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2017年8月

歴史への転換点。バブルに踊った人達の記憶が記録になっていく時期に来てんでしょうか(バブル 日本迷走の原点/経団連会館とフクロウのモニュメント)

 ども、バブル時代を駆け抜けたはずなんですが、な~~んも良い思いした記憶のないおぢさん、たいちろ~です。
 時代には”歴史への転換点”てのがあるような気がします。”歴史の”ではなく”歴史への”です。まあ、散文的な言い方をすると、リアルな”思い出”とか”体験”といった”記憶”から俯瞰的に事実を見つめる”記録=歴史”に転換する時かと。
 まあ、”歴史の転換点”というのは第二次世界大戦終結とか、9.11テロみたいに、振り返って見た時に”この時、時代が動いた”っぽい社会的なコンセンサスがありそうですが、”歴史への転換点”ってのは個人的な関わり方(影響の規模、関わりの深さなどなど)に依存するので個人的にばらつきがありそうです。第二次世界大戦だって戦前・戦中派にとってはあるいは死ぬまで歴史にはならないでしょうし、戦後派にとってはすでに歴史かも。
 で、何の話をするかというと”バブル”の話です。”バブル弾けて20年♪(*1)”、いや四半世紀か・・・ 中高年のおぢさん世代にとってなんとなく”バブル”がぼちぼち”歴史への転換点”に来ているんじゃないかな~~ って感じしてます
 ということで、今回ご紹介するのは最近出版されたバブル本から”バブル 日本迷走の原点”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。
経団連会館(上)とそこにあるフクロウのモニュメント(下 拡大版)です

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【本】バブル 日本迷走の原点(永野健二、新潮社)
 住銀、興銀、野村、山一・・・ 日本を壊した「真犯人」は誰だったのか?(本書の帯より)
 日本経済新聞証券部の記者としてリアルタイムでバブル時代の取材をした永野健二によるバブル史の本。エスタブリッシュ側の政治中枢から一流銀行・証券会社のトップ、バブル紳士と呼ばれた時代の寵児にして破滅していった人まで広範な登場人物たちによって織りなされるバブルの物語は圧巻です
【旅行】経団連会館とフクロウのモニュメント
 ”経団連(日本経済団体連合会)”は東証第一部上場企業を中心に構成される企業の団体で、日本経済の中枢をになう総本山ってとこでしょうか。
 下のフクロウは御手洗冨士夫キヤノン会長が退任時に寄贈したものだそうで、なぜフクロウかというと”フクロウは知恵の使者で経済の象徴”なんだとか。


 別に”平野ノラ(*2)”がきっかけって訳ではないんでしょうが、昨今バブル本ブームのような感じがします。まあ今までだってバブル本ってのは山ほど出版されてるんですが、ここんとこのはどうも”時代の当事者”が書いているのが多いような。
 ”住友銀行秘史(國重惇史、講談社)”、”バブルと生きた男 ある日銀マンの記録(植村修一、日本経済新聞出版社)”、”野村證券第2事業法人部(横尾宣政、講談社)”まどなど。本書も当時一線で働いていた記者の著者なんでかあ、このくくりかな。本書以外はまだ読んでないんですが、これからぼちぼち読んでいこうかと。

  本書の”おわりに”で書いているんですが、本書で取り上げた事実には新しいニュースがあると。

   あの頃には書けなかったこと
   あの頃には見えていなかったこと
   今の時代になって明らかになったこと

があるからだと
 この話でいくと最近の書き手って”あの頃には書けなかったこと”が今になって書いたりできるようになったんじゃないかな~~ って。本書に出てくる懐かしい名前の方ってけっこう鬼籍に入られた方も多いんですよね。それに書き手そのものが一線を離れて自分自身も鬼籍に入ることにリアリティーを感じているのだとしたら(*3)、振り返って”あの時代を記録に残す”ことにある意味での意義を見出しているんじゃないかと・・・

 てなことを考えながら、本書から印象に残ったのを(コトの重要性ではないです)

〔なんでこんなおばちゃんに金貸したんや? 尾上縫〕
 かつて大阪に”東洋信用金庫”という信用金庫がありました。当時確か3,000億円を超える大阪有数の信金だったんですが、預金量に匹敵する3,240億円の架空預金証書を発行して破綻。で、東洋信用金庫を分割して、大阪のほとんどの信用金庫総がかりで救済合併をすることに。この仕事に一時期携わっておりました。
 この事件を引き起こしたのは 章のタイトルに”謎の相場師”と書かれている料亭の女将”尾上縫”。この人に合った事がある訳じゃないですが、破綻を聞いた時には”何でまた、料亭の女将に日本興業銀行を始めそうそうたる金融機関が金かしたんやろか?”と不思議に思ったもんです。他の金融機関も踊ったってのはある意味時代そのものがどっかおかしかったんでしょうね。バブルの狂気の代表的な事件だったのかも

〔他のバブル紳士と一線を画す慶応ボーイ 高橋治則〕
 ずいぶん昔ですがお仕事で”イ・アイ・イ・インターナショナル(EIE)”経由で営業をしたことがあります(まっとうな商取引です)。商談の最終局面でEIE経由の商流が決まったんですが、当時のEIEといえば不動産の買い占めのほうが有名だったので、”なんでまた?(*4)” まあ、当時はそれがお約束だったとしか言いようないんですが。で、この会社の社長が高橋治則。
 なんでこの人が印象に残ったかというと、上記のこともありますが、秀和の小林茂、麻布建設の渡辺喜太郎、光進の小谷光浩といった俗にいうバブル紳士たちとちがって何が夢だったかいまだにわからんという話

  彼ら(他のバブル紳士)はみな、貧しさのなかで生まれ育ち、
  反骨の精神を持って社会と向き合う”まじめさ”があった
  激しい成り上がりの精神があった
  恐喝、、相場操作で逮捕・投獄された小谷光浩でさえ
  私は犯罪にいたる過程と心象風景を正確に理解できると思っている

   (中略)
  (高橋治則は)あえて名付けるなら「慶応ボーイ」の人生だった
  慶応ボーイの世界を軽やかに生きながら
  同時に薄っぺらな「アメリカンドリーム」を実現しようとしていた

    ( )内はたいちろ~さん補記

ざっくりくくると、バブル紳士のメンタリティって戦前戦中生まれで戦後の高度成長期っぽいのに対して、高橋治則はエリート型のそれっぽいのかと。
 サブプライム・バブルとかITバブル、起業家ブームみたいのの動機というかモチベーションの底がいまいち分かりにくい構図に似てんですかね? このあたりもあと四半世紀もすればいろいろ見えてくるかなぁ

