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2017年6月25日 - 2017年7月1日

”狼”のイメージってブレ幅が大きいですが、”狼王ロボ”は暴虐の王から夫婦愛まで大ジャンプ?

 ども、子供時代はあんまし本を読んでなかったかもしれないおぢさん、たいちろ~です。
 先日”うちは寿!(*1)”というマンガを読んでたら、”シートン動物記(*2)”の”狼王ロボ”を読んで三人の孫たちが涙するってシーンが出てきました。そういえば、”シートン動物記”って読んでないな~。そういや、本好き小学生の通過儀礼ともいえる”ドリトル先生航海記”も”楽しいムーミン一家”も”ファーブル昆虫記”もみんな読んでないな~~(*3) 対して外に出て遊んでた記憶もないんでいったい何してたんだろう? 寝てばっかいたのかなぁ
 ということで、今回ご紹介するのは反省をこめていいおぢさんになってから読んでみました”シートン動物記”より”狼王ロボ”であります
 

写真はたいちろ~さんの撮影。日比谷公園にある”ルーパロマーナ(ローマの牝狼)像”です

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【本】狼王ロボ(シートン、集英社他)
 巨大な体躯と人間の罠をものともしない狡知にたけたコランポーに君臨する狼の王”ロボ”。白くて美しくロボの妻である牝狼の”ブランカ”。ロボが率いる群れによりコランポー一帯の牧場は多大な被害を受けていた。そんなロボを捕まえるべくシートンはある計画を実行する・・・
 原題は”Lobo, the King of Currumpaw(ロボ、カランポーの王)。
【動物】狼
 ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。
”一匹狼”という言葉があるので単独行動する動物かと思っていましたが、実際は雌雄のペアを中心とした平均4~8頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成し、通常は繁殖するペアが最上位に位置するんだそうです(wikipediaより)


 多くの人にとって”狼”に対するイメージってその精神性のブレ幅が大きい動物ってそうそういないんじゃないかと(*4)。いやいや、”狐”は狡賢いから神の眷属まであるし、猫だって癒しのペットから化けて出るしと他にもいるだろうと反論はありそうです。でも、狼ってのは残虐から、勇猛果敢、慈愛、あるいは夫婦愛まで”精神のありよう”みたいなとこでは真逆に近いとこまで広がっているんじゃないかと

 残虐のイメージの筆頭は童話”赤ずきんちゃん”や”三匹の子豚”。なんせおばあちゃんやら子豚やらなんでも食べちゃうし。勇猛果敢つまり強さの象徴としてはスポーツや軍隊なんかでとく見かけるかと。故横綱”千代の富士”のあだ名が”ウルフ”とか、旧ドイツ海軍の”ウルフパック(群狼作戦)(*5)”とか。慈愛となると、上記の写真にある古代ローマを建国した双子”ロムルス”と”レムス”を育てた牝狼とか(あんまし詳しくは知らんけど)
 まあ、私自身は中学時代に”ウルフガイ・シリーズ(*6)”にはまった口なんで孤高のヒーローってイメージが強いですけどね。

 前置きが長くなりましたが、”夫婦愛”の代表格が今回ご紹介の”狼王ロボ”でしょうか。あらすじを続けます(ネタバレになりますのでご注意ください)

 シートンはボロの群れの足跡を観察することで、ブランカがロボの妻ではないかと考える。そしてまずブランカを捕獲することに成功する。悲しみの咆哮をあげるロボ。復讐に燃え、妻の探索をあきらめきれないロボは、取り乱し仕掛けられた罠にかかってしまう。仲間にも見捨てられ、抵抗するも力つきてしまうロボ。
 捕獲したロボを殺すことをおもいとどまったシートンだった。だが、力を奪われ、自由を奪われ、そして妻を失った悲しみの三重苦の中、老いた狼の王は死んでしまった。ロボの死骸をブランカの死骸のそばに寄り添わせるシートン。ロボを運んだカウボーイは大声で言った

