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2015年4月5日 - 2015年4月11日

ビジネス書として読むには相当なひねり(ひねくれ?)が必要。もっとも、戦争って人の営みと同義かもしれませんが・・・(現代の軍事戦略入門/サンダーボルトⅡ)

 ども、自衛隊の基地祭りとか行きますが、ミリタリーヲタクではなおぢさん、たいちろ~です。
 基地祭りとか行きますと、カメラ抱えたミリオタのおっさんとか、おに~ちゃんとか、ところどころおね~さんとかが集まってきます。飛行機だとか戦闘艦船とか確かにかっこいいんですんな。強引に分類すると”ハードウェア派”とでも言いましょうか。
 これに対して”戦略がど~した”、”戦術がこ~した”言いだすのが”ソフトウェア派”でしょう。自覚あるなしに関わらず”歴史ヲタク”もこの分類ではないかと(*1)。まあ、”わが社の経営戦略は~”とか能書きを垂れるビジネスマンに限らず、日本人ってのは隠れミリヲタが多いんでしょうかねぇ
 ということで、今回ご紹介するのはそんな戦略の入門書”現代の軍事戦略入門”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影
2012年横田基地で見た”サンダーボルトⅡ”。
シャークマウスのペイントがいかにも
って感じです。

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【本】現代の軍事戦略入門(エリノア・スローン、芙蓉書房出版)
 サブタイトルは”陸海空からサイバー、核、宇宙まで”とあるように、”孫子”や”戦争論”といった古典的軍事戦略論というより(*2)、湾岸から地球の反対側に至る海軍力、航空機による支援、核抑止力、はては宇宙戦争論まで、国家間からテロ対策と大きく形を変える”軍事戦略”を扱った本。”入門”とありますが、かなり専門的な内容です。
【乗り物】サンダーボルトⅡ 近接航空支援攻撃機
 フェアチャイルド・リパブリック社の開発した単座、双発、直線翼を持つアメリカ空軍初の近接航空支援(CAS)専用機。戦車、装甲車その他の地上目標の攻撃と若干の航空阻止により地上軍を支援する任務を担う。(wikipediaより)
 ”エリア88(*3)”ではグレックが搭乗し地上攻撃に使用した機体として有名です


 さて、この本のミソは”現代の軍事戦略入門”の”現代”の部分。まえがきに著者のエリノア・スローンが書いてますが、生徒から”現代の戦略思想家はいないんですか?”という質問がきっかけだったそうですが、言われてみればそうなんですよね。”孫子(孫武)”ってのは紀元前500年ごろの人なんでランドパワー=陸戦の時代。”戦争論”のクラウゼヴィッツはナポレオン戦争の関係者、1800年代の前半の人なんでランドパワー+シーパワー=海戦の時代。海戦と言っても、太平洋越えて戦争するって距離感じゃない時代ですから現代とは相当違うはず。エアパワー(空戦)も、サイバー戦略も核戦略も宇宙戦略もな~んもなかった時代です(*4)。調べてみるとテクノロジー(兵器)による戦争の在り方が急速に変化したのはたかだか50~100年ぐらいのことなんですね。だから、現代に合わせて”戦略”が変わっているはずなんですが、なかなか”現代の戦略思想家って誰なんでしたっけ”ってのが出てこない。逆にいうと2500年近く昔の”孫子”が今だに語られているってのは”戦争の本質”が変わっていない人間の営みと同義ってことかもしれませんが・・・

 本書は350ページ近くある本なので参考になる点はいっぱいありますが、気にいったとこをいくつか

〔陸海空の統合が必要〕
 本書で先進的な軍事システムに必要な要素として

  見る部分  :ISR(機密情報収集・監視・偵察)
  教える部分 :C4I(指揮・統制・通信・コンピューターインテリジェンス)
  行動する部分:精密誘導兵力

てのがあるそうです。簡単に言うと”丘の向うの敵は見えない”という時代からテクノロジーの発展により飛行機から偵察ができるわ、宇宙から監視ができるわ、通信で情報が伝えられるわ、コンピュータを利用して指揮がとれるわ、ピンポイントでミサイルを誘導できるわなどなど。ただし、これがうまくいくには陸海空三軍のリソースがちゃんと統合的に動けないとダメなんだとか。当たり前っちゃ当たり前ですが軍隊って縦割り行政の典型だからなぁ・・・

