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2015年12月

”文豪”の名前でビビらずに手を出してもぜんぜん大丈夫です(文豪ストレイドッグス/横浜の風景)

 ども、こんなブログを書いてますが実態は真面目なおぢさん、たいちろ~です。
 文学であれ、音楽であれそれを作っている人と作品が同じような感じである場合と、まったく違う場合ってのがあります。まあ、まったく同じだったら、推理小説家は全員殺人嗜好の持ち主だし、恋愛小説家はみんな夢見る乙女かドロドロの恋愛マニアってことになります。おぢさん世代で違ってる例の代表格といえばだ年末にはぐっとくる”中島みゆき”でしょうか?(*1) フォークソングの中に演歌的な情念の世界を、ぶっちゃけ暗い曲を作る人ですが、”中島みゆきのオールナイトニッポン(*2)”での喋りをリアルタイムで聞いてた世代としては”同じ人かい?!”と思っちゃうぐらい落差の激しい人です。
 まあ、作品と作家のイメージってのはそれが実像であれ虚像であれなにがしかあるもんです。じゃあ、そんなイメージだけでキャラクター設定して物語をつくったらどうなるか???
 ということで、今回ご紹介するのは文豪のイメージを持つキャラクターが縦横無尽に暴れまわる漫画”文豪ストレイドッグス”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。舞台になっている横浜の風景

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【本】文豪ストレイドッグス(原作 朝霧カフカ、作画 春河35、角川書店)
 ”中島敦”は溺れかかっている”太宰治”を助けたことにより”武装探偵社”に就職することになる。そこは”異能者”と呼ばれる人間の集団。”中島敦”もまた”月下獣=虎に変身する”異能者だった。
 対立する”森?外”率いる”ポートマフィア”の”芥川龍之介”や”中原中也”との戦いは激化し、さらにはアメリカの異能者集団”ギルド”が参戦。戦いは三つ巴となる・・・
【旅行】横浜の風景
 エキゾチックでファッショナブルな街、横浜。横浜ランドマークタワーやパシフィコ横浜、インターコンチネンタルホテルなどの近代的なビル群と観光スポットにも恵まれ、”住みたい街ランキング 第1位”に輝くなど、前回書いた”埼玉”とは対極にある街(*3)です。
 ”文豪ストレイドッグス”第9巻は、異能者”メルヴィル”の生み出した”白鯨”を落下させることで横浜の街を壊滅さようとするギルドに対して、武装探偵社”中島敦”がポートマフィアの”芥川龍之介”とともにその陰謀を阻止するという話です。

 ”どこの誰かは知ってるけれど、誰もが作品読んでない♪”な文豪ですが、なまじ知名度が高いだけに、固定したイメージを持ってることが多いかと。おおまかに言うと

  根っから暗そうな人 : 芥川龍之介、太宰治
  おどろおどろな人  : 泉鏡花、江戸川乱歩
  真面目そうな人   : 宮沢賢治、福沢諭吉
  なんとなくスケベ? : 森鴎外、谷崎潤一郎

一方的なイメージなんで、ファンの方はご勘弁を。
まあ、たいがい本好きな私ですが、これらの文豪の作品をたくさん読んでるわけではないです。この手の文豪ってのは教科書に載ってるとか、試験に出るからという理由で知ってるだけで、まじめに作品を読んでた日にゃ時間がいくらあっても足らないですし(*4)。
 でもまあ、イメージが突っ走ってる文豪なんで、彼らをキャラクターにすりゃ面白そうなのは確か。実際にこの本ができたきっかけってのも

  文豪がイケメン化して能力バトルをしたら絵になるじゃないかと、編集と盛り上がったから
  (第一巻 後書 より)

 文豪をネタに遊んじゃおうみたいなノリでしょうか? ですんで本書に文芸の香りのするうんぬんとか、日本の近代文学の夜明けがかんぬんとかを期待しちゃダメです。

 本書に登場する文豪たちについていくつか

〔中島敦〕
 本編の主人公。孤児院で虐待された暗い過去を持つ少年。虎に変身する”月下獣”ってのは、”山月記”から。たしか教科書で読んだんだったかな~~ この作品をモチーフにした”変身忍者嵐(石ノ森章太郎、講談社他)”の第9話”虎落笛の遠い夏”ってのがありますが、実はそっちのほうが印象深かったりして。
 中島敦ってどっちかというと暗い系の印象ありますが、”よちよち文藝部(久世番子、文藝春秋)”によるとご本人はけっこうモテた人みたいです。

〔芥川龍之介〕
 ポートマフィアの構成員にして冷酷非情な中島敦のライバル。外套を”黒獣”という攻撃手段に変える”羅生門”の異能の持ち主。教科書なんかで良く見る写真に”将来に対する唯ぼんやりした不安”という理由で自殺したこともあって”暗い人ランキング”の上位の人ですが、本書ではいたって攻撃的。でも、太宰治に認められることが行動原理というボーイズ・ラブ系の人には美味しそうなキャラ設定になってます

〔太宰治〕
 青森のフォースのダークサイドを背負って立つような”暗い人ランキング”上位の人。自殺マニアという点は本書でも引き継がれています。武装探偵社でもトップクラスの戦闘力になかなか策士な部分も持っている影の主人公。中原中也との掛け合い漫才が秀逸。きっと”攻め”の人なんだろうな~~

〔中原中也〕
 本書ではポートマフィアトップクラスの戦闘力を持にながら、太宰治のいじられキャラという残念な人になってます。本人の代表作は”汚れっちまった悲しみに”。詩集ではなく、中村雅俊の歌で知りました。すいません。

〔泉鏡花〕
 剣の達人の女性の幻影を使役する”夜叉白雪”の異能者。がんばれ、鏡花ちゃん!と応援したくなるような薄幸の美少女ですが実物は男の人です。本人何作か読みましたが、一種独特の美意識とおどろおろどしさは秀逸です。

〔与謝野晶子〕
 ボブカットが良く似合う武装探偵社の美女。”君死給勿(きみしにたもうことなかれ)”というヒーリング系魔法を使う異能者。ただ瀕死の重傷にしか効かないので普通のケガでも半殺しの目にあわせるという物騒なお方
 代表作の”みだれ髪”には俵万智による”チョコレート語訳 みだれ髪”ってのもありますので、読みやすいほうがよければそちらもどうぞ

〔森鴎外〕
 本人は軍医総監(中将相当)といういかめしい経歴の持ち主。本書では元医師のポートマフィア首領ですが、今のところは単なるロリコン親父です。

〔モンゴメリ〕
 児童文学の最高峰”赤毛のアンシリーズ”の作者。でも本書では原作と扱いがもっとギャップの激しい人でしょうか。ノリがほとんど”まどか☆マギカ”だもんで・・(*5)
 どうも、”文豪”には明るいキャラってあわないんでしょうか?

〔ラヴクラフト〕
 本人は”クトゥルフ神話”というモダンホラーの創始者。ご本人の写真を見てもなんだか不気味だなぁ(ファンの方すいません)。
 本書では不死身の肉体の持ち主がならなんだかわからない人の代表。太宰治からは”あれは異能じゃないんだ”と言われ、仲間からも”結局彼は何者なんだろうか?”と突っ込まれる異形の人。
 この人が”君はどうするの?”と聞かれて、海の中に去っていく時の一言”・・・寝る”のモトネタはたぶんこれ

  ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん(*6)

 まあ、いずれ劣らぬユニークなキャラクターぞろい。ここに書き切れないキャラも多数登場しています。オリジナルの文豪をそんなに知らなくても(私だってそんなに知ってるワケじゃないですし)、充分楽しめる作品。”文豪”の名前でビビらずに手を出してもぜんぜん大丈夫です。

《脚注》
(*1)年末にはぐっとくる”中島みゆき”~
 サントリー”BOSS"のCM”ヘッドライト・テールライト篇”より。見てみたい人はこちらをどうぞ
(*2)中島みゆきのオールナイトニッポン
 1979~87年まで放送されたニッポン放送の深夜番組。ちょうど受験のころと重なってたんでよく聴きましたな~~ これがまた面白いのなんのって。おかげで勉強ぜんぜんできませんでしたが。
(*3)”埼玉”とは対極にある街
 ”翔んで埼玉(魔夜峰央、宝島社)”のネタ。詳しくは”埼玉ディスは歴史の産物か?、はたまた人間の業なのか?”をご参照ください。
(*4)時間がいくらあっても足らないですし
 森鴎外全集(岩波書店)全38巻、江戸川乱歩全集(光文社)全30巻、谷崎潤一郎全集(中央公論) 全26巻、芥川龍之介全集(岩波書店)全24巻、宮沢賢治全集(筑摩書房)全19巻、太宰治全集(筑摩書房)全13巻 てな感じ。
 まあ、代表作だけでも読んどきたいモンです。
(*5)ノリがほとんど”まどか☆マギカ”だもんで・・
 ”魔法少女まどか☆マギカ(監督 新房昭之、アニプレックス)”のこと。彼女の異能”深淵の赤毛のアン”での鬼ごっこって”まどか☆マギカ”の一種異様な魔女空間での戦いを彷彿とさせます。
(*6)ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう~
  死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり
という意味。知っててもなんの役にも立たない知識ですが。

