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2016年3月

発展し続ける人工知能ですが、そのうち人間は人工知能の出した答えにダメ出しできなくなったりして・・(IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト/くるみ)

 ども、人工知能と言うよりも天然無能なおぢさん、たいちろ~です。
 ここんとこ、”人工知能”に関するニュースがよく出てきます。やれ囲碁で世界トップのプロ棋士に勝っただの(*1)、東大を目指すロボットがかなりの大学に合格できるレベルになったとか(*2)、”星新一賞”で一次選考を通過した作品がでてきただの(*3)。
 囲碁のように純粋に理系的なものもあれば、ショートショートを書くなんて文系的なものまでけっこういろんなことができるようになってきてんな~ って印象です。で、今回のお題はそんないろいろの中から”クイズを解く”という事例。ちょっと古いですがIBMの”ワトソン”というコンピューターが”ジョパディ”というクイズ番組で人間のチャンピオンに勝ったという話。この番組って観たことないんですが、日本なら”Qさま!!”でコンピューターが宇治原君とやくみつるに勝つ(*4)みたいなもんでしょうか?
 ということで、今回ご紹介するのはコンピューターにクイズ番組でチャンピオンを倒すというプロジェクトのお話”IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト”であります。


 写真はたいちろ~さんの撮影。温泉地で売ってたたくさんのくるみです

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【本】”IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト”(スティーヴン・ベイカー、早川書房)
 アメリカのクイズ番組”ジョパディ”に出演し、人間のチャンピオンに勝つ”ことを目的に、IBMのディビッド・フェルーチ率いるチームが結成された。このチームが開発した”ワトソン”ができあがり、人間に勝利するまでの経緯を描いたのが本書です。
【花】くるみ(胡桃)
 クルミ科クルミ属の落葉高木の総称。花言葉は”知恵、知性、野心、謀略”など。
 実は非常に固い皮の中に脳みそを思わせるような種子が入っているのが特徴。花言葉の由来がこのイメージだったらちょっとシュールだな~~


 最初にお断りしておきますが、IBM自身は”ワトソンのことを”人工知能”とは言ってないんです。サブタイトルは”人工知能はクイズ王の夢をみる”になってますが、IBMのHPでは”コグニティブ(人間の意思決定支援)”。本書の中でも、フェルーチは

  チューリングテストをやるなんてご免だぞ(*5)

と言ってますし。まあ、サブタイトルは日本の編集者がディックの”アンドロイドは電気羊の夢を見るか?”のオマージュやりたかったんだろ~な~って気持ちはわかります。
 なんで、こんなことを言っているかというと、”人工知能”、根本的には”知能”って何?ってのが以外とはっきりしないんですな。むしろ、ワトソンってこの議論はせずに、”クイズの結果に答える”=”アウトプットを人間と同じように出す”ことに特化して、その手法うんぬんは問わないと。開発者の一人のゴンデクの言葉で言うと

  ワトソンとヒトの脳が似たパターンに従うように見えることがあるのは事実だが
  それは、とちらもある仕事をするよう
  それなりの仕方でプログラミングされているからであり、
  仕事が同じなら似るのは当然です

とのこと。じゃあ何が違うかと言うと、人工知能のアプローチは基本的には”しらみつぶし(総当たり)”で、2,208個のプロセッサが協調して力任せで答えを導くというもの。本書で何度か指摘されているように人間的な意味での”理解”をしているわけではないんだとか。逆に人間はそんなやり方をせずに答えを出していくものだそうです。

 人工知能ってどうもブームと冬の時代を繰り返してる感があるんですが、どうもこれは”手法”と”コンピュータ・パワー”に関係ありそうかな。私が入社したころって、脳のニューロンの機能をモデル化した”ニューラル・ネットワーク”とかそれを利用した”エキスパートシステム”なんかが流行ってましたが、その後下火に。
 最近囲碁で勝利したテクノロジー”ディープラーニング(深層学習)”ってのは、この”ニューラル・ネットワーク”の延長上にあるらしいんですが、恐っそろしくコンピュータ・パワーが必要なんだそうで(それでも、しらみつぶしにやるよりははるかにマシなんだそうですが)、コンピュータパワーが過去に比べて増大したことで自己学習みたいなのが可能になった側面もあるんだそうです。

 本書の中で非常に興味深かった内容を一つ。IBMは民間企業なのでワトソンの成果をビジネスに結び付けたいワケですが、じゃあ何に使うか?、それが受け入れられるか? ってのが問題になります。人工知能の導入により職場を奪われる人がいるとか、最適と思われる回答と導入企業の利益が相反するなんてのはありそうですが、さらに困ったことが二つ。本書では医師の例を上げていますが、その一つ目は

  

コンピュータの提案に従った結果、とんでもない医療過誤が起ったら・・・?