〔シーパワーやエアパワー、スペースパワー単体では戦争に勝てない〕

 非常に簡単に言ってしまうと、シーパワーってのは兵力の輸送と砲撃エアパワーは偵察や爆撃、輸送スペースパワーは監視や通信核兵器は抑止(そうそう簡単に使われては困るシロモノ)サイバーは監視や撹乱、プロパガンダ(ISがやってるヤツ(*5))、それぞれにランドパワーの支援を含みます。そしてランドパワーは領土や政治等の要衝の占拠ってことになります。たとえば上記の”サンダーボルトⅡ”のお仕事が”支援攻撃機”なのは、敵の戦車などを攻撃することでランドパワーの損失を減らす支援をするからだとか。
 で、問題になるのは”戦争の帰趨を決める決定的な戦力はどれか”ってとこです。いろいろ議論はあるようですがどうも”ランドパワー”に分がありそう。なぜなら国家間戦争では最終的に領土や要衝の占拠する機能がランドパワーだからだそうです。だからって”ほかの軍はランドパワーの支援をしろ(*6)”とか言っちゃうと不仲の原因になるんでしょうが・・・
 ずいぶん昔になりますが”宇宙戦艦ヤマト(*7)”に関する記事で

  なぜガミラス軍は遊星爆弾と一緒に陸戦部隊を投入して、
  政治的な要衝を占拠しないのか?

てな内容を読んだ記憶がありますが、なるほとと思いましたねぇ

〔スペースパワーでは物理的破壊をやってはいけない〕
 今や宇宙には民間、軍事を含め衛星てんこ盛り。ちょっと意外だったのは衛星ってのは電子装備を破壊すればいいので物理的に破壊してはいけないって点。なぜなら物理的に破壊しちゃうとコントロール不可能なスペースデブリ(宇宙ゴミ)をまき散らすことになるから。なんとなく衛星ってあんまし動いてない印象ありますが、実際は1日で地球を何周もするぐらいすんごいスピードで移動してるんで、小さいゴミでもとっても危険なシロモノなんだとか。言われてみりゃもっともですが、ガンダムワールドでは派手にドンパチやってましたけど・・(*8)
 本書中でも”ラグランジュポイント”だ”重力の井戸”だのガンダムっぽいテクニカルタームが出てきますが、こんなんまで扱うって軍事思想家ってたいへんだなぁ。

〔核の抑止力の土台にあるのは”敵を知れ”〕
 核抑止戦略に効果を持たせるには以下のことが必要だそうです

  目に見えない要素:価値、文化、知覚、リスク許容度
  目に見える要素 :アセット(戦力資源)、能力、脆弱性

このあたりは”孫子”の時代から脈々と受け継がれている戦略なんでしょうが、さらに相手によって適合されんといかんのだとか。やっちまったら終わりの核戦略では、相手に”核兵器を使わせたら損”という心理戦の様相もあるんで、慎重にならざるをえんのでしょうな。

 ところで本書ですが、”実用”という意味ではたぶん士官クラス以上でないと訳にたたんのではないかな。いったい誰向けに出版されたんでしょうか(私はたまたま見つけて読みましたが・・・)。この手の本って”ビジネス”への応用みたいなのを期待されてるかもしれませんが、内容があまりに専門的(マニアック?)。ビジネス書として読むには相当なひねり(ひねくれ?)が必要かと。ひょっとしたら本書の最大の謎は出版戦略にあるのかもね。

