« ”日米開戦で、大国アメリカと戦争やってほんとうに勝てると信じていたのか”との疑問へのひとつの回答です(昭和16年夏の敗戦/タンカー) | トップページ | 正論も度が過ぎるとろくな社会にならんのでしょうかね(ハーモニー/コーヒーの木) »

小松左京のような偉大な天才であっても、時には失敗する! でも、面白い映画とは思うんですけどねぇ(世界が終る前に BISビブリオバトル部 3/さよならジュピター/NC工作機械)

 ども、過去の消える消しゴムが欲しいおぢさん、たいちろ~です。
 人間、おぢさんになると一つや二つは人に言えない過去ってのがあるモンです。犯罪だとか誰かを罠にはめたとかって重い話じゃなくって、”黒歴史”のたぐいのこと。まあ、”若気のいたり”ってやつ。たわいのないコトではあるんですが、今考えると相当”痛い!”とか。
 最近はまっている”BISビブリオバトル部”って小説にでてくる朝日奈先生ってのがまさにこのパターン。堅物の世界史教師が表の顔なら、裏の顔はというとマニアックなクラブの生徒を上回る特撮オタクだったりとか。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな朝日奈先生大爆発の回”世界が終る前に BISビブリオバトル部 3”&往年の名(迷)SF映画”さよならジュピター”であります。


写真はすべてたいちろ~さんの撮影。
2015年国際ロボット展より。けん玉するロボットです

Photo


【本】世界が終る前に BISビブリオバトル部 3(山本弘、東京創元社)
 美心国際学園(BIS)高校ビブリオバトル部。<驚異の翼(ウィング・オブ・ワンダー)>伏木空、<愛の伝道師(ラブ・ミッショナリー)>小金井ミーナなど、本好きが集まるクラブ。
 空たちは小金井ミーナに頼まれてコミックマーケット(*1)のお手伝いをすることに。そこにクラブの顧問に就任予定の朝日奈先生が登場。なりゆきで先生の友達の特撮オタクの連中との宴会に参加することになるが・・・(空の夏休み)
【DVD】さよならジュピター(総監督 小松左京、主演 三浦友和、東宝)
 木星を第二の太陽にすることで、太陽系外延部のエネルギー問題を解決する”JS計画”。それは宇宙を破壊する行為だと一部の団体から非難をされていた。一方、彗星の数の減少を調査するために派遣された宇宙船”スペース・アロー”が謎の遭難をする。その原因は太陽系に近づきつつあるマイクロブラックホールだった。人類はこの危機を回避するため、JS計画を変更し木星をマイクロブラックホールにぶつけることでそのコースを変えるという”JN計画”を発動する・・
【道具】NC工作機械
 NC工作機械とは数値制御(NC numerical control)により可動部を制御する機械のこと。最大の特徴は人間がやるのと違ってコンピュータによりまったく同じ動作を繰り返すことができます。最近のだとけん玉までやっちゃいます。


 特撮オタクのオッサンたちの宴会にて。ネタのふったのは朝日奈先生。高遠るいの”ミカるんX”(すいません、観てないんでわかりません)から映画”さよなら ジュピター”の話題に。おおっ、懐かしいぞ! 公開は1984年3月なので私がちょうど会社に入社したころだぞ!
 時、あたかもSFブームの真っ最中。1978年の”スターウォーズ(エピソード4)”に”未知との遭遇”、1979年の”機動戦士ガンダム(ファースト・ガンダム)”、1981年には今や伝説となった”DAICON 3(*2)”の開催。この流れを受けて、”日本沈没”の小松左京原作・総監督が撮る映画だぞ! 面白くないはずがないゾ!
 でもね~、この映画の評判ってあんまし良くないんですよね~~

 宴会で”さよなら ジュピター”に関する空のなにげない質問

  伏木空:そんなに面白かったんですか?
  ミーナ :空・・・ それは地雷だよ
       うちのパパも、酔うと愚痴るんだよ。『ジュピター』のこと。
       ”あれは俺の中学時代の最大のトラウマだ”って
  朝日奈先生:伏木・・ お前にこの世の真理を教えておいてやる
      この世に完璧な人間なんかいない!
      小松左京のような偉大な天才であっても、時には失敗する!
      駄作も作る! 人間だからな