埼玉ディスは歴史の産物か?、はたまた人間の業なのか?(翔んで埼玉/さいたまスーパーアリーナ)

 ども、神奈川県民ではなく横浜市民(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 以前”銀行代理店法改正に伴う新ビジネスの企画”ってのをやったことがあります(これはホントウ)。銀行代理店法の改正というのは、従来銀行の100%子会社にしか認められていなかった預金等の受け入れや、貸付、為替等の業務を一定の条件を満たせば一般企業にも認めるというもの(*2)。で、”東京都内で店舗網が薄い横浜銀行が、都内の流通小売業を銀行代理店として活用すれば利便性が上がって取引が増えるのではないか?”てな仮説を立てたわけです(*3)。じゃあどれぐらいの人数が近郊県から東京に通勤・通学で移動するかというと、東京都のHPによると

        東京都      内区部
  神奈川県 104.9万人  90.5万人
  千葉県   73.3万人  72.3万人
  埼玉県   94.9万人  86.0万人

   ※15歳以上通勤者及び通学者。2010年度国勢調査より

つまり、千葉市(96.8万人)や北九州市(95.7万人)に匹敵する人口の千葉県民が東京都に通っているわけです。そこで問題になるのはこんだけの都内に来る埼玉県民をディスてていいのか?!
 ということで、今回ご紹介するのは突然話題になった埼玉ディスマンガ”翔んで埼玉”であります

写真はたいちろ~さんの撮影。さいたまスーパーアリーナです。

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【本】翔んで埼玉(魔夜峰央、宝島社)
 都内の名門校白鵬堂学院に転校してきたアメリカ帰りの”麗・麻美”。宝塚男役を思わせる麗人にしてスポーツ万能、成績優秀、お金持ち。それまで学園のトップだった生徒会長の白鵬堂百美(男)は最初は彼につっかかっていたものの麗からキスされることで態度が一変、恋人になるため猛アタック。だが麗には”埼玉県民”という秘密があった・・
【旅行】さいたまスーパーアリーナ
 埼玉県中央区新都心(!)にある多目的ホール。座席やステージが移動可能で最大36,500席の収容を誇る。2000年にオープンした近代建築。この手のもちょっとは出しとかないと埼玉県民に申し訳なくて・・・

 まあ、あらすじは上記のとおりで、このあと麗・麻美が埼玉県民の解放に立ちあがるってなもんですが、内容はというと、朝日新聞の記事によれば

  「翔んで埼玉」は東京都民が全てを支配し、埼玉県民を見下すという設定
  東京に行くには手形が必要で、埼玉県民は病院にもかかれない
  そんな迫害や誤解を主人公が少しずつ解いていくのだが、
   「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」
   「埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」
  などのせりふが並ぶ

   (2015年12月28日 夕刊に掲載)

 しかし、大朝日新聞がよくネタにしたな~~ 他にも

  「特徴がないのが特徴」と言われる埼玉県の県民性
  埼玉は都道府県の魅力度ランキングで下位に低迷
  東京に通勤・通学する人が多く、郷土愛が薄いとも言われる
  東京への県民のねじれた思いを突いた魔夜さんは~

とこの記事を書いた記者の人もどさくさ紛れにけっこう言いたい放題

 ところで、この本昔読んだことあります。当時は収録されていた”やおい君の日常的でない生活” (ジェッツコミックス)が本の名前。発刊が1986年なので読んだのもたぶんこのころだと思います。読んだ当時は”埼玉県民をよくこんだけむちゃくちゃ書くな~”ってのと”埼玉県から引っ越したので、連載中止。他県から悪口書くと本当に悪意があるととらえれれかねないから”という潔さがみょ~に印象に残ってます。

 歴史的に見ると本作の初出は1982年の”花とゆめ”(少女マンガ誌ですよ、おい!)。さいたまスーパーアリーナはまだ計画もなく、所沢球場(*4)はまだドーム化する前の話。今や世界的な知名度を誇る”春日部”ですがきっかけとなった”クレヨンしんちゃん”の連載開始は1990年、テレビアニメ放映開始が1992年。鷲宮神社をして県内有数の初詣神社に押し上げ、”萌えおこし”なる地域活性化のモデルとなった”らき☆すた”はさらに下って2004年。交通でいうと東日本の大動脈、東北新幹線の東京~大宮間の開通が1991年(*5)。どうも埼玉の近代化ってのは1990年代以降って感じでしょうか?

 そもそも当時の埼玉のイメージは”ダサイ”の一言に集約されそうです。語源には諸説あるようですが、個人的には”東京都民が埼玉県民を「だって埼玉だから」と蔑視した言葉が簡略化されて「ダサい」になった”とする説。1980年代にタモリが埼玉県民を嘲笑する意味で「ダサい」と「埼玉」を掛け合わせた「ダ埼玉」という造語を生み出して流行させたとのことですので(wikipediaより)、本書の書かれた時代にジャストミートです。まあ、本気で嘲笑してたかどうかはわかりませんが、昔の埼玉って東京とちょっと違う感はあったかな~ ずいぶん前ですが、東京で女子高生のスカートが短くなりはじめたころに”大宮”に仕事で行ったことがありましたが、そこでの女子高生って思わず”あんたら、ウランちゃんか!(*6)”と突っ込みたくなる状況。東京の女子高生ファッションを取り入れているのはわかりますが、

  

これはファッションの方言周圏論?(*7)

とかか思っちゃいました。なんだかファッションが拡大解釈された形で周辺に伝播してるみたいで・・

 どうも当時の埼玉ディスの背景ってのは、”東京近郊にある=田舎じゃない”というプライドと共に、”東京=文化の中心”に引きずられつつイマイチ同質化できない近代化の遅れという歴史的なバックボーンなんでしょうかねぇ いや、そんなに偉そうなもんじゃないか・・

 実は本書でもっとディスられている県があります。それが”茨城”。埼玉県民をして

  とんでもね~! あんな田舎もん共と
  おらたち誇り高い埼玉県民を一緒にしてほしくねーだ!

と言われ、埼玉県民に牛馬のごとくこき使われる出稼ぎの茨城県民

  茨城!? 茨城というと埼玉のさらに奥地にあるといわれるあの日本の僻地!?

  茨城では納豆した産出しないのです!

 まあ、こちらもたいしたディスられ方ですが、興味深いのは

  

東京都民 >>> 埼玉県民 >>> 茨城県民

といったヒエラルキーが存在してるんですな。つまり東京都民が埼玉県民にしている仕打ちを立場を変えて埼玉県民が茨城県民にしていると。こうやって見るとディスるってのは人間の業みたいなもんじゃないかと思っちゃいます。

 ここまで書いてていうのはなんですが、ディスるネタをギャグとして笑えるのはある意味健全な証ともいえるんではないかと。なぜなら、いじめの問題がドラマにはなってもギャクにはならないし、ヘイトスピーチが決して笑いごとではすまないように、ディスるという行為が笑いになるのはある意味”お約束”が虚像であるという共通認識が成り立ってるからこそ。”翔んで埼玉”がここに来て突然ブレイクしているのは、かつてダサイと言われた”埼玉県民”が、今ではそれから完全に脱却して”埼玉の虚構性”を笑って済ませられるだけの余裕を持てたってことじゃないかな~~
 ということで、このブログも笑ってすませるだけの余裕を持って読んでください決してマジにとって炎上などさせないように。

 本書にも一応”この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・地名とは一切関係ありません。本書の掲載内容は執筆された時代背景を考慮し、発表当時のままとなっております(*8)”という断り書きがかいてありますが、この言葉がこんなに嘘クセ~~本もまれです、はい。

