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2016年2月7日 - 2016年2月13日

”知性主義”といい、”反知性主義”といい。でも一番ヤバイのは”空気を読む”ってことかも(超・反知性主義入門/オキシジェンデストロイヤー)

 ども、インテリとは程遠い適当なブログを書いているおぢさん、たいちろ~です。
 ”インテリ”という言葉って、よくよく考えると実に適当な使い方をしてます。普通は”知性”ぐらい何でしょうが、ジャック・アラインだと”情報”や”諜報”だったり(*1)、相手を揶揄するなら”高学歴”になったり、”夏休み”には”知識人”になったりします(*2)。
 で、これに”反”が付くとますます訳わかんね~って状態です
 ということで、今回ご紹介するのはそんな反知性を扱った名コラムニスト小田嶋隆の”超・反知性主義入門”であります

写真は”仁工房”のHPより。ガレージキットの”オキシジェンデストロイヤー”です

2

【本】超・反知性主義入門(小田嶋隆、日経BP社)
 ”日経ビジネスオンライン”に連載中のコラムが、1冊の本まとめてみると”反知性主義”をめぐる論考になっていたというきわめていいかげんな本。なんで”反知性主義入門”の表題に騙されて真面目な哲学書だと思って読んじゃいけません。でも、ぶっちゃけ面白いんだな~~ これが。
【道具】オキシジェンデストロイヤー(Oxygen Destroyer)
 ”ゴジラ”に登場する科学者の芹沢博士が開発した超科学兵器。直訳すると”酸素破壊装置”つまり”空気を一瞬で破壊する兵器”です。数あるゴジラ作品の中で”ゴジラを完全に殺すことができた唯一の手段(wikipediaより)”だそうです。

 ”反知性主義(Anti-intellectualism)”てナニ? ってのはバズってるんで良くわからん(*3)。知的権威や知識人、エリートといった”知的っぽいモノ”に対するアンチぐらいな雰囲気ですが小田嶋隆に言わせると

  「反知性主義者」という言葉は、「バカ」を上品に言い換えた婉曲表現にすぎない

ということらしいです。
 本書の中でのICU副学長の森本あんりとの対談の中では

  「既存の知性」に対する反逆
  「今、主流になっている、権威となっている知性や理論をぶっ壊して
  次に進みたいという別の知性

って言い方をしています。確かにな~、小田嶋隆のエッセイって”既存の認識に対する懐疑”みないたとこあるからな~ 単なるコンジョ曲がりかもしれませんが、そんなとこが気にいってるんだよな~

 対談相手の森本あんりってのも、小田嶋隆の友人だけあってなかなかぶっちゃけた人。最初は”ICU副学長が反知性主義?!”とか思ってました。だって、”ICU(国際基督教大学 International Christian University)”って日本のキリスト教教育の最高峰で、神道の総本山みたいなお家のやんごとなき娘さんが行くような学校で、しかも副学長となれば、どう考えたって知的権威の側の人だよな~ と。でも、本書での小田嶋隆との対談を読むと

  (ピューリタンは)
  「自らの信仰によって、たったひとりでも既存の権威に敢然と立ち向かう」
  という巡回伝道師たちのスタンス

 とか

  「学者」と「パリサイ人(*4)」、つまり当時の学問と宗教の権威を
  正面からこきおろしたイエスのこの言葉は、反知性主義の原点とも言える

 とか、けっこうぶっちゃけなお言葉。でもキリスト教そのものが、マルティン・ルターの宗教改革とか、カトリックVSプロテスタントとか、開祖のキリストにしても批判者どころか”革命家説”まであるようで。キリスト教って既存の権威へのアンチがビルドインされてるんでしょうか? まあ、キリスト者かもしれませんが・・・
 森本あんりの著書”反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体”(新潮選書)ってのも面白そうなんでこんど読んでみよう。

 さて、本書を読んで気になったのがひとつ。それが”空気を読む”って話です。小田嶋隆曰く

  われわれは、「みんなが守っていれば」どんなにくだらない決まりごとであっても
  驚くほど律儀に守り通すことのできる国民

で、

  「まわりの人と同じようにふるまう」ことを
  強力に内面化している人間たちなのであって
  それゆえ「変な人だと思われる」ことを、
  ごく幼いころから、強く恐怖している

んだそうです。確かに”KY(空気が読めない)”なオキシジェンデストロイヤーみたいな人って”テーゼに対するアンチテーゼを提示する人”じゃなくて、”和をもって尊とし”となさないダメな人扱いだもんね。でも”空気が読みゃいい”って態度って、”知性主義”とか”反知性主義”以前の問題じゃなかろうかと。

 そんなことないとお思いかもしれませんが、本書を読んでた時にたまたま”防衛庁が民間の船員を予備自衛官として有事に活用する計画を進めている”というニュースがありました(朝日新聞 2016年2月9日朝刊)。有事の際に輸送艦が足りなくなるので民間船舶で補完する”という発想自体はロジスティック戦術の面からわからんでもないですが、この記事でアレッ? と思ったのは、有事そのものへの戦略の在り方とか有効性とかの議論をいっさいすっとばして”その依頼が断れるかどうか”が論点になってること。自衛隊派の人は

  予備自衛官として自分の能力を活かしたい人もいるだろし、
  強制はしてないんだから、断りたいなら断わる自由はありますよ

ってスタンス。これに対して船員派の人は

  会社から言われて、周りの人間が志願しちゃったら、
  自分だけ断るのって、相当難しいんじゃね?

