アニメ・コミック

怪物にだって論理は通用します

 ども、最近ミステリー小説読む数が増えてきているおぢさん、たいちろ~です。
 ミステリー界の中には”ノックスの十戒”と呼ばれるお約束が存在します。これは
聖職者にして推理作家でもあった”ロナルド・ノックス”という人が発表した”推理小説を書く際のルール”で、その一つに

  探偵方法に超自然能力を用いてはならない

てのがあります。まあ、超能力で犯人を当てたり、占いで”犯人はお前だ!”やったり、幽霊が出てきて”私を殺したのはこの人です・・ 恨めしや~~”では興ざめというもの。まあ、うまく書けばないわけじゃないですが(*1)正統派ミステリーとは違うかなと
 ただ、これはあくまで普通の人間相手の話で、これが犯人も被害者も、そして探偵も普通の人間じゃなかったら・・・

 ということで、今回ご紹介するのはそんな怪物を専門に扱う探偵チームのお話”アンデッドガール・マーダーファルス”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所のペットショップでみかけた鳥かごです

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【本】アンデッドガール・マーダーファルス(青崎有吾、講談社タイガ)
 齢962歳、不死の美少女”輪堂鴉夜(りんどうあや)”、半人半鬼の”鬼殺し”こと”真打津軽(しんうちつがる)”、薙刀銃をあやつるクールなメイドさん”馳井静句(はせいしずく)”の3人による”怪物専門の探偵”チームの活躍を描く推理小説シリーズ。いや、マジで。
【道具】鳥かご
 文字どおり鳥を飼うかご。たまに生首が入ってたりします・・・

 さて、犯人や被害者が人間ならざる能力の持ち主だったら、”ノックスの十戒”よろしく通常の推理小説は成立しません。なぜならテレポーターに密室は必要ないですし、タイムリーパーにアリバイ工作は無意味です(*2)。とはいっても、万能ではないんでいろいろ制約条件を設定することで推理小説にすることもできはしそう。同じく、無敵の怪物といってもそれはそれでいろいろ制約条件ってのがあります。
 たとえば、怪物の王”吸血鬼”もしかり。強靭な肉体の持ち主で、心臓に杭を打たれても死なないし、腕がちぎれても2日で再生する。ただし、太陽は苦手で銀や聖水は触れないし、銀の杭で貫かれれば死ぬ(本書での設定)。ここんとこがミソで、じゃあこの怪物が殺されてたらその犯行は? ってのが第一章”吸血鬼”のお話。

 人類と共存を図ろうとする”人類親和派”の吸血鬼”ハンナ”が何者かに殺され、夫であるゴダール卿が犯人を捜すために”怪物専門の探偵”である輪堂鴉夜達を雇うってのがあらすじ。ハンナは杭で殺され、聖水をかけられて死んでいるのが発見されるんですが、凶器と思われる銀の杭は屋敷内で発見されます。外部からの犯行が難し状況で、屋敷内の人間の犯行とも思われにくく、銀や聖水を忌み嫌うい吸血鬼の犯罪とも考えにくく・・
 一種の不可能犯罪に近い状況で輪堂鴉夜が下した推理はなんだってのがこのお話の面白い所。怪物でなければ起りえないHowdunit(ハウダニット)つまり、”どのように犯罪を成し遂げたのか”がすごいオチなんですな。なにがすごいって”怪物”の特性あるいは制約条件をクリアしつつ、実に論理的というか
 第二章の”人造人間”で、グリ警部と輪堂鴉夜が密室の中で発見された首なし死体の謎を解明する時の会話

  グリ警部:なるほど、これがあたなの捜査法というわけですか
       怪物を人間の世界に引きずり下ろし、論理に当てはめる
  輪堂鴉夜:別に引きずり下ろしてなんかいませんよ
       怪物にだって論理は通用します

 つまり怪物であっても、人間であっても従うべき論理は同じ。ただ従う前提条件が違っているだけだと。でも、考えようによっちゃこのひねり方って普通の推理小説より書くの難しいんじゃないか??

 で、この犯人を追いつめる輪堂鴉夜ご一行様ですが、この人たちもまたユニーク。バディーもの、いわゆるホームズ+ワトソンみたいなのの頭脳労働と肉体労働の役割分担って意外にまちまちなんですが、まったく肉体労働しかしないってちょっと珍しいかも。アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)の代表作”隅の老人(*3)”だって多少は肉体労働はやってるし、頭脳派探偵のシャーロック・ホームズだってフェンシングやボクシングができるなんていう武道派の面もあります。二人で一人の仮面ライダー探偵”仮面ライダーW(*4)”だって、肉体労働=翔太郎、頭脳労働=フィリップの組み合わせですが、フィリップもまったく肉体労働やってないってことないです。まあ、私の読んだ中でほんとに体を動かさないってのは”リンカーン・ライム(*5)”ぐらいでしょうか
 輪堂鴉夜というとホントに肉体労働をまったくしないという完全”頭脳労働”オンリー。なんたって、現場に行っても歩きもしない。闘うなんてもってのほか。本人曰く

  なにしろ、頭を使うこと以外できない体でしてね

 でもって、肉体労働担当が真打津軽。”鬼殺し”という芸をやっていただけあってバリバリの武道派なんですが、けっこうお調子モノで寒いギャクをかます人。
 真打津軽が”ボケ”、輪堂鴉夜が”ツッコミ”でちょくちょく二人で漫才を。頭脳労働と肉体労働の分業体制ってのもあって、最初は”染之助・染太郎か!(*6)”とつっこんじゃいましたよ

  津軽は肉体労働、鴉夜は頭脳労働、これでギャラは同じなの

とかね。
 少し読み進むと意外や意外、おいしいとこ持ってってるのがクールメイドの馳井静句。寡黙ながら鴉夜の指示で津軽をブルボッコするし、敵への戦闘ではけっこうな大活躍。第四章ではかなかなに艶っぽいシーンも出てきますし。普段は目立たないけどやるときゃやるタイプです。
 この三人見てるとまさにミステリー界の”レツゴー三匹(*7)”ですなぁ。寒いギャグでボケる津軽に、辛辣なツッコの鴉夜、締めるとこは締めるフリの静句とか。なかなか秀逸なキャラ設定です。

 ”アンデッドガール・マーダーファルス”はモンスターとか登場するんでホラーモノっぽいですが、実はけっこう本格モノの推理小説かも。面白い本です。ぜひご一度のほどを。

《脚注》
(*1)うまく書けばないわけじゃないですが
 ”鎌倉ものがたり(西岸良平、双葉社)”には”恐山妖介”という降霊術を使って事件を解決する鎌倉の刑事さんが登場します。ただ、この作品には一色正和というミステリー作家がいて、鎌倉という人間と魔物、妖怪と普通に住んでいる土地柄が舞台になっているから成立するお話。ここまでうまくやってくれるとむしろ感心してしまいます
(*2)テレポーターに密室は必要ないですし~
 ”テレポーター”(空間跳躍者)なら密室だろうがなんだろうが侵入できますし、”タイムリーパー”(時間跳躍者)なら、アリバイ工作なんかしなくても任意の時間に移動できるだろうし。
(*3)隅の老人(バロネス・オルツィ、創元推理文庫)
 女性新聞記者のポリー・バートンが喫茶店の隅にすわる老人に事件の話をすると、その老人が事件を解決するという推理小説。アームチェア・ディテクティブの先駆にして代表的な小説です。
(*4)仮面ライダーW
 左 翔太郎とフィリップの二人がUSBメモリみたいのを使って合体するという平成仮面ライダーシリーズ第11作目の作品。子供向けとは思えないミステリマニアも楽しめる番組です。フィリップを演じたのは今をときめく人気俳優”菅田将暉”。しかし、この人がここまで売れるとは思わなんだな~~~
(*5)リンカーン・ライム
 ”リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)”に登場する科学捜査のスペシャリスト。捜査中の事故により左手の人差し指と首から上だけしか動かないという典型的なアームチェア・ディテクティブ。
(*6)染之助・染太郎か!
 かつてお正月の名物だた漫才コンビ”海老一染之助・染太郎”師匠です。傘の上ので枡を回すのが弟の染之助、横ではやし立てるのが兄の染太郎。上記のギャクの元ネタは
  弟は肉体労働、兄は頭脳労働、これでギャラは同じなの
(*7)レツゴー三匹
 ツッコミ役の正児、ボケ役のじゅん、フリ役の長作による昭和を代表するトリオ漫才。そういえば、最近トリオ漫才のビックネームってあんましみないですな。お笑い番組の1組あたりの時間が短くなってるせいですかねぇ・・

グローバル化する世界で異なる文化や言語と交わることで、アニメもどんどん変わっていくんでしょうね(RWBY/アニメの原画)

 ども、半世紀に及ぶアニメファンのおぢさん、たいちろ~です。
 2017年10月5日、ノーベル文学賞に日本人のカズオ・イシグロ氏が授賞したとのニュースがありました。両親ともに日本人で、本人も5歳まで日本に在住、現在はイギリス国籍の英国人作家という経歴。”日の名残り”、”わたしを離さないで”(ともにハヤカワepi文庫)の作者ですが、すいません読んでません。
 受賞にあたって6日の日経新聞の”春秋”にこんなのが掲載されていました

  授賞は世界に吹き荒れる「排外主義」への静かな反論ともとれる

   (中略)
  グローバル化する世界で異なる文化や言語と交わることで
  より新鮮で感性にあふれた作品世界を築くことができるのである

なるほど、こういう文脈でとらえることもできるんだな~とちょっと驚き。
 ということで、今回ご紹介するのはグローバル化するアニメから、アメリカ人によるジャパニーズテイストの美少女バトルアニメ”RWBY”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
2015年に森アーツセンターギャラリーで開催された”THE ART OF GUNDAM(機動戦士ガンダム展)”の図録にあった”原画”です。

