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イノベーションを推進したいなら、ある程度のコピーは許容する必要がありそうです(パクリ経済学/梅もどき)

 ども、昔は三浦友和に似ていると言われたこともあるおぢさん、たいちろ~です。
 まあ、”○○に似ている”ってのはけっこう主観的なモンですし、それがビジネスにどう反映されているかってのは、かなりビミョ~な問題です。たとえばですが、某テレビドラマでAKB48が歌ってる”365日の紙飛行機(*1)”って、最初に聴いた時に三輪車の”水色の街”(*2)に雰囲気が似てるな~って感じました。大切なことなのでもう一回言います。別に秋元康がパクったとかさらさら言うつもりはなくって、ただ個人的に似てるって感じただけです。だいたい、40年も前にちょっと流行ったフォークソングに似てると言われても秋元康にしてみりゃ”そんな昔の話を今更蒸し返されても・・・”って感じでしょうし、歌ってるAKB48にしてみりゃ”そんな生まれる前の話されたって、うちら知らんやん!”ってとこでしょう。
 ことほどさように、似てるかどうかって感じ方の問題の部分も大きいでしょうし、ビジネスで”パクったかどうか”なんて軽々に判断できるもんじゃありません
 ということで、今回ご紹介するのはそんな”パクリ”と”イノベーション”を扱った本”パクリ経済学”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。近所で見かけた梅モドキです

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【本】パクリ経済学
 (カル・ラウスティアラ、クリストファー・スプリグマン、みすず書房)
 サブタイトルが”コピーはイノベーションを刺激する”とあるように、”コピーは創造性を殺す”とか”法律によるコピー規制がイノベーションには不可欠”といった意見に対し、コピーは創造性の役に立つこともあるということをファッション、レストラン、オープンソース・ソフトウェアなどの例を引きながら説明した本。目からうろこの内容です。(決して安易なデッドコピーを擁護しているんではないです。念のため)
【花】梅もどき(梅擬)
 モチノキ科モチノキ属の落葉低木。名前は葉や花が梅に似ているからだとか。漢字の”擬(まがい、もどき)”は本物らしく似せる、なぞらえるといった意味で”擬音、擬勢、擬態”などの熟語に使われるもの。本人(本樹?)にとっちゃ、いい迷惑なネーミングだろ~な~
 ちなみに、”梅”はバラ科サクラ属の落葉高木です。

 本書ではイノベーションとイミテーションの教訓を結論の章で6つにまとめてます

 ①トレンドと流行はある産業では大きな役割を果たす
  ファッション業界ではコピーに関する従来の考えを完全にひっくり返すことがある
 ②法的措置が非実用的な産業でも、社会規範によってコピーは抑制される
 ③いくつかの産業では知的財産を製品ではなくパフォーマンスと再定義することで
  コピーの悪影響を鈍らせる
 ④ある産業ではイノベーションのコストを下げるオープンソース方式の持つ力を
  重視してイノベーションを増やしている
 ⑤先行者優位性はコピーされても十分な価値を一部の生産者に与えることで
  イノベーションが十分な利益をもたらす
 ⑥コピーはブランドを宣伝する役割も果たす

 かなりはしょった引用をしているので、正確には本書を読んでみてください。

 こんだけ読んでるとコピーされる側から見ると”はいわかりました”と言える内容ではない感じでしょうが、本書を読んだ感想では、これって”ミクロ(オリジナルを作った個人や企業)”と”マクロ(マーケット全体)”でどのような価値評価をするかってとこの考え方でしょうか。
 コピーを法的に禁止するのは

  自分のアイデアが他人にコピーされるとわかっていれば
  クリエイターは創造しなくなってしまう
  コピーによって独創性が駆逐されないためには、コピーの規制が必要だ

   (イノベーションの独占理論

 ぶっちゃけ、簡単にコピーされるとクリエイターは儲からなくなる(想定利益よりも下がる)ので、ダメだってことです。ところが本書では、オリジナルのコピーを許容することで、マーケット全体の繁栄をもたらすことで結果としての創造者にも利益増大が図れるということをいくつかの産業の例をあげて説明しています。
 ただし、コピーをされても差別化できるようなクオリティを確保するとか、それに合わせた体制といった障壁を造るとかの対応が必要だとも。