  ほれ、お前はこいつのそばに来たかったんだろう
  これで、また、いっしょってわけだ

なんという名シーン。寿家の三人の孫たちが涙するのも納得です。

 でも、ちょっと待って。前半のロボたちって相当な悪役じゃなかったっけ? 5年間に牛を2000頭以上殺したとか、一晩で羊を250頭殺したとか。しかも遊び半分で。これらをして”狂暴なロボの一隊の暴虐ぶり”って書いてあるし。なんせ”人狼”だの”悪魔と結託している”だのさんざんな言われような王様なはずなんだけどなぁ
 小説だと他人には冷酷だけど家族には優しいキャラだとか、歴史上にもアイヒマンみたく残虐なナチス将校が実は平凡なおぢさんだったりとかあるけど(*7)、ロボやブランカって筋金入りの悪役だったのに、夫婦愛ですべてチャラってのはなぁ・・・

 いかんなぁ、大人になると本の読み方がひねくれてきて。少年のころのあの純粋な魂は失われてしまったんでしょうか・・・
 元からなかったのかもしれませんが

 なにはともあれ”シートン動物記”って面白い本です。私の読んだ集英社版に収録された”灰色グマの伝記”や”サンドヒルの雄ジカ”も良かったし。今更ながらですがお勧めの1冊です。


《脚注》
(*1)うちは寿!(小池恵子、竹書房)
 イケメン大好きなおばあちゃん”寿かめ”さんと、優秀なキャリアウーマンで家事ダメダメな長女”万里(32歳)”、クール&ビューティにして家事万能、時々マニアックな次女”美鶴(17歳)”、元気いっぱい、絵日記が得意な長男”千宏(7歳)”という3人の孫たちがおりなす日常系4コママンガ。
 本エピソードは4巻から。結構お勧めです。
(*2)シートン動物記(シートン、講談社他)
 アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンによる動物物語の総称。
 ”シートン動物記”という名前は日本でつけられた題名で、これに正確に対応する原題はないんだそうです(wikipediaより)。まあ、小学校の図書館に行けば必ずある本だから気にすることないけど
(*3)本好き小学生の通過儀礼ともいえる~
ドリトル先生航海記(岩波少年文庫他)
 アメリカの小説家ヒュー・ロフティングによる”ドリトル先生シリーズ”より
たのしいムーミン一家(講談社)
 フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによる”ムーミンシリーズ”より
ファーブル昆虫記
 フランスの博物学者、作家のジャン・アンリ・ファーブルの代表作
(*4)”狼”に対するイメージって~
 ニホンオオカミに限って言うと1905年に捕獲されたのが確実な情報としては最後のものだそうで、110年以上前の話。つまり、生きている狼を見た人はほとんどいないということです。したがって現在の”狼”のイメージは文学や映画などにより形作られたものかと
(*5)ウルフパック(群狼作戦)
 ドイツ海軍潜水艦隊司令カール・デーニッツ少将により考案された敵輸送船団を攻撃する通商破壊戦術の一つ。偵察機からの情報で輸送艦隊の進行方向を予測し、複数の潜水艦により予測海域にて各艦が包囲陣形を取りこれを撃滅するというもの。
(*6)ウルフガイ・シリーズ(平井和正、 早川書房他)
 名前と裏腹に暴力の渦巻く私立中学 博徳学園に転校した”犬神明”。彼は、満月が近づくと不死となる人狼(狼男)だった。彼を執拗に狙う不良グループのボス”羽黒獰”、そして二人の対立に巻き込まれる美しき教師”青鹿晶子”の運命は・・・
 初期のころのははまって読みましたが、”黄金の少女”以降まだ読んでないなぁ
(*7)アイヒマンみたく
 アドルフ・オットー・アイヒマンはナチスドイツ親衛隊中佐でホロコーストに関与して数百万の人々を強制収容所へ移送する指揮的役割を担った人物。戦後に逮捕されてみると小役人的で、家族を愛する凡人であったことが判明。
 詳しくは”ホロコーストの実行者はサディストではなくノーマルだった。我々と同じようにをどうぞ。