まあ、これは自動車の自動運転なんかで話題になっているので(自動運転中の事故の責任は誰にあるのか?)わかりやすいかもしれません(結論がわかりやすくなるかどうかは別にして)
 実は2つめのほうがやっかい

  ワトソンが絶対の--九十七パーセントの--自信をもって
  ある診断を返してきたとき
  医師はそれを無視できるか、という問題もある
  ワトソンの診断を無視し、結局ワトソンが正しかったわかったとき、
  その医師は訴訟の嵐に巻き込まれないだろうか

確かにこれって難しそうだよな~~ 世界中の医療データにアクセスできて、医学界の権威並みの判断ができるコンピュータが登場したとしたら、これにダメ出しするって相当勇気いりそうだし、かといって間違ってたら責任とらされるかもしんないとなると・・

 本書は2010年の話(出版は2011年)とちょっと昔の話で、現在のワトソンはすでに商業ベースで動き出してるんで、もっと進化していると思われます。開発に伴う苦労話って側面もありますが、人工知能へのアプローチや考え方って点でもなかなか面白い本です。まあ、人工知能によるツイートが不適切だったとかいろんなとこで物議をかもしている昨今(*6)、来し方行く末を思うには参考になるかもね。こっちも人工知能というより人間側の問題ですが・・・


《脚注》
(*1)囲碁で世界トップのプロ棋士に勝っただの
 グーグルの研究部門が開発した囲碁AI(アルファ碁)は韓国のプロ棋士イ・セドル氏と5番勝負で対戦し4対1で勝利(2016年3月)
(*2)東大を目指すロボットがかなりの大学に合格できるレベルになったとか
 国立情報学研究所などが開発中の東京大学の合格を目指す人工知能”東ロボくん”は16年度大学入試センター試験模試で合計点の偏差値で57・8をマーク。東大合格は難しいものの、全大学の6割にあたる474大学の1094学部で合格の可能性が80%以上と診断されるレベルに(2015年11月)
(*3)”星新一賞”で一次選考を通過した作品がでてきただの
 ショートショート、短篇小説を対象とした公募文学賞”星新一賞”で人工知能の書いた小説の1作品以上が第一審査を通過(2016年3月)
(*4)”Qさま!!”でコンピューターが宇治原君とやくみつるに勝つ
 ”Qさま!!”はテレビ朝日系列で放映されているクイズバラエティー。高学歴や頭の良いタレントさんを集めてクイズで競う番組ですが、この中で優勝の常連が京都大学法学部卒業のお笑い芸人”ロザン宇治原”と、早稲田大学商学部卒業の漫画家の”やくみつる”
(*5)チューリングテストをやるなんてご免だぞ
 ”チューリングテスト”はコンピュータ学者のアラン・チューリングによって考案された機械(コンピュータ)が知的である(人工知能である)かどうかを判定するテスト。人間の判定者が会話している相手が機械と人間との確実な区別ができなかった場合、この機械はテストに合格(知的である)したことになるというもの。
(*6)人工知能によるツイートが不適切だったとかいろんなとこで物議をかもしている昨今 マイクロソフトが開発した人工知能”Tay”が、ツイッター上で不適切な発言を繰り返したとして、公開が取りやめに。一部の利用者が”Tay”のコメント能力を悪用して不適切な受け答えを教え込んだことが原因(2016年3月)

1時間ちょっとで行ける利き酒スポット。週末旅には良いことでしょうね(みかはな週末とりっぷ/越後湯沢 ぽんしゅ館)

