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2017年10月29日 - 2017年11月4日

自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと(ナイフを失われた思い出の中に/鶴岡八幡宮)

 ども、心に闇を持つおぢさん、たいちろ~です。
 2016年、17年と平成犯罪史に残るような大事件が立て続けに発生しています。2016年7月には神奈川県相模原市の知的障害者施設で発生した大量殺人事件。19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせたのは戦後では最も犠牲者の多い事件でした。
 2017年は先日神奈川県座間市で発生した連続殺人・死体遺棄事件。男女9人の遺体が見つかったこの事件も連続殺人としては過去最多。前者は知的障害者を後者は自殺願望のある人を対象とするという陰鬱な事件です
 で、ちょっと気になったのが初期の報道におけるイメージの違い。相模原市の大量殺人の容疑者って、当初から”障害者の抹殺”なんていうとんでもない主張をする人物ということが報道されていて、犯行=容疑者像(*1)もなんとなく納得感みたいな空気があったんですが、後者はあんまりこれがなかったようで。たまたま今読んでる本でこの報道で感じたような話がありまして。
 ということで、今回ご紹介するのは犯罪にまつわる記者の目の話”ナイフを失われた思い出の中に”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。鎌倉の鶴岡八幡宮です

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【本】ナイフを失われた思い出の中に(米澤穂信、東京創元社)
 ”ヨヴァノヴィッチ”は妹の友人で今はフリーの”記者”である”大刀洗万智”の元を訪れてきた。彼女は浜倉市で発生した16歳の少年”松山良和”が姪で3歳の少女”松山花凛”を刺殺した事件を取材中で、彼もその取材に同行することになる。目撃者があり逮捕された犯人は犯行を認める手記を残している。一見簡単に見える事件だったが、その真相は・・・
 ”さよなら妖精(*2)”に登場する大刀洗万智を主人公とした短編推理小説集。
 ”真実の10メートル手前(米澤穂信、東京創元社)”に収録
【旅行】鶴岡八幡宮
 本書で事件が発生したのが浜倉市。モデルになっているのは記載の内容から鎌倉市と思われます。松山良和が逮捕されたのが”浜倉八幡宮”で万智はヨヴァノヴィッチに”神殿”と説明しています。神社の建物なので”神殿”っていうのは間違いじゃないんでしょうが、日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・(*3)


 座間市の死体遺棄事件の初期での報道の違和感ってのは”容疑者を知る人”へのインタビューの答えが”普通にあいさつする普通の子”、”おとなしくていい子”といった”善良な普通の知人”だったこと。このような常軌を逸した事件の容疑者が”普通の人”でSNSを使いこなす今ドキの若者だったってことに驚きを感じたのは私だけじゃないと思うんですがどうでしょう?
 宮﨑勤の事件(*4)なんかが代表的な例なんでしょうが、”やっぱりこんな人間がこんな犯罪をするんだ”的な微妙な納得感、露悪的に言うと安心感ってのが社会にあったんじゃないかと。まあ、善良だと思っていた隣人が実は凶悪犯だと思うより、”あいつはヤバそう”と思って防衛に出たほうが精神的に安定できるってのはわからんでもないですが、それはそれで危険なこと。偏見と憎悪がかえって社会的な不安を招いている例は歴史に数多くあります。まあ、現代もそうですが・・・

 で、本書ですが大刀洗万智がこの事件を追いかける理由ってのが、容疑者である松山良和の本棚が社会にさらされ、それが大量でも特別異常なもでなかったにも関わらず、趣味と犯罪が結び付けられて、多くの人嗜虐的な幼児性愛者と信じてしまって、それが殺人の動機の根幹根幹であると考えられていること、それをマスコミがそのように伝えたこと。 事態は松山良和の手記が無加工のまま流されたことによって事態はさらに深刻に。

 大刀洗万智がヨヴァノヴィッチに”記者の仕事は人間の器官の延長か?”という問答をするんですが、ヨヴァノヴィッチが”目、でしょう”という回答に対して大刀洗万智はこんな反論をしています

  目とは、人が見たいと思っているものを見るための器官なのです
  錯覚にまみれ、そこにあるものを映さない。
  それは決して、目という器官の物理的限界によるものではありません
  見たくないものをカットし、見たいように見るからこそ
  そうしたことが起きるのです

だから真実を明らかにするのは”目”の仕事ではないと。だから記者は”目”ではないと。だから、”目”の言い分としてではなく記者は事実は加工されるべきだと。

 念のためいっときますが、だから偏向報道やフェイクニュースがいいと言ってるわけではないですし(そんなのはもってのほかです!)、そもそも偏見を持つなということ自体人間が多かれ少なかれヒューリスティクス(*5)な思考方法をとる以上、まったく排除するのは困難でしょう、たぶん。

