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なんとなく”さよならジュピター”みたいな科学の大風呂敷を広げたような話が減っているんじゃないかな~~って気がします(さよならジュピター/国際宇宙ステーション)

 ども、機会があったら宇宙に移住するのも悪くはないかな~と考えてるおぢさん、たいちろ~です。
 一般の人がリアルな”生活圏”として認識できる空間ってどんなもんでしょうか? たかだか150年前の江戸時代だと”藩”とか”村”、明治時代で”アジア大陸”、大正、昭和の世界大戦をへて”世界”、”宇宙船地球号(*1)”という概念は20世紀後半になってからじゃないかと思います。”スペースコロニー(*2)”ってのを日本で一般化したのが”機動戦士ガンダム”だとすると”居住空間としての宇宙”ってたかだか40年弱ぐらい。まだてきてませんけど。で、将来”5億人の人類が宇宙に住むようになったら”という世界が登場したらどうなるか?
 ということで、今回ご紹介するのはそんな世界を舞台にしたSF小説”さよならジュピター”であります。

写真はすべてたいちろ~さんの撮影。
余市の宇宙記念館”スペース童夢”にある国際宇宙ステーションの模型です

Photo


【本】さよならジュピター(小松左京、徳間文庫他)
 22世紀前半、地球人口は185億人を数え、太陽系空間には5億人近い人々が暮らし、イノベーションの70%、エネルギーの40%を宇宙に依存していた。太陽系開発機構は、外惑星地域のエネルギー問題を解決すべく木星を”第二の太陽”とする”JS計画”を推進していた。一方、彗星の減少を調査するため飛び立った宇宙船”スペース・アロー号”の事故から、太陽へのピンポイント・クラッシュする”ブラック・ホール”が発見される・・・
【旅行】国際宇宙ステーション
 (ISS International Space Station)
 アメリカ合衆国、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関が協力して運用している宇宙ステーション。地上約400km上空を秒速約7.7kmで飛行中。2011年7月に完成し、現在では6名体制で4~6ケ月交代で滞在しているとのこと(wikipediaより抜粋)
 カテゴリは”旅行”にしてますが、気軽に行けるとこではないです、はい。


 この前、映画版”さよならジュピター”(*3)の話を書きましたが、本書はそのノベライゼーション。ノベライゼーションと言っても小松左京御大が自ら書いたというもの。しかしまあ、映画とノベライズでここまで評価が分かれるってのも珍しいでしょうな。”黒歴史”だ”青春のトレラウマ”だの言われる映画版と、星雲賞の日本長編部門賞を受賞したノベライズと。まあ、映画が詰め込みすぎなのは確かですが、そこまでボロクソ言わんでもいい出来だと思うんですがねぇ・・・

 さて、この小説の面白さっていうのは、当時の科学力の延長にあるイマジネーションの壮大さでしょうか。ニュートリノを使った木星太陽化を中心に、宇宙空間を居住するスケースコロニーや月面や宇宙空間にある基地、ヘリウム3・重水素による核融合推進宇宙船、冷凍睡眠による長期間宇宙航行などなど。脱出船団(エクソダス・フリート)には乗員数130万~250万人、総数千隻の大船団が60組、行き先は5.9光年離れたバーナード星(*4)、到着は60年後! まだ、居住できるかどうかの調査すら終わっていない星への移住計画ですから、かなりハイリスクなプロジェクトですが・・・

 で、本書の最大の見せ場はもちろん”木星”を爆発させてブラックホールのコースを変更させるという”木星爆破計画(JN計画)”。将来、人類の科学でそんなことができるかどうかはわかりませんが、それを”できそう!”と思わせちゃうところが小松御大のすごさです。まあ、究極の自然破壊と言えなくもなく、積極的に推進する人(太陽系開発機構の本田英二たち、世界連邦大統領)、積極的に妨害する人(本田英二の恋人のマリアたちテロリスト、大統領の政敵の上院議員)、”なにもせんほうがええ(*5)”を決め込む人(ジュピター教団のピータ)。こういったポリティカルとか人間模様みたいなのがちゃんと背景としてあるからこそ小説版って評価されんですかね(逆に言うとこのへんが描き切れなかったのが映画版の低評価につながっているんでしょうか)