 そっから先は『ジュピター』の愚痴のオンパレード!!! いいとこもいっぱいあるんだけど、それ以上にツッコミどころ満載! ムダに長いシーンが多すぎだとか(*3)、ガジェットの使い方がダサいとか、ヒッピーっぽい教祖様が時代とずれてるだとか、とか、とか
 まあ、確かにストーリーにいろんなものを詰め込みすぎで謎ときまでいってないとか(クジラっぽい声を出しながらただよっているだけのジュピター・ゴーストって結局なんだったのかとか、ジュピータ教団に内通してたのは誰だったのかとか)、移動時間がめちゃくちゃ(視察団が75日かけて到着した木星まで、他のシーンではほとんどタイムラグを感じさせずにいっちゃってるとか)、妨害工作があるのがわかっているのにセキュリティ甘すぎだろうとかいろいろあるんですが、そんなに言うほど悪い映画とは思えんのだけどなぁ

 この映画なぜだかTSUTAYAのレンタルに入っていなくて、DVDも1万円近くしてたんでも一度観たいと思ってても観れなかったんですが、2016年7月に2,700円の廉価版の”名作セレクション”で販売開始。さっそく買って観ました(ひょっとして、DVDをまともに買うのは初めてかも?)

 改めて観たんですが、それなりに面白いし、当時の水準からすればけっこう画期的だったと思うんだけどな~~

〔モーション・コントロール・カメラぐらい使わせろ!〕
 映画のパンフだったか、ムック本だったかに載っていたのが上のセリフ。モーション・コントロール・カメラってのはコンピュータ制御とサーボモータを使ってカメラをコンロールして撮影をするシステム。アメリカでは”スターウォーズ”で開発されたばかりの最新技術です。当時の日本ではまだなくて、これを使って映画を撮らろってのが上記のセリフです。実際には”アマダ”の”ティーチングプレイバックロボット”、いわゆるNC工作機械が流用されたとのこと(wikipediaより)。どのような機械だったかはDVDのメイキング映像をどうぞ。

〔主役の天才少年のカルロス主任、ハリーポッターのそっくりさんです〕
 この映画、主役クラスを含め登場人物がやたら外国人が多いんですな。昔の日本に”無国籍映画(*4)”つーのがありましたが、まさに”多国籍映画”とでもいいましょうか。主人公の三浦友和はともかく、恋人のマリア、JS計画を推進する総裁、主任クラスなどがほとんど、外国の人(日系人含む)。まあ、ムハンマド・マンスール(*5)ってのもいましたけど・・ 素粒子工学の権威の天才少年のカルロス主任なんて、今観るとハリーポッター役のダニエル・ラドクリフのそっくりさん
 自動翻訳機が実用レベルに達しているとはいえ、英語でがんがん喋ってる(字幕付き)ってのは当時の日本映画じゃ珍しかったんじゃないかな。だいたい、ちょっと前ですが”宇宙戦艦ヤマト(1974年)”なんて、超国家的プロジェクトにもかかわらず日本人ばっか乗っけて戦うことにほとんど違和感なかったんですから。

〔コンピュータグラフィックがCray-1ではないか!〕
 いまでこそフルフルで映画がつくれちゃうコンピュータグラフィックスですが当時まだ黎明期。DVDに収録されているプレスブックによると当時日本に2台しかなかったスーパー・コンピュータ”Cray-1”を使ったとのこと。今の人にはピンとこないかもしれませんが、当時のCray-1と言えばスーパーコンピューターの代名詞といっても過言ではない存在。ビジュアルで超性能のコンピュータが円筒形の形をしていたら、それは間違いなくCray-1からのインスパイアです。

〔TOKYO-3なんて、今観てもいけてるデザインだと思います〕
 日本特撮映画のお家芸だったミニチュアワーク。この映画でも宇宙基地やら宇宙船やらいっぱいでてきます。木星軌道上にあるミネルヴァ基地、長距離高速宇宙船”スペース・アロー”、木星を爆破する核融合反応装置とか、とか、とか メカデザインの担当はこの分野の草分けにしてトップスター、スタジオぬえの”宮武一貴”モビルスーツの原型となった”宇宙の戦士(ロバート・A・ハインライン、ハヤカワ文庫)”の表紙のパワードスーツをデザインした人(といってもおぢさんしかわかんないか・・)
 出色なのは長距離貨客宇宙船”TOKYO-3”第三新東京市のモトネタになってるとの話もある名宇宙船。オープニングで上部からなめるように登場するシーン。メインデッキを配した本体軸に遠心力により重力を発生させる居住区(分離飛行可能)、巨大なタンクにメインエンジンと今観ても、まったく古さを感じませんな~~