《脚注》
(*1)神奈川県民ではなく横浜市民
 最近新聞に載ってたんですが、横浜市民って神奈川県民とは答えないんだそうで。
 はまれぽ.comの調査によると、横浜出身者66名中”神奈川県民”ではなく”横浜出身”と答えた人は約88%だったそうです。
(*2)一定の条件を満たせば
 まあ、この”一定の条件”のハードルが高すぎてあんまし広がりませんでしたが・・
(*3)東京都内で店舗網が薄い横浜銀行が~
 2015年9月に横浜銀行が東京都を地盤とする東日本銀行と経営統合し、コンコルディア・フィナンシャルグループを設立することを発表しました。営業エリアを補完するという点では仮説自体はあながち間違っていたわけではなさそうです。
(*4)所沢球場
 西武プリンスドームのこと。開業は1979年ですがドームができたのは1999年。いしいひさいちの映画”がんばれタブチくん”(1979年公開)で移籍したタブチくんが野球してますが、ずいぶん田舎扱いされてた気がします。まあその前が甲子園球場からだからな~~
(*5)東北新幹線の東京~大宮間の開通が1991年
 大宮~盛岡間の開業が1982年、上野~大宮間が1985年、東京駅から大宮まで新幹線で行けるようになったのは本線開通から9年後のことです。
(*6)あんたら、ウランちゃんか!
 手塚治虫の”鉄腕アトム”の妹、超ミニスカートのウランちゃん。正直、品行方正なおぢさんとしては、目のやり場にこまったモンです。
(*7)これはファッションの方言周圏論?
 ”方言周圏論”というのは、民俗学の泰斗”柳田國男”が提唱した説で方言は文化的中心地から変質しつつ同心円状に周辺に伝播していくというもの。かつて百田尚樹がスタッフとして参加していた”探偵ナイトスクープ(朝日放送)”という番組で作成した”アホ・バカ分布図”が有名。ご興味がある方は”全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路(松本修、新潮文庫)”でどうぞ
(*8)この作品はフィクションであり~
 手塚治虫のマンガには”ご利用の皆様へ”と題して手塚プロダクション名で同様な内容の奥付があります。こっちはマジで書いてあるな~と思うのは作品の内容の違いでしょうかね。

宇宙艦隊における出世する人の資質とは?(宇宙軍士官学校 -前哨-/銀河英雄伝説/海上自衛隊の制服)

 ども、結局あんまし出世しなかった~~なおぢさん、たいちろ~です。
 まあ、同期入社の年だと執行役員なるやつもいれば平社員の人もいるわけで、”なんでお前が偉なってんねん?! 裏で悪いことやったんやろ!”みたいなのはギャグでツッコむ分にはシャレで済みますが(たぶん)、マジで言ったら喧嘩になります。まあ、偉くなった人にはそれなりに運と実力があるわけですが(”タイミングにC調に無責任”という説もありますが(*1))、まあどんな組織でも出世する人もいればしない人もいるわけです。
 ということで、今回ご紹介するのは宇宙艦隊における出世の話題が載ってます”宇宙軍士官学校 -前哨-”と、もういっちょ”銀河英雄伝説”であります

写真はたいちろ~さんの撮影
2015年度観艦式の”掃海母艦ぶんご”の船上で行われたファッションショーにて
(プライバシーでなんかあると困るので、お顔は消してます)

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【本】宇宙軍士官学校 -前哨-(鷹見一幸、ハヤカワ文庫)
 地球人類の生き残りを賭けて粛清者との戦いを繰り広げる銀河文明評議会の地球軍独立艦隊。有坂恵一は途上星系独立艦隊を指揮する少将として太陽系に帰還するが、そこはすでに粛清者の波状攻撃にさらされていた・・・(9巻より)
【本】銀河英雄伝説(田中芳樹 創元SF文庫他)
 宇宙暦797年、帝国歴488年、宇宙は専制政治の銀河帝国と民主主義の自由惑星同盟に分かれ、150年の長きにわたって戦いを続けてきた。そして時代は二人の英雄を生み出す。銀河帝国の”常勝 ラインハルト”と自由惑星同盟の”不敗の魔術師 ヤン・ウェンリー”である・・・ 田中芳樹によるスペースオペラの最高傑作。
【ファッション】海上自衛隊の制服
 観艦式でのイベントの一つで海上自衛隊制服のファッションショーってのがありました。この時に登場した制服のひとつ。袖の階級章が三本筋なので2等海佐だと思われます。人様の組織で役職の名前がどれぐらい偉いのかってわかりにくいんですが”2等海佐”というのは一般的には”中佐”、おおむね艦長(大型艦なら副長)クラスのようです。

 宇宙艦隊なんつーのはSF、つまりフィクションなのでどれぐらい偉いかなんてのはよくわかりませんが、おおむね指揮する艦艇数や部下の数と比例するとするなら、今回登場いただく2名だとこんな感じ

〔有坂恵一〕
 銀河文明評議会所属の地球軍独立艦隊及び途上星系独立艦隊の指揮官。階級は少将(9巻時点)。年齢は20代前半。地球軍独立艦隊の艦艇数が約600隻で途上星系独立艦隊が4艦隊なのでだいたい2,400ぐらいでしょうか。各艦艇はオーバーテクノロジーのおかでげ地球軍独立艦隊の人数は1,000人がとこでしょうが、教官クラスが佐官、練習生が全員少尉になったとの記載があるので階級を考えるとそうとう偉い人です

〔ヤン・ウェンリー〕
 自由惑星同盟所属。イゼルローン要塞司令官 兼 駐留艦隊司令官。最終階級は元帥。年齢は30代前半。wikipediaによると”ヤンが戦場で指揮した艦艇は最大でも3万隻に及ばず”とのこと。一個艦隊がおよそ1万~1.5万隻、将兵が100万~200万人との記載があるのでおおむね200~400万人の部下がいたことになります。これは横浜市の人口(約369万人)の人口にほぼ匹敵する数になります。

 現実の艦艇数がどれぐらいかというと海上自衛隊の艦艇数が137隻(*2)(2015年3月現在)。これだってハンパないお金がかかってんでしょうから、いかに好き勝手書けるSFとはいえ、GDPの何%軍事費にかけとんのやと突っ込みたくなります

 話は戻って出世の話ですが、この二人に共通するのは、本来歴史の表舞台に立つような立場じゃなかったのに、若くして武勲をたてて出世してるんですが、本人はあんまし出世とか考えてないこと。有坂恵一はあんまし出世欲なさそうだし、ヤン・ウェンリーに至っては、とっとと引退して年金暮らしにあこがれるぐらいだし。まあ、並はずれた実力の持ち主ではありますが、環境とタイミングに恵まれていたのも確か。これに関して有坂恵一に対するまわりの人の評価と組織論が面白い。地球連邦軍の成田少将の話から

  アリサカの言っていることは、正しい。だが正しいからといって人や組織は動かない
  なぜか? 彼は自分の所属する組織の面子を守らないからだ。
  そういう人間に組織は見方しないだろうね

  世の中のほとんどは、愚かで怠惰で、正しさよりも自分の面子が大事な人間だ。

  たぶん、この戦いが終わったあと、生き残っていても軍の重鎮や政治家にはなれんな
  彼は周囲に自分と同じレベルの人間がいないと、真価を発揮しないだろう

  優秀でない、たがいに足を引っ張るような人間をあいつの周りに集めてみろ。
  彼は、たちまち平凡以下の人間になる。
  なぜなら彼は、そういう愚かな同僚や部下を、
  どうだまして脅してたぶらかせばいいかなど、考えもつかんのだ。
  人間としては立派だが、組織のリーダーにはなれない

  地位への野心や、他人への嫉妬があまりないことは美徳でもあるが、
  そういうものに執着心がないのは組織のリーダーとしては失格だ。
  簡単に引きずり下されてしまうし、彼を失った組織はたちまち瓦解する

 このへんの話はヤン・ウェンリーもいっしょで、ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長に反抗的だし、イゼルローン要塞では大変敬愛されていながら、本国の政治家や軍司令クラスにはいたって受けが悪いしと。

 まあ、組織で出世することと人格が品行方正であることは別の話なんでしょうが、ずいぶんの言い方だな~と まっ、この辺の話にはSFも現実もなさそうですけどね

 ”宇宙軍士官学校 -前哨-”は2915年12月現在で9巻、”銀河英雄伝説”は本編10巻、外伝5巻とけっこうなボリュームがありますが、両方とも一押しの小説。年末年始でお時間あるときにまとめ読みお勧めです

《脚注》
(*1)”タイミングにC調に無責任”という説もありますが
  人生で大事な事は タイミングにC調に無責任
  とかくこの世は無責任 こつこつやる奴はごくろうさん

”無責任一代男”(歌 植木等、作詞 青島幸男、作曲 萩原 哲晶)より
 昭和の名曲です。聴かれたい方はこちらをどうぞ
(*2)海上自衛隊の艦艇数が137隻
 主なとこれでは、護衛艦47隻、潜水艦16隻、掃海母艦3隻あたり。1番艦”いずも”が1,208億円、潜水艦の最新型が1隻643億円ぐらいするらしいので、ハードウェアだけでも相当なお金がかかってんでしょうね

子供は一点突破型オタクの萌芽であり、大人になったオタクはネットで拡散する(となりの801ちゃん+/500 TYPE EVA)