 ところで、この小説が書かれたのは1982年(映画公開が1984年)と34年前とそれなりに昔の作品なんですが、改めて読み返してみると、SFというかSFと科学の感じ方ってずいぶん変わったような感じがします。
 木星爆破50時間前に。世界連邦大統領(映画版では森繁久彌)と副大統領が交わす会話。”神に祈りますか?”という副大統領に対しての大統領の答え

  いや-- 不遜なようだが、今度ばかりはそんな気になれない・・
  むしろ・・・ 人類の叡知と技術にむかって祈りたい・・

   (中略)
  これまで何度か、一人で祈りたくなったり、神にすがりたくなった事はあった
  だが、今度の場合はなぜか・・・
  突然、この宇宙の中に、神というものはいないのではないか、と思うようになった
  人間は・・・ 所詮、
  この宇宙では、神なしでやって行かなければならないのではないか、と

 当時って、”たとえ空想科学であっても、その科学に信頼を寄せて未来を拓くという”時代だったんでしょうか。今ではその”空想”がとれて、あながち絵空事でなくなった反面、物語の世界において科学を超える”空想”がなんとなく希薄になってきているような気がするのは、私だけでしょうかね

 ・人工の大地となる”スペースコロニー”はできなかったけど、
  恒常的に人がすめる”国際宇宙ステーション”はできた
 ・七つの威力の”鉄腕アトム”はできなかったけど、
  等身大のヒト型ロボット”Pepper”が街に登場した
 ・人智を超える”人工知能”はまだできていないけど
  越えられそうなシンギュラリティ(技術的特異点)がもうすぐ来そうな雰囲気
 ・万能薬や、不老長寿の秘薬ではないけど
  医療を飛躍的に発展させる”iPS細胞”や遺伝子操作がもうすぐ実用化しそう

 確かに、科学が空想に追いつきつつある昨今、ぶっとんだ”空想”科学の物語を描きにくい時代なのかもしれませんが、なんとなく”さよならジュピター”みたいな科学の大風呂敷を広げたような話が減っているんじゃないかな~~、私が読んでないだけかもしれませんが・・・

 おぢさん世代のSFファンとして、ちょっと昔のSFを読んでそんなことを感じた次第です。面白い本ですので、若い人もぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)宇宙船地球号(Spaceship Earth)
 この言葉を有名にしたバックミンスター・フラーの著書”宇宙船地球号操縦マニュアル”が書かれたのが1963年。地球資源の有限性を研究したローマクラブの”成長の限界”が発表されたのは1972年のことです。
(*2)スペースコロニー(Space Colony)
 ジェラルド・オニールらによって”宇宙空間に作られた人工の居住地”というアイデアが誕生したのが1969年、一般に知られるようになったのは1974年にニューヨーク・タイムズ誌に掲載されてから(wikipedia)。島3号とよばれるシリンダー型のスケースコロニーを舞台にした”機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)”の放映が開始されたのは1979年のことです。
(*3)映画版”さよならジュピター”(総監督 小松左京、主演 三浦友和、東宝)
 ストーリーはほぼ本書にそっていますが、初稿で映画化すると3時間半を超えるため、大幅にカットされました。前後半で作ればもうちっと評判が良かったかもしれませんねぇ・・
 詳しくはこちらをどうぞ
(*4)バーナード星
 1916年にアメリカの天文学者エドワード・エマーソン・バーナードにより発見された。へびつかい座にある2番目に太陽系に近い恒星系。実際に英国惑星間協会 (BIS) が1973年から行った”ダイダロス計画”という恒星間原子力推進宇宙船の想定目標だったとのこと。
(*5)なにもせんほうがええ
 同じく小松左京の”日本沈没”より。日本人の海外脱出に関するレポートを作成させた渡老人が、結論の一つとして山本総理に伝えた言葉。SFの中でも屈指の名セリフだと思います。

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