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2017年9月

バブル雑感、現場から見た”総量規制”について、かな(バブルと生きた男/水門)

 ども、総量規制いっぱいにお金を借りたら返せそうにないおぢさん、たいちろ~です。
 先日新聞を読んでたら”カードローン 地銀も総量規制”という記事が出てました(日経産業新聞 2017年9月27日)。ちょっと説明すると消費者金融などは、年収の1/3までしかお金を貸せない”総量規制”が貸金業法により決まっているのに対し、銀行は貸金業ではないのでこの規制の対象外。でもお金の融資先と低金利で困っている銀行がカードローンを推進しすぎると”過剰融資”になるとの批判があるため、自主的に年収比で1/2とか1/3とかに抑えようというもの。実際に年収の1/3も借りた日にゃ返すのはとっても大変なんですが・・・(*1)
 金融庁は総量規制の銀行への適用に慎重だったが、それを覆す可能性が出てきたと。
 てな感じの”総量規制”ですが、この言葉を聞いてある業界の中高年の方は昔もあったな~と思われたかも。
 ということで、今回ご紹介するのはバブル時代に大蔵省に出向し”総量規制”に関わった元日銀マンによる本”バブルと生きた男”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
藤子・F・不二雄ミュージアム付近にある水門です。

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【本】バブルと生きた男(植村修一、日本経済新聞出版社)
 サブタイトルは”ある日銀マンの記録”。バブル前夜の1979年に日本銀行に入行し、大蔵省銀行局への出向などでバブルの発生から崩壊とその後始末、さらにはリーマンショックまでを官僚として”当事者”だった男の”体験的バブル論”
【旅行】水門
 河川や用水路などに作られた水の流れや量を制御する建造物。構造的にほとんど同じ”可動堰(せき)”というのがありますが、洪水時には門扉を閉めて堤防となるのが”水門”、逆に洪水時には門扉を開けてせき止めた水を流すのが”堰”なんだとか。まあ、洪水みたいなリスクを考えなきゃ気にするようなことではなさそうですが・・・


 さて、中高年の方向けにバブルのおさらいを(若い人には歴史のお勉強?)
 上記の日経新聞の記事と同じ日に載ってた朝日新聞のバブル年表にちょっと追記をしたものです。

 1985年 9月 ドル高是正の”プラザ合意
 1986年    三大都市圏における地価、日経平均株価が上昇局面へ
 1987年 2月 NTT株上場
 1987年10月 史上最大規模の世界的株価大暴落”ブラックマンデー
 1989年12月 日経平均株価の最高値 38,915円87銭
 1990年 3月 大蔵省が金融機関に対し不動産融資の”総量規制”を通達
 1990年12月 ”バブル経済”が新語・流行語大賞の流行語銀賞を受賞
 1991年 5月 東京芝浦のウォーターフロントに”ジュリアナ東京”開店
 1991年12月 ”総量規制”の解除
 1992年 4月 半沢直樹が産業中央銀行に入行
 1995年 1月 東京共同銀行設立(経営破綻した東京協和信組と安全信組の受け皿)
 1995年12月 住宅金融専門会社処理に6,850億円の公的資金導入決定
 1997年11月 北海道拓殖銀行と三洋証券が破綻山一証券自主廃
 1998年 3月 21の銀行に1兆8千億円の公的資金注入
 1998年10月 日本長期信用銀行が一時国有化
 1998年12月 日本債券信用銀行が一時国有化
 1999年 3月 15の銀行に7兆5千億円の公的資金注入

 何を言いたいかというと、”バブル”と”バブル崩壊”って実態とイメージとでビミョ~にずれてるんですな。バブル景気というのは統計的には1986年12月から91年2月までの4年3ケ月(上記朝日新聞より)。始まり感がいつごろかというと1987年の”NTT株で一発儲けようぜ!”的なノリはあったかな~~(*2) 
 終わり感がいつからあったというとけっこう難しいんですぜ、これ。株のピークが89年12月(大納会)なんで、こっから下がりだしてはいるんですが、まだまだ”持ち直すんじゃね?!”的な期待感があって。90年の流行語で”バブル経済”ってでてくるってことは”もうすぐ弾ける”という危機感自体はあったんでしょうが、ユーフォリアの残照がまだまだ強かったような気がします。年表を見て意外感があるのがバブルのアイコンでもある”ジュリアナ東京(*3)”のオープンも、花のバブル入行組の”半沢直樹”(*4)の入行も正確にはバブル景気終了後。
 その後は株価も地下もどんどん下落して、95年の住専問題で混乱する国会あたりで”にっちもさっちもいかない感”が出て、大手金融機関の破綻が続出した97~8年の”どん底感”はまあ異論のないところかと。

 前置きが長くなってすいません。”総量規制”の話です。総量規制ってのは土地の値段が上がり過ぎてまともな国民が家を買えない水準まで上昇しちゃったのを是正するためのものというのがお題目。”土地神話の打破”、”適正な地価水準の実現”、”適正かつ合理的な土地利用の確保”が目的。で、土地取引自体を規制するのではなく、資金の出し元である金融機関側でコントロールしようというもの。不動産業者、建設業者、ノンバンクの三業種に対し融資の伸び率を総貸出の増加以下に抑制するよう金融機関を規制する、つまり銀行から流れるお金の水門を閉めることで、川下にある不動産業者の活動を抑え込もうとしたわけです。感覚的にズレがあるとすれば、この規制は①元々国民の要請(と考えた政治家)に合わせたもの、②”地下を下げる”というより”適正化”するのが目的(当時、土地が下がるなんて発想じゃなかった)、③”貸してはいけない”とは言っていない(伸び率を他と同じぐらいに抑えろと言ってるだけ)。それと時期的には④株価がピークアウトした後で出されて、バブル崩壊でにっちもさっちも行かなくなるずっと前に解除されてること(といっても90年の1年間で株価は1万5千円下がってますが・・・)

 筆者はこの総量規制に大蔵省へ出向してあれやこれや対応した人で、銀行局長のカバン持ちで国会対応の随行なんぞやってた、まさに現場の人です。本書によると当時の大蔵省は金融の量的規制は時代に逆行するもので慎重な姿勢だったそうですが、土地高騰で”庶民は家を持てない”、”これ以上格差が開くことはがまんできない”といった国民感情が政治問題化してやらざるを得なくなったと。導入直後に着任した筆者はこんどはこれを解除するのに四苦八苦するはめにことに。
 元々大蔵省としては長くこの規制を続けるつもりはなかったようですが、あまりに効果がありすぎて関連業界からこんどは解除要請がくるんですが、実際に解除するにはするの理屈付けが必要で、その基準作りを筆者がやって、やっとこさ解除に至ると。つまり、大蔵省自身はもろ手を挙げてやりたかった政策でもないのに、あっちからはやれと言われ、こっちからは止めれと言われ、本来なら土地政策全体では金融はわき役のはずなのに主役を演じさせられた上、バブル失政の主犯扱いされれば、現場の人としてはぐちのひとつも出ようなもの。
 本書でのぐち

  後世、総量規制がバブル潰しの主犯であり、
  その後の長い経済の低迷をもたらす失政だったとの論点がみられることに
  私を含め当時の関係者は強い違和感をいだいています

 本書は、大臣や官僚トップという意思決定を下す立場でもなく、評論家や記者といったアウサイダーでもない、まさに”現場”感覚で書かれてる点では多くのバブル本とは異色な感じでしょうか。官僚としての苦しい言い訳や反省なんかをこの本に期待するのは間違い。むしろ淡々と現場の中心にいた人の意見として読むのが良いかと。
 最後に日銀で考査(*5)を担当した経験からの言葉

  考査を通じて感じた、ジレンマというかパラドックスは
  リスク管理のセンスがある人(組織)は、いわれなくてもわかる
  一方、センスのない人(組織)は痛い目にあわないとわからない、というものです
  そういう中での仕事としてのリスク管理のアドバイス
  なかなか悩ましいものがありました