〔以外と時代が見えていた人 田淵節也と宮沢喜一 でも知恵だけでは解決できんと〕
 さて、エスタブリッシュ側から2名。一人目は野村証券会長の”田淵節也”。バブルがピークをつける直前の1989年11月に発した”海の色が変わった”、つまり熱狂相場が終わるぞという読み。でもこのままつき進んじゃうんですな。証券会社のトップなんだから相場はある程度読めるのは確かなンでしょうが”これから下がります”とも言えない立場。田淵節也が自嘲気味につぶやいた言葉が印象的

  阿波踊りのようなものだな 踊る阿呆に見る阿呆
  踊っても踊らなくても、その後の暴落局面での投資家の損失は変わらない
  だから、踊らにゃ損々となるのだよ

 至言ではありますが、踊らされて大損喰らった投資家はいい面の皮です

 もう一人が 後に平成の三悪人となった一人”宮沢喜一”首相不良債権処理のために公的資金をぶち込もうとして、大蔵省や金融機関の反対でとん挫した人。その理由は大蔵省の問題先送り論理金融機関トップの保身だというのだからなんだかな~~ 公的資金投入を宮沢首相から相談されたことを元住友銀行会長の西川善文は”ザ・ラストバンカー(講談社)”の中で書いてるそうですが

  頭取は皆、反対したよ。当時は財界も否定的だったからね
  あの時に決めておけば、
  こんな(不良債権処理をめぐって)大騒ぎにならなかっただろうに

といったそうですが、後の祭り。タイミングを外した戦力の投入は役に立たない好例です
 まあ、組織のトップまで上り詰めた人なんだから、それなりに知恵はあったようですが、そんだけでは自体は良い方向にもってけないんでしょうな。
 そういえば、知恵の象徴”フクロウ”の生態って日中は枝などにとまってほとんど動かず目を閉じて休息しているんだとか。フクロウ気取ってっととんでもないことになるってことかしら・・・

 本書は当時を知る人は記憶と重ね合わせて読むとなるほど感のある本。記憶にない若い人も現代史として読んでも面白いです。ご一読の程を

《脚注》
(*1)バブル弾けて20年♪
 おばちゃんたちが”バブル弾けて20年♪”と歌いながら踊っている”キンチョー 虫コナーズ バブル篇”の登場が2012年4月。バブルがいつはじけたかは諸説あるようですが、日経平均株価のピークをつけた1989年大納会(12月29日)の日と考えるとあながち四半世紀というのもはずれではなさそうです。
(*2)平野ノラ
 バブルネタでブレイクしたお笑い芸人。肩パッドスーツロングソバージュ太い眉強い色味の口紅ショルダーホンで”しもしも~”なんつーのはある世代以上の方には懐かしいアイコンで笑わせてくれます。まあ、今から見ると笑っちゃえる時代だったんでしょうなぁ・・・
(*3)自分自身も鬼籍に入ることに~
 國重惇史が最年長で72歳、永野健二が68歳、横尾宣政が63歳、植村修一が最年少で61歳。鬼籍に入るはさすがに失礼ですが定年で第一線を離れるのは確かではないかと・・
(*4)なんでまた?
 EIEの本業は電子周辺機器商社なので、コンピュータ関連の売買をするのがむしろ本業だったんですが、まったくそんな印象なかったですねぇ

”夜は若く、彼も若かった” やっぱりミステリには名言が良く似合う(ミステリ国の人々/パイプ)

 ども、けっこうミステリなんかも読んでるおぢさん、たいちろ~です。
 最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”、不思議なものなどない”百鬼夜行シリーズ”、科学調査の”リンカーン・ライムシリーズ”、アニメではまった”櫻子さんシリーズ”、読書好き垂涎の”ビブリア古書堂シリーズ”、学園ミステリの”古典部シリーズ”や”鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ”などなど。昔は”刑事コロンボシリーズ”、”館シリーズ”なんぞもはまりました~~(1)
 人の死なないミステリも好きですが、やはりミステリといえば殺人事件(できれば連続!) 1841年、エドガー・アラン・ポーによる”モルグ街の殺人”から始まったミステリ

  

殺しも殺したり176年分かぁ~。ナンマンダブ、ナンマンダブ(*2)

 ということで、今回ご紹介するのはそんなミステリの登場人物を扱った本”ミステリ国の人々”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。パイプ屋さんで売ってたパイプです

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【本】ミステリ国の人々(有栖川有栖、日本経済新聞出版社)
 日経新聞の読書欄で52回に渡って連載された、ミステリ小説に登場する名探偵や犯人などなどを紹介したエッセイ集。いや~、政治経済中心の日経読書欄でこんなくだけた企画をやってくれるとはと最初はちょっと驚きました
【道具】パイプ
 タバコを吸うための道具。シャーロック・ホームズのトレードマークでもありますが、これは寡黙で考え込んでるイメージがあるからでしょうか?
 以前パイプを吸ってたことがありますが、パイプってのは紙巻タバコと違ってうまく吸い続けないと火が消えるんですな。で咥え続けることになりますが、これだと喋ってらんないから勢い寡黙になります
 まあ、ヘビースモーカーの探偵ってのはいますが、これからはIC○Sに移行すんですかねぇ・・・


 本書に掲載されているミステリ国の人々を分類すると

  探偵(謎を解く/事件を解決する側の人)      :29名/組(51%)
  犯人(犯罪を起こす/謎を提示する側の人)     :15名/組(26%)
  相棒(探偵の話相手、間違った推理をする盛り上げ役): 6名/組(11%)
  被害者(犯行などの犠牲になる人)         : 4名/組( 7%)
  その他(証言者、立ち位置不明など         : 3名/組( 5%)

   ※組は複数人で1カテゴリのもの(黒後家蜘蛛の会など)

 出典を読んでないのも多いので本書の紹介の印象で分けました。一人の人物が複数に入る場合があったり(アルセーヌ・ルパンなど)と分けるとなるとけっこうめんどう。すいません、ヒマなんです。

 連載時は気づきませんでしたが、ミステリ国の人々ってライバルや脇を固める人も魅力的な人が多いんですなぁ。確かに底の浅い犯罪やトリックしか仕掛けられない犯人しかいなかったら名探偵が名探偵たりえないし、謎の解けない探偵だったら犯人はんばりがいなさそうだし。何でもひとりで解決しているようなハードボイルドな探偵でも協力者(しかも美人!)がいたりするし。ミステリって意外と群像劇なんだな~とか妙に納得しちゃいました

 で、本書から気にいったネタを

〔ミステリの推理は人間心理をふまえた「もっともらしさ」が重要〕
 まずは、名探偵の代名詞たるシャーロック・ホームズ。不思議な謎を鮮やかに解く推理力の人ですが、有栖川が小学生の時にすら”そんなふうに言い切れるものだろうか?”とのツッコミ。ホームズに限らず、偶然に頼っているとか、分・秒単位での正確さがないと成り立たないとか(電車が遅延したらどうなんねん、時刻表トリックみたいな)、ホントにそれが可能?ってトリックもありますが、それはそれで読んで面白ければOK!

