”文豪”の名前でビビらずに手を出してもぜんぜん大丈夫です(文豪ストレイドッグス/横浜の風景)
ども、こんなブログを書いてますが実態は真面目なおぢさん、たいちろ~です。
文学であれ、音楽であれそれを作っている人と作品が同じような感じである場合と、まったく違う場合ってのがあります。まあ、まったく同じだったら、推理小説家は全員殺人嗜好の持ち主だし、恋愛小説家はみんな夢見る乙女かドロドロの恋愛マニアってことになります。おぢさん世代で違ってる例の代表格といえばだ年末にはぐっとくる”中島みゆき”でしょうか?(*1) フォークソングの中に演歌的な情念の世界を、ぶっちゃけ暗い曲を作る人ですが、”中島みゆきのオールナイトニッポン(*2)”での喋りをリアルタイムで聞いてた世代としては”同じ人かい?!”と思っちゃうぐらい落差の激しい人です。
まあ、作品と作家のイメージってのはそれが実像であれ虚像であれなにがしかあるもんです。じゃあ、そんなイメージだけでキャラクター設定して物語をつくったらどうなるか???
ということで、今回ご紹介するのは文豪のイメージを持つキャラクターが縦横無尽に暴れまわる漫画”文豪ストレイドッグス”であります
写真はたいちろ~さんの撮影。舞台になっている横浜の風景
【本】文豪ストレイドッグス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川書店)
”中島敦”は溺れかかっている”太宰治”を助けたことにより”武装探偵社”に就職することになる。そこは”異能者”と呼ばれる人間の集団。”中島敦”もまた”月下獣=虎に変身する”異能者だった。
対立する”森?外”率いる”ポートマフィア”の”芥川龍之介”や”中原中也”との戦いは激化し、さらにはアメリカの異能者集団”ギルド”が参戦。戦いは三つ巴となる・・・
【旅行】横浜の風景
エキゾチックでファッショナブルな街、横浜。横浜ランドマークタワーやパシフィコ横浜、インターコンチネンタルホテルなどの近代的なビル群と観光スポットにも恵まれ、”住みたい街ランキング 第1位”に輝くなど、前回書いた”埼玉”とは対極にある街(*3)です。
”文豪ストレイドッグス”第9巻は、異能者”メルヴィル”の生み出した”白鯨”を落下させることで横浜の街を壊滅さようとするギルドに対して、武装探偵社”中島敦”がポートマフィアの”芥川龍之介”とともにその陰謀を阻止するという話です。
”どこの誰かは知ってるけれど、誰もが作品読んでない♪”な文豪ですが、なまじ知名度が高いだけに、固定したイメージを持ってることが多いかと。おおまかに言うと
根っから暗そうな人 : 芥川龍之介、太宰治
おどろおどろな人 : 泉鏡花、江戸川乱歩
真面目そうな人 : 宮沢賢治、福沢諭吉
なんとなくスケベ? : 森鴎外、谷崎潤一郎
一方的なイメージなんで、ファンの方はご勘弁を。
まあ、たいがい本好きな私ですが、これらの文豪の作品をたくさん読んでるわけではないです。この手の文豪ってのは教科書に載ってるとか、試験に出るからという理由で知ってるだけで、まじめに作品を読んでた日にゃ時間がいくらあっても足らないですし(*4)。
でもまあ、イメージが突っ走ってる文豪なんで、彼らをキャラクターにすりゃ面白そうなのは確か。実際にこの本ができたきっかけってのも
文豪がイケメン化して能力バトルをしたら絵になるじゃないかと、編集と盛り上がったから
(第一巻 後書 より)
文豪をネタに遊んじゃおうみたいなノリでしょうか? ですんで本書に文芸の香りのするうんぬんとか、日本の近代文学の夜明けがかんぬんとかを期待しちゃダメです。
本書に登場する文豪たちについていくつか
〔中島敦〕
本編の主人公。孤児院で虐待された暗い過去を持つ少年。虎に変身する”月下獣”ってのは、”山月記”から。たしか教科書で読んだんだったかな~~ この作品をモチーフにした”変身忍者嵐(石ノ森章太郎、講談社他)”の第9話”虎落笛の遠い夏”ってのがありますが、実はそっちのほうが印象深かったりして。
中島敦ってどっちかというと暗い系の印象ありますが、”よちよち文藝部(久世番子、文藝春秋)”によるとご本人はけっこうモテた人みたいです。
〔芥川龍之介〕
ポートマフィアの構成員にして冷酷非情な中島敦のライバル。外套を”黒獣”という攻撃手段に変える”羅生門”の異能の持ち主。教科書なんかで良く見る写真に”将来に対する唯ぼんやりした不安”という理由で自殺したこともあって”暗い人ランキング”の上位の人ですが、本書ではいたって攻撃的。でも、太宰治に認められることが行動原理というボーイズ・ラブ系の人には美味しそうなキャラ設定になってます
