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患者の健康のみならず、推理小説にも調和が必要なようで(石の猿/石猿)

 ども、あいかわらずジェフリー ディーヴァーにはまっているおぢさん、たいちろ~です。
 最近の中国と言えば、世界第二位の経済大国になっただの、アジアインフラ投資銀行(*1)を立ち上げるだの経済的に元気いっぱい。でもちょっと前までは中国からの難民だの、政治的弾圧だの(*2)やってました。それを考えると隔世の感がありますなぁ。まあ、最近この手の話題は北○鮮が一手に引き受けてる感もありますが・・・
 ということで、今回ご紹介するのはそんな中国難民をめぐっての警察小説、リンカーン・ライムシリーズの第4作”石の猿”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
神戸南京町にある猿の石像です

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【本】石の猿(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 中国の難民船がニューヨーク州沖で沈没、この船に乗船していた蛇頭の殺し屋、通称”ゴースト”は自分の犯罪の証人である生き延びた10人の難民を追って動き出す。一方、事件の解決を図る移民帰化局、FBI、ニューヨーク市警らは科学捜査の天才”リンカーン・ライム”とともにゴーストの捜査を行う。顔さえ不明なゴーストと行方知れずの難民の行方は・・・
【動物】石猿
 石から生まれた猿と言えば”西遊記”に登場する”孫悟空”。今の人なら”ドラゴンボール”なんでしょうか。先日、愛川欽也さんがお亡くなりになった時に”いなかっぺ大将(*3)”つながりで悟空の声を演じた野沢雅子さんがコメントしていましたが、愛川欽也さんは”悟空の大冒険(*4)”で沙悟浄の声も演じておられました。
 謹んで、故人のご冥福をお祈りいたします。


 第四作になるリンカーン・ライムシリーズですが、四肢麻痺の科学捜査官”リンカーン・ライム”と美貌のその片腕”アメリア・サックス”の活躍は相変わらずですが、本作で一番印象に残ったのは中国の公安局刑事”ソニー・リー”です。ネタバレになりますが(*5)、潜入捜査官なのに初登場シーンは難民船でゲロゲロやってるだけだし、命からがら海岸にたどり着くなり、サックスの車から金はくすねるわ、証拠のメモを盗むわと”なんじゃこりゃ”な人。でも、中盤からとんでもない大活躍。コンピューターにガスクロマトグラフィーにとデジタル時代の代表格のライムに対し、道(タオ)に風水に調和にと東洋思想なアナログ感覚のリー刑事。真逆な二人ですがけっこう意気投合。てか、ライムとタメはって捜査方法の言い争いができてる人っていままで出てきてないもんな。けっこう知恵モノだし、足で情報を取ってくるタイプだし、ゴースト相手にドンパチやるほどのタフガイだし。ライムとサックス、FBIの捜査官のデルレイたちがチームでやっていることをほとんど一人でこなしてるようなスーパーユーティリティ。そのうえ皮肉屋となればこれはもう面白くないはずがない。解説では映画化するなら”ジャッキー・チェン”に演じさせたいと書いてますが、最大限の賛辞なんでしょうね。

 で、リー刑事の東洋思想ってのがこんな感じ。危険な脊髄神経の再生手術をうけようとするライム(老板)とリー刑事の会話

  リー :でも、医者は違う。あまり科学に頼らない。
      患者に調和を取り戻させるだけだ

       (中略)
  ライム:つまり、私はこのままで調和がとれていると思うのかね
       (中略)
  リー :あんたがこうなったのは運命だよ、老板
       (中略)
      あんたの人生は今のままでバランスが取れているんだよ、老板
       (中略)
      孫悟空は幸せだった。調和を見つけたからだよ
       (中略)
      プロレタリア文化大革命だ。すべてを破壊し、人を傷つけ、人を殺した
      政府と党は正しいことをしなかった
  ライム:自然な姿ではなかったわけだな。調和が壊された
  リー :よくできました、老板

 ことほど左様に、リー刑事って調和を重んじる人ですが、やってることは横紙破り。昔の刑事モノにでてくる一匹狼、でも1時間で事件を解決するバイオレンス派の人です。

 さて、調和をという話ですが、”石の猿”って読んでる途中はなんとなく調和しないんですな。どうも”動機”ってのがしっくりこない。本書裏表紙の紹介には密航者達を抹殺する理由に”自分の正体を知った”といった文章はありますが、職業的殺人者のゴーストがそりゃ迂闊すぎるでしょう?!(*6) そもそも顔を見られたくないのに密航者と同じ船に乗るか? みたいな。このあたりのもやもやを最終局面でちゃんと解決しているのは、さすがジェフリー・ディーヴァーです。

 本書は、アメリカの推理小説なんですが、東洋思想をキーに扱ったというあんまし読んだことないパターン。助演のリー刑事は中国人刑事役いい味出してるし。後半であっさり(といっても、事件解決の鍵となる証拠物件を残して)殺されちゃってますが、普通の小説家だったら、この人メインでシリーズ書いちゃいそうな~~ ぐらい。面白く読ませていただきました

PS.
 海外で活躍する探偵役の中国人って私が読んだことないのか、実際数が少ないのか? たしか昔はいたような気がするんですが?? こんど調べて読んでみよう


《脚注》
(*1)アジアインフラ投資銀行
 略称”AIIB”(Asian Infrastructure Investment Bank)。中国が主導で2015年に開業を予定しているアジア向けの国際開発金融機関。日本は創設メンバーへの参加のお誘いにアメリカの顔色うかがってかシカトしてたら、いつのまにかイギリス、ドイツ、フランス等51ケ国参加してましたというオチ。相変わらず流れの読めない国なのかなぁ、日本って。
(*2)政治的弾圧だの
 天安門広場に集まった民主化を求める一般市民に対して中国人民解放軍が武力弾圧を加えて多数の死傷者を出した”天安門事件”が起ったのは1989年(平成元年)と、たった四半世紀前のことです。
(*3)いなかっぺ大将(原作 川崎のぼる、声優 野沢雅子、愛川欽也、タツノコプロ)
 1970年にフジテレビで放送放映されたアニメ。主人公の柔道少年”風大左衛門”の声を野沢雅子さんが、その師匠である猫”ニャンコ先生”を愛川欽也さんが演じておりました。
(*4)悟空の大冒険(原作 手塚治虫、声優 右手和子、野沢那智、愛川欽也、虫プロ)
 1967年にフジテレビで放送放映されたアニメ。60年代後半の作品ながらかなりポップな感じで楽しめた記憶があります。総監督は後に”どろろ”や”タッチ”の監督を務める杉井ギサブロー。
 愛川欽也さんはスコップにズタ袋、宝探しに人生を賭けるじいさん”沙悟浄”の声を担当。上記以外にも峰不二子の”増山江威子”、ドクロベエ様の”滝口順平”、初代フグ田マスオさんの”近石真介”など後に日本のアニメシーンをけん引する声優が綺羅星のごとく参加してました。(詳しくはwikipediaで)
(*5)ネタバレになりますが
 本書の登場人物紹介のページに”中国公安局刑事”って書いてありますが、いいのかこれって?
(*6)職業的殺人者のゴーストがそりゃ迂闊すぎるでしょう?!
 ”ゴルゴ13(さいとうたかお、リイド社)”の最初期のエピソードにスナイプを目撃されたゴルゴが、目撃者を殺すってエピソードがありましたが・・・
 (”白夜は愛のうめき" 2巻に収録)

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