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その主とすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顏の露に異ならず(方丈記/空き家問題/朝顔)

 ども、転勤が当たり前の会社のおぢさん、たいちろ~です。

 先日、会社の同僚のお嬢さんがお引っ越しをするってfacebookに書き込みをしてました。会社の家賃補助がど~のこ~のあって転居を決めたとのこと。で私が書き込んだお返事がこれ

  ゆく川のながれは絶えずして、しかも、本の水にあらず。
  淀みに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。
  世の中にある人とすみかと、またかくの如し。

有名な方丈記の出だしです。まあ、まわりがみんな転勤族なので人は変わるわ、住む場所は変わるわと生々流転な職場環境、今更引っ越しごときでがたがたやってては社会人なんぞつとまりません。とは言いながら、家をどうするかはとってもメンドクサイもの。ましては経済右肩下がりの日本で”憧れのマイホーム!”とかノ~テンキに言ってていいのか? 
 ということで今回ご紹介するのは実も蓋もないお家の本”空き家問題”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影
入谷鬼子母神の朝顔まつり(*1)で見かけた朝顔です

7070136


【本】方丈記(鴨長明、岩波文庫他)
 出家し遁世した歌人”鴨長明”による鎌倉時代の随筆。引きこもりの元祖と言えなくもないですが、この人は高貴な生まれで才能にも恵まれながら出世競争に敗れて出家したんで、その辺のニートとは一味もふた味も違いますって
 前述の”ゆく川のながれは絶えずして、しかも、本の水にあらず”は古文の定番なので、聞いたことはあろうかと。全文を原文で読んでみましたが、そんなに難しくはないのでぜひどうぞ。
【本】空き家問題(牧野知弘、祥伝社新書)
 新築マンションがポコポコ建っている一方、売れない・貸せない家が増殖中。このままだと2020年には空き家の数は1000万軒を突破、40年には10軒に4軒は空き家に! という家持ちの人、これから家を買おうとする人をパニックに陥れる本です、はい。
【花】朝顔(アサガオ)
 ヒルガオ科サツマイモ属の一年性植物。小学生の時”朝顔の観察日記”なんてやらされるほどありふれた花ですが、”世界的に見ても、これほど形態が多種多様に変化した園芸植物は他にない”といわれる代表的な園芸植物(wikipediaより) 入谷鬼子母神の朝顔まつりのも昔は朝顔の展示会みたいなものだったようです


 ”家を買う”というのは普通の”モノ”買うのと違って2つの側面があります。それは実際に”住む”という効用を入手するのと”資産を手に入れる”ってことです(*2)。ところがこのへんの事情がかなり変化してきてるようなんですな。特に”資産価値としての家”というものが今後急速に変化していくということ。資産価値というのは意外とバーチャルなシロモノで、実は”売る”まで確定しないんですな。会計上は”取得原価(買った時の値段)”と減価償却の組み合わせや”時価”で計算することはできますが、確定するのは”売って(売れて)”から。”塩漬け(*3)”なんてバブルのころよく聞きましたが覚えてますか?
 で、モノの値段がどうやって決まるかを簡単に言うと”需要と供給のバランス”。家の場合はこれに”一点モノ”という特殊性が加わるので、さらにやっかいです
 本書を読んで感じたことをいくつか

〔住む人が減ってきている〕
 ぶちゃけ少子高齢化で人口が減ってきているんですんな。にもかかわらず新築マンションがどんどんできてきている。もうちょっとすると受給バランスがくずれてしまうんだよと。どうも日本ってのは”新築信仰”があるというか、”畳と女房は新しい方がいい”というか。まあ、中古マンションだと、以前どんな人がどんなふうに住んでたかわかんないし(*3)、水周りとか経年劣化するものもあるので、新築のほうが安心ってのは確かにあります。でも、高いけど。
 で、”新しいのがどんどん売れるだろう”ってチョ~シこいて新築物件を建てているのが今の状況。でも、今は人口が増えている首都圏だって早晩人口は減るんですよね。そうなれば、5年10年のスパンで見れば、この宴だっていつかは終わるんでしょうし

〔地方だったらもっと住む人が減る〕
 以前”地方消滅(*5)”という本を読んだんですが、地方都市はどんどん人口が減っていく。その処方箋も中核都市にリソースを集中して都市部への若者の流出を食い止めるみたいな内容。つまり地方そのものに家を買う人が減っていくし、中核”以外”の周辺はもっと減るってこと。そんなとこに家を持っていてどうすんねん!みたいな話になります