〔太宰治〕
青森のフォースのダークサイドを背負って立つような”暗い人ランキング”上位の人。自殺マニアという点は本書でも引き継がれています。武装探偵社でもトップクラスの戦闘力になかなか策士な部分も持っている影の主人公。中原中也との掛け合い漫才が秀逸。きっと”攻め”の人なんだろうな~~
〔中原中也〕
本書ではポートマフィアトップクラスの戦闘力を持にながら、太宰治のいじられキャラという残念な人になってます。本人の代表作は”汚れっちまった悲しみに”。詩集ではなく、中村雅俊の歌で知りました。すいません。
〔泉鏡花〕
剣の達人の女性の幻影を使役する”夜叉白雪”の異能者。がんばれ、鏡花ちゃん!と応援したくなるような薄幸の美少女ですが実物は男の人です。本人何作か読みましたが、一種独特の美意識とおどろおろどしさは秀逸です。
〔与謝野晶子〕
ボブカットが良く似合う武装探偵社の美女。”君死給勿(きみしにたもうことなかれ)”というヒーリング系魔法を使う異能者。ただ瀕死の重傷にしか効かないので普通のケガでも半殺しの目にあわせるという物騒なお方。
代表作の”みだれ髪”には俵万智による”チョコレート語訳 みだれ髪”ってのもありますので、読みやすいほうがよければそちらもどうぞ
〔森鴎外〕
本人は軍医総監(中将相当)といういかめしい経歴の持ち主。本書では元医師のポートマフィア首領ですが、今のところは単なるロリコン親父です。
〔モンゴメリ〕
児童文学の最高峰”赤毛のアンシリーズ”の作者。でも本書では原作と扱いがもっとギャップの激しい人でしょうか。ノリがほとんど”まどか☆マギカ”だもんで・・(*5)
どうも、”文豪”には明るいキャラってあわないんでしょうか?
〔ラヴクラフト〕
本人は”クトゥルフ神話”というモダンホラーの創始者。ご本人の写真を見てもなんだか不気味だなぁ(ファンの方すいません)。
本書では不死身の肉体の持ち主がならなんだかわからない人の代表。太宰治からは”あれは異能じゃないんだ”と言われ、仲間からも”結局彼は何者なんだろうか?”と突っ込まれる異形の人。
この人が”君はどうするの?”と聞かれて、海の中に去っていく時の一言”・・・寝る”のモトネタはたぶんこれ
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん(*6)
まあ、いずれ劣らぬユニークなキャラクターぞろい。ここに書き切れないキャラも多数登場しています。オリジナルの文豪をそんなに知らなくても(私だってそんなに知ってるワケじゃないですし)、充分楽しめる作品。”文豪”の名前でビビらずに手を出してもぜんぜん大丈夫です。
《脚注》
(*1)年末にはぐっとくる”中島みゆき”~
サントリー”BOSS"のCM”ヘッドライト・テールライト篇”より。見てみたい人はこちらをどうぞ
(*2)中島みゆきのオールナイトニッポン
1979~87年まで放送されたニッポン放送の深夜番組。ちょうど受験のころと重なってたんでよく聴きましたな~~ これがまた面白いのなんのって。おかげで勉強ぜんぜんできませんでしたが。
(*3)”埼玉”とは対極にある街
”翔んで埼玉(魔夜峰央、宝島社)”のネタ。詳しくは”埼玉ディスは歴史の産物か?、はたまた人間の業なのか?”をご参照ください。
(*4)時間がいくらあっても足らないですし
森鴎外全集(岩波書店)全38巻、江戸川乱歩全集(光文社)全30巻、谷崎潤一郎全集(中央公論) 全26巻、芥川龍之介全集(岩波書店)全24巻、宮沢賢治全集(筑摩書房)全19巻、太宰治全集(筑摩書房)全13巻 てな感じ。
まあ、代表作だけでも読んどきたいモンです。
(*5)ノリがほとんど”まどか☆マギカ”だもんで・・
”魔法少女まどか☆マギカ(監督 新房昭之、アニプレックス)”のこと。彼女の異能”深淵の赤毛のアン”での鬼ごっこって”まどか☆マギカ”の一種異様な魔女空間での戦いを彷彿とさせます。
(*6)ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう~
死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり
という意味。知っててもなんの役にも立たない知識ですが。
最近のコメント