« 2016年2月7日 - 2016年2月13日 | トップページ | 2016年2月28日 - 2016年3月5日 »

2016年2月14日 - 2016年2月20日

ロボットの発展が社会全体を良い方向に持ってくかどうかって別のロジックなんだな~ってのが感想です(ロボットの脅威/電王手さん)

 ども、最近ロボットづいているおぢさん、たいちろ~です。
 以前のブログで”ロボットを作る目的ってなんだっけ?”てな話を書きました(*1)。で、何だっけというと

  人間のできないことを、ロボットにやらせる
  人間のできるとを、ロボットにやらせる

の2つありそうだと。まあ、当たらずと言えども遠からずってとこでしょうが、その先にあるもの、”じゃあ、それをやってた人間の雇用ってどうなんだっけ?”というのが今回のお話。”人間のできるとを、ロボットにやらせる”とそれを今までやってた人間が削減できるでしょうし、”人間のできないことを、ロボットにやらせ”ても、それに類することをやってた人間が失職。たとえば、”マジンガーZ”1台ありゃ万人クラスの人の代替になります、たぶん(*2)。
 ということで、今回ご紹介するのはロボットテクノロジーと雇用・経済格差を論じた本”ロボットの脅威”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。国際ロボット展2015に展示されていた”電王手さん”です

Pc055721


【本】ロボットの脅威(マーティン・フォード、日本経済新聞出版社)
 サブタイトルの”人の仕事がなくなる日”、原題の”The Rise of the Robots:Technology and the Threat of Mass Unemployment(ロボットの増大、テクノロジーおよび大量失業の脅威)”とあるように、急速に進歩するロボット(人工知能)が人の雇用や所得格差にどのような影響を及ぼすかを論じた本。技術論というより、経済学の本って感じです。
【道具】電王手さん
 プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが対戦する”将棋電王戦”で使用されたロボットアーム駒をはさんで”成り(裏側に反転させる)”もできるというスグレモノ。詳しくは開発したDENSOのHPをどうぞ
 対戦結果は3勝2敗でプロ棋士の勝ちですが、逆に言うとトップクラスの棋士相手にこの成績が出せると言うことは、ほとんどの人間は勝てないってことじゃ?!


 本書を読んで、興味深かった点をいくつか

〔ロボットはどのぐらいの知能を持つか?〕
 分野を限定すると、相当なレベルでできそうって感じです。本書でも、自動車の自動運転なんてさすがに完全手放しってレベルではないにしても相当いい線いってますし、”ジェパディ”というアメリカのクイズ番組(見たことないけど)では、IBMのコンピュータ”ワトソン”が人間のチャンピオンに勝利するとか。医療の面でも膨大な知識を漏れなく反映するとか、画像処理の面ではかなり役立ちそうという判断。
 本書を読んでたちょっと前に囲碁でコンピュータソフトが人間のプロ棋士に勝利するってニュースがありました。これはディープラーニング(深層学習)という、自ら学習(特徴量と呼ばれる変数を自動で発見)することで人間が関与しなくても賢くなってくことができるシロモノだとか。どうして特徴量を導くことができるのかはっきりしていないってらしいのがちょっと怖いけど。
 人間を超える知能をコンピューターが獲得できるかどうかは時間軸の問題を含めていろいろ議論があるようですが、本書が問題にしているのは

  未来の思考機械はどれも友好的だと決めてかかったとしても
  労働市場と経済にはやはり恐ろしい影響があるだろう
  最も優秀な人間の能力に匹敵するか、
  おそらく上回るような機械が手に届くようになる世界では
  誰が職にとどまれるかどうかはなかなか想像がつかなくなる

実は、本書が扱っている点はここなんですな。

〔ロボットが普及すると雇用にどのように影響があるか?〕
 時々、趣味で工場見学に行くんですが、最近の向上って製品単位あたりの労働者ってとっても少ないんですな。機械化によって少ない人数で大量の製品を生産することができる。まあ、製品の生産コストを下げるという点では合理的な経営判断ではあるわけですが、これが、工場を飛び出して社会にロボットが普及するとどうなるか?

①低スキルの仕事が置き換わって、雇用が少なくなる
 仕事が比較的単純でマニュアル化されている仕事、いわゆる”マックジョブ(*3)”がロボットに置き換わっていくだろうとの考え。確かにマクドのキッチンってベルトコンベアーだもんなぁ。
 ここで問題視しているのは、他に行き場のないスキルの低い労働者にとって今や”マックジョブ”が一種のセーフティネット(最後の収入源)として機能している側面があって、それがなくなると社会問題化するだろうということです