 ども、最近物忘れのはげしいおぢさん、たいちろ~です。
 私んとこの会社で朝礼で”1分間スピーチ”なるものを広めよう運動みたいなのやっています。その一環で先日上司の人が”大人は子供に比べて物忘れが激しくなるのではない。生きてる時間がぜんぜん違うから、大人のちょっと前と子供のちょっと前とは全然同じじゃない”てな話をしてました。そういえば、以前聞いた脳科学の池谷裕二教授(*1)もそんな話してたな~
 じゃあ短い子どもの人生で興味を持つ対象によって”オタク”の萌芽になるのかな?! ということで、今回ご紹介するのはほのぼの親子のオタク話?化してる”となりの801ちゃん+”であります

 写真はたいちろ~さんの会社のお友達の撮影
福岡駅で偶然見かけた(本人申告)エヴァンゲリオン初号機型新幹線”500 TYPE EVA”です

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【本】となりの801ちゃん+(小島アジコ、宙出版)
 ボーイズラヴ大好き腐女子の”801ちゃん”、かなりオタクで801ちゃんの旦那様”チベ君”。そんな二人の息子の”坊”&”こぼん”。そんな家族がおりなすほのぼのオタク家族を描いた4コマ漫画。 最初のころはかなりオタップルな話でしたが、今はファミリーモノのジャンルでしょうか? あとは新聞4コマ漫画を目指すしかない?!(*2)
【乗り物】500 TYPE EVA
 悲運の名車”500系新幹線”(*3)をベースとしたエヴァンゲリオン初号機型新幹線。究極の痛電車、あるいは至高のラッピング車両(*4)。
 JR西日本と”エヴァンゲリオン”監督である庵野秀明にメカニックデザイナーの山下いくとのコラボというガチなプロジェクト。元々は”500系新幹線とエヴァ初号機が似ている”という若手社員のつぶやきが発端らしいですが(ネタモトこちら)、マジでやらせる上司ってのもたいしたものです

 

 801ちゃんとチベ君の長男”坊”。だいたい2~3歳ぐらい。電車にはまっている”小鉄(子供の鉄道マニア)”。電車を見るとぴょんぴょん跳ねる様は萌えている時の801ちゃんとそっくりでかわいい。
 で、”坊”を小鉄に導いたのが”烈車戦隊トッキュウジャー(*5)”というスーパー戦隊モノみたいです。2才のお誕生日プレゼントに”キングブレード(大型のLEDペンライト、実物はこちら)”をもらって

  トッキューロクゴー、トッキューロクゴー(*6)

って遊んでます。お母さんの801ちゃんは

  使い方はまちがっている。が、どうかずっと間違ったままでいてくれ!!

と応援しているご様子です。
 まあ、大人だって12月18日に大型のペンライトみたいなの振り回してましたらかあんまりえらそうなこと言えませんが・・・(*7)

 確かの子供って自分の好きなものでいつまでも飽きずに遊んでるし(飽きたら見向きもしませんが)、いろんな遊びを自分なりにカスタマイズしたりって、やってることはオタクの萌芽みたいなとこありますねぇ まあ、生まれてからの短い時間で何かに集中してりゃ、物忘れなんか関係なくオタク化しちゃうのかも

 ところが大人になると、興味が拡散しちゃうせいか、世間体だのなんだのしがらみが出てくるせいか、あんまし無茶なリソース(お金とか時間とか)をガードする良識? がでてくるせいか、子供みたいにディープに趣味の世界に突っ込むのが難しくなっちゃうんでしょうかねぇ 物忘れ以前に・・・ そういう点では”オタク”な人に”少年の心を失わないうんぬん”ってあながち外れているわけではないのかも、世間様は認めてくんないんだそうけど。 まっ、”TYPE EVA”なんか作っちゃう人もたまにはいますが、しかも仕事で・・・

 ”興味が拡散”ってことに関して言うと、ネット社会って良い時代にはなりましたね。私はよくなんかの本に載っていた本が木になるとそれを読むというやり方をしますが、出てくる本やビデオってほとんどすぐに手に入るんですな。モノによってはしかも無料で。今回読んだ”となりの801ちゃん+”の4巻の中で”ゾンビモノ”なんていうマイナーなジャンルの話がでてきますが、それってだってかなり高確率でヒッキー状態でもリアルタイム(または即日)で入手可能です

〔本〕
ゾンビサバイバルガイド(マックス・ブルックス、エンターブレイン)
  電子書籍化はされてませんが、Amazonで即日配達
The Zombie Survival Guide
 (Max Brooks、Broadway Books)
  上記の原書。電子書籍版はAmazonでダウンロード可能
がっこうぐらし!(海法紀光、千葉サドル、芳文社)
  6巻まで発刊済。電子書籍版はAmazonでダウンロード可能
〔ビデオ〕
ウォーキング・デッド(アンドリュー・リンカーン、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
  字幕版であれば、Amazonプライム会員なら無料視聴可能
がっこうぐらし!(安藤正臣、ニトロプラス、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)
  上記を原作としたアニメ。全12話。ニコニコ動画で無料視聴可能
   ※いずれも、2015年12月25日現在

 私は怖いの苦手なのでこの手のジャンルは”ワールド・ウォーZ(*8)”ぐらいしか見たことないですが(上記も全部見てません)こんなジャンルでこれだけ入手可能とは。
まあ、本書に載っている本で電子書籍で入手できないのはまだまだありますが、ここまでネットワーク化が進んでるとはねぇ・・ 別にAmazonのステマってわけではないですが、便利な世の中になったものです。

 でも、これって本好きにこの環境はとっても危険です。なんたって目の前に読みたい本がぶら下がっていて、それがすぐ入手できて、しかもお金は後払い。かくしておぢさんは欲望の赴くままに購入ボタンをぽちっとなしてしまうワケです。あぁ 来月のカードの支払いがぁ・・・

《脚注》
(*1)池谷裕二教授
 東京大学で神経科学や薬理学を研究する先生。”いけたに”ではなく”いけがや”と読みます。 著書には”脳には妙なクセがある(扶桑社新書)”、”のうだま やる気の秘密(上大岡トメと共著、幻冬舎)”など。この先生の本、読みたいんだけどまだ読めていないんだよな~
 物忘れの話は”fufufu”のhpで紹介されていますので、どうぞ
(*2)あとは新聞4コマ漫画を目指すしかない?!
 今や”ののちゃん”で大朝日新聞の4コマ漫画を長期連載するいしいひさいちですが、”がんばれ!!タブチくん!!”どころか”バイトくん”で”東淀川貧民共和国”ネタを知る世代としては、最初に連載を聞いた時はマジっすか?と思ったモンです。
(*3)悲運の名車”500系新幹線”
 世界最高速の性能、グッドデザイン賞などを受賞する美しいフォルムを誇りながら、撮りまわしの悪さ(定員の違いなど)、高い製造コスト、もてあまされる性能などからのぞみの地位を追われた”名車”。まるで”ネェル・アーガマ”のようです・・・
(*4)ラッピング車両
 広告媒体として広告媒体を印刷したラッピングフィルムを張り付けた電車やバスなとの車両のこと。最近ではアニメや映画のものも結構見かけますがこの発案者は”東京都青少年健全育成条例改正案”でマンガ家や作家と大立ち回りを演じた”石原慎太郎東京都知事”だとか(wikipediaより)
(*5)烈車戦隊トッキュウジャー
 2014年~15年にテレビ朝日系列で放映された第39作目のスーパー戦隊シリーズ。”仮面ライダー電王”といい、スーパーヒーロータイムって電車や車ネタ多いですな~ 子供の電車好きは昔からなので、別にこれらの作品のせいだってわけではないんでしょうが、合体モノで山ほど買わされる親はたいへんみたいです
(*6)トッキューロクゴー
 6人目のトッキュージャー(正義の戦士)。イメージカラーはオレンジ。だったはず。たまにしか見なかったので。一昔前のテレビドラマじゃないですが、最近の子供番組もちょっと見ないとストーリーについてけません。
(*7)大人だって12月18日に~
 ”スター・ウォーズ フォースの覚醒”が公開されたのが2015年12月18日(日本時間)。いい大人がコスプレしてライトセーバーに見立てた大型ペンライトみたいのを映画館の前で振り回してました
(*8)ワールド・ウォーZ(ブラッド・ピット、KADOKAWA)
 謎のウイルスにより世界がパニックに陥ると言うゾンビ映画。なぜこのオファーを受けたかが謎のブラッド・ピットが主演ホラー映画にもかかわらずみょ~にポリティカルなとこが面白かったです。詳しくはこちらで
 原作は”ゾンビサバイバルガイド”の作者”マックス ブルックス”ですが、内容は映画とまったく別物だそうです。読んだことないけど。ちなにみこちらは”ゾンビサバイバルガイド”とは逆に原作は紙の本のみで日本語版は電子書籍化されています。

日本経済の狂騒 終わりの始まりの物語。あるいはいけにえの羊は誰だったのか?(検証 バブル失政/ミツマタ)

