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2016年3月6日 - 2016年3月12日

”ビジネスで成功したければ、しっかりした信仰を持ちなさい”というのが今のアメリカ流のキリスト教らしいです(反知性主義/ICUの桜)

 ども、反知性主義というより単なるコンジョ曲がりなおぢさん、たいちろ~です。
 私の好きなコラムニストに小田嶋隆という人がいます。常識や権威に対して”ホントか?!”って疑ってかかる視点が気にいっているんですが、先日この人の”超・反知性主義入門(*1)”という本を読みました。この本で小田嶋隆の小中高の同級生にしてICU(国際基督教大学)の副学長という森本あんりとの対談が載ってまして、この人はまじめな”反知性主義”の本を出しているんだとか。面白そうなんでこれも読んでみましょう、ということで、今回ご紹介するのは森本あんりの”反知性主義”であります。


写真はICUのhpより。ICUの桜です。
Icu


【本】反知性主義(森本あんり、新潮選書)
 サブタイトルは”アメリカが生んだ「熱病」の正体”とあるようにアメリカの反インテリ風潮や極端な道徳主義といった性質を、アメリカで変質したキリスト教が生み出した”反知性主義”にあるとする本。
 紹介文に”いま世界でもっとも危険なイデオロギーの正体”って言葉があるんですが、そうかもしれんな~、ト○ンプ大統領候補が受けてるとか見てると・・・
【花】ICUの桜
 日経新聞の”何でもランキング 一度は歩いてみたい国内大学の桜名所”(2016年2月27日”でICUの桜が東日本の第2位にランクイン。キリスト教と桜って組み合わせがちょっと意外? でもとっても綺麗そうです。
 桜の咲く時期の土日祝日は一般公開されるのでこんど行ってみよ!

 ”反知性主義(Anti-intellectualism)”って何ってのは諸説あるようですが、前出の”超・反知性主義入門”だと

  「反知性主義者」という言葉は、「バカ」を上品に言い換えた婉曲表現にすぎない

で、本書の中で森本あんりの言葉で一番しっくりきたのが

  反知性主義は、知性そのもの対する反感ではない
  知性が世襲的な特権階級だけの独占的な所有物になることへの反感である

ので、

  大家のもつ、旧来の知や権威への反逆であって、
  その反逆により新たな知の可能性を拓く力ともなる

ってとこです。このへんって確かに小田嶋隆のコラムに通じるとこあるな~~

 ところで、森本あんりって人はICUの副学長どっちかと言わなくても”権威”側の人なんですが、かなりぶっちゃけてる人のようです。私自身は宗教に詳しい方ではないんですが、そんでも驚いた話を本書から。

〔キリスト教は不平等を容認している〕
 まず、驚いたのがこれ。キリスト教って”平等”を説いていると思ってたんですが実はそうではないらしい。なんでこうなっているかというとキリスト教の平等って”イエス・キリストにあって”とか”神の前に”って前提条件がついているからで、社会的な現実の前では不平等でよいと考えているんだそうです

  人間社会には、上下の秩序がある
   (中略)
  だからこそ、その中でお互いに助け合い、上には上なりの品徳と権威が
  下には下なりの献身と服従が求められるのである

これって、ごく最近までの一般認識だったそうです。
 で、アメリカってのはそうじゃなくって、社会的な平等も求めていくという方向に変化していったんだそうです。

〔政教分離はどうも日本の発想とは違うらしい〕
 日本でいう”政教分離”ってのは宗教が政治に口を出さないようにするってイメージですが、アメリカってのは逆で個人が自分の思う宗教を実践ささるためのシステム、つまり”俺の宗教は俺が決めることに政治が口を出すな”ということらしいです。元々は政治が公定教会を決めて公金(税金)を使うのはおかしいだろうってとこから始まっているんだとか。

〔伝道師と詐欺師のメソッド〕
 日本人に巡回伝道師ってあまりなじみはないですが(*2)、アメリカでは一般的な存在なんだとか。固定の教会を持たずいろんな地方を回ってキリスト教を伝道するのがお仕事。で、これのメソッドが”巡回セールス”だとか”詐欺師(コンマン)”につながってくという話。宗教の本に”詐欺師”というのが合わないと思われる方には”香具師(やし)”(スーパーやかつての秋葉原駅前で便利グッズを売ってたあれ、詐欺ではないです、念のため)に近いでしょうか。 売り物が”回心(神への信仰)”なのかバッタもんなのがが違うだけ(それでも普通、宗教の人は言わんぞ・・)
 この本の特徴なんでしょうが、宗教を”ビジネス”としての軸で見るている側面があって、宗教って精神性だけではないんだってことがわかります。