 ども、3連休だというのに家でごろごろブログ書いてるおぢさん、たいちろ~です。
 別に出かけるのが嫌いってワケじゃないんですが、なんせ読みたい本がたまっててね~~ それに、お金もないし・・・
 最近はお嬢様方のほうがアクティブなようで、やれ旅行だ女子会だマラソン大会だと元気に飛びまわっているようです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなお嬢様方3人が週末にいろいろ旅行に行く話”みかはな週末とりっぷであります。
(写真はたいちろ~さんの撮影です)

【本】みかはな週末とりっぷ(アザミユウコ、KADOKAWA)
 計画性のないデザイナー実花さん、薄い本が好きな(*1)銀行員菜々さん、酒豪のOL遥さん。”私ら全員彼氏いませんよね!!”の3人のお嬢様が週末にあちこち旅行して酒呑んで楽しむコミック。
【旅行】越後湯沢 ぽんしゅ館
 JR越後湯沢駅の中にある”越後のお酒ミュージアム”。新潟越後の93の酒蔵がすべて利き酒できる酒呑み垂涎のスポットです。中では利き酒のほかに酒風呂に入ったり食堂があったりお土産屋さんがあったりと、けっこう楽しめます。
 ホームページはこちらから

 ”みかはな週末とりっぷ”では、松本のレトロな温泉に泊まりにいったり、東京ビックサイトで同人誌売ったり、京都の紅葉を観に行ったりとしてますが、今回はこの中から越後湯沢駅ナカの”ぽんしゅ館”をピックアップです

〔ぽんしゅ館入り口〕
 まずはぽんしゅ感の入り口から。天井に杉玉(*2)なんかが吊ってあってなかなか酒蔵感を出してます。右側に”ご利用料 500円”とありますが、これは本書の中でもあるように500円でコイン5枚を買って好きなお酒を飲むシステムになってます
 左側に登山の格好をしている人がいますが、これは谷川岳の登山口である上越線土合駅をはじめ、越後湯沢駅の沿線に山がけっこうあるから

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〔よっぱらいのおっさん人形〕

 本書で出てくる酔っぱらって寝こけているおっさんの人形。風邪引くぞ~~

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〔ぽんしゅ館の中〕

 左側が好きなお酒が呑めるシステム、手前がおつまみの塩、右がカウンターです

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〔好きなお酒が呑めるシステム〕

 マンションの郵便受けっぽいですが、これがお酒を飲むシステム。ちょっとわかりにくいですが下側にある隙間におちょこを入れて、右側のスロットにコインを入れるとちょうど1杯分のお酒が出てきます。
 いっぱいあって迷うとこですが、ランキングやちょっとしたコメント(英語もあり)なので、それらを参考にチョイスしてみてください

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〔牛のラベルのお酒〕

 本書でも登場する牛のラベルのお酒。塩川酒造の”COWBOY”です。
 下側に”YAMAGAI”とありますがこれは”山廃仕込み”(蒸した米、麹、水を混ぜ粥状になるまですりつぶす製法)のこと。やや辛口だそうです。
 私が行った時は人気ランキング第三位でした。

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〔おつまみの塩〕
 いろんな種類の塩が置いてあって、テイスティングできます。酒呑みはあては”塩”があれ充分って人もいますがホントですね~~

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〔酒風呂 湯の沢〕

 入口の暖簾と中の様子。酒呑んでお風呂入るのはちょっと危険なんですが・・

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 まあ、へべれけになるまで呑むというより、いろいろ呑み比べてみるとか、話題になったお酒をちょっと呑んでみるとか(”夏子の酒(*3)”の舞台になった久須美酒造のお酒なんてのもありました)、そういうお店です
 あと注意が必要なのが営業時間。本書の中でも戻ってきたら閉店してるってエピソードが描かれていますが、閉店早いんですな。お嬢様方がノースリーブなので夏だと思われますが、この季節だと18時に閉店(受付は17時45分まで)。湯の沢は17時30分で終了です。冬期間だと20時(湯の沢は19時30分)まで延長になりますが、それでもけっこう早く閉まります。訪問される方は早めに行かれた方が良いかと

