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ネットは広大かもしれませんが、リアルだってそこそこ多様なんですよ(ゼロ年代の想像力/涼宮ハルヒの憂鬱/阪急電鉄)

 ども、新人類世代というよりオタク第一世代かな~のおぢさん、たいちろ~です。
 今となっては説明が必要そうな”新人類世代”。1980年代半ばの流行語で(1986年の流行語大賞受賞)、”従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている若者”のこと。言いだしっぺは”栗本慎一郎(*1)”だそうですが、当事者的には”ニュータイプ(*2)”の和訳ってノリでしたけど。
 個人的には”新人類世代”ってもうちっと下の世代の感じがしてまして、ジャストミート感があるのは、どっちかつ~と庵野秀明とかに代表される今のアニメ・特撮あたりの中核を担っている”オタク第一世代”ってとこでしょうか(*3)。
 なんでこういう書き出しをしてるかっていうと、先日読んだ”伊藤計劃(*4)”の紹介に”ゼロ年代”うんぬんのキャッチコピーが入ってまして、どういうもんでしょか、これ?と思った次第で。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなゼロ年代に関する評論の本”ゼロ年代の想像力”であります。


写真はたいちろ~さん撮影。阪急の電車です。

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【本】ゼロ年代の想像力(宇野常寛、ハヤカワ文庫)
 ”大きな物語”が失われた時代の変遷と新たな物語を、文学、アニメ、テレビドラマなどのサブカルチャーの事例を引きながら批評した宇野常寛による新しいタイプの評論集。2008年出版の単行本に加え11年のインタビューを加えた文庫版で読みました。
【本】涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流、角川書店)
 ”ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい”。入学早々、こんな自己紹介をした”涼宮ハルヒ”。彼女は”SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)”を結成し、キョン、古泉君、長門さん、朝日奈さんといったメンバーを集める。彼らは実は超能力者、宇宙人、未来人ですが、彼女自体はまったく知らない。そして彼女自体は無自覚ながら神にも匹敵する存在。このどたばたに巻き込まれた一般人のキョンは・・・
【旅行】阪急電鉄
 関西にある私鉄。大阪、京都、神戸という3大都市圏を結び、宝塚や箕面、北千里などの郊外にもつながっています。上記の”涼宮ハルヒの憂鬱”の舞台のモデルになった西宮周辺もこの沿線。関西にご旅行の際はぜひご利用ください


 宇野常寛は”リトル・ピープルの時代(*5)”に続いて2冊目。書かれたのは”ゼロ年代の想像力”のが先になります。450ページを超える評論集なので要約は難しいんですが、思いっきりまとめるとこんな感じ。

 1970年代以降、歴史や国家といった「大きな物語」が有効だった時代が崩壊し(*6)、”不自由だが暖かい(わかりやすい)社会”から、”自由だが冷たい(わかりにくい)社会”へ移行する。経済的にも”がんばれば、豊かになれる世の中”から”がんばっても、豊かになれない世の中”へ。特に1995年前後に大きく変化する。その中身は

 ・「大きな物語」に根拠づけられない(究極的には無根拠である)「小さな物語」を
  中心的な価値として自己責任で選択していくしかない時代
 ・データベースからから欲望する記号を読み込み、信じたい物語を信じる
  (データベース消費モデル)

という感じ。(あんまりうまくできてなくてすいません)
 話がやっかいなのが、この”信じたい物語を信じる”ってヤツで、”たとえ究極的には無根拠でも、特定の価値を選択する(決断する)決断主義”というかなり強硬なものから引きこもり、あいまいな人間関係を求めるのまでさまざま。サブカルチャーから見ると

・世の中が間違っているから何もしない”引きこもり系”(エヴァンゲリオン)
・無条件に女性(母性)に認証される”セカイ系”(ほしのこえ、最終兵器彼女)
・戦わなければ生き残れない”サヴァイヴ系”(バトル・ロワイヤル)
・日常の無意味なコミュニケーションの連鎖”日常系、空気系”(あずまんが大王)
・決断をより謙虚で柔軟性をもってできるように環境を整える”新教養主義”
・友情、疑似家族といったあいまいな関係”(複数の物語に接続可能な)開かれた
 コミュニケーション”
(ラスト・フレンズ)

こういった作品群が時代の空気として登場(おおむね上から下の時系列)すると。(全部の作品を見てる訳じゃないんですが・・)

 非常にたくさんの作品がでてくる本ですが、面白かったのを1つ。”涼宮ハルヒの憂鬱”という作品で、2000年代中頃にブームになったんでご存知のかたもあろうかと(*7)。この作品って、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者を探して一緒に遊ぶってモチーフで、”セカイ系”扱いされているそうですが、ハルヒが実際にやっていることって(まあ、不思議探しもやってはいますが)文化祭で映画とったり、バンドしたりと”日常系”じゃないかと本書ではコメントしています。