  レトリックで言いくるめられる快感にひたればばよい

 至言です

〔男たるもの、一度は雇ってみたい有能な”執事”〕
 優秀で博識で万能に近く主人に忠実な執事のジーヴス。”ジーヴスの事件簿”に登場。すいません。本書を読むまで知りませんでした。ジーヴスの主人が爵位継承をまっている頼りない青年、バーティ・ウースター。ウースターが困った時にジーヴスに泣きついて解決してもらうという話だそうです。のび太君とドラえもんか、君たちは?!
 しかしまあ、有能な執事ってのは男のロマンですな。これが”秘書”となると会社の雇用ですが、”執事”は完全に個人契約。優秀な男が忠実に仕えてくれるってシチュは憧れです。まあ、同じ有能でも”影山(*3)”ではナンですが・・・

〔ミステリには名言が良く似合う〕
 本書の表題では登場ませんが(リュウ・アーチャーの欄でちょっと言及)な”フィリップ・マーロウ”なんぞ渋い名言で有名”男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない(*4)”のあれです。ことほど左様にミステリには名言が良く似合います。本書でのMyNo.1はウィリアム・シュタイリシュの”幻の女”から

  The night was young,and so was he.
  But the night was sweet,and he was sour.
  夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

 いや~、このセリフだけでこの本読んでみようって気になります

〔名探偵はパイプのけむり?〕
 さて、この本の著者は有栖川有栖ですが、もう一人重要な著者が大路浩美表紙、イラストを担当された人です。しかしまあ、こんだけ広範囲なミステリの本を扱っていて、有栖川有栖は少なくとも過去に読んだことある本に追随してたぶん読まれて、しかもそれをイラストにするって相当大変だったんじゃないかと思います。
 名探偵や怪盗、名作なんてなそれぞれ読者がイメージしているアイコンってのがありそう。ホームズならパイプ、ルパンならシルクハットにモノクルハードボイルド(リュウ・アーチャー)だったら拳銃など。作品自体もその作品を代表するビジュアルってのがありそうで”鋼鉄都市”なら脳に電子基板の組み合わせ”太陽がいっぱい”ならヨットとかそれらを組み合わせて描かれる、往年の真鍋博を彷彿とさせるクールなイラストがベストマッチンング。
 Amazonとかでは表紙イラストの人の名前が掲載されないんですが、ぜひこの人の名前も載せて欲しいものです

 本書は、連載終了していますが、ぜひ続編をやって欲しい! 前回は物故されたかた限定で選んだそうですが、次回はぜひご存命の方を含めて長期連載を日経新聞社にお願いするものであります

《脚注》
(*1)最近だと本格モノの”S&Mシリーズ”~
S&Mシリーズ(森博嗣)
 大学助教授の”犀川創平”と学生の”西之園萌絵”による理系ミステリ
百鬼夜行シリーズ(京極夏彦)
 古本屋主人にて憑物落としの”中禅寺秋彦”による妖怪系ミステリ
リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー)
 科学捜査のスペシャリストで四肢麻痺の”リンカーン・ライム”による安楽椅子探偵ミステリ
櫻子さんシリーズ(太田紫織)
 標本士にして骨大好きな美女”九条櫻子”によるボーンコレクター系ミステリ
ビブリア古書堂シリーズ(三上延)
 美貌の古本屋店主”篠川栞子”によるマニアック古書系ミステリ
古典部シリーズ(米澤穂信)
 省エネ高校生”折木奉太郎”と「わたし、気になります」の”千反田える”による学園ミステリ
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ(東川篤哉)
刑事コロンボシリーズ(作成 NBC、ABC、出演者 ピーター・フォーク)
 ロサンジェルス市警察殺人課で「うちのカミさんがね」なコロンボ警部による倒叙ミステリ
館シリーズ(綾辻行人)
 建築家”中村青司”が設計した奇妙な”館”で起こる殺人事件を扱う密室系ミステリ
(*2)殺しも殺したり176年分かぁ~
 元ネタは”ルパン三世 カリオストロの城”(監督 宮崎駿、製作 東京ムービー新社)です。
(*3)影山
 ”謎解きはディナーのあとで”(東川篤哉)に登場する執事。警視庁国立署の新米刑事にして世界的な企業グループ総帥の一人娘というお嬢様”宝生麗子”の話を聞くだけで犯人を言い当てるという安楽椅子探偵。推理の前に主人公。推理の前のお嬢様を慇懃無礼な罵詈雑言で罵倒するセリフが魅力のS気質の人です。
(*4)男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない
 レイモンド・チャンドラーの”プレイバック”に登場する私立探偵フィリップ・マーロウのセリフ。正式には
 If I wasn't hard, I wouldn't be alive.
 If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.
  しっかりしていなかったら、生きていられない。
  やさしくなれなかったら、生きている資格がない
 (清水俊二訳)
これを高倉健主演の角川映画”野性の証明”のキャッチコピーに流用したのが上記です
(*5)真鍋博
 戦後を代表するイラストレーターの一人。日本SF作家クラブ会員
 新潮文庫版の星新一のショートショートの表紙なんかはまだ使われているようです

京極堂で南極夏彦で妖怪馬鹿のお話。でも実写でやって欲しいな~~ これ!(虚実妖怪百物語/妖怪お守り)

