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漏れる茶碗でも千両、これって憑き物のせい?(はてなの茶碗/百器徒然袋-雨/瓶(かめ))

 ども、骨董品の目利きなんぞまったくできないおぢさん、たいちろ~です。
 昔、商品企画の仕事なんぞをやっておったんですが、この仕事の重要なファクターに”価格設定”てのがあります。ぶっちゃけ”どういう機能のものをいくらで売んねん”ってのを決めることです。社会科(公民だっけ?)で教えてもらったんだと”需要曲線と供給曲線の交わる点(均衡点)が価格”なんですが、そう簡単にはいきません。そこに”コスト”というメンドクサイ問題が絡むからです。売る側はかかったコストを製品1ケごとに回収しないといけないので、最低販売価格(*1)を設定してそれ以上で売ろうとするし、買う方は美術品など趣味の世界を除けば、買った費用をコストにみたててコスト以上のメリット(効用)がないと買わないし。
 ということで、今回ご紹介するのは除いちゃったほうの美術品の価格にかかわるお話、落語の”はてなの茶碗”と京極堂の蘊蓄満載の”百器徒然袋-雨”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。宇治で見かけた茶壷形の郵便ポストです

0421

【本】はてなの茶碗
 上方落語の演目の一つ。あらすじは下記をご参照
 三代目桂米朝師匠が二代目桂三木助師匠の口演の記憶をもと戦後復活させたんだそうです(wikipediaより)。名人芸、桂米朝師匠版はこちら、コミカルが好みなら桂枝雀師匠版はこちら。他にもYouTubeに古今亭志ん生師匠や桂南光師匠のも視聴できます。話芸の面白さは聞いてみないとわかんないのでぜひどうぞ。

【本】百器徒然袋-雨(京極夏彦、講談社ノベルズ)
 薔薇十字探偵社の探偵”榎木津礼二郎”の元に父榎木津元子爵から依頼がきた。”青磁の甕(かめ)”と、いなくなったペットの”亀”を探せという。ある事件で榎木津探偵と知り合いになった僕は古物屋の今川とこの依頼にまきこまれて、”壺屋敷”に一人で暮らす山田スエを訪ねる。一方、”京極堂”こと中禅寺秋彦は山田スエからお祓いを依頼されていた。ヤクザや金貸し、強欲な茶道具店主がからむ中、京極堂が行った憑き物落としとは・・
 ”瓶長(かめおさ) 薔薇十字探偵の鬱憤(*2)”より
【道具】瓶(かめ)、壺(つぼ)
 榎木津元子爵がお詫びに送った壺が気にいられず、青磁の甕を探すとこになったのが今回の話の発端。ところで”かめとつぼ”って本書によるとあんましはっきりした区別ってないんだそうで。壺は丸い器に蓋がのっていて、口の部分がくびれている貯蔵、運搬用の容器のこと。カメは土などでつくられた液体容器で口がややすぼまっているもの(なんで金属製の壺はあっても、金属製はカメとは言わないんだとか)


”はてなの茶碗”のあらすじです

 有名な茶道具屋の金兵衛(茶金さん)が茶屋の茶碗をしきりに見ながら”はてな?”と首をかしげている。これを見た油屋の男が”これはきっと名品で、金儲けになる”と思い茶屋の主人を脅して2両でこの茶碗を買い受ける
 油屋の男が茶金さんの店に”五百両、いや千両の値打ちがある!”と息巻くが、実はこの茶碗、茶金さんは瑕もなにもないのに水が漏れるので不思議だと思って見てだだけとわかる。意気消沈する油屋の男に茶金さんは”2両で自分の名前を買ってもらったようなもの”といって3両でこの茶碗を買い受ける。
 茶金さんが関白・鷹司公この話をしたところ面白いといって和歌をそえ、感心した時の帝が”はてな”の箱書きをが加えるにおよび、豪商”鴻池家”が千両で譲り受けることに・・・

 あらすじだけ書くと”んなアホな!”と言われそうですが、それをありそうに語るのが米朝師匠や雀師匠の話芸の見せどころです

 実は”薔薇十字探偵の鬱憤”で京極堂が語る骨董品の価格の蘊蓄を聞いて思い出したのが”はてなの茶碗”。京極堂による骨董品の価値についての説明

  売れれば土くれでも商品になるというのが現実です
  一方で売れなければ美しくても使えても古くても塵芥(ごみ)なんです
  そうした様々な側面が入り組んで、
  総体として骨董的価値と云うものは決まって来るのですね
  モノ自体には価値の差なぞない訳ですよ
  本来、本物偽物の区別なんかない
  価値はそのモノに纏わりついている静電気のようなもんです

  意味のないものに意味を与える、
  そして意味と意味とを連鎖させてありもしない価値を生み出す
  これが呪いです。
  この土には壺と云う呪いがかけられた
  そしてあなたは今、この壺に三十円と云う呪いをかけた

   (中略)
  つまり最早この土くれは、ただの土くれではなくなってしまった訳です
  だから、粉粉に破壊でもしてしまわない限りはーー十二分に祟るんです

引用が長くなりましたが、骨董品ってのは歴史的に価値があるかや真贋ってのもありますが、まずは人の想い・思惑で価値・価格が決まるんですなぁ、これが。はてなの茶碗も関白の和歌だの帝の箱書きだののオプションがあるけどこれだってコストという点ではタダみたいなもの。こういった偉い人の呪いがどこにでもある単なる安茶碗にびっくりするような高額なモンにしちゃってるワケです。

 まあ、はてなの茶碗にはこういった落ちそうにない呪いがかかっているからまだマシかもしれませんが、”開運! なんでも鑑定団(*3)”みたく価値があると信じていたもの=呪いのかかったモノが鑑定家の人からばっさり”偽物”だと断じられちゃったらまさに京極堂よろしく”憑き物落とし”にあったようなモンでしょうね

 ”はてなの茶碗”も”百器徒然袋-雨”もそれぞれにらしい”落ち”がついてます。ぜひ本編でお楽しみください!

《脚注》
(*1)最低販売価格
 コストは製品を1ケ作るごとにかかる”変動費”と、いくつ作ろうがあまり変わらない”固定費”から構成されて、たぶんこんぐらい売れるだろうって数ををnとすると
  最低販売価格 = 変動費+固定費/n (利益ゼロの場合)
  総利益 = (販売価格-最低販売価格)×n
になります。このnが実際はけっこう勘ってかテキト~に決まってたりなんかして・・
(*2)薔薇十字探偵の鬱憤
 本書に収録しているのは”薔薇十字探偵の憂鬱”、”薔薇十字探偵の鬱憤”、”薔薇十字探偵の憤慨”の3編。最初見た時は”涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流、いとうのいぢ、角川書店)”のパロディか? と思いましたが調べてみると”百器徒然袋-雨”が1999年、”涼宮ハルヒの憂鬱”が2003年とこっちが先。へぇ~~~
(*3)開運! なんでも鑑定団
 テレビ東京系列で放映中の鑑定バラエティ番組。視聴者が持ち込んだ骨董品を古美術鑑定家の中島誠之助やらおもちゃ関連担当の北原照久など濃いい先生たちが鑑定。予想以上に高額だったり数百万円する本物と思ってたのが偽物で数千円だったりする人間模様の悲喜こもごもを楽しむ番組です。しかし、評価金額でホントに売れるんでしょうか?

※下記CD,DVDは私自身は見てません。参考です

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