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2017年7月

どうせ何時かは執行される自分の葬式なんだから、それまでの猶予期間を旅でもするかってこの本読んで考えちゃいました(深夜特急/サテー)

 ども、歳を取るといたって出不精になっているおぢさん、たいちろ~です。
 かつて、有吉先生が猿岩石だった頃、”進め!電波少年(*1)”というテレビ番組で”ユーラシア大陸横断ヒッチハイク”という企画をやっておりました。これは当時売れていない若手お笑いコンビ猿岩石(有吉弘行、森脇和成)のふたりが香港からロンドンまでヒッチハイクで旅行するというもの。大して真面目に見てたわけではないですが、いかに売れていないとはいえ、けっこうきつい事やらせんだな~と思った記憶があります。
 ふと思ったんですが、昔はこういったヒッチハイクというか貧乏旅行みたいな本とかけっこうあったような気がすんですが。私がその手の本を読まなくなっただけなのか、実際世の中でも少なくなってんだか?
 ということで、今回ご紹介するのはそんな貧乏旅行系の本、ちょっと昔の話ですが”深夜特急”でありますあ


写真はたいちろ~さんの撮影。
シンガポール料理の”海南鶏飯(HAINAN CHI-FAN)の”サテ”です

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【本】深夜特急(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。といっても私が読んでる2巻ではまだデリーどころかマレー半島あたりでうろうろしてますが。まあ、こういう無計画さがこの手の旅行の醍醐味なんでしょう。
 1974年ごろの旅行なので事情がだいぶん違うんでしょうが、今読んでも充分面白いです。
【料理】サテー(Sate)
 マレーシア、シンガポールなど東南アジア諸国で食される串焼き料理
 本書では”マレー風焼き鳥といった趣”と記されていますが、他の肉でもあり。海南鶏飯では鳥と豚のセットでした。
 ほんのりとしたカレーの香りのする小ぶりの鳥肉や豚肉に甘辛ピーナッツソースをつけて食べるというもの。ピーナッツソースは日本だと肉味噌に近い食感でしょうか。美味しゅうございました。


 沢木耕太郎の経歴ってのが大概で、横浜国立大学経済学部卒業で富士銀行入行が決まっていたのに大学紛争で卒業が遅れ初日出社の日に”雨のせい”という理由で退社(企業名はwikipediaより)。就職もせずぶらぶらしていたのを見かねた大学のゼミの教官が雑誌社を紹介してくれたのをきっかけにルポライターに。仕事は増えてきたものの、こなしきれなくなって、”間もなく外国に行くので仕事が受けられない”と苦し紛れに嘘をつき。これもある人物の”男は26歳までに一度は日本から出た方がいい”という言葉から。
 ここまででも凄いですが、さらに輪をかけてすごいのがこのおかん。家にまで外国旅行の問い合わせ電話がかかってくるに及んで息子に申し渡した一言がこれ

  私はもう弁解したり嘘をついたりするのはいやだから
  とにかく日本を出ていってくれないか、
  どこでもいいから外国とやらに行ってくれないか・・・

 本書ではサラッと書いてますが、これってすごい発言ですぜ! 一流大学を卒業して一流企業に就職するハズだった息子が、ブラブラしたあげくルポライターになったのに、息子の弁護をするのがイヤだからどこでもいいから外国に行って来いって、凡百の親がはける発言じゃないって! 普通の親なら”関係にワビ入れてマジメに働け!”でしょ?
 まあ、それで出ていく息子ってのも思い切りがいいのは確かですが・・・

 で、一方息子の方。シンガポールのサテー屋でニュージーランドから大学を中退して世界一周に出かけた若者二人にいろいろ蘊蓄たれることに。そこで何気なく聞いた”どのくらいの期間でまわるつもり?”の答え”三年か、四年”にショックを受けることに。”旅行から帰ったらどうするつもり?”と聞くと暗い顔つきで”わからない”と・・・