《脚注》
(*1)返すのはとっても大変なんですが・・・
 仮に年収300万円(手取り)の人が1/3の100万円を借りたとして、年利がアッパーの14%、元利均等、月額返済(ボーナス払いなし)だとすると、だいたい
  返済期間   総返済金額   月額返済金  年収対比
   3年   123.0万円  3.4万円 13.7%
   5年   139.6万円  2.3万円  9.3%
になります。年収を12ケ月になべると25万円なので、3年がかりで返すとなるとけっこうきついんじゃないかと
(*2)”NTT株で一発儲けようぜ!”的なノリはあったかな~~
 会社の先輩に証券会社担当の人がいて、NTT株の購入希望申込書みたいなのを頼まれて書いた覚えがあります。抽選には当たったんですが、金も興味も(主に金が)なかったのでとっとと権利放棄しましたが、あんとき買ってたらきっと大損してたんじゃないかなぁ・・・
(*3)ジュリアナ東京
 いまでもバブル系の番組で出てくる伝説のディスコワンレンボディコンのおねいさんがシュリ扇持ってお立ち台で踊りまくってるのって確かに分かりやすいアイコンです。ただ、オープンしていたのはバブルのピーク後の91年5月からどん底手前の94年8月。今にして思えば、話のタネに一回ぐらい行っといてもよかったなかぁ
(*4)花のバブル入行組の”半沢直樹”
 テレビでも大ヒットした”半沢直樹”シリーズですが池井戸潤による小説の原作第一作は”オレたちバブル入行組”、第二作は”オレたち花のバブル組”。入行はバブル時代でもそのあとえらい目あってんでしょうねぇ
(*5)考査
 日本銀行が取引先金融機関等に立ち入って調査を行うもの。本書によると経営実態の把握、リスク管理体制の検証、及び必要に応じて改善を促すことを通じて金融システムの安定性確保につなげようというものだそうです。似たようなのに金融庁(旧大蔵省)検査ってのがあって、これは”半沢直樹”で片岡愛之助が演じていた”黒崎駿一”がやってたの。

ビジネスシーンでも使えそうな”ジャック・リーチャー”の名言 かな?(警鐘/UH-1 ヘリコプター)

 ども、学校で真面目に訓練(勉強)しなかったのであまり出世しなかったおぢさん、たいちろ~です。
 さて、最近”ジャク・リーチャーシリーズ”にはまっています。この小説は元軍の憲兵隊少佐で今は放浪者の”ジャック・リーチャー”がいろんな事件に巻き込まれてそれを解決するハードボイルドな話ですが、軍のメソッドを使って行動するせいかビジネスでも通じそうな名言がけっこう出てきます。”ビジネスも一種の戦争だ”なんて青いことは言いませんが、読んでるとけっこう役に立つというか一度は使ってみたい名言ってのがちらほら。
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第三作”警鐘”から拾った名言集であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。アメリカ軍横田基地のUH-1ヘリコプターです

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【本】警鐘(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ”ジャック・リーチャー”を探しに来た私立探偵が殺された。彼の捜索を依頼したのは元上司で恩人でもある”リオン・ガーバー中将”の娘で、かつて恋心をいだいていた”ミセス・ジェイコブ”こと”ジョディ・ガーバー”であった。二人がヴェトナム戦争中にヘリコプターの墜落で行方不明になった”ヴィクター・ホビー”の生死を調べることになるが、その影に会社の乗っ取りを企む陰謀と国家機密に関わる黒い闇が広がっていた・・・
【乗り物】UH-1 ヘリコプター
 アメリカのベル・エアクラフト社が開発した汎用ヘリコプター。愛称”ヒューイ”。本書は現代(原書は1999年発刊)とヴェトナム戦争(~1975年)の間をいったりきたりするんですが、UH-1は物語のきっかけとなったヴェトナム戦争中の撃墜シーンで登場。この機体は1959年にアメリカ陸軍で採用され、ベトナム戦争でも活用され、モデルチェンジを重ねつつ現在でも自衛隊を始め現役で活躍中という超ロングセラー機。ほんとに軍って物持ちいいですな~~


 さて、ビジネスでも使えそうな名言を

〔当面の仕事に集中しろ〕
 悪漢に待ち伏せされている中、ジョディをオフィスに送り届けるリーチャー。相手があまりに隙だらけなので反撃できそうなんですが・・・ というシーンでの言葉。
 当たり前のようですが、色々仕事をしているとこっちのほうもうまくいきそうだとか目移りしることもままあります。状況しだいなんで絶対ではないんですが”二兎を追うもの一兎も得ず”とも言いますし。

なにごともなめてかかるな、って
 上記の悪漢が思いもよらぬ攻撃を仕掛けてきた時のリーチャーの言葉。優秀な刺客を送り込んでくる可能性を失念したことに対しての反省の弁。”リオンにこのヘマを見られていたら私に失望しただろう”とのこと。”油断大敵”とも言いますし

〔われわれの見るところ、SASですね〕
 捜査のためにかつてヴィクターの同僚だったデヴィット将軍を訪れたリーチャー。そこの基地で門番をしていた軍曹に”将軍はどんな感じの人だ”と質問。で、軍曹の答えがこれ。SASは”Stupid Asshole Sometimes(*1)”の略で日本語だと”ときどき愚かなことをするアホなやつ”。あまりお上品な言葉じゃなさそうですが、リーチャーは”好意的”との評価

  自分をみくださずにきちんと接してくれれば、
  こちらも協力的になれる上官、ということだった

上官たるもの、部下には多少の隙を作っとかないといけないのかも。”優れたリーダーは部下に弱みを見せる”とも言いますし。まぁ、逆も言うんですけンド・・

〔勇気のあるやつは、恐怖心を克服できる男だ。ヴイックは、何も感じない男だった〕
 同じくデヴィット将軍がヴィクター(ヴイック)を評しての言葉。勇気があることと、なにも感じないことば別で、ヴィクターは後者だと。それでも(それゆえ)、ヴィクターって人はヘリのパイロットとしては優秀だったようです。”恐怖は心を殺すもの(*2)”とも言いますし。

〔狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ〕

 同じくデヴィット将軍の言葉。訓練所でトップの成績で卒業した若き日の将軍ですが、実戦ではヴィクターのほうが優秀だったと。ヴィクターは”UH-1 ヒューイ”のパイロットとしてヴェトナム戦争に赴き、実戦に即したやり方を開発してそれが標準操作手順に採用されるほど優れていたとのこと。ヴィクターの優秀さを表すのに使ったのがこの言葉。

  私たちは訓練ですべてを学んだ。言わば極めた。
  だが、じつはあんな訓練はなんの役にも立たなかった
  狭いグラウンドで、これが野球というものだと教わって、
  つぎにはメジャー・リーグでプレーさせられるようなものだ

で、自分達がそうだったようになんの準備もなく若者たちを戦場に送りたくないと将軍はヘリの養成所の運営やってます。まあ”実戦証明済み(*3)”が重要とも言いますし

〔なぜまちがったなどと考えるな。ただまちがいを正せばよい〕

 拉致されたジョディを助けるために閉じ込められている部屋の前で悩むリーチャーが思い出したリオンの言葉。前作の”キリング・フロアー(*4)”でも、犯人探しや原因分析ななど”そんなことはあとでやればいい”という言葉が出てきますが、どうも陸軍のメソッドは行動第一主義のようです。”First things first(最初にやるべき大切なことは最初に)”とも言いますし

〔一度だけ訊け、どうしても必要なら二度訊け。だがぜったいに三度訊いてはならない〕
 上から続いて部屋に突入したリーチャーが悪漢の部下を捕まえて、”協力するか、死ぬか”を選択させる質問をしたシーン。この言葉はリオンの教えから。二度訊いても抵抗するようなら何度訊いても無駄だから時間を浪費するなということでしょうか? これが敵ならまあ許されるかもしれませんが、部下との間でここまで厳しくやったら、けっこう軋轢ありそうだな~~ ”仏の顔も三度まで”とも言いますし。(仏様は優しいので一回分増量のようです)

〔放浪の最大のよさは、選択肢などいっさいないことを
  幸せな気分で受動的に受け入れることなのだ〕

 リオンに遺産として家を譲られ、ジョディと良い雰囲気になっているリーチャーのモノローグ。このまま、ジョディーと一緒に暮らすか放浪の旅に戻るか逡巡するシーンから。 結局、リーチャーが怪我で入院したこともあって、ラストシーンはジョディーと一つ所に落ち着くような雰囲気ですが、次回作があるってことはやっぱり放浪生活にもどんだろうなぁ

