« カレル・チャペックのパーソナリティとは無関係に職業選択の自由が保障されている以上、SF作家が園芸家だってよい訳で・・・(園芸家12ヶ月/カレル・チャペックの家) | トップページ | 山登りには星座早見盤を持って!(野尻抱影 星は周る/富士裾野演習場) »

忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(書楼弔堂 炎昼/時計草)

 ども、”私の一冊”を求めて流離うおぢさん、たいちろ~です。
 家族で買い物に行くんですが、奥様や娘と違って洋服を買う趣味がないもんで、だいたい本屋さんで待っています。手間のかからない旦那といやそうなんですが、なんだかな~と思うことも。まあ、店の外待たれるよりはましだろうと割り切っています。
 まあ、新しい本をぷらぷら見るなら本屋さん、掘り出し物を探すなら古書店ってとこでしょうか。まあ、Kindleを買ってからこっち、本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(1)
 本屋でぷらぷらする最大の魅力は、思いがけなく面白そうな本を見つけることAmazonのリコメンデーション(*1)も悪くはないんですが、意外性って言う意味では本屋で適当にやってるほうが高いかも。Amazonも本屋さんもどっちも捨てがたい魅力ではあります。
 ということで、今回ご紹介するのは、究極の貴方にお勧めの一冊を紹介してくれる本屋さんの話”書楼弔堂”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。宮城県やくらいガーデンで見かけた”時計草”です

0849

【本】書楼弔堂 炎昼(京極 夏彦、集英社)
 明治30年代初頭。塔子お嬢さんは道端で体調を崩していた”なきと”と名乗る老人を休ませるために、書舗”弔堂”に案内する。陸灯台と見紛う外見、吹き抜け三階建の壁面一面は全て本で埋め尽くされる書楼。そして弔堂主人は僧侶から還俗し、その人の一冊を売るという人物。そして、意外にも主人と”なきと”は旧知の間柄だった・・・(探書拾壱”無常”より)
 後に歴史に名をなす明治の偉人達と弔堂主人と本との出会いがやがてその人の人生に影響を与える”書楼弔堂”シリーズの第二巻。
【花】時計草(とけいそう)
 トケイソウ科・トケイソウ属の植物の総称。名前の由来は花の雌しべが時計の長針、短針、秒針のように見えるから。英語では”passion flower”でこっちは”キリストの受難の花”という意味。子房柱が十字架、3つに分裂した雌しべが釘、副冠は茨の冠に見えるからだとか。いろいろあるもんですな。
 本書では、牧野富太郎の植物のイラストが使われていて、その一つからあんまし見たことなさそうな花をチョイス。ちなみに塔子お嬢様に言わせると、充分に美しい範疇にはいるものの、何処か作り物めいていてでき過ぎのわざとらしさがあって気味悪いと。さんざんな言われようです。けっこう面白い造形の花だと思うんですけどねぇ(探書拾”変節”より)

 弔堂主人ですが、古今東西の書物に限らず、錦絵から新聞に至るまで博学なことこの上ない人。同じく京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”に登場する”京極堂”こと”中禅寺秋彦”も古書店主人で大概物知りですがこっちは宗教、伝承、民俗学、妖怪学方面の人。弔堂主人というと、文学、芸術、哲学、科学の分野までとオールジャンルの人。とても凡人のよくする所ではありません。こんな主人がお客との会話の中から人となりを推理して勧める本だから、まあ、はずれはない模様。さらに恐ろしいのは主人が勧める本がその人の人生を変えてしまう、その人が後に偉人となって結果として社会まで変えてしまう、そんなお話です。まあ、その人が誰かを考えながら読むのも本書のお楽しみでしょうか。

 まあ、中身は本書を読んでいただくとして、今回は弔堂主人となきと老人が会話した”忠臣蔵”の解釈が面白かったのでそっちの話を。
 ”忠臣蔵”の中で吉良邸討ち入りの合図に叩いた”山鹿流陣太鼓”つーのが出てきますが、この”山鹿流”ってのは山鹿素行による”兵法”だとなんとなくイメージしてたんですが、本来は修身治国を説いた士道学なんだとか。のちに勤皇の志士の理を支えるものになり、なきと老人のバックボーンになってます。
 で、弔堂主人が指摘したのが、志と兵法の矛盾