 沢木耕太郎のモノローグ

  あるいは、彼らも人生における執行猶予の時間が欲しくて旅に出たのかもしれない
  だが、旅に出たからといって何かが見つかると決まったものでもない
  まして、帰ってからのことなど予測できるはずもない
  わからない。それ以外に答えられるはずがなかったのだ
  そして、その状況は私にも大して変わらないものだった
  わからない。すべてがわからない
  しかし人には、わからないからこそ出ていくという場合もあるはずなのだ
  少なくとも、私が日本を出てきたことのなかには、
  何かが決まり、決められてしまうことへの恐怖ばかりではなく
  不分明な自分の未来に躙り寄っていこうという勇気も
  ほんの僅かながらあったのではないかという気がするのだ・・・

 引用が長くなってすいません。”執行猶予”って言葉がココロに引っかかったモンで
に登場する”モラトリアム”や”ニート”のようになんだかオブラードにつつんだような語感とは違って(*3)、もっとストレートで切迫感のある状態っぽくって。
 雑駁ないい方ながら”モラトリアム”が大人になることへの拒絶であり、”ニート”が通学も就業もしていない状態(*3)とまったく同じではないですが、時代を経るほど”働たらかない”ということへの意識が自覚的でなくなっていくような
 少なくとも本書では”何かが決まり、決められてしまうこと”=”執行”をされてしまうことへの恐怖を自覚してるようだし、”未来に躙り寄っていこうという勇気”をもって今の状況を選択している自覚があるようだし。

 まあ、なんとなくですが、1970~80年代には猶予期間にお金ももたずに海外に行くってアクティブさがあったし、もうちょっと前だとヒッピームーブメント(*4)みたいな政治的メッセージみたいのもあったようですし(さすがにこの時代は良く知らんですが・・) つまり”外向的”な若者イメージがあったんじゃないかと
 それに比べて今だと”引きこもり”が増えていますみたいな”内向的”なイメージが前面にでているような(まあ、社会問題化しているのはたしかですが)
 ”執行猶予”ってのは必ずどこかで”執行”されるわけで、別に執行されなくなる訳じゃない。であれば、執行までの時間をどう作るか、使うかが重要なんだろ~な~と思う訳であります。

 なんでこんなこと考えるかというと、定年を指折り待ってる歳になってくっと、その後の人生って自分の葬式までの執行猶予期間かな~~とこの本を読んで思っちゃったからかも。どうせ何時かは執行される葬式なんだから、定年したあとにできる自由な時間に旅暮らしなんかも悪くないかもなんて考えちゃいます。ということで、キャンピングカーに乗って全国旅に出ている人の本なんかも読みだしちゃって。
 あとは残った住宅ローンをどう片付けるだけか・・・

《脚注》
(*1)進め!電波少年
 1992年から98年に日本テレビ系で放送されたテレビ番組。アポなしでいろんなとこ押し掛けてムチャぶりなお願いするという企画などで当時はけっこう人気あったような。上記のユーラシア大陸横断ヒッチハイクは1996年の放映だそうです。
 しかしこの企画もももう20年以上前なんだな~~
(*2)”モラトリアム”や”ニート”のように~
 ”モラトリアム”は1978年の”モラトリアム人間の時代(小此木啓吾、中公文庫)、)の”ニート”は2004年の”ニート―フリーターでもなく失業者でもなく(玄田有史、曲沼美恵 幻冬舎文庫)”が出始めだとか(wikipediaより)。
(*3)”ニート”が通学も就業もしていない状態
 誤解のないように補足しますが、”ニート”は”15〜34歳の非労働力人口の中から、求職活動に至っていない者(専業主婦を除く)”であって、決して労働意欲がないわけではないそうです
(*4)ヒッピームーブメント
 既成の価値観に縛られない生活信条とかベトナム戦争への反対からの徴兵拒否とかがベースにあったようです。

ハンドメイド 宇宙のロマン、ソフトでもハードでも(進め!なつのロケット団/増上寺 天の川ライトアップ2017)