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【本】RWBY(監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース)
 異形の生命体”グリム”と人類の戦士”ハンター”との戦いを描くアメリカ版”プリキュアシリーズ(*1)”?(男性も出てますけど)
 人見知りながら天性的な戦闘センスを持つ”ルビー・ローズ”、タカビーなお嬢様”ワイス・シュニー”、無口でクールな猫耳娘”ブレイク・ベラドンナ”、ルビーの異母姉(姉妹には見えん!)で豪放磊落な”ヤン・シャオロン”といずれ個性的な美少女たち。Volume1は彼女たちの出会い、チームを結成し絆を深めていくお話です。
【道具】アニメの原画
 手描きアニメーの制作の中で動きの要所(動き始め、重要な中間ポイント、動き終わり)を描いた絵。これは、ファーストガンガムで、アムロがランバ・ラルの部隊と白兵戦をしたときのもの。
 これを”中割り”というコマにさらに分割することで動きの演出をします


 実はこのアニメ、”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(*2)”という本の中に出てきて、学校の文化祭みないなのでビブリオバトル部の3人の美少女+1人の男の娘がコスプレするシーンの元ネタになっています。SFオタクの空さん曰く、”日本のアニメと比べると”スピード感が段違い、”これは女子でも萌えますね”、”オタク心をくすぐる要素がてんこ盛りの設定”とベタボメ。メルマガ部の美少女、弐久寿さんにいたっては”これはあたしのためのアニメだ!”とモロハマリ!!

 で、Volume1を観たんですが、面白いんだこれが!!! まだ始まったばかりなんですが、ストーリーも出会いから反発しながらも戦いを通じて友情と勝利をつかむという王道キャラ設定も秀逸。基本的に日本人がヒロインのプリキュアシリーズと違って、他民族国家のアメリカの作品らしく、アングロサクソンからモンゴロイド、はてはけもっ娘まで。ルビーは”赤ずきん”、ワイスは”白雪姫”などそれぞれモチーフがあって、性格の多様性も面白い。それぞれに”センブランス”という特殊能力を持っていて、ルビーは高速移動し、ワイスは魔方陣を作り、ブレイクは分身し、ヤンは受けたダメージを倍返しする(半沢直樹か!)などなど。そんな彼女たちの武器もユニークで、ルビーは持ち運びモードから狙撃銃や大鎌に変形するというスグレモノ、とかとか

 動きもまたすごくて、特に戦闘シーンはすんごくカッコイイ!! 3DCGで作られたアニメなんですが、こういう速い動きやめまぐるしく視点がかわるシーンでは強みを発揮してますな。BISビブリオバトル部の中で、空さんが

  このスピードと密度に慣れてしまうと、
  日本の美少女バトル・アニメは物足りなくなちゃうんじゃないかと
  不安にかられます

とコメントしてますが、まさにその通りですな~~

 ただ、戦闘シーン以外の日常生活のとこって、ちょっと肌合いが悪いというか、”鉄腕アトム(*3)”をリアルタイムで観ていたリミテッドアニメ世代としては、必要以上に動き過ぎるというか・・・ コストを削減するために編み出された”リミテッドアニメ”って、セル画の枚数を減らす=コスト削減のために、コマ数を減らすだけでなく、話をする時はキャラの口だけしか動かさないとか、画面には多くのキャラがいでもそのうち動いているのは1~2名だけとか、動きの演出も”中割り”を工夫して少ない枚数でダイナミックな動きに見えるよう工夫するとか。つまり、昔のアニメって動きが少ないことが前提で、その中でいかに動いているように観せる(感じさせる)かって話なんですね。
 ところが、CG技術の発達とコンピュータ性能の飛躍的向上で動かすこと自体はそんなに難しくなくなっているみたい。だから”RWBY”もすんごくよく動いているんですが、それがおぢさん世代にはちょっちつらいのかも・・ コンピューターゲームもまったくやらないんで余計にそう感じるのかもしれませんが・・ 今の若い人にとっては”RWBY”のほうが自然なのかもしれませんが・・

 とはいえ、作品自体はとっても気にいってます。まだVolume1しか観てませんが、2~4と続くみたいなんで、楽しんで観まっしょい!

《脚注》
(*1)プリキュアシリーズ(東映アニメーション)
 日曜の朝にテレビ朝日系列で放送されている美少女アクションアニメあるいは、美少女版”スーパー戦隊シリーズ”。第一作の”ふたりはプリキュア”が放映されたのが2004年とのことですので、もう干支一回り以上続いてんだな~
(*2)君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)ビブリオバトル部に集う本好きな高校生たちの日常を描く小説。読書のクラブというとまったりしてそうですが、”ビブリオバトル”という自分の読んだ本を紹介してチャンプ本を決めるというバトル要素を加えることでなかなかドラマチックな展開になってます。4巻ではSFオタクの空さんに告白してつきあうことになった天然美少年の銀くんと、ノンフィクション専門の堅物武人くんの三角関係の行方は? ってお話です。詳しくはこちらをどうぞ
(*3)鉄腕アトム
 手塚治虫原作の日本で最初の本格的な連続TVアニメ。放送は1963~1966年

本には、人生を変える力がある(君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4/”文豪スレイドックス”ポスター)

 ども、こう見えて(どう見えて?)子供の頃にはあんまし本を読まなかったおぢさん、たいちろ~です。
 人間、誰しも人生にインパクトを与えた本ってのが存在するのではないかと。私の場合は”デビルマン(*1)”でしょうかね。小学校の頃ですが、たぶんはじめて自分おこずかいで買ったマンガじゃなかったかと。こっから本の爆買が始まったような・・・
 活字の本だったら”空とぶ家(*2)”かな(”カールじいさんの空飛ぶ家(*3)”じゃなくて!) 10歳のニッキィ、9歳のリンダ、そしてベンおじさんの3人が、新発明のために浮き上がった家に乗ってジャングルまで飛んでいってしまうお話で、子供向けのSFってとこでしょうか。
 ことほどさように本にはまるってのは教科書に載っているような名作とは限らず、SFだってマンガだってかまわないワケですし、今ならライトノベルだってぜんぜんOKではないかと。
 ということで、今回ご紹介するのはビブリオバトル部で自分の人生を変えた本を紹介するお話”君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜市立図書館の巡回展示で飾られていた”文豪スレイドックス”のポスターです

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【本】君の知らない方程式 BISビブリオバトル部 4(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。<驚異の翼(ウィング・オブ・ワンダー)>伏木空、<燃える氷(バーニング・アイス)>埋火武人、<天然の狙撃手(ナチュラル・スナイパー)>輿水銀、<双面の話者(ヤヌス・トーカー)>安土聡、<愛の伝道師(ラブ・ミショナリー)>小金井ミーナ、<科学の魔女(ウイッチ・オブ・サイエンス)>菊地明日香など、本好きが集まるクラブ。空さんに告白してつきあうことになった銀くんですが、それを見ていた武人くんは心落ち着かない様子で・・・
【ポスター】”文豪スレイドックス”ポスター
 ”文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、KADOKAWA)は横浜を舞台に”異能”と呼ばれる超能力を駆使する武装探偵社とポートマフィアの抗争を描くバトルアクションコミック
 このポスターは横浜市立図書館と文豪ストレイドッグスのコラボ企画として作成されたもので、キャッチコピーが

  本には、人生を変える力がある

なかなか粋なことするじゃん、横浜市立図書館!
ちなみに、左が太宰治、中央が中島敦、右が芥川龍之介です


 さて、今回のお話は空をめぐる武人くんと銀くんとの恋愛バトル。空さんは地味キャラながら、SFに喰いつくと話の止まらない超弩級のSFオタク武人くんは祖父の残したお宝SF本を持ちながらノンフィクションしか読まないという超堅物銀くん学園のショタコンのお姉さま方から愛でられる美少年。学園行事のコスプレ大会では”RWBY(*4)”のコスプレをして、ミーナさんから”美少女三人がかりで、男の娘一人に勝てんとは”と、悔しがられています。空さんはお宝SF本目当てに足しげく武人くんちに通って、”武人くんにSFを読ませる!”ことになって、いい雰囲気なのかと思いきや、銀くんの空さんへの交際申し込みで、一気に流れが変わって・・・というのが前巻までのお話。

 今回はみごとヒロイン役に大抜擢?の空さんですが、中学校の時にはいじめにあってたという過去を持つ少女。同じく空の恋を応援する(三角関係を面白がってるだけ?)のミーナさんもハーフや母親のことできついことを言われた過去があり。そんな彼女たちの人生を変えた本がビブリオバトルのイベントで紹介されます

〔空さんの紹介した本”ゲームウォーズ(アーネスト・クライン、SB文庫)〕
 人々が”オアシス”と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいる未来。”オアシス”を運営する億万長者”ジェームズ・ハリデー”が死亡し、遺言か公開される。それは”オアシス内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずる”というものだった・・・
 というのが本書のあらすじ。まだ読んでませんけど
 このオアシスを作ったハリデーって人はガチのオタクで、この宝探しを解くにはビデオゲームからRPG、アニメに至るまで80年代のサブカルの膨大な知識が必要だと。で、主人公のウェイドは社会の最下層の人間で希望なんかもてない高校生ですが、この謎に挑戦していくと。空さんの紹介する話に出てくるだけでも、マクロスにエヴァにメカゴジラにと。ウェイドがミッションクリアで手に入れるのが実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”(*5)ってんですから、どんだけやねん!!