 ども、バブルの時にもな~んもいいことなかったおぢさん、たいちろ~です。
 この本を読んでる時に、たまたまFRB(連邦準備制度理事会)から”ゼロ金利政策を解除してFFレート(*1)を0~0.25%の水準から0.25~0.5%へ利上げする”という発表がありました。発表は”M”を彷彿とさせるイエレン議長(*2)からですが、なんとこの政策、リーマン・ショックの対応で2008年12月からと7年間もやってたんですな~ 当時のFRB議長はベン・バーナンキでしたねぇ 金利政策っていうのは経済の根幹をなす指標の一つなんでそんなに簡単にホイホイ上げたり下げたりできるモンではなさそうですが。
 ということで今回ご紹介するのはかつて日本でこれを決めるのにドタバタやっていたという話”検証 バブル失政”であります。

 写真はたいちろ~さんの撮影。仙台天守閣自然公園のミツマタです

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【本】検証 バブル失政(軽部謙介、岩波書店)
 日本のバブルはなぜ発生したのかを、国際協調的な円高ドル安を決定した1985年のプラザ合意から史上最高値の株価38,915円を付けた翌年の1990年までを、主に日本銀行側から追いかけたドキュメント。
 まさにバブルの発生から崩壊し始めたころまでの”終わりの始まり”の物語です。
【花】ミツマタ(三椏、三又)
 ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。枝が必ず三つに分岐(三又)するのが特徴。
 和紙の原料になる樹で、日本の紙幣にも使用されているそうです

 ちょっと古い話なのでおさらいすると、この話のころには”公定歩合”ってのがありまして、これは簡単にいうと銀行の金利の基準になるもので、これが下がるとお金が借りやすくなるので経済が活性化し、上がるとより稼がないと金利が払えないので行きすぎた景気を下げる効果があります(逆に預金金利がさがるので庶民が預金をするうまみがなくなります)。ご年配の方は社会の授業で習ったはずですが、覚えてますか??
 本書のお話のスタートであるプラザ合意のころの公定歩合は5%。ちなみに普通預金金利の推移を見ると1980年が最も高く2.75%プラザ合意の1985年で1.5%、その後下がってバブルの1990年で2.08%現在はというと0.02~0.03%程度。隔世の感がありますな~~ 3億円の宝くじを当てれば金利だけで遊んで暮らせる時代が懐かしいです(*3)。

 で、公定歩合を上げ下げするのは日本銀行なわけですが今回のお話は日銀の意思決定にからんでくる”大蔵省(*4)”だの”政治家”だのに対し、どのように処して行ったか、それがバブルにどのような影響を与えたか(与えなかったのか)を検証するという内容です。
 この手の話の常ですが、あとから振り返ればど~とでも言えるんですが、当時の当事者から見ればコトはそんなに簡単ではないというのが本書を読むとよくわかります。おおざっぱにまとめるとこんな感じ。

〔ステークホルダーがたくさんいるけどオールマイティのカードを持ってる人はいない〕
 本書だと”日本銀行”、”大蔵省”、”政治家”。基本姿勢は”経済の安定”と同じ(のはず)ですが、実態はまるで三又状態です
 一的義に公定歩合の決定をするのは日銀ですが、ここの役割は通貨(物価)/金融の安定にあってその線にそって公定歩合を操作するんですが、決定には大蔵省の了解が必要。”大蔵省”は国家財政の健全化に責任があるので日銀の言う通りにはならないし、政治の影響をモロに受けてる。”政治家主導”みたいなんでパワーのありそなのが政治家ですが、その陰にはアメリカの圧力(バブル当時のFRB議長は”マエストロ”の名をほしいままにしたグリーンスパン)があったりするんし、何と言っても選挙に当選しなきゃただの人になっちゃうんで(*5)大衆の嫌がるような政策はやりにくい
 ことほどさように、三者三様にいろいろ考えたり調整したりタイミングを見計らったりしてるうちに時期を逸しちゃったりするんだな~ ってのがわかります。
 で、コトの決着をつけるためにはだれかがワリを喰うはめになります。本書の中でアメリカに円高阻止を飲ませるために日銀に利下げを迫る雰囲気の中

  これではまるで日銀がいけにえのヒツジではないか

と言う反発の声が出たって話がでてきます。でもホントのヒツジさんは未だに目の検査以下の預金金利しかついてない庶民じゃないのかな~(*6)

〔要求は矛盾する、しかもいいとこ取りで〕
 プラザ合意の背景にあるのが”国際協調的な円高ドル安”への誘導なんですが、これに伴って起こったのが円高不況。政治家は財界からなんとかしろと言われ、アメリカからは金利を下げろと言われ、日銀は株価や地価が上昇局面で物価上昇からインフレ懸念があり公定歩合を下げたくないと考え・・・
 ソフトランディングと言えば聞こえはいいですが、要はいいとこどりの結果を出せと
 バブルの本を読むとだいたい悪者になってるのが”総量規制”。バブル期の特徴だった”地下高騰”で家の価格が庶民の手の届かないとこまで行っちゃう一方、土地ころがしで濡れてに泡(まさにバブル)の大儲けをしてる人もいる。で、”この金はどこから出てくるんだ”というとプラザ合意で金余り・貸出先に困っていた銀行だと。で、銀行からの資金を絞ればなんとかなるだろうといのが”総量規制”というやつです。”総量規制”自体は”不動産関連の貸出の伸び率を全体(総量)以下に抑えるように”と言ってるだけで別に”貸すな”といってるわけではないんですがBIS規制や自由化うんぬんもあって(*7)銀行悪役論みたいになっちゃってます。実際に品行方正だったかは別にして。
 総量規制をするかしないかは大蔵省の所管のようですが別にやりたかったわけではないようですが政治の圧力でやらざるをえない状態になったとのこと。この手の政策で難しいのは総論ではなりたっても各論レベルでコントロールするのが難しいみたいで、時あたかも坂道を転がり落ち始めたバブルと重なって急ブレーキ扱いになっちゃいました。まあ、どっちがニワトリでどっちが卵かってとこはありますが。

〔事前にすべてを予見することはできない〕
 バブルの話になると必ずでてくるのが”こんなになるとは思わなかった”。神ならぬ身の人間のやることですから、全てを予見することはできないでしょうし、よしんばできたとしてもそれで最善の対応をとることができたかどうかというとそれもまた別。それが国家を代表するようなエリート集団であってもです。
 本書のサブタイトルは”エリートたちはなぜ誤ったのか”ですが、それに対して本書のしめくくりの言葉がこれ

  日本の「ベスト・アンド・ブライテスト」の頂点に立ったものが不明を恥じるほど
  自体は予見不可能だったのか。
  あるいは、日本の「ベスト・アンド・ブライテスト」は自体の進展を予見できなくても
  頂点に立てる程度のものかのか
  この問いが、これからも繰り返される可能性は小さくない

 本書を読んでると、冒頭に書いたFRBの金利政策の変更の裏にアメリカ、いや世界と日本の政治・政策の裏側でなんだかごちゃごちゃやってるんだろ~な~って気がします。まあ、バブルにしろリーマン・ショックにしろあんだけ痛い目あったんだから、今度はもうちっと学習してうまくやってくれないかな~ 頭のいい人達が集まってんだからとか思っちゃいますけどね

《脚注》
(*1)FFレート
 FRBか決定する短期金融市場での政策金利”フェデラル・ファンド・レート(Federal funds rate)”の略。”ファイナル・ファンタジー”ではありません。念のため
(*2)”M”を彷彿とさせるイエレン議長
 ”M”は007シリーズに登場するジェームズ・ボンドの上官.ここで言ってるのは”ゴールデンアイ”から”スカイフォール”までを演じた女優ジュディ・デンチのこと。銀髪でショートカット、角顔ってなんとなく似てる気するんですけど。
(*3)3億円の宝くじを当てれば遊んで暮らせる時代~
 バブル期の1991年の1,000万円以上1年定期の金利が6.39%。3億円だと単純計算で金利だけで2,000万円近く、普通預金の2.08%でも600万円近くになります、はい。
(*4)大蔵省
 国家予算や税、金融機関の監督など圧倒的なパワーを誇った官庁の中の官庁。接待汚職事件(俗に言うノーパンしゃぶしゃぶ接待)なんかがあって、1998年に国家予算や税をつかさどる”財務省”と金融の円滑化をつかさどる”金融監督庁(現在の金融庁)”に分割されました。あれからもう15年近くになるんだな~
(*5)選挙に当選しなきゃただの人になっちゃうんで
  猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ
 日本自由党幹事長、自民党副総裁などを歴任した昭和の大政治家”大野伴睦”の言葉。。ポピュリズムを表すのにこれほどの名言はないかと思います
(*6)目の検査以下の預金金利しかついてない~
 かつて2%以下しか金利がつかないことを揶揄して”目の検査”と言ってましたが、いまではそれさえ夢の世界です。視力0.02なんて視覚障害として身体障害者手帳が給付される水準です。
(*7)BIS規制や自由化うんぬんもあって
 当時の日本の銀行は過小資本で巨額の貸し付けを海外に行っていたのでこれをなんとかしようとしたのが”BIS規制”の背景。で、いままで行政が指導していた貸出量を”資本が増えればその分貸出量が増やせる”といった自由化の論理が歯止めのかからなかった理由のひとつにあるようです

