 今は昔〕

 DVDを買ってきた真知子さん、”無駄遣い”と怒るお母さん。その横からのお兄さんの一言。

  俺のPS2返せ!!

   (”トイ・ストーリー”より)

これも若い人にはわからんネタなんだろうな~ ”PS2”はもちろんソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)の伝説のゲームマシン”PlayStation 2”のこと。特筆すべきは39,800円というお値段にもかかわらずDVDの再生ができたこと。wikipediaによるとDVDプレーヤーの値段は標準準的なもので10万円前後、格安モデルでも6万円程度とあるので、これってとってもお得感。てか、PS2のおかげでDVDが一気に普及したと言っても過言ではないかと(*4)。
 VHS→DVD→BDの変遷の話は”トイ・ストーリー”でいろいろやってます。

〔映画館 今は昔〕
 映画館で食べ物のガサ音に怒り心頭の真知子さん。昔の映画館を回想しつつの言葉

  まったく、昭和の映画館を思い出すわ
  昔の・・・ 昔の映画館は自由だった

   (”ロッキー”より)

絵には階段や座り込む人やうしろの通路で立って観てる人達が。キャプションには”途中入場可、立ち見 席は早い者勝ち、寝にくるリーマン”などなど
シネマコンプレックスの登場で映画館自体が大きく変わりましたが、もっとも大きく変わったのは映画は”予約して観るモノ”に変わったことでしょうか? 昭和の映画館ってのは”並んで観るモノ”。ネット予約どころかインターネットすら普及していなかった時代です。ですから朝から並んで席がなければ良くて階段座り、悪くて最後列で立ち見少しでも空けば途中でも入場し、一周廻って観はじめたとこまでくれば途中で退場。入れ替えなんか無かったから時間潰しで寝てるのもOK
 そりゃ確かに別料金を出せば”予約席”はありましたが、それは彼女のいるブルジョアの専有物非モテのプロレタリアートは立ち見でも文句も言えるはずもなく。この厳然とした映画館のヒエラルキーこそが後の階級闘争に(以下、自主規制)

 まっ、別に昭和のほうが良かったって言うつもりはないですし。
 真知子さんの後輩の工藤さんが真知子さんに対して”ダイハード”の第1作目を

  80年代の思い出補正かかってんじゃないですか?
   (”ダイ・ハード”より)

と突っ込みいれてますが、決してそんなことないですよ。映画館は並ばなくても椅子に座って観れるし、映画はamazonプライムビデオなら見放題、けっこうレアな探し回らなくてもネットで買えるし。VHSなんて今観たら画質は落ちるだろうし、チャプター機能もなく使い勝手悪そうだし、場所取るし
 DVDですら場所を取ると言われてる我が家ですが”VHSに比べりゃでんでん場所取らない!”と言っても聞いてくんないししなぁ・・・(*5)

 

テクノロジーの発達が映画という娯楽にもいろんなメリットを実現してるみたいです。まあ、そんな時代もあったねと♪ ってな話でした。

 本書は映画マニア向けのあるある本。取り上げられている映画はわりとメジャーなものが中心ですので、あまり映画観ない私でもOKぐらいなのでたぶん大丈夫。
 ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)”本”が発明されて5,500年~
 メソポタミアで用いられた粘土版が世界最古の書物で紀元前3,500年、リュミエール兄弟によりシネマトグラフ(複合映写機)の発明が1895年です。
(*2)プロジェクションマッピング
 建物や物体などをスクリーンに見立てて映像を映し出すのが”プロジェクションマッピング”。実際の建物の形状とうまく合わせた映像はなかなかに迫力あります。ただ貞子はなぁ・・ 最後に宣伝入れるんだもんなぁ・・・
(*3)アノ事件
 1988年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。犯人の宮崎勤が6,000本近いビデオや多数の漫画を所有していたことから”オタク=変質者”といったバッシングの原因になりました。
(*4)DVDが一気に普及したと言っても過言ではないかと
 一般的に工業製品ってのは”量産効果”ってのが効いています。単一シリーズのマシンが発売1年半で累計出荷台数2000万台突破なんていうおよそ通常の電化製品とは桁はずれのシロモノ、波及効果は凄かったんでしょうね。これに引きずられてDVDプレーヤーの値段もずいぶん下がったような気がします。
(*5)DVDですら場所を取ると言われてる我が家~
 ”ハードディスクに保存すれば、DVDとっとく必要ないでしょ!”と娘に言われたんですが、ハードって壊れるんですよ、娘さん。バックアップは必須だと思いますが・・

怪物にだって論理は通用します

 ども、最近ミステリー小説読む数が増えてきているおぢさん、たいちろ~です。
 ミステリー界の中には”ノックスの十戒”と呼ばれるお約束が存在します。これは
聖職者にして推理作家でもあった”ロナルド・ノックス”という人が発表した”推理小説を書く際のルール”で、その一つに