 実はここ、プライベート以外でも富山に出張に行った帰りに寄ったんですが、当時は上越新幹線で越後湯沢で乗り換えて北越急行ほくほく線経由ってのが一般ルートだったんで途中下車できました。今では北陸新幹線でダイレクトに富山まで行けるようになったんで途中下車とかしないんだろ~な~ 特急”はくたか”も廃止になっちゃったみたいだし。
 便利になった反面、融通かまして遊びに行きにくくなってんでしょうけど、東京から1時間10分ぐらいで行けるとこなんで、プライベートで行くには適当なのかもしれませんね

《脚注》
(*1)薄い本が好きな
 いわゆる一つのボーイズラブ系同人誌。”しかも、けっこうな割合で腐ってますね”とは実花さんと遥さんの弁
(*2)杉玉
 スギの葉を集めてボール状にしたもので、日本酒の造り酒屋などの軒先に吊るして新酒が出来たことを知らせるものだそうです。
(*3)夏子の酒(尾瀬あきら、モーニングコミックス)
 日本一の酒を造るという兄の夢を引き継ぐため実家に戻ったコピーライターの夏子さんがお酒造りに挑むという漫画。最終巻だけまだ読んでないんだな~ なぜか。

科学捜査が発展した現在では、大時代的なトリックって組み立てにくいんでしょうかねぇ(リンカーン・ライムシリーズ/黄色い部屋の秘密/コナラ)

 ども、犯罪にはとんと縁のないおぢさん、たいちろ~です。
 ”犯罪”に縁がないと書きましたが、実は高校時代に警察の取り調べを受けたことがあります。近くのゴミ捨て場に捨ててあった自転車を修理して乗ってたんですが(*1)、たまたまその直前にその自転車の持ち主の家で自転車の盗難があったそうでパトカーで警察署まで。結局車体の登録番号が違っていたのと、その家が家族の知り合いの家で修理して使っているのを知ってるからということで、無罪放免となりました。
 ことほどさように、犯罪を立証するには物的証拠と推理(そんなおおげさなもんじゃありませんが)が必要になります。この場合だと物的証拠=自転車、推理=お前が盗ったんやろ!です。でも証拠が必ずしも推理の正しさを証明するわけではないんですなぁ、これが。
 ということで、今回ご紹介するのは物的証拠と推理の対極にある本、ジェフリー・ディーヴァーの”リンカーン・ライムシリーズ”とガストン・ルルーの”黄色い部屋の秘密”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園の”コナラ”です

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【本】リンカーン・ライムシリーズ(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 捜査中の事故により首と左の薬指以外が動かない元ニューヨーク市警中央科学捜査部長”リンカーン・ライム”と、助手として現場で鑑識捜査にあたるアメリア・サックスを主人公にした推理小説。”ボーン・コレクター”や最新作の”スキン・コレクター”など11作のシリーズ。
【本】黄色い部屋の秘密(ガストン・ルルー、ハヤカワ・ミステリ文庫)
 真夜中、スタンガーソン博士の娘、マチルド嬢の寝室から助けを求める悲鳴と銃声が聞こえた。博士たちがただ一つの扉を壊して部屋に入ると、マチルド令嬢が倒れており、黄色の壁紙には大きな血染めの手形が。しかし犯人の姿はどこにもなかった。密室から消えた犯人の謎を解くべく、18歳の若き新聞記者”ルールタビーユ(*2)”がのりだすが・・・
【花】コナラ
 ブナ目ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。ドングリのなる樹といったほうがなじみがあるでしょうか
 落葉樹ですが、秋に葉が枯れて茶色になっても葉っぱは落ちずに春に新葉ができるころに落葉するとのことです(写真は5月に撮影のもの)

 まずは、科学分析による物的証拠から推理を進める”リンカーン・ライムシリーズ”から。リンカーン・ライムはニューヨーク市警を引退した身ながら、市警の委託を受けて刑事のアメリア・サックス、鑑識課のメル・クーパーたちと事件に取り組むという天才科学捜査官。日本だと”科捜研の女”のおじさん版ってとこでしょうか?(*3) 自宅にはコンピュータや顕微鏡は言うに及ばず、ガスクロマトグラフィー(気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる機器)やら質量分析計(物質に含まれる成分や質量を分析をする機器)なんぞがたくさんあって、これで犯人の残した微細な証拠物件を分析して、それを元に犯人の行動を推理するという手法の人。
 この人の信条は犯罪が行われると証拠物件が犯人と被害者、現場で交換されるという”ロカールの相互交換の原則”。だもんで、塵や埃みたいなものでも何でも証拠物件として集めてきて徹底して分析しちゃいます。まとめると

