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科学捜査が発展した現在では、大時代的なトリックって組み立てにくいんでしょうかねぇ(リンカーン・ライムシリーズ/黄色い部屋の秘密/コナラ)

 ども、犯罪にはとんと縁のないおぢさん、たいちろ~です。
 ”犯罪”に縁がないと書きましたが、実は高校時代に警察の取り調べを受けたことがあります。近くのゴミ捨て場に捨ててあった自転車を修理して乗ってたんですが(*1)、たまたまその直前にその自転車の持ち主の家で自転車の盗難があったそうでパトカーで警察署まで。結局車体の登録番号が違っていたのと、その家が家族の知り合いの家で修理して使っているのを知ってるからということで、無罪放免となりました。
 ことほどさように、犯罪を立証するには物的証拠と推理(そんなおおげさなもんじゃありませんが)が必要になります。この場合だと物的証拠=自転車、推理=お前が盗ったんやろ!です。でも証拠が必ずしも推理の正しさを証明するわけではないんですなぁ、これが。
 ということで、今回ご紹介するのは物的証拠と推理の対極にある本、ジェフリー・ディーヴァーの”リンカーン・ライムシリーズ”とガストン・ルルーの”黄色い部屋の秘密”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園の”コナラ”です

0437
【本】リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 捜査中の事故により首と左の薬指以外が動かない元ニューヨーク市警中央科学捜査部長”リンカーン・ライム”と、助手として現場で鑑識捜査にあたるアメリア・サックスを主人公にした推理小説。”ボーン・コレクター”や最新作の”スキン・コレクター”など11作のシリーズ。
【本】黄色い部屋の秘密(ガストン・ルルー、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 真夜中、スタンガーソン博士の娘、マチルド嬢の寝室から助けを求める悲鳴と銃声が聞こえた。博士たちがただ一つの扉を壊して部屋に入ると、マチルド令嬢が倒れており、黄色の壁紙には大きな血染めの手形が。しかし犯人の姿はどこにもなかった。密室から消えた犯人の謎を解くべく、18歳の若き新聞記者”ルールタビーユ(*2)”がのりだすが・・・
【花】コナラ
 ブナ目ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。ドングリのなる樹といったほうがなじみがあるでしょうか
 落葉樹ですが、秋に葉が枯れて茶色になっても葉っぱは落ちずに春に新葉ができるころに落葉するとのことです(写真は5月に撮影のもの)

 まずは、科学分析による物的証拠から推理を進める”リンカーン・ライムシリーズ”から。リンカーン・ライムはニューヨーク市警を引退した身ながら、市警の委託を受けて刑事のアメリア・サックス、鑑識課のメル・クーパーたちと事件に取り組むという天才科学捜査官。日本だと”科捜研の女”のおじさん版ってとこでしょうか?(*3) 自宅にはコンピュータや顕微鏡は言うに及ばず、ガスクロマトグラフィー(気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる機器)やら質量分析計(物質に含まれる成分や質量を分析をする機器)なんぞがたくさんあって、これで犯人の残した微細な証拠物件を分析して、それを元に犯人の行動を推理するという手法の人。
 この人の信条は犯罪が行われると証拠物件が犯人と被害者、現場で交換されるという”ロカールの相互交換の原則”。だもんで、塵や埃みたいなものでも何でも証拠物件として集めてきて徹底して分析しちゃいます。まとめると

  証拠物件を元に推理を組み立てる

という方向で思考が進んでいきます。

 リンカーン・ライムシリーズシリーズ第一作の”ボーン・コレクター”の出版が1997年ですが、これを遡ること90年前、1907年に新聞連載の形で発表されたのがガストン・ルルーの”黄色い部屋の秘密”です。こっちは”カーを、クリスティーを、そして乱歩を瞠目させた密室ミステリの最高傑作!(amazon 内容紹介より)”とあるように完全な密室での犯行、脱出不可能な通路からの犯人消失といったHowdunit(How done it どのように犯罪を為しとけたのか)の推理小説。
 探偵役が18歳の新聞記者”ルールタビーユ”。この人の思考方法は、ライムとまったく逆で”推理を元に証拠物件を精査する”という方向。本書でのルールタビーユの言い方だと

  つまり、僕は<論理的>に言って、XXXが犯人だと確信したのです
  そうなったら、あとはやはりこの<論理の輪>の中に入る、
  <目に見える証拠>を見つけるだけです

   (本書ではXXXに犯人の名前が入っていますが、ネタバレなので伏せ字)

 まあ、どっちの方向が良いかは一長一短ありますが、割り引いて考えないといけないのは”証拠物件に対する堅確性”。なんたって”黄色い部屋の秘密”が発表されたのは1907年と、ガスクロマトグラフィーや質量分析計なんて一般的じゃないし、DNA鑑定なんて夢のまた夢の時代。だいたい、血染めの手形が残っているのに指紋の話ひとつ出てきませんぜ!(*4)
 じゃあ、どうやってるかというとほとんどやっていないんですな~ これこれはこの人の持ち物がどうかを聞くかどうかぐらいで。コナラの林や部屋の中とかに残っている足跡だと、形に合わせて紙を切り抜いて大きさを比べるとかでとってもおおざっぱ。これじゃあ証拠物件ベースで犯人を特定するにも限界がありそうです。

 まあ、昔のミステリーってか一昔前まではルールタビーユ型のほうが当たり前だったんだけどね。髪の毛1本から個人が特定できるとか、そこここに防犯カメラがあって監視されているような時代だと、こういった大時代的なトリックって組み立てにくいんでしょうかねぇ 100年近いタイムスパンで見ると、科学捜査の発展がミステリーにも多大な影響を与えているってのがしみじみと感じられます・・・

《脚注》
(*1)近くのゴミ捨て場に捨ててあった自転車を~
 今ですと粗大ゴミとして手続きや廃却手数料の支払いなんかが必要なんですが、昭和の時代ですからそんなのはなし。拾ってきたのを修理して使うなんてのも当たり前でしたから、まあ、牧歌的な時代ではありました。
(*2)ルールタビーユ
 これはあだ名かペンネームみたいなので、本名は”ジョゼフ・ジョゼファン”。今だったら”ジョジョ”って呼ばれてそうだな~~
(*3)”科捜研の女”のおじさん版ってとこでしょうか?
 ”科捜研の女”は京都府警科学捜査研究所の研究員”榊マリコ”(演じるは沢口靖子)”を主人公とするテレビ朝日のドラマ。ちなみに現実の科学捜査研究所職員は警察官ではなく技術職員のため、捜査権などはないそうです。
(*4)ガスクロマトグラフィーや質量分析計なんて一般的じゃないし~
。ヴィルヘルム・ヴィーンが質量電荷比に応じて分離させる装置を組み立てたのが1988年、イングランドとウェールズで指紋を用いた犯罪捜査が始まったのが1901年、ミハイル・ツウェットがクロマトグラフィーの論文を発表したのが1906年、アレック・ジェフリーズが、DNA指紋を抽出する方法を発表したのが1985年のことです。
(wikipedia他より)

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