  つまり、オカルト的なものSF的なものによって別世界、
  つまり<ここではない、どこか>に連れていくのではなくて
  この世界、つまり<いま、ここ>を多重化していく
  現実のコミュニケーションを豊かにするために想像力が用いられている部分にこそ
  若い世代にとっての『ハルヒ』の魅力はあったんじゃないか

 おぢさん世代にとって”ここではない、どこか”って一つの時代のキーワードって感じがしてます。おぢさん世代の親世代って、いわゆる高度経済成長期(がんばれば、豊かになれる世の中)。それがだんだん価値感が多様化し、バイト(今でいう非正規雇用)でそこそこ食っていけるから、本当の自分を探そうみたいな。受験戦争からサラリーマンになるルートではない”自分探し”への空気みたいなのが”ここではない、どこか”って言葉じゃなかったかなぁ。

 バブル崩壊から景気が後退して”がんばっても、豊かになれない”閉塞感がある一方、インターネットやSNSにより本来つながらなかった人達がつながるようになり、信じたい物語を信じる人達と”小さな物語”を共有できる、あるいは”小さな物語”同士が対立しあうようになった現代。その結果が引きこもりだったり、バトル・ロワイヤルだったり、あいまいなコミュニケーションだったりするんでしょうが、見方を変えれば<いま、ここ>だってけっこう豊かなんですぜネットは広大かもしれませんが(*8)、リアルだってそこそこ多様なんですよ。阪急電鉄に乗るだけだって千年の古都、からエキゾチックなストリート、近代的なオフィス街、温泉だってあるんだし。卑近なオチですいませんが、やりようによっちゃリアルだってなかなか捨てたもんじゃないかと、おぢさん世代は思うのであります。

《脚注》
(*1)栗本慎一郎
 経済人類学者、評論家。当時はロン毛にベレー帽子と学者らしくない風貌でコメンテーターでよくテレビに出てました。”パンツをはいたサル(カッパ・サイエンス)”なんか読みましたな~~
(*2)ニュータイプ
 ”機動戦士ガンダム”に登場する直感力と洞察力に優れ、離れていても意思疎通ができる新しい人類のこと。主人公のアムロやシャア、ララァなんか。ファーストガンダムから映画3部作により社会現象化したのが1980年代前半です。
(*3)”オタク第一世代”ってとこでしょうか
このあたりの世代っていうと1958年生まれの”オタキング”岡田斗司夫、”宇宙戦艦ヤマト2199”の総監督まで出世した出渕裕。1959年生まれの”超時空要塞マクロス”での美少女キャラを生み出した美樹本晴彦、同じく板野サーカスのアニメーター 板野一郎。1960年生まれは”エヴァ”、”シン・ゴジラ”の監督 庵野秀明、”おたく”というワードの生みの親、コラムニストの中森明夫。”ジョジョ立ち”の荒木飛呂彦やライトノベルのご神祖様 新井素子なんてのもいます(生まれ年はwikipediaより)
 まあ、濃いい人達が集まっていますが、こんなのって集め方次第でど~とでも書けるので”だからオタク世代”といわれてもあんまし信用しないようにね。
(*4)伊藤計劃
 2007年に”虐殺器官”(まだ読んでません)でデビューし2年ほどで早逝したSF作家。1974年生まれ。代表作は”ハーモニー”(早川書房)”、”屍者の帝国”(円城塔との共著、河出書房新社)など。上記3作は”Project Itoh”としてアニメ化されています。”ハーモニー”の詳細はこちらから、”屍者の帝国”の詳細はこちらからどうぞ。
(*5)リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
 詳しくはこちらからどうぞ
(*6)歴史や国家といった「大きな物語」が有効だった時代が崩壊し
 ベネッセホールディングスが2016年7月に実施した”第1回 現代人の語彙に関する調査”によると、社会人の方が高校生より知っていると答えた割合が高い言葉の2位が”イデオロギー”だそうです(社会人 73.6%、高校生 33.7%。差39.9%)
(*7)2000年代中頃にブームになったんでご存知のかたもあろうかと
 この小説の広告が日経新聞に載った時には少なからず驚きましたね。なんたってビジネスマン向けの新聞にライトノベルですぜ!
(*8)ネットは広大かもしれませんが
 ”攻殻機動隊(士郎正宗、押井守監督)”より。全身義体化した公安9課のリーダー”草薙素子”のセリフから。

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