 

横浜赤レンガ倉庫クリスマスマーケットに行ってきました。キリストオンリーイベントと言えなくもないですが・・・(旦那が何を言っているかわからない件/横浜赤レンガ倉庫 クリスマスマーケット)

 ども、まったくクリスチャンではないですがイベントは好きなおぢさん、たいちろ~です。
 ハロウィン(何のお祭りだ?)が終わったらあっというまにクリスマスモード。それもさすがに12月ともなるといろいろイベントが始まります。その中でも最近始まったイベントで(*1)比較的期間が長くやっているのが”クリスマスマーケット”というシロモノ。元々はドイツで始まった伝統的なクリスマスイベントだそうで、クリスマス関連の料理やグッズを売ってます。
 ということで、今回のお題は”横浜赤レンガ倉庫クリスマスマーケットに行ってきました”であります。(写真はたいちろ~さんの撮影)
 ※今回の話は後半に敬虔なクリスチャン向きではない話になってます。でも、怒らないでね

【旅行】横浜赤レンガ倉庫クリスマスマーケット
 正式な名前は”CHRISTMAS Market in YOKOHAMA AKARENGA”。2015年11月28日~12月25日まで、横浜みなとみらい21地区の観光施設”横浜赤レンガ倉庫”の中央広場で開催されます。(公式HPはこちら

 実は私というより奥様がこの手のイベントが大好きで、わざわざ本場ドイツまで”クリスマスマーケット”観に行ってます(詳しくは奥様ブログ”Annのひとりごと”をどうぞ)。で、その奥様の感想はというと”雰囲気はよく似ている”とのこと。ちゃんとオリジナルでインポートされているようです。私はというと、雰囲気よりもちょっとめずらしいドイツの料理が食べられるという”食いしん坊!万才”的なノリなのですが・・・

 まずはゲートのところから。おもちゃの兵隊さんがお出迎え
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 クリスマスマーケットの特徴の一つが木造りの小屋風の売店
 ここで食べ物とか、グッズが売ってます
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 もうひとつの特徴なのが、小屋の上にあるキリスト関係のディスプレイ
 これはキリストの降誕の様子。駕籠の中のキリストに養父ヨセフと聖母マリア、東方の三博士(”MAGI”ですな)。もう一人いるのは誰だっけ?と娘に聞いたらヨハネではないかとのこと
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 こっちは赤レンガ倉庫の中でやっていたシュタイフ社のテディベア
 ドイツ語で”クリッペ”というキリスト生誕のシーンを再現した装飾をテディベアで作ったもの。写真には写っていませんが、ちゃんと羊飼いや東方の三博士もいます
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 メインのクリスマスツリー(裏側)。表では記念撮影をやっていました
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 サンタとトナカイのディスプレイ
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 暖炉から登場するサンタのディスプレイ。これがリアルだとちっと恐い?!
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 ここからは食べ物編。
 お目当ての一つ、グリューワイン、日本ではなじみのない暖かいワインです
 カップはデポジット制で中のワインだけおかわりできるやり方。カップは返却するとデポジット分の料金が返金してもらえる仕組み。毎年変わるそうで、デポジット分のお金をあきらめるとカップのみお持ち帰り可能。
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 ドイツソーセージ3点盛り&ザワークラウト(キャベツの漬物)
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 クリスマスプレート(チキンの煮込み、ハート型のポテトフライ、卵&ポテトのサンドイッチ)。美味しゅうございました
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 そのほか、ディスプレイがいっぱいあるし、赤レンガ倉庫内でも手作りアーティストのマーケットなんかやっていて、けっこう楽しめました。

 で、ここからちょっと背徳なお話。
 この基本、読んだ本の紹介のブログなんですが”クリスマス・キャロル(ディケンズ、新潮文庫他)”は読んでないし、”聖書”のネタはな~~と困っていたところ、たまたまこんなネタが・・・

【本】旦那が何を言っているかわからない件(クール教信者、一迅社)
 重度のオタクの”旦那”、一般ピープルの奥さん”カオル”、旦那の弟でボーイズラブ同人誌作家の”マヨタマ”の日常を描くラブコメ?4コマ漫画。元々はWebに掲載されていたものを一迅社にて書籍化。テレビアニメ化されたところ見ると人気あったんだろ~な~(誰に?)
 今回のネタはこちらから見ることができます(12話 ”とあるダンナの禁句発言”より

 本に埋もれる旦那に対して”どうせ全部マンガでしょ?”とのツッコミにたいしての旦那の返事

  (聖書を持って)
  旦那  :こういうのもあるでよ
  カオル :聖書? こういうのも見んの?
  旦那  :キリストオンリーイベントに参加した弟子達が作った同人誌・・・
  カオル :よくわからんがやめたほうがいいそれ以上は

  (讃美歌を持って)
  旦那  :ほら キャラソンもあるよ
  カオル :お前天罰恐くないのか!?
  マヨタマ:ユダの悪堕ち攻めの キリスト総受け!!
  旦那  :ここがアケルダマか・・・

 まあ、旦那はあながち間違っちゃいないんですが・・・

〔キリストオンリーイベント〕
 こんだけ多くの宗教に寛容な日本ですら宗教関係者のコラボってないですな、確かに。教皇と法主の”時事放談”とか讃美歌とご詠歌のジャムセッションとか、やってみたら面白そうなんだけど・・
(罰あたりなネタですいません)

〔弟子達が作った同人誌〕
 どうも少なくとも”新訳聖書”というのはキリストが書いたものではなく、”キリストの言葉や奇蹟を弟子たちがキリストの死後書いたもの”(wikipediaより)だそうで”弟子達が作った”というのは間違いないようです。”同人誌”扱いするかどうかは微妙ですが、キリスト教発生当時はそれに近かったのかもしれません。まあ世間は認めないでしょうが・・・

〔ほら キャラソンもあるよ〕
 キャラクターソング(キャラソン)ってのは”アニメのキャラクターの中の人が歌う歌(*3)”ってのと、”キャラクターについての歌”とう2つの意味があって、後者だと”神をたたえる=賛美する歌”の讃美歌はキャラクターソングと言えないこともなさそうですまあ世間は認めないでしょうが・・・

〔ユダの悪堕ち攻めの キリスト総受け!!〕
 これはアウトです
 キリスト教では同性愛は宗教上の罪としてきた歴史があるので、これはアウトです
最近はダイバーシティ(多様性)の考え方が普及してきたので”LGBT(*3)”への理解が高まってきていますが、さすがにこのネタでBL描いたらいろんな機関から(以下略)

〔ここがアケルダマか・・・〕

 アケルダマとは”使徒言行録”という新約聖書の一書の中で、キリストを裏切ったイスカリオテのユダがキリストを売った金で買った土地の名前。”血の土地”という意味だそうですが、ここでは”呪われた土地”ぐらいの意味でしょうか?(ユダの死には別の話もあるそうです)
 寡聞にしてユダの死については知らなかったんですが、まさか”不動産投資”みたいな堅実なことやってるとは思いませんでした。だから、オタクの知識ってのは侮りがたいものです

 まあ、後半は冗談で書いてますので気にしないでください(まじめに突っ込まないように!!)
 クリスマスマーケット自体はけっこう楽しめるイベントなので、ぜひ行ってみてください!!