 ども、”無限に広がる大宇宙(*1)”なおぢさん、たいちろ~です。
 7月7日と言えば”七夕”。仙台在住が長かったうちの奥様は8月と思ってましたが(*2)。あんまし天文とかに詳しくない私でもこの日だけは”宇宙のロマン”みたいな話題に乗っかっちゃうモンです。
 世の中に”鉄”と呼ばれる鉄道オタクがいますがこの趣味も”乗り鉄”、”撮り鉄”、”録り鉄”、”車両鉄”、”駅弁鉄”(*3)と人それぞれのようですが、天文マニアってのもいろいろバリエーションがありそうです。オーソドックスな天体望遠鏡で宇宙を観察する”見上げてごらん、夜の星を派”、宇宙飛行士を目指す”宇宙兄弟派”といったハード系から、星座に思いを馳せる”聖闘士派”、今や市民権を得たと言っても過言ではない(過言かな?)”SFヲタク”などソフト系まで。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな天文マニアな趣味より、ハード系な話”進め!なつのロケット団”とソフト系な話”増上寺 天の川ライトアップ”のご紹介であります

写真はたいちろ~さんの撮影。増上寺 天の川ライトアップ。
分かりにくいですが、上左が増上寺大殿、中央上の青く光っているところが東京タワーです

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【本】進め!なつのロケット団(あさりよしとお、白泉社)
 小学生たちが集まってロケットを作るという”なつのロケット(あさりよしとお、白泉社)”というお話から、リアルでロケットを作っちゃうという”なつのロケット団”(キャラクターは”なつのロケット”と同じ小学生)のお話に。
 著者は”まんがサイエンス(*4)”の著者でもあるあさりよしとお。”宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた 実録なつのロケット団(あさりよしとお、学研プラス)”というのもあります(まだ読んでないけど)
【旅行】増上寺 天の川ライトアップ2017
 正式名称は”増上寺七夕祭り 和紙キャンドルナイト2017”。2017年7月7日に増上寺境内で開催。企画運営は多摩大学 村山貞幸ゼミ 日本大好きプロジェクト
 三解脱門(正門)から大殿(本堂)までの全長80mに約2,700ケの和紙キャンドルを並べて天の川を表現したもの。けっこう綺麗でしたよ!


 ということで、ハンドメイドでロケットを作っちゃうというハードな話から。
 七夕といえば宇宙ネタってことでしょうか、7月6日に”ホリエモンロケット 7月29日打ち上げ 成功すれば民間初”つ~ニュースが出てました。内容を要約すると、宇宙ベンチャー”インターステラテクノロジズ”が開発した小型ロケット(直径約50センチ、全長約10メートル、重さ約1トン)を7月29日に打ち上げると発表、高度100キロ(大気圏と宇宙空間の境界)まで上昇し、通信試験などをするのが目的、成功すれば民間単独によるロケットの宇宙空間への到達は日本初”といったもの。なぜホリエモンが出てくるかというと、本書の”なつのロケット団(リアルのほう)”が始めたプロジェクトがインターステラテクノロジズの前身で、さらにインターステラテクノロジズを創業したんが元ライブドア社長の堀江貴文からです。

 ”莫大なコストのかかる宇宙開発を民間企業なんかでできるんかい?!”と思われるかもしれませんが、実際やっちゃってる訳ですし。ただし、これはペイロードなり到達高度なりをかなり制限しているからです。このへんの話が本書の”誕生秘話 なぜ我々はマンガの中のロケットをリアルに作りはじめてしまったのか”に詳しく出ています。
 日本独自の有人宇宙飛行プランを提唱したものの国家に受け入れられなかったメンバーが”じゃあ、民間で有人ロケットを上げちゃえば”という話に。で、ホリエモンを巻き込んでロシアから買ったらと見積もりしたら足下見られて想定の10倍以上の見積もりに。ここでホリエモンからの提案

  自分の手で作るんだよ
  たとえ実用にならなかったとしても・・・
  選択肢があるとなれば相手も無視できない
  それにロケットエンジンの何たるかを知らない人間が交渉などおこがましい
  ロケットエンジンについて技術的な方向から語れない人間が
  対等な話ができるわけないじゃないか

 この発言、ホリエモンって実はすごいんじゃないかと。”選択肢を作るため”、”技術的なバックボーンをもって交渉力を高める”って、言うのは簡単ですが実際にやるってのはけっこう大変なことですし、そもそもなかなか発想しないでしょ!
 その後、ホリエモン逮捕だとかなんだとかあっていったんプロジェクトは挫折するんですが、夢が捨てられない有志が集まってプロジェクトが再起動(*5)。で、今日につながると・・・