 こんだけ読んだらとんでもないバカ話に聞こえますが、でも、空さにとっては”あきらめずに戦い続けたら、きっと未来を手にできる”という本書のメッセージが、死んでしまいたいぐらい苦しい状況から救ってくれたと

  確かにこれは荒唐無稽なSFです。オタクの夢です。願望充足です
  でも、未来への希望が詰まっています
  だから、今も苦しんでいる人たちに、
  この小説を読んで、希望を持ってほしいと願います。
  あきらめず、希望を持ってほしいと。
  生きていればいつか、チャンスが訪れるから・・・

〔ミーナさんの紹介した本”ラノベ部(平坂 読、MF文庫)〕
 とある高校にある軽小説部、ライトノベルを愛好するクラブを舞台にした日常系ライトノベル、らしいです。まだ読んでませんけど
 本書の登場人物にボーイズラブ(BL)大好きな腐女子がいて、これに興味を持ったミーナさんがBLに手を出してずぶずぶどころか”垂直にストーン”とBLにハマリましてっと
 上記のようにミーナさんも人と違うことでつらかった過去があるんですが、BLを読むことで”自由”を知った

  でもね、BLを知って変わりました。自由、というものを知りました
  男が男と愛し合ったってかまわないじゃないか。
  そんなマンガや小説を好きになったってかまわないじゃないか
  それどころか、”私はBLが好きだ”って胸を張って開き直ったってかまわない
  素晴らしい世界じゃないか。
  そうだ、他人と違ったっていいんだって--それ以来、人生が少し楽になりましたね

”いきなりそっちに行きますか?!”感はありますが、いいじゃないですか、それで人生が楽になるなら

 まあ、ライトノベルで人生が変わっちゃったってぜんぜんいいんですが、ただな~、最近のライトノベルって全然軽く(light)ないんだよな~。本書で空さんが銀くんから借りた”俺の妹がこんなに可愛いわけがない(*6)”で12巻。名前の出てきた”ソードアート・オンライン”で24巻、”はたらく魔王さま!”で19巻。本書では名前出てませんが”境界線上のホライゾン”なんて26巻というボリュームもさることながら、1冊がとってもぶ厚い!(*7) ゼクシィかおまいわ!!(*8)
 空さんが”ラノベでしょ? 1日2冊は読める”と言ってるように、まあ読むほうはなんとかなりそうなんですが、お財布にゃきついですね。空さんは銀くんから”俺妹”を借りる約束してますが、おぢさんにゃそんな知り合いいないですし(貸してくれそうな女子高生がお知り合いなら、そっちのが問題っぽいですが・・・

 本書を読んでると、確かに”本には、人生を変える力がある”っての信じる気になりますね。”ビブリオバトル部”は本好きにはたまらない本です。ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)デビルマン(永井豪、講談社)
 テレビアニメもありましたが、1972~3年に少年マガジンに連載された永井豪の原作のほう。主人公の不動明が親友の飛鳥了の頼みを受けてかつて地球を支配した人類”悪魔”と合体することで人類を救うというお話。当初は美しい裸体の悪魔”シレーヌ”やら居候先の美少女”美樹”ちゃんのお風呂シーンにムフフしてたのが途中から壮大な黙示録の世界に。日本SF・コミック史に残る名作です
(*2)空とぶ家(ウォルター・ホッジス、イラスト 久里洋二、学研プラス)
 ニッキィとリンダは発明好きのベンおじさんの家に遊びに行きました。
 今回のベンおじさんの発明は大型気球用のガス。ちょっとだけ試してみるはずが、うっかりガスが止まらなくなって、家が浮き出しちゃった!!!
 すでに絶版ですので、図書館で探してみてください。名作です
(*3)カールじいさんの空飛ぶ家
(製作総指揮 アンドリュー・スタントン、ピクサー、ウォルトディズニースタジオ)
 頑固者のカールじいさんは、亡き妻エリーとの約束を守るために人生最初で最後の冒険に挑む。それは我が家に風船を大量にくくりつけて家ごと南米に旅にでることだった!
 2009年に公開されたアニメなので私の子供の頃ってことはないです、はい。
(*4)RWBY(監督 モンティ・オウム、ワーナー・ブラザース)
 異形の生命体”グリム”と人類の戦士”ハンター”との戦いを描くSFバトルアニメ。てか、アメリカ版”プリキュアシリーズ”?(男性も出てますけど)。本書ではヒロインの4人をビブリオバトル部の女性陣がコルプレしてます。現在、DVDで見てますが、けっこう面白い! これはまた別の話で
(*5)実写版”スパイダーマン”が操縦する巨大ロボット”レオパルドン”
 1978年に放映された東映の特撮テレビドラマシリーズ。スーパー戦隊シリーズではないものの”ジャッカー電撃隊”の放映後に登場し、等身大ヒーロー=スパイダーマン(マーベル・コミック社公認!)が変形する巨大ロボット”レオパルドン”に乗り込んで戦うという、後のスーパー戦隊モノのフォーマットを確立した記念碑的作品いやマジで
 画像を見たい方はこちらをどうぞ
(*6)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(伏見つかさ、イラスト かんざきひろ、電撃文庫)
 勝ち気でかわいいけど”隠れオタク”とその妹や個性的な女性たちに振り回される兄によるコメディらしいです、まだ読んでないんで。電撃文庫の小説で全12巻、コミカライズが電撃コミックスから全4巻、DVD(アニプレックス)が2期16巻、その他スピンオフ多数となかなかのボリューム。作品にはまるとわりとコンプする方なので、うかうか手を出すととんでもないことに・・・
(*7)名前の出てきた”ソードアート・オンライン”~
・ソードアート・オンライン:川原礫、イラスト abec、電撃文庫
・はたらく魔王さま!:和ヶ原聡司、イラスト 029、電撃文庫
・境界線上のホライゾン:川上稔、 イラスト さとやす、電撃文庫
すいません、3作ともまだ読んでません。
しかしまあ、KADOKAWA/アスキー・メディアワークスの本を宣伝してるんだから東京創元社も太っ腹だな~~
(*8)ゼクシィかおまいわ!!
 リクルートが発行している結婚情報誌。とってもぶ厚い。結婚をないがしろにする彼氏を彼女が”ゼクシィの角”で殴るというネタがありますが、とっても痛そうです・・・

「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、自立とは何者にも依存しないということではない(超ソロ社会/海街diary/ヒトリシズカ)

 ども、夫婦と子供2人、有業者が世帯主1人だけという典型的な標準世帯(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 人が結婚しようがしまいが、いくつで結婚しようが、子供を作ろうが作るまいが、結局それは個人の勝手で人様がどうこう言う話ではないはずです。いかにマクロ的(社会)に少子化がど~したとか、高齢化がこ~したといった議論があっても、ミクロ的(個人)に見ればそんなことは知ったこっちゃないはずなんですが、どうも人ってのは”標準幻想”から自由になるのは難しいのか、そこそこの年齢になってくると”既婚”と”未婚”というカテゴリ分けが出てきちゃいます。言ってるほうは善意でもあるんでしょうが、それだけにタチが悪い面も・・
 ということで、今回ご紹介するのは今や次世代の標準になりつつある独身社会を扱った本”超ソロ社会”と読んで思い出した”海街diary”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。向島百花園のヒトリシズカです

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【本】超ソロ社会(荒川和久、PHP新書)
 サブタイトルは”「独身大国・日本」の衝撃”。
 未婚化、非婚化、離婚率の上昇、配偶者との死別による高齢単身者の増加など、今後ますますソロ社会化する日本を分析した本。
【本】海街diary(吉田秋生、小学館)
 父の死をきっかけに腹違いの姉”香田幸、佳乃、千佳”達とともに生活することになった中学生の”浅野すず”。鎌倉を舞台に繰り広げられる彼女と取り巻く人々との恋と日常を描いた青春グルアフィティ。
【花】ヒトリシズカ(一人静)
 センリョウ科 チャラン属の多年草。写真を撮ったのが秋でしたので花は咲いてませんが春になると白いブラシ上の花が咲きます。
 ”独りで静かに暮らす”ってイメージで今回載っけたんですが、名前の由来は吉野山で歌舞した”静御前”の美しさになぞらえたからだとか。”静御前”は源義経の子を産み、その子と引き離された悲劇の女性ですが決してソロだったわけではなさそうです。


 この本を読んだ感想ですが”人生前期おひとりさま”と”人生後期高齢単身者”に大きく分かれるんかな、って感じです。”人生前期おひとりさま”ってのは若い人達が結婚するのしないの、子供を産むのうまないのという話”人生後期高齢単身者”ってのは結婚せず、子供を持たずに高齢世代になった人、離婚や死別などので単身者になった人の話。同じ”独身”ではありますが実はそうとう色合いが違います。”独身=若い”、”独身=未婚”ってなテンプレな話じゃないってことのようです。まずは”人生前期おひとりさま”の話から。

