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2016年6月26日 - 2016年7月2日

窓際に居場所があったのって、中高年のおぢさんにはまだましな時代だったんかも(窓際のスパイ/遅い馬)

 ども、会社でも窓際のおぢさん、たいちろ~です。
 これでも一応会社では幹部社員(中間管理職)をやっっておりましたが、規定の年齢になりましたんですでに離任をしております。本来でしたら後進に道を譲ってのんびりさせてもらえっかな~と甘いことを考えておりましたが、やることは変わらんわ給料は下がるわとホントに甘かったな~~
 まあ、人生年をとって引退するとかリストラ喰らうとか閑職に追いやられるとかいろいろありますが、その姿って職業や組織によってまあ様々。
 ということで、今回ご紹介するのは閑職に追いやられた”スパイ”のお話”窓際のスパイ”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
北海道、苫小牧市にある”ノーザンホースパーク”の馬車です

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【本】窓際のスパイ(ミック・ヘロン、ハヤカワ文庫NV)
 英国情報部(保安局)の窓際の部署”泥沼の家(Slough House)”に集められた”遅い馬(Slow Horse)”達。訓練中にドジを踏んだ若き諜報部員”リヴァー・カートライト”もその一人。くだらない任務を与えられた彼だが、その任務はやがて保安局を揺るがしかねないミッションに変貌する。一発逆転を狙う”泥沼の家”のメンバーがとった行動とは・・・
 原題は”窓際のスパイ”とはまったく関係のない”Slow Horse(遅い馬)
【動物】遅い馬
 馬というとどうしても”サラブレッド”をイメージしちゃいますが、農耕や重量物の運搬のために改良された”重種”という品種というのもあります。写真の馬車を引いている”クライスディール種”がこれに当たるそうです。昔は重装備の騎士を乗せたり”ばんえい競馬 (*1)”で使われているのがこの種類。ですんで必ずしも”遅い”わけではないんでしょうが、サラブレットよりは遅そうなイメージです。


 話はいきなり飛びますが、冷戦終結以降”スパイ”ってのはなかなか辛い立場に置かれている話ってのが出てきます。最近だと”007 スペクター(*2)”でも時代遅れの00セクションを解体するって話が出てくるぐらいし。
 この手の話で思い出されるのは”フレデリック フォーサイス”の”マクレディ・シリーズ(*3)”。イギリス情報機関で優秀なエージェント”サム・マクレディ”が冷戦終結に伴い閑職に追いやられることになるなり、これに対抗して聴聞会を開き過去を振り返る・・・みたいな話。出版が1991年とソビエト連邦が消滅した年。当時読んだ時にはそれはそれなりに寂寥感のあるリアリティがありましたねぇ・・・

 さて、”窓際のスパイ”ですが、主人公のリヴァー・カートライトは昇級試験として与えられたミッションでキングス・クロス駅(*4)を大混乱に陥れるというドジをふんで泥沼の家送りになった人。言ってみりゃ入社早々、研修完了の試験で会社に大損害を与えて将来を閉ざされた若者って感じでしょうか。
 その他にも、機密扱いの磁気ディスクを置き忘れたミン・ハーバーとか、酒びたりになってリハビリ施設に収容されていたキャサリン・スタンディッシュとか、コンピュータオタクで性格悪しのローデリックミン・ホーとか、まあ、閑職に回されてもしょうがないな~って人や、なんでここに送られたんかわからん人までさまざま。まあ、一様に今の仕事に満足してないのは確かですが。

 ここまで書いてて思ったんですが、”じゃあなぜこの人達はクビにならないんだろう?”ってこと。まあよくよく考えてみりゃ国家機密レベルの汚れ仕事をやってた面々を簡単にクビにしちゃったら今だったらネットに何書き出すかわかんないリスクもあるし、本人だって履歴書に”スパイやってました”とは書けないだろうし(スパイの再就職先ってどんなんあんだろう?) で、妥協の産物ってのが泥沼の家ってことでしょうか?

 本書の中で秀逸なのが泥沼の家のリーダー”ジャクソン・ラム”。この人が泥沼の家に来た経緯は書いてないんですが、なかなかに喰えないおっさん。腹が出てるわよれよれのレインコート(刑事コロンボか?!)、仕事はせんわ口は悪いわと良い上司とは言えんわな~~ でも昔はかなりブイブイ言わしてた人みたいです。物語後半では状況を正確に把握して上司である保安局のナンバー2のダヴァナーを追い詰める手腕なんかはなかなかのモノ。落ちこぼれ集団が意外な実力を発揮してサラブレッド集団のエリート達をやりこめるって、ストーリーはスパイ小説というよりサラリーマン小説として読んだ方が面白いかも(半沢直樹か!)

 本書って”窓際のスパイ”という表題が気になって読んだんですが、邦題としては秀逸でしょうね。原題の”Slow Horse(遅い馬)”だったら読んでないかも。
 ”窓際族”ってのは調べてみると1970年代後半に出てきた言葉のようで、終身雇用制の時代に一見すると管理職席のような窓際に実際は厄介払いされてるということだとか。成果主義だリストラだとせちがない昨今、窓際に居場所があったのって中高年のおぢさんにはまだましな時代だったのかもしれません。
 ”働いたら負け”的発想の今の若者にとって、大した働きもせずに給料の貰える”窓際”が勝ち組に見えるという意見もあるようですが、そんなに甘かね~ぞ~ たぶん遅い馬だって馬車ぐらい引かなきゃメシだって出てこないんだろうしな~~


《脚注》
(*1)ばんえい競馬
 競走馬がそりをひきながら力や速さなどを争う競馬。公営競馬としては北海道帯広市が主催する”ばんえい十勝”が唯一という世界的にみても珍しいものなんだそうです。
 hpはこちらからどうぞ
(*2)007 スペクター
 (主演 ダニエル・クレイグ、監督 サム・メンデス、20世紀フォック)
 ”007シリーズ”第24作目の老舗のスパイ映画
 第一作の”ドクター・ノオ”が1962年とアメリカとソ連が一触即発だった”キューバ危機(1962年)”の時代ソ連のゴルバチョフとアメリカのジョージ(パパ)ブッシュが冷戦の終結を宣言した1989年に公開されたのが16作目の”消されたライセンス”。時代とともに敵の組織も変わっていきますが、スパイ組織そのものが無用の長物扱いされてくってのも時代なんでしょうか
 そういや”007 スカイフォール”では兵器開発担当者で若造の”Q”が、ネットを重視して昔のスパイ道具を”古い”の一言で片づけてるのも時代なんですかねぇ・・・
(*3)マクレディ・シリーズ(フレデリック・フォーサイス、角川文庫)
 ”騙し屋”、”売国奴の持参金”、”戦争の犠牲者”、”カリブの失楽園”の4部作。現在は全て絶版の様子。フォーサイスと言えば”ジャッカルの日”とか”オデッサ・ファイル”とか”戦争の犬たち”とかけっこうブームだったんですがねぇ。ご興味のある方は図書館ででも探してみてください。
(*4)キングス・クロス駅
 読んでないんですが、ハリー・ポッターシリーズではホグワーツ特急の始発駅です。
年間乗降客数約24.6百万人と、JRだけでカウントするとだいたい新橋、大宮、秋葉原と同じぐらいです。このクラスの駅で大混乱を引きおこしゃ、そりゃ閑職にも回されるわなぁ

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