  探偵方法に超自然能力を用いてはならない

てのがあります。まあ、超能力で犯人を当てたり、占いで”犯人はお前だ!”やったり、幽霊が出てきて”私を殺したのはこの人です・・ 恨めしや~~”では興ざめというもの。まあ、うまく書けばないわけじゃないですが(*1)正統派ミステリーとは違うかなと
 ただ、これはあくまで普通の人間相手の話で、これが犯人も被害者も、そして探偵も普通の人間じゃなかったら・・・

 ということで、今回ご紹介するのはそんな怪物を専門に扱う探偵チームのお話”アンデッドガール・マーダーファルス”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所のペットショップでみかけた鳥かごです

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【本】アンデッドガール・マーダーファルス(青崎有吾、講談社タイガ)
 齢962歳、不死の美少女”輪堂鴉夜(りんどうあや)”、半人半鬼の”鬼殺し”こと”真打津軽(しんうちつがる)”、薙刀銃をあやつるクールなメイドさん”馳井静句(はせいしずく)”の3人による”怪物専門の探偵”チームの活躍を描く推理小説シリーズ。いや、マジで。
【道具】鳥かご
 文字どおり鳥を飼うかご。たまに生首が入ってたりします・・・

 さて、犯人や被害者が人間ならざる能力の持ち主だったら、”ノックスの十戒”よろしく通常の推理小説は成立しません。なぜならテレポーターに密室は必要ないですし、タイムリーパーにアリバイ工作は無意味です(*2)。とはいっても、万能ではないんでいろいろ制約条件を設定することで推理小説にすることもできはしそう。同じく、無敵の怪物といってもそれはそれでいろいろ制約条件ってのがあります。
 たとえば、怪物の王”吸血鬼”もしかり。強靭な肉体の持ち主で、心臓に杭を打たれても死なないし、腕がちぎれても2日で再生する。ただし、太陽は苦手で銀や聖水は触れないし、銀の杭で貫かれれば死ぬ(本書での設定)。ここんとこがミソで、じゃあこの怪物が殺されてたらその犯行は? ってのが第一章”吸血鬼”のお話。

 人類と共存を図ろうとする”人類親和派”の吸血鬼”ハンナ”が何者かに殺され、夫であるゴダール卿が犯人を捜すために”怪物専門の探偵”である輪堂鴉夜達を雇うってのがあらすじ。ハンナは杭で殺され、聖水をかけられて死んでいるのが発見されるんですが、凶器と思われる銀の杭は屋敷内で発見されます。外部からの犯行が難し状況で、屋敷内の人間の犯行とも思われにくく、銀や聖水を忌み嫌うい吸血鬼の犯罪とも考えにくく・・
 一種の不可能犯罪に近い状況で輪堂鴉夜が下した推理はなんだってのがこのお話の面白い所。怪物でなければ起りえないHowdunit(ハウダニット)つまり、”どのように犯罪を成し遂げたのか”がすごいオチなんですな。なにがすごいって”怪物”の特性あるいは制約条件をクリアしつつ、実に論理的というか
 第二章の”人造人間”で、グリ警部と輪堂鴉夜が密室の中で発見された首なし死体の謎を解明する時の会話

  グリ警部:なるほど、これがあたなの捜査法というわけですか
       怪物を人間の世界に引きずり下ろし、論理に当てはめる
  輪堂鴉夜:別に引きずり下ろしてなんかいませんよ
       怪物にだって論理は通用します

 つまり怪物であっても、人間であっても従うべき論理は同じ。ただ従う前提条件が違っているだけだと。でも、考えようによっちゃこのひねり方って普通の推理小説より書くの難しいんじゃないか??

 で、この犯人を追いつめる輪堂鴉夜ご一行様ですが、この人たちもまたユニーク。バディーもの、いわゆるホームズ+ワトソンみたいなのの頭脳労働と肉体労働の役割分担って意外にまちまちなんですが、まったく肉体労働しかしないってちょっと珍しいかも。アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)の代表作”隅の老人(*3)”だって多少は肉体労働はやってるし、頭脳派探偵のシャーロック・ホームズだってフェンシングやボクシングができるなんていう武道派の面もあります。二人で一人の仮面ライダー探偵”仮面ライダーW(*4)”だって、肉体労働=翔太郎、頭脳労働=フィリップの組み合わせですが、フィリップもまったく肉体労働やってないってことないです。まあ、私の読んだ中でほんとに体を動かさないってのは”リンカーン・ライム(*5)”ぐらいでしょうか
 輪堂鴉夜というとホントに肉体労働をまったくしないという完全”頭脳労働”オンリー。なんたって、現場に行っても歩きもしない。闘うなんてもってのほか。本人曰く

  なにしろ、頭を使うこと以外できない体でしてね

 でもって、肉体労働担当が真打津軽。”鬼殺し”という芸をやっていただけあってバリバリの武道派なんですが、けっこうお調子モノで寒いギャクをかます人。
 真打津軽が”ボケ”、輪堂鴉夜が”ツッコミ”でちょくちょく二人で漫才を。頭脳労働と肉体労働の分業体制ってのもあって、最初は”染之助・染太郎か!(*6)”とつっこんじゃいましたよ

