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文化面や愛情面が満たされない精神的貧困状態にあると、結果的に金銭面においても貧困になってしまうのではないかということだ(貧困女子のリアル/ダイヤモンドリリー)

 ども、相変わらずお金のない生活を送っているおぢさん、たいちろ~です。
 最近”下流老人”に関する本を何冊か読みました。まあ、自分自身が定年後の生活をど~するんだ的な話が切実になってきまして。この手の話で問題なのは低所得層だけでなくそこそこちゃんと暮らしていた人でも、トラブル(病気や失業等々)一つで貧困になってしまうリスクがあること。まさに”一寸先は闇”です。私自身は幸いなことに今んとこ”将来に対する唯ぼんやりした不安(*1)”ぐらいですんでますが現在進行形の”リアル”で貧困に困ってる人もいます。
 ということで、今回ご紹介するのは老人じゃないですが、普通の女性の貧困事情をまとめた本”貧困女子のリアル”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
横浜イングリッシュガーデンのダイヤモンドリリーです

075231


【本】貧困女子のリアル(沢木文、(小学館新書)
 シングルマザーなどではなく、短大や大学を卒業した普通の学歴を持ちで普通に働き普通に収入も得ている30代女性貧困状態に陥っている状況をインタビューを元にまとめた本。
 非正規雇用といった収入面の不安だけでなく、心の闇もまた貧困となる原因となりうることが良くわかります。
【花】ダイヤモンドリリー
 ”リリー”と名前についていますが、ユリ科ではなくヒガンバナ科。別名”ネリネ”
 花が輝いているように見えるのは花弁の表皮細胞が不規則な形をしていて、光が当たると乱反射するからだそうです(ダイヤモンドが光るのと同じ原理)。
 花言葉は”華やか、また会う日を楽しみに、幸せな思い出、輝き、忍耐、箱入り娘”など。
 この花は10月17日の誕生花なんですが、この日は”貯蓄の日”、”貧困撲滅のための国際デー(*2)”。最初に見た時はたちの悪い冗談かと思いましたよ!


 ”貧困状態とはなにか”というといろいろなご意見があるでしょうが、話を簡単にするのに下記の式で考えてください

  生活余力=現時点での預貯金+(収入-支出)×n年-イベント費用

実はこれ、先日聞きに行った”年金生活セミナー”でやってた考え方なんですね。”n年”という時間の概念があるのは、仮に80歳まで生きれるとしてそれまでお金が持つかどうかという判断になるから。イベント費用ってのは子供の結婚とかで突発的に大金が必要になるので織り込み、ローン返済は”支出”に含みます。ぶっちゃけ言うと収入が限定的(年金のみ)な高齢者にとって80歳までに”生活余力”がマイナスになると生活できなくなるということです。
 ”家とかの資産は?”って言われそうですが、”家”ってのは売れて初めて現金になるんで売れなきゃ生活の足しにならない。少子化の上に新築マンションがボンボン建てちゃって”空き家問題”が顕在化しつつある昨今、”不動産”が”負動産”化して始末に困ることだってありますし。てなことで、特に話は出ませんでした。

 この式を見ながら”貧困女子のリアル”を読むと、”低所得”だけではない様々なケースが見えてきます。てのは、登場する女性たちが必ずしも低所得ってわけではないんですな。むしろ収入に見合ったレベルを超えてお金を使っているとか(その理由がブランドモノや美容などや家族を養う(たかられる)だったりはしますが)。不足分が借金(負の預貯金)になって、これを返済するために支出(返済金)が増加しさらに生活を圧迫すると。親が借金を肩代わりして清算してくれた(外部の預貯金)ケースもありましたが、しこたま怒られた付きではあります。預貯金はというと、収入と支出がプラスにならないのでほとんどのケースでゼロになっています。
 こうなってくると”将来に対する唯ぼんやりした不安”どころではなく”今目の前にあるリアルな危機”なんでしょう。

 ”生活余力”の式自体はそんなに難しくはないですし、当たり前の話なんですが、わかっていてもなかなか”生活余力”が向上しない=貧困から抜け出せないってのはそれなりの事情があるんでしょう。本書の”はじめに”で沢木文がこのように書いています

  30人以上の女性たちの取材で感じたことは、
  愛情や文化、キャリアというお金で買えないものの資源が薄いと
  何かに依存して結果的に貧困になる可能性が高くなるという事実だ

   (中略)
  彼女たちから”私を愛して”という言葉が聞こえたような気がしたが
  30歳を過ぎた女性が、人をきちんと愛せる人から尊重されるには
  寛容、忍耐、知性、教養などさまざまな要素が必要だ

これを”あとがき”で要約しているのが表題の

  文化面や愛情面が満たされない精神的貧困状態にあると、
  結果的に金銭面においても貧困になってしまうのではないかということだ

です。沢木文自身、これが”原因”と言ってるわけではないですし(あくまで”感じた”ということ)、お金で買えない資源が薄くなったこと自体の原因は別のところにあるんでしょうが、今まで論じられてきた”低所得層の貧困”と違った”貧困”といったモノを生み出す実態の一つであることは間違いなさそうです。

 個々のケースで言えば、同情を禁じ得ないものもあれば、”あんた、それアカンやろ!”ってのもあります。読み手としてむしろ重要なのは、今貧困でない人なら”貧困に陥るリスクをどうやって回避するか”、今貧困に近い状態なら”貧困からどうやって脱出するか”を考えることかも。本書に回答が書いてあるわけではないんで、それは各人が考えるしたないんでしょうな。ぶん投げの結論で申し訳ないですが。
 ただ、こう言ったことを考えるという点では、この手の本は読んどいた方がいいかもしれませんね

 余談ですが、ダイヤモンドリリー(ネリネ)の花言葉”箱入り娘”はネリネの名前の由来となったギリシャ神話の水の妖精”ネレイデス”がエーゲ海の海底で優雅に暮らす”箱入り娘”だったから。花言葉辞典では”ちょっと引きこもり!?”というツッコミが!
 昔は”箱入り娘”といえばセレブの代名詞だったんですがねぇ やな時代になったモンです・・・


《脚注》
(*1)将来に対する唯ぼんやりした不安
 芥川龍之介の”或旧友へ送る手記”より。芥川龍之介はこの遺稿を残して1927年に自殺しました。
 本手記の中に
  僕はゆうべ或売笑婦と一しよに彼女の賃金(!)の話をし、
  しみじみ「生きる為に生きてゐる」我々人間の哀れさを感じた

という文章があります。こういうセリフは大芥川が言うからサマになるのであって、凡人がこんなこと書いて自殺しても誰も感心してくれませんぜ!(全文はこちらから
(*2)貧困撲滅のための国際デー
 国際連合が制定した国際デーの一つ。1987年に貧困、飢え、暴力、恐怖の犠牲者に敬意を表するためパリのシャイヨ宮の人権広場に集まったのが最初だそうです(Wikipediaより)

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