〔”人生前期おひとりさま”の話〕

 上記で”そこそこの年齢”って書きましたが、これってけっこう時代によって感覚違うんですな。1970年代ぐらいの本を読んでると”行き遅れ”、”オールドミス”なんてのが出てきます、今では完全なNGワードですが。で、これがいくつぐらいかというと感覚的には20代後半ぐらいだったでしょうか。29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます(*2)。1980年にトップアイドルだった”山口百恵”が結婚したのが21歳でしたがめちゃくちゃ早いって感じでもなかったですね。1975年に発表された”22才の別れ”とういフォークソングは22才の彼女が彼氏の知らないところお嫁にいく曲ですがめちゃくちゃ早婚ってわけでもなかったですし。
 これが現代だと、この歳で結婚したら相当な早婚って感じでしょうか。先日結婚を発表した武井咲が23歳。東京都にお住まいの超セレブなお嬢様が婚約したのが25歳。武井咲はデキ婚という事情があるにしても、お二方とも早婚ってイメージじゃないかと。アラサー世代はどうかというと、”東京タラレバ娘(*4)”なんか読んでると33歳(原作)のお嬢様方が多少のあせりはあるものの、めちゃくちゃテンパってる感があるわけでもなさそうだし。
 まあ、はっきり言って社会背景がこの数十年で相当変わってきてるんですな。年代別初婚年齢を見ると、1970年で男性 26.9歳、女性 24.2歳、1980年で同じく27.8歳、25.2歳、2014年で31.1歳、29.4歳。あくまで平均値なんで、それぞれバラツキ具合も違うんでしょうけど。
 で、何が言いたいかつ~といくつで結婚するかなんて個人の勝手の上に社会背景が違うんだから、いくつだと結婚しているべきみたいなのにそれほどこだわる必要はないと。おぢさん世代から”オレが若い頃はお前の歳には結婚していた”とか、”結婚して、家庭を持ち、子供を育ててこそ一人前”みたいなお説教(結婚規範)をそんなに気にすることはないんじゃないかと。むしろ本書でも言及してますが、こういった”結婚したら幸せになれる”みたいなある種の宗教的な思い込みがむしろ問題だと。

  「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている
  そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた

  ネット上では、なんの根拠もなく、「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」
  などどいう記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる

 もうひとつ、本書で言及しているのは”女性の結婚動機(離婚も)として経済的理由が大部分を占める”との話。身も蓋もないと思われるかもしれませんが・・ 
 結婚という観点でターニングポイントになっているのが”男女雇用機会均等法(1987年)”と時を同じくして発生したバブル景気。女性の社会進出を推し進めたこの法律とバブル景気で女性の収入が上昇したんですが、統計データとしては年収が高い女性ほど生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向にあるそうです(*4)。つまり仕事に生きがいを感じてバリバリ働いて金を稼ぐ女性ほど結婚しない傾向にあると。ですんで、今少子化高齢化対策として勧められている”女性活躍のための重点方針”が女性の希望や夢を実現させるのに有効でも少子化対策になるかというとどうなんだかな~、というのはまた別の話。

〔”人生後期高齢単身者”の話〕
 実は本書を読んで根が深いと思ったのはこっちの話
 上記の未婚者がそのまま歳をとっていくこともそうですが、離婚で独身に戻ることもあるります。男女の平均余命の差+夫婦の年齢差を考えると統計的には高齢女性が単身になる場合が多いし、夫が妻に先立たれることになれば同じく単身だし。
 こっちはおぢさんの説教でどうにかなる話ではなく、本書で指摘しているように”ソロ充(*5)”つまり”ソロで生きる力”、精神的な自立をどう作るか

  「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、
  自立とは何者にも依存しないということではない。
  むしろ、依存することのできる多くのモノや人に囲まれて、
  自ら能動的に選択し、自己決定できる人こそが「精神的自立」と解釈したい

 これを読んで思い出したのが”海街diary”でのエピソード
 恋人だった海猫食堂のおばちゃん”幸子さん”を末期ガンで亡くした”山猫亭”の主人の福田さん。口は悪くて偏屈な関西人ですが、意外にいろんな人に慕われている人。突然、遺言状を作ると言いだして相談にのっているのが幸子さんの相続でいろいろ世話になった信用金庫の坂下さん(すず姉 佳乃さんの恋人)。福田さんの言葉

  天涯孤独て気取ってみても そう簡単に人は独りっきりになれるわけやない
  それは多分 ありがたういことなんやろな

これに対しての坂下さんのコメント

  孤立と孤独は別なものだ
  あの人は孤独を好んではいるけれど 孤立してるわけじゃないからね

 私自身、リアル老後がひたひたと忍び寄る昨今、肝に銘じておきたいものです

 本書は独身の人のみならず、中高年の単身者、それと高齢単身者予備群(全ての人に可能性があります!)が一度は読んどいた方がいいかもの本です

p.s.
 本書に”結婚しない(したがらない)男の見分け方”の12の質問ってのが載ってます。○が8ケ以上なら真正ソロ男で結婚したい女性は近づかないほうがいい、3ケ以下なら良き夫になる資質あり。キーになる3つの質問に○がつく男はそれだけでソロ男なのでお付き合いしないほうが良いというチェックリスト。ちなみに私は○が9ケ、キーの3つは全て○でした・・・(笑)

《脚注》
(*1)標準世帯
 総務省統計局の定義。”標準”が”あるべき姿”と誤解を招くという理由で最近は”モデル家族”というんだそうですが、この手の言い換えってなんだかな~~ ”夫は一生サラリーマン、妻は専業主婦で離婚しない”というライフコースは同じだそうですが、今やこんな人生は少数派だそうです(知恵蔵の解説より)
(*2)29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます
 水谷ミミが1979年に発表した”もうすぐ30”って曲があるんですが、これなんか29歳でもう”もうすぐ30! だんだんババァだ♪”と歌ってます。恐いもの見たさで聴いてみたい方はこちらをどうぞ
(*3)東京タラレバ娘(東村アキコ、講談社)
 ”あの時こうしてタラ・・”、”あそこでこうしてレバ・・”脚本家の鎌田倫子(33歳独身)は高校時代からの親友の香や小雪と焦りながらも”女子会”をを繰り返す毎日。そんな所に人気モデルのKEYが現れ・・・
 第二巻のあとがきマンガで作者が友人から
  マンガだとしても もうホラーマンガですよ コレ!!
 と責められているシーンがあるんで、独身女性にとってはホラーマンガみたいです
(*4)生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向~
 ”生涯未婚率”とは日本の人口統計で”50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合”を意味しますが、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと。
(*5)ソロ充
 言いだしっぺは恋人と破局したあとのしょこたんこと中川翔子
  最近”ぼっち”っていう言葉を”ソロ活動”って言い換えると強くなれた気がする
  毎日”ソロ充”してます

から。こう言う言い換えはとっても賛成です!

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

京極堂で南極夏彦で妖怪馬鹿のお話。でも実写でやって欲しいな~~ これ!(虚実妖怪百物語/妖怪お守り)

 ども、早く人間になりた~いなおぢさん、たいちろ~です。
 このブログでは花を紹介するのに、”○○科XX属”というのが出てきます。これは生物学・分類学での”階級”というものでまあ近しいもののくくりなんですが、どこまで実感とあっているかというとけっこうアバウト。たとえばサクラだと”バラ科モモ亜科スモモ属”(wikipediaより)なんですが、サクラを見てバラとか、スモモとか言われてもそ~なんだとは感じにくいんじゃないかな。
 で、なんの話かというと”妖怪”の話です。一言で妖怪といっても亜人ちゃんやら、動物の化けたんやら、物が歳を経てなっちゃったんやらひとくくりにするんかこれみたいな。これに文化的な背景がからんじゃうと何がなんだか。日本では”人魚”は立派な妖怪ですが(*1)、人魚姫の”ア○エル”を見て妖怪扱いしたらディ○ニー・ファンから石投げられんダろうな~~(*2)
 ということで、今回ご紹介するのは、そんな妖怪がいきなり現れたらどうなるかという話”虚実妖怪百物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。イベントで展示されていた妖怪お守りです
写真上は境港にある”妖怪神社”にある金運上昇?!ねずみ男がモチーフのお守り
写真下は赤城神社にある厄災守護の”磐筒雄命(いわつつおのみこと)お守り
ゲゲゲの鬼太郎のチャンチャンコがモチーフ

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【本】虚実妖怪百物語(うそまこと ようかいひゃくものがたり)
   (京極夏彦、KADOKAWA)
 シリアの砂漠に現れた男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲(*3)に、よく似ているように見えた――。妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげる氏の叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。(序)
 という話のはずなんですが・・・
【道具】妖怪お守り
 妖怪とお守りの組み合わせって冗談っぽいですがホントにありました
 鬼太郎のチャンチャンコ柄のお守りは磐筒雄命をお祀りしている東京の赤城神社のもの。水木しげる大先生が、”ゲゲゲの鬼太郎”アニメ化の時にこの神社でヒット祈願をしたことが由来だそうです。
 まあ、こっちはわかるんですが、妖怪神社のねずみ男お守りってのはどうなんでしょう。コレクターズアイテムていう意味ではありですが・・・


 で、妖怪ってのは何かというと水木しげる大先生曰く”気配”とのこと

  妖怪というのは、気配デスよ、気配
  それに相応しい気配があって、その中にいて、漸くこう、うっすらと感じるもんデすよ
  そこで、ハッ、と思うワケです。見えないんです!