  津軽は肉体労働、鴉夜は頭脳労働、これでギャラは同じなの

とかね。
 少し読み進むと意外や意外、おいしいとこ持ってってるのがクールメイドの馳井静句。寡黙ながら鴉夜の指示で津軽をブルボッコするし、敵への戦闘ではけっこうな大活躍。第四章ではかなかなに艶っぽいシーンも出てきますし。普段は目立たないけどやるときゃやるタイプです。
 この三人見てるとまさにミステリー界の”レツゴー三匹(*7)”ですなぁ。寒いギャグでボケる津軽に、辛辣なツッコの鴉夜、締めるとこは締めるフリの静句とか。なかなか秀逸なキャラ設定です。

 ”アンデッドガール・マーダーファルス”はモンスターとか登場するんでホラーモノっぽいですが、実はけっこう本格モノの推理小説かも。面白い本です。ぜひご一度のほどを。

《脚注》
(*1)うまく書けばないわけじゃないですが
 ”鎌倉ものがたり(西岸良平、双葉社)”には”恐山妖介”という降霊術を使って事件を解決する鎌倉の刑事さんが登場します。ただ、この作品には一色正和というミステリー作家がいて、鎌倉という人間と魔物、妖怪と普通に住んでいる土地柄が舞台になっているから成立するお話。ここまでうまくやってくれるとむしろ感心してしまいます
(*2)テレポーターに密室は必要ないですし~
 ”テレポーター”(空間跳躍者)なら密室だろうがなんだろうが侵入できますし、”タイムリーパー”(時間跳躍者)なら、アリバイ工作なんかしなくても任意の時間に移動できるだろうし。
(*3)隅の老人(バロネス・オルツィ、創元推理文庫)
 女性新聞記者のポリー・バートンが喫茶店の隅にすわる老人に事件の話をすると、その老人が事件を解決するという推理小説。アームチェア・ディテクティブの先駆にして代表的な小説です。
(*4)仮面ライダーW
 左 翔太郎とフィリップの二人がUSBメモリみたいのを使って合体するという平成仮面ライダーシリーズ第11作目の作品。子供向けとは思えないミステリマニアも楽しめる番組です。フィリップを演じたのは今をときめく人気俳優”菅田将暉”。しかし、この人がここまで売れるとは思わなんだな~~~
(*5)リンカーン・ライム
 ”リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)”に登場する科学捜査のスペシャリスト。捜査中の事故により左手の人差し指と首から上だけしか動かないという典型的なアームチェア・ディテクティブ。
(*6)染之助・染太郎か!
 かつてお正月の名物だた漫才コンビ”海老一染之助・染太郎”師匠です。傘の上ので枡を回すのが弟の染之助、横ではやし立てるのが兄の染太郎。上記のギャクの元ネタは
  弟は肉体労働、兄は頭脳労働、これでギャラは同じなの
(*7)レツゴー三匹
 ツッコミ役の正児、ボケ役のじゅん、フリ役の長作による昭和を代表するトリオ漫才。そういえば、最近トリオ漫才のビックネームってあんましみないですな。お笑い番組の1組あたりの時間が短くなってるせいですかねぇ・・

グローバル化する世界で異なる文化や言語と交わることで、アニメもどんどん変わっていくんでしょうね(RWBY/アニメの原画)

 ども、半世紀に及ぶアニメファンのおぢさん、たいちろ~です。
 2017年10月5日、ノーベル文学賞に日本人のカズオ・イシグロ氏が授賞したとのニュースがありました。両親ともに日本人で、本人も5歳まで日本に在住、現在はイギリス国籍の英国人作家という経歴。”日の名残り”、”わたしを離さないで”(ともにハヤカワepi文庫)の作者ですが、すいません読んでません。
 受賞にあたって6日の日経新聞の”春秋”にこんなのが掲載されていました

  授賞は世界に吹き荒れる「排外主義」への静かな反論ともとれる

   (中略)
  グローバル化する世界で異なる文化や言語と交わることで
  より新鮮で感性にあふれた作品世界を築くことができるのである

なるほど、こういう文脈でとらえることもできるんだな~とちょっと驚き。
 ということで、今回ご紹介するのはグローバル化するアニメから、アメリカ人によるジャパニーズテイストの美少女バトルアニメ”RWBY”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
2015年に森アーツセンターギャラリーで開催された”THE ART OF GUNDAM(機動戦士ガンダム展)”の図録にあった”原画”です。