〔学者の難しい授業より池上解説(*3)
 教会のニーズってのは自分の宗派の信者を増やすことで、大衆のニーズは手っ取り早く”回心”をして精神のやすらぎを得たいってとこでしょうか。罰あたりな表現かもしれませんが。で、このてっとり手っ取り早くってのを実現してくれる人のほうが好まれそうです。アメリカでも以前は教会で難しい説教を聴いて長々お祈りをしてたのに対し、伝道師ってのはわかりやすく解説してくれる存在だったそうです。当然、そこには話芸だとかのスキルが要求されるわけで、それが上記のメソッドを向上させてくことになったんだとか。まあ、テレビのコメンテーターで学者先生が出てきて難しい説明をされるより、わかりやすく説明してくれる”池上解説”みたいなもんかと
 教会の説教をするには教会の地位だとか学歴だとかがうんぬんされてた時代にあって、それを打ち破り、学歴関係なし、舌先三寸で大衆をその気にさせるってのは、既存の教会側から見るとさぞいやな存在だったんでしょうなぁ・・・

〔信仰は、この世の成功を保証してくれる〕
 ”幸福の神義論”ってのを初めて聞いたんですが、これは自分が幸福なのは偶然ではなく正当な根拠があるという考え方。単に偶然から今の幸福を手に入れたのなら、偶然でその幸福を失うことになるかもしれないから、それはなんかの根拠を欲しがることになります(この裏返しが”不幸の神義論”)で、この根拠に”神の祝福”という補助線が見えてくると。
 本書での20世紀以降の”リバイバリズム(信仰復興運動)”のレトリックってのが

  ビジネスで成功したければ、しっかりした信仰を持ちなさい
  それがあたなを道徳的にし、人格的にし、そして金持ちにしてくれる

まあ、神社に参拝に行けば必ず”神様へのお願い”をする日本人が偉そうに言えた筋合いではないんですが、ここまで直球勝負されるとなぁ

 本書のエピローグで、アメリカで反知性主義が先鋭化していったのは反知性主義が”社会のチェック機能”を果たしていたこと、”キリスト教の土着化”とその結果としての”宗教と道徳の単純なまでの同一視”なんてことが書いてあります。
 まあ、中世以来のプロテスタントのアンチとしてプロテスタントが生まれ、その中での先鋭のピューリタンがアメリカに渡り、そのアンチとしてリバイバリズムが何度も盛り上がりといったことをやっているのがアメリカの精神史のベースにあるようです。

 この手の分野にあんまし造詣が深くないんで、うまくご紹介できてないんで、詳しくはご一読ください。アメリカでのキリスト教史というより、ビジネス的なメソッドも含めたキリスト教の布教史として読んでも楽しめます。


《脚注》
(*1)超・反知性主義入門(小田嶋隆、日経BP社)
 ”日経ビジネスオンライン”に連載中のコラムが、1冊の本まとめてみると”反知性主義”をめぐる論考になっていたというきわめていいかげんな本。”反知性主義入門”って表題ですが、決して真面目な哲学書だと思って読んじゃいけません。が、面白いんだな~~ これが。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)巡回伝道師ってあまりなじみはないですが
 昔は自転車に乗って走り回る外人伝道師ってのをたまに見かけましたが、最近はみないですなぁ。いったいどこへ行っちゃったんでしょうか?
(*3)池上解説
 ジャーナリストというより、テレビの”池上解説”のほうがイメージある池上彰ですが、元々はNHKの記者で大学の先生出身ではありません(現在は東京工業大学他の教授)
 wikipedia読んで初めて知ったんですが、この人がNHKを辞めた理由が、解説委員を希望していたのに解説委員長から”解説委員というのはある専門分野をもっていなきゃいけない。お前には専門分野がないだろう”と言われたからだとか。この人もどうやら”反知性主義”の人らしいです。

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