 なんで、ホイホイ見えちゃいかんモンだそうです。ところがこれがみんなにはっきり見えちゃって、しかもデジタル媒体に記録されちゃう。これがまた見た人が見た感じのものを記録されちゃうんだから大混乱、ってのが本書で起こっている事柄です。

 こんだけ読むと”虚実妖怪百物語”という本の名前っぽいんですが、実際読んでみるとなっじゃこりゃ! ざっくりまとめると、南極夏彦テイストのノリ(*4)に京極堂の蘊蓄のっけて(*5)、オタクネタをばら撒いたような妖怪馬鹿話! しかも登場人物がほとんど実在の人物。京極夏彦本人に始まって、水木しげる大先生に荒俣宏。平山夢明に村上健司に黒史郎なんといった妖怪・ホラー系ライターとかも、読んだことないけど。なあ、ほとんど楽屋オチな面々が集まってほとんど妖怪馬鹿の面目躍如な大騒ぎ!!! 
 だいたい”加藤保憲”ドコいったんや! 1巻目”序”の冒頭でオイシイ出方してるのにあと登場するのは2巻目、3巻目の冒頭。最後の最後での登場は荒俣宏に呼ばれて飛び出てジャジャジャヤジャ~ンの8ページのみ。1400ページ近くあんですぜ、この本

 こんだけ読むと単なるふざけている馬鹿本かと思われるでしょうが、実はその背景ってかなり今の世相を反映してそうでけっこうホラー。妖怪という対象がなくなったとたん、社会がお互いを監視し、無駄を憎み、冗談に苦情をいい、駄洒落だけで教師を懲戒免職にするという殺伐とした世の中に・・・

  全員、自分が善だと信じ込んでいるのである 誰一人、人の話ををきこうとしない
   (中略)
  国民共通の敵・悪の権化たる妖怪を失ってしまったために
  怒りや不満のはけ口がなくなってしまい、
  仕方なく大衆はその矛先を隣人へと向け始めたのだろう
  溜まりに溜まったフラストレーションをお互いにぶつけ合っているだけなのだ
  なんちゅう乾いた人間関係だろうか

 冷戦構造の崩壊からこっち(*6)、対立構造が多極化、局所化していく中、国民共通の敵・悪の権化というような大物キャラクターが消失してった中で、インターネットやSNSなんつーイージーな発信ツールが登場することで、ネットの炎上やクレーマーといった自己主張をぶつける人が(以下自主規制)

 ”虚実妖怪百物語”はふざけているようで、実はけっこう真面目にヤバいネタを扱った本。京極夏彦はじめての人でもけっこう楽しめます。ぜひご一読の程を

 余談ですが、この本実写化せんかな~~~
 お亡くなりになられた水木しげる大先生はどなたか役者の方でもしょうがないですが、それ以外の方はほとんど実在の人物。俳優は嶋田久作に佐野史郎に室井滋、声優は野沢雅子に八奈見乗児に千葉繁に高山みなみに山本圭子と夢のラインナップ。キャラクターでも水木大先生を始め、高橋留美子に藤子・F・不二雄に魔夜峰央に藤田和日郎となれば著作権なんぼのモンじゃい! 鈴木光司がいるから貞子もご出演ok! ”シン・ゴジラ”や”図書館戦争”、”空飛ぶ広報室”とかにも協力してるんだから、自衛隊もけっこうノリノリで協力してくれそうだし。あとはKADOKAWAの財力とメディアミックス力があれば怖いモンなしだと思うんですが。ぜひご検討の程を


《脚注》
(*1)日本では”人魚”は立派な妖怪ですが
 京極夏彦の本でよく引用される鳥山石燕の妖怪画集”今昔百鬼拾遺”に載ってます。ビジュアル的には上半身が人間で下半身魚ってのはア○エルと同じですが、顔はネズミっぽいし水かきあるし背びれあるし・・・
(*2)人魚姫の”ア○エル”を見て~
 ”ア○エル”の父親はギリシア神話に登場する海神”トリ○ン”ということなので、ア○エルは妖怪ではなくて神様の一族ってことになります。いちおうフォローしましたよ
(*3)加藤保憲
 ”帝都物語(荒俣宏、角川文庫)”に登場する強力な霊力持ち魔術に精通する悪役。関東大震災を引き起こしたという結構アブナイ人。1988年に嶋田久作が主演で映画化されるなどけっこう流行ったんだけど、まだ読んでないな~~ これから読みます。
(*4)南極夏彦テイストのノリ
 京極夏彦の”南極探検隊シリーズ(集英社)”に登場する簾ハゲ。最初は単なる四流小説家だったのが、どんどん妖怪化しているような・・・
(*5)京極堂の蘊蓄のっけて
 京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ(講談社)”に登場するで古本屋主人にて憑物落とし。京極夏彦の小説が超長いのはこの男が延々蘊蓄語るからといっても過言ではないかと
(*6)冷戦構造の崩壊からこっち
 アメリカ合衆国を盟主とする資本主義・自由主義陣営と、ソビエト社会主義共和国連邦連邦を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立構造。1989年のアメリカのパパ・ブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長がマルタでの会談で終結。ってな話を脚注で書いとかんと、若い人にはわからんかもねぇ。なんたってもう四半世紀も昔の話だし・・・

ハンドメイド 宇宙のロマン、ソフトでもハードでも(進め!なつのロケット団/増上寺 天の川ライトアップ2017)

 ども、”無限に広がる大宇宙(*1)”なおぢさん、たいちろ~です。
 7月7日と言えば”七夕”。仙台在住が長かったうちの奥様は8月と思ってましたが(*2)。あんまし天文とかに詳しくない私でもこの日だけは”宇宙のロマン”みたいな話題に乗っかっちゃうモンです。
 世の中に”鉄”と呼ばれる鉄道オタクがいますがこの趣味も”乗り鉄”、”撮り鉄”、”録り鉄”、”車両鉄”、”駅弁鉄”(*3)と人それぞれのようですが、天文マニアってのもいろいろバリエーションがありそうです。オーソドックスな天体望遠鏡で宇宙を観察する”見上げてごらん、夜の星を派”、宇宙飛行士を目指す”宇宙兄弟派”といったハード系から、星座に思いを馳せる”聖闘士派”、今や市民権を得たと言っても過言ではない(過言かな?)”SFヲタク”などソフト系まで。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな天文マニアな趣味より、ハード系な話”進め!なつのロケット団”とソフト系な話”増上寺 天の川ライトアップ”のご紹介であります

写真はたいちろ~さんの撮影。増上寺 天の川ライトアップ。
分かりにくいですが、上左が増上寺大殿、中央上の青く光っているところが東京タワーです

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【本】進め!なつのロケット団(あさりよしとお、白泉社)
 小学生たちが集まってロケットを作るという”なつのロケット(あさりよしとお、白泉社)”というお話から、リアルでロケットを作っちゃうという”なつのロケット団”(キャラクターは”なつのロケット”と同じ小学生)のお話に。
 著者は”まんがサイエンス(*4)”の著者でもあるあさりよしとお。”宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団(あさりよしとお、学研プラス)”というのもあります(まだ読んでないけど)
【旅行】増上寺 天の川ライトアップ2017
 正式名称は”増上寺七夕祭り 和紙キャンドルナイト2017”。2017年7月7日に増上寺境内で開催。企画運営は多摩大学 村山貞幸ゼミ 日本大好きプロジェクト
 三解脱門(正門)から大殿(本堂)までの全長80mに約2,700ケの和紙キャンドルを並べて天の川を表現したもの。けっこう綺麗でしたよ!


 ということで、ハンドメイドでロケットを作っちゃうというハードな話から。
 七夕といえば宇宙ネタってことでしょうか、7月6日に”ホリエモンロケット 7月29日打ち上げ 成功すれば民間初”つ~ニュースが出てました。内容を要約すると、宇宙ベンチャー”インターステラテクノロジズ”が開発した小型ロケット(直径約50センチ、全長約10メートル、重さ約1トン)を7月29日に打ち上げると発表、高度100キロ(大気圏と宇宙空間の境界)まで上昇し、通信試験などをするのが目的、成功すれば民間単独によるロケットの宇宙空間への到達は日本初”といったもの。なぜホリエモンが出てくるかというと、本書の”なつのロケット団(リアルのほう)”が始めたプロジェクトがインターステラテクノロジズの前身で、さらにインターステラテクノロジズを創業したんが元ライブドア社長の堀江貴文からです。

 ”莫大なコストのかかる宇宙開発を民間企業なんかでできるんかい?!”と思われるかもしれませんが、実際やっちゃってる訳ですし。ただし、これはペイロードなり到達高度なりをかなり制限しているからです。このへんの話が本書の”誕生秘話 なぜ我々はマンガの中のロケットをリアルに作りはじめてしまったのか”に詳しく出ています。
 日本独自の有人宇宙飛行プランを提唱したものの国家に受け入れられなかったメンバーが”じゃあ、民間で有人ロケットを上げちゃえば”という話に。で、ホリエモンを巻き込んでロシアから買ったらと見積もりしたら足下見られて想定の10倍以上の見積もりに。ここでホリエモンからの提案

  自分の手で作るんだよ
  たとえ実用にならなかったとしても・・・
  選択肢があるとなれば相手も無視できない
  それにロケットエンジンの何たるかを知らない人間が交渉などおこがましい
  ロケットエンジンについて技術的な方向から語れない人間が
  対等な話ができるわけないじゃないか

 この発言、ホリエモンって実はすごいんじゃないかと。”選択肢を作るため”、”技術的なバックボーンをもって交渉力を高める”って、言うのは簡単ですが実際にやるってのはけっこう大変なことですし、そもそもなかなか発想しないでしょ!
 その後、ホリエモン逮捕だとかなんだとかあっていったんプロジェクトは挫折するんですが、夢が捨てられない有志が集まってプロジェクトが再起動(*5)。で、今日につながると・・・

 本書は”民間(小学生)によるハンドメイドのロケット開発”ていう内容なんですが、成功したり失敗したりと紆余曲折ありますが、やっていることは意外に地味。まあ開発なんてそんなもんでしょうが・・・ でもけっこう面白いんですね、これ。科学的な解説なんで分かりやすくのっかってるし、何のためにこれやんだっけみたいなものも明確。子供向けのマンガっぽいですが、大人の方にもお勧めです。

 さて、ソフトは話つ~ことでハンドメイドで天の川を作っちゃう”増上寺 天の川ライトアップ”のネタです。
 ハンドメイドで宇宙を作るといっても”フェッセンデンの宇宙(*6)”みたく実際に作っちゃうSFもありますが、それはまた別の話。ここでのお話はいわゆる”見立て”です。”見立て”といってもバカにしたもんじゃないです。”プラネタリウム”だって立派な”見立て”でしょ? 重要なのは”見立て”に何を求めるか。科学館にあるプラネタリウムみたいに科学的な正確性を求められるものもありますが、そこそこなら手作りキットだって売ってるし、専門家がやればかなり高度なものでも手作りできちゃうみたい。要は学問的・教育的な観点を求めるか、イメージとして宇宙への興味を高めるか。子供たちが”天の川”というものに興味を持って、実際の天の川を見たいとか(東京ではなかなか見れませんぜ!)、宇宙のことをもっと知りたいと思うなら”見立て”だって充分役にたってるんじゃないかな
 まあ、浴衣デートでちゃいちゃしてるだけのおにいちゃんとおねえちゃんはこのあとホテルでの”良いではないかゴッコ(*7)”のことだけ考えてりゃいいんです。ケッ!