 ども、早く人間になりた~いなおぢさん、たいちろ~です。
 このブログでは花を紹介するのに、”○○科XX属”というのが出てきます。これは生物学・分類学での”階級”というものでまあ近しいもののくくりなんですが、どこまで実感とあっているかというとけっこうアバウト。たとえばサクラだと”バラ科モモ亜科スモモ属”(wikipediaより)なんですが、サクラを見てバラとか、スモモとか言われてもそ~なんだとは感じにくいんじゃないかな。
 で、なんの話かというと”妖怪”の話です。一言で妖怪といっても亜人ちゃんやら、動物の化けたんやら、物が歳を経てなっちゃったんやらひとくくりにするんかこれみたいな。これに文化的な背景がからんじゃうと何がなんだか。日本では”人魚”は立派な妖怪ですが(*1)、人魚姫の”ア○エル”を見て妖怪扱いしたらディ○ニー・ファンから石投げられんダろうな~~(*2)
 ということで、今回ご紹介するのは、そんな妖怪がいきなり現れたらどうなるかという話”虚実妖怪百物語”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。イベントで展示されていた妖怪お守りです
写真上は境港にある”妖怪神社”にある金運上昇?!ねずみ男がモチーフのお守り
写真下は赤城神社にある厄災守護の”磐筒雄命(いわつつおのみこと)お守り
ゲゲゲの鬼太郎のチャンチャンコがモチーフ

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【本】虚実妖怪百物語(うそまこと ようかいひゃくものがたり)
   (京極夏彦、KADOKAWA)
 シリアの砂漠に現れた男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲(*3)に、よく似ているように見えた――。妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげる氏の叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。(序)
 という話のはずなんですが・・・
【道具】妖怪お守り
 妖怪とお守りの組み合わせって冗談っぽいですがホントにありました
 鬼太郎のチャンチャンコ柄のお守りは磐筒雄命をお祀りしている東京の赤城神社のもの。水木しげる大先生が、”ゲゲゲの鬼太郎”アニメ化の時にこの神社でヒット祈願をしたことが由来だそうです。
 まあ、こっちはわかるんですが、妖怪神社のねずみ男お守りってのはどうなんでしょう。コレクターズアイテムていう意味ではありですが・・・


 で、妖怪ってのは何かというと水木しげる大先生曰く”気配”とのこと

  妖怪というのは、気配デスよ、気配
  それに相応しい気配があって、その中にいて、漸くこう、うっすらと感じるもんデすよ
  そこで、ハッ、と思うワケです。見えないんです!

 なんで、ホイホイ見えちゃいかんモンだそうです。ところがこれがみんなにはっきり見えちゃって、しかもデジタル媒体に記録されちゃう。これがまた見た人が見た感じのものを記録されちゃうんだから大混乱、ってのが本書で起こっている事柄です。

 こんだけ読むと”虚実妖怪百物語”という本の名前っぽいんですが、実際読んでみるとなっじゃこりゃ! ざっくりまとめると、南極夏彦テイストのノリ(*4)に京極堂の蘊蓄のっけて(*5)、オタクネタをばら撒いたような妖怪馬鹿話! しかも登場人物がほとんど実在の人物。京極夏彦本人に始まって、水木しげる大先生に荒俣宏。平山夢明に村上健司に黒史郎なんといった妖怪・ホラー系ライターとかも、読んだことないけど。なあ、ほとんど楽屋オチな面々が集まってほとんど妖怪馬鹿の面目躍如な大騒ぎ!!! 
 だいたい”加藤保憲”ドコいったんや! 1巻目”序”の冒頭でオイシイ出方してるのにあと登場するのは2巻目、3巻目の冒頭。最後の最後での登場は荒俣宏に呼ばれて飛び出てジャジャジャヤジャ~ンの8ページのみ。1400ページ近くあんですぜ、この本

 こんだけ読むと単なるふざけている馬鹿本かと思われるでしょうが、実はその背景ってかなり今の世相を反映してそうでけっこうホラー。妖怪という対象がなくなったとたん、社会がお互いを監視し、無駄を憎み、冗談に苦情をいい、駄洒落だけで教師を懲戒免職にするという殺伐とした世の中に・・・

  全員、自分が善だと信じ込んでいるのである 誰一人、人の話ををきこうとしない
   (中略)
  国民共通の敵・悪の権化たる妖怪を失ってしまったために
  怒りや不満のはけ口がなくなってしまい、
  仕方なく大衆はその矛先を隣人へと向け始めたのだろう
  溜まりに溜まったフラストレーションをお互いにぶつけ合っているだけなのだ
  なんちゅう乾いた人間関係だろうか

 冷戦構造の崩壊からこっち(*6)、対立構造が多極化、局所化していく中、国民共通の敵・悪の権化というような大物キャラクターが消失してった中で、インターネットやSNSなんつーイージーな発信ツールが登場することで、ネットの炎上やクレーマーといった自己主張をぶつける人が(以下自主規制)

 ”虚実妖怪百物語”はふざけているようで、実はけっこう真面目にヤバいネタを扱った本。京極夏彦はじめての人でもけっこう楽しめます。ぜひご一読の程を

 余談ですが、この本実写化せんかな~~~
 お亡くなりになられた水木しげる大先生はどなたか役者の方でもしょうがないですが、それ以外の方はほとんど実在の人物。俳優は嶋田久作に佐野史郎に室井滋、声優は野沢雅子に八奈見乗児に千葉繁に高山みなみに山本圭子と夢のラインナップ。キャラクターでも水木大先生を始め、高橋留美子に藤子・F・不二雄に魔夜峰央に藤田和日郎となれば著作権なんぼのモンじゃい! 鈴木光司がいるから貞子もご出演ok! ”シン・ゴジラ”や”図書館戦争”、”空飛ぶ広報室”とかにも協力してるんだから、自衛隊もけっこうノリノリで協力してくれそうだし。あとはKADOKAWAの財力とメディアミックス力があれば怖いモンなしだと思うんですが。ぜひご検討の程を


《脚注》
(*1)日本では”人魚”は立派な妖怪ですが
 京極夏彦の本でよく引用される鳥山石燕の妖怪画集”今昔百鬼拾遺”に載ってます。ビジュアル的には上半身が人間で下半身魚ってのはア○エルと同じですが、顔はネズミっぽいし水かきあるし背びれあるし・・・
(*2)人魚姫の”ア○エル”を見て~
 ”ア○エル”の父親はギリシア神話に登場する海神”トリ○ン”ということなので、ア○エルは妖怪ではなくて神様の一族ってことになります。いちおうフォローしましたよ
(*3)加藤保憲
 ”帝都物語(荒俣宏、角川文庫)”に登場する強力な霊力持ち魔術に精通する悪役。関東大震災を引き起こしたという結構アブナイ人。1988年に嶋田久作が主演で映画化されるなどけっこう流行ったんだけど、まだ読んでないな~~ これから読みます。
(*4)南極夏彦テイストのノリ
 京極夏彦の”南極探検隊シリーズ(集英社)”に登場する簾ハゲ。最初は単なる四流小説家だったのが、どんどん妖怪化しているような・・・
(*5)京極堂の蘊蓄のっけて
 京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ(講談社)”に登場するで古本屋主人にて憑物落とし。京極夏彦の小説が超長いのはこの男が延々蘊蓄語るからといっても過言ではないかと
(*6)冷戦構造の崩壊からこっち
 アメリカ合衆国を盟主とする資本主義・自由主義陣営と、ソビエト社会主義共和国連邦連邦を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立構造。1989年のアメリカのパパ・ブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長がマルタでの会談で終結。ってな話を脚注で書いとかんと、若い人にはわからんかもねぇ。なんたってもう四半世紀も昔の話だし・・・