 ということで、次回作は映画の原作にもなった”アウトロー(*5)”に続きます

《脚注》
(*1)Stupid Asshole Sometimes
 ”Stupid”は愚かな、ばかな、”Asshole”は直訳すると”尻の穴”でスラングとしては”嫌な奴”
(*2)恐怖は心を殺すもの
 ”デューン 砂の惑星”(フランク・ハーバート、早川文庫)より
(*3)実戦証明済み
 ”コンバットプルーフ(Combat Proof)”、”バトルプルーフ(Battle Proof)”とも。武器などが実戦で使用され、その性能や信頼性などがカタログスペックどおり(またはそれ以上)であることが証明されること。ビジネス現場で学校の成績が良いからといって、実績が上がるかというとそうとは限んないんでしょう。それ以前に”学校の成績が良かったかどうか”なんて話題がそもそも出てきませんし。
(*4)キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”と女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・ 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)アウトロー(監督 クリストファー・マッカリー、主演 トム・クルーズ、パラマウント)
 ピッツバーグ近郊で起きた銃乱射事件で、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕される。証拠はすべて揃い、事件は解決へ向かうかに見えた。しかしバーは黙秘を続け、「ジャック・リーチャーを呼べ」と紙に書いて要求する・・・
 2012年にトム・クルーズ主演で公開された映画。原作では9作目。

1998年の作品のはずですが、なんだか今起っておることと似ていることがあるような~~(反撃/M16自動小銃)

 ども、予知能力や予言は信じてませんが、偶然の一致はありかな~と思っているおぢさん、たいちろ~です。
 国家を国家たらしめるには、3つのことが必要です。”国家の三要素”といわれるもので”領域(領土)”、”人民(国民)”、”主権(排他的な権力)”がそれです。現在の地球上では南極大陸(*1)といった例外を除いて、ほとんど全ての土地がどこぞの国に所属していることになります。どっちの国の領土かでもめたり、実効支配として勝手してるとこもまあないわけではなないですが・・・
 ですんで、どこぞの住民がその地域を”国家”として独立させようとするとこの3つを既存の国家や国際社会に認めさせる必要があるわけですが、そんな要求に”ハイ、わかりました”と簡単に言ってくれるワケもなく、平和的であれば”国民投票”、最悪の場合は”独立戦争(内乱)”に発展、局地的に見ても”テロ”になるわけです。
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの第二作、たまたま歩いていただけなのにテロ組織の誘拐作戦にまきこまれるという”ジョン・マクレーンかおまいわ!(*2)”と突っ込みたくなるようなお話”反撃”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
ミサイル駆逐艦”マスティン”を警備する”M16A2自動小銃”(たぶん)を持つおじさん
2015年フレンドシップデーの横須賀海軍基地にて

M16a2


【本】反撃(リー・チャイルド、講談社文庫)
 元軍人で今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は片脚が不自由な美女”ホリー”を偶然手助けした瞬間、テロ組織の人間に二人して身柄を拘束された。拉致された二人が連れてこられたのはボーゲン率いる民兵組織。そこでリーチャーはリーダーの”ボー・ボーゲン”からホリーを人質に、彼の軍隊による独立を勝ち取ろうとしていることを知る。
【道具】M16自動小銃
 コルト社が製造権を持つ小口径アサルトライフル(突撃銃)。日本では”ゴルゴ13(*3)”が持つ銃として有名。本書でリ-チャーがぶっ放しているのはセミ・オートと三発バースト(*4)の切替ができるようになったA2バージョン。
 銃器詳しくないんですが、この写真と同じものがネットに載っていて”M16A2”とあったので、そのように記載しました。


 本書の悪役はアメリカからの独立して自由を勝ち取ろうと企図する民兵組織のリーダー”ボー・ボーゲン”。安い労働動力としてメキシコ人が入ってくるのに反対する人種差別主義者から始まって、マスコミは世界政府に操られているから本当のことを報道しないと考えていて、血の粛清もいとわない人物。35歳前後の巨漢で、軍隊風にブロンドの両脇を短く刈り上げ、ぱんぱんに膨れたピンク色の滑らかな顔で、着ているのは黒い軍服。組織のスローガンは”自由に生きるか、さもなくば死か”。現金輸送車を襲って資金力はあるが、女子子供には質素な生活を強いている一方、自動小銃やらマシンガン、拳銃をしこたまためこみ、強奪してきたスティンガーミサイルも保有。
 こうやって書いてみると、チキンレースをやっているあそこの国とあそこの国のリーダーを足して2で割ったような感じだけど、まさかな~ 本書が出版されたのって1998年だしな~ 
 本書の原題は”DIE TRYING”。これは”Or die trying”の意味みたいで直訳すると”さもなければ試みながら死ぬ”という強い意志表明をするときの決まり文句。水爆実験やICBMの発射を繰り返していて、一発でも相手の領土に打ち込んだら戦争必死の状態で挑発してるっての、まさかな~~

 圧倒的な戦力差があるはずなのに思いのほか自体がこう着しちゃっているのは政府の対応がヘタレだから。ネタバレになりますが、”ホリー”はFBIの捜査官で親父さんがアメリカ軍統合参謀本部議長で現大統領が名付け親というなかなかにセレブなお嬢様。ところが、それ故に今回の事件が別の意味で政治問題化すると。この事件の責任者となったデクスター大統領首席補佐官の言葉

  ある地域では、民兵組織を支持する連中が郡の運営を仕切っている
  州を仕切っているころすらある

   (中略)
  これは国民感情の問題
   (中略)
  国民の反応を考えろ。報復、利己主義、復讐、私事。
  こういう言葉がわれわれに対する世論調査で
  どんな数字になってあらわれるか考えてみろ

ようするに、こんな組織でも一定の有権者の支持を受けそうだから、人質が統合参謀本部議長の娘だからといって、大げさに軍を動したら返って大問題になるんで現場で速やかになんとかしろと。おかげで、将軍やらFBI長官などといった本来なら現場でドンパチやるはずのない大物が危険に身をさらしながら事態にあたることになります。
 しかしな~ 普通に考えたら自分の党ですら賛同を得られないような過激な政策をかかげて、半数近い州の支持指示を得て大○領になって、政令も裁判所から差し止めくらってもなお、国民感情を同じくする一定の支持層がいるあの国の状況を予見してたわけじゃないと思うんだがな~~

、で、物語はというと、我らがジャック・リーチャーが事件に隠された様々な謎を解いて、解決に導き、最後にホリーの恋の後押しをして去っていくと。前作同様、まさに”ウェスタン”のノリですな~

 ところで、この物語の最大の謎は”なぜ、ジャック・リーチャーは身柄を拘束されないんだ??” わかっているだけでも、ホリー誘拐事件、スティンガーミサイル強奪事件、ヘリコプター撃墜事件、内紛による大量殺人事件などなど。ジャック・リーチャー自身もM16自動小銃はぶっぱなして邪魔者は問答無用で撃ち殺すわすわ、バレットM90対物ライフルで遠距離狙撃をするわで両手にあまる民兵を射殺しているし、だいたいこれ、大統領まで話が上がっている国家のトップシークレットですぜ! にもかかわらずリーチャーは現場でそのまま放免普通だったら月単位で事情聴取があってもおかしくないはずなんですが・・・ このへんもやっぱり”ウェスタン”のノリなんですな~~

 本書は前作の”キリング・フロアー(*5)”に続き、とっても面白いエンタテインメント。ぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)南極大陸
 1959年に採択された”南極条約”により南極地域における領土主権凍結の凍結、軍事利用の禁止、科学的調査の自由と国際協力などが定められています。ジオン公国と地球連邦の間で締結された核/生物/化学兵器の使用を禁止する”南極条約”とは別物です、念のため
(*2)ジョン・マクレーンかおまいわ!
 ”ジョン・マクレーン”はブルース・ウィリス主演の”ダイ・ハードシリーズ(20世紀フォックス)”に登場する刑事。典型的な巻き込まれ型の主人公ですが、刑事という職業柄かまきこまれた後もいろいろちょっかい出して死にそうな目にあいながら事件を解決するのがお約束。
(*3)ゴルゴ13(さいとう・たかを、リイド社)
 超A級スナイパー(狙撃手)”ゴルゴ13”を主人公とするコミック。ほとんど銃器に触れることのない日本人に”アーマライトM-16”を知らしめたののはこの人の功績です。
(*4)セミ・オートと三発バースト
 一発ずつ手動で引き金を引くのがセミ・オート、引き金を引けば連続発射するのがフル・オート、1回引き金を引くと3発まで連続発射されるのが三発(3点)バースト。兵士がパニくってフル・オートで引き金を引きっぱなしにするとあっつーまに弾が切れるのでA2バージョンからはセミ・オートと三発バーストの切替になったそうです。
(*5)キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”と女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・
  詳しくはこちらをどうぞ