  証拠物件を元に推理を組み立てる

という方向で思考が進んでいきます。

 リンカーン・ライムシリーズシリーズ第一作の”ボーン・コレクター”の出版が1997年ですが、これを遡ること90年前、1907年に新聞連載の形で発表されたのがガストン・ルルーの”黄色い部屋の秘密”です。こっちは”カーを、クリスティーを、そして乱歩を瞠目させた密室ミステリの最高傑作!(amazon 内容紹介より)”とあるように完全な密室での犯行、脱出不可能な通路からの犯人消失といったHowdunit(How done it どのように犯罪を為しとけたのか)の推理小説。
 探偵役が18歳の新聞記者”ルールタビーユ”。この人の思考方法は、ライムとまったく逆で”推理を元に証拠物件を精査する”という方向。本書でのルールタビーユの言い方だと

  つまり、僕は<論理的>に言って、XXXが犯人だと確信したのです
  そうなったら、あとはやはりこの<論理の輪>の中に入る、
  <目に見える証拠>を見つけるだけです

   (本書ではXXXに犯人の名前が入っていますが、ネタバレなので伏せ字)

 まあ、どっちの方向が良いかは一長一短ありますが、割り引いて考えないといけないのは”証拠物件に対する堅確性”。なんたって”黄色い部屋の秘密”が発表されたのは1907年と、ガスクロマトグラフィーや質量分析計なんて一般的じゃないし、DNA鑑定なんて夢のまた夢の時代。だいたい、血染めの手形が残っているのに指紋の話ひとつ出てきませんぜ!(*4)
 じゃあ、どうやってるかというとほとんどやっていないんですな~ これこれはこの人の持ち物がどうかを聞くかどうかぐらいで。コナラの林や部屋の中とかに残っている足跡だと、形に合わせて紙を切り抜いて大きさを比べるとかでとってもおおざっぱ。これじゃあ証拠物件ベースで犯人を特定するにも限界がありそうです。

 まあ、昔のミステリーってか一昔前まではルールタビーユ型のほうが当たり前だったんだけどね。髪の毛1本から個人が特定できるとか、そこここに防犯カメラがあって監視されているような時代だと、こういった大時代的なトリックって組み立てにくいんでしょうかねぇ 100年近いタイムスパンで見ると、科学捜査の発展がミステリーにも多大な影響を与えているってのがしみじみと感じられます・・・

《脚注》
(*1)近くのゴミ捨て場に捨ててあった自転車を~
 今ですと粗大ゴミとして手続きや廃却手数料の支払いなんかが必要なんですが、昭和の時代ですからそんなのはなし。拾ってきたのを修理して使うなんてのも当たり前でしたから、まあ、牧歌的な時代ではありました。
(*2)ルールタビーユ
 これはあだ名かペンネームみたいなので、本名は”ジョゼフ・ジョゼファン”。今だったら”ジョジョ”って呼ばれてそうだな~~
(*3)”科捜研の女”のおじさん版ってとこでしょうか?
 ”科捜研の女”は京都府警科学捜査研究所の研究員”榊マリコ”(演じるは沢口靖子)”を主人公とするテレビ朝日のドラマ。ちなみに現実の科学捜査研究所職員は警察官ではなく技術職員のため、捜査権などはないそうです。
(*4)ガスクロマトグラフィーや質量分析計なんて一般的じゃないし~
。ヴィルヘルム・ヴィーンが質量電荷比に応じて分離させる装置を組み立てたのが1988年、イングランドとウェールズで指紋を用いた犯罪捜査が始まったのが1901年、ミハイル・ツウェットがクロマトグラフィーの論文を発表したのが1906年、アレック・ジェフリーズが、DNA指紋を抽出する方法を発表したのが1985年のことです。
(wikipedia他より)