幼少のころに本書を読んだことでお嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします(大どろぼうホッツェンプロッツ/ソーセージ&ザワークラウト)

 ども、大人になっても児童文学も読むおぢさん、たいちろ~です。
 先日会社の人と山登りにいきました。で、泊まったペンションでなぜだか子供のころに読んだ本の話になりましで、お嬢様方2人(*1)が”ホッツェンプロッツが面白かった”と。お嬢様の一人は

 ツワッケルマンがじゃがいもをむいている姿がかわいい!

となかなかマニアックなポイントを突いておりました。私自身、本の名前は聞いたことありましたが読んだことなかったんで、今回図書館の児童コーナーで借りてきました
 ということで、今回ご紹介するのは、ドイツの児童文学”大どろぼうホッツェンプロッツ”であります
 あと、山登りにお嬢様方2人が参加しているのは奥様公認ですので、文春ネタにはなりません、はい


写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜赤レンガ倉庫で開催されたフリューリングスフェスト(*1)で食べたフィッシャーマンズプレートです(右下がソーセージ、その上の白いのがザワークラウト

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【本】大どろぼうホッツェンプロッツ(オトフリート・プロイスラー、偕成社文庫)
 大どろぼうホッツェンプロッツを捕まえようとしたカスパールと友人のゼッペル、警察官アロイス・ディンペルモーザー氏。逆にホッツェンプロッツに囚われたカスパール達ははゼッペルは悪い魔法使い”ペトロジリウス・ツワッケルマン”をやっつけたり、カエルに変えられて7年間も閉じ込められていた妖精アマリリスを助けたり、最後はホッツェンプロッツを逮捕したりと大活躍!
 留置場所からホッツェンプロッツが脱走し、カスパール達に復讐する”大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる”、改心したホッツェンプロッツのためにカスパール達が奮闘する”大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる”とあわせた三部作。
【料理】ソーセージ&ザワークラウト
 ともにドイツを代表する料理。ソーセージは日本では要冷蔵のものが多いですが、湯煮や燻製してあるので保存食なのが多いそうです。ザワークラウトはドイツのキャベツの漬物。”すっぱいキャベツ”という意味ですが、これは酢漬けではなくて乳酸発酵によるものだそうです。

 さて、”大どろぼうホッツェンプロッツ”ですが思いのほか大人が読んでも面白かったんですね。思わず3冊一気読みしました。
 ボスキャラの”ホッツェンプロッツ”は大どろぼう。”あなたの心”なんかは盗みませんが、カスパールのおばあさんからコーヒーひきを強奪したり(以外のせこい?)、カスパールとゼッペルを捕まえて召使にしたり、魔法使いツワッケルマンに売りとばしたり。そんなホッツェンプロッツを捕まえるためにカスパールは友人のゼッペルと協力して知恵を絞って対決するワクワク感! それに、ちょっと間抜けな巡査部長”アロイス・ディンペルモーザー氏”、美しい妖精”アマリリス”に千里眼師の”シュロッターベック夫人”、魔法の失敗でワニの姿になっているダックスフンドの”バスティ”と魅力的なキャラが満載!! 大人た読んでもそうなんだから、子供ゴゴロに楽しかったんでしょうね

 で、もうひとつのワクワクがこの本、けっこうたくさんドイツの料理が出てるんですな。お嬢様方がこの本を読んでたのは1970年代の後半か80年代の前半を推定されますので(そこ、年齢計算しないように!)、ドイツ料理なんて子供には珍しかったんじゃないでしょうか? 今見たくドイツ料理をアテにビールを呑んだくれていなかったはずですし。ですから、この本を読んでドイツ料理に憧れたんじゃないかな~~
 登場する主だった料理はこんなの

〔焼きソーセージとザワークラウト〕
 ホッツェンプロッツがカスパールのおばあさんの家に押し入って食べたのがこれ
 写真のようにザワークラウトは付け合わせに添えるものらしく、おばあさんも最初に出す時にはソーセージ1本にザワークラウトひとさじのっけてますが、ホッツェンプロッツはひと鍋まるごと食べています。いかにお腹がすいてそうとはいえ、そんなにがばがば食べるものではなさそう?

〔マッシュポテト〕
〔じゃがいもだんごをタマネギソースにひたしたの〕

 お嬢様のツボだった悪い魔法使い”ツワッケルマン”が食したのがじゃがいも
 じゃがいもの皮をむいて湯がいて潰したのがマッシュポテトで、これに小麦粉を混ぜて丸めたものがじゃがいもだんごです
 ツワッケルマンがゼッペルを召使にしたのは、なぜだか魔法でジャガイモの皮むきができないからという理由から。確かにじゃがいもの皮むきってけっこうたいへんです

〔タマネギ、ベーコン、ニンニクどっさりの炒め物〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルにふるまったもの。カスパールのおばあさんが作る料理を上回るごちそうとはカスパールの弁。考えてみると、どろぼうの森で一人暮らしのホッツェンプロッツですから自炊派のはず。腕前もそうとうなもののようです

〔太ったガチョウの丸焼〕
 ホッツェンプロッツが捕まえてきて、毛をむしって串刺しにして丸焼にしたの。美味しそう!
 ドイツではガチョウの丸焼ってのはクリスマス料理だそうです。

〔ロートカッペのスープ〕
 ホッツェンプロッツがカスパールとゼッペルを拉致して帰る途中で見つけたロートカッペ(食用キノコ)を使ったスープ。犯行中にキノコ狩りをするとは意外に余裕かましてます。ロートカッペは毒キノコのクナルピルツに似ているので注意が必要。
 とはいっても、ロートカッペもクナルピルツもググってもそれらしいのありませんでした。どんなキノコなんだろ?

〔紅茶とパンにソーセージをはさんだの〕
 シュロッターベック夫人がカスパールとゼッペルをもてなすのにだしたの
 食べざかりの子供相手なので、けっこうガッツリ系?

