”知性主義”といい、”反知性主義”といい。でも一番ヤバイのは”空気を読む”ってことかも(超・反知性主義入門/オキシジェンデストロイヤー)
ども、インテリとは程遠い適当なブログを書いているおぢさん、たいちろ~です。
”インテリ”という言葉って、よくよく考えると実に適当な使い方をしてます。普通は”知性”ぐらい何でしょうが、ジャック・アラインだと”情報”や”諜報”だったり(*1)、相手を揶揄するなら”高学歴”になったり、”夏休み”には”知識人”になったりします(*2)。
で、これに”反”が付くとますます訳わかんね~って状態です
ということで、今回ご紹介するのはそんな反知性を扱った名コラムニスト小田嶋隆の”超・反知性主義入門”であります
写真は”仁工房”のHPより。ガレージキットの”オキシジェンデストロイヤー”です
【本】超・反知性主義入門(小田嶋隆、日経BP社)
”日経ビジネスオンライン”に連載中のコラムが、1冊の本まとめてみると”反知性主義”をめぐる論考になっていたというきわめていいかげんな本。なんで”反知性主義入門”の表題に騙されて真面目な哲学書だと思って読んじゃいけません。でも、ぶっちゃけ面白いんだな~~ これが。
【道具】オキシジェンデストロイヤー(Oxygen Destroyer)
”ゴジラ”に登場する科学者の芹沢博士が開発した超科学兵器。直訳すると”酸素破壊装置”つまり”空気を一瞬で破壊する兵器”です。数あるゴジラ作品の中で”ゴジラを完全に殺すことができた唯一の手段(wikipediaより)”だそうです。
”反知性主義(Anti-intellectualism)”てナニ? ってのはバズってるんで良くわからん(*3)。知的権威や知識人、エリートといった”知的っぽいモノ”に対するアンチぐらいな雰囲気ですが小田嶋隆に言わせると
「反知性主義者」という言葉は、「バカ」を上品に言い換えた婉曲表現にすぎない
ということらしいです。
本書の中でのICU副学長の森本あんりとの対談の中では
「既存の知性」に対する反逆
「今、主流になっている、権威となっている知性や理論をぶっ壊して
次に進みたいという別の知性
って言い方をしています。確かにな~、小田嶋隆のエッセイって”既存の認識に対する懐疑”みないたとこあるからな~ 単なるコンジョ曲がりかもしれませんが、そんなとこが気にいってるんだよな~
。
対談相手の森本あんりってのも、小田嶋隆の友人だけあってなかなかぶっちゃけた人。最初は”ICU副学長が反知性主義?!”とか思ってました。だって、”ICU(国際基督教大学 International Christian University)”って日本のキリスト教教育の最高峰で、神道の総本山みたいなお家のやんごとなき娘さんが行くような学校で、しかも副学長となれば、どう考えたって知的権威の側の人だよな~ と。でも、本書での小田嶋隆との対談を読むと
(ピューリタンは)
「自らの信仰によって、たったひとりでも既存の権威に敢然と立ち向かう」
という巡回伝道師たちのスタンス
とか
「学者」と「パリサイ人(*4)」、つまり当時の学問と宗教の権威を
正面からこきおろしたイエスのこの言葉は、反知性主義の原点とも言える
とか、けっこうぶっちゃけなお言葉。でもキリスト教そのものが、マルティン・ルターの宗教改革とか、カトリックVSプロテスタントとか、開祖のキリストにしても批判者どころか”革命家説”まであるようで。キリスト教って既存の権威へのアンチがビルドインされてるんでしょうか? まあ、キリスト者かもしれませんが・・・
森本あんりの著書”反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体”(新潮選書)ってのも面白そうなんでこんど読んでみよう。
さて、本書を読んで気になったのがひとつ。それが”空気を読む”って話です。小田嶋隆曰く
われわれは、「みんなが守っていれば」どんなにくだらない決まりごとであっても
驚くほど律儀に守り通すことのできる国民
で、
「まわりの人と同じようにふるまう」ことを
強力に内面化している人間たちなのであって
それゆえ「変な人だと思われる」ことを、
ごく幼いころから、強く恐怖している
んだそうです。確かに”KY(空気が読めない)”なオキシジェンデストロイヤーみたいな人って”テーゼに対するアンチテーゼを提示する人”じゃなくて、”和をもって尊とし”となさないダメな人扱いだもんね。でも”空気が読みゃいい”って態度って、”知性主義”とか”反知性主義”以前の問題じゃなかろうかと。
そんなことないとお思いかもしれませんが、本書を読んでた時にたまたま”防衛庁が民間の船員を予備自衛官として有事に活用する計画を進めている”というニュースがありました(朝日新聞 2016年2月9日朝刊)。有事の際に輸送艦が足りなくなるので民間船舶で補完する”という発想自体はロジスティック戦術の面からわからんでもないですが、この記事でアレッ? と思ったのは、有事そのものへの戦略の在り方とか有効性とかの議論をいっさいすっとばして”その依頼が断れるかどうか”が論点になってること。自衛隊派の人は
予備自衛官として自分の能力を活かしたい人もいるだろし、
強制はしてないんだから、断りたいなら断わる自由はありますよ
ってスタンス。これに対して船員派の人は
会社から言われて、周りの人間が志願しちゃったら、
自分だけ断るのって、相当難しいんじゃね?
というご意見。これって、知性とか論理とかじゃなくて完全に”空気”の話。なんだかな~と思いつつ、でもこれが”日本人のリアル”って気もします。
本書は、エッセイとしても面白いです。でも、人に対してこの論調で話すときっと”こいつは空気読めない”と言われそうだな~ 私はやっちゃうけど
《脚注》
(*1)ジャック・アラインだと”情報”や”諜報”だったり
”トム・クランシー”の小説に登場する”ジャック・ライアン”はCIA所属の分析官(のちに大統領)。CIAって”Central Intelligence Agency”の略称、直訳すると”中央情報局”で情報ですが、やっぱ”スパイ”のイメージありますなぁ、冷戦時代の人としては。
(*2)”夏休み”には”知識人”になったりします
1985年の”新潮文庫の百冊”のキャンペーン・コピーに
インテリげんちゃんの、夏やすみ。
ってのがありました。まあ、本を読みましょうってのがメッセージなんで”知識階級”、”知識人”ぐらいの感覚でしょうか。
コピーライターは糸井重里。コピーライターがインテリな仕事としてブームになったのもこの頃でしたかね~~
(*3)バズってるんで良くわからん
”バズワード(Buzzword)”って、定義が曖昧なのになんとなく知ってるっぽい気になる流行語? バズワード自体がバスワードっぽいからな~。なんてっても流行語自体が半年もたない時代ですから・・・
(*4)パリサイ人
”ユダヤ教正統派”の人。キリスト教詳しくないんで、なんとなくキリストをいぢめる”悪役”っぽいイメージありますが、そんな教えが宗教として主流派になるはずもなく。なんで、こんなことになったんでしょうね?
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