 このへんで面白かったのはオープンソースソフトウェアをめぐる話。オープンソフトってソースコード(プログラム)がすべて公開されていて、それを改造することも自由。本書っぽく言うと”改変屋”がよってたかってレベルアップするってシロモノ。それって単純なコピーとかじゃなく、ましてやパクリ、もどき、まがいモン、パチモンとかでもなく立派な創造行為。しかも無料ででっせ、お客さん! てなモンです。
 まあ、このへんの話って”オリジナルって何?”、”オリジナルを規定するものって何?”ってのもからんできそう。本書でも、ミ○キー・マ○スも、アップルも、ロ○オとジ○リエ○トもみ~んな過去にあったものを何かしか模倣して改良したものだと。確かに言われてみりゃそうだよなぁ。

  完全に新しい創造物がほとんどないなら、
  コピーを禁じる法律はイノベーションに拍車をかけると同時に
  それを阻むことになる

  (”はじめに”より)

 もうひとつ面白かったのは、イノベーションそのものがマクロ(マーケット)に繁栄をもたらしても、ミクロ、つまり全てのステークホルダーに繁栄をもたらすとはかぎんないということ。このへんの話はエピローグの”音楽の未来”の章が秀逸。コピー論争で音楽業界が”ナップスター(*3)”と著作権侵害でどたばたやっている間に、アップルの”iTunes”にいいようにやられただとか、音楽業界が”質”の向上を怠ってるとか、ミュージシャンがレコード販売からコンサートに収入源をシフトさせてるとか。
 このへんって、イノベーションによる産業構造のシフトってのがよくわかります

 まあ、内容自体はけっこうビミョ~な話だし、ステークホルダーにとっては深刻な話なんで、一度ちゃんと読んどいたほうがいいかも。ヒステリックに”コピー禁止!!”って叫ぶだけでは問題は解決しないってことです。

〔余談1〕
 TPP(環太平洋経済連携協定)で二次創作の同人誌が原則対象外となったことに対するゆうきまさみのインタビューから(2016年2月24日 朝日新聞朝刊より)

  僕の商業誌デビュー作はアニメの二次創作漫画だったが、
  元となったオリジナル作品の作成会社は黙認してくれた
  あの時期がなかったら今の自分はない
(*4)

〔余談2〕
 ディズニーアニメの”ライオンキング”が手塚治虫の”ジャングル大帝”に似ているといって騒ぎになった時の、手塚プロダクションの声明

  もし手塚本人が生きていたら、
  『自分の作品がディズニーに影響を与えたというのなら光栄だ』と語っただろう

 大人のクリエイターの対応とは、こうありたいものです。

《脚注》
(*1)365日の紙飛行機
 作詞 秋元康、作曲 角野寿和、青葉紘季、センターポジション 山本彩
 音楽を聴きたい方はこちらからどうぞ
(*2)水色の街
 1974年にデビューしたフォークグループ”三輪車”のデビュー曲。
 作詞・作曲 山崎稔。音楽を聴きたい方はこちらからどうぞ
(*3)ナップスター(Napster)
 音楽ファイル共有ソフト”ナップスター”を使った音楽配信サービス会社のこと。
 1999年に彗星のごとく登場し、音楽サービスを一変させかけましたが、音楽業界と著作権で対立し2003年に倒産。和解案でナップスターを月額有料サービスに切り替える案があったそうで、そんとき音楽業界がこれを飲んでいればその後にジョブズにマーケットの支配権を握られなかっただろうというのが本書の見解。
(*4)僕の商業誌デビュー作はアニメの二次創作漫画だったが~
 アニメの二次創作がまだ”アニパロ(アニメのパロディ)”と呼ばれていた話です。”ゆうきまさみ初期作品集”(ゆうきまさみ、KADOKAWA)で読めますので、ご興味のある方はどうぞ。


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