 つまりこの二つは”需要と供給のバランス”の”需要”の事情。長期的に見れば確実に需要の人口が減ります。さらにやっかいなのが本書ではあんまし扱っていませんが”ファミリーユースからおひとり様仕様”へのシフト。だって結婚する人が減ればファミリーユースのニーズなんて出てこないし(お金持ちのおひとり様なら買うかもしれませんが)、都心から遠いとこ住むんだったら、都心でシティライフを満喫したほうがいいっておひとり様も多そうですしね。
 でも”空き家問題”のやっかいなところは実は”供給”側なんですね。

〔不良債権化する”憧れのマイホーム”〕
 ”高度成長期の企業戦士”だったハッピーリタイア世代には本書でこれが一番ショックかも。はっきり言って”あなたの家は売れない・貸せない”状態かもしれないってことです。高度成長期からバブル期を経て、ちょっと郊外だけど背伸びして住宅ローンをしこたま抱えて、やっと手に入れた”憧れのマイホーム!”。でもその価値を取得原価で見てませんか? 子供たちが成長し、独立して広くなってしまったマイホーム。ここらで家を売って駅に近いマンションにでも。本書でもこんな話が出ていますが、郊外の古い家なんて今どきなかなか売れないんだとか。けっきょく不便でもそこに住み続けるしかないなんてことになりかねない事例もあるそうです

〔家ってのは持っているだけでお金がかかります〕
 もっと悲劇なのは親が亡くなって相続した家いまさら親の住んでた家に引っ越すこともままならず、空き家になった家。それでも容赦なく固定資産税などお金はかかってきます。それで売るか貸すかして現金化できれば使いようもありますが、これができないとまさに老朽化する空き家に。近所や行政から何とかしろと言われてもにっちもさっちもいかない状態に・・・
 推理小説なんかで親の遺産を巡ってどうこうってネタがありましたが、今は昔。バブルが終わって20年、現金はともかくお屋敷なんて押し付け合いの泥沼になりかねませんって

 結局のところ、どうも”家を資産”と見る時代は終わりを迎えているのかもしれませんねぇ

  その主とすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顏の露に異ならず
  或は、露おちて花残れり。残るといへども、朝日に枯れぬ。
  或は花はしぼみて、露なほ消えず。消えずといへども、夕べを待つことなし。

 これも、方丈記の一節ですが、家もまた建てては消えていくうたかたって達観が必要なんでしょうね

 と、人のことを言ってるさなか、私んちも事情により年内に引っ越しをしないといけなくなりました。さて、”マイホーム幻想”に囚われている奥様をどうやって説得しますかねぇ・・・

《脚注》
(*1)入谷鬼子母神の朝顔まつり
 入谷の鬼子母神を中心に毎年7月の6、7、8日に開催されるお祭り。120軒の朝顔業者と100軒の露店が並び毎年40万人の人出があるというなかなかのもの。元々は江戸末期の文化・文政の頃からやっていたものが、いったんすたれて戦後に復興したという由緒あるものだそうです。詳しくは公式hpをどうぞ。
(*2)実際に”住む”という効用を入手するのと
 まあ、アパート経営みたいな”収入源を確保する”とかもありますが、庶民にゃ縁のない話なので、今回は割愛します。
(*3)塩漬け
 逆に言うと”売らなきゃ損益が確定しない”ので損を明らかにしないためにとりあえず持っとく、そのうち上がって利益がでるかもしんないしという心理が”塩漬け”の背景。まあ、もっとひどくなるケースも多かったようですが・・・
(*4)以前どんな人がどんなふうに住んでたかわかんないし
 建物内で自殺や他殺、事故死など人の死亡にかかわる事件があった物件を”事故物件”といって、契約前の重要事項説明の対象だそうです。ただ、どこまで遡って説明するかどうかの明確な規定があるわけではないのでまったく大丈夫ってわけでもなさそうです
(*5)地方消滅(増田寛也、中公新書)
 このまま推移すると急激な人口減少に遭遇すると”消滅可能性都市”は896自治体、49.8%に及ぶ、といういう日本創生会議のによるレポートをわかりやすくまとめた本。サブタイトルが”東京一極集中が招く人口急減”とあるように、出生率の問題だけでなく都市/地方の格差問題なんかも取り上げています
 詳しくはこちらをどうぞ


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