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ランプ売りのおじいさんは、意外に優秀なイノベーターだったようです(ビックバン・イノベーション/おぢいさんのランプ/ランプ)

 ども、イノベーティブな人生とは縁のないおぢさん、たいちろ~です。
 近頃会社で流行るモノの一つに”イノベーション”ってのがあります。まあ、旧態然としたビジネスをやってると先細りになるのが目に見えているので、”なんか新しいことやろうぜ!”みたいな話ですが、そんなに簡単に新しいことを思いつきゃ苦労はしないですし、それを”儲かるビジネス”にしようとするとひと山ふた山ではきかない困難が予想されます。そうは言ってもやらん訳にゃいかんのですが・・・
 ”イノベーション”ってさも新しそうな顔をしてますが、意外にも童話の中にこんな話を見つけました
 ということで、今回ご紹介するのは”ビックバン・イノベーション”をテキスト解説する新美南吉の童話”おぢいさんのランプ”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。小樽の北一ガラスにあったランプです

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【本】ビッグバン・イノベーション(ラリー・ダウンズ、ポール・F・ヌーネス、ダイヤモンド社)
 マーケットの変化は従来の釣鐘型曲線(ベル・カーブ)ではなく、一夜にて爆発的な成長をとげ、突然死を迎える、鮫のひれ(シャークフィン)のように。
 イノベーションによるマーケット変化の分析と対処のルールをまとめた本。
 原書は2014年、日本では2016年に発刊。
【本】おぢいさんのランプ(新美南吉、青空文庫他)
 東一少年が遊んでいる時に、蔵の中で一つのランプを見つける。東一君のおじいさんはそのランプを見て、自分が若かったころに”ランプ売り”をしていたころの話を東一少年に語りはじめた・・・
 童話集「おぢいさんのランプ」(1942年)に収載
【道具】ランプ
 電気・油脂・ガスによる光源と、笠やホヤなどの保護装置がある照明器具。ランプの中で手に提げるか持って運べるものが”ランタン”です(wikipediaより抜粋)
 現在でのキャンプ用品やアンティークな装飾品として使われることもあります。


 従来のマーケティングの話ですと、エベット・ロジャーズが提唱した釣鐘型をした5つの市場セグメントってのがでてきます。”革新者”、”初期導入者”、初期多数導入者”、”後期多数導入者”、”導入遅延者”というので、初期多数導入者から後期多数導入者への切り替わり時期をピークに、ゆるかやな釣鐘型のカーブを描くというもの。ところが、イノベーションが進展するとこんな悠長なことにならなくて、先行した人達による”特異点”、急速に立ち上がる”ビックバン”、あっというまに衰退する”ビッククランチ”、生き残った人達による”エントロピー”というサイクルが極めて短いスパンで発生し、鮫のひれのような形を描くというのが本書の主張。で、これを乗り切るためにそれぞれのマーケットに対しての12のルールが提示されています。

 で、このルールというのが、実に”おぢいさんのランプ”に登場する巳之助じいさんの行動に当てはまるんですなぁ。”おぢいさんのランプ”は小学校(だったかな?)の教材で出てきたんで読まれた方も多いと思います。おじいさんがランプの商売に見切りをつけて、池のほとりで灯をつけたランプを壊していくシーンが幻想的で印象に残る作品です。改めて読み返してみましたが、実にこれがイノベーターなんですな。あらすじを追いながら説明してみます。※〔 〕内は”ビッグバン・イノベーション”で提示されたルール

〔ルール3:一見ランダムな市場実験に着手する〕
 岩滑新田という灯りといえば行燈しかないような村で育った孤児だった巳之助は、町で見かけたはランプの明るさに心を奪われどうしても欲しいと思いました。持っているお金では足りないため、ランプ屋の主人と交渉して、ランプを村で売るからということで安く売ってもらいました。
 保守的な百姓相手に、始めは流行らなかった商売ですが、商い屋のおばあさんにただで貸し出すことで便利さを理解してもらい、それを見た村人にランプが売れ始めました

  →→→
 まず、灯りのない村にランプというテクノロジーを持ち込むことで利便性の拡大と新たなマーケットを生み出すという先見性はイノベーターの元祖とでもいいましょうか(*1)。ランダムとまでは言いませんが、”特異点”において起爆剤となる先行者を実験的に捕まえてマーケットを拡大するとこはこのルールっぽいです。

