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2016年12月18日 - 2016年12月24日

潜水艦は”沈む”ではなくて”潜る”。ではオスプレイは”墜落”なのか”不時着”なのか?(クジラの彼/オスプレイ)

 ども、ブログを書くのに”言葉”を大切にするおぢさん、たいちろ~です。
 2016年12月13日に沖縄の海岸近くにオスプレイが落っこちました。何かと話題になる機体ではありますが、今回の報道で気になったのが同じ事象について登場する人やマスコミによって言葉の使い方がまったく違うんですな。沖縄県や一部のマスコミは”墜落”という言葉を使い、アメリカの司令官や日本政府、他のマスコミは”不時着”という言葉を使い。朝日新聞の天声人語(2016年12月15日)では、アメリカ軍と日本政府が”不時着”という言葉を使うのは”正常性バイアス(*1)”ではないかとう論調で書いてたんですが、ある本を思い出してそ~なんか~とちょっと気になりまして。
 ということで、今回ご紹介するのはOLと自衛官のレンアイを描いた有川浩の”クジラの彼”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
2015年の横田基地日米友好祭(*2)で展示されていたオスプレイ(MV-22)です

M229204043


【本】クジラの彼(有川浩、角川文庫)
 平凡なOL”中峰聡子”が人数合わせで参加した合コンで潜水艦乗りの自衛官”冬原春臣”と出会う。彼女の何気ない一言で意気投合した二人。行方がわからない、いつ帰ってくるかもわからない、メールも電話もほとんどつながらないというハードル高い春臣の職場環境の中、二人のレンアイの行方は??
 名作”海の底(*3)”のスピンオフ、自衛隊系ベタ甘ラブコメです。
【乗り物】オスプレイ(V-22)
 アメリカのベル・ヘリコプター社とボーイング・ロータークラフト・システムズが共同で開発した垂直/水平飛行が可能な垂直離着陸機。可変式のティルトローターが特徴。カテゴリーとしては”輸送機”になります。
 アメリカ海兵隊所属だと”MV-22”アメリカ空軍所属だと”CV-22”と別の組織による運用。事故率が高いと言われているのは”CV-22”の方。任務が違うので一概には言えませんが、これとて他機種に比べてことさら高い訳ではないとの意見もあります(wikipediaより)。細かい話のようですが、このへんもごっちゃにすると話がかみ合わなくなるので・・・


 さて、上記の潜水艦の話題での中峰聡子と冬原春臣の会話から。

  春臣 :潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。
       潜水艦が『潜る』って言う人と『沈む』って言う人。
       素人さんは半々ぐらいの確率で『沈む』って言いがちなんだけど、
       君は違うんだなって
  聡子  :え、だって クジラが沈むとか言わないじゃない
  春臣  :・・・そこで更にクジラが出てくるか

        (中略)
  春臣  :潜水艦はね、沈むって言わないの。必ず浮上するから。
       潜水艦乗りの生理として沈むって言われるのは我慢ならないんだよね。
       潜水艦が沈むのは撃沈されたときだけだから
  自衛官:・・・しつこいようですが、潜水艦は『潜る』です

 外見的には”潜水艦が海上から水中に進んでいく”という事象でありながら、立場が違うと似たような言葉でもまったく違うニュアンスになるってことです。

 てなことを踏まえて、今回のオスプレイの事故をつらつらと。報道されている内容を最大公約数でみると

 ・12月13日に、アメリカ海兵隊の新型輸送機オスプレイ(MV22)が
  沖縄県名護市沖に着水、大破
 ・市街地への直接的な被害はなし。パイロット等は無事脱出

あたり。この事象に対して、沖縄としては

  海上に”墜落”して大破している。そんな危ない飛行機を我々の上空で飛ばすな!

だし、アメリカ軍としては

  あれだけ機体が損傷していても県民や搭乗者に被害を出さなかったで”不時着”
  オスプレイやパイロットが優秀さの証明で、表彰ものだ!

というとこでしょうか。
 飛行機が操作不能あるいは困難な状況の中で目的以外の場所に着地することを指すことまでは同じでも、”墜落”は最悪の事態を引き起こしたってニュアンスがあるのに対し、”不時着”となると最悪の事態を回避できたってニュアンスで使われる言葉じゃないかと。ですんで、御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは”墜落事故”と呼ばれるし(*4)、一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は”ハドソン川の奇跡”と称賛されることになります(*5)。両機長とも最悪の事態を避けるべく最大限の努力を行ったことは想像に難くないですが、結果によって使われる”言葉”が違ってしまうのは仕方がないとはいえ、残念なことでもあります。

 今回の事故に関して言えば、発言する人の立場も違うし、事象へ評価姿勢も違うので使われる言葉が異なるのはわかりますが、言葉の使い方をちゃんと踏まえとかないと重要なモノが見えてこないんじゃないかとちょっと不安になります。マスコミですら半月近くたった今でも、”墜落”を使っているとこと”不時着”を使っているとこが混在。議論がかみ合あっていないのがわかります。

 ことわっておきますが、私は”墜落”か”不時着”のどっちの言葉が適切かとか言うつもりはないし、アメリカや沖縄のどっちかに与するモンでもありません。事故を起こすことは避けなければならないし、事故に対する原因究明と再発防止が重要な課題だと思っとります(だから炎上などさせないように!) ただ、”言葉”がなんとなく軽く使われているんじゃないかな~という昨今の状況をちびっと気にしているだけであります。

《脚注》
(*1)正常性バイアス
 事故や災害が起こったとき「きっと大したことじゃない」と自らに都合よく解釈し、事の深刻さを見誤ることをいう。同時多発テロの時、高層ビルから「ここは大丈夫」。「すぐに収まる」という思い込みで避難しなかった人がいたのもこの心理によるもの(本紙より抜粋)
(*2)横田基地日米友好祭
 毎年9月に横田基地でアメリカ空軍/航空自衛隊により開催される基地開放のイベント。マニア垂涎の航空機の展示や飛行訓練の様子を見ることに加え、都心からのアクセスも良いことからけっこうな人出。福生市観光協会のhp(2016年度)はこちら
(*3)海の底(有川浩、角川文庫)
 横須賀米軍基地が巨大な甲殻類に襲撃された。次々と人が襲われていく中、海上自衛隊潜水艦”きりしお”の夏木三尉、冬原三尉は逃げ遅れた少年少女とともに潜水艦に避難する。一方、神奈川県警の明石警部と警察庁烏丸参事官は状況を打開するためある秘策を実行する・・・
 有川浩の”自衛隊三部作”の”海”オチオシの名作です!
(*4)御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは~
 1985年8月12日に羽田発伊丹行きのボーイング747が御巣鷹の高天原山の尾尾根(通称御巣鷹の尾根)に墜落した事故。乗員乗客524名中520名が死亡するという惨事となりました。
(*5)一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は~
 2009年1月15日にニューヨーク発シアトル行きのUSエアウェイズのエアバスA320がエンジントラブルによりハドソン川に不時着水した事故。
 2016年にクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で”ハドソン川の奇跡”として映画化。この映画もまだ観ていないなぁ。

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