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【本】RWBY(監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース)
 異形の生命体”グリム”と人類の戦士”ハンター”との戦いを描くアメリカ版”プリキュアシリーズ(*1)”?(男性も出てますけど)
 人見知りながら天性的な戦闘センスを持つ”ルビー・ローズ”、タカビーなお嬢様”ワイス・シュニー”、無口でクールな猫耳娘”ブレイク・ベラドンナ”、ルビーの異母姉(姉妹には見えん!)で豪放磊落な”ヤン・シャオロン”といずれ個性的な美少女たち。Volume1は彼女たちの出会い、チームを結成し絆を深めていくお話です。
【道具】アニメの原画
 手描きアニメーの制作の中で動きの要所(動き始め、重要な中間ポイント、動き終わり)を描いた絵。これは、ファーストガンガムで、アムロがランバ・ラルの部隊と白兵戦をしたときのもの。
 これを”中割り”というコマにさらに分割することで動きの演出をします


 実はこのアニメ、”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(*2)”という本の中に出てきて、学校の文化祭みないなのでビブリオバトル部の3人の美少女+1人の男の娘がコスプレするシーンの元ネタになっています。SFオタクの空さん曰く、”日本のアニメと比べると”スピード感が段違い、”これは女子でも萌えますね”、”オタク心をくすぐる要素がてんこ盛りの設定”とベタボメ。メルマガ部の美少女、弐久寿さんにいたっては”これはあたしのためのアニメだ!”とモロハマリ!!

 で、Volume1を観たんですが、面白いんだこれが!!! まだ始まったばかりなんですが、ストーリーも出会いから反発しながらも戦いを通じて友情と勝利をつかむという王道キャラ設定も秀逸。基本的に日本人がヒロインのプリキュアシリーズと違って、他民族国家のアメリカの作品らしく、アングロサクソンからモンゴロイド、はてはけもっ娘まで。ルビーは”赤ずきん”、ワイスは”白雪姫”などそれぞれモチーフがあって、性格の多様性も面白い。それぞれに”センブランス”という特殊能力を持っていて、ルビーは高速移動し、ワイスは魔方陣を作り、ブレイクは分身し、ヤンは受けたダメージを倍返しする(半沢直樹か!)などなど。そんな彼女たちの武器もユニークで、ルビーは持ち運びモードから狙撃銃や大鎌に変形するというスグレモノ、とかとか

 動きもまたすごくて、特に戦闘シーンはすんごくカッコイイ!! 3DCGで作られたアニメなんですが、こういう速い動きやめまぐるしく視点がかわるシーンでは強みを発揮してますな。BISビブリオバトル部の中で、空さんが

  このスピードと密度に慣れてしまうと、
  日本の美少女バトル・アニメは物足りなくなちゃうんじゃないかと
  不安にかられます

とコメントしてますが、まさにその通りですな~~

 ただ、戦闘シーン以外の日常生活のとこって、ちょっと肌合いが悪いというか、”鉄腕アトム(*3)”をリアルタイムで観ていたリミテッドアニメ世代としては、必要以上に動き過ぎるというか・・・ コストを削減するために編み出された”リミテッドアニメ”って、セル画の枚数を減らす=コスト削減のために、コマ数を減らすだけでなく、話をする時はキャラの口だけしか動かさないとか、画面には多くのキャラがいでもそのうち動いているのは1~2名だけとか、動きの演出も”中割り”を工夫して少ない枚数でダイナミックな動きに見えるよう工夫するとか。つまり、昔のアニメって動きが少ないことが前提で、その中でいかに動いているように観せる(感じさせる)かって話なんですね。
 ところが、CG技術の発達とコンピュータ性能の飛躍的向上で動かすこと自体はそんなに難しくなくなっているみたい。だから”RWBY”もすんごくよく動いているんですが、それがおぢさん世代にはちょっちつらいのかも・・ コンピューターゲームもまったくやらないんで余計にそう感じるのかもしれませんが・・ 今の若い人にとっては”RWBY”のほうが自然なのかもしれませんが・・

 とはいえ、作品自体はとっても気にいってます。まだVolume1しか観てませんが、2~4と続くみたいなんで、楽しんで観まっしょい!

《脚注》
(*1)プリキュアシリーズ(東映アニメーション)
 日曜の朝にテレビ朝日系列で放送されている美少女アクションアニメあるいは、美少女版”スーパー戦隊シリーズ”。第一作の”ふたりはプリキュア”が放映されたのが2004年とのことですので、もう干支一回り以上続いてんだな~
(*2)君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)ビブリオバトル部に集う本好きな高校生たちの日常を描く小説。読書のクラブというとまったりしてそうですが、”ビブリオバトル”という自分の読んだ本を紹介してチャンプ本を決めるというバトル要素を加えることでなかなかドラマチックな展開になってます。4巻ではSFオタクの空さんに告白してつきあうことになった天然美少年の銀くんと、ノンフィクション専門の堅物武人くんの三角関係の行方は? ってお話です。詳しくはこちらをどうぞ
(*3)鉄腕アトム
 手塚治虫原作の日本で最初の本格的な連続TVアニメ。放送は1963~1966年

本には、人生を変える力がある(君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4/”文豪スレイドックス”ポスター)