外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな(クラウド時代の思考術/狐)

 ども、広大なネットにたゆたうおぢさん、たいちろ~です。
 ”攻殻機動隊 S.A.C.(*1)”というアニメにこんなシーンが出てきます。電脳化という技術で人間の脳とインターネットがダイレクトに接続されている未来。通称”笑い男事件”とよばれるサイバーテロ事件の首謀者”笑い男”と、その事件を追う公安9課の”草薙少佐”が図書室(草薙少佐曰く”まるで情報の墓場”)で対峙する場面での会話ですが、なんせ会話に出てくるのがドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフにフレドリック・ジェイムソンに大澤真幸(*2)。後から登場した公安9課の”荒巻課長”の一言がこれ。

  さっきから聞いていたが、外部記憶装置なしにはさっぱりついて行けん会話だな

 その通りで、私もまったくついて行けませんでした。
 最近のネット技術だとダイレクトに脳と接続まではいきませんが、テキストのみならず会話や画像なんかも検索できる社会にはなっとりますが、だからといってそれが知的な会話や判断に結びつくかどうかはまた別。
 ということで、今回ご紹介するのは、クラウド化する社会と知性のお話”クラウド時代の思考術”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。京都”伏見稲荷”で見かけた狐の絵馬です
多くの絵馬がいろいろ見つめている図はちょっと象徴的かも

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【本】クラウド時代の思考術(ウィリアム・パウンドストーン、青土社)
 ”検索”によりさまざまな情報が調べれる現代における知のあり方をまとめた本。
 原題は”Head in the Cloud:Why Knowing Things Still Matters When Facts Are So Easy to Look Up(クラウドの中の頭脳。事実を調べるのがとても簡単である時、まだものを知っていることが重要ですか
 邦題で見るとなんかのノウハウ本のようですが、これはミスリードじゃないかなぁ
【動物】
 ネコ目イヌ科イヌ亜科の一部。狭義にはキツネ属のこと。
 本書ではキツネを”さまざまな要素を取り入れる折衷主義者で、多くのアプローチに開かれていて、矛盾をこともなく容易にこなすことができる”象徴として出てきます。(これに対するのが”ハリネズミ(*3)”)


 本書から面白かったトピックをいくつか

〔無知の人は自分の無知を知らない:ダニング=クルーガー効果〕
 ”ダニング=クルーガー効果”というのは心理学者のダニング教授と大学院生のクルーガーが1999年に発表した”未熟さと無知 自分の無能力を認識できないことが思い上がった自己評価を導く”という実も蓋もない論文によるもの。簡単に言うと

 知識や技術にもっとも欠けた者の特徴は、知識や技術の欠損をまったく理解できない
 獲得点数の低い人は高い自己評価をし、高い人は低い自己評価をする

というもの。確かに知らないということを知らなければ”自分は知ってる”と勘違いすることもあるんでしょが、予想以上の結果だったとか

〔知識がある人のほうが所得が高い傾向がある(但し書き付き)〕
 質問事項にもよりますが、知識を豊富な人々はたくさんのお金をかせぐんだとか。
 いろんなパターンで実証してみるとそんな傾向があるようで、同じモデル(パターン)の人で比較したケースでは倍ほど違うなんてのが記載されてます
 これは、知識のある人のほうがない人よりさまざまな質問に対してクリエイティブな解決策を導き出せるからとか、お金の扱いを学んでいるとかなんて理由が指摘されています。

〔相関関係と因果関係は違う〕
 上記の但し書きがこれ

  相関関係は因果関係を証明していない
  相関関係の欠如を因果関係が間違いであることを証明する

というもの。上の例だと知識があることが理由で裕福になっている可能性以外に、裕福だと余暇の時間が十分にあるのでニュースを観たり本を読んだりできるので知識が豊富とか、親が裕福(第三の理由)で子供が金持ち、知識があるという理由も推察されています。
 概して統計データってのは事実は同じでも解釈が違ったりするんで、このへんもちゃんと突っ込んでいるのが好感できます。