〔塩漬けのキュウリ〕
 菜食主義のダックスフンド・ワニのバスティの好物がこれ。日本のキュウリの浅漬けみたいなもんでしょうか? 制服を盗まれたアロイス・ディンペルモーザー氏が移動するのに八百屋から借りてきたキュウリの漬物樽にはいるって話が出てますが、わりとありふれてんですかね、キュウリの漬物って。

〔生クリームのかかったプラムケーキ〕
 カスパールのおばあさんがカスパールとゼッペルのための作ってくれたお菓子
 クックパッドを見てるとドイツ風はプラム(プルーン)を使ったちょっと固めのケーキみたいです

ウイキョウ入りソーセージに、外側はスイスチーズ&内側酢漬けニシン巻きの味のするカボチャ、、シュトロイゼルクーヘンチョコレートドーナッツといっかお菓子、ハタンキョウのお酒ポンスなどおいしそうなのてんこ盛り!(*5)

 しかもまた、悪役たちの食べっぷりが見事なことといったら! ホッツェンプロッツは焼きソーセージ9本と鍋いっぱいザワークラウトとかガチョウの丸焼とか。レシピを見てるとガチョウって5~6Kgぐらいあるんで一人で食べるとけっこうな量
 ツワッケルマンは昼はマッシュポテト7皿、夜は六ダース半のじゃがいもだんご。こんだけ食べるならバケツ単位で皮むきもいるんでしょうね。まったくこの魔法使いはどんだげジャガイモ好きやネン!

 幼少のころに本書を読んだことで、お嬢様方の料理魂を覚醒させ、”酒呑みの舌”につながってったとしたらとか考えるとちょっとワクワクします!

 今回は料理ネタメインでしたが、お話自体もとっても面白い本。子供のみならず大人の方もぜひどうぞ


《脚注》
(*1)フリューリングスフェスト
 ドイツで開催される”春祭り”。”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。これが秋になると”オクトーバーフェスト(10月の祭り)”になって、”乾杯の歌”を歌いながら”ブロースト!(乾杯)”とビール呑んで、ドイツ料理食ってするお祭りです。日本でも各地でやっています。要は呑めりゃいいんです、呑めりゃ!
(*2)ウイキョウ入りソーセージに~
ウイキョウ:別名フェンネル。ピクルスなどに入れる甘い香りのするハーブ
シュトロイゼルクーヘン:表面がそぼろ状(シュトロイゼル)になっているケーキ
ハタンキョウ:別名アーモンド調べたらちゃんとレシピもありました。
ポンス:ラム酒にレモン、砂糖を混ぜた熱い飲み物

このご時世”PAC-3”のネタで書いてお咎めなしってのは日本はいい国なんでしょうね(PAC-3/「シン・ゴジラ」私はこう読む/空飛ぶ広報室)

 ども、自衛隊のメカニズムは好きですが、戦争は嫌いなおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、ア○リカと北○鮮の間がきな臭くなってます。言葉の応酬がますます過激になってきて、方やグアム周辺へ弾道ミサイルを4発ぶっぱなす用意があるとゆーとるわ、方や核攻撃をちらつかせたことをゆーとるわ。まあ言ってるのが小学生のガキ大将同士のケンカならまだしも、やってるのが核保有国のトップ同士、しかも方っぽがこの前までなら止める立場の先生がやってんだからなぁ
 で、こちらニッポンは”島根県、広島県、高知県の上空を通過する計画がある”ってことで”PAC-3”を島根、広島、高知、愛媛の陸上自衛隊の駐屯地に移動して迎撃体制を整えることに。国防上、やるべきことはやってるんでしょうが、なんだかこの手の話があったな~~~
 ということで、今回ご紹介するのは、元国防大臣が語る配備計画の問題”「シン・ゴジラ」私はこう読む”とPAC-3移送ネタの”空飛ぶ広報室”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。
海上自衛隊の”ヨコスカサマーフェスタ(*1)”にて(2010年、2016年)

【道具】PAC-3
 ややこしいんですが、PAC-3って”ペトリオットミサイル”そのものの”PAC-3弾”と、”PAC-3弾”を発射するためのペトリオットミサイル発射システム”PAC-3形態”ってのがあるんだそうです。”PAC-3形態”はトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はペトリオット発射中隊、10台以上の車両(ミサイル発射機トレーラー、電源車輌等)で構成されてます。

PAC-3の解説パネル (2016年撮影)

Pac3_20168060172
発射機(Launching Station,LS) (2016年撮影)
 PAC-3等のペトリオットミサイルを最大16発発車する装置
 テレビとかで”PAC-3”というと出てくるのがこの車両

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レーダー装置(Radar Set、RS) (2010年撮影)
 多機能フェーズド・アレイ・レーダーを装備し目標の捜索、発見、追尾、識別及びペトリオットミサイルの誘導を行う装置

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発電機(Electric Power Plant、EPP) (2010年撮影)
 ECS及びRSに電力を供給する機械。トラックに車載したままでも運用可能

Pac3_20100436

 写真はないですが、その他射撃管制装置(Engagement Control Station, ECS)、情報調整装置(Information Coordination Central, ICC)、無線中継装置(Communication Relay Group, CRG)なんてのもあるようです。

【本】「シン・ゴジラ」私はこう読む(日経ビジネス、日経BP社)
 2016年に公開された”シン・ゴジラ(*2)”をネタに、ビジネス情報中心の(はず)の日経BP社が”日経ビジネスオンライン”で連載された各界のキーマンへのインタビューなどをまとめた本石破元防衛大臣、枝野元内閣官房長官、梅澤TAカーニー日本法人会長などそうそうたる顔ぶれ。何を考えてんだか日経BP社?!
【DVD】空飛ぶ広報室(原作 有川浩、主演 新垣結衣、綾野剛)
 いきすぎた報道姿勢が元で報道から外されたディレクター”稲葉リカ”はTV番組”働く制服シリーズ”の作成のために防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室=”空飛ぶ広報室”を訪れる。そこには”詐欺師 鷺坂”の異名を持つ鷺坂室長以下、個性あふれる?面々が。そしてリカの担当になったのは交通事故でパイロットの道を断たれた”空井大祐”だった。
 自衛隊員という実態があまり知られていない職業の中でもさらにマイナーな広報室(失礼!)を舞台にした非戦闘系ラブコメ。2013年にTBSでドラマ化。主演は新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵。


 当然のことですが、あらゆる兵器には物理的な限界があります。ミサイルには射程距離があり、戦車には最高時速があり、飛行機には航続処理があり。また量的な限界ってのもあります。予算が無限ではなく、人的教育には時間がかかり、工場の生産力の制限がある以上、兵力や機器を装備する量にはおのずと上限値が(少なくとも短期的には)設定されます。