 すいません、取り乱しました。”天の川ライトアップ”は”日本大好きプロジェクト”という伝統文化伝承って位置づけで”天文”ってカテゴリじゃないんでしょうが、”伝統文化”に興味を持つ人が出てくればそれはそれでOKでしょう。
 すなおに”綺麗”ってだけでもまた良しなんでしょうね

 来年も開催されるかどうかは分かりませんが、JR浜松町駅、地下鉄御成門駅や大門駅から歩いて行けますし、21時と東京近郊の人なら会社が終わってからでも行けますんでご興味のあるかたはぜひどうぞ

《脚注》
(*1)無限に広がる大宇宙
 ご存知”宇宙戦艦ヤマト”のナレーション。このアニメのパート1の放映が1974年だから、もう40年以上もなるんだな~ 1978年公開の映画”さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち”のリメイク版”宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち”が2017年に公開開始。脚本が福井晴敏となるとやっぱし観ちゃうんだよな~~~
(*2)仙台在住が長かったうちの奥様は8月と思ってましたが
 東北三大祭りの一つ”仙台七夕”は旧暦なので8月6~8日に開催。関西出身ですが仙台在住が長くなると、意外と簡単にカレンダーが上書きされるようです
(*3)”乗り鉄”、”撮り鉄”~
 電車での旅行を楽しむ”乗り鉄”、鉄道や風景の写真を撮りまくる”撮り鉄”、発車メロディーや車内放送を録音する”録り鉄”、キハだのクハだのにやたら詳しい”車両鉄”、電車というよりグルメ系?な”駅弁鉄”。
(*4)まんがサイエンス(あさりよしとお、学研プラス)
 学研の”5年の科学”、”6年の科学”などで連載されていた科学学習漫画。本来は子供向けなんですが、大人が読んでも面白いしためになる本。お勧めです。
(*5)夢が捨てられない有志が集まって~
 あさりよしとおがプロジェクトを受けた理由
  まー 世の中にはやっていい事と、やったら面白い事がある・・・
  がモットーだしな

 いいですな~~、このノリ!
(*6)フェッセンデンの宇宙(エドモンド・ハミルトン、河出文庫)
 アメリカのSF作家エドモンド・ハミルトンによる短編SF小説。天文学者フェッセンデンが実験室で人工の宇宙を作っちゃうというお話。科学者のはずのフェッセンデンが神様モードになっちゃうというのが秀逸です
(*7)良いではないかゴッコ
 別名”帯クルクル”
  拉致された町娘:あれ~、お殿様、お戯れを
  お殿様    :良いではないか、良いではないか
(以下自主規制)

外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな(クラウド時代の思考術/狐)

 ども、広大なネットにたゆたうおぢさん、たいちろ~です。
 ”攻殻機動隊 S.A.C.(*1)”というアニメにこんなシーンが出てきます。電脳化という技術で人間の脳とインターネットがダイレクトに接続されている未来。通称”笑い男事件”とよばれるサイバーテロ事件の首謀者”笑い男”と、その事件を追う公安9課の”草薙少佐”が図書室(草薙少佐曰く”まるで情報の墓場”)で対峙する場面での会話ですが、なんせ会話に出てくるのがドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフにフレドリック・ジェイムソンに大澤真幸(*2)。後から登場した公安9課の”荒巻課長”の一言がこれ。

  さっきから聞いていたが、外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな

 その通りで、私もまったくついて行けませんでした。
 最近のネット技術だとダイレクトに脳と接続まではいきませんが、テキストのみならず会話や画像なんかも検索できる社会にはなっとりますが、だからといってそれが知的な会話や判断に結びつくかどうかはまた別。
 ということで、今回ご紹介するのは、クラウド化する社会と知性のお話”クラウド時代の思考術”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。京都”伏見稲荷”で見かけた狐の絵馬です
多くの絵馬がいろいろ見つめている図はちょっと象徴的かも

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【本】クラウド時代の思考術(ウィリアム・パウンドストーン、青土社)
 ”検索”によりさまざまな情報が調べれる現代における知のあり方をまとめた本。
 原題は”Head in the Cloud:Why Knowing Things Still Matters When Facts Are So Easy to Look Up(クラウドの中の頭脳。事実を調べるのがとても簡単である時、まだものを知っていることが重要ですか
 邦題で見るとなんかのノウハウ本のようですが、これはミスリードじゃないかなぁ
【動物】
 ネコ目イヌ科イヌ亜科の一部。狭義にはキツネ属のこと。
 本書ではキツネを”さまざまな要素を取り入れる折衷主義者で、多くのアプローチに開かれていて、矛盾をこともなく容易にこなすことができる”象徴として出てきます。(これに対するのが”ハリネズミ(*3)”)


 本書から面白かったトピックをいくつか

〔無知の人は自分の無知を知らない:ダニング=クルーガー効果〕
 ”ダニング=クルーガー効果”というのは心理学者のダニング教授と大学院生のクルーガーが1999年に発表した”未熟さと無知 自分の無能力を認識できないことが思い上がった自己評価を導く”という実も蓋もない論文によるもの。簡単に言うと

 知識や技術にもっとも欠けた者の特徴は、知識や技術の欠損をまったく理解できない
 獲得点数の低い人は高い自己評価をし、高い人は低い自己評価をする

というもの。確かに知らないということを知らなければ”自分は知ってる”と勘違いすることもあるんでしょが、予想以上の結果だったとか

〔知識がある人のほうが所得が高い傾向がある(但し書き付き)〕
 質問事項にもよりますが、知識を豊富な人々はたくさんのお金をかせぐんだとか。
 いろんなパターンで実証してみるとそんな傾向があるようで、同じモデル(パターン)の人で比較したケースでは倍ほど違うなんてのが記載されてます
 これは、知識のある人のほうがない人よりさまざまな質問に対してクリエイティブな解決策を導き出せるからとか、お金の扱いを学んでいるとかなんて理由が指摘されています。

〔相関関係と因果関係は違う〕
 上記の但し書きがこれ

  相関関係は因果関係を証明していない
  相関関係の欠如を因果関係が間違いであることを証明する

というもの。上の例だと知識があることが理由で裕福になっている可能性以外に、裕福だと余暇の時間が十分にあるのでニュースを観たり本を読んだりできるので知識が豊富とか、親が裕福(第三の理由)で子供が金持ち、知識があるという理由も推察されています。
 概して統計データってのは事実は同じでも解釈が違ったりするんで、このへんもちゃんと突っ込んでいるのが好感できます。

〔学ぶことの意義:グーグル効果〕
 覚えておかなくてもアーカイブで保存できる(グーグルみたいの)だと非常にしばしば忘れ去られてしまうってこと。まあ”検索すりゃかわる”と思えばいちいち記憶しようなんて思わないのもわかりますが。
 受験生時代(はるか昔ですなぁ)だと、まず”覚えること”が山ほどあったんで、”なんでこんなこと覚えにゃならんのだ!、これを覚えてなんの得があるんだ!!”と思ったもんですが、今の若い人ならなおさらでしょうなぁ。
 知識を身につけるためにかかるコストが、知識を身につけたことによる利得を上回ることはままあること(てか、ほとんどの知識ってそうじゃね?)。まあ、覚えなきゃ受験に合格はしないんですけどね・・・ 本書でもロンドンのタクシードライバーが仕事に付くために要求されるテストがGPSナビにとって代わられるなんて話が出てきますが、クラウド化すりゃますますこのアンバランスが拡大するんでしょうね

〔学ぶことの意義:学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす〕
 上記に対しての救いの言葉(かな?)がこれ
 知識と所得の相関関係について考えられる説明として

  学習が認識能力を改善するということだ
  この能力はほとんどどんな仕事―― 一生従事する職業も含めて ――にも役に立つ
  学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす

ってのが書いてます。ちょっとは気休めになりますか、受験生のみなさん

〔キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風に。だが・・・〕
 本書の最終章には、キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風にさらされていて、ハリネズミのような大きな概念に関連づけるやり方のほうが支持されているてな記述があります。なぜなら情報はクラウド(ネット)にあって必要に応じて利用できるから。本書の結論としてはこれではダメなんだとか。これは情報をきちんと持っていることは、その文脈についても情報をもっているということ。

  それ(文脈)は、個々のものの評価を可能にしてくれ
  われわれが知らないことに、きわめて重要な洞察を与えてくれる全体への展望だ

 まあ、ブチブチの情報だけではなくって、全体の流れを含めた情報や認識能力がなきゃ、ネットにつながってるだけじゃ不十分ってことなんでしょうかね

 まあ、冒頭の笑い男と草薙少佐の会話もみたいに電脳空間にダイレクトにつながってなけりゃ成立しそうにないってのもありますが、これって単なる知識のひけらかしじゃないんですね。