 本書は”民間(小学生)によるハンドメイドのロケット開発”ていう内容なんですが、成功したり失敗したりと紆余曲折ありますが、やっていることは意外に地味。まあ開発なんてそんなもんでしょうが・・・ でもけっこう面白いんですね、これ。科学的な解説なんで分かりやすくのっかってるし、何のためにこれやんだっけみたいなものも明確。子供向けのマンガっぽいですが、大人の方にもお勧めです。

 さて、ソフトは話つ~ことでハンドメイドで天の川を作っちゃう”増上寺 天の川ライトアップ”のネタです。
 ハンドメイドで宇宙を作るといっても”フェッセンデンの宇宙(*6)”みたく実際に作っちゃうSFもありますが、それはまた別の話。ここでのお話はいわゆる”見立て”です。”見立て”といってもバカにしたもんじゃないです。”プラネタリウム”だって立派な”見立て”でしょ? 重要なのは”見立て”に何を求めるか。科学館にあるプラネタリウムみたいに科学的な正確性を求められるものもありますが、そこそこなら手作りキットだって売ってるし、専門家がやればかなり高度なものでも手作りできちゃうみたい。要は学問的・教育的な観点を求めるか、イメージとして宇宙への興味を高めるか。子供たちが”天の川”というものに興味を持って、実際の天の川を見たいとか(東京ではなかなか見れませんぜ!)、宇宙のことをもっと知りたいと思うなら”見立て”だって充分役にたってるんじゃないかな
 まあ、浴衣デートでちゃいちゃしてるだけのおにいちゃんとおねえちゃんはこのあとホテルでの”良いではないかゴッコ(*7)”のことだけ考えてりゃいいんです。ケッ!

 すいません、取り乱しました。”天の川ライトアップ”は”日本大好きプロジェクト”という伝統文化伝承って位置づけで”天文”ってカテゴリじゃないんでしょうが、”伝統文化”に興味を持つ人が出てくればそれはそれでOKでしょう。
 すなおに”綺麗”ってだけでもまた良しなんでしょうね

 来年も開催されるかどうかは分かりませんが、JR浜松町駅、地下鉄御成門駅や大門駅から歩いて行けますし、21時と東京近郊の人なら会社が終わってからでも行けますんでご興味のあるかたはぜひどうぞ

《脚注》
(*1)無限に広がる大宇宙
 ご存知”宇宙戦艦ヤマト”のナレーション。このアニメのパート1の放映が1974年だから、もう40年以上もなるんだな~ 1978年公開の映画”さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち”のリメイク版”宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち”が2017年に公開開始。脚本が福井晴敏となるとやっぱし観ちゃうんだよな~~~
(*2)仙台在住が長かったうちの奥様は8月と思ってましたが
 東北三大祭りの一つ”仙台七夕”は旧暦なので8月6~8日に開催。関西出身ですが仙台在住が長くなると、意外と簡単にカレンダーが上書きされるようです
(*3)”乗り鉄”、”撮り鉄”~
 電車での旅行を楽しむ”乗り鉄”、鉄道や風景の写真を撮りまくる”撮り鉄”、発車メロディーや車内放送を録音する”録り鉄”、キハだのクハだのにやたら詳しい”車両鉄”、電車というよりグルメ系?な”駅弁鉄”。
(*4)まんがサイエンス(あさりよしとお、学研プラス)
 学研の”5年の科学”、”6年の科学”などで連載されていた科学学習漫画。本来は子供向けなんですが、大人が読んでも面白いしためになる本。お勧めです。
(*5)夢が捨てられない有志が集まって~
 あさりよしとおがプロジェクトを受けた理由
  まー 世の中にはやっていい事と、やったら面白い事がある・・・
  がモットーだしな

 いいですな~~、このノリ!
(*6)フェッセンデンの宇宙(エドモンド・ハミルトン、河出文庫)
 アメリカのSF作家エドモンド・ハミルトンによる短編SF小説。天文学者フェッセンデンが実験室で人工の宇宙を作っちゃうというお話。科学者のはずのフェッセンデンが神様モードになっちゃうというのが秀逸です
(*7)良いではないかゴッコ
 別名”帯クルクル”
  拉致された町娘:あれ~、お殿様、お戯れを
  お殿様    :良いではないか、良いではないか
(以下自主規制)

”狼”のイメージってブレ幅が大きいですが、”狼王ロボ”は暴虐の王から夫婦愛まで大ジャンプ?