「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、自立とは何者にも依存しないということではない(超ソロ社会/海街diary/ヒトリシズカ)

 ども、夫婦と子供2人、有業者が世帯主1人だけという典型的な標準世帯(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 人が結婚しようがしまいが、いくつで結婚しようが、子供を作ろうが作るまいが、結局それは個人の勝手で人様がどうこう言う話ではないはずです。いかにマクロ的(社会)に少子化がど~したとか、高齢化がこ~したといった議論があっても、ミクロ的(個人)に見ればそんなことは知ったこっちゃないはずなんですが、どうも人ってのは”標準幻想”から自由になるのは難しいのか、そこそこの年齢になってくると”既婚”と”未婚”というカテゴリ分けが出てきちゃいます。言ってるほうは善意でもあるんでしょうが、それだけにタチが悪い面も・・
 ということで、今回ご紹介するのは今や次世代の標準になりつつある独身社会を扱った本”超ソロ社会”と読んで思い出した”海街diary”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。向島百花園のヒトリシズカです

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【本】超ソロ社会(荒川和久、PHP新書)
 サブタイトルは”「独身大国・日本」の衝撃”。
 未婚化、非婚化、離婚率の上昇、配偶者との死別による高齢単身者の増加など、今後ますますソロ社会化する日本を分析した本。
【本】海街diary(吉田秋生、小学館)
 父の死をきっかけに腹違いの姉”香田幸、佳乃、千佳”達とともに生活することになった中学生の”浅野すず”。鎌倉を舞台に繰り広げられる彼女と取り巻く人々との恋と日常を描いた青春グルアフィティ。
【花】ヒトリシズカ(一人静)
 センリョウ科 チャラン属の多年草。写真を撮ったのが秋でしたので花は咲いてませんが春になると白いブラシ上の花が咲きます。
 ”独りで静かに暮らす”ってイメージで今回載っけたんですが、名前の由来は吉野山で歌舞した”静御前”の美しさになぞらえたからだとか。”静御前”は源義経の子を産み、その子と引き離された悲劇の女性ですが決してソロだったわけではなさそうです。


 この本を読んだ感想ですが”人生前期おひとりさま”と”人生後期高齢単身者”に大きく分かれるんかな、って感じです。”人生前期おひとりさま”ってのは若い人達が結婚するのしないの、子供を産むのうまないのという話”人生後期高齢単身者”ってのは結婚せず、子供を持たずに高齢世代になった人、離婚や死別などので単身者になった人の話。同じ”独身”ではありますが実はそうとう色合いが違います。”独身=若い”、”独身=未婚”ってなテンプレな話じゃないってことのようです。まずは”人生前期おひとりさま”の話から。

〔”人生前期おひとりさま”の話〕

 上記で”そこそこの年齢”って書きましたが、これってけっこう時代によって感覚違うんですな。1970年代ぐらいの本を読んでると”行き遅れ”、”オールドミス”なんてのが出てきます、今では完全なNGワードですが。で、これがいくつぐらいかというと感覚的には20代後半ぐらいだったでしょうか。29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます(*2)。1980年にトップアイドルだった”山口百恵”が結婚したのが21歳でしたがめちゃくちゃ早いって感じでもなかったですね。1975年に発表された”22才の別れ”とういフォークソングは22才の彼女が彼氏の知らないところお嫁にいく曲ですがめちゃくちゃ早婚ってわけでもなかったですし。
 これが現代だと、この歳で結婚したら相当な早婚って感じでしょうか。先日結婚を発表した武井咲が23歳。東京都にお住まいの超セレブなお嬢様が婚約したのが25歳。武井咲はデキ婚という事情があるにしても、お二方とも早婚ってイメージじゃないかと。アラサー世代はどうかというと、”東京タラレバ娘(*4)”なんか読んでると33歳(原作)のお嬢様方が多少のあせりはあるものの、めちゃくちゃテンパってる感があるわけでもなさそうだし。
 まあ、はっきり言って社会背景がこの数十年で相当変わってきてるんですな。年代別初婚年齢を見ると、1970年で男性 26.9歳、女性 24.2歳、1980年で同じく27.8歳、25.2歳、2014年で31.1歳、29.4歳。あくまで平均値なんで、それぞれバラツキ具合も違うんでしょうけど。
 で、何が言いたいかつ~といくつで結婚するかなんて個人の勝手の上に社会背景が違うんだから、いくつだと結婚しているべきみたいなのにそれほどこだわる必要はないと。おぢさん世代から”オレが若い頃はお前の歳には結婚していた”とか、”結婚して、家庭を持ち、子供を育ててこそ一人前”みたいなお説教(結婚規範)をそんなに気にすることはないんじゃないかと。むしろ本書でも言及してますが、こういった”結婚したら幸せになれる”みたいなある種の宗教的な思い込みがむしろ問題だと。

  「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている
  そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた

  ネット上では、なんの根拠もなく、「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」
  などどいう記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる

 もうひとつ、本書で言及しているのは”女性の結婚動機(離婚も)として経済的理由が大部分を占める”との話。身も蓋もないと思われるかもしれませんが・・ 
 結婚という観点でターニングポイントになっているのが”男女雇用機会均等法(1987年)”と時を同じくして発生したバブル景気。女性の社会進出を推し進めたこの法律とバブル景気で女性の収入が上昇したんですが、統計データとしては年収が高い女性ほど生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向にあるそうです(*4)。つまり仕事に生きがいを感じてバリバリ働いて金を稼ぐ女性ほど結婚しない傾向にあると。ですんで、今少子化高齢化対策として勧められている”女性活躍のための重点方針”が女性の希望や夢を実現させるのに有効でも少子化対策になるかというとどうなんだかな~、というのはまた別の話。

〔”人生後期高齢単身者”の話〕
 実は本書を読んで根が深いと思ったのはこっちの話
 上記の未婚者がそのまま歳をとっていくこともそうですが、離婚で独身に戻ることもあるります。男女の平均余命の差+夫婦の年齢差を考えると統計的には高齢女性が単身になる場合が多いし、夫が妻に先立たれることになれば同じく単身だし。
 こっちはおぢさんの説教でどうにかなる話ではなく、本書で指摘しているように”ソロ充(*5)”つまり”ソロで生きる力”、精神的な自立をどう作るか

  「ソロで生きる力」とは「精神的な自立」を意味するが、
  自立とは何者にも依存しないということではない。
  むしろ、依存することのできる多くのモノや人に囲まれて、
  自ら能動的に選択し、自己決定できる人こそが「精神的自立」と解釈したい

 これを読んで思い出したのが”海街diary”でのエピソード
 恋人だった海猫食堂のおばちゃん”幸子さん”を末期ガンで亡くした”山猫亭”の主人の福田さん。口は悪くて偏屈な関西人ですが、意外にいろんな人に慕われている人。突然、遺言状を作ると言いだして相談にのっているのが幸子さんの相続でいろいろ世話になった信用金庫の坂下さん(すず姉 佳乃さんの恋人)。福田さんの言葉

  天涯孤独て気取ってみても そう簡単に人は独りっきりになれるわけやない
  それは多分 ありがたういことなんやろな

これに対しての坂下さんのコメント

  孤立と孤独は別なものだ
  あの人は孤独を好んではいるけれど 孤立してるわけじゃないからね

 私自身、リアル老後がひたひたと忍び寄る昨今、肝に銘じておきたいものです

 本書は独身の人のみならず、中高年の単身者、それと高齢単身者予備群(全ての人に可能性があります!)が一度は読んどいた方がいいかもの本です

p.s.
 本書に”結婚しない(したがらない)男の見分け方”の12の質問ってのが載ってます。○が8ケ以上なら真正ソロ男で結婚したい女性は近づかないほうがいい、3ケ以下なら良き夫になる資質あり。キーになる3つの質問に○がつく男はそれだけでソロ男なのでお付き合いしないほうが良いというチェックリスト。ちなみに私は○が9ケ、キーの3つは全て○でした・・・(笑)

