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2015年5月

もうひとつある。覚えとけ。『ごちそうさまでした』って言うんだ(英国一家、日本を食べる/英国一家、ますます日本を食べる/韋駄天)

 ども、喰う、寝る、遊ぶが大好きなおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社で海外赴任になった人がおりまして、その人が送別のあいさつで”新橋の立ち食いそば屋のオヤジが外国人と英語で会話をしてた”ってなことを言ってました。そんだけ英語が一般化しているって内容だったんですが、立ち食いソバ自体も外国人にとって一般化してんですかね~~~ 世界に冠たる日本のファーストフード”TACHIGUI SOBA”ですから、外国の人も食べてみたかったんでしょうか?!
 まあ、日本でこんだけ海外グルメの紹介をやってるんだから、外国の人だって日本のグルメに興味をもっていそうなモノ。ということで、今回ご紹介するのは英国人一家が日本の料理を紹介するという本”英国一家、日本を食べる”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
京都嵐山の天龍寺におわします”韋駄天”です

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【本】英国一家、日本を食べる(マイケル・ブース、亜紀書房)
【本】英国一家、英国一家、ますます日本を食べる(マイケル・ブース、亜紀書房)
 日本と韓国のハーフの料理人”トシ”から渡された一冊の本”Japanese Cooking: A SimpleArt(*1)”。この本に心を奪われた英国人フードライター”マイケル・ブース”は決心する。”実際に日本へ行って、この目で見て、自分の舌で味わってみるしかない”。かくて妻のリスン、息子のアスガーとエミルを伴って北は北海道から沖縄まで、日本の食を求めて駆け抜けることとなる・・・
 NHKでアニメ化されて放映中(*2)。
【神仏】韋駄天(いだてん)
 仏教の天部に所属する増長天の八将の一柱。
 佛法護符の善神にして一刹那の間に宇宙を三巡して魔鬼を剪除し、食と法を転ずるという。世に韋駄天走りとはこのことであり、庫裏(台所)に祭祀して火盗雙除伽益守護を祈るのである(天龍寺の説明より)
 韋駄天が釈尊のために方々を駆け巡って食物を集めたことから”ごちそう(御馳走)”の語源となったんだそうです


 結論からいうと、この本ってけっこう面白かったです。で、なんで面白いかというと感じ方が”嗜好”と”文化”で日本人にはないギャップがあるんですな。もっと砕いて言うと”好き嫌い”と”言葉の連想”の違いというか。それぞれ見ていくとこんな感じでしょうか。

〔好き嫌い〕
 料理ってのは単に”味”だけじゃなくて、”見た目”、”食感”、”匂い”なんかも好き嫌いに影響されます。マイケルが食べたモノの感想から拾うとこんなこと言ってます。

・日本酒
 マイケルが利き酒でのテイスティングの感想
  1杯目:華やかでフルーティ。ミルクに似た粘り気
  2杯目:少し酸味があり、酵母の匂いがしてそれほどでもない
  3杯目:その後はずっと”石油っぽい”だけ
 本人は”どうやら僕には、酒のニュアンスを理解するだけの味覚がないみたいだ”と言ってます。まあ、私自身は”石油っぽい”と思ったことはないですが、そんな感じ方をする人がいること自体ちょっと意外。まあ、ベトナム料理の定番”パクチー(*3)”だって日本人(私んちの奥様です)に言わせりゃ”へこき虫の匂い”って言ってんだし・・

・ワサビ
 おそらく日本人にとって外国人に受ける日本の食材で意外なものベスト10に入りそうなのが”ワサビ”。マイケルは”病みつきになってしまった”と書いているほど。わざわざ東京・かっぱ橋までサメ皮のわさびおろしを買いに行ってますが、日本人だってそうそう持ってないそ、そんなの。
 以前”WASABI(*4)”つ~映画で主演のジャン・レノがわさびだけをうまそうに食べているシーンがありましたが、”これって笑うとこ?”って思っちゃいましたが、そうじゃないんでしょうか?