《脚注》
(*1)最近始まったイベントで
 東京近くで開催されてるクリスマスマーケットの開催回数を調べてみると、六本木ヒルズと表参道ヒルズのが今回で9回目、今回行った横浜赤レンガ倉庫のは6回目、日比谷公園でやってる”東京クリスマスマーケット”は今回が初開催です。六本木ヒルズの開業が2003年、表参道ヒルズが2006年だということを差っ引いても比較的新しいイベントではありそうです。
 ちなみに恵比寿ガーデンプレイスのは”マルシェ ド ノエル”とこちらはフランス語。似たようなことやっているみたいですが、どう違うのかはよくわかりません
(*2)アニメのキャラクターの中の人が歌う歌
 ニュースで2015年のNHK紅白歌合戦に、”ラブライブ!”というアニメに登場する”μ's(ミューズ)”というユニットが登場するってのが出てました(実際にはキャラクターを担当する声優さんたちの集まり)
 何かと話題作りに突っ走ってる感のある紅白ですが、知ってる人以外はまったくわからない世界でしょうなぁ(私はこのアニメみたことないんでよく知らないです)
(*3)LGBT
 Lesbian(レズビアン 女性同性愛者)、Gay(ゲイ 男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル 両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー 性別越境者)の頭文字をつなげたもの。
 ダイバーシティの一環としてイノベーションがど~のとかライフスタイルがこ~のとして語られてますが、それ以前に、多様なものごとに対する謂われなき偏見は人類の乗り越えるべき壁だとの私は思います。

ホロコーストの実行者はサディストではなくノーマルだった。我々と同じように(イェスラエルのアイヒマン/ひまわり)

 ども、私は罪の子なので自信を持って生きてる(*1)おぢさん、たいちろ~です。
 この本を読んでいる時にオウム真理教の菊地直子元被告が殺人未遂罪&爆発物取締罰則違反の幇助罪に問われた裁判で逆転無罪の判決が出ました。事件に対する市民感情(そんなのがあればですが)と法としての正しさ(そんなのがあればですが)(*2)のギャップが大きいこともあり、かなり話題になった裁判。で、この裁判の争点になったのは菊地直子元被告が”人を殺すとわかって薬品を運んだかどうか”。つまり、自分のやってることが犯罪であるという認識があったかどうか。まあ、罪状にもよるので認識がなければみんな無罪ってわけではないですが、少なくとも殺人未遂の幇助罪が成立するには必要なことみたいです。人の行為を裁判で裁くってけっこう難しいんですね、当たり前だけど。
 といいことで、今回ご紹介するのはたぶん人類史上もっともやっかいだった裁判のひとつの記録”イェスラエルのアイヒマン”であります。

上の写真はたいちろ~さんの撮影。三本木のひまわりです
下は弁護士バッチの説明。日本弁護士連合会のhpより転載


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【本】イェスラエルのアイヒマン(ハンナ・アーレント、みすず書房)
 ナティ政権下でユダヤ人問題の”最終的解決”=ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を行ったアドルフ・アイヒマン親衛隊(SS)中佐の裁判記録の本。 サブタイトルは”悪の陳腐さについての報告”
 内容もそうですが、淡々とした文章の筆者アーレントがユダヤ人だというのも驚きです。
 ちなみにこの人の名前を冠した”アイヒマン実験(*3)”というのもあります
【花】ひまわり(向日葵)
 キク科の一年草。太陽に向かって花が回るという明るいイメージからか、弁護士のバッチはひまわりの花弁の中央にはかり(天秤)を組み合わせたもの。ひまわりは自由と正義を、はかりは公正と平等を表しているとのこと。
 今回の話とはあまり関係ないですが、本書の内容と明るいひまわりがあんまし合わないので載せてみました。

 上記のように、判決が成立するためにはいくつかの要件が成立する必要があります。法学部出身ではないのであまり詳しくはないんですが、この本を読んでいると当たり前=前提条件となっている話が実はコトによってはけっこうやっかいってことがわかります。

 ・その行為に対して”犯罪である”という認識があったか
 ・その行為に対して正常な判断力があったか
 ・その行為を実行したのは本人の意思か、上からの命令か
 ・その行為をなさしめた命令は法に準拠するものか
 ・その行為をなさしめた法を定めた国家の意志は正しいものか
 ・その行為を裁く裁判所は正当な権利を有するものか

などなど。”犯罪であるという認識の有無”は菊地直子元被告の判決で比較的わかりやすいですが、それ以外を個別に本書からひろっていくとこんな感じです

〔その行為に対して正常な判断力があったか〕

 裁判で精神鑑定の結果がうんぬんでてくるあれ。行為に対する責任能力があるかというやつです。薬物であじゃぱ~になっているというのは論外ですが、広く知性と呼ばれるものも含まれそうではあります。あとがきにあるアーレントのコメント

  彼は愚かではなかった。
  完全な無思想性-これは愚かさとは決して同じではない-
  それが彼があの時代の最大の犯罪者の一人になる素因だったのだ

 広くいうと嗜好(殺人嗜好とか)もこれでしょうか? アイヒマンに対するアーレントのコメント(上記のアイヒマン実験の元?)

  アイヒマンという人物の厄介なところはまさに
  実に多くの人々が彼に似ていたし
  しかもその多くの者が倒錯してもいずサディストでもなく
  恐ろしいほどノーマルだったし、今でもノーマルであるということなのだ

〔その行為を実行したのは本人の意思か、上からの命令か〕
 なんか起るとサラリーマンがよく言いそうな”上からの命令に従っただけです(*3)”というあれ。てか、よっぽどヤバイ命令でもない限り会社員は上司の指示に粛々と従うもンです。東○とか、ワ○ゲンとかの事件で飛び交うんだろうな~、きっと
 裁判におけるアイヒマンの発言

  自分は決してユダヤ人を憎む者でもなかったし
  人間を殺すことを一度も望みはしなかった
  自分の罪は服従のためであるが、服従は美徳として讃えられている
  自分の美徳はナティの指導者に悪用されたのだ

〔その行為をなさしめた法を定めた国家の意志は正しいものか〕
 これがやっかいなのは、突き詰めると何が”正しい”かってのがあいまいなこと。殺人だって必ず正しくないわけじゃないし(*5)、ある事件が片方から見ればテロだし、もう片方から見れば聖戦だったりなんかしますし。これもあとがきから

  上層の社会全体が何らかの形でヒットラーに屈してしまった以上、
  社会的行動を規定する道徳的戒律や良心を導く宗教的戒律
  -「汝殺すなかれ」-は実質的に消え去ってしまったのだ

 まあ、道徳的戒律や宗教的戒律が正しいとしてですが・・・
 さらには、それが国だと国を守るべきなんとかかんとかがでてくるからこれはもう確信犯。これもあとがきから

  この理論(レゾン・ダデ)によれば、
  国の生存、それ故またその国でおこなわれている法律を維持するための国家の行動は
  その国の市民の行動に適用されるのと同じ規制を受けないことになる
  自己の存立と法支配の存立を確保するために、
  一般的には犯罪と見られている行動をとるべく余儀なくされるることもあるだろう

〔その行為を裁く裁判所は正当な権利を有するものか〕
 ここまで来ると裁判そのものの正当性の問題です、何が正当かも含めて(*6)。
 ドイツの哲学者カール・ヤスパースの言葉とそれに続くアーレントの言葉

  「ユダヤ人に対する罪は人類に対する罪でもあり」
  「従って判決は全人類を代表する法廷によってのみ下され得る」
(ヤスパース)

  一国民のみしか代表していない法廷では、事柄の巨大さは<極小化>されるのだ
   (アーレント)

 本書は1度読んだぐらいでは理解しつくせないようなかなりディープな内容。実際に大論争になったそうです。今だってへたにつつくと大炎上しそうな・・・
 あまり一般的な本ではないかもしれませんが、いつの日か、イ○ラム国との紛争に裁きが下されることがあれば、(どっちが勝つにしても)どうななるかに興味がある人には読んどくべき本かも

  一度おこなわれ、そして人類の歴史に記された行為はすべて、
  その事実が過去のことになってしまってからも
  長く可能性として人類のもとにとどまる
  これが人間のおこなうことの性格なのである


《脚注》
(*1)私は罪の子なので自信を持って生きてる
 自信モテ生キヨ 生キトシ生クルモノ スベテ コレ 罪ノ子ナレバ(太宰治)
(*2)法としての正しさ(そんなのがあればですが)
 裁判所の判決というのは”法律に則って下される”のなので、これは”大前提”のはずというのが疑わしいな~~ってのが今回のテーマです、はい
(*3)アイヒマン実験
 心理学者、スタンリー・ミルグラムによって行われた”ミルグラム実験”のこと。”閉鎖的な環境下における、権威者の指示に従う人間の心理状況を実験”したもの。実験の結果は、普通の平凡な市民が、一定の条件下では、冷酷で非人道的な行為を行うことを証明するものであった。(wikipediaより抜粋)”。詳細はこちらをどうぞ
(4)上からの命令に従っただけです
  しめあげたけど、結局人間だったんだ。だから悪魔を殺していないさ
  上からの命令で仕方なくやってたんだ。俺たちも好きでやってるわけじゃないんだ

 ”デビルマン(永井豪、講談社)”より
(*5)殺人だって必ず正しくないわけじゃないし
  一人を殺せば殺人者だが、百万人を殺せば英雄だ。殺人は数によって神聖化させられる。
 ”殺人狂時代(チャップリン、紀伊國屋書店)”より
 この映画もまだ観てないな~~
(*6)裁判そのものの正当性の問題
 昔、ゴルゴ13で”カンガルーコート”って言葉を知ったんですが、これはマフィアだかなんだかがゴルゴ13に死刑を宣告するというもので、訳すと”人民裁判”、”私的裁判”という意味だとか。マフィアの話だけかと思われるかもしれませんが、ネットで発生する”炎上”とか”祭り”って(以下自主規制)

国際ロボット展,イングラムはいるわ、萌え~なロボットはいるわで1日遊んじゃいました!(2015国際ロボット展/機動警察パトレイバー/ボッコちゃん/南極点のピアピア動画)