《脚注》
(*1)標準世帯
 総務省統計局の定義。”標準”が”あるべき姿”と誤解を招くという理由で最近は”モデル家族”というんだそうですが、この手の言い換えってなんだかな~~ ”夫は一生サラリーマン、妻は専業主婦で離婚しない”というライフコースは同じだそうですが、今やこんな人生は少数派だそうです(知恵蔵の解説より)
(*2)29歳ぐらいだとそうとう焦りの様相が見えてきます
 水谷ミミが1979年に発表した”もうすぐ30”って曲があるんですが、これなんか29歳でもう”もうすぐ30! だんだんババァだ♪”と歌ってます。恐いもの見たさで聴いてみたい方はこちらをどうぞ
(*3)東京タラレバ娘(東村アキコ、講談社)
 ”あの時こうしてタラ・・”、”あそこでこうしてレバ・・”脚本家の鎌田倫子(33歳独身)は高校時代からの親友の香や小雪と焦りながらも”女子会”をを繰り返す毎日。そんな所に人気モデルのKEYが現れ・・・
 第二巻のあとがきマンガで作者が友人から
  マンガだとしても もうホラーマンガですよ コレ!!
 と責められているシーンがあるんで、独身女性にとってはホラーマンガみたいです
(*4)生涯未婚率が上がる(逆に男性は下がる)傾向~
 ”生涯未婚率”とは日本の人口統計で”50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合”を意味しますが、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと。
(*5)ソロ充
 言いだしっぺは恋人と破局したあとのしょこたんこと中川翔子
  最近”ぼっち”っていう言葉を”ソロ活動”って言い換えると強くなれた気がする
  毎日”ソロ充”してます

から。こう言う言い換えはとっても賛成です!

”霊的な祝福付き”の首都大改造計画、ってありでしょうか?(帝都物語/日本橋)

 ども、自分の結婚式はキリスト教ですが、葬式はたぶん仏教になりそうなおぢさん、たいちろ~です。
 おそらく、日本人ってのは世界でも類をみないほど宗教や占い、おまじないに関してよく言えば寛容、悪く言えば無節操な国民性なんじゃないかと思います。
 生まれたら神社にお宮参りに七五三、結婚式はキリスト教、葬式は仏教。正月に初詣に行って、夏にはお盆、秋にはハロウィン(*1)、年末の一大イベントがクリスマス・イブ。神社に行けばおみくじを引くけど、恋愛運は星占い、結婚式や葬式は六曜にこだわるけど、家を買う時は風水云々言い出すし。まあ、バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!(*2)みたいのもありますが。
 こんだけ無節操だと”霊的に祝福された都市計画”なんつ~のも滑稽無糖って訳でもないのかな~なんて。まあ、議会で予算が通るかどうかはビミョ~ですが。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな都市計画から始まるサイキック奇伝小説”帝都物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。東京の日本橋(上)と欄干に飾られている麒麟です。

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【本】帝都物語(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 明治40年、東京を軍事のみなならず霊的にも祝福された都市に改造する、渋沢栄一を中心に秘密裏にプロジェクトが開始された。集められたメンバーは天皇家に使える”土御門一門”、理学博士”寺田寅彦”、平将門の復権を目指す”織田完之”、若き大蔵官僚の宮辰洋一郎”など。そして陸軍からは陰陽道にも通じる”加藤保憲”の姿もあった・・・
 平将門の怨霊により帝都破壊を目論む”加藤保憲”とその野望を阻止すべく立ち向う人々との物語がここから始まる(第一巻”神霊編)
【旅行】日本橋(東京)
 東京都中央区の日本橋川に架かる橋。読み方は”にほんばし”。大阪にも道頓堀川にかかる”日本橋”というのがありますが、これの読み方は”にっぽんばし”。初代は1603年(慶長8年)に徳川家康の全国道路網整備計画によって作られた五街道の起点。そのため、今でも国道1号線を始めとする7つの国道の起点となっています。

 さて、”帝都物語”の第一巻ですがまずは主要キャラクターの登場編。上記以外にも文学者の”幸田露伴”に”森鷗外”、物理学者の”長岡半太郎”、地政学者”カール・ハウスホーファー”など、実在の人物がキャラクター化して話を紡ぐってのは”文豪スレイドックス(*3)”の御先祖様って感じでしょうか?

 本作の悪役といえば”加藤保憲”。あらゆる魔術に精通し、陰陽道を始め暗殺術の蠱毒だの式神使いもよくし、剣も達人。中国語や朝鮮語にも通じてるんだから大陸進出には重宝されたんでしょうな。確かに有能な人のようで登場時には陸軍少尉ですぐに中尉に昇進しています。
 悪者感満載の”加藤保憲”ですが、ちょっと意外だったのはこの人少尉とか中尉ってことで軍隊組織の中では意外と偉くないんですな。態度はLサイズで、大佐ぐらいの感じなんですけど。本を読んでいて困るのが”組織の中での地位”ってのがけっこう分かりにくいことです。これによって組織の中での権力(意志決定への影響力、動員できるリソースなど)がどの程度あるかが決まるンでリアリティが違ってきちゃうんで。調べてみると時代や組織でかなり異なりますが”少尉”だと小隊長(10~50人)、”中尉”だと中隊長(4個小隊相当 200人程度)だそうです。現在の会社組織だと200人の部下がいるならかなりの偉いさんですが・・・ 偉そうな加藤中尉ではありますが、原隊に帰れば中間管理職としていろいろ苦労してんでしょうかねぇ・・・

 さて、第一巻のメインの話は東京を”霊的に祝福された都市”に改造するための基礎設計をするってことです。渋沢栄一をリーダーとするプロジェクトですが、初期段階なんで防災計画の専門家、裏付けとなる財政の担当者、防衛の観点から軍部の関与なんかはわかりますが、これに”霊的”が混じると陰陽道の専門家が入るわ、なぜだか物理学の専門家まで。まあ、こんだけ専門の違うメンツを集めてのプロジェクトだからまとめんの大変だろうな~~ という出だしです

 ところで、平安時代や江戸時代ならともかく、”霊的に祝福された建築”なんてできるかというと実は近代でもあったりなんかするんですな。その一例が本書の中でもちらっと出てくる”日本橋”がそれ。写真では上に走っているのが首都高速道路でその下が日本橋です。橋のたもとにあるのが”獅子”で、橋の中央にあるのが霊獣”麒麟”。麒麟は東京市の繁栄を、獅子は守護を表しています(中央区教育委員会の看板より)。橋の完成は1911年(明治44年)で、時代的には日露戦争終了後(1905年)、江戸幕府が締結した不平等な”日米修好通商条約(*4)”から脱却し新しい”新日米通商航海条約”を締結した年で、議会制民主主義を推進する第一次護憲運動(憲政擁護運動 1912年~)の直前あたりです。日本史の授業でやりましたが覚えてますか? 私はまったく忘れてましたが
 ”合理主義”的なメンタリティとしては江戸時代よりは現代に近いと思われる時代なんですが、それでも守護獣たる”獅子”や霊獣たる”麒麟”が登場するんですな。”橋”を”河川を横断する道”という機能に限定すれば多少の意匠はあっても獅子や麒麟である必要はないはずなんですが、それでもこの獣にしたのはやっぱり”霊的な祝福”を望むメンタリティが色濃くあるんではないかと。さすがに現在で”霊的に祝福された都市計画”を正面切って国会や東京都議会に提出したら会議はけっこう紛糾しそうだし、ネットでは格好の炎上ネタになりそうですが、個別建築物の意匠レベルで極小化しちゃえば意外とすんなり通っちゃうかも。まあ、最後は小○さん次第ってことになりそうですが・・・

 本書の中で語られる都市計画のなかでユニークさでは出色なのが”寺田寅彦”の提案した”地下都市構想”。約100尺(約30m)の地下に建築物の基礎を作って帝国の中枢建築物を移し地下道路や鉄道で結んで、地上には緑地や水路を作るというもの。渋沢栄一はノリノリですが、大蔵官僚の宮辰洋一郎は渋い顔ですが、当たり前です。国家財政の困窮でストップしていたのが、事業公債の発行でやっとこ財源の裏付けできたのに、地下都市なんか作った日にゃいったいいくら掛かるネン!!
 現在、2020年の東京オリンピック目指して首都高速道路の老朽化対策をどうするかの議論をやっていますが、高架のまま改築すると約1,400億円で、地下化すると約5,000億円かかるんだとか。予算ベースでこれですから実際にやったらもっと掛かるんでしょうね。たかだか道路の改修工事でこんだけかかるんだから、街ごと地下化すればいったいどんだけ掛かるんでしょう?? 学者の論としてはありうるんでしょうが、国家財政を預かる大蔵官僚としては”はい、わかりました”と言えるシロモノではないんだろ~な~