〔学ぶことの意義:グーグル効果〕
 覚えておかなくてもアーカイブで保存できる(グーグルみたいの)だと非常にしばしば忘れ去られてしまうってこと。まあ”検索すりゃかわる”と思えばいちいち記憶しようなんて思わないのもわかりますが。
 受験生時代(はるか昔ですなぁ)だと、まず”覚えること”が山ほどあったんで、”なんでこんなこと覚えにゃならんのだ!、これを覚えてなんの得があるんだ!!”と思ったもんですが、今の若い人ならなおさらでしょうなぁ。
 知識を身につけるためにかかるコストが、知識を身につけたことによる利得を上回ることはままあること(てか、ほとんどの知識ってそうじゃね?)。まあ、覚えなきゃ受験に合格はしないんですけどね・・・ 本書でもロンドンのタクシードライバーが仕事に付くために要求されるテストがGPSナビにとって代わられるなんて話が出てきますが、クラウド化すりゃますますこのアンバランスが拡大するんでしょうね

〔学ぶことの意義:学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす〕
 上記に対しての救いの言葉(かな?)がこれ
 知識と所得の相関関係について考えられる説明として

  学習が認識能力を改善するということだ
  この能力はほとんどどんな仕事―― 一生従事する職業も含めて ――にも役に立つ
  学習はすぐれた脳の機能を生み出し、より高い所得をもたらす

ってのが書いてます。ちょっとは気休めになりますか、受験生のみなさん

〔キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風に。だが・・・〕
 本書の最終章には、キツネのように幅広い一般知識の取得を第一とする哲学は逆風にさらされていて、ハリネズミのような大きな概念に関連づけるやり方のほうが支持されているてな記述があります。なぜなら情報はクラウド(ネット)にあって必要に応じて利用できるから。本書の結論としてはこれではダメなんだとか。これは情報をきちんと持っていることは、その文脈についても情報をもっているということ。

  それ(文脈)は、個々のものの評価を可能にしてくれ
  われわれが知らないことに、きわめて重要な洞察を与えてくれる全体への展望だ

 まあ、ブチブチの情報だけではなくって、全体の流れを含めた情報や認識能力がなきゃ、ネットにつながってるだけじゃ不十分ってことなんでしょうかね

 まあ、冒頭の笑い男と草薙少佐の会話もみたいに電脳空間にダイレクトにつながってなけりゃ成立しそうにないってのもありますが、これって単なる知識のひけらかしじゃないんですね。

  草薙少佐:それは経験から導きだされた貴方の言葉?
  笑い男  :Yes

 ネットと検索がはびこる世の中、この質問ってより重要になるんでしょうね、きっと

《脚注》
(*1)攻殻機動隊 S.A.C.(原作 士郎正宗、監督 神山健治、バンダイビジュアル)
 正式名称は”攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX”。現代のネットワーク社会が究極進化するとこうなりそうな未来社会を描いたSF。テレビ版は全26話ありますが、160分にまとめた総集編”攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man(バンダイビジュアル)”もありますので、初めての方はこちらをどうぞ。上記のセリフは総集編版のです。
(*2)ドアノーにサリンジャーにジガ・ヴェルトフに~
ドアノー:ロベール・ドアノー。フランスの写真家
J.D.サリンジャー:アメリカ合衆国の小説家。”ライ麦畑でつかまえて(白水社)”など
ジガ・ヴェルトフ:ソビエト連邦の映画監督。”カメラを持った男(メディアディスク)”など
フレドリック・ジェイムソン:アメリカの思想家。”政治的無意識(平凡社)”など
大澤真幸:日本の社会学者。”ナショナリズムの由来(講談社)”など。
 すいません、どれも読んだり観たりしてません。
(*3)ハリネズミ
 ハリネズミ目ハリネズミ科ハリネズミ亜科に属する哺乳動物の総称。
 本書では”すべてのことを、ある一つの中心となる大きな概念に関連づけるエキスパート”と記されています

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