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”専門家がよってたかって、なぜ誰も気づかなかったのか?”ということの答えの一つです(サイロ・エフェクト/タコ壺)

 ども、会社ではいろんなことをやらされてますが、大したことはやっていないおぢさん、たいちろ~です。
 どんな組織でも目的などで分類された部署(部とか課みたいの)が存在します。ところが、単独の部とかで片付かないお仕事や課題なんつーのがありまして、こういうのをやる部署や人が必要になります。まあ、”組織横断”とか”横串を通す”というとカッコイイんですが、要はどこの組織にも属さないような仕事を引き受けるわけで。私がやっているのはまさにそんな仕事ではあるんですが、これがなかなか面倒。遠慮してたんではタコ壺状態になりがちな各部から必要な仕事を引っ張りだせないんですが、かといって人ん家の米櫃に手をつこんでかき回すようなマネをするわけにもいかないし。このあたりのさじ加減ってにけっこう気を使うんですね(本人評価なんで当てにはなりませんが・・・)
 というころで、今回ご紹介するのはそんなそんな”タコ壺=サイロ状態”をいかに打破するかを扱った本”サイロ・エフェクト”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
勝浦海中公園にある”海の資料館”に展示されていたタコ壺です

030197


【本】サイロ・エフェクト(ジリアン・テット 文藝春秋)
  高度に複雑化した社会に対応するため、
  組織が専門家たちの縦割りの「サイロ」になり、その結果変化に対応できない。
  その逆説を「サイロ・エフェクト」という

   (本書 キャッチコピーより)
 読む前は気づかなかったんですが、ジリアン テットって人はバブルを考察した”愚者の黄金(*1)”の著者でもあります。
【道具】タコ壺
 タコを捕獲する目的で漁師が使う壺。タコは身を守るための隠れ家として海底の岩場に潜むそうですが、隠れる場所の少ない砂地にタコ壺を置いとくと隠れ家としてタコ壺に入り込んでくるので、これを引き上げてタコを捕獲するのがタコ壺漁です。
 なんで引き上げる時に逃げないかと不思議だったんですが、タコには何かにしがみつく習性があるからだとか。けっこうよく考えてるんですね


 ”サイロ”(silo)ってのは一般的には米、小麦、トウモロコシなんかを保存しとく円筒形上の建物のことですが、本書では”ミサイル発射口”のイメージに近いかな。映画なんかだと、大きな穴が地下に建設されていて、そん中にでっかいミサイルが設置されているヤツです。
 日本語だと”タコ壺”。本書によるとソニーのCEO”ハワード・ストリンガー”が演説で

  ソニーはサイロが多すぎる!

と言ったのを、困った通訳が”タコ壺”と置き換えたんだとか。なかなか機転のきく通訳の人みたいです。

 最初に言っときますが、本書の主張って”サイロ”そのものを否定しているわけではないんですね。何がしかのキーで分類すること自体は都合のよい点も多々ある。ただ、問題はそれが固定化して強固な壁になっちゃって柔軟な対応を阻害する弊害が大きくなるということで。これで失敗した例として、上記にあるビジネスでしくじったソニー、バブルで大損失を被ったUBS、経済危機を予見できなかったイギリスの経済学者の例を上げています。

 経済危機だった2008年にエリザベス女王がなみいる経済学者に対してした質問

  なぜこの危機の到来を誰も予見できなかったのですか
  これほど大きな問題なのに、なぜ誰も気づかなかったのでしょう

問われた経済学者としてみれば、面目丸潰れなんでしょうが、真面目な人達なんでしょうな、寄ってたかって作ったお返事がこれ

  陛下、危機の時期、範囲、深刻さを予見し、
  防ぐことができなかった原因は多々ありますが
  基本的には国内外の大勢の優秀な人々が集団として
  システム全体のリスクを理解する想像力を持っていなかったことが原因です

 それぞれの人が自分の与えられた仕事はしてたものの、全体像を見る、異なる事象を結びつけた人はいなかったと。これが典型的な”サイロ”の弊害なんですな。まあ、岡目八目というか、後知恵というか、人がやってることをあとからど~のこ~の言うのは簡単ですが(簡単でないかもしれませんが)、我が身振り返って考えると難しいんでしょなぁ

 じゃあ、どうすりゃいいのかて~と、本書でのヒントをまとめるとこんな感じ。終章”点と点をつなげる”より抜粋です

1.大規模な組織においては部門の境界を柔軟で流動的にしておくのが望ましい
2.組織は報酬制度やインセンティブについて熟慮すべき
3.情報を共有し、誰もが自分なりに情報を解釈し、その解釈に組織が耳を傾ける
4.組織が世界を整理するのに使っている分類法を定期的に見直す
5.サイロを破壊するのにハイテクを活用するのも有効。そしてプログラムを変える

 1冊の本で語っていることを要約すると当たり前っぽくなっちゃいますが、これを様々な事例を交えて説明されるとなるほどな~と思います。
 組織なり人なりって、ほっとくと現状肯定、視野狭窄、既得権益、経験第一、とどのつまりは思考停止です。特に今の状態を維持することによるインセンティブがある人は積極的に変化を起こす動機がないんで、そのまま惰性で物事が進んじゃう。だって楽なんだモン! てな具合です。
 この状態でほっておく(もっと悪いのは”気がついていない”)と、会社や組織が衰退しちゃう、その例がソニーなりUBSで、そうならないように対応してたり打破した例としてフェイスブックやクリーブランド・クリニックの例がでてきます。前著の”愚者の黄金”がファイナンスの話だったんですが、それ以外の業界の話もいっぱいでてきます。
 本書の著者”ジリアン・テット”という人はフィナンシャル・タイムズ編集長を務めたとのことでファイナンスが専門の人かと思ってましたが、そうじゃないんですね。本書でものっけから人類学のお話が(なんでも大学の専攻が社会人類学だったとのこと)。こういう違った切り口でのアプローチって確かに面白いんですね。ぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)愚者の黄金(ジリアン・テット 日本経済新聞社)
 J・Pモルガンのデリバティブチームが創り出した革新的な金融技術”CDS(信用リスクの移転を目的とするデリバティブ取引)”がなぜ金融業界の崩壊をもたらしたのかを分析した本。原書の副題は”J・P・モルガンの小グループの革新的な技術は、ウォール街の強欲によってどのように歪められて金融危機をもたらしたのか”という”博士の異常な愛情”っぽいものですが云い得て妙です。詳しくはこちらをどうぞ

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