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2015年4月19日 - 2015年4月25日

”傾向と対策”、赤本もあります。宇宙戦争試験の話ですが(宇宙軍士官学校 -前哨-/赤本)

 ども、今更テストなんて勘弁して欲しいな~~と思っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日、娘が”基本情報処理技術者試験(*1)”を受験しにいってました。懐かしいな~、以前受けさせられたんだよな、これ。なんだか上のほうの人が”営業職も、技術者試験ぐらい持って泣いちゃなくちゃいかん!”みたいなノリがあって。まあ、合格はしたんですが、別に給料が上がるわけでなく、仕事に役に立つわけでなく、いったい何のために受けたんでしょうねぇ。まあ、こんなことでもない限り、勉強なんかせんわけですが、社会人って・・
 テストといっても、受かろうが受かるまいがあんまし人生に影響がなければ笑い話ですみますが、これが人類存亡をかけた試験となれば話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは人類生き残りの優先順位を賭けた戦いに挑む若者達のお話、”宇宙軍士官学校 -前哨-”の第6巻であります。

写真はたいちろ~さんの撮影
近所の本屋さんにあった”赤本”です。


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【本】宇宙軍士官学校 -前哨-(鷹見一幸、ハヤカワ文庫)
 宇宙軍士官学校訓練生、有坂恵一やバーツたちは、上位の異星人”ケイローン”の課す”魂の試練”に臨むことになる。この試験で優秀な成績を収めれば人類に対し優先的に軍事物資や援軍を得ることになるがそうでなければ、人類を滅ぼそうとする”粛清者”に対して充分な対応が取れない危機に陥る。有坂たちは人類の存亡を賭けて戦いの場に臨む・・・(第6巻より)
【本】赤本
 教学社が発行している、大学・学部別の大学入試過去問題集。ほとんど”過去問題集”の代名詞とでも言いましょうか。正式名称は”大学入試シリーズ”というそうです。
 上記の写真をとりに30数年ぶりに本屋さんで高校生向けの本棚を見たんですが昔とはさまがわりしてますな。”チャート式”(数研出版)は健在でしたが、”傾向と対策”(旺文社)は見当たらず。逆に増えているのが”マドンナ先生の古文”みたいな著者が前面に出ているタイプ林修じゃないですが(*2)、そんだけ先生がブランド化してるんでしょうなぁ。昔は”赤尾の豆単(*3)”ぐらいしかなかったような気がするんですが・・


 上記のように何の役にもたたない例もありますが、多かれ少なかれ試験というのは人生の行く先を左右するモンです。入試に合格しなければ希望の大学には入れないですし、医師国家試験や司法試験に通らなければ医者や弁護士になれないですし。実力試しの”TOEIC(*4)”にしても、私んとこの会社では500点以上取れないとか課長になれません(誰が決めたんだ、この制度!)
 まあ、受かるか滑るかは本人次第、その結果は本人に返ってくるだけでしょうが、それが人類の存亡にかかわるとなれば話はちょっと大ごと。本書に登場する有坂恵一たちは、まさにそんな状況です。どんな状況かというと、”粛清者”というわけのわかんない敵が攻めてきて、迎え撃つ地球を含む銀河文明評議会ってのは膨大な戦力を持ってはいるものの守るべき星系が大すぎて、リソースを適正に配分する必要がある。そのため、守る星系の優先順位を決めるテストってのが”魂の試練”ってことになります。これは3回に渡って行われ、1つめが”団体白兵戦”、2つめが”機動戦闘艇戦闘”、3つめが”艦隊機動戦”。ただし、すべて宇宙空間でですが。

 で、有坂恵一や副官のバーツたちはこの試練に対してやったのが”傾向と対策”。二人のテストに対する会話。

  有坂 :だから、やるべきことを大きく二つに分けた。”傾向”と”対策”だ
  バーツ:カレッジの入試を受けるのと同じ、ということか
  有坂 :試験も試練も、おれたちの前に示された課題、という点に変わりはない
      人生のあらゆる問題も、実際のところ”傾向”を判断して
      前例を調べ、”対策”を練ることで解決できることが多いはずだ

