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2017年9月3日 - 2017年9月9日

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

ジャック・リーチャー=ハードボイルド+ウェスタン?(キリング・フロアー/偽札)

 ども、ハードボイルドものけっこう好きなあるおぢさん、たいちろ~です。
 夏休みのヒマつぶしということで、DVD大処分。溜まってるのを何本か見まして、その中にトム・クルーズ主演の”アウトロー(*1)”と”ジャク・リーチャー(*2)”の二本立て入ってました。こういうドンパチやってるアクション物ってのもけっこうお気になんですが、wikipedia読んでるとどうも原作と映画ではキャラが違っていると。原作だと巨漢でダークなキャラを小柄で明るいトム・クルーズが演じているということで(*3)、こりゃ原作も読んでみんことには!
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第一作”キリング・フロアー”であります。
 しかし、映画版の原作は9作目だというに律儀に1作目から読みだすって、ビブリオマニアの因果なとこなんでしょうかねぇ


写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀海軍基地にあるATMです
偽札の写真を載っけたかったンですが、そんなの持っていると警察きそうなんで・・

P8050463


【本】キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・
【道具】偽札(ニセ札)
 偽造貨幣。細かく言うと偽造された貨幣が”偽金(贋金)”でそのうち紙幣の偽造が”偽札”。当然ながら偽造又は変造のみならず使っても(まあ、使うために作るんですが)犯罪行為です。対象には自動販売機などの機械も含まれます。
 本書の中で偽札を作成する4つの問題として”印刷機、金属板(原版)、インク、紙”とありますが、実際に偽造防止のため、紙、インク、透かし、ホログラムなどかなり高度な技術が使われています。これに対応するATM等なども高度な技術が採用されているのでほとんど偽造紙幣が使えない仕様になっています。”ほとんど”というのは鑑別技術自身がトップシークレットのため、一般市民どころか機械を作っている社内でも一部の関係者以外どうやってるのか知らないからです。


 さて、原作読んでみた感想なんですが、ジャック・リーチャーって”ダークなキャラ”というより”ハードボイルド”と”ウェスタン(西部劇)”の今風なハイブリッドって感じでしょうか。

〔減らず口はハードボイルドな男の特権!〕
 ”ハードボイルド”てのはタフガイな探偵が犯人とガチでやり合うってものありますが、その魅力の一番ってのは”名文句”言い換えると”減らず口”にあるんじゃないかと。読んだ中だと海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”あたりがいいですねぇ(*3)
 本書に出てくるジャック・リーチャーの減らず口から

  浮浪者じゃない。放浪者だ、フィンレイ。えらいちがいだ

   (尋問をする刑事部長のフィンレイに)

  働きたくないからさ。十三年働いたあげくが、このありさまだ
  軍の言いなりになっていた気がする
  だから、もうごめんだ。これからは自分のやりたいようにやる

   (”どうして働いていないんだ”というフィンレイの質問に対して)

  三人だけだ。四人目は生かしておいて、質問に答えさせる
   (留守中の家を4人の犯人に襲われたロスコーの”四人とも殺した?”という
   問いに対して)

  ゴキブリ退治の薬をまくとき、なにか感じるか?
   (犯人5人を返り討ちにしたことに対して問い詰めるフィンレイに対して)

 いや~、渋いですな。特に2番目なんかは定年退職後にさらに働けとか奥様に言われたら、言い返すのに使ってみたい名言です。

〔流れ者はウェスタンの基本フォーマット〕

 ある日、どこからか流れ者がやってくる。困っている町の人を助けるために町を支配する悪者をやっつけて、またいずれかへ去っていく・・・ ウェスタンの基本フォーマットです。子供の頃に見た”シェーン(*4)”なんかが代表作です。
 ジャック・リーチャーも同じく”放浪者”。どっかからやってきて悪の組織と対決するってのはウェスタンの基本フォーマットって感じですね。本書ではロスコーとけっこういい雰囲気でチョメチョメしてますが、最後どうすんだろ~な~って読みながらも気になってました。

〔一介の民間人のはずが、問答無用で犯人を射殺してますが・・・〕
 当たり前ですが、アメリカや日本の警察官というのは地方公務員です(警察庁は国家公務員)。ウェスタンに出てくる保安官というのもまあ郡とかの公務員。これに対しウェスタンに出てくる”賞金稼ぎ”というのは調べてみたら州法務省の許可を受けた民間業者(許可のいらない州もあるらしい)。
 で、我らがジャック・リーチャーと言えば、元軍人ではあるものの完全な民間人。事件に関係した発端は完全に巻き込れ型で、殺されたのが兄とかでなければたぶんそのまま町を出てった可能性のが高そう。にもかかかわす襲ってきた敵をあっさり射殺してんですな~~ いいんだっけ、これ?
 考えると、私立探偵の前職って警察官という設定はよくあるんですが、これだと職業倫理として”逮捕(生きて捉える)”が前面にでるのに前職が軍人のリーチャーだと”まず自分が生き残る(ためには相手を殺すのもやむねし)”っていう発想になっちゃうんでしょうかね。
 ジャック・リーチャーの行動原理をまとめたセリフがこれでしょうか

  状況判断。長い経験から、私は状況判断をする術をみにつけていた
  予期せぬことが降りかかったら、時間をむだにしてはならない
  どうしてそんなことになったのかなどと考えてもしかたがない
  だれかのせいにしてもしかたがない
  だれが悪いのか突きとめようとしてもしかたがない
  二度と同じまちがいをしないためにどうすればいいか考えてもしかたがない
  そんなことはあとでやればいい
  生き残りたかったら、まずは状況判断をすることだ
  事態を分析する。マイナス面を見定める。プラス面はなにかと考える。
  それをしたうえで、あとからほかのことをするチャンスを見つければいい

 引用が長くなってすいません。でもこのセリフ、すごくアバウトに聞こえるかもしれませんが、ビジネスでも犯人探しとか原因究明やってて判断が遅れるってのが、実はあったりなんかして・・・

 ”ジャック・リーチャーシリーズ”、けっこうはまりました。まだ、続編あるんで読んでこっと!

《脚注》
(*1)アウトロー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ピッツバーグでライフルによる無差別殺人事件が発生した。元アメリカ陸軍のスナイパー、ジェームズ・バーが容疑者として逮捕されるが、彼は弁護のために元米軍憲兵隊捜査官で、現在は流れ者のジャック・リーチャーを呼ぶことを要求する。
 ジャック・リーチャーシリーズの第9作を原作とする映画第1作
(*2)ジャク・リーチャー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ジャック・リーチャーの後任、スーザン少佐が国家反逆罪で逮捕される。リーチャーは彼女の無実を証明し、元部下を殺害した真犯人を追い詰めるべく捜査を開始する。そこには政府の陰謀が隠されていた・・・
 ジャック・リーチャーシリーズの第18作を原作とする映画第2作
(*3)海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”~
 ”フィリップ・マーロウ”は、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に登場する探偵。ハンフリー・ボガート主演の映画なんか渋いですな~~
 ”沢崎”は原りょうの”沢崎シリーズ”に登場する探偵。極端に寡作な作者なので作品数は少ないですが、ハードボイルド小説としてはイチ押しです
(*4)シェーン(主演 アラン・ラッド、監督 ジョージ・スティーヴンス、パラマウント)
 流れ者のシェーンは悪徳牧畜業者のライカーに苦しめられるジョー一家の息子”ジョーイ”の為ライカー立ち向かい、彼を倒した後にワイオミングの山へと去っていく・・・
 去っていくシェーンに必死に呼びかけるジョーイのシェーン! カムバック!”は映画史に残る名シーン

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