  志はどうあれ、あらゆる軍略は勝つために立てられるものではございませぬか
  ならば、相手が何者であれ、不意打ちだろうが待ち伏せだろうが一向に構いますまい
  時には退却も計略のうち。逃げること自体は卑怯なことではないのでございましょう

   (中略)
  しかし、時に高い志や精神性はそれを禁じ手としてしまうのです。
  勝つために死ね、そんなものは策でも何でもない、計略でもない、死んだら負けです

 さらに忠臣蔵の義士たちの死に関して武士ならば”義に生き義に殉じる”生き方も正しいかもしれないが近代的戦争でそれは時代遅れ精神論だけでは立ちいかぬと断じています。”一命を投じても通さねばならん義とてあろう”と食い下がるなきと老人に対し、浅野内匠頭に切腹を命じ、お家再興の願いを退けたのは幕府で、吉良上野介は契機に過ぎない、本来は幕府に抗議すべきで吉良を討つは単なる腹癒せと見ることもできると

  弔堂主人 :吉良は討たれても幕府は無傷。
        家が滅びようが藩が取り潰されるようが
        幕府は痛くも痒くもない
  なきと老人:だが諸民は喝采した

         (中略)
  弔堂主人 :義は、命と引き換えにできるほどに重い
        そうした在り方は幕府にとっても有り難かったというだけのこと
        その方が都合が良かっただけです
  なきと老人:都合とは、誰の都合だね
  弔堂主人 :幕府ですよ

 引用が長くなってすいません。でも、忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(*3)
 一つは、戦略的思考と道徳ってのがあるべき姿として一致すりゃいいですが、必ずしもそうとは限んないということ。ましてや国家の一大事とか企業の存亡にかかわるとなりゃなおさらのこと。修身の教育が国家戦略に組み込まれていいようにされたってのは歴史の良く知るところです。
 もう一つは、大衆が喝采するような出来事が、実は裏で誰かさんにいいように利用されている可能性があるってこと。表向き”よくやった!”みたいな論調で書かれていても裏側に回ると、うさんくせ~何かがあるんじゃないかと考えとかないとかなりヤバイんじゃね?って気になります。最近の国際情勢なんか見てるとねぇ・・・

 さて、この”なきと老人”とは誰でしょう? 
 回答は本書にてお楽しみください
 ”『書楼弔堂』シリーズガイドブック”としてKindle版でさわりの部分と著者インタビューが無料で読めますん。ご興味がありましたら、そっちからでもどうぞ。

《脚注》
(*1)本屋で本を買うことも少なくはなってるんですが・・・(
 本屋で本かって、古本屋で本買って、Amazonで本買ってたら財布が持ちましぇ~~ん!
(*2)リコメンデーション
 ”ほしい物リストにある商品に基づくおすすめ商品”ってあれです。協調フィルタリングにデータマイニング、ビックデータの活用など最先端テクノロジーてんこもり。最近では人工知能なんかの技術も使ってそうな。中身は聞かないでください。分かっていないんで・・
(*3)冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると
 マキャヴェリズムとは”どんな手段や非道徳的な行為も、国家の利益を増進させるのであれば肯定されるという思想”(wikipediaより)。マキャヴェリの”君主論(岩波文庫他”の内容に由来するそうですが、この本もまだ読んでないなあ。

« カレル・チャペックのパーソナリティとは無関係に職業選択の自由が保障されている以上、SF作家が園芸家だってよい訳で・・・(園芸家12ヶ月/カレル・チャペックの家) | トップページ | 山登りには星座早見盤を持って!(野尻抱影 星は周る/富士裾野演習場) »

小説」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/528774/65368168

この記事へのトラックバック一覧です: 忠臣蔵をこういった冷徹なマキャヴェリズムの視点から見ると意外な側面が見えてくんだな~と感心(書楼弔堂 炎昼/時計草):

« カレル・チャペックのパーソナリティとは無関係に職業選択の自由が保障されている以上、SF作家が園芸家だってよい訳で・・・(園芸家12ヶ月/カレル・チャペックの家) | トップページ | 山登りには星座早見盤を持って!(野尻抱影 星は周る/富士裾野演習場) »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