 この映画を観たオタクたちの不幸は、観る前の期待値があまりにも高くてそのギャップが埋めきれなかったことでしょうかねぇ。なんたって、総監督・原作・脚本が小松左京、ブレストメンバーが豊田有恒、山田正紀、野田昌宏、 伊藤典夫、横田順彌、高千穂遥など、メカデザインが宮武一貴、音楽が羽田健太郎ですぜ! 期待するなと言う方がムリです。今だったら、原作に福井晴敏、総監督に庵野秀明と押井守、特撮に樋口 真嗣、メカデザイナーに出渕裕、ブレストに田中芳樹に冲方丁に谷川流にゆうきまさみを集めて映画作らせるようなモンです(このラインナップもそれはそれで物議をかもしそうですが・・・)
 黒歴史だトラウマだ言ってますけど、今の水準で観てもけっこう面白い映画だと思うんですけどねぇ・・・

 ”BISビブリオバトル部”では、全員でこの映画の主題歌”VOYAGER~日付のない墓標(*6)”の大合唱! 

  私があなたと知り合えたことを 私があなたを愛してたことを
  死ぬまで死ぬまで誇りにしたいから・・

 なんだかんだ言っても、この愛すべき特撮オタクのオッサン達は、この映画を愛してたんだろうし、観た=知ったことを誇りにしてんだろうな~~ と思ったりします
 SFファンとそうでない人にはぜひ観て欲しい映画です。

《脚注》
(*1)コミックマーケット
 東京ビックサイトで夏冬に開催される同人誌即売会。コスプレとかもあるそうです。行ったことないけど(誘われたことはあんですけどね~~)
 ”オタクの祭典”みたいな扱いをされることの多いイベントですが、3日間で参加者55万人(2015年夏)、サークル数3万5千と、あの東京ビックサイトをもってして1日あたり来場者数最大というハンパね~規模のイベントです(ちなみに来場者数最大のイベント”東京モータショー”の2015年度実績は11日間で81.3万人です)
(*2)DAICON 3
 全国のSFファンが集まる”日本SF大会”、この中で大阪で開催されるのが”DAICON(大阪のコンベンション)”です。1981年の”DAICON 3”のスタッフが岡田斗司夫、オープニングアニメーションを作ったのが大阪芸術大学在学中の庵野秀明山賀博之現在のSF、アニメシーンをけん引する人材が登場しています
(*3)ムダに長いシーンが多すぎだとか
 やり玉に挙がっているのが主人公を演じる三浦友和の”無重力セックス”
  あのしょぼさはどう表現すりゃいいんだ?
  しかも、やけに長いんだよ。観ててすげー気まずい
  削れよ! 意味ないだろ

とまあボロクソ。当時の三浦友和といえば、国民的アイドルの山口百恵と結婚した直後(結婚は1980年、山口百恵は当時21歳。早婚だったんですなぁ)。今でいうなら、広瀬すずと電撃結婚したアイドルのに~ちゃんがその直後に別の女優さんとエッチシーンがあるようなもの。この映画の評判悪い原因がこのへんにあるのかも・・
(*4)無国籍映画
 舞台は日本のはずなのに、やっていることはどこの国のことだかわからない映画。往年の小林旭主演の”渡り鳥シリーズ”とか。ちゃんと観た事ないけど、それなりに面白そう・・
(*5)ムハンマド・マンスール
 演じるは名優”岡田真澄”。日本人名ですが、日本人とデンマーク人のハーフだそうです。ニュースなんかで”ムハンマド”という名前がでると一瞬この人を思い出しちゃうほどインパクトありました
(*6)VOYAGER~?日付のない墓標
 作詞・作曲・唄:松任谷由実。1984年にリリースされたユーミン20枚目のシングル。1983年リリースのアルバム”VOYAGER”には収録されてなくて、1998年ベストアルバム”Neue Musik(EMIミュージック・ジャパン)”に収録。名曲です。

« ”日米開戦で、大国アメリカと戦争やってほんとうに勝てると信じていたのか”との疑問へのひとつの回答です(昭和16年夏の敗戦/タンカー) | トップページ | 正論も度が過ぎるとろくな社会にならんのでしょうかね(ハーモニー/コーヒーの木) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« ”日米開戦で、大国アメリカと戦争やってほんとうに勝てると信じていたのか”との疑問へのひとつの回答です(昭和16年夏の敗戦/タンカー) | トップページ | 正論も度が過ぎるとろくな社会にならんのでしょうかね(ハーモニー/コーヒーの木) »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