 ”帝都物語”における加藤保憲の悪者話はこれからのようですが、前から一度読んでみたかったので(*5)、これからが楽しみです

《脚注》
(*1)ハロウィン
 最近盛り上がっているハロウィンですが、元々は古代ケルト人が起源の秋の収穫祭り兼悪霊なんかから身を守る行事。でも、正確に理解できる人ってどれぐらいいんだろ? どう見ても政府公認のコスプレイベントとしか思えんが・・・
(*2)バレンタインデーみたいなマーケティングの勝利!
 元々はローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌス(バレンタイン)に由来する記念日ですが、日本式の女性から男性にチョコレートを贈るというのはモロゾフ製菓が考案したんだとか。まあ、土用の丑の日にウナギを食べるを定着された平賀源内みたいなもんかと。
(*3)文豪スレイドックス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川コミックス・エース)
 横浜を舞台に異能と呼ばれる超能力を駆使して戦う福沢諭吉率いる”武装探偵社”と森鷗外をボスに仰ぐ”ポートマフィア”の抗争を描くサイキックアクションコミック自殺マニアの太宰治やらやたらコンプレックス丸出しの芥川龍之介など、文豪をイメージしたキャラ設定が秀逸。お勧めです。
(*4)日米修好通商条約
 1858年(安政5年)に日本とアメリカの間で結ばれた通商条約。日本に関税自主権がないなど不平等な内容でした。で、関税自主権を回復したのが”新日米通商航海条約”(1911年)です。
(*5)前から一度読んでみたかったので
 本書は1985年の発表、1987年に日本SF大賞受賞、映画がヒットしたのが1988年なんで、30年近くほったらかしにしてたんだなぁ。ちなみに本書を読む気になったのは、”虚実妖怪百物語(京極夏彦、KADOKAWA)”のモトネタだったから。こちらも面白い本。詳しくはこちらをどうぞ。

こんなゲス不倫はいやだ、ミステリー編(幻の女/カボチャ)

 ども、ゲス不倫をやるコンジョも金もないおぢさん、たいちろ~です。
 某アイドルからこっち”ゲス不倫”ブームが続いております。とうとう某政党の幹事長内定が一転離党騒ぎに。人様の家庭の話なんだからほっときゃいいモノを。だいたいいい年したおっちゃんとおばちゃん何だから、”さわかや高校球児”みたいな幻想を求めるのもとうかと思うんですが・・・
 まあ、政治家としては命取りになってるようなスキャンダルですが、これが本当に命にかかわるとなると話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは不倫の果てに死刑宣告をされた男の話”幻の女”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムで見かけたカボチャです。

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【本】幻の女(ウイリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 妻と離婚でもめているヘンダースンは、妻といくはずだった観劇を断られたはらいせに町でゆきずりの女とデートをする。家に帰ると妻は何者かに殺されていた。死刑を宣告されるヘンダースン。彼が無実であると感じた刑事バージェンスは、ヘンダースンの愛人キャロルと友人ロンバートとともに彼の無実を証明できる”幻の女”を探し求める。しかし手掛かりとなる人々が次々と不審な死を遂げていくのだった・・
【花】カボチャ(南瓜)
 ウリ科カボチャ属に属する果菜の総称。
 本作で”幻の女”かぶっている帽子が形や大きさ、色がかぼちゃそっくり。日本でカボチャというと濃い緑を思い浮かべますが、本作のは”燃えるようなオレンジ色”。おそらく、ハロウィンで使われる”ペポカボチャ”だと思われます。


 ところで”幻の女”ですが、別に不倫ネタだからじゃなくて、先日読んだ”ミステリ国の人々(*1)”で紹介されてたんですね。

  夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった

で始まる”幻の女”。いや~、この書き出しで思わす読んでみよう!って気になりましたね。やっぱりミステリには名言が良く似合います

 死刑を宣告されて刑務所に収監されているヘンダースンのもとをバージェンス刑事が訪れる。彼を逮捕したのはバージェンスなんですが、どうも彼は無実ではないかと考えてるんですね。その理由が裁判でヘンダースンが提出したのが”女、帽子”と”変てこな”という形容詞。あまりにもでたらめで、八方やぶれすぎると

  すこしでも嘘があれば、もうすこしは贅肉がついているはずだ。君のは骨ばっかりだ
  潔白な身でなければ、ああも徹底的に自分のチャンスをつぶせるわけがない
  疚しいところがある人間は、もっと狡猾に立ちまわるものだ

ただ、自分は刑事として捜査はできないので、だれか信用できる人間を探して依頼しろと。なんだか、切れ者なのかい~かげんなのか分かんない人です。で、その人間は金や名誉ではなくヘンダースンのために情熱を持って打ちこめる人間が必要だと。ヘンダースンは友人の”ロンバート”の名を上げるが、彼は5年契約でもうすぐ南アメリカに出国する予定。そんな彼がはたして手助けをしてくれるだろうかと悩むヘンダースン。そんな彼に対して、バージェンスは

  友情に年齢制限はない。昔もっていた友情なら、いまだって持っている
  もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ

  その男が、きみの生命より五年契約の仕事のほうを大切にするようだったら
  どっちみち役にはたたない

いや~、なかなかハードボイルドな発言です。友情を語るなら、これぐらいクールでありたいものです。

 ロンバートの登場で事件は新たな展開をみせ始めます。”幻の女を見ていない”と証言した証人や、キーアイテムのになるカボチャの帽子の行方を追いかけ、接触するたびに、その人達が次々と不審な死をとげていく喪失感”死刑執行前○○日”と刻々と迫りくるタイムリミットへの焦燥感、こういった盛り上がりはまさにミステリの名作です。

 実は、こんな感じの話を読んでると昔読んだ和田慎二のコミック”愛と死の砂時計(*2)”を思い出しました。調べてみると、”幻の女”がモトネタなんだとか。すいません、余談です。

 ウイリアム・アイリッシュという人は”言葉”の使い方が実にうまい作家です。
 若かったころの自慢をするちょっと出の老婆に対して

  ”時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ
  ロンバートはそんなふうに思った
  ”時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ

 女性に向かって言ったら、間違いなく張り倒されます

ロンバートと”幻の女”が刑務所に駆けつける車中では

  自動車に乗っているのは、もはや、かれら二人だけではなかった
  先刻からつづいている沈黙のうちに、いつのまにか、第三者が乗りこんできて
  いま、二人のあいだに席を占めいていた
  それは氷のような経帷子をまとった”恐怖”であった
  その見えない腕が彼女を冷たく抱擁し、
  その凍った指先が彼女の喉ぼとけをさぐってい

ホラー小説(あんまり読みませんが)ばりのスリリングな描写です
 やっぱし、ミステリの言葉ってこうありたいもんです。

  冷静に考えると、ヘンダースンはキャロルという若い愛人は持ってるし、キャロルも妻子持ちと知ってヘンダースンと交際しているし、ロンバートもヘンダースンの奥さんもいろいろ訳ありと”ゲス不倫”で文○砲で撃たれてもしょうがなさそうな人間関係。まあ、ハッピーエンドっぽくはあるんですが、い~のかな~
 そんな中で一番美味しいとこ持っててるのが刑事のバージェンスでしょうか。このあたりはぜひ本書をお読みください(*3)。お勧めの1冊です。

《脚注》
(*1)ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。詳しくはこちらをどうそ
(*2)愛と死の砂時計(和田慎二、MFコミックス)
 女子高生”雪室杳子”の婚約者である担任教師”保本登”が結婚に反対していた学園長殺しの容疑で逮捕、死刑を宣告される。彼の無実を信じると結婚する杳子は私立探偵”神恭一郎”に調査を依頼するが、証人となる人間たちが次々と殺害されていく・・・
 ”スケバン刑事”にも登場した探偵”神恭一郎”のデビュー作。初出は”別冊マーガレット”という少女マンガですが、なかなかどうして本格ミステリーとしても楽しめる名作です。
(*3)本書をお読みください
 ハヤカワ文庫で新訳版も出ていますが、私は”ミステリ国の人々”で引用されていた稲葉明雄訳で読みました