 重要なのは、自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと。この事件の真犯人が容疑者だっかたどうかという話ではなく、気をつけないと99人の断罪と1人の冤罪を生み出しかねないな~という自戒をこめて書いてみました。

 先日、朝日新聞の記事で”「理想の貧困」に苦しむリアル当事者”って話が出てましたが、これは自分のイメージにある”理想の貧困”と当事者の状況が合っていないと”お前は貧困じゃない”と批判する”貧困たたき”になっちゃうと。もともとは善意からなのかもしれませんが・・・ うっかりすると自分もこの手の話をやっちゃいかねないので、ちょっと怖くもあります。

 本書は”さよなら妖精”の続編ですが、これだけ読んでも大丈夫。
 ご一読のほどを

《脚注》
(*1)容疑者像
 ”容疑者”は犯罪を犯した容疑があるとして捜査対象になっていてまだ公訴が提起されていない者、法律用語では”被疑者”。起訴された後は”被告人”。
(*2)さよなら妖精(米澤穂信、創元推理文庫)
 1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる(amazon.comより)
(*3)日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・
 私の場合だと”神殿”ってパルテノン神殿あたりをイメージしちゃうんですが・・・
 一般的に神体を安置する社殿は”本殿”、”本堂”あたりでしょうか。鶴岡八幡宮のhpだと本殿を日本語では”本宮(上宮)”、英語だと”Main Shrine(主となる聖なる場所や建物)”になっています。
(*4)宮﨑勤の事件
 1988年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。犯人の宮﨑勤がおたく・ロリコン・ホラーマニアと報道されたことで”オタクバッシング”の元となりました
(*5)ヒューリスティクス
 必ず正しい答えはだせないにしても、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法のこと。答えの正しさは保証しないかわりに、答えを出す時間が少なくできます。行動経済学なんかの本を読むとよく出てきます。

この世界は精巧で美しすぎるんだ。何を撮ったって正解にきまっている(東京シャッターガール/手塚治虫記念館)

 ども、小学校の時には写真部だったおぢさん、たいちろ~です。
 というわけでもないんですが、高校時代に写真部の先輩や同期の知り合いがけっこういます。まあ、写真部というより光画部(*1)といったメンツでしたが・・
 私自身もけっこう写真を撮るほうですが、どっちかつ~とブログのネタ用。このブログ自身が本やDVDにからんで花とか風景とかを掲っけてるんですが、文書が主で写真が従って感じなんで。お世辞にも真面目に写真に向き合ってる人とは言えんでしょうが・・
 芸術だろうがブログのネタだろうが綺麗に撮れるにこしたことはないし、人の心の琴線に触れるものであればなおのこと。でもまあ、どんな写真であっても、写真への人の接し方は人それぞれあってもいいんじゃないかと思いますけど、どうでしょうね。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな写真が好きな高校生を主人公とした漫画”東京シャッターガール”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。宝塚市の”手塚治虫記念館”です
手前は歩さんも撮影していた”火の鳥”のモニュメント

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【本】東京シャッターガール(桐木憲一、日本文芸社)
 写真部に所属する女子高生”夢路歩(ゆめじ・あゆみ)”。趣味は街の風景やそこにクラス人々や動物を撮影する”街撮り”。同じクラブには”撮り鉄”の玉城(たまき)君やデジカメ派の河合美佳子さん、幽霊部員ながら写真誌投稿の常連と自由奔放な春名窓花さんたち。今日もカメラを片手に街を散策しながら写真に残していきます・・・
【旅行】手塚治虫記念館
 兵庫県宝塚市で約20年間を過ごした手塚治虫のマンガやアニメなどを展示したミュージアム。JR宝塚駅から徒歩8分。なぜ”東京シャッターガール”なのに宝塚かというと、写真部の合宿が宝塚で歩さんと玉城君が訪れているからてのと、作者の桐木憲一氏が手塚治虫先生の長女、手塚るみ子さんとつい先日ご結婚されたので。おめでとうございます


 本書は前々から一度読もうと思ってたんですがamazonのキャンペーンやってたのでイッキ読みしました、いや~名作でしたね。ストーリーもそうですが、作風はどっちかというと静的というか写真的というか。マイブームだった”平凡&陳淑芬(*2)”の画集を思い出しちゃいました。