 ども、こう見えて(どう見えて?)子供の頃にはあんまし本を読まなかったおぢさん、たいちろ~です。
 人間、誰しも人生にインパクトを与えた本ってのが存在するのではないかと。私の場合は”デビルマン(*1)”でしょうかね。小学校の頃ですが、たぶんはじめて自分おこずかいで買ったマンガじゃなかったかと。こっから本の爆買が始まったような・・・
 活字の本だったら”空とぶ家(*2)”かな(”カールじいさんの空飛ぶ家(*3)”じゃなくて!) 10歳のニッキィ、9歳のリンダ、そしてベンおじさんの3人が、新発明のために浮き上がった家に乗ってジャングルまで飛んでいってしまうお話で、子供向けのSFってとこでしょうか。
 ことほどさように本にはまるってのは教科書に載っているような名作とは限らず、SFだってマンガだってかまわないワケですし、今ならライトノベルだってぜんぜんOKではないかと。
 ということで、今回ご紹介するのはビブリオバトル部で自分の人生を変えた本を紹介するお話”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜市立図書館の巡回展示で飾られていた”文豪スレイドックス”のポスターです

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【本】君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。<驚異の翼(ウィング・オブ・ワンダー)>伏木空、<燃える氷(バーニング・アイス)>埋火武人、<天然の狙撃手(ナチュラル・スナイパー)>輿水銀、<双面の話者(ヤヌス・トーカー)>安土聡、<愛の伝道師(ラブ・ミショナリー)>小金井ミーナ、<科学の魔女(ウイッチ・オブ・サイエンス)>菊地明日香など、本好きが集まるクラブ。空さんに告白してつきあうことになった銀くんですが、それを見ていた武人くんは心落ち着かない様子で・・・
【ポスター】”文豪スレイドックス”ポスター
 ”文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、KADOKAWA)は横浜を舞台に”異能”と呼ばれる超能力を駆使する武装探偵社とポートマフィアの抗争を描くバトルアクションコミック
 このポスターは横浜市立図書館と文豪ストレイドッグスのコラボ企画として作成されたもので、キャッチコピーが

  本には、人生を変える力がある

なかなか粋なことするじゃん、横浜市立図書館!
ちなみに、左が太宰治、中央が中島敦、右が芥川龍之介です


 さて、今回のお話は空をめぐる武人くんと銀くんとの恋愛バトル。空さんは地味キャラながら、SFに喰いつくと話の止まらない超弩級のSFオタク武人くんは祖父の残したお宝SF本を持ちながらノンフィクションしか読まないという超堅物銀くん学園のショタコンのお姉さま方から愛でられる美少年。学園行事のコスプレ大会では”RWBY(*4)”のコスプレをして、ミーナさんから”美少女三人がかりで、男の娘一人に勝てんとは”と、悔しがられています。空さんはお宝SF本目当てに足しげく武人くんちに通って、”武人くんにSFを読ませる!”ことになって、いい雰囲気なのかと思いきや、銀くんの空さんへの交際申し込みで、一気に流れが変わって・・・というのが前巻までのお話。

 今回はみごとヒロイン役に大抜擢?の空さんですが、中学校の時にはいじめにあってたという過去を持つ少女。同じく空の恋を応援する(三角関係を面白がってるだけ?)のミーナさんもハーフや母親のことできついことを言われた過去があり。そんな彼女たちの人生を変えた本がビブリオバトルのイベントで紹介されます

〔空さんの紹介した本”ゲームウォーズ(アーネスト・クライン、SB文庫)〕
 人々が”オアシス”と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいる未来。”オアシス”を運営する億万長者”ジェームズ・ハリデー”が死亡し、遺言か公開される。それは”オアシス内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずる”というものだった・・・
 というのが本書のあらすじ。まだ読んでませんけど
 このオアシスを作ったハリデーって人はガチのオタクで、この宝探しを解くにはビデオゲームからRPG、アニメに至るまで80年代のサブカルの膨大な知識が必要だと。で、主人公のウェイドは社会の最下層の人間で希望なんかもてない高校生ですが、この謎に挑戦していくと。空さんの紹介する話に出てくるだけでも、マクロスにエヴァにメカゴジラにと。ウェイドがミッションクリアで手に入れるのが実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”(*5)ってんですから、どんだけやねん!!

 こんだけ読んだらとんでもないバカ話に聞こえますが、でも、空さにとっては”あきらめずに戦い続けたら、きっと未来を手にできる”という本書のメッセージが、死んでしまいたいぐらい苦しい状況から救ってくれたと

  確かにこれは荒唐無稽なSFです。オタクの夢です。願望充足です
  でも、未来への希望が詰まっています
  だから、今も苦しんでいる人たちに、
  この小説を読んで、希望を持ってほしいと願います。
  あきらめず、希望を持ってほしいと。
  生きていればいつか、チャンスが訪れるから・・・

〔ミーナさんの紹介した本”ラノベ部(平坂 読、MF文庫)〕
 とある高校にある軽小説部、ライトノベルを愛好するクラブを舞台にした日常系ライトノベル、らしいです。まだ読んでませんけど
 本書の登場人物にボーイズラブ(BL)大好きな腐女子がいて、これに興味を持ったミーナさんがBLに手を出してずぶずぶどころか”垂直にストーン”とBLにハマリましてっと
 上記のようにミーナさんも人と違うことでつらかった過去があるんですが、BLを読むことで”自由”を知った