ジャック・リーチャー=ハードボイルド+ウェスタン?(キリング・フロアー/偽札)

 ども、ハードボイルドものけっこう好きなあるおぢさん、たいちろ~です。
 夏休みのヒマつぶしということで、DVD大処分。溜まってるのを何本か見まして、その中にトム・クルーズ主演の”アウトロー(*1)”と”ジャク・リーチャー(*2)”の二本立て入ってました。こういうドンパチやってるアクション物ってのもけっこうお気になんですが、wikipedia読んでるとどうも原作と映画ではキャラが違っていると。原作だと巨漢でダークなキャラを小柄で明るいトム・クルーズが演じているということで(*3)、こりゃ原作も読んでみんことには!
 ということで、今回ご紹介するのはジャク・リーチャーシリーズの原作第一作”キリング・フロアー”であります。
 しかし、映画版の原作は9作目だというに律儀に1作目から読みだすって、ビブリオマニアの因果なとこなんでしょうかねぇ


写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀海軍基地にあるATMです
偽札の写真を載っけたかったンですが、そんなの持っていると警察きそうなんで・・

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【本】キリング・フロアー(リー・チャイルド、講談社文庫)
 ジョージアの田舎町で元軍人、今は放浪者の”ジャック・リーチャー”は身に覚えのない殺人容疑で逮捕される。釈放された彼だったが、殺された男が兄であり、財務省で通貨偽造を捜査していたことを知る。彼は刑事部長の”フィンレイ”女性巡査の”ロスコー”とともに見えない敵に迫っていく・・・
【道具】偽札(ニセ札)
 偽造貨幣。細かく言うと偽造された貨幣が”偽金(贋金)”でそのうち紙幣の偽造が”偽札”。当然ながら偽造又は変造のみならず使っても(まあ、使うために作るんですが)犯罪行為です。対象には自動販売機などの機械も含まれます。
 本書の中で偽札を作成する4つの問題として”印刷機、金属板(原版)、インク、紙”とありますが、実際に偽造防止のため、紙、インク、透かし、ホログラムなどかなり高度な技術が使われています。これに対応するATM等なども高度な技術が採用されているのでほとんど偽造紙幣が使えない仕様になっています。”ほとんど”というのは鑑別技術自身がトップシークレットのため、一般市民どころか機械を作っている社内でも一部の関係者以外どうやってるのか知らないからです。


 さて、原作読んでみた感想なんですが、ジャック・リーチャーって”ダークなキャラ”というより”ハードボイルド”と”ウェスタン(西部劇)”の今風なハイブリッドって感じでしょうか。

〔減らず口はハードボイルドな男の特権!〕
 ”ハードボイルド”てのはタフガイな探偵が犯人とガチでやり合うってものありますが、その魅力の一番ってのは”名文句”言い換えると”減らず口”にあるんじゃないかと。読んだ中だと海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”あたりがいいですねぇ(*3)
 本書に出てくるジャック・リーチャーの減らず口から

  浮浪者じゃない。放浪者だ、フィンレイ。えらいちがいだ

   (尋問をする刑事部長のフィンレイに)

  働きたくないからさ。十三年働いたあげくが、このありさまだ
  軍の言いなりになっていた気がする
  だから、もうごめんだ。これからは自分のやりたいようにやる

   (”どうして働いていないんだ”というフィンレイの質問に対して)

  三人だけだ。四人目は生かしておいて、質問に答えさせる
   (留守中の家を4人の犯人に襲われたロスコーの”四人とも殺した?”という
   問いに対して)

  ゴキブリ退治の薬をまくとき、なにか感じるか?
   (犯人5人を返り討ちにしたことに対して問い詰めるフィンレイに対して)

 いや~、渋いですな。特に2番目なんかは定年退職後にさらに働けとか奥様に言われたら、言い返すのに使ってみたい名言です。

〔流れ者はウェスタンの基本フォーマット〕

 ある日、どこからか流れ者がやってくる。困っている町の人を助けるために町を支配する悪者をやっつけて、またいずれかへ去っていく・・・ ウェスタンの基本フォーマットです。子供の頃に見た”シェーン(*4)”なんかが代表作です。
 ジャック・リーチャーも同じく”放浪者”。どっかからやってきて悪の組織と対決するってのはウェスタンの基本フォーマットって感じですね。本書ではロスコーとけっこういい雰囲気でチョメチョメしてますが、最後どうすんだろ~な~って読みながらも気になってました。

〔一介の民間人のはずが、問答無用で犯人を射殺してますが・・・〕
 当たり前ですが、アメリカや日本の警察官というのは地方公務員です(警察庁は国家公務員)。ウェスタンに出てくる保安官というのもまあ郡とかの公務員。これに対しウェスタンに出てくる”賞金稼ぎ”というのは調べてみたら州法務省の許可を受けた民間業者(許可のいらない州もあるらしい)。
 で、我らがジャック・リーチャーと言えば、元軍人ではあるものの完全な民間人。事件に関係した発端は完全に巻き込れ型で、殺されたのが兄とかでなければたぶんそのまま町を出てった可能性のが高そう。にもかかかわす襲ってきた敵をあっさり射殺してんですな~~ いいんだっけ、これ?
 考えると、私立探偵の前職って警察官という設定はよくあるんですが、これだと職業倫理として”逮捕(生きて捉える)”が前面にでるのに前職が軍人のリーチャーだと”まず自分が生き残る(ためには相手を殺すのもやむねし)”っていう発想になっちゃうんでしょうかね。
 ジャック・リーチャーの行動原理をまとめたセリフがこれでしょうか

  状況判断。長い経験から、私は状況判断をする術をみにつけていた
  予期せぬことが降りかかったら、時間をむだにしてはならない
  どうしてそんなことになったのかなどと考えてもしかたがない
  だれかのせいにしてもしかたがない
  だれが悪いのか突きとめようとしてもしかたがない
  二度と同じまちがいをしないためにどうすればいいか考えてもしかたがない
  そんなことはあとでやればいい
  生き残りたかったら、まずは状況判断をすることだ
  事態を分析する。マイナス面を見定める。プラス面はなにかと考える。
  それをしたうえで、あとからほかのことをするチャンスを見つければいい

 引用が長くなってすいません。でもこのセリフ、すごくアバウトに聞こえるかもしれませんが、ビジネスでも犯人探しとか原因究明やってて判断が遅れるってのが、実はあったりなんかして・・・

 ”ジャック・リーチャーシリーズ”、けっこうはまりました。まだ、続編あるんで読んでこっと!

《脚注》
(*1)アウトロー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ピッツバーグでライフルによる無差別殺人事件が発生した。元アメリカ陸軍のスナイパー、ジェームズ・バーが容疑者として逮捕されるが、彼は弁護のために元米軍憲兵隊捜査官で、現在は流れ者のジャック・リーチャーを呼ぶことを要求する。
 ジャック・リーチャーシリーズの第9作を原作とする映画第1作
(*2)ジャク・リーチャー(主演 トム・クルーズ、監督 エドワード・ズウィック、パラマウント)
 ジャック・リーチャーの後任、スーザン少佐が国家反逆罪で逮捕される。リーチャーは彼女の無実を証明し、元部下を殺害した真犯人を追い詰めるべく捜査を開始する。そこには政府の陰謀が隠されていた・・・
 ジャック・リーチャーシリーズの第18作を原作とする映画第2作
(*3)海外では”フィリップ・マーロウ”、日本だと”沢崎”~
 ”フィリップ・マーロウ”は、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に登場する探偵。ハンフリー・ボガート主演の映画なんか渋いですな~~
 ”沢崎”は原りょうの”沢崎シリーズ”に登場する探偵。極端に寡作な作者なので作品数は少ないですが、ハードボイルド小説としてはイチ押しです
(*4)シェーン(主演 アラン・ラッド、監督 ジョージ・スティーヴンス、パラマウント)
 流れ者のシェーンは悪徳牧畜業者のライカーに苦しめられるジョー一家の息子”ジョーイ”の為ライカー立ち向かい、彼を倒した後にワイオミングの山へと去っていく・・・
 去っていくシェーンに必死に呼びかけるジョーイのシェーン! カムバック!”は映画史に残る名シーン