”ビジネスで成功したければ、しっかりした信仰を持ちなさい”というのが今のアメリカ流のキリスト教らしいです(反知性主義/ICUの桜)

 ども、反知性主義というより単なるコンジョ曲がりなおぢさん、たいちろ~です。
 私の好きなコラムニストに小田嶋隆という人がいます。常識や権威に対して”ホントか?!”って疑ってかかる視点が気にいっているんですが、先日この人の”超・反知性主義入門(*1)”という本を読みました。この本で小田嶋隆の小中高の同級生にしてICU(国際基督教大学)の副学長という森本あんりとの対談が載ってまして、この人はまじめな”反知性主義”の本を出しているんだとか。面白そうなんでこれも読んでみましょう、ということで、今回ご紹介するのは森本あんりの”反知性主義”であります。


写真はICUのhpより。ICUの桜です。
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【本】反知性主義(森本あんり、新潮選書)
 サブタイトルは”アメリカが生んだ「熱病」の正体”とあるようにアメリカの反インテリ風潮や極端な道徳主義といった性質を、アメリカで変質したキリスト教が生み出した”反知性主義”にあるとする本。
 紹介文に”いま世界でもっとも危険なイデオロギーの正体”って言葉があるんですが、そうかもしれんな~、ト○ンプ大統領候補が受けてるとか見てると・・・
【花】ICUの桜
 日経新聞の”何でもランキング 一度は歩いてみたい国内大学の桜名所”(2016年2月27日”でICUの桜が東日本の第2位にランクイン。キリスト教と桜って組み合わせがちょっと意外? でもとっても綺麗そうです。
 桜の咲く時期の土日祝日は一般公開されるのでこんど行ってみよ!

 ”反知性主義(Anti-intellectualism)”って何ってのは諸説あるようですが、前出の”超・反知性主義入門”だと

  「反知性主義者」という言葉は、「バカ」を上品に言い換えた婉曲表現にすぎない

で、本書の中で森本あんりの言葉で一番しっくりきたのが

  反知性主義は、知性そのもの対する反感ではない
  知性が世襲的な特権階級だけの独占的な所有物になることへの反感である

ので、

  大家のもつ、旧来の知や権威への反逆であって、
  その反逆により新たな知の可能性を拓く力ともなる

ってとこです。このへんって確かに小田嶋隆のコラムに通じるとこあるな~~

 ところで、森本あんりって人はICUの副学長どっちかと言わなくても”権威”側の人なんですが、かなりぶっちゃけてる人のようです。私自身は宗教に詳しい方ではないんですが、そんでも驚いた話を本書から。

〔キリスト教は不平等を容認している〕
 まず、驚いたのがこれ。キリスト教って”平等”を説いていると思ってたんですが実はそうではないらしい。なんでこうなっているかというとキリスト教の平等って”イエス・キリストにあって”とか”神の前に”って前提条件がついているからで、社会的な現実の前では不平等でよいと考えているんだそうです

  人間社会には、上下の秩序がある
   (中略)
  だからこそ、その中でお互いに助け合い、上には上なりの品徳と権威が
  下には下なりの献身と服従が求められるのである

これって、ごく最近までの一般認識だったそうです。
 で、アメリカってのはそうじゃなくって、社会的な平等も求めていくという方向に変化していったんだそうです。

〔政教分離はどうも日本の発想とは違うらしい〕
 日本でいう”政教分離”ってのは宗教が政治に口を出さないようにするってイメージですが、アメリカってのは逆で個人が自分の思う宗教を実践ささるためのシステム、つまり”俺の宗教は俺が決めることに政治が口を出すな”ということらしいです。元々は政治が公定教会を決めて公金(税金)を使うのはおかしいだろうってとこから始まっているんだとか。

〔伝道師と詐欺師のメソッド〕
 日本人に巡回伝道師ってあまりなじみはないですが(*2)、アメリカでは一般的な存在なんだとか。固定の教会を持たずいろんな地方を回ってキリスト教を伝道するのがお仕事。で、これのメソッドが”巡回セールス”だとか”詐欺師(コンマン)”につながってくという話。宗教の本に”詐欺師”というのが合わないと思われる方には”香具師(やし)”(スーパーやかつての秋葉原駅前で便利グッズを売ってたあれ、詐欺ではないです、念のため)に近いでしょうか。 売り物が”回心(神への信仰)”なのかバッタもんなのがが違うだけ(それでも普通、宗教の人は言わんぞ・・)
 この本の特徴なんでしょうが、宗教を”ビジネス”としての軸で見るている側面があって、宗教って精神性だけではないんだってことがわかります。