・高級すき焼き用牛肉
 逆にあまり受けなかったのが牛肉。高級すき焼き用牛肉に対して

  クリーミーな感触だという意外は、どんなふうにおいしいかを言い表すのは難しく
  並みはずれてうまい脂肪と言うしかない

   (中略)
  日本の肉はたまに食べるならすごくおいしいけれど、
  僕にはあまりにも軟らかすぎて脂肪が多すぎる
  肉は、口のなかで溶けるべきなのだろうか? 
  アイスクリームじゃなくて、動物の肉なのに

 これは好みなのか文化なのかびみょ~なところ。本人は”もう少し歯ごたえのある肉のほうが好みだからだ”と言ってますが、霜降り信仰の日本人にとって外国産の牛肉は”固すぎてぱさぱさしてる”みたいな言い方をするんだから文化的な要素もあるのかも。

・豆腐よう
 もっともダメ出しくらったのがこれ。”あまりの気持ち悪さに、皿に吐き出すしかなかった”、”ロックフォールチーズと核廃棄物を足して二で割ったものを食べたみたいな気分だったけど、これは間違いなく食べ物らしい”ともうボロクソ。
 沖縄料理の名誉のために付け加えておきますが、私が沖縄料理の中でも”豆腐よう”は大好きです。初めて沖縄に行った時にはまっちゃいました。

〔言葉の連想〕
 もうひとつの違いは”言葉の連想”。マイケルは”フードライター”ですんで、料理を”言葉”で説明するってのがお仕事です。つまり自分の食べた料理を英国人=日本人以外の人にわかるように言わなきゃなんないわけで、となると読者=英国人が理解しやすいようにしなきゃなんない。となると自身の感じ方はもちろん文化、つまり依って立つ知識が違う人がイメージしやすい”言葉”を選ばなきゃなんない。そこに日本人の”言語感覚”と違うギャップがある。マイケルが料理を説明している言葉から。

・たこ焼き(タコボール)
 本書では”味のついたドーナッツみたいなもので、歯ごたえのあるタコの足のブツ切りが中に入っている”。調べてみるとドーナッツの原型ってのは真ん中に穴のあいたリング状(ドーナッツ型)ってわけではなかったようで、ミスドでも穴なしタイプも結構売っているんで、あながち間違っているってわけではなさそうですが、でもタコ焼きに”ドーナッツみたいなもの”って言われてもねぇミスドで出てきたらちょっと引きそうです。まあ、中華料理は出てきますけど

・お好み焼き
 ”いろいろなものが入っている分厚いパンケーキ(*5)”、”ジャパニーズピザ”、”オーサカオムレット”とか言われているお好み焼き。マイケルの感想は

  パンケーキとトルティーヤのハイブリット

 ”トルティーヤ”はスペインのオムレツ風卵料理。ジャガイモ、タマネギ、ベーコンなどを炒めたものを卵に混ぜてフライパンで丸い円形の厚焼きにするというレシピで見れば材料こそ違うものの確かにトルティーヤに似てなくもないかな。少なくともパンケーキやピザ扱いされるよりは違和感ないかも
 しかしまあ、外国の人にとって”粉モン”はドーナッツかパンケーキなんでしょうかね?!

・押し寿司
 関西でいうところの”ばってら”。作り方の説明ですが
  箱に敷き詰めた酢飯の上に魚を置き、その上に石で重石をして
  できあがった大きな寿司の「ケーキ」を一切れずつ長方形に切り分けて食べる
 間違っちゃいませんが、英国人にとって細長い食べ物って”ケーキ”の連想ですか?
 まあ、私だって富山の”ますのすし”を見て”ケーキみたい”と思ったのであんまし人のことは言えませんが・・

・寿司と寿司を超えて
 この本の原題は”SUSI AND BEYOND”。直訳すると”寿司と寿司を超えて”でしょうか。原題と日本語の書名が違うケースってままありますが、”寿司と寿司を超えて”では日本ではこれほど売れなかったんじゃないかと。
 かつて外国の人のとって日本料理といえば”すき焼き、寿司、天ぷら”って感じなんでしょうが、今でもですかねぇ(*6)

 まあ、好みの異なる人、異文化の人同士が出会うといろんな違いが出てくるのは当然のこと。でも共通項ってのもあるんじゃないかと。マイケルと日本料理の素晴らしさを紹介した”トシ”との会話

 トシ  :もうひとつある。覚えとけ。『ごちそうさまでした』って言うんだ
 マイケル:ごちそうさまでした。それ、何だい?
      白人には料理ができないっていう意味?
(*7)
 トシ  :仏教から生まれた言葉で、
      食べ物を収穫する人や料理をしてくれる人に感謝をするという意味だ
      今度から、食事のたびに言えよ