  でもね、BLを知って変わりました。自由、というものを知りました
  男が男と愛し合ったってかまわないじゃないか。
  そんなマンガや小説を好きになったってかまわないじゃないか
  それどころか、”私はBLが好きだ”って胸を張って開き直ったってかまわない
  素晴らしい世界じゃないか。
  そうだ、他人と違ったっていいんだって--それ以来、人生が少し楽になりましたね

”いきなりそっちに行きますか?!”感はありますが、いいじゃないですか、それで人生が楽になるなら

 まあ、ライトノベルで人生が変わっちゃったってぜんぜんいいんですが、ただな~、最近のライトノベルって全然軽く(light)ないんだよな~。本書で空さんが銀くんから借りた”俺の妹がこんなに可愛いわけがない(*6)”で12巻。名前の出てきた”ソードアート・オンライン”で24巻、”はたらく魔王さま!”で19巻。本書では名前出てませんが”境界線上のホライゾン”なんて26巻というボリュームもさることながら、1冊がとってもぶ厚い!(*7) ゼクシィかおまいわ!!(*8)
 空さんが”ラノベでしょ? 1日2冊は読める”と言ってるように、まあ読むほうはなんとかなりそうなんですが、お財布にゃきついですね。空さんは銀くんから”俺妹”を借りる約束してますが、おぢさんにゃそんな知り合いいないですし(貸してくれそうな女子高生がお知り合いなら、そっちのが問題っぽいですが・・・

 本書を読んでると、確かに”本には、人生を変える力がある”っての信じる気になりますね。”ビブリオバトル部”は本好きにはたまらない本です。ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)デビルマン(永井豪、講談社)
 テレビアニメもありましたが、1972~3年に少年マガジンに連載された永井豪の原作のほう。主人公の不動明が親友の飛鳥了の頼みを受けてかつて地球を支配した人類”悪魔”と合体することで人類を救うというお話。当初は美しい裸体の悪魔”シレーヌ”やら居候先の美少女”美樹”ちゃんのお風呂シーンにムフフしてたのが途中から壮大な黙示録の世界に。日本SF・コミック史に残る名作です
(*2)空とぶ家(ウォルター・ホッジス、イラスト 久里洋二、学研プラス)
 ニッキィとリンダは発明好きのベンおじさんの家に遊びに行きました。
 今回のベンおじさんの発明は大型気球用のガス。ちょっとだけ試してみるはずが、うっかりガスが止まらなくなって、家が浮き出しちゃった!!!
 すでに絶版ですので、図書館で探してみてください。名作です
(*3)カールじいさんの空飛ぶ家
(製作総指揮 アンドリュー・スタントン、ピクサー、ウォルトディズニースタジオ)
 頑固者のカールじいさんは、亡き妻エリーとの約束を守るために人生最初で最後の冒険に挑む。それは我が家に風船を大量にくくりつけて家ごと南米に旅にでることだった!
 2009年に公開されたアニメなので私の子供の頃ってことはないです、はい。
(*4)RWBY(監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース)
 異形の生命体”グリム”と人類の戦士”ハンター”との戦いを描くSFバトルアニメ。てか、アメリカ版”プリキュアシリーズ”?(男性も出てますけど)。本書ではヒロインの4人をビブリオバトル部の女性陣がコルプレしてます。現在、DVDで見てますが、けっこう面白い! これはまた別の話で
(*5)実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”
 1978年に放映された東映の特撮テレビドラマシリーズ。スーパー戦隊シリーズではないものの”ジャッカー電撃隊”の放映後に登場し、等身大ヒーロー=スパイダーマン(マーベル・コミック社公認!)が変形する巨大ロボット”レオパルドン”に乗り込んで戦うという、後のスーパー戦隊モノのフォーマットを確立した記念碑的作品いやマジで
 画像を見たい方はこちらをどうぞ
(*6)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(伏見つかさ、イラスト かんざきひろ、電撃文庫)
 勝ち気でかわいいけど”隠れオタク”とその妹や個性的な女性たちに振り回される兄によるコメディらしいです、まだ読んでないんで。電撃文庫の小説で全12巻、コミカライズが電撃コミックスから全4巻、DVD(アニプレックス)が2期16巻、その他スピンオフ多数となかなかのボリューム。作品にはまるとわりとコンプする方なので、うかうか手を出すととんでもないことに・・・
(*7)名前の出てきた”ソードアート・オンライン”~
・ソードアート・オンライン:川原礫、イラスト abec、電撃文庫
・はたらく魔王さま!:和ヶ原聡司、イラスト 029、電撃文庫
・境界線上のホライゾン:川上稔、 イラスト さとやす、電撃文庫
すいません、3作ともまだ読んでません。
しかしまあ、KADOKAWA/アスキー・メディアワークスの本を宣伝してるんだから東京創元社も太っ腹だな~~
(*8)ゼクシィかおまいわ!!
 リクルートが発行している結婚情報誌。とってもぶ厚い。結婚をないがしろにする彼氏を彼女が”ゼクシィの角”で殴るというネタがありますが、とっても痛そうです・・・