  草薙少佐:それは経験から導きだされた貴方の言葉?
  笑い男  :Yes

 ネットと検索がはびこる世の中、この質問ってより重要になるんでしょうね、きっと

《脚注》
(*1)攻殻機動隊 S.A.C.(原作 士郎正宗、監督 神山健治、バンダイビジュアル)
 正式名称は”攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX”。現代のネットワーク社会が究極進化するとこうなりそうな未来社会を描いたSF。テレビ版は全26話ありますが、160分にまとめた総集編”攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man(バンダイビジュアル)”もありますので、初めての方はこちらをどうぞ。上記のセリフは総集編版のです。
(*2)ドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフに~
ドアノー:ロベール・ドアノー。フランスの写真家
J.D.サリンジャー:アメリカ合衆国の小説家。”ライ麦畑でつかまえて(白水社)”など
ジガ・ヴェルトフ:ソビエト連邦の映画監督。”カメラを持った男(メディアディスク)”など
フレドリック・ジェイムソン:アメリカの思想家。”政治的無意識(平凡社)”など
大澤真幸:日本の社会学者。”ナショナリズムの由来(講談社)”など。
 すいません、どれも読んだり観たりしてません。
(*3)ハリネズミ
 ハリネズミ目ハリネズミ科ハリネズミ亜科に属する哺乳動物の総称。
 本書では”すべてのことを、ある一つの中心となる大きな概念に関連づけるエキスパート”と記されています

”小説家で食っていけるか?”どうかを考えるには参考になる本です(作家の収支/ダンボー)

 ども、密かにベストセラー作家になることを夢見るおぢさん、たいちろ~です。まっ、妄想ですけど。
 ”ブロガー”を強引に”表現者”だと言いきってしまえば、”小説家”だの”エッセイスト”なんぞになって見たいと思うこともあろうかと。まあ、小説を書くだけだったらがんばりゃできんこたなさそうだし、発表するだけだったら、自分のホームページに掲載すりゃ”発表”したと言いきれるし。ここまではOKなんですが、”××家”と名乗る以上食えないまでも、収入になってなきゃ恥ずかしいかと。このハードルってけっこう高そうなんですな。そもそも作家ってどれくらい稼いでるんだっけ? ってことすらよくわかりません。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな作家の収支報告に関するお話”作家の収支”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。

2015国際ロボット展(*1)”で見かけた”ロボダンボー”です。

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【本】作家の収支(森博嗣、幻冬舎新書)
 ベストセラ作家と呼ばれながらこれといった大ヒット作もないマイナな作家(本人申告)な”森博嗣”による、自身の収入(印税+もろもろ)と支出(経費)に関する考察
 ちなみに、19年間に出版した本は278冊、総部数約1400万冊、稼いだ総額は約15億円だそうです。
【道具】ダンボー
 あずまきよひこの漫画”よつばと!(*2)”登場するロボットというかダンボール製の着ぐるみ。よつばの友達の恵那とみうらが作成。写真の”ロボダンボー”はダンボーをホントにロボットにして動かしちゃうというお茶目なスグレモノ。作製している”ヴィストン”のhpによると11個のサーボモータによりうなずく、首をふる、首をかしげるなどの動きが可能とのこ
と。

 先に謝っときます。実は森博嗣の本読むのこれが初めてで、代表作の”すべてがFになる(*3)”すら読んでおらず、森雅裕(*4)とごっちゃにする始末。心入れ替えて今度読みます。

 森博嗣という人は本人はベストセラ作家ではないと言ってますが、実際には2010年の”Amazon10周年記念 人気商品ランキング”の和書部門20名に選出され、Amazon仕様の”ダンボー”(*5)を贈呈された作家ですんで、まあ、日本でも有数の作家のひとりと言えます(すいません、私はまだ読んでないけど)。

 さて、本代もとい本題に戻って作家の収入の話。本書によると、大まか収入は”印税”、”原稿料(雑誌への掲載、ブログ等)”、”講演料”、”著作権料(漫画、映画、ノベルティ他での使用許諾)”、”対談料”など、どの収入が多いかは人それぞれだそうです。原稿料は1枚4,000~6,000円ぐらいだそうで、ベストセラー作家とそれ以外の人の差が1.5倍程度しかないってのは大きいと見るか小さいと見るか・・・

 よく名前の出る”印税”ですが、これは本の値段に対する作家の取り分。ですんで

 印税 =(本の単価 × 売れた冊数) × 印税率

つ~計算になります。印税の率は出版物の形態により異なっていて

 ・単行本   :10%(雑誌などに発表された場合)
 ・文庫/ノベルズ:10%(最初から文庫だと12%)
 ・ライトノベル:8%(イラストレーター 2%)←噂です
 ・書き下ろし :12%
 ・電子書籍  :15~30%(定価の15%、最終価格の30%)

 面白いのが、どの作家や売れ行きに関わらず印税率は一定で、印税は印刷された部数に対して支払われるんだとか(電子書籍は実売数に対して支払われる)。
 この式でいうと、とにかく”本が売れなきゃお金にならない”、逆に言うと”本が売れれば「不労所得」” まあ、本書でも”不謹慎な言い方”とことわっていますが、作家は追加の労働なしで、出版社は輪転機を回せば商品ができる(限界コストが低い)ので、美味しい商売になると。     松田奈緒子の漫画”重版出来!(*6)”で増刷が決まると大喜びしてますが、作品が世に中に受け入れられたってのもありますが、実利的な部分も大きいんでしょうね。

 ここまで書いててふと思ったんですが、本の形ってこれからどうなってくんでしょう? 一般的には、”単行本→ノベルズ→文庫”の順に出版されて、お値段も”単行本>ノベルズ>文庫”になってます。販売部数もほぼほぼこの順番みたい。でも電子書籍化が進んでいる昨今、本の形にこだわる必要があるんでしょうか?
 ”ライトノベル”というジャンルはマーケットが中高生中心(まあ、大きいお友達もいますが)ってこともあるのか、ほとんど文庫版で出版されているみたいですが、これって”単行本”で出版する(電子書籍版なら単行本の価格で販売する)のってどうなんでしょう?
 最近読んだ初野晴の”惑星カロン(*6)”って本があるんですが、これは”ハルチカシリーズ”っていう青春ミステリーの1冊。これを”ライトノベル”ジャンルとするかどうかはありますが、高校生が主人公のミステリーで、実際読んでみた感じはラノベっぽいし、深夜アニメ化やマンガ化で萌え絵系にもなっているんで、まあ中高生がメインターゲットだとは思います。この本の表紙の変遷ってのがユニークで

 単行本:女子高生の写真が表紙など
 文庫本:表紙イラスト 丹地陽子
 文庫本:表紙イラスト 山中ヒコ(現在はこのバージョンに戻ってます)
 文庫本:表紙イラスト アニメ版(P.A.WORKS制作のアニメバージョン)

実物が”その日、その時のはまり事”のhpに載ってたんで見比べると、出版社側が”文芸→ジュブナイル→一般小説→ライトノベル→一般小説”として売ろうとしてる意図がなんとなく透けて見えそうな・・・
 でもね~、中高生に売りたいんだったら初手から低価格の文庫と電子書籍で出してくれたっていいんじゃないかね~ とか思っちゃいます。まあ、おぢさんも読んでるけど。
 1冊ごとの収入を増やすか、価格を下げて売れる数を増やして収入を伸ばすかは出版社と作家の戦略なんでしょうが、読み手の側から見ると単価を下げてもらった方が助かるんですけどねぇ

 さて、小説家になりたいと思う人にとって最大の問題は”小説家で食っていけるか?”かどうかでしょう。他に収入があって別に印税だけで生活することができればいいんでしょうけど、”プロ”と名乗りたいならそれなりの収入を小説家として確保したいもの。そのへんの話を含め、本書は役立ちそうです。
 この業界に興味のある方は、ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)2015国際ロボット展
 2015年に東京ビックサイトで開催されたロボットショー。446社が参加し、人型ロボットから、最新の産業工作機械などいろんなジャンルのロボットが展示・デモされていてけっこう楽しめました。次回は2017年11月に開催されるそうです。hpはこちら
(*2)よつばと!(あずまきよひこ、電撃コミックス)
 5歳の女の子”よつば”と”とーちゃん”が織りなす日常を描いた漫画。トラマチックな何かがおこる訳でもなく、爆笑するようなネタがある訳でもないにもかかわらず、面白んダよな~~。読むとなんだか幸せな気分になる本です。
(*3)すべてがFになる(森博嗣、講談社文庫)
 犀川助教授とお嬢様学生萌絵によるミステリィ。森博嗣のデビュー作にして最大のヒット作。今、読んでます。総出版部数 約78万部、印税合計6,000万円(本人申告 電子書籍除く)
(*4)森雅裕
 ”モーツァルトは子守唄を歌わない”で江戸川乱歩賞を受賞した推理小説家。クラシックをテーマにした作品なのに講談社文庫版の表紙が”パタリロ”の魔夜峰央というアンバランスさで、こっちも読もうと思ってたのにまだだな~ (講談社文庫版はすでに絶版。ワニの本版で読むことはできるみたいです)
(*5)Amazon仕様の”ダンボー”
 ダンボーの頭が”Amazon”の箱になっているフィギュア。本書には写真が掲載されています。”Amazon”=ダンボール箱でお荷物届くイメージなんで、けっこう素敵なアイデアだと思います!
(*6)重版出来!(松田奈緒子、ビッグコミックス)
 新人女性漫画編集者”黒沢心”を主人公にしたお仕事系コミック。黒木華の主演でテレビドラマ化。ちなみに”じゅうばんでき”ではなく”じゅうはんしゅったい”と読みます
(*7)惑星カロン(初野晴角、角川書店)
 清水南高吹奏楽部に所属する上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)はふとしたきっかけで中学3年生のフルート奏者”倉田あゆみ”と知り合う。彼女はコンクールで”惑星カロン”の演奏許可をもらう為に新藤誠一のブログにアクセスする。誠一は演奏許可のお礼にある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。この謎ときに協力することになったハルタとチカだが・・・
 ハルタとチカを主人公とする青春ミステリー”<ハルチカ>シリーズ”第五巻に収録