まあ、そのとおりなんでしょうな。”傾向”については、前例を調べるってことで過去問題の分析。さすがに赤本はないですが、もっと進んでバーチャルリアリティもどきの過去映像を閲覧できるってしろもの。これがまたなかなかドラマチックだったりするんですな。この映像ってのがケイローンにとって最高のエンタテインメントになっているのもうなずけます。

  有坂 :考えても見ろ、本物だぞ? 本当に命を賭けているんだ。
      死ぬか生きるか、そのギリギリで戦い続ける姿を見ることができるんだ
      ケイローンの人々にとって、これほどの娯楽はない
      俺達は剣闘士(グラディエーター)なんだ・・・
  バーツ:俺たちは・・・ 見世物だと言うのか?

       (中略)
  有坂 :そして・・・ これほど、おもしろい見世物(ショウ)もないだろう

やってる方から見りゃ不謹慎だと思うんでしょが、見てる方から見りゃりっぱなショー。湾岸戦争をテレビで見てドキドキしてた人にゃ文句をいう筋合いじゃないんだろ~な~(*5) だいたい今の”ビリギャルブーム(*6)”や”ドラゴン桜(*7)”みたいに地味の代表みたいな受験勉強ですらエンタテインメントにしちゃうんだから、結局”戦い”って他人から見りゃ見世物なんでしょうねぇ

  闘う君の唄を、闘わない奴等が笑うだろう ファイト!(*8)

ま、世の中そんなもんです

《脚注》
(*1)基本情報処理技術者試験
 情報処理推進機構(IPA)が実施するコンピューター技術者向けのテスト。おおむねリーダの下でシステム開発ができるレベルが要求されてますが、別にこれに受からなかったからといって開発ができないっつ~わけではありません。ちなみに合格率は20数%程度です。
(*2)林修じゃないですが
 林修は東進ハイスクールの現代文の先生。同校のCMでブレイクして、今やインテリタレントです。CM見てるとビジュアル的には物理担当の苑田尚之先生のほうが存在感あるんですが、この人見てると、AVで女優さん縛ってる人っぽいのがブレイクしなかった理由かなぁ・・・(関係者の方、すいません)
(*3)赤尾の豆単
 正式名称は”英語基本単語集”ですが、ちっちゃい=豆な単語集なので通称”豆単”。入試時代はお世話になりました。”赤尾”は旺文社の創設者にしてこの本の著者である”赤尾好夫”から。入手は可能なようですが、1995年以来改訂されていない?!
(*4)TOEIC
 ”国際コミュニケーション英語能力テスト(Test of English for International Communication)”の略。
 500点というのは、Cランクの”日常生活のニーズに対応できるレベル。限られた範囲内では業務上のコミュニケーションも出来る。(470~725点)”の最低ラインってとこみたいです。
(*5)湾岸戦争をテレビで見て~
 湾岸戦争は1990年にイラクがクウェートに侵攻したことを発端に、国連多国籍軍とイラクの間で勃発した戦争。当時、アメリカのニュース専門放送局”CNN”が空襲の様子を生中継して、世界中で見てました。
(*6)ビリギャルブーム
 ”学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話”(坪田信貴 、KADOKAWA)が大ヒット、有村架純主演で映画化。学校で最低レベルのビリギャルが慶応大学に現役合格するって話らしいです。読んでないけど。
 日本人って、ホントのこう言った立身出世モノって好きだな~~
(*7)ドラゴン桜(三田紀房、講談社)
 経営破綻状態となった落ちこぼれ高校を救済するため、弁護士”桜木建二”が成績最低の高校生を現役で東京大学に合格させるという話(構図はビリギャルと同じ?!)。こっちは読みました。
 それっぽい受験メソッドてんこ盛りでこれを読んだせいか東大受験希望者が増えたそうです。そんだけで合格できるほど甘くないと思うんだがなぁ
(*8)闘う君の唄を~
 1994年のヒット曲” ファイト!(作詞・作曲: 中島みゆき)”の一節。なぜか中島みゆき版がなかったので、福山雅治カバーはこちらをどうぞ
調べて初めて知ったんですが、この曲と両A面だったのが”テレビドラマ”家なき子”の主題歌”空と君のあいだに”。当時名子役だった主演の安達祐実は今やお母さん役なんだから年をとるはずです。