 韋駄天のごとく日本を駆け抜けたマイケルには良い言葉でしょうね。

《脚注》
(*1)Japanese Cooking: A SimpleArt(辻 静雄、講談社インターナショナル)
 フランス料理研究家にして辻調(辻調理師学校)グループの創設者である辻 静雄による日本の料理を紹介した本(すいません、読んでません。だって英語の本なんだモン)。初版は1980年ですが2006年度に新装版が出版されていて、現在でもamazonで入手可能。
(*2)NHKでアニメ化されて放映中
 実はこの本を読むきっかけがアニメのほう。いかにもアメリカっぽい愛くるしいキャラと、カップヌードルの変なNIPPONのCMっぽいPGMがおちゃめ。第一話をご覧になりたいかたはこちらからどうぞ。
(*3)パクチー
 ”コリアンダー”、”香菜(シャンツァイ)”とも言いますが同じもの。娘に頼まれて今年植えました。娘は生食でバクバク食べてますが、奥様的にはNGみたいです。
(*4)WASABI
(主演 ジャン・レノ広末涼子、製作 リュック・ベッソン、パラマウント)
 冗談のようですがホントに映画名が”ワサビ”。2002年に日本で公開されたフランス映画です。ジャン・レノと広末涼子が父娘というかなりムリ筋な設定といい、フランス人はいった日本をどう見ておるのだ? と思っちゃいますね。
(*5)パンケーキ
 ”パンケーキ(pancake)”って日本人的には”ホットケーキ(hotcake)”のほうが通りがいいかも。なんたって”ホットケーキミックス”が売っているから。ちなみに熱い、もとい厚いのがホットケーキ、薄いのがパンケーキぐらいの違いだそうです。
(*6)日本料理といえば”すき焼き、寿司、天ぷら”~
 坂本九の名曲”上を向いて歩こう”(作詞 永六輔、作曲中村八大)ですが、外国での曲名が”SUKIYAKI(スキヤキ)”とまったく意味不明。
 ちなみにこの曲がビルボードで週間1位を獲得したのは1963年のことです。
(*7)白人には料理ができないっていう意味?
 どうも英語には”ごちそうさま”に当たる単語ってないようです。美味しければ”That was good”や”That was excellent”あたりを使うんだとか。あと日本人的には”Thank you”あたりが感覚的にあうんでしょうか。


中国人を登場させてはならない、っていうより時代の違いのほうが推理小説にとって面白いかも(枯草の根/虹の舞台/海岸ビルジング)

 ども、大学時代の第二外国語は中国語でしたが、ま~ったく中国語は読めないおぢさん、たいちろ~です。よくあれで単位がとれたなぁ・・・
 先日、ジェフリー・ディーヴァーの”石の猿”を読んでましたら中国人の刑事”ソニー・リー”ってのが登場しました。東洋思想の持ち主で、調和を重んじる(と言ってる割には横紙破りな)人です。海外で活躍する探偵役の中国人って私が読んだことないのか、実際数が少ないのか、でも昔なんとなくいたような気がして調べてみたらいましたね、陳舜臣の推理小説に登場する”陶展文”ってのが。1961年の江戸川乱歩賞枯草の根”に初登場ですのでリアルタイムってわけではなさそうですが。
 ということで、今回ご紹介するのは”陶展文”を主人公とする推理小説”枯草の根”、”虹の舞台”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
神戸海岸通りにある”海岸ビルジング”です

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【本】枯草の根(陳舜臣、講談社文庫)
 神戸海岸通にある料理店”桃源亭”の店主”陶展文”。シンガポールの大富豪”席有仁”はかつて危機に瀕していた会社を救ってくれた神戸在住の中国人の元銀行家を訪れた。その直後に”陶展文”の友人である老高利貸しの中国人が殺された。一見無関係の事件は、かつての戦争時代の混乱期のある事情がからんでいた・・・
【本】虹の舞台(陳舜臣、毎日新聞社)
 料理店”桃源亭”の店主”陶展文”は三宮のレストラン街に出店を求められる。そのレストラン街にインド料理店を出店するインド人”マニラル・ライ”の家を訪れると何者かに銃撃され、直後にライの死体が発見される。彼はインド独立の英雄”チャンドラ・ボース”の宝石を横取りしたという噂があり、何者かが彼の暗殺を企てているという・・
【旅行】海岸ビルジング
 神戸三宮の海岸通りにある石造りの風格のある建物。パネルによると、竣工1911年(明治44年)とありますので”桃源亭”がお店を開いていたころにはあったはず。竣工当時は海岸通りで一二を争う名建築だったそうです。現在はセレクトショップや事務所などが入っています。
 元町駅から南京町をぬけて海側にいくとすぐ近くにありますので、神戸観光の際はぜひどうぞ(地図はこちらから


