« 2015年1月11日 - 2015年1月17日 | トップページ | 2015年1月25日 - 2015年1月31日 »

2015年1月18日 - 2015年1月24日

暴走族がチキンレースやるのとあんまし変わんないですね、賭け金が人類滅亡というだけで(人類危機の十三日間/U-2高高度偵察機)

 ども、現代国際史は苦手なおぢさん、たいちろ~です。
 年末も押し迫った2014年12月18日、アメリカとキューバの交正常化交渉が開始されたってニュースが流れました。このニュースを聞いた第一印象って”まだ、国交がなかったん!?”です。確かキューバ危機のころって、キューバはフィデル・カストロ首相、アメリカ大統領ってジョン・F・ケネディじゃなかったっけ?(*1)
 なんでも53年間、両国は国交を断絶してたとのことで、交渉は始まったものの一足飛びにシャンシャンってわけにはいかないようですが、まあ平和に向けた第一歩ってことで喜ばしいことです。交渉の主役はアメリカはオバマ大統領、キューバはラウル・カストロ国家評議会議長と歴史のギャップを感じさせる組み合わせではあります(*2)。
 ということで、今回ご紹介するのは国交断絶をしたころ=”キューバ危機”の本”人類危機の十三日間”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
2012年横田基地の”日米友好祭”で飛行したU-2高高度偵察機です

U2


【本】人類危機の十三日間(ジョン・サマヴィル、岩波新書)
 キューバ革命により親ソビエト連邦の国家となったキューバ。アメリカのU-2偵察機はソ連の協力によりミサイル基地が建設されているとの情報を得る。アメリカはこれを阻止すべく海上封鎖を実施、ソ連との核戦争も辞さずとの覚悟で外交交渉を行う・・
 サブタイトルに”キューバをめぐるドラマ”とあるように、キューバを挟んで対峙するアメリカvsソ連の全面核戦争の危機を孕んだ国家のトップ達の行動を描いた戯曲。
【乗り物】U-2高高度偵察機
 ロッキード社が開発したスパイ用の高高度偵察機。キューバやソ連、中国なんかを監視してた飛行機です。初飛行は1955年(*3)ながら現在でも現役で飛行しています。”ドラゴンレディ”というかわいいんだかかわいくないんだかわからん愛称で呼ばれていますが、高度25,000mと成層圏を飛行し、偵察用の特殊なカメラを積み、共産圏の弾道ミサイル配備状況などの機密情報を撮影したというスグレモノです。


 歴史上の順序で並べてみると

  

1959年 キューバ革命、フィデル・カストロ首相に就任 (岸信介)
  1961年 ジョン・F・ケネディ大統領に就任 (池田勇人)
  1962年 キューバ危機 (池田勇人)
  1963年 ジョン・F・ケネディ暗殺事件 (池田勇人)
  1974年 ”人類危機の十三日間”が書かれる (田中角栄→三木武夫)
  1975年 ”人類危機の十三日間”日本語版発刊 (三木武夫)
  2008年 ラウル・カストロ首相に就任 (福田康夫→麻生太郎)
  2009年 バラク・オバマ大統領に就任 (麻生太郎→鳩山由紀夫)
  2014年 アメリカ・キューバの交正常化交渉開始を発表 (安倍晋三)

 カッコ内は当時の内閣総理大臣ですが、こうやって眺めてみるとホントに歴史の世界だな~~ しかし、たった50年ちょっと前に人類滅亡の瀬戸際まで行ってて、さらにその関係修復が現在まで引きずってるってのも驚きです。

 本書の内容はというと、キューバにミサイル基地が建設されていることを知ったアメリカ大統領と国家安全保障会議執行委員会(Ex Com. エクス・コム)は、その背後にあるソ連に対しミサイル基地の破壊を要求、キューバを海上封鎖した上で要求が受け入れられなければソ連との核戦争の突入を覚悟する。ソ連は要求を呑むのであれば同じくトルコ、イタリアに配備されているミサイルの撤去を要求する。このミサイルはすでに時代遅れで、アメリカ自身が撤去を考えていたが、”脅しに屈した”ことになることを嫌ったアメリカはこれを拒否する最後通牒を送る。ソ連はアメリカの要求を受諾し、戦争はぎりぎりの所で回避される。
 ネタバレになりますが(後から言うな!)、これはほぼ史実に基づいたお話です。本書の中で大統領他のセリフはロバート・ケネディの報告書などから引用されたもの。実際にあったことをストーリー仕立てにしたもんなんですな。

 このデキゴトについて作者のサマヴィル教授が指摘しているきわめてユニークな点は

  その決定を行った人たちは、
  この最後通牒にソ連政府が同意するなどどは毛頭期待せず、
  また、戦争がもたらす結果についても、はっきり知っていたにもかかわらず、
  なおそれをやったこということである。
  言葉をかえていえば、決定を行った人々の明らかに予見していたことは、
  おそらくソ連は抗戦するであろうし、
  またその戦争が、必ずや世界規模での核戦争となり、
  人類は事実上抹殺し去られるだろうとの見通しであった

