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2016年5月22日 - 2016年5月28日

だが、野心は論理から生まれるものではない(ゴースト・スナイパー/アーティチョーク)

 ども、出世など縁がなくス~ダラに生きてるおぢさん、たいちろ~です。
 意外なようですが、会社で仕事をやっていると”指揮命令系統”なんつー言い方をする割には”命令書”という名前の書類ってお目にかかることはありません。こういうことやるぞという”中期○○計画”とか”XX度方針”や、こういった物を作るぞという”仕様書”みたいのはあるんですが”命令書”とは書いてない。”そんなこと言っても、命令(指示)はでてるやん!”と言われそうですが、実際口頭ですんじゃってるケースがほとんどじゃないかと。まあドキュメント化されているのも”稟議書”だったり”方針伺い”に対する”議事録”だったりで、上の人から”命令書”って形式にはないですな。
 まあ、この辺は企業文化だったりしそうなので一般論ではないかもしれませんが、明確に”命令書”って形のものもあるんでしょう。
 ということで、今回ご紹介するのは暗殺事件にまつわる1枚の命令書のリークをめぐる”リンカーン・ライムシリーズ”の第10作”ゴースト・スナイパー”であります。


写真は”お料理ダイスキ!ニューヨークおうちごはん”のhpより。
アーティチョークです

Photo


【本】ゴースト・スナイパー(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 テロリストの活動家”モレノ”がバハマで暗殺された。この事件を巡って地方検事補”ローレル”は元ニューヨーク市警中央科学捜査部長で科学捜査の天才”リンカーン・ライム”を訪れる。この暗殺に関してアメリカの諜報機関から”命令書”がリークされ、しかもモレノは無実だった。ローレルはライムに操作を依頼するが、現場は遠く離れたバハマ。難航する捜査に業を煮やしたライムはバハマに直接乗り込むが・・・
【花】アーティチョーク
 キク科チョウセンアザミ属の多年草。和名はチョウセンアザミ(朝鮮薊)
 日本ではあまりなじみがありませんが、若いつぼみが食用になります。食べたことないけど。本書で暗殺者が作る料理”パッチワーク・グースの贅沢な料理”のレシピの中にある食材の一つがこれ
 ちなみに、ニューヨークにはアーティチョークビジネスで大儲けした”アーティチョーク・キング”と呼ばれたマフィアのリーダーがいたそうですが、マフィアって意外なモンもビジネスしてるんですな


 本書に出てくるのは”STO(Special Task Order、特殊任務命令書)”という書類。この書類を発行しているのは”NIOS(National Intelligence and Operation Serve、国家諜報運用局(*1))という、なかなか危険な香りの組織のトップです。
 で、この”STO”ってのには書かれていることとして、”誰を”、”いつまでに”、”どのように”暗殺するか、書かれてないことに”誰が”、”なぜ”暗殺するかってことがあります。書かれている”誰を”は”暗殺するターゲット(本書では対象=タスク)”と”いつまでに”は明示的なんですが、”どのように”はオペレータ(暗殺者)がどの手段でってのと、”CD(付随的損害)”が”承認(ただし最小限とすること)”ぐらい。まあ、”大まかなやり方は決めるけど詳細は任せる、あと、巻き込まれる被害者は少なくしてね”とバクっとしかないんですな。どっかの会社で、子会社に性能実験調査を丸投げして、上司が部下に”何としてでも燃費目標を達成しろ。やり方はおまえが考えろ(*2)”的な指示があって社会問題化していますが、この手の指示だと何やりだすか分かんない手合いのも出てくるわけで。本書だと元々非合法活動を命令してるんで、どう考えてもそれはやり過ぎだろ~ってヤバい話になっちゃてます。

 ぐだぐだ書いてますが、本書のポイントは命令書に書かれざる”なぜ”暗殺するのかにあります。いちおう国家機関が命令してるんで”国家の安全を脅かすテロリストは排除する”という大義名分はあるんですが、これがどのような判断でなされるかって実はけっこうあいまい。ある上司のお話

  法は解釈と権限の移譲を要求している。全面的な移譲だ。
  私のような人間に移譲することーーー
  私のように、国を統治する法の隙間をどう埋めるかを決める人間に

   (中略)
  な? きみも私もそれぞれ法を解釈し、考え、判断を下す
  この世界は灰色なんだよ

この上司は”私の仕事に独断の入り込む余地はない”とも言ってますが、命令を決めるって多かれ少なかれ独断で決めなきゃいけないことって多いと思うんだがな~~ 国家機関のトップがこれ言いだすのってかなりアブナイとも思うんですが・・・

 ここまではまあまっとうと言えなくもないですが(言えるのか?)、問題はこの命令書を自分の野心に利用しようとする奴もいること。まあ、その人が出世するかどうかはこんな手で上司を排除しても自分がとってかわることができるとは限んないですが。印象に残ったある上司のつぶやき

  

だが、野心は論理から生まれるものではない

 独断ではないにしても、野心から情報操作なんかが混じりだすと”判断の誤り”って必ず発生しちゃいます。それもまたアブナイとも思うんですが・・・
 もっとも、逮捕する側だって自分が政界に打って出るための花火にしようとする奴もいてどっちもどっちってとこはあるんですがねぇ・・・

 推理小説って、あんまし内容を書くとネタバレになるんでバクっとした話になっていますが、ご興味のある方はどうぞ。面白いシリーズです

ps.
 ジェフリー・ディーヴァーのhpに暗殺者の作る料理のレシピが載ってます。英語ですけど(リンクはここから


《脚注》
(*1)国家諜報運用局
 アメリカ国家安全保障局(NSA National Security Agency)ってのは実在しますが、NIOSも実在するんでしょうか? やってることは冷戦時代のCIA(Central Intelligence Agency アメリカ中央情報局)っぽいんですが・・・
(*2)何としてでも燃費目標を達成しろ。やり方はおまえが考えろ
 三○自動車の軽自動車燃費不正操作事件のんです。ちなみに、私んちの車も例の4車種にひっかっかっておりまして・・・ まあ、乗ってる分には別に不便ないんですけどね

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