 てなことを踏まえて”「シン・ゴジラ」私はこう読む”の石破元防衛大臣の発言です。ゴジラが上陸して東京への侵攻を食い止めるために多摩川河川敷に最新鋭の戦車がズラーッと並んべて迎撃するってシーンがあるんですが、これに対して

  あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね
  本州にはあんな数の戦車がないんですけどね
  日本では、最新鋭の戦車はだいたい北海道に配備してある

   (中略)
  北海道から戦車が駆けつける頃には、みんな終わっている

 なんで北海道に戦車が配備されてるかというと、ロシアが攻めてきて北海道内で戦車同士でドンパチやるって想定だからだそうです。この想定にリアリティがあるんかどうかはわかりませんが、要はある戦略思想に基づいてリソースを配置するってことです。
 で、今回みたく島根、広島、高知の上空をミサイルが通過するってことになると、そこにPAC-3を移動して防空体制を引くってことになるわけです。

 まあ、書くのは簡単ですがいざ移動するとなると簡単ではないみたい。”空飛ぶ広報室”の第五話で”パトリオット部隊の展開訓練(*3)”て話がありました。これは入間基地から武山分屯基地、習志野分屯基地から入間基地へそれぞれの高射隊が移動するって訓練をマスコミに公開するって内容。
 航空自衛隊の全面協力ってことで、防衛省航空幕僚監部やら各基地やらのロケで各装備がバンバンでてきてわりとマジで作っている作品ですが、それでも移送されてるのメインって発射機なんですな。TVのニュースもそんな感じだったし。これだけ見てると発射機だけ持っていきゃよさそうなんですが、実際は機材をいっぱい持ってってそれを動かす人も移動しなきゃなんなさそう。なんせ超爆発物なんだからテロ対策やなんやらもやんなきゃいけなさそうだし。つまり、素人目に見てもほいほいお出かけできるシロモノじゃなさそうってコトです。
 それだけやってもパトリオットミサイルの有効射程距離が20~30kmってんですから、有効性を求めるにはしこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・(*4)

 で、何を言いたいかとゆ~と、日本ってないい国ですな~~ってこと。
 広報の一環とはいえ基地の公開があって、最新鋭のPAC-3の展示があって写真撮り放題。こうやって写真をブロクにのっけてもお咎めうけることなさそうだし。テレビはテレビで自衛隊の航空機なんぞ出っぱなしだし・・・ あまつさえ元防衛大臣がゴジラネタにひっかけて国防上の問題点を語っても問題にならないって、けっこういい国だと思いませんか? このへんの話題って世が世なら国家機密ですぜ!(*5)

 改めて言いますが、私は自衛隊のメカニズムが好きなだけで、戦争はやっちゃいけないと思ってます。核兵器のみならず兵器なんてのは理屈の上での抑止力としては成り立つんかもしれませんが撃っちまったら終わりです。まあ、こんなことぐらいチキンレースやってる人はわかっちゃいると思いたいんですがねぇ

《脚注》
(*1)ヨコスカサマーフェスタ
 海上自衛隊横須賀地方総監部で開催される基地開放のイベント。毎年8月の第一土曜日の”よこすか開国祭”に合わせて開催されます。2017年度開催は8月5日(土)。この日は米海軍横須賀基地にて”ヨコスカフレンドシップデー”も開催されて軍艦乗船もできるとあって、この手のんが大好きなオタクが朝から群れております。私は違いますが・・
(*2)シン・ゴジラ(総監督 庵野秀明、監督 樋口真嗣、東宝)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明と”ローレライ”、”日本沈没(2006年版)”の樋口真嗣によるSFファン注目のゴジラ映画。2016年公開
 ゴジラ登場にあたふたする政治とか、超科学兵器(オキシジェン・デストロイヤーとか)なんぞ登場せず、自衛隊ががんばってゴジラを倒すこだわりなどSFゴコロをくすぐる名作です。
(*3)パトリオット部隊の展開訓練
 ミサイルの愛称”Patriot”は”Phased array Tracking Radar to Intercept on Target(目標物迎撃用追跡位相配列レーダー)”の略。発音は”ペイトリオット”に近いですが、マスコミは”パトリオット”、政府や自衛隊は”ペトリオット”を使っています(wikipediaより)。ですんで、本ブログ内で混在しているのは出典に忠実なだけで間違いではないです、はい
 ちなみにPAC3だったりPAC-3だったり、あぁややこしい
(*4)しこたま配置せんといかんのでしょうなぁ・・・
 仮に島根県を通る山陰本線の米子駅~益田駅間に一列で配備したとして、この距離が192Kmあるんで、射程距離20km(直径で40km)で割ると5単位必要。これをメッシュでやったら何単位ありゃ足りるんでしょうね??
(*5)世が世なら国家機密ですぜ!
 まあ、地図や天気予報が機密情報だった時代もあるみたいなんで何が機密って難しいんですけンドね

良くも悪くも”ブロックチェーンと共にあらんことを”ってノリでしょうか?!(ブロックチェーン レボリューション/ちょいと古い日本銀行券)

 ども、ビットコインどころが紙のお札にも事欠くおぢさん、たいちろ~です。
 先日、ブロックチェーンの第一人者”ドン・タプスコット”という人の講演がありました。行けなかったんですが。その講演の事務局の人と話をしてる時に”この人の本を図書館で予約してんですけど、何カ月も順番回ってこなくてね~~”と言うと、”ご存知なんですか?!”とのお言葉。ご存知ってほど詳しくはないんですが、まあ本は読んでみようかと思った訳で。
 ことほど左様に、モノやコト、人の価値感っていうのは共有できる認識、知識、あるいは共同幻想の上に成り立っているモンです。
 ということで、今回ご紹介するのは、私自身はイマイチ価値の認識ができてない”ビットコイン(*1)”の技術的バックボーンのひとつ”ブロックチェーン”を扱った本”ブロックチェーン レボリューション”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。
日本銀行旧小樽支店金融資料館に展示されているちょいと古い日本銀行券