 引用が長くなりましたが、つまり暴走族がチキンレースやるのとあんまし変わんないですね、賭け金が人類滅亡というだけで(*4)。印象としては、ゲームを下りたソ連のほうが大人の対応って感じがしますが。

 なぜ、このようなことになったのかってのは、ハーバード大学のインターン生”スティーブ”が解説してくれています。
 ソ連が崩壊し、唯一の超大国アメリカと多極化する民族紛争を見ている今の若い人にはわかりにくいかもしれませんが、当時はアメリカ=資本主義陣営の盟主とソ連=共産主義陣営の盟主の二大超大国による冷戦の時代。両国が自らのイデオロギーと国家の覇権をかけて(*5)戦っていたということを踏まえて、下記の文章を。

  わが国以外の以外の政府は、すべてわれわれに向かって頭を下げ、
  われわれこそは優越者であることを認めさせる、
  それがさもわれわれの義務か責任(中略)であるかのように感じだしてくるんだな

  大事なことは、われわれがソ連に対してしたように、
  ソ連もまたわれわれに対して振舞ったという、そのことなんだよ。
  つまり、対等のものとして振舞ったことなんだ

  資本主義者ってのはね、共産主義者の中に中に、
  ただその競争者を見るだけじゃない、敵、
  つまり、資本主義者の生き方そのものをおびやかす敵として、これを見るんだね

  あらゆる善なるものーー文明、文化、宗教、道徳、そして全能なる神に対する、
  公敵第一号ってわけだよ


  そんな公敵を生かしておくぐらいなら、むしろみんなともに死ぬべし、
  ってような議論が、正論みたいになるんだな

 どうも今回は引用が多くてすいません。でも、これ以上にうまくまとめられないほど端的に指摘してるんですな、人類の愚かさってやつを。

 ”人類危機の十三日間”の作者サマヴィル教授は哲学者、平和思想家としては有名な人だったそうですが、本書はあえて”戯曲”というセミ・ドキュメンタリーの形式をとっています。たぶん、小難しい学術書にするより池上彰ライクな解説をしてくれる”スティーブ”を登場させたかったからでしょうか? だとしたらとっても成功していると思います。当然絶版のようですが、図書館ならあると思いますのでぜひご一読のほどを


《脚注》
(*1)キューバはフィデル・カストロ首相、アメリカ大統領って~
フィデル・カストロ
 キューバ革命(1959年)によりバティスタ政権を打倒した第14代首相。1965~2011年にキューバ共産党中央委員会第一書記、1976~2008年に国家評議会議長(国家元首)兼閣僚評議会議長(首相)とほほ半世紀に渡る超長期政権。歴史上の人物かと思っていましたが、まだご存命です。
ジョン・F・ケネディ
 いまだに絶大な人気を誇る第35代アメリカ合衆国大統領。在任期間は1961年1月20日からダラスで暗殺された1963年11月22日の2年10ケ月と意外に短命。その割にはベトナム戦争にキューバ危機にアポロ計画に部分的核実験禁止条約にと戦後国際政治に大きな影響を与えた人であります
(*2)アメリカはオバマ大統領、キューバはラウル・カストロ国家評議会議長と~
バラク・オバマ
 アフリカ系として史上初の大統領として絶大な人気を誇った第44代アメリカ合衆国大統領。ケネディーから数えて15人目の大統領になります。就任は2009年、誕生は1961年でキューバ革命なんて生まれる前の話です。
ラウル・カストロ
 2008年にフィデル・カストロの退任に伴い、国家評議会議長(国家元首)兼閣僚評議会議長(首相)に就任したフィデル・カストロの弟さん。お兄さんとともにキューバ革命を指導したという人です。
(*3)初飛行は1955年
 1955年というのは東京通信工業(現ソニー)が日本初のトランジスタラジオ”TR-55”を発売した年でもあります。軍事組織というのがいかに物持ちがいいかというのがわかります。
(*4)暴走族がチキンレースやるのとあんまし変わんないですね~
 チキンレースというのは、例えば2人の暴走族が崖に向かってバイクを走らせ、先にブレーキを踏んだ方が負け(チキン=臆病者)というゲーム。wikipediaにゲームの理論としての解説が載ってますので、ご興味あればそちらもどうぞ
(*5)イデオロギーと国家の覇権をかけて
 マルクス主義では、資本主義の矛盾が増大して社会革命が起こってプロレタリア独裁を経て共産主義社会(国家・軍隊・戦争のない世界)が生まれるって考え方があります。つまり共産主義に移行していくのは歴史の必然で、アメリカはまだ進化の過程でソ連のが進んでいるから自らの陣門に降るのが正しいってとこでしょうか

« 2015年1月11日 - 2015年1月17日 | トップページ | 2015年1月25日 - 2015年1月31日 »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