 いろいろ見たんですが、どうも中国人が探偵役の小説ってそもそも少ないみたいです。まあ、1961年なんて日中国交正常化の前なんで中国の人自体が少なかったこともあるようですが(*1)、どうも原因は”ノックスの十戒(*2)”にありそうです。これは推理小説の基本指針をまとめたもので、こん中に

    中国人を登場させてはならない

ってのがあります。理由は”この「中国人」とは、言語や文化が余りにも違い、既存の価値観や倫理観が通用しない外国人全般、という意味である”とのこと(wikipediaより)。 まあ、イギリスの聖職者だったノックスにしてみれば、中国人ってのはナゾの宇宙人扱いだってんでしょうかね。でも、”枯草の根”や”虹の舞台”を読んでみると主人公の”陶展文”ってとてもロジカルシンキングな人。むしろ、時代背景なんかのほうが違ってるって感じかな。まあ1960~70年代ごろの”ちょっと昔の戦後の風景”に感じる違和感というか、感じ方のズレというか、ガジェットの不思議感というか、推理小説に限らずあるんですね。ただ、推理小説に色濃く出る傾向にあるっていうか・・・

 思うに、推理小説って、トリックだとか動機って時代に引っ張られるからかなぁ。たとえばほとんどの人が携帯電話を持っている現代と、固定電話しかなかった時代とではトリックの組み立て方がまったく違うだろうし。
 街の風景にしても、その風合いを決める要素なんでしょうが、時代が変わるとテイストも変わるんでしょうか。料理店”桃源亭”のある場所は神戸・湾岸通の東南ビルってことになっていますが、今の湾岸通って高速道路の高架が通っている場所でとっても近代的な雰囲気。すぐ近くには神戸メリケンパークやポートタワーがあります。写真の”海岸ビルジング”は明治末期の建物ですが、作中の”東南ビル”は明治初年に建てられたとのことですんで、雰囲気近いでしょうか。でも、エキゾチックな建物がむしろ観光スポットになるってことは、もう残り少ないってことでもあるんでしょうねぇ

 でも、一番の違いってのは戦争や時代の流れに翻弄される人々の過去のありようでしょうか。”枯草の根”では、戦争により零落した元銀行家や、その銀行家に助けられ今や新興財閥となった男。そしてその男に会えない過去を抱えたもう一人の男。”虹の舞台”ではアウトカーストから必死に抜け出そうとしたインドの男と、貧困からの脱出を図る女。それぞれの時代や虐げられた社会から足掻こうとして起る殺人事件・・・
 決して殺人が許されることではないですが、2作とも名探偵”陶展文”はある意味歴史の結果として犯行に及んだ犯人の内省を促すことで自供させるってパターン。後に歴史小説家として名を成す陳舜臣ですが、そんな作風につながるような作品ですねぇ。

 当時は、中国の人がまあ珍しかった時代だったでしょうか(*3)。だからこそ神戸の中国人コミュニティみたいなのが時代の空気を持ってたんだな~ って感じです。現在の”銀座で中国人の爆買”なんてニュースを見ると隔世の感がありますが・・・

 ノックスの十戒に言う”中国人を登場させてはならない”ってのは、これだけグローバル化が進んだ現代では通用しないっていうか、推理(論理)に国境はないっていうか。むしろ”あの時代の空気をまとった推理小説”ってコトで読んだ方が面白いかもね。


《脚注》
(*1)1961年なんて日中国交正常化の前なんで~
 田中角栄、周恩来首相による日中国交正常化が1972年福田赳夫首相による日中平和友好条約の調印が1978年のことです。ちなみに私が最初に見た中国系の映画ってのはブルース・リー主演の”燃えよドラゴン”で1973年公開ですから、中国の人が主人公ってのももうちょっと後の時代になってからでしょうかねぇ・・
(*2)ノックスの十戒
 他にも”未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない”とかありますが、これだと今読んでるジェフリー・ディーヴァーの”リンカーン・ライムシリーズ”なんかはアウトかなぁ
 ちなみにこれを書いたロナルド・ノックスという人は退職時はカトリックの大司教という偉い人。推理小説を書くことは教会からは不評だったようですが、当たり前っちゃ当たり前です。
(*3)中国の人がまあ珍しかった時代だったでしょうか
 総務省統計局の資料によるとこの小説が書かれた1961年当時の外国人登録者数は約64万人、内中国の人は6.4万人法務省統計によると2014年6月末現在の在留外国人は208.6万人、うち中国の人は64.9万人中国の人はほとんど10倍に増加しています。まあ、外国人自体が珍しい時代だったんでしょうね。

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