「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、自立とは何者にも依存しないということではない(超ソロ社会/海街diary/ヒトリシズカ)

 ども、夫婦と子供2人、有業者が世帯主1人だけという典型的な標準世帯(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 人が結婚しようがしまいが、いくつで結婚しようが、子供を作ろうが作るまいが、結局それは個人の勝手で人様がどうこう言う話ではないはずです。いかにマクロ的(社会)に少子化がど~したとか、高齢化がこ~したといった議論があっても、ミクロ的(個人)に見ればそんなことは知ったこっちゃないはずなんですが、どうも人ってのは”標準幻想”から自由になるのは難しいのか、そこそこの年齢になってくると”既婚”と”未婚”というカテゴリ分けが出てきちゃいます。言ってるほうは善意でもあるんでしょうが、それだけにタチが悪い面も・・
 ということで、今回ご紹介するのは今や次世代の標準になりつつある独身社会を扱った本”超ソロ社会”と読んで思い出した”海街diary”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。向島百花園のヒトリシズカです

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【本】超ソロ社会(荒川和久、PHP新書)
 サブタイトルは”「独身大国・日本」の衝撃”。
 未婚化、非婚化、離婚率の上昇、配偶者との死別による高齢単身者の増加など、今後ますますソロ社会化する日本を分析した本。
【本】海街diary(吉田秋生、小学館)
 父の死をきっかけに腹違いの姉”香田幸、佳乃、千佳”達とともに生活することになった中学生の”浅野すず”。鎌倉を舞台に繰り広げられる彼女と取り巻く人々との恋と日常を描いた青春グルアフィティ。
【花】ヒトリシズカ(一人静)
 センリョウ科 チャラン属の多年草。写真を撮ったのが秋でしたので花は咲いてませんが春になると白いブラシ上の花が咲きます。
 ”独りで静かに暮らす”ってイメージで今回載っけたんですが、名前の由来は吉野山で歌舞した”静御前”の美しさになぞらえたからだとか。”静御前”は源義経の子を産み、その子と引き離された悲劇の女性ですが決してソロだったわけではなさそうです。


 この本を読んだ感想ですが”人生前期おひとりさま”と”人生後期高齢単身者”に大きく分かれるんかな、って感じです。”人生前期おひとりさま”ってのは若い人達が結婚するのしないの、子供を産むのうまないのという話”人生後期高齢単身者”ってのは結婚せず、子供を持たずに高齢世代になった人、離婚や死別などので単身者になった人の話。同じ”独身”ではありますが実はそうとう色合いが違います。”独身=若い”、”独身=未婚”ってなテンプレな話じゃないってことのようです。まずは”人生前期おひとりさま”の話から。

〔”人生前期おひとりさま”の話〕

 上記で”そこそこの年齢”って書きましたが、これってけっこう時代によって感覚違うんですな。1970年代ぐらいの本を読んでると”行き遅れ”、”オールドミス”なんてのが出てきます、今では完全なNGワードですが。で、これがいくつぐらいかというと感覚的には20代後半ぐらいだったでしょうか。29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます(*2)。1980年にトップアイドルだった”山口百恵”が結婚したのが21歳でしたがめちゃくちゃ早いって感じでもなかったですね。1975年に発表された”22才の別れ”とういフォークソングは22才の彼女が彼氏の知らないところお嫁にいく曲ですがめちゃくちゃ早婚ってわけでもなかったですし。
 これが現代だと、この歳で結婚したら相当な早婚って感じでしょうか。先日結婚を発表した武井咲が23歳。東京都にお住まいの超セレブなお嬢様が婚約したのが25歳。武井咲はデキ婚という事情があるにしても、お二方とも早婚ってイメージじゃないかと。アラサー世代はどうかというと、”東京タラレバ娘(*4)”なんか読んでると33歳(原作)のお嬢様方が多少のあせりはあるものの、めちゃくちゃテンパってる感があるわけでもなさそうだし。
 まあ、はっきり言って社会背景がこの数十年で相当変わってきてるんですな。年代別初婚年齢を見ると、1970年で男性 26.9歳、女性 24.2歳、1980年で同じく27.8歳、25.2歳、2014年で31.1歳、29.4歳。あくまで平均値なんで、それぞれバラツキ具合も違うんでしょうけど。
 で、何が言いたいかつ~といくつで結婚するかなんて個人の勝手の上に社会背景が違うんだから、いくつだと結婚しているべきみたいなのにそれほどこだわる必要はないと。おぢさん世代から”オレが若い頃はお前の歳には結婚していた”とか、”結婚して、家庭を持ち、子供を育ててこそ一人前”みたいなお説教(結婚規範)をそんなに気にすることはないんじゃないかと。むしろ本書でも言及してますが、こういった”結婚したら幸せになれる”みたいなある種の宗教的な思い込みがむしろ問題だと。

