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2016年9月11日 - 2016年9月17日

ハードSFっぽいノリが好きか、ゾンビとBLが好きか、お好みによりチョイスしてみてください(屍者の帝国/パンチカード)

 ども、死して屍拾うものなしのおぢさん、たいちろ~です。
 さて、”ハーモニー”に続く伊藤計劃2冊目の了読です。フランケンシュタインモノと言いましょうか、ゾンビがくるりと輪をかいたホ~イのホイ♪とでも言いましょうか。屍がソロソロ歩き回る世界にスチームパンク(*1)をホイップしたスペキュレーションフィクション?!(*2) なんたって、題名がそのモノずばりの”屍者の帝国”ですから。
 ということで、今回ご紹介するのは伊藤計劃の遺作にして円城塔が完成させた異色のSF”屍者の帝国”であります。


写真はたいちろ~さん撮影。
レトロなコンピュータで使われていたパンチカードシステムです。

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【本】屍者の帝国(伊藤計劃、円城塔、河出文庫)
【DVD】屍者の帝国
 (原作 伊藤計劃、円城塔、出演 細谷佳正、菅生隆之、監督 牧原亮太郎、アニプレックス)
 ヴィクター・フランケンシュタインが屍を甦らせることに成功してから100年、屍者は、機械式解析機関とともに社会インフラとなっていた。医学生ワトソンは大英帝国の諜報員となり、フランケンシュタインの残した”ヴィクターの手記”と、彼が最初に復活させた屍者”ザ・ワン(*3)”を追うことになる・・・
 早逝した伊藤計劃が残した草稿を、円城塔が完成させたSF小説、第33回日本SF大賞・特別賞、第44回星雲賞日本長編部門を受賞。
【道具】パンチカード
 厚手の紙に開けた穴の位置や有無から情報を記録するメディア。原理的には試験で使っているマークシートみたいなのです。原作では穴の形や大きさがばらばらとのことですので、記憶ルールは全く異なるもののようです。
 コンピュータの記憶媒体としては現在ではほとんど使われることはありませんが、私が入社した1980年代中ごろではまだ使ってたんですけどねぇ


 さて、”屍者の帝国”です。原作読みました。DVDも観ました。ブログ書こうと思ってます。で、困っています。てか、なんでこんな違う話になっとんねん???
 いや、確かに原作もDVDも面白かったんですよ。原作っていわゆる屍者=ゾンビとかフランケンといったホラー物の系譜というよりハードSFの後継者って感じでしょうか。”ザ・ワン”ことフランケンシュタインの怪物と医学生ワトソンとの魂の在り方の対話なんて、シェリー版の”フランケンシュタイン”を彷彿とさせる哲学的ともいえる内容だし。
 DVD版は、ストーリー的にはかなりわかりやすくなってるし、クライマックスでの解析機関”チャールズ・バベッジ”をめぐる戦いなんてビジュアル的にはかなり良くできてるし。世界のネットワークを統べるスーパーコンピューターっぽい扱いなのに、入出力インタフェースはパイプオルガンにパンチカードシステムつ~ギャップがたまらんし。なんといっても白髭のナイスな老人”ザ・ワン”が沖田艦長の声で語るわライバルキャラはドメル将軍だわと、けっこうそっちの人にも受けそうだし(*4)

 登場人物はほぼ同じ、扱われているガジェットもほぼ同じながら、結果的にはかなり違うテイストの話になってんですな、この作品。言ってみれば”新世紀エヴァンゲリオン”と”碇シンジ育成計画(*5)”の違いみたいな。パロディ云々のレベルではなく語るべき”物語”がぜんぜん違うと。

  全員が絶望を感じることができなくなるのは、至福の一つの実現ではないかね
  そこにはにはもう争いはない。争いを知る機能も喪失されるからだ

 本作のキーワードになるセリフですが、原作では潜水艦ノーチラスの中でザ・ワンがワトソンに”魂のありよう”を語ったもの。これがDVDだとぜんぜん別な人が全然別のシーンで使われているんですね。ザ・ワンやワトソンの行動目的もまったく別物だし、そもそも語るべき内容がまったく別次元。でも、なまじキャラクターなんかがいっしょなんで原作とDVDを続けて観るとけっこう混乱しちゃったりします。

 内容は推理モノのノリもあるんで詳しくは書けませんが、両方とも面白いんですよ。別にどっちが良いとか悪いとかの話じゃないんで、両方お勧めですがあえて言うなら

〔原作〕
 どっちかというとSFファン向きハードSFっぽいノリや、生命(魂)の謎にせまるみたいなオールディズっぽい大上段に振りかぶったSFが好きな人にはよさそう。”ヴィクターの手記”とか”チャールズ・バベッジ”とかそのワード自体がけっこうディープな意味を持つとこがあるんで、SF的な知識がある人ならさらに突っ込めるかも。

〔DVD〕
 SFというより冒険活劇かな。ビジュアルもけっこういけてますが、ゾンビもまたリアルなんで”ゾンビ好き”ならOK。ワトソンとフライデーの人間関係を見ると”BL好き”には美味しいかも。”フランケンシュタインの花嫁”みたいな恋愛モノのノリはありますがデート向きの作品とは言えんだろうなぁ

 どっちを選ぶかはかなり好みがでそうですが、よろしければご一読のほどを

《脚注》
(*1)スチームパンク
 蒸気機関や機械式計算機などのテクノロジーが発展した世界観を持つSFのジャンル。時代的にはイギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝、日本だと明治~大正期あたり。インダストリアルデザインとしてはたいへん面白いんですが、あまり読んでいないジャンルです。すいません。
(*2)スペキュレイティブ・フィクション?!
 さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語(wikipediaより抜粋)
 日本語では思弁小説。略して”SF”。”SF(サイエンスフィクション)”とは違うんだ的なノリもありますが、面白ければどっちでもいいんじゃないかと。
(*3)ザ・ワン
 SFとかホラーを読まない人向けにに補足すると、メアリー・シェリーの小説”フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス”に登場する”フランケンシュタイン”というのは怪物(クリーチャー)を作った人の名前で、怪物そのものに名前はついていないんですね。ちなみに、この怪物は頭悪そうなイメージがありますが、原作では哲学的な会話も交わすとってもインテリジェンスな人。1994年に公開されたフランシス・コッポラ製作総指揮、ロバート・デ・ニーロ主演の”フランケンシュタイン”(ポニーキャニオン)が原作に近いのでこちらもどうぞ。
(*4)白髭のナイスな老人が沖田艦長の声で語るわ~
 ”ザ・ワン”のCVを担当したのはリメイク版の”宇宙戦艦ヤマト2199”で 沖田艦長を担当した菅生隆之。なんとなくこの声で言われると納得しちゃうんだな、これが。DVD版のライバルキャラの声の担当が同じく”宇宙戦艦ヤマト2199”で名将ドメル将軍を担当した”大塚明夫”。対決のシーンは本作の聴きどころです。
(*5)碇シンジ育成計画(原作 カラー、作画 高橋脩、カドカワコミックス・エース)
 ”新世紀エヴァンゲリオン”を原作とした”学園エヴァ”モノ。登場人物はほぼ同じですがパロディとかスピンオフとかのレベルを超えてまったく別な次元にとんでっちゃってます。
 原作の出版社がこういう二次著作物っぽい本を出すってのは良い時代なんでしょうねぇ

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