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そのうち”株の高速取引に勝つための唯一の手はプレイしないこと”人工知能は宣ふかもしれません(ウォール街のアルゴリズム戦争/ウォー・ゲーム/すずかけの木)

 ども、今まで一度も株なんぞ買ったことのないおぢさん、たいちろ~です。
 人間もおぢさんになってくると”あれ、昔も同じことなかったって?”ってことが良くあります。最近だと人工知能を利用した高速取引を検証する審議会を立ち上げるって話がありました(2016年4月8日 日経新聞) コンピューターの判断で高速売買を繰り返す”アルゴリズム取引”が株価の乱高下の原因の一つではないかと言われてることに対応するてことのようですが、これって”ブラックマンデー(*1)”の時も同じこと言ってなかったけ? この時も”プログラム売買”が暴落に拍車をかけたって話があったような・・
 ということで、今回ご紹介するのはコンピュータによる株取引の現在を扱った本”ウォール街のアルゴリズム戦争”であります。


 写真はたいちろ~さんの撮影。赤坂の”高橋是清翁記念公園(*2)”で見かけたプラタナスです

0077
【本】ウォール街のアルゴリズム戦争(スコット・パタースン、日経BP社)
 コンピュータの発展はニューヨーク証券取引所やナスダックをどのように変えていったか? ますます高速化するアルゴリズム取引の行方は?
 高速・高頻度化するマーケットをウォールストリート・ジャーナル記者が描いたノンフィクション。
【DVD】ウォー・ゲーム(監督 ジョン・バダム,20世紀フォックス)
 コンピュータオタクの高校生デビッドは、偶然ハッキングした”ジョシュア”というコンピューターと”アメリカとソ連の核戦争ゲーム”を始めた。ゲーム会社の新型ゲームと思っていたデビットだが、”ジョシュア”はNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)に設置された人工知能、デビッドのゲームは”リアル・ウォー”を引き起こそうとしていた・・
 ※ステファニー・チャップマン・ベイカー出演のとは別のものです。ご注意ください
【花】すずかけの木(鈴懸)
 スズカケノキ科スズカケノキ属に属する植物の総称。別名”プラタナス
 若い人にはAKB48の”鈴懸の木の道で(以下略)”なんでしょうが、おじさん世代にははしだのりひこの”プラタナスの枯葉舞う冬の道で~ プラタナスの散る音に振りかえる~”でしょうか(*3)


 ”プログラム売買”と”アルゴリズム取引”って同じコンピュータを使った株(にかぎんないけど)取引って点では同じですが、扱いがビミョ~に違う感じがしてます。
 ”ブラックマンデー”で悪役扱いだったのが”プログラム売買”。株ってのは安く買って高く売るのが商売なんで、これをプログラムしてコンピュータにやらせるものです。まあ、コンピュータがやってくれればそれなりに楽にはなるし、人間みたく感情に振り回されることは少なくなりますが、状況によって下げが下げを生む負のフィードバックを淡々とこなすことにもなります(で、暴落の悪役扱いにされちゃいました)

 大量の株を大きな差額(売値-買値)で売り買いすればいっぱい儲かるんですが、少ない量で小さな差額でも高速に高頻度でやれば1件あたりの儲けは少なくても数が増えるんでけっこう儲けがでる、これが本書で扱っている”アルゴリズム取引”ってのです(かなりはしょって書いてるんで、実際はもっと複雑です)
 本書に登場するのはこの”アルゴリズム”の原型を作り、電子取引ネットワーク”アイランド”を創設した天才プログラマー”ジョシュア・レヴィン(*4)”、ジョシュアの師匠で荒稼ぎした”シェルドン・マシュラー”、”アイランド”のCEO”マット・アンドレセン”、”アイランド”のライバル”アーキペラゴ”設立した”ジェリー・パットナム”などなど、ウォール街を変革させたビジネスマンからコンピュータオタクまで多彩なメンバーが登場してきます。

 結果的にはニューヨーク証券取引所は”アーキペラゴ”と合併し、ナスダックは”アイランド”のシステムに移行と、従来の人間中心のシステムから電子取引ネットワークにとって代わられちゃいます
 ”ニューヨーク証券取引所”って”1792年にウォール街のスズカケノキ(プラタナス)の下で売買手数料を定めた「すずかけ協定」に基づき、24の仲買人が始めた”ってことらしいですが、この24人だってまさか200数十年後にこんなことになるとは夢にもおもってなかったんでしょうなぁ・・