 ども、子供時代はあんまし本を読んでなかったかもしれないおぢさん、たいちろ~です。
 先日”うちは寿!(*1)”というマンガを読んでたら、”シートン動物記(*2)”の”狼王ロボ”を読んで三人の孫たちが涙するってシーンが出てきました。そういえば、”シートン動物記”って読んでないな~。そういや、本好き小学生の通過儀礼ともいえる”ドリトル先生航海記”も”楽しいムーミン一家”も”ファーブル昆虫記”もみんな読んでないな~~(*3) 対して外に出て遊んでた記憶もないんでいったい何してたんだろう? 寝てばっかいたのかなぁ
 ということで、今回ご紹介するのは反省をこめていいおぢさんになってから読んでみました”シートン動物記”より”狼王ロボ”であります
 

写真はたいちろ~さんの撮影。日比谷公園にある”ルーパロマーナ(ローマの牝狼)像”です

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【本】狼王ロボ(シートン、集英社他)
 巨大な体躯と人間の罠をものともしない狡知にたけたコランポーに君臨する狼の王”ロボ”。白くて美しくロボの妻である牝狼の”ブランカ”。ロボが率いる群れによりコランポー一帯の牧場は多大な被害を受けていた。そんなロボを捕まえるべくシートンはある計画を実行する・・・
 原題は”Lobo, the King of Currumpaw(ロボ、カランポーの王)。
【動物】狼
 ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。
”一匹狼”という言葉があるので単独行動する動物かと思っていましたが、実際は雌雄のペアを中心とした平均4~8頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成し、通常は繁殖するペアが最上位に位置するんだそうです(wikipediaより)


 多くの人にとって”狼”に対するイメージってその精神性のブレ幅が大きい動物ってそうそういないんじゃないかと(*4)。いやいや、”狐”は狡賢いから神の眷属まであるし、猫だって癒しのペットから化けて出るしと他にもいるだろうと反論はありそうです。でも、狼ってのは残虐から、勇猛果敢、慈愛、あるいは夫婦愛まで”精神のありよう”みたいなとこでは真逆に近いとこまで広がっているんじゃないかと

 残虐のイメージの筆頭は童話”赤ずきんちゃん”や”三匹の子豚”。なんせおばあちゃんやら子豚やらなんでも食べちゃうし。勇猛果敢つまり強さの象徴としてはスポーツや軍隊なんかでとく見かけるかと。故横綱”千代の富士”のあだ名が”ウルフ”とか、旧ドイツ海軍の”ウルフパック(群狼作戦)(*5)”とか。慈愛となると、上記の写真にある古代ローマを建国した双子”ロムルス”と”レムス”を育てた牝狼とか(あんまし詳しくは知らんけど)
 まあ、私自身は中学時代に”ウルフガイ・シリーズ(*6)”にはまった口なんで孤高のヒーローってイメージが強いですけどね。

 前置きが長くなりましたが、”夫婦愛”の代表格が今回ご紹介の”狼王ロボ”でしょうか。あらすじを続けます(ネタバレになりますのでご注意ください)

 シートンはボロの群れの足跡を観察することで、ブランカがロボの妻ではないかと考える。そしてまずブランカを捕獲することに成功する。悲しみの咆哮をあげるロボ。復讐に燃え、妻の探索をあきらめきれないロボは、取り乱し仕掛けられた罠にかかってしまう。仲間にも見捨てられ、抵抗するも力つきてしまうロボ。
 捕獲したロボを殺すことをおもいとどまったシートンだった。だが、力を奪われ、自由を奪われ、そして妻を失った悲しみの三重苦の中、老いた狼の王は死んでしまった。ロボの死骸をブランカの死骸のそばに寄り添わせるシートン。ロボを運んだカウボーイは大声で言った