6072949


【本】ブロックチェーン レボリューション
 (ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット、ダイヤモンド社)
 サブタイトルが”ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか”、紹介文が”世界経済に将来、最も大きなインパクトを与える技術が誕生した。人工知能でも、自動運転車でもない。IoTでも、太陽エネルギーでもない。それは、「ブロックチェーン」と呼ばれている”とあるように、ブロックチェーンの可能性と課題についてを論じた本。
 でも帯のアオリの”社会の全分野で起きる革命の予言書(*2)”はちょっとやりすぎ。凄く真面目な本なのになぁ
【道具】ちょいと古い日本銀行券
 なんだかを読んでた時にちょいと古い日本銀行券を見た若者が”おもちゃのお金だと思った”ってネタがありました。まあ、これが”お札”だという知識(認識)がなければ”日本銀行券”といえどおもちゃ扱いだもんな~~ ”聖徳太子”と言えばお金の代名詞だった時代もあったんですけどねぇ・・ ちなみに上記の写真のお札はお金としてちゃんと通用します。
 一万円札、五千円札、千円札は1986年、五百円札は1971年に発行停止(日本銀行hpより)


 ”ブロックチェーン”というのは”データ”を”ブロック”という形で取引を記録した帳簿みたいなもので、サーバを介さないP2Pネットワーを使って、ネットワークの参加者が取引の正しさを承認するというもの。その特徴は”分散されている”、”パブリックである”、”高度なセキュリティが備わっている”こと。技術的にはかなり難しそうなんで、とりあえずこんなもんと思ってください。

 さて、”ブロックチェーン レボリューション”という本は”ブロックチェーン”というテクノロジーをかなりポジティブに捉えています。金融、契約、企業活動、政治、ビジネスモデルなどさまざまな分野でイノベーションを引き起こし、いろんな問題解決の糸口につかうことができるだろうとの論調です。まあ、課題もちゃんと整理されているので、明るさ一辺倒ではないですが全体的には”レボリューション(revolution 革命)”を引き起こし、より良い社会を生み出すだろうと。
 読んだ感じとしては、ちょっと楽観的すぎかな~と思いつつ肯定的に受け取っています。まあ、テクノロジーだけでいろんな問題が解決するワケでもないですが、人や社会がうまく使っていければ道具としてはかなり使えそうだと。

 いろんなテーマが満載の本ですが、ちょっち気になったのを一つ。”ブロックチェーン”に記録されたデータってのは”改竄”あるいは”消去”できないんですな。まあ、できないからこそ”ビットコイン”のような”通貨”としての価値が保全できるし、”契約”などの利用もできるわけで、それ自体は良い事です。ただ、これがインターネット上での”忘れられる権利(*3)”と重ね合わせるとちょっと複雑。それこそ若い時のやんちゃの自慢話からリベンジポルノみたいな犯罪性の高いものまで”消したい過去”ってのはあるものです。今の仕組みだと、GoogleやYahoo!のような大手の検索会社の検索結果からはずせば、あるいは掲載hpを削除すれば、過去の記録をほぼほぼ消去できなくはなさそうですが、これが”ブロックチェーン”となるとほほできなさそう。
 フィナンシャル・タイムズ紙のイザベラ・カミンスカがユーロの例をあげていた言葉が印象的

  お金の世界では、記録を消去することも一つの伝統です
  なぜなら、人は10年以上も前の行動で責められつづけるべきではないからです
  人生はやり直しがきくものでなくてはいけません
  ですから、記録が永遠に消えないシステムというのはどこか異常な感じもするのです

 確かに、相手が病んだり自殺したりならともかく小中学校でいじわるされた(した)記録なんて中高年まで引っ張られたら嫌でしょうし、離婚訴訟まっただ中に、若い時の元カノとよろしくやっている写真が発見されるなんてのはできれば避けたいモノです。今だってSNSやHP上にある消せないんが問題になってるのに、こんなんがさらに堅確になったらどうなんでしょうねぇ・・・
 まあ、”M.I.B(*4)”みたく職業的に過去を消す人ってのもいるのかもしれませんが、こんなんもある程度集中的なデータ管理がなされているからこそ。ブロックチェーン時代になると難しいんでしょうなぁ

 別にこの点をあげつらって”だからブロックチェーンはダメなんだ”とか言うつもりはないです。むしろ技術面ではいろんな可能性を秘めていると考えています。ただ、功罪考えておかないとまずいんじゃね~かな~と思った次第。

  行く手には希望と危険が待ち受けている
  世界は光の側に進むのか、それとも闇に堕ちるのか
  それを決めるのは、今の僕たち一人ひとりの行動だ

   (本書より)

 まさに、

   May the Blockchain be with you(*5)
    (ブロックチェーンと共にあらんことを)

ってノリかと。繰り返しますが、テクノロジーだけで解決する問題はそんなに多くはありませんぜ! 問題を解決するのはあくまで価値認識、知識あるいは幻想を共有する人や社会であります

人の価値っていうのは共有できる認識、知識、あるいは共同幻想
 本書は400P近くある本ですが、素人にも読みやすい本です。ぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)ビットコイン(bitcoin)
 コンピューターシステム上に存在する”仮想通貨”。通常のお金と違って国家などの権威の裏付けがないのが特徴の一つ。ビットコインの仕様変更に伴うなんだかんだで”ビットコイン”と”ビットコインキャッシュ”に分裂(2017年8月1日)。まあ、民主的ちゃ民主的なプロセスなんでしょうが、素人にはよくわからん・・・
(*2)予言書
 未来の物事を予測して言うこと。また、その言葉。が”予言”。
 キリスト教で、神託を聴いたと自覚する者が語る神の意志の解釈と予告。また、それを語ることが”預言”(デジタル大辞泉)
 ”予言”が外れてもごめんなさいで済みますが(済まないか?)、”預言”が外れると”神の代弁者を語る詐欺師”として断罪されます、はい
(*3)忘れられる権利
 データそのものを完全に消すことはできませんが、少なくとも”検索結果”から外すことで過去のデータを見られなくすること、これが”忘れられる権利”です。
最高裁で初の判決が出たんで(2017年1月31日)、一定の指針は固まったようです。個別案件ごとにプライバシーと公共の利益を判断することになるので、ほいほい検索されなくできるシロモノではなさそうです
(*4)M.I.B(メン・イン・ブラック)
 (主演 トミー・リー・ジョーンズ、ウィル・スミス、監督 バリー・ソネンフェルド)
 UFOや宇宙人の目撃者の記憶をピッカリ光線で消してまわって、宇宙人との共存を秘密裏に図る黒づくめの集団”M.I.B”の活躍を描いたSF映画。ウィル・スミス演じるエドワーズが”エージェントJ”になる場面でコンピュータ上の記録を削除するってシーンが出てきます。
(*5)May the Blockchain be with you
元ネタはスターウォーズの
 May the force be with you
  (フォースと共にあらんことを)

ここでもフォースの暗黒面がどうのってやっていましたな

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