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発展し続ける人工知能ですが、そのうち人間は人工知能の出した答えにダメ出しできなくなったりして・・(IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト/くるみ)

 ども、人工知能と言うよりも天然無能なおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、”人工知能”に関するニュースがよく出てきます。やれ囲碁で世界トップのプロ棋士に勝っただの(*1)、東大を目指すロボットがかなりの大学に合格できるレベルになったとか(*2)、”星新一賞”で一次選考を通過した作品がでてきただの(*3)。
 囲碁のように純粋に理系的なものもあれば、ショートショートを書くなんて文系的なものまでけっこういろんなことができるようになってきてんな~ って印象です。で、今回のお題はそんないろいろの中から”クイズを解く”という事例。ちょっと古いですがIBMの”ワトソン”というコンピューターが”ジョパディ”というクイズ番組で人間のチャンピオンに勝ったという話。この番組って観たことないんですが、日本なら”Qさま!!”でコンピューターが宇治原君とやくみつるに勝つ(*4)みたいなもんでしょうか?
 ということで、今回ご紹介するのはコンピューターにクイズ番組でチャンピオンを倒すというプロジェクトのお話”IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト”であります。


 写真はたいちろ~さんの撮影。温泉地で売ってたたくさんのくるみです

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【本】”IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト”(スティーヴン・ベイカー、早川書房)
 アメリカのクイズ番組”ジョパディ”に出演し、人間のチャンピオンに勝つ”ことを目的に、IBMのディビッド・フェルーチ率いるチームが結成された。このチームが開発した”ワトソン”ができあがり、人間に勝利するまでの経緯を描いたのが本書です。
【花】くるみ(胡桃)
 クルミ科クルミ属の落葉高木の総称。花言葉は”知恵、知性、野心、謀略”など。
 実は非常に固い皮の中に脳みそを思わせるような種子が入っているのが特徴。花言葉の由来がこのイメージだったらちょっとシュールだな~~


 最初にお断りしておきますが、IBM自身は”ワトソンのことを”人工知能”とは言ってないんです。サブタイトルは”人工知能はクイズ王の夢をみる”になってますが、IBMのHPでは”コグニティブ(人間の意思決定支援)”。本書の中でも、フェルーチは

  チューリングテストをやるなんてご免だぞ(*5)

と言ってますし。まあ、サブタイトルは日本の編集者がディックの”アンドロイドは電気羊の夢を見るか?”のオマージュやりたかったんだろ~な~って気持ちはわかります。
 なんで、こんなことを言っているかというと、”人工知能”、根本的には”知能”って何?ってのが以外とはっきりしないんですな。むしろ、ワトソンってこの議論はせずに、”クイズの結果に答える”=”アウトプットを人間と同じように出す”ことに特化して、その手法うんぬんは問わないと。開発者の一人のゴンデクの言葉で言うと

  ワトソンとヒトの脳が似たパターンに従うように見えることがあるのは事実だが
  それは、とちらもある仕事をするよう
  それなりの仕方でプログラミングされているからであり、
  仕事が同じなら似るのは当然です

とのこと。じゃあ何が違うかと言うと、人工知能のアプローチは基本的には”しらみつぶし(総当たり)”で、2,208個のプロセッサが協調して力任せで答えを導くというもの。本書で何度か指摘されているように人間的な意味での”理解”をしているわけではないんだとか。逆に人間はそんなやり方をせずに答えを出していくものだそうです。

 人工知能ってどうもブームと冬の時代を繰り返してる感があるんですが、どうもこれは”手法”と”コンピュータ・パワー”に関係ありそうかな。私が入社したころって、脳のニューロンの機能をモデル化した”ニューラル・ネットワーク”とかそれを利用した”エキスパートシステム”なんかが流行ってましたが、その後下火に。
 最近囲碁で勝利したテクノロジー”ディープラーニング(深層学習)”ってのは、この”ニューラル・ネットワーク”の延長上にあるらしいんですが、恐っそろしくコンピュータ・パワーが必要なんだそうで(それでも、しらみつぶしにやるよりははるかにマシなんだそうですが)、コンピュータパワーが過去に比べて増大したことで自己学習みたいなのが可能になった側面もあるんだそうです。