というご意見。これって、知性とか論理とかじゃなくて完全に”空気”の話。なんだかな~と思いつつ、でもこれが”日本人のリアル”って気もします。

 本書は、エッセイとしても面白いです。でも、人に対してこの論調で話すときっと”こいつは空気読めない”と言われそうだな~ 私はやっちゃうけど

《脚注》
(*1)ジャック・アラインだと”情報”や”諜報”だったり
 ”トム・クランシー”の小説に登場する”ジャック・ライアン”はCIA所属の分析官(のちに大統領)。CIAって”Central Intelligence Agency”の略称、直訳すると”中央情報局”で情報ですが、やっぱ”スパイ”のイメージありますなぁ、冷戦時代の人としては
(*2)”夏休み”には”知識人”になったりします
 1985年の”新潮文庫の百冊”のキャンペーン・コピーに
  インテリげんちゃんの、夏やすみ。
ってのがありました。まあ、本を読みましょうってのがメッセージなんで”知識階級”、”知識人”ぐらいの感覚でしょうか。
 コピーライターは糸井重里。コピーライターがインテリな仕事としてブームになったのもこの頃でしたかね~~
(*3)バズってるんで良くわからん
 ”バズワード(Buzzword)”って、定義が曖昧なのになんとなく知ってるっぽい気になる流行語? バズワード自体がバスワードっぽいからな~。なんてっても流行語自体が半年もたない時代ですから・・・
(*4)パリサイ人
 ”ユダヤ教正統派”の人。キリスト教詳しくないんで、なんとなくキリストをいぢめる”悪役”っぽいイメージありますが、そんな教えが宗教として主流派になるはずもなく。なんで、こんなことになったんでしょうね?

パロディってのはモトネタを知ってる人のほうが楽しめます、たぶん(文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦/華厳の滝 巌頭之感)

 ども、笑えるパロディが大好きなおぢさん、たいちろ~です。
 私のくっだらい趣味の一つに”自社製品のパロディカタログ”を作るってのがあります。どんなんかつ~と、”3倍速いシャア専用サーバー”とか”ミノフスキー粒子散布下でもつながるガンダムスマホ”とか”データセンターinバベルの塔”とか”半沢直樹監修 融資支援システム”とかとかとか・・・ いい年したおぢさんがやってるこた同人誌を作る中高生と変わりません
 実物を見てもらいたいんですが、ネットで流布すると著作権法違反で訴えられちゃうシロモノなので今回はカット。でも、この手のパロディってのは、知らない人が見たら”これ、新製品!? いつ発売?”ってレベルのクオリティがウケのポイント。”本当にありそうで実は冗談”ってのがパロディのツボかと思います。でも、この手のパロディーって”モトネタを知ってる人”じゃないとウケないんだよな~~
 ということで、今回ご紹介するのはみんなが(名前だけは)知ってる文豪をパロディーにした”文豪ストレイドッグス”シリーズより外伝”綾辻行人VS.京極夏彦”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。華厳の滝と”巌頭之感”(ポスター)です

6019508
6019521

【本】文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦(朝霧カフカ、KADOKAWA)
 滝の上の崖、二人の異能者が対峙していた。一人は鳥打帽に遮光眼鏡、死者のように白い肌。犯人を”偶然”不幸な死に陥れる”殺人探偵”こと綾辻行人。もう一人は神仙の鬼謀にて殺人事件をまきおこす”妖術師”こと京極夏彦
 二人の対決は、新たなる戦いの幕開けでもあった・・・
【旅行】華厳の滝 巌頭之感
 ”華厳の滝”は日光中禅寺湖から流れ出る大谷川にある名瀑。
 1886年、旧制第一高校(現東京大学)の学生”藤村操”が”巌頭之感”という遺書を残して投身自殺しました。

  萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」

という哲学的な遺書は、あとを追うように自殺を誘発し(藤村の死後4年間で185名)、華厳の滝が”自殺の名所”になりました。(遺書全文はこちら

 さて、本書の主人公は3人。”殺人探偵”綾辻行人。”妖術師”京極夏彦。そして綾辻行人の監視役、特務異能課エージェントにしていじられキャラの辻村深月。”文豪ストレイドッグス”シリーズ(*1)ってのは文豪のキャラが、作品世界や本人に合った異能(超能力)を使って探偵したり犯罪したりという異能力バトルアクションコミックですが、外伝もその流れで書かれてます。私自身も綾辻行人と京極夏彦けっこう好きで、かなり読みましたが、本書の感想はというと

よくもまあ、こんだけありそうなキャラとストーリーをでっち上げたモンだ

 言っときますけど、これ最大級の賛辞です。

 まずは綾辻行人から。新本格派ミステリーの”館シリーズ(*2)”とかもよく読んでたんですが、ミステリー(論理)とホラー(非論理)を組み合わせたジャンルもあって、その代表が今回のモチーフにもなっている”Another(綾辻行人、角川文庫)”。あるおまじないを守らないと”災厄=関係者の死”に見舞われる、で主人公の榊原恒一と見崎鳴はその災厄から逃れるための方法を推理するというお話。なぜ災厄が起るかというと”現象”だからという理由の説明一切なしのぶん投げ状態。そういった点では異色のミステリーですが、綾辻行人の異能も同じ。犯罪を解決すると犯人に不可避の死をもたらす”Another”。すごい推理力を発揮する綾辻行人ですが、なんで犯人が死亡するかの説明はいっさいなし(だから異能ともいえますが)。
 探偵事務所に人形部屋を作っているとこなんかも”Another”から。春河35の描くイラストで綾辻行人が抱えている眼帯をした美少女の人形もアニメ版”Another”から見崎鳴のオマージュ。こういう遊び心っていいですなぁ

 ”妖術師”こと京極夏彦。襤褸の和服を纏った隠者のような装いの老夫というビジュアルですが、これって本人のビジュアルに通じてるんですな。黒の着流し手甲脚絆の服装ってモチーフになっている”百鬼夜行シリーズ(京極夏彦、講談社)”に出てくる京極堂こと中禅寺秋彦が”憑き物落とし”の時のファッションですが、ご本人のお召し物もこれなんですな、インタビューの写真とか。さすがに襤褸ではないですけど。まあ、喋り方が”南極夏彦(*3)”っぽいのは御愛嬌ですが・・
 京極夏彦の異能は”憑き物落とし”。”百鬼夜行シリーズ”では想いに取りつかれた人間から”憑き物”を落とすことで正常に戻す京極堂ですが、本作では相手に上空から憑き物を取りつかせ、対象の精神を変調させる異能。まったく逆です。面白いのは、まったく逆の効果ですが、京極堂も京極夏彦もともに恐ろしいほど論理的で”言葉による呪(しゅ)”がベースなんですな。”百鬼夜行シリーズ”って妖怪がモチーフになってますが、実は妖怪そのものが登場するわけでもなく、その原理は非常に論理で解説されてて、憑き物を下すのも推理という”言葉”。京極夏彦のほうの異能”憑き物落とし”も”相手を自由自在に動かせる訳でもない”というシロモノ。むしろその鬼謀をもって他人に犯罪を起こさせてます。
 ”言葉だけでそんなことできるんかい?”と思われるかもしれませんが”巌頭之感のように言葉が自殺を誘発しているというか、自殺したい人の背中を押すことはありえます。本書のように犯罪を起こしたいけど警察に捕まるのが怖い(抑止力)に対し、完全犯罪の方法を示唆することで実行に移させるみたいな。

 残念ながら、辻村深月は読んだことないんで、こんど読んでみよ!

 冒頭描いたように、パロディってのはモトネタを知ってる人のほうが楽しめます、たぶん。できれば、”Another”とか”百鬼夜行シリーズ”とか読んでた方が楽しめっかな~~ てか、この本を読もうと思った人って、これぐらい読んでっか!

《脚注》
(*1)”文豪ストレイドッグス”シリーズ(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川書店)
 この作品が生まれたきっかけは原作者の朝霧が”文豪がイケメン化して能力バトルしたら絵になるんじゃないかと、編集と盛り上がったから”だそうですが、原作をかなり読みこまないとここまで書けないと思います。きっと、相当なビブリオマニアなんでしょうなぁ
(*2)館シリーズ(綾辻行人、講談社文庫)
 今は亡き建築家”中村青司”が設計した風変わりな建物で起こる連続殺人事件。推理作家の”島田潔”はその謎に挑戦する・・・
 ”十角館の殺人”、”水車館の殺人”など。こんな家に住んでみたいという建築物も魅力です。
(*3)南極夏彦
 ”南極探検隊シリーズ”に登場する史上最低最悪再馬鹿の元小説家。六十数歳。簾ハゲ”~のう”が口癖。同じ京極夏彦の作品とは思えないようなブッ飛んだお話です
 ”南極。(京極夏彦、集英社)”に収録。

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