患者の健康のみならず、推理小説にも調和が必要なようで(石の猿/石猿)

 ども、あいかわらずジェフリー ディーヴァーにはまっているおぢさん、たいちろ~です。
 最近の中国と言えば、世界第二位の経済大国になっただの、アジアインフラ投資銀行(*1)を立ち上げるだの経済的に元気いっぱい。でもちょっと前までは中国からの難民だの、政治的弾圧だの(*2)やってました。それを考えると隔世の感がありますなぁ。まあ、最近この手の話題は北○鮮が一手に引き受けてる感もありますが・・・
 ということで、今回ご紹介するのはそんな中国難民をめぐっての警察小説、リンカーン・ライムシリーズの第4作”石の猿”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
神戸南京町にある猿の石像です

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【本】石の猿(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 中国の難民船がニューヨーク州沖で沈没、この船に乗船していた蛇頭の殺し屋、通称”ゴースト”は自分の犯罪の証人である生き延びた10人の難民を追って動き出す。一方、事件の解決を図る移民帰化局、FBI、ニューヨーク市警らは科学捜査の天才”リンカーン・ライム”とともにゴーストの捜査を行う。顔さえ不明なゴーストと行方知れずの難民の行方は・・・
【動物】石猿
 石から生まれた猿と言えば”西遊記”に登場する”孫悟空”。今の人なら”ドラゴンボール”なんでしょうか。先日、愛川欽也さんがお亡くなりになった時に”いなかっぺ大将(*3)”つながりで悟空の声を演じた野沢雅子さんがコメントしていましたが、愛川欽也さんは”悟空の大冒険(*4)”で沙悟浄の声も演じておられました。
 謹んで、故人のご冥福をお祈りいたします。


 第四作になるリンカーン・ライムシリーズですが、四肢麻痺の科学捜査官”リンカーン・ライム”と美貌のその片腕”アメリア・サックス”の活躍は相変わらずですが、本作で一番印象に残ったのは中国の公安局刑事”ソニー・リー”です。ネタバレになりますが(*5)、潜入捜査官なのに初登場シーンは難民船でゲロゲロやってるだけだし、命からがら海岸にたどり着くなり、サックスの車から金はくすねるわ、証拠のメモを盗むわと”なんじゃこりゃ”な人。でも、中盤からとんでもない大活躍。コンピューターにガスクロマトグラフィーにとデジタル時代の代表格のライムに対し、道(タオ)に風水に調和にと東洋思想なアナログ感覚のリー刑事。真逆な二人ですがけっこう意気投合。てか、ライムとタメはって捜査方法の言い争いができてる人っていままで出てきてないもんな。けっこう知恵モノだし、足で情報を取ってくるタイプだし、ゴースト相手にドンパチやるほどのタフガイだし。ライムとサックス、FBIの捜査官のデルレイたちがチームでやっていることをほとんど一人でこなしてるようなスーパーユーティリティ。そのうえ皮肉屋となればこれはもう面白くないはずがない。解説では映画化するなら”ジャッキー・チェン”に演じさせたいと書いてますが、最大限の賛辞なんでしょうね。

 で、リー刑事の東洋思想ってのがこんな感じ。危険な脊髄神経の再生手術をうけようとするライム(老板)とリー刑事の会話

  リー :でも、医者は違う。あまり科学に頼らない。
      患者に調和を取り戻させるだけだ

       (中略)
  ライム:つまり、私はこのままで調和がとれていると思うのかね
       (中略)
  リー :あんたがこうなったのは運命だよ、老板
       (中略)
      あんたの人生は今のままでバランスが取れているんだよ、老板
       (中略)
      孫悟空は幸せだった。調和を見つけたからだよ
       (中略)
      プロレタリア文化大革命だ。すべてを破壊し、人を傷つけ、人を殺した
      政府と党は正しいことをしなかった
  ライム:自然な姿ではなかったわけだな。調和が壊された
  リー :よくできました、老板