 本書の中で非常に興味深かった内容を一つ。IBMは民間企業なのでワトソンの成果をビジネスに結び付けたいワケですが、じゃあ何に使うか?、それが受け入れられるか? ってのが問題になります。人工知能の導入により職場を奪われる人がいるとか、最適と思われる回答と導入企業の利益が相反するなんてのはありそうですが、さらに困ったことが二つ。本書では医師の例を上げていますが、その一つ目は

  

コンピュータの提案に従った結果、とんでもない医療過誤が起ったら・・・?

まあ、これは自動車の自動運転なんかで話題になっているので(自動運転中の事故の責任は誰にあるのか?)わかりやすいかもしれません(結論がわかりやすくなるかどうかは別にして)
 実は2つめのほうがやっかい

  ワトソンが絶対の--九十七パーセントの--自信をもって
  ある診断を返してきたとき
  医師はそれを無視できるか、という問題もある
  ワトソンの診断を無視し、結局ワトソンが正しかったわかったとき、
  その医師は訴訟の嵐に巻き込まれないだろうか

確かにこれって難しそうだよな~~ 世界中の医療データにアクセスできて、医学界の権威並みの判断ができるコンピュータが登場したとしたら、これにダメ出しするって相当勇気いりそうだし、かといって間違ってたら責任とらされるかもしんないとなると・・

 本書は2010年の話(出版は2011年)とちょっと昔の話で、現在のワトソンはすでに商業ベースで動き出してるんで、もっと進化していると思われます。開発に伴う苦労話って側面もありますが、人工知能へのアプローチや考え方って点でもなかなか面白い本です。まあ、人工知能によるツイートが不適切だったとかいろんなとこで物議をかもしている昨今(*6)、来し方行く末を思うには参考になるかもね。こっちも人工知能というより人間側の問題ですが・・・


《脚注》
(*1)囲碁で世界トップのプロ棋士に勝っただの
 グーグルの研究部門が開発した囲碁AI(アルファ碁)は韓国のプロ棋士イ・セドル氏と5番勝負で対戦し4対1で勝利(2016年3月)
(*2)東大を目指すロボットがかなりの大学に合格できるレベルになったとか
 国立情報学研究所などが開発中の東京大学の合格を目指す人工知能”東ロボくん”は16年度大学入試センター試験模試で合計点の偏差値で57・8をマーク。東大合格は難しいものの、全大学の6割にあたる474大学の1094学部で合格の可能性が80%以上と診断されるレベルに(2015年11月)
(*3)”星新一賞”で一次選考を通過した作品がでてきただの
 ショートショート、短篇小説を対象とした公募文学賞”星新一賞”で人工知能の書いた小説の1作品以上が第一審査を通過(2016年3月)
(*4)”Qさま!!”でコンピューターが宇治原君とやくみつるに勝つ
 ”Qさま!!”はテレビ朝日系列で放映されているクイズバラエティー。高学歴や頭の良いタレントさんを集めてクイズで競う番組ですが、この中で優勝の常連が京都大学法学部卒業のお笑い芸人”ロザン宇治原”と、早稲田大学商学部卒業の漫画家の”やくみつる”
(*5)チューリングテストをやるなんてご免だぞ
 ”チューリングテスト”はコンピュータ学者のアラン・チューリングによって考案された機械(コンピュータ)が知的である(人工知能である)かどうかを判定するテスト。人間の判定者が会話している相手が機械と人間との確実な区別ができなかった場合、この機械はテストに合格(知的である)したことになるというもの。
(*6)人工知能によるツイートが不適切だったとかいろんなとこで物議をかもしている昨今 マイクロソフトが開発した人工知能”Tay”が、ツイッター上で不適切な発言を繰り返したとして、公開が取りやめに。一部の利用者が”Tay”のコメント能力を悪用して不適切な受け答えを教え込んだことが原因(2016年3月)

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