インドやネパールと日本の文化の違いって本書を読んでみるとか行ってみるとかしないとピンとこないかもしれませんが(深夜特急/リキシャ)

 ども、ネパールとインドに行ったことのあるおぢさん、たいちろ~です。
 といっても、もう両方とも四半世紀以上昔の話ですが。ネパールには”世界で最も美しい谷”と言われた”ランタン・リルン(*1)”へのトレッキングで、インドにはアフリカからの帰りに”ボンベイ(*2)”でのトランジットで半日いました。この程度で知ってるというのもおこがましいんですが、この本を読んでると確かにあったな~というネタも。
 ということで、今回ご紹介するのは貧乏旅行のバイブル”深夜特急”からインド・ネパール編であります


写真上はネパール カトマンズのリキシャ(wikipediaより転載)
写真下は中尊寺で見かけたベロタクシーです(たいちろ~さんの撮影)

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【本】深夜特急(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。今回読んだ3巻でやっとデリーに到着(しただけ)。全6巻の半分でこのスピード感って無計画さこの手の旅行の醍醐味なんでしょう、たぶん。
【乗り物】リキシャ
 いわゆる”人力車”のこと。日本だと観光地だと今でもある人が引っ張るタイプを思い出しますが、本書で沢木耕太郎が乗ったのは”サイクルリクシャー”と呼ばれる自転車タイプのようです。写真下の”ベロタクシー”のベロ(Velo)は自転車という意味で電動アシスト付きだそうです。両方ともタクシーとして使われていますが、最近のはずいぶんハイカラなんですなぁ


 今回のブログを書くに当たり、昔の写真とかビデオ(*3)とか探したんですが行方不明。どこ行ったんだろう? せっかく自慢したかったのに! ということで今回は記憶に頼って書いてます。

 本書ではインドのアシュラム(共同生活体)で生活したり、ネパールのカトマンズでぶらぶらしたり、ガンジス河のほとりの死体焼き場で茫然としたりといったお話。日本とは文化や風習、宗教感や生死観、生活水準がまったく違うんでこのへんの空気感ってのは、本書自体を読んでみるとか、実際に行ってみるとかしないとピンとこないかもしれません。でも、多少とも体験した感じからいうとあるあるネタがけっこうあります。いくつかをご紹介

〔最大のインパクトは死体焼き場でしょうか〕
 沢木耕太郎がベナレスで死体焼き場を訪れる話がでてきます。台地の上で死体を焼いて燃え尽きた灰をガンジス河に流すとか小舟から死体を流すとか,その死体が河から浮いてくるとか。そのすぐ近くに沐浴所があって平然と河の水に浸っているとか。
 私もネパールのパシュパティナー(ネパールの聖地)で同じようなのを見ました。時間が遅かったのでもう火葬はしてませんでしがた、けむりの残る台地から灰をバクナティ川(ガンジス河の合流する聖なる川)に流していて、その横でやっぱり沐浴を。
 日本の仏教も火葬という意味では同じですが、見るからに清潔そうな火葬場の炉で火葬して骨上げで骨壷に納めてというのとはかなり違います。日本だと棺桶に入れて焼けるところは見えないんですが、インドの場合は布にくるんで(体の形が見える!)、面前で焼くんですがらそりゃ違うでしょうな。お骨も日本はお墓に納めるものですが、インドでは聖なるガンジス河に流す。今風に言うなら”散骨”なんでしょうがやっぱり日本のそれとは違うと思います。
 私も話には聞いていましたが、火葬そのものを見たわけでもないのにインパクトありましたね。火葬そのものは普通の日本人にとってもこうなんですがら、埋葬が当たり前のキリスト教徒だともっとすごいんだろうなぁ

〔とにかく値切らないとダメ!〕
 ネパールに行ってフリーでカトマンズ市内観光をした時のこと。若いおにいちゃんと小さい弟が声をかけてきて、市内観光のガイドをするとのこと。いくらだったか忘れましたが、ネパールの水準からするとまずますの値段でしたがまあいいかとお願い。この時値切ればよかったんですが、なんせ海外旅行ビギナーで値切るなんて感覚なくて(関西人なのに)、ネパール語なんか”ナマステ(こんにちわ)”ぐらいしか知らん中、まあ英語がしゃべれたんで2時間ほどダルバール・スクェア(旧王宮広場)だとかスワヤンプーナート(有名な寺院)だとか回って。で、最後にお金を払う段になったらなんと倍の値段を請求されました。”○○ルピーでしょ?”と言ったら、”for an hour(1時間ごとに)”だと。まあ、こっちの英語力のなさのせいだというのと、頼るすべのない異国の地でケンカになるのも怖いのでまあ払いました。高い勉強代についちゃったな~~と
 でも、沢木耕太郎って、ちゃんとビジバシに値切ってるんですな。リキシャに乗る時の値段交渉で”2ルピー”を”1ルピー25パイサ”とかの交渉を延々と。これって日本円にすると45円程度ですぜ。しかも降りる時にまた”2ルピーの約束だった”というリキシャの車夫にまた延々と交渉を。まあインドの人のバイタリティも凄いですがひるまず交渉する沢木ってのもすごいな~~

  果てしない言い分を続けながら、まさにこれがインド風なのだな、
  とどこかで面白がっている自分を感じてもいた

 こういう根性と感性がなければ貧乏旅行なんでできないんでしぃうなぁ。私には出来んかったけど・・・

〔とにかくチャイはよく飲む〕

 ランタン・リルンのトレッキング中は私も”チャイ”は良く飲みました。”チャイ”というのはインド式に甘く煮出したミルクティーのことで、トレッキングではそこここにある茶店のを買っていました。一つには高山病予防には水分を多めに取るってのもありますが、第一の理由は生水はNGだから。日本人が生水を飲んだ日にゃ一発でお腹壊してソーゼツな下痢に。チャイはまあ煮沸してあるので大丈夫ってとこですし、コカコーラなんかは街中では売ってますが、チャイに比べるとかなり割高でしたしね。まあ、それでも日本よりはすごく安いんですが
 沢木の場合は下痢対策とはかいてませんが、けっこうよくチャイを飲んでいます。私の場合は茶店だったんで、コップで出てきましたが、沢木は列車の中で飲んでるシーンもあって、こっちは素焼きのぐい飲みのような容器で売っていたとか。飲み終わったら容器を窓から叩きつけるようにして割ってしまうとのこと。まあプラスチックじゃないんでエコっぽいんですがねぇ。私もやってみたかったな。ちなみにこのチャイは1杯30パイサ、約10円だそうです。

 てなぐあいの旅行でしたが、あの頃は若かったな~ また行ってみたいな~~
 今回はドヤ話になってすいません。本書はけっこうスルっと読める本ですので、ぜひご一徳のほどを

 あっ、そうだ。私の中学校の同級生が2015年に首都カトマンズで大地震があった時、久々に名前を聞いてびっくりしました。ヤプー(*4)、元気にしてる?

※”深夜特急”は1974年ごろ、私が行ったのが1980年代後半なので現在とはかなり事情が異なっていると思われますので、これから行かれる方の参考になるかどうかはわかりませんので念のため

《脚注》
(*1)ランタン・リルン
 ランタン・リルンはヒマラヤ山脈の山の一つで標高7,234m。当然ながら素人がそんな高山に登れるはずもなく、トレッキングは最奥の村キャンジンゴンバ(それでも標高3,730mとほとんど富士山頂とほとんど同じ)までを往復するツアー。シャクナゲが美しかったです。
(*2)ボンベイ
 当時の呼び方で現在では”ムンバイ”(1995年に変更)。首都”ニューデリー”を上回るインド最大の都市です。
(*3)昔の写真とかビデオ
 写真はもちろんスチルカメラ。ビデオは”S-VHS-C”という規格。当時としてはコンパクトなタイプだったんですが、それでもかなり肩からかけないと持ち運べないような大型の機械。スマホで写真から動画からとれる現在と比べると隔世の感があります。
(*4)ヤプー
 この男は中学生でありながら”家畜人ヤプー(沼正三、幻冬舎)”というなかなかにマニアックがSF・SM小説を愛読してまして、で、付いたあだ名が”ヤプー”です

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