  ほれ、お前はこいつのそばに来たかったんだろう
  これで、また、いっしょってわけだ

なんという名シーン。寿家の三人の孫たちが涙するのも納得です。

 でも、ちょっと待って。前半のロボたちって相当な悪役じゃなかったっけ? 5年間に牛を2000頭以上殺したとか、一晩で羊を250頭殺したとか。しかも遊び半分で。これらをして”狂暴なロボの一隊の暴虐ぶり”って書いてあるし。なんせ”人狼”だの”悪魔と結託している”だのさんざんな言われような王様なはずなんだけどなぁ
 小説だと他人には冷酷だけど家族には優しいキャラだとか、歴史上にもアイヒマンみたく残虐なナチス将校が実は平凡なおぢさんだったりとかあるけど(*7)、ロボやブランカって筋金入りの悪役だったのに、夫婦愛ですべてチャラってのはなぁ・・・

 いかんなぁ、大人になると本の読み方がひねくれてきて。少年のころのあの純粋な魂は失われてしまったんでしょうか・・・
 元からなかったのかもしれませんが

 なにはともあれ”シートン動物記”って面白い本です。私の読んだ集英社版に収録された”灰色グマの伝記”や”サンドヒルの雄ジカ”も良かったし。今更ながらですがお勧めの1冊です。


《脚注》
(*1)うちは寿!(小池恵子、竹書房)
 イケメン大好きなおばあちゃん”寿かめ”さんと、優秀なキャリアウーマンで家事ダメダメな長女”万里(32歳)”、クール&ビューティにして家事万能、時々マニアックな次女”美鶴(17歳)”、元気いっぱい、絵日記が得意な長男”千宏(7歳)”という3人の孫たちがおりなす日常系4コママンガ。
 本エピソードは4巻から。結構お勧めです。
(*2)シートン動物記(シートン、講談社他)
 アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンによる動物物語の総称。
 ”シートン動物記”という名前は日本でつけられた題名で、これに正確に対応する原題はないんだそうです(wikipediaより)。まあ、小学校の図書館に行けば必ずある本だから気にすることないけど
(*3)本好き小学生の通過儀礼ともいえる~
ドリトル先生航海記(岩波少年文庫他)
 アメリカの小説家ヒュー・ロフティングによる”ドリトル先生シリーズ”より
たのしいムーミン一家(講談社)
 フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによる”ムーミンシリーズ”より
ファーブル昆虫記
 フランスの博物学者、作家のジャン・アンリ・ファーブルの代表作
(*4)”狼”に対するイメージって~
 ニホンオオカミに限って言うと1905年に捕獲されたのが確実な情報としては最後のものだそうで、110年以上前の話。つまり、生きている狼を見た人はほとんどいないということです。したがって現在の”狼”のイメージは文学や映画などにより形作られたものかと
(*5)ウルフパック(群狼作戦)
 ドイツ海軍潜水艦隊司令カール・デーニッツ少将により考案された敵輸送船団を攻撃する通商破壊戦術の一つ。偵察機からの情報で輸送艦隊の進行方向を予測し、複数の潜水艦により予測海域にて各艦が包囲陣形を取りこれを撃滅するというもの。
(*6)ウルフガイ・シリーズ(平井和正、 早川書房他)
 名前と裏腹に暴力の渦巻く私立中学 博徳学園に転校した”犬神明”。彼は、満月が近づくと不死となる人狼(狼男)だった。彼を執拗に狙う不良グループのボス”羽黒獰”、そして二人の対立に巻き込まれる美しき教師”青鹿晶子”の運命は・・・
 初期のころのははまって読みましたが、”黄金の少女”以降まだ読んでないなぁ
(*7)アイヒマンみたく
 アドルフ・オットー・アイヒマンはナチスドイツ親衛隊中佐でホロコーストに関与して数百万の人々を強制収容所へ移送する指揮的役割を担った人物。戦後に逮捕されてみると小役人的で、家族を愛する凡人であったことが判明。
 詳しくは”ホロコーストの実行者はサディストではなくノーマルだった。我々と同じようにをどうぞ。

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