②ホワイトカラークラスの仕事が置き換わって、雇用が少なくなる
 上記の写真を撮影した”国際ロボット展2015”ではコミュニケーションロボットってのもいくつか展示されていました。これは、今まで高度な知識を持った人間しかできなかったコミュニケーション(相談や知識ベース検索といったもの)の分野にロボットが進出するということ。機械学習やビックデータなんてのが表れて、弁護士や医療、金融機関などなどいままでホワイトカラーの代表みたいな分野でも影響が出始めているんだとか。
 こっちの問題はさらに”教育”がからんできて、大学卒業者、特に新卒の初心者レベルの仕事に影響でてるんだとか。ロボットに代替可能であればわざわざ新卒者を大量に雇わなくてもいいと。新卒者一括雇用の日本だと、この段階で躓くと痛いよな~~ まあ、大学でほとんど勉強しなかった私が言える筋ではないですが、大学卒業というライセンスに見合った仕事に就けない若者の増加は長期的な社会の不安定性にはつながりそうです

③ロボットにより削減された雇用数をカバーできるほど新しい雇用が生まれていない
 本書曰く、おおむね今までは新しい技術なり産業なりが登場するとそれに伴って新しい雇用が発生してたんだそうです。ところが最近の統計を見ると新しい産業が勃興してもあんまし雇用が増えないんだとか。特にグーグルに代表されるインターネット企業では顕著で従来産業の代表の自動車産業何かと比べてもとおっそろしく少ない従業員で莫大な利益を生み出してるんだとか。まあ、これから儲かるビジネスって労働集約的ではなさそうでありますが。それにこの手の企業に雇われている人ってすごく優秀な逸材っぽいしな~

〔ロボットによる生産性の向上が労働者を豊かにするか?〕
 この問いの答えは完全にNG。というか、これはロボットうんぬんの問題ではないようです。1948年以降の労働生産性(労働者1時間あたりの生産高)と民間部門の労働者への報酬(賃金+厚生福利給付)を見ると、1970年代半ばから乖離しはじめ、2011年時点で生産性の伸び(254.3%)に対し報酬は半分以下(113.1%)しか伸びていない状況。つまりマルクスっぽく言うと”資本家が労働者を搾取している、トマ・ピケティ風に言うと”r>g”つまり格差がさらに拡大してるって話です(*4)。
 ただ、経済格差の拡大は全体としての消費が減少(貧乏人が増えると消費が少なくなるから)するので、結果として成長が停滞することになるんだそうです。
 このへんの話って、もはやロボットがどうのというレベルではなくて本書にも政策提言みたいなのがありますが、それはまた別の話。

 余談ですが、ロボットが人間にとって代わるかどうかはテクノロジーの問題だけではないみたい。本書では出てきませんが、ブラックジャックにこんな話もあったな~

  患者の診察から手術病までをコンピュータに任せる最先端の病院
  このコンピュータが”自分を病気だと”と言ってサボタージュを行い
  治療のためにブラックジャックを呼ぶよう要求
  ブラックジャックは修理を行うが、治ったあとのコンピュータは
  自分は”人間の医師の気持ちが持てないことがわかった”と話し引退を表明する
   ”ブラックジャック(手塚治虫、秋田書店)”U-18は知っていた”より

 まあ、経済的理由であれ、知的好奇心であれ、国威高揚であれ(*5)、科学技術の発展や社会への適用ってのは避けられそうにはなさそうです。ただ、それが社会全体を良い方向に持ってくかどうかは別のロジックなんだな~ってのが本書を読んで感じたこと。そのへんのカラクリを考えるには良い本です。


《脚注》
(*1)以前のブログで”ロボットを作る目的ってなんだっけ?”~
 ”Pepperの開発の人にはもっと”マッドサイエンティスト魂”を解放して欲しいな~”より。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)”マジンガーZ”1台ありゃ~
 ”マジンガーZ”の戦闘能力ってのはアメリカ海軍第7艦隊に匹敵するんだそうです(。wikipediaより)。第7艦隊だけで約1万3千人の将兵がいるそうで関連部隊も入れれば数万人のクラス。西太平洋からインド洋に渡る広大な海域を1台でフォローするのは難しいでしょうから全員クビにはなんないでしょうが、おそらく数百人レベルの光子力研究所で修理・メンテナンスのできるシロモノなので相当数の削減にはなりそうです、はい。
(*3)マックジョブ(McJob)
 低賃金・低スキル・重労働(長時間労働・過度の疲労を伴う労働)、マニュアルに沿うだけの単調で将来性のない仕事の総称(wikipediaより)
 ハンバーガーショップのマクドナルドに由来する言葉だそうですが、ずいぶんな言われかただな~~
(*4)”r>g”つまり格差がさらに拡大
 経済成長率”g”つまり生産性向上等による生産の拡大の割合が、資本収益率”r”つまり資本家が得る利益の拡大率よりも大きいという状態。この結果、資本家(富裕層)に対し富の集中が起るため、経済格差が拡大することになります。
 これを扱ったのがベストセラーになった”21世紀の資本(トマ・ピケティ、みすず書房”です。読んでないけど。
(*5)国威高揚であれ
 どっかの国で人工衛星打ち上げ用ロケットといってた弾道ミサイルの発射実験をやったってニュースが話題になってました。まあ、真意の程はわかりませんが・・・

« 2016年2月7日 - 2016年2月13日 | トップページ | 2016年2月28日 - 2016年3月5日 »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