 本書では、こういった人間模様の話とともに技術的な話もたくさん出てきます。”アルゴリズム取引”って高速に高頻度と書きましたが、これが高性能のコンピュータでやらせるモンだからもうバカっ速い人間がやると10~20秒かかっていたものが、”アルゴリズム取引”だと1秒間に万単位のオーダーで取引され、ミリ秒単位で儲ける(損する)と、もう人間の手に負えるスピードをはるかに超えちゃってます
 2010年には”フラッシュ・クラッシュ”というのが発生したんですが、これは僅か数分でダウ平均株価が1000ドル以上近く下落、時価総額にして1兆ドル近くが吹っ飛んだというもの。”アルゴリズム取引”がこの原因の一つとして悪役になっちゃってます。最近ではこれにコロケーション(*5)だ、人工知能だ、ビックデータだが加わって、取引自体が人間の手を離れて(まあ、アルゴリズムは人間が創ってはいますが)コンピュータそのもの商売やってる感ありありです。

 でこうなると、だんだん儲からなくなってくるというか勝者だけ総取りあとはみんな負けというか。象徴的なのがインタラクティブ・ブローカーズのCEO”ピーターフィー”と”アンドレセン”との会話。アイランドを使い始めてすぐやめてしまったインタラクティブ社に理由を問う場面

  アンドレセン :われわれは競合他社よりも10倍速く、10倍安いのです
  ピーターフィー:マット、おっしゃる通りだ。アイランドは速いし安い
  アンドレセン :ではなぜ弊社を使わなくなられたんでしょうか
  ピーターフィー:それは、アイランドでは儲けられないからだ!

 つまり、アイランドで競合するトレーダーが巧みすぎて”互いを食い荒す鮫でいっぱい”になってしまっているということ。プロ同士でこれですから、ここに個人投資家=”無知な金”なんかが入ってっても餌扱いです。

 この本を読んでふと思い出したのが、”ウォー・ゲーム”という映画。1983年公開とまだ米ソ冷戦まっただなかの時代で、今見るとコンピュータの描写なんかノスタルジーを感じちゃいますが(音響カプラーなんて今の若い人わかるかなぁ?(*6))、内容的には今でも示唆に富んでます。
 ネタバレになりますが、デビッドが”ジョシュア”の始めたリアルな核戦争ゲームを止めるため、あるゲームをすることを提案。ジョシュアはそのゲームをやって、それを元に核戦争ゲームを高速でシミュレーションします。その結果は

  WINNER:NONE(勝者 なし)

ディスプレイに表示されるジョシュアがたどり着いた結論

  A STRANGE GAME
  THE ONLY WINNING MOVE IS NOT TO PLAY
  HOW ABOUT A NICE GAME OF CHESS?

  奇妙なゲームです
  勝つための唯一の手は、プレイしないことです
  チェスをしませんか?

 ”アルゴリズム取引”の行き着く先、プロ同士がやってもみんな引き分け、勝者なしならそのうちやんなくなるかも。ましてや素人じゃ絶対勝てないゲームなんて誰もやらんでしょうな。
 そうなりゃマーケットそのものが成り立たなくなっちゃうし、経済にとってそれが良いとか思いませんが。これもコンピュータのもたらす未来の一つの形になるかもしれんなぁ・・・


《脚注》
(*1)ブラックマンデー(暗黒の月曜日)
、1987年に発生した、史上最大規模の世界的株価大暴落。ダウ平均株価は▲22.6%、日経平均株価は▲14.9%の大暴落となりました。
(*2)高橋是清翁記念公園
 高橋是清は金融恐慌や、アメリカの株価大暴落”ブラックサーズデー(暗黒の木曜日)”に端を発した世界恐慌に対応した内閣総理大臣、大蔵大臣。”二・二六事件”により1936年死亡。高橋是清翁記念公園は、高橋是清邸宅跡(一部)です
(*3)はしだのりひこの”プラタナスの枯葉舞う冬の道で~ 
 曲名は””(作詞 北山修、作曲 端田宣彦、唄 はしだのりひことシューベルツ)。1969年発表とフォークブーム初期の名曲です。こちらからどうぞ
(*4)ジョシュア・レヴィン
 ジョシュア・レヴィンは1967年生まれ。”ウォー・ゲーム”の公開は1983年ですので(ジョシュアが15~6歳)名前の一致はたぶん偶然だと思います
(*5)コロケーション
 取引所のシステムと取引を指示するシステムが離れると、間のネットワーク分だけ僅かに遅延が発生します。ですので、取引所のコンピュータの横に指示するシステムを置いてた方が有利になります。コロケーションってのは、取引所内に指示システムを置くという方法。”光の速度で飛び交うデータにどんだけ差があんねん?!”と思っちゃいますが、それぐらいシビアあんだそうです
(*6)音響カプラーなんて今の若い人わかるかなぁ?
 パソコンをネットにつなげるには今ならLAN接続ですが、当時は音声回線しかなかったので電話の受話器を”音響カプラー”にパカッとはめて音声(アナログ)をデジタルデータに変換するという方式をとってました。初期のころの通信速度は300bps程度(メガでもギガでもないです。1秒間におおむね30数文字ぐらい送れる速度)

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