〔学者の難しい授業より池上解説(*3)
 教会のニーズってのは自分の宗派の信者を増やすことで、大衆のニーズは手っ取り早く”回心”をして精神のやすらぎを得たいってとこでしょうか。罰あたりな表現かもしれませんが。で、このてっとり手っ取り早くってのを実現してくれる人のほうが好まれそうです。アメリカでも以前は教会で難しい説教を聴いて長々お祈りをしてたのに対し、伝道師ってのはわかりやすく解説してくれる存在だったそうです。当然、そこには話芸だとかのスキルが要求されるわけで、それが上記のメソッドを向上させてくことになったんだとか。まあ、テレビのコメンテーターで学者先生が出てきて難しい説明をされるより、わかりやすく説明してくれる”池上解説”みたいなもんかと
 教会の説教をするには教会の地位だとか学歴だとかがうんぬんされてた時代にあって、それを打ち破り、学歴関係なし、舌先三寸で大衆をその気にさせるってのは、既存の教会側から見るとさぞいやな存在だったんでしょうなぁ・・・

〔信仰は、この世の成功を保証してくれる〕
 ”幸福の神義論”ってのを初めて聞いたんですが、これは自分が幸福なのは偶然ではなく正当な根拠があるという考え方。単に偶然から今の幸福を手に入れたのなら、偶然でその幸福を失うことになるかもしれないから、それはなんかの根拠を欲しがることになります(この裏返しが”不幸の神義論”)で、この根拠に”神の祝福”という補助線が見えてくると。
 本書での20世紀以降の”リバイバリズム(信仰復興運動)”のレトリックってのが

  ビジネスで成功したければ、しっかりした信仰を持ちなさい
  それがあたなを道徳的にし、人格的にし、そして金持ちにしてくれる

まあ、神社に参拝に行けば必ず”神様へのお願い”をする日本人が偉そうに言えた筋合いではないんですが、ここまで直球勝負されるとなぁ

 本書のエピローグで、アメリカで反知性主義が先鋭化していったのは反知性主義が”社会のチェック機能”を果たしていたこと、”キリスト教の土着化”とその結果としての”宗教と道徳の単純なまでの同一視”なんてことが書いてあります。
 まあ、中世以来のプロテスタントのアンチとしてプロテスタントが生まれ、その中での先鋭のピューリタンがアメリカに渡り、そのアンチとしてリバイバリズムが何度も盛り上がりといったことをやっているのがアメリカの精神史のベースにあるようです。

 この手の分野にあんまし造詣が深くないんで、うまくご紹介できてないんで、詳しくはご一読ください。アメリカでのキリスト教史というより、ビジネス的なメソッドも含めたキリスト教の布教史として読んでも楽しめます。


《脚注》
(*1)超・反知性主義入門(小田嶋隆、日経BP社)
 ”日経ビジネスオンライン”に連載中のコラムが、1冊の本まとめてみると”反知性主義”をめぐる論考になっていたというきわめていいかげんな本。”反知性主義入門”って表題ですが、決して真面目な哲学書だと思って読んじゃいけません。が、面白いんだな~~ これが。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)巡回伝道師ってあまりなじみはないですが
 昔は自転車に乗って走り回る外人伝道師ってのをたまに見かけましたが、最近はみないですなぁ。いったいどこへ行っちゃったんでしょうか?
(*3)池上解説
 ジャーナリストというより、テレビの”池上解説”のほうがイメージある池上彰ですが、元々はNHKの記者で大学の先生出身ではありません(現在は東京工業大学他の教授)
 wikipedia読んで初めて知ったんですが、この人がNHKを辞めた理由が、解説委員を希望していたのに解説委員長から”解説委員というのはある専門分野をもっていなきゃいけない。お前には専門分野がないだろう”と言われたからだとか。この人もどうやら”反知性主義”の人らしいです。

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