〔ルール6:「ブレッドタイム」を作る〕
 順調にランプを売っていた巳之助ですが、ある時電燈を見かけます。電燈の明るさに自分のビジネスの危機を感じる巳之助。そしてとうとう岩滑新田にも電気がひかれ電燈が導入されることになりました。そこで巳之助は”電気というものは、長い線で山の奥からひっぱって来るもんだでのイ、その線をば夜中に狐や狸がつたって来て、この近ぺんの田畠を荒らすことはうけあいだね”と、電燈への反対意見をまくしたてました

  →→→
 ”ブレッドタイム”というのは時間稼ぎという意味。映画”マトリックス(*2)”に登場したネオが”銃弾(ブレッド)”の速度を遅くして時間稼ぎをして銃弾をさけることからきています。ここでは、反対意見をまくしたてマーケットの拡大を阻止しようという点で、先行するイノベーターが守りにはいる行動と同じです。ただし、時間稼ぎはあくまで時間稼ぎ。根本的な解決にはなりません

〔ルール8:負債化する前に資産を処分する〕
 電気を引こうとする村長を怨んで、牛小屋に火をつけようとする巳之助。マッチを忘れて火打石で火をつけようとするが失敗。”こげな火打みてえな古くせえもなア、いざというとき間にあわねえだなア”という自分の言葉に自分の過ちを悟った巳之助
 家に戻った巳之助は、家中にあるランプの全てを、池のほとりにもっていき、火を灯して石ころを投げつけて壊していきます

  →→→
 ”おぢいさんのランプ”の中でも最も印象的なシーンです。
”ビッグバン・イノベーション”風に言うと”ランプ=コア資産”が急速に価値を失うことを察知したおぢいさんは、負債化する前に処分したということになります。まあ、本来なら売却とかするんでしょうが、思い切りのいいおぢいさんは”わしの、しょうばいのやめ方はこれだ”といって壊してしまいますが。

〔ルール9:リードしている間に撤退する〕
 おぢいさんが壊しそこなって残ったランプは誰かが持っていったそうです。
 こうして、おぢいさんは”ランプ屋”を廃業しました。それから町に出て”本屋”という新しい商売を始めました。

  →→→
 ”損しちゃったね。四十七も誰かに持ってかれちゃって”という東一君に答えて、おぢいさんの話

  今から考えると、何もあんなことをせんでもよかったとわしも思う
  岩滑新田に電燈がひけてからでも、
  まだ五十ぐらいのランプはけっこう売れたんだからな
  岩滑新田の南にある深谷なんという小さい村じゃ、まだ今でもランプを使っているし
  ほかにも、ずいぶんおそくまでランプを使っていた村は、あったのさ
  しかし何しろわしもあの頃は元気がよかったんでな
  思いついたら、深くも考えず、ぱっぱっとやってしまったんだ

   (中略)
  わしのやり方は少し馬鹿だったが、わしのしょうばいのやめ方は、
  自分でいうのもなんだが、なかなかりっぱだったと思うよ
  わしの言いたいのはこうさ、日本がすすんで、
  自分の古いしょうばいがお役に立たなくなったら、すっぱりそいつをすてるのだ
  いつまでもきたなく古いしょうばいにかじりついていたり
  自分のしょうばいがはやっていた昔の方がよかったといったり
  世の中のすすんだことをうらんだり、
  そんな意気地のねえことは決してしないということだ

実にすがすがしいまでの、イノベーターとしての身の処し方って感じしませんか?

 ”おぢいさんのランプ”は青空文庫他でも読むことができます(こちらからどうぞ)。ぜひ童心に帰ってご一読の程を(といいながら、私自身は生臭い読み方してますけど・・・)

《脚注》
(*1)イノベーターの元祖とでもいいましょうか
 ここでのイノベーターはすこし広義にとらえて”市場開拓者”、”ベンチャー起業家”ぐらいのノリで見てください
(*2)マトリックス
 (主演 キアヌ・リーブス、監督 ウォシャウスキー兄弟、ワーナー・ブラザース)
 コンピュータに支配された社会を救世主であるネオ(キアヌ・リーブス)が解放するというSF映画。1999年公開。のけぞって銃弾をよけるシーンは当時けっこうインパクトありましたね~~(映像はこちらから)

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