  「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている
  そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた

  ネット上では、なんの根拠もなく、「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」
  などどいう記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる

 もうひとつ、本書で言及しているのは”女性の結婚動機(離婚も)として経済的理由が大部分を占める”との話。身も蓋もないと思われるかもしれませんが・・ 
 結婚という観点でターニングポイントになっているのが”男女雇用機会均等法(1987年)”と時を同じくして発生したバブル景気。女性の社会進出を推し進めたこの法律とバブル景気で女性の収入が上昇したんですが、統計データとしては年収が高い女性ほど生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向にあるそうです(*4)。つまり仕事に生きがいを感じてバリバリ働いて金を稼ぐ女性ほど結婚しない傾向にあると。ですんで、今少子化高齢化対策として勧められている”女性活躍のための重点方針”が女性の希望や夢を実現させるのに有効でも少子化対策になるかというとどうなんだかな~、というのはまた別の話。

〔”人生後期高齢単身者”の話〕
 実は本書を読んで根が深いと思ったのはこっちの話
 上記の未婚者がそのまま歳をとっていくこともそうですが、離婚で独身に戻ることもあるります。男女の平均余命の差+夫婦の年齢差を考えると統計的には高齢女性が単身になる場合が多いし、夫が妻に先立たれることになれば同じく単身だし。
 こっちはおぢさんの説教でどうにかなる話ではなく、本書で指摘しているように”ソロ充(*5)”つまり”ソロで生きる力”、精神的な自立をどう作るか

  「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、
  自立とは何者にも依存しないということではない。
  むしろ、依存することのできる多くのモノや人に囲まれて、
  自ら能動的に選択し、自己決定できる人こそが「精神的自立」と解釈したい

 これを読んで思い出したのが”海街diary”でのエピソード
 恋人だった海猫食堂のおばちゃん”幸子さん”を末期ガンで亡くした”山猫亭”の主人の福田さん。口は悪くて偏屈な関西人ですが、意外にいろんな人に慕われている人。突然、遺言状を作ると言いだして相談にのっているのが幸子さんの相続でいろいろ世話になった信用金庫の坂下さん(すず姉 佳乃さんの恋人)。福田さんの言葉

  天涯孤独て気取ってみても そう簡単に人は独りっきりになれるわけやない
  それは多分 ありがたういことなんやろな

これに対しての坂下さんのコメント

  孤立と孤独は別なものだ
  あの人は孤独を好んではいるけれど 孤立してるわけじゃないからね

 私自身、リアル老後がひたひたと忍び寄る昨今、肝に銘じておきたいものです

 本書は独身の人のみならず、中高年の単身者、それと高齢単身者予備群(全ての人に可能性があります!)が一度は読んどいた方がいいかもの本です

p.s.
 本書に”結婚しない(したがらない)男の見分け方”の12の質問ってのが載ってます。○が8ケ以上なら真正ソロ男で結婚したい女性は近づかないほうがいい、3ケ以下なら良き夫になる資質あり。キーになる3つの質問に○がつく男はそれだけでソロ男なのでお付き合いしないほうが良いというチェックリスト。ちなみに私は○が9ケ、キーの3つは全て○でした・・・(笑)

《脚注》
(*1)標準世帯
 総務省統計局の定義。”標準”が”あるべき姿”と誤解を招くという理由で最近は”モデル家族”というんだそうですが、この手の言い換えってなんだかな~~ ”夫は一生サラリーマン、妻は専業主婦で離婚しない”というライフコースは同じだそうですが、今やこんな人生は少数派だそうです(知恵蔵の解説より)
(*2)29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます
 水谷ミミが1979年に発表した”もうすぐ30”って曲があるんですが、これなんか29歳でもう”もうすぐ30! だんだんババァだ♪”と歌ってます。恐いもの見たさで聴いてみたい方はこちらをどうぞ
(*3)東京タラレバ娘(東村アキコ、講談社)
 ”あの時こうしてタラ・・”、”あそこでこうしてレバ・・”脚本家の鎌田倫子(33歳独身)は高校時代からの親友の香や小雪と焦りながらも”女子会”をを繰り返す毎日。そんな所に人気モデルのKEYが現れ・・・
 第二巻のあとがきマンガで作者が友人から
  マンガだとしても もうホラーマンガですよ コレ!!
 と責められているシーンがあるんで、独身女性にとってはホラーマンガみたいです
(*4)生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向~
 ”生涯未婚率”とは日本の人口統計で”50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合”を意味しますが、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと。
(*5)ソロ充
 言いだしっぺは恋人と破局したあとのしょこたんこと中川翔子
  最近”ぼっち”っていう言葉を”ソロ活動”って言い換えると強くなれた気がする
  毎日”ソロ充”してます

から。こう言う言い換えはとっても賛成です!

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

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