 ことほど左様に、リー刑事って調和を重んじる人ですが、やってることは横紙破り。昔の刑事モノにでてくる一匹狼、でも1時間で事件を解決するバイオレンス派の人です。

 さて、調和をという話ですが、”石の猿”って読んでる途中はなんとなく調和しないんですな。どうも”動機”ってのがしっくりこない。本書裏表紙の紹介には密航者達を抹殺する理由に”自分の正体を知った”といった文章はありますが、職業的殺人者のゴーストがそりゃ迂闊すぎるでしょう?!(*6) そもそも顔を見られたくないのに密航者と同じ船に乗るか? みたいな。このあたりのもやもやを最終局面でちゃんと解決しているのは、さすがジェフリー・ディーヴァーです。

 本書は、アメリカの推理小説なんですが、東洋思想をキーに扱ったというあんまし読んだことないパターン。助演のリー刑事は中国人刑事役いい味出してるし。後半であっさり(といっても、事件解決の鍵となる証拠物件を残して)殺されちゃってますが、普通の小説家だったら、この人メインでシリーズ書いちゃいそうな~~ ぐらい。面白く読ませていただきました

PS.
 海外で活躍する探偵役の中国人って私が読んだことないのか、実際数が少ないのか? たしか昔はいたような気がするんですが?? こんど調べて読んでみよう


《脚注》
(*1)アジアインフラ投資銀行
 略称”AIIB”(Asian Infrastructure Investment Bank)。中国が主導で2015年に開業を予定しているアジア向けの国際開発金融機関。日本は創設メンバーへの参加のお誘いにアメリカの顔色うかがってかシカトしてたら、いつのまにかイギリス、ドイツ、フランス等51ケ国参加してましたというオチ。相変わらず流れの読めない国なのかなぁ、日本って。
(*2)政治的弾圧だの
 天安門広場に集まった民主化を求める一般市民に対して中国人民解放軍が武力弾圧を加えて多数の死傷者を出した”天安門事件”が起ったのは1989年(平成元年)と、たった四半世紀前のことです。
(*3)いなかっぺ大将(原作 川崎のぼる、声優 野沢雅子、愛川欽也、タツノコプロ)
 1970年にフジテレビで放送放映されたアニメ。主人公の柔道少年”風大左衛門”の声を野沢雅子さんが、その師匠である猫”ニャンコ先生”を愛川欽也さんが演じておりました。
(*4)悟空の大冒険(原作 手塚治虫、声優 右手和子、野沢那智、愛川欽也、虫プロ)
 1967年にフジテレビで放送放映されたアニメ。60年代後半の作品ながらかなりポップな感じで楽しめた記憶があります。総監督は後に”どろろ”や”タッチ”の監督を務める杉井ギサブロー。
 愛川欽也さんはスコップにズタ袋、宝探しに人生を賭けるじいさん”沙悟浄”の声を担当。上記以外にも峰不二子の”増山江威子”、ドクロベエ様の”滝口順平”、初代フグ田マスオさんの”近石真介”など後に日本のアニメシーンをけん引する声優が綺羅星のごとく参加してました。(詳しくはwikipediaで)
(*5)ネタバレになりますが
 本書の登場人物紹介のページに”中国公安局刑事”って書いてありますが、いいのかこれって?
(*6)職業的殺人者のゴーストがそりゃ迂闊すぎるでしょう?!
 ”ゴルゴ13(さいとうたかお、リイド社)”の最初期のエピソードにスナイプを目撃されたゴルゴが、目撃者を殺すってエピソードがありましたが・・・
 (”白夜は愛のうめき" 2巻に収録)

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