ども、長らくブログをさぼっていたおぢさん、たいちろ~です。
 今見たら最後に更新したのが8月14日と3ケ月近くやってなったんですなぁ・・
8月以降、プライベートでは引っ越しがあったり、会社では爆発的に仕事が増えたりと、まあ、本を読んでなかったわけではないんですがブログかくまで時間がなくってという次第。ここんとこやっと落ち着いたんで改めてよろしく!
 ということで、時間もできたことで東京ビックサイトまでちょっとお出かけ。”2015国際ロボット展(*1)”を見てきました。で、そっから本ネタ絡みそうなお気に入りをいくつかであります。

HRP-2改 災害救助用ロボット(*2)〕
写真はたいちろ~さんの撮影。
上はデモンストレーションの様子。中はバストアップの写真、下は実写版”THE NEXT GENERATION パトレイバー”に登場の警察用レイバー”98式AVイングラム

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【本】機動警察パトレイバー(漫画 ゆうきまさみ、監督 押井守、小学館他)
 ハイパーテクノロジーの急速な発展とともに、あらゆる分野に進出した汎用人間型作業機械”レイバー”。しかしそれは、レイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出すことになった。続発するレイバー犯罪に、警視庁は本庁警備部内に特殊車両2課を創設してこれに対抗した。通称”特車2課パトロールレイバー中隊”、パトレイバーの誕生である(初期OAV オープニングより)

 さて、最初はもっともロボットらしいということで等身大二足歩行のヒューマノイド”HRP-2改”。経済産業省所管の”NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)”のプロジェクトである”人間協調・共存型ロボットシステム研究開発”で開発されたロボットHRP-2をベースに、DRCという災害救助用ロボット大会用に改造されたもの。こう書くととってもいかめしそうですが、見た目の第一印象は”おおっ、パトレイバーに出てくる98式AVイングラムではないか!” と、思ってたら実際にこのロボットをデザインしたのはイングラムのメカニックデザインを担当した出渕裕とのこと。開発の科学者曰くイングラムっぽい耳(レーダー)はデザインだけで、特に機能はないそうです。さすが、ロボット科学者! これぐらいの茶目っ気がないとね

 デモでは不整地歩行(上記写真)や一本橋渡りドアを開けたり刺さってるポールを抜いたりとなかなかに芸の細かいことをやっていますが、この科学者の人がMCから”課題はなんですか?”と聞かれて”倒れると故障の原因になる”とベタなお返事。なんでも体重65キロ(wikipediaより)の機体ながらこけると1トンもの衝撃がかかるんだとか。漫画版パトレイバーではオートバランサーで倒れないようになってる設定ですが、実現するとなると難しいんでしょうなぁ・・

〔アクトロイド 人間のまねっこロボット〕
写真はたいちろ~さんの撮影。おしゃべりするアクトロイドです

【本】ボッコちゃん(星新一、新潮文庫)
 バーのマスターが趣味で作った精巧な美女アンドロイド”ボッコちゃん”。マスターはロボットであることを内緒にして接客に使っていた。お客様との受け答えができる程度の知能を持つこのロボットに一人の青年が恋をした・・・
 ショートショートの神様”星新一”の代表作の一つ。全文はこちらからどうぞ

 本人?も言ってるように、かなり人間に近い感じですね。”不気味の谷(*3)”もクリアしてるっぽいですし。アクトロイドというのはactor(俳優)とアンドロイド(android)を合成した造語(*4)。イメージしやすいのは、”マツコとマツコ”に登場したマツコそっくりのアンドロイド”マツコロイド”でしょうか。マツコロイドは、ロボット工学の第一人者、大阪大学の石黒浩教授監修という本格的なシロモノで、ご本人も自分とまったく同じロボットを作ったという人。この人の本を読んだことがありますが(*5)、けっこう面白かったです。年とる本人と年とらないまねっこ(ロボット)の悩みとか。

 しかし、彼女をみていると”ボッコちゃん”を思い出しちゃうのは、昭和のSFファンだからですかねぇ。星新一が”ボッコちゃん”を発表したのは1958年のことだそうですが、半世紀を経て現実がSFにおいついてきたんじゃないかと・・・

〔プリメイドAI あなただけの卓上アイドルロボット〕
上は写真はたいちろ~さんの撮影、
下はDMM.make ROBOTSのHPより”アイドリング!!! with プリメイドAI「サマーライオン」”のPV。自分で撮った動画もあるんですが、こっちのほうが迫力あるんで、リンクしました
Ai2015055621

【本】南極点のピアピア動画(野尻抱介、早川書房)
 日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え恋人の奈美までが彼のもとを去った。省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による“宇宙男プロジェクト”が開始される(amazon.comより)
 バーチャルアイドル”初音ミク”へのオマージュとでも申しましょうか。表紙からしてそっくりだもんな~~

 最後は”萌え系アイドルロボット”としか言いようのない”プリメイドAI”です。てか、このフォルムに”萌え”を感じてる私ってなんなんでしょうね・・・ ”踊る”というエンタインメントに徹したロボットだけあって、ダンスのキレは相当なもの。動画で見られるとわかりますが、ホンモノのアイドルのダンスに引けをとらないクオリティです。 かつて”ロボットダンス”という幾何学的でカクカクしたダンスが流行ったことがありますが、隔世の感がありますな。コーナーでデモの人が”撮影自由ですので、SNSとかYouTubeでアップロードしてください!”と言ってましたが、この手のマニアックな商品ってTVコマーシャル打つよりバズマーケティングする方が効果あんだろうな~

 このロボットがなんといっても凄いのが、138,000円というコンシューマーに手の届く価格でありながら(初代AIBOのほぼ半額)、ダンスデータを作成できる環境が提供されるとのこと。ちょっと前に発売された”初音ミク”という単なる歌を歌わせるためのボーカロイドというソフトが、映像を自由に動かす動画ソフトなんかと組み合わさって、才能あるクリエイターと一大マーケットを生み出したように、このロボットを踊らせた画像をYouTubeとかにアップして、とんでもないボリュームのコンテンツやロボット工学者の卵を生み出しかねんと思うのは私だけでしょうかね?

 ”プリメイドAI”の衣装の型紙とか頭部は3Dモデリングデータを公開するそうですが、そのうちこのロボットの外装をフルスクラッチで作成するヤツも出てきそうだな~ この前読んだ”南極点のピアピア動画”に”オープンソース・ハードウェア”というネットにアップされてるCADデータをダウンロードして3Dプリンタ使って個人が自由に造形できるってネタが出てきますが、やっぱり同じことやるんでしょうな~~(*6)

 アクトロイドとプリメイドAIで共通して言えるのは、動きが思った以上になめらかなことでしょうか。今までのロボット臭さって、どうしても動きが直線的だったり、ピッと動いてピッタっと止まるみたいなとこありますが、今回みたのはかなり動きがまろやかで、そのあたりが親近感をアップさせてる要因かと思いましたね。

 それ以外にもすごいテクノロジーのロボットがてんこ盛り。昼過ぎぐらい回りきれるかな~と思って行ったんですがほとんど1日遊んでましたとさ

《脚注》
(*1)2015国際ロボット展
 日本ロボット工業会と日本工業新聞社主催によるロボットの展示会。2015年度は12月2~5日に東京ビックサイトで開催。446社・団体の参加は世界最大規模だそうです。公式HPはこちら
(*2)災害救助用ロボット
 正確にいうと、”DARPA Robotics Challenge(CRD)”、アメリカ国防総省の機関である国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助用のロボット競技大会に出場するためのロボットとのこと(wikipediaより)
(*3)不気味の谷
 ロボットの外見や動作を人間に近づけていくと、ある所で親密感から嫌悪感に変わり、更に見分けがつかないほど似てくると再び好感がV字回復するという仮説。仮説というのはあんまし人間に近すぎると嫌悪感になるのは感覚的にはわかりますが、そこから先で反転するかどうかはそこまで人間に近いロボットがまだ出てていないので証明できないっっぽいからみたいです。
(4)造語
 ”アクトロイド”ロボット製造会社”株式会社ココロ”の登録商標です。
詳しくはココロのHPをどうぞ
(*5)この人の本を読んだことがありますが
 ”どうすれば「人」を創れるか―アンドロイドになった私”(石黒浩、新潮文庫)
まじめなロボット工学の本ですが、どっかおまぬけ感があるとこが楽しめます。
(*6)”オープンソース・ハードウェア”という
 今だと当たり前のようですが、”南極点のピアピア動画”がSFマガジンに掲載されたのは2008年4~5月号だそうで、方や3Dプリンタの劇的な低価格化は2009年頃、日本で話題になりだしたのは2013年頃からなので、なかなか先見の明のある小説です(”バーチャルプリンタの歴史”HPより)


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