 さて、写真への向き合い方ってそれぞれですが、本書の人たちの例だとこんな感じでしょうか。

〔出会いや想い出、驚きを記録したい人〕
 誰でも目の前に流れる風景や人々に何がしか感じる一瞬ってのはあろうかと。それを記録にとどめたいと思うってのは写真を撮りたい動機の一つではないでしょうか。歩さんってそんな感じの人でしょうかね。綺麗に撮りたいとか、珍しいものを撮りたいっていうより、そこにある心象風景を正直に撮りたいってことかな。気負いがない分だけ写真を撮ることそのものを楽しんでいるんじゃないかと

〔チョロスナの人〕
 おもいっきし肩の力の抜けているのがチョロスナの人。”チョロスナ”ってのは
宝塚の合宿の時に心斎橋であった撮影研究部の川西君から窓花さんが教わった言葉で”チョロっと撮ったスナップ写真”の事。まあ、カメラはクラブの備品でしかもデコレーションしちゃってる自由な人ですが、写真という点では実はこの人が一番評価が高いんでいかな。写真投稿の常連で、写真甲子園ので優勝するうるま高校の与那原さんから”凄く期待してる”って言われたり。

〔勝負写真の人〕
 チョロスナと対極をなすのが上記のうるま高校の与那原さん。大会に向けて”勝つための写真の撮影”の仕方を先生が指導してくれているんだそうです。常連校の宿命なんでしょうが、技術の向上を勝負の文脈で考えるのってなんだかな~。歩さんは”写真で勝負する”ってことがこの大会で少し分かったといった話をしていますが、歩さんにはあんまし似合わないんでないかと・・・

〔ネットへアップする人〕
 本書は2010年頃からの不定期連載ですから、デジカメやスマホで写真を撮るってのはもう普通だったんじゃないかな? で、写真部はというとさすがに銀塩アナログ派とデジカメ派が半々。この中でも進歩派なのが美佳子さん。バレンタインチョコを撮った写真をネットにさっさと上げるとこなんか、FaceBookやインスタグラムの先駆者(*3)ってとこでしょうか。今はこっちが主流派なのかな

 ”ネットへアップする人”で、ちょっと気になっているのが昨今のインスタグラムを中心とした写真ブーム。2017年度の”ユーキャン新語・流行語大賞”の有力候補に”インスタ映え”が入ってるぐらい盛り上がってます。ただニュースとかで”ここはインスタ映えする若者の人気スポット”とか紹介されるとなんだかな~と思っちゃうのはおぢさんだからですかねぇ。綺麗な写真をみんなに見てもらいたいとか、”いいね”で賛同を得たいという気持ちはOKなんですが、そのために”インスタ映え”を求めて回るのってなんだか写真の楽しみとはちょっと違うんじゃないかな?っと、ちょっと心配。単なるおぢさんのぼやきです、すいません

 思うところ、歩さんのつぶやいた

  時々考えるんだ いい写真ってなんなのかなって

に対する玉城君のお返事

  うーん・・
  答えなんかないんじゃないか?
  俺はこう考えてるよ カメラは「神の目」だってね
  空の色 木々のざわめき 渡り鳥の群れ 街行く人々の表情・・
  どこをどんなに切り取ったって そこには必ず光に映し出された生命の影がある
  アニミズムの精神に近いのかもしれないよ
  神様が七日間で創造したかどうかはわからないけど
  それにしてもこの世界は精巧で美しすぎるんだ
  何を撮ったって正解にきまっている

なかなかの名言だと思います

 本書は予想以上に面白かったです。東京都内の近場が中心の街撮りですんで、近郊の人なら休みの日にカメラでもスマホでも持ってお出かけしようかって気にさせてくれる本
 また、インスタグラムにちょっと疲れた人が休憩して飲む清涼剤にもなるかもです。ご一読の程を

《脚注》
(*1)光画部
 ”究極超人あ~る”(ゆうきまさみ、小学館)の主人公達が所属する高校のクラブ。一般的に言う写真部ですが、個性的なメンバー(+OB)ぞろいのクラブです。
 2017年10月に発売された”アニメと鉄道(旅と鉄道2017年増刊12月号”に飯田線の撮影旅行という本作のOVAが特集されていて、ちょっと驚きました。
(*2)平凡&陳淑芬(ピンファン&チェン・シュウフェン)
 台湾のイラストレーターのご夫婦。一時期はまって画集集めてましたねぇ。今はほとんど絶版ですが2012年出版の”ヒヤシンス”はまだ入手可能なようなので、今度読んでみよう。
(*3)インスタグラムの先駆者
 インスタグラムの登場が2010年10月なのでまさにこの頃。2017年4月には7億人を突破したそうです(公式HPより)

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