 そうはいっても、いろんな意味で示唆に富んだ本です。ご興味のある方はどうぞ。


《脚注》
(*1)”歴史ヲタク”もこの分類ではないかと
 NHK放送文化研究所が2008年に行った”好きな歴史上の人物ランキング”のベスト10人を属性別に強引に分けると
 軍事的指導者 6名:織田信長、徳川家康、豊臣秀吉、武田信玄、源義経、西郷隆盛
 思想的指導者 2名:坂本龍馬、福沢諭吉
  政治家    1名:聖徳太子
  科学者    1名:野口英世
6割が軍事的指導者。坂本、福沢も侍=職業軍人ですので8割が軍関係の人ってことになります
(*2)”孫子”や”戦争論”といった~
【本】孫子(孫子、岩波文庫他)
 ”彼を知り己を知れば百戦殆からず”など、おぢさんの蘊蓄にはしょっちゅう出てくる兵法書の古典中の古典。本書は読まなくてもたぶん解説書は読んだことはあるはず
【本】戦争論(クラウゼヴィッツ、岩波文庫他)
プロイセンの将軍クラウゼヴィッツによる戦争を分析した研究書。この手の本ではと~っても有名ながら、ちゃんと読んだことがある人って聞いたことないんですがなぜ?
(*3)エリア88(新谷かおる、小学館)
 中東の”アスラン王国”で戦う傭兵部隊”エリア88”の活躍を描く戦争マンガの傑作。”グレック”は地上攻撃で圧倒的な強さを誇るエリア88のNo.3のパイロット。通称”ヒゲダルマ”。モデルは松本零士? パイロット達に行った”あんたらには戦争が終わった後にこの国を立て直す仕事がある”は後に戦況を大きく動かすことになります。
(*4)エアパワー(空戦)も、サイバー戦略も核戦略も宇宙戦略も~
 ライト兄弟が動力飛行機による初飛行は1903年戦争で利用されたのは第一世界大戦(1913~18年)頃から、核爆弾が広島に投下されたのは第二次世界大戦末期の1945年、黎明期の電子式コンピューター”ENIAC”が稼働したのは第二次世界大戦後の1946年、ソビエト連邦が世界初の人工衛星”スプートニク1号”を打ちあげたのは1957年のことです。
(*5)ISがやってるヤツ
 ”小学生にイスラム国の流すYouTubeを見せるな”という議論がありますが、これってどうなんでしょうね。プロパガンダに乗せられないためって意味では解からんでもないですが、実相を隠すだけってのは”臭いモノにフタをしろ”ってのと変わらん気がせんでもないですが・・・
(6)ほかの軍はランドパワーの支援をしろ
 逆に”銀河英雄伝説(田中芳樹)”ではパイロットのオリビエ・ポプランが艦隊決戦の際に陸戦部隊の”ローゼンリッター連隊”を評して”何もせんかった奴”扱いしてケンカになったシーンがあったような。
(*7)宇宙戦艦ヤマト(西崎義展、松本零士、バンダイビジュアル)
 ガミラス帝国は遊星爆弾による無差別攻撃を加えて人類は滅亡まであと1年の危機。
 冥王星会戦の敗戦で沖田艦長が”我々にはあの遊星爆弾を防ぐ力はない”と言ってるように制宙権を喪失している状態ですから、陸戦兵力を送り込むことは造作なかったハズです。まあ、ほっときゃ1年で滅亡するんだから無用なリスクを犯す必要はないという考え方もありますが、ちんたらやってるうちに反攻作戦に出られたわけで。”拙速をもって良しとなす”という戦略はなかったんでしょうか?
(*8)ガンダムワールドでは派手にドンパチやってましたけど・・
 ”機動戦士ガンダム(富野喜幸、バンダイビジュアル)”の宇宙戦艦って地球から宇宙に飛んでってるのもありますので、第二宇宙速度(時速40,300km)は出ているはず。それがわかってて、お互いにスペースデブリをまき散らすような戦いをやるなんて正気の沙汰じゃありません。まあ、正気なら戦争なんてしないんでしょうがねぇ

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