チャットボットで蘇った魂は、人を幸せにするのでせうか?(惑星カロン/ブラックジャック/ロボホン)

 ども、さすがにこの年で女子高生ボット(*1)で遊ぶのはな~~と思っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日、チャットボットの説明ってのを聞きました。チャットボットつーのはLINEなどのチャットのインタフェースを使ってロボット(人工知能)が会話をしてくれるというシステム(サービス)チャット+ロボット=チャットボットだそうです。
 説明を聞いた個人的な感想としては、フレーム問題が発生しにくいように問題を設定してやれば実用には耐えうるかな~ってレベルには達しているようです(*2)。”フレーム問題”ってのは、人工知能が問題解決するのにあらゆるケースを全て想定してると情報処理できないので、問題の枠(フレーム)を設定してあ~でもないこ~でもないやりだすのを回避しないといけないという考え方。人間だと”常識”を使って無意識にやっていることを人工知能だと意図的に設定しないといけないつ~話です。
 最近は何度目かのAIブームだそうで、IBMのスーパーコンピューターがアメリカの”ジェパディ!”というクイズ番組で人間代表相手に優勝しただの、プロ棋士とコンピュータソフトによる”将棋電王戦”でプロ棋士に勝っただの、”ロボットは東大に入れるかプロジェト”で偏差値57.1をたたき出しただの(*3)、いろいろ盛り上がっています。
 実際、範囲を限定すればかなりのとこまでできそう。ですが、この先何をやるかて~と”実在の人間の人格をモデルにシミュレーションできないか?”なんてことをやりだしそうかな~なんて思っています。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなソフトの出てくる話”<ハルチカ>シリーズ”より”惑星カノン”であります。
 ※今回の話はネタバレを含みますので、まだ読まれていない方は本書を読んでからどうぞ


写真はたいちろ~さんの撮影。ロボット型携帯電話”ロボホン”です。キハチ青山本店で開催された”ロボホン・カフェ”にて

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【本】惑星カロン(初野晴角、角川書店)
 清水南高吹奏楽部に所属する上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)はふとしたきっかけで中学3年生のフルート奏者”倉田あゆみ”と知り合う。彼女はコンクールで”惑星カロン”の演奏許可をもらう為に新藤誠一のブログにアクセスする。誠一は演奏許可のお礼にある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。この謎ときに協力することになったハルタとチカだが・・・
 ハルタとチカを主人公とする青春ミステリー”<ハルチカ>シリーズ”第五巻に収録
【本】ブラック・ジャック(手塚治虫、秋田文庫)
 ”忠明”は愛する恋人”さより”を電車事故で喪ってしまう。忠明は天才外科医”ブラック・ジャック”に対し、テープに残されたさよりの声をペットのプードル”ヌーピー”にしゃべらせて欲しいと依頼する。気が進まないブラック・ジャックだが、声をミニテープレコーダーにセットし犬の声帯に埋め込む手術を施すが・・・
 ”犬のささやき”より。秋田文庫版第11巻に収録
【道具】ロボホン
 SHARPの提供するロボット型携帯電話おしゃべりするロボットのイメージキャラクターとして登場いただきました(ロボホン自体はチャットボットではありません
 身長19.5cmという小型ながら、歩くわ踊るわ喋るわとめちゃかわういロボット。デザインはロボットクリエーターの第一人者”高橋智隆”氏。携帯電話なのでちゃんと電話出来るし、おでこにプロジェクタがついていて、画面やカベに写真や動画を投影することもできます。最近はロボホンに話しかけると日記にまとめてくれる機能なで出来たとか。いたれりつくせりです。


 今回の”実在の人間の人格をモデルにシミュレーションできないか?”というネタですが、本書にでてきた内容をふまえ、3つに分けて考えてみます

〔人格をシミュレーションできるか?〕
 本書には”デジタルツイン”というAIが登場します。これは既に死んでしまっっている人の情報を埋め込んでチャット上で生き返らせようというオープンソースソフトウェア。本書の説明だと

  行動、思考、癖、声をコンピュータに模倣させ意思決定を行わせる技術

ということになります。死者の思考をコンピュータに移植して復活させるというアイデアそのものはSFなんかではけっこう昔からありますし、日本のTVアニメの最初期作品”8マン(*4)”なんていう名作もあります。
 まあ、お話するだけだったら、現在でもけっこういいセンいってそうですが、問題は特定の人格にどこまで似せられるかということ。本書でのミソはこのデータを

  メールやブログの記録、フェイスブックといったソーシャルネットワークでの情報
  パソコンやスマートフォンでの操作履歴などから集めたデータを基に
  自分自身の物の見方、考え方、癖、好き嫌いを学習させていきます

こう言われるとなんとなくできちゃうかな~って気になります。

〔シミュレーションした人格はオリジナルの人格と同じものか?〕
 これには”正直”と”成長”というのが絡んできます。
 ”正直”てのは、上記のようにネットに書かれた情報がはたして本心なのかどうかというテーマ。ブログやFBのようなデータは誰かに見られることを前提に書かれているのであくまで”表現”でありどうしても修飾や虚勢がまじっちゃう、これは自分だけのために書かれる日記とは本質的に違うものではないかという疑問です。
 ここではハルタ達の音楽の先生による会話なので

  モーツァルトやシューベルトの楽譜は読めても、
  彼らの日記の秘めたる内容まで読み解くことはできないと?

確かに、モーツァルトはあんなにすばらしい音楽を残していますが品行方正とは言い難い人だったようですし、文学の世界なんて文豪レベルの人でも人格的にはどうなのよ? って人が山ほど出てきます。

 ”成長”の問題も実はやっかい。特に死んじゃっている人の場合は。本書の中でデジタルツインの欠点に”復活を遂げた人格は年を取らない”ってのを上げていますが、これは正確ではないんじゃなかろかと。会話によるデータの蓄積や、オープンソースでロジックをアップデートしていけば学習=成長は起こります。むしろ成長した結果がオリジナルと乖離してないかどうかを検証できないこと。だってオリジナルは既にこの世の人じゃないんだし・・・

〔シミュレーションした人格は人を幸せにするか?〕
 非常に漠然とした問いですが、これは目的をどう設定するかにもよるでしょうか。本書での”デジタルツイン”の利用目的を

  後継者が助言を必要をしたとき、自分を見失ったとき、判断に迷ったとき
  イエスかノーかだけ導いてくれればいい
  私たちの心は弱い。だれだって身近な人間を亡くせば
  『あのひとだったらどうするのか?』
  と問いたい瞬間や転機はおとずれるはずです

まあ、気持ち的にはわからんでもないですが、それが良いことかどうか、生きてる人間のエゴイズムではないかという疑問が・・・
 この話でふと思い出したのが、ブラック・ジャックの”犬のささやき”という作品。犬に恋人の声を喋らせた忠明ですが、同じ言葉しか喋らないヌーピーにだんだん飽きてきちゃいます。さらに新しい恋人ができると、その恋人の為にヌーピーを捨てに行くことに

  やれやれ これでやっとさよりの亡霊からのがれられた・・・

ですから、まあひどっちゃひどいですが、自分がそうならないかどうかと問われたら、どうなんでしょうねぇ。 愛する人を失った悲しみを乗り越えて前に進むってことと、愛する人を忘れることとは別なことだと思うんですがね、冷たいかもしれませんが・・・
 結局、チャットボットを使って魂を蘇えらせたとしても、それが人を幸せにするかどうかは結局わかんない。それは技術レベルやデータの揺らぎより、移ろいゆく人間の心のゆらぎのほうが大きいってことでしょうか・・・

 ”惑星カノン”は”<ハルチカ>シリーズ”の中でもかなり異色作ですが、これはこれとしてこっこう面白かったです。

《脚注》
(*1)女子高生ボット
 ”りんな”という女子高校生がチャットしているという設定のサービスを、日本マイクロソフトが開発したって話です、やったことないけど。hp等で公開されてるのを見ると確かに面白そう(まあ、面白そうなのを集めてるサイトなんで)。でも、おぢさん世代が電車の中で遊ぶにゃ、ちっと世間様の視線が・・・
(*2)フレーム問題が発生しにくいように問題を設定してやれば~
 主人:番頭さん、金魚が2匹いなくなったんだが、おまえさん知らないかい
 番頭:あたしは食べていませんよ
 主人:誰がおまえが食べたと言った
    縁側に金魚を置いとくと猫が食べてしまうから、高いところに置いとくれ
 番頭:それじゃ、湯屋の煙突の上へ
 主人:私が眺められないじゃないか。金魚鉢を湯殿の棚の上に上げてくれといってるんだ
 番頭:金魚鉢を湯殿の棚の上に上げてきました。
    ところで金魚はどこへ上げましょう?
落語”猫と金魚”より。話はいろんなバリエーションがありますが、これってフレーム問題の例じゃね?
(*3)偏差値57.1をたたき出したの~
 人間のチャンピオンに勝つというのは”あらゆる人間を凌駕する”ということの比喩であって、コンピューターの方が既に凡人では勝てないとこまで行っています。単純計算だと偏差値”57”というのはおおむね上位から1/4(24.2%)。実際の大学入試だと、”関関同立”、”MARCH”など難関校を含む535大学への合格がA判定(合格率80%以上)に相当するそうで、”俺の方が勉強できる!”と胸を張って言える受験生ってやっぱ少数派じゃないかと・・・Yahoo!ニュースより抜粋
(*4)8マン
 原作はSF作家の平井和正と漫画家の桑田次郎。漫画版は1963年に少年マガジンに連載、アニメ版は1964年に放映。”8マン”は凶悪犯により殺された刑事”東八郎”の人格と記憶を電子頭脳に移植し蘇ったスーパーロボットという設定です。

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