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植物相で犯人の居場所を特定するのは簡単じゃなさそうです(エンプティ・チェア/モウセンゴケ)

 ども、高山植物なんかを愛でるおぢさん、たいちろ~です。
 山登りなんぞをやっていますと、自分のいる標高や位置を特定するのに植物を観察するってのがあります。標高でいうとおおむね下から

  高木→低木→ハイマツなどの特定種→高山植物→植物が生えない

というふうに植物相が遷移しますし、下から見上げるとだいたい色(緑から茶色)の違いもありますんで、”この辺まで登ってきた”ってのがわかります。高山植物にしても登山地図には”○○の群生”みたいのが書いてあったりするので、ちゃんと見てれば場所がわかるケースもままあります。まあ、登山を楽しむ分には牧歌的でよろしいんですが、これが犯罪捜査となれば話は別。
 ということで、今回ご紹介するのは植物を始めとする残留証拠を捜査に活用する本、リンカーン・ライムシリーズの”エンプティ・チェア”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
尾瀬牛首十字路付近で見かけたナガバノモウセンゴケです

Photo


【本】エンプティ・チェア(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 男性一人を殺害し、女性二人を誘拐して逃亡した町の問題児”ギャレット”。脊椎手術のためにノースカロライナ州を訪れていた”リンカーン・ライム”と”アメリア・サックス”は”ギャレット”の捜査協力を依頼される。分析機材も充分ではなく土地勘もないライムだが残された証拠物件をもとにギャレットの行方を追うが・・・
 ”リンカーン・ライムシリーズ”の3作目
【花】モウセンゴケ
 モウセンゴケ科に属する植物。葉に粘液を分泌して虫を捕獲する食虫植物としても有名。本書内では”サンデュー (sundews) ”の名前でも呼ばれています。
 日本では北海道から九州まで湿地帯に自生してますが絶滅危惧種のためあんまり見る機会はないのかも。6~8月に白い花が咲くそうですが、尾瀬で見た時は見かけませんでしたね。


 ”エンプティ・チェア”での捜査の特徴は前2作と違って容疑者を特定することではなくてどこに逃亡しているかを残留証拠をもとに特定する、言ってみれば”鬼ごっこ”です。ライムは植物だの土だの石灰岩だの薬品だの酵母だのありったけ使って”容疑者がどこに逃げているか?”を推理することになります。発見された残留証拠の中にある植物を推理に活用しようとしますが、土地勘がないので地元に詳しい社長ダヴェット氏に協力を依頼。でも、これがなかなか難しいんですな。そもそも植物相で場所を特定するのってのはある程度範囲が限定できるものの、ピンポイントで”ここ”って示すのは難題
 ギャレットのズボンの裾の折り返し部分から発見された”切り落とされた松葉”に関してのダヴェットのコメント

  ダヴェット:松葉が見つかっているなら、この辺かな
         (中略)
        マツの林があるのは、私の知る限りでは北東部だけだ。この辺りですよ            (中略)
        捜索範囲は数百平方キロメートルもある。

 数百平方キロメートルがどの程度か調べてみると、おおむね横浜市が438平方キロ、名古屋市が326平方キロ、千葉市が272平方キロ、大阪市が223平方キロですんで、ほぼほぼ日本の大都市圏の県庁所在地の市ぐらい。つまり”犯人は名古屋市にいます”と言ってる感じ。まあ、まったくわからんよりはマシでしょうが絞り込むにはまだまだ。

 で次のステップに行きます。同じく発見されたモウセンゴケに関するコメント。

  ダヴェット:いいかね、カロライナベイのもっとも興味深い特徴の一つは
        周辺に食虫植物が生育するところなんだ。
        たとえばハエジゴク、モウセンゴケ、サラセニア
(*3)
        たぶん、水辺には昆虫が豊富に生息しているからだろう
        粘土や草炭と一緒にモウセンゴケが見つかっていることから考えて
        犯人の少年がカロライナベイの近くに行ったことは間違いないと思う

これでだいたい180~200平方キロメートル岐阜市が203平方キロ、徳島市が192平方キロ、足利市が178平方キロですから、やや大きめな地方都市ってとこでしょうか。ちょっとは絞り込めましたかね?
 アメリカはハンパなく面積が広いので(*2)、これでもマシでしょうか。日本だったらモウセンゴケが生えている場所ってだけでかなり絞り込めそうですが・・・
 ギャレットはライムの推理で自分のいる場所をかなり早い時間で良い当てられて驚いている話がでてきますが、まあ、そうでしょうなぁ

 本書でライムはギャレットを1度逮捕、逃亡された後に再逮捕に成功しています。後にこの実績をひっさてて司法取引(というか闇取引?)であれこれやっていますが、これは本書を読んでのお楽しみ。相変わらず二転三転するストーリーが面白い一冊です。

《脚注》
(*1)ハエジゴク、モウセンゴケ、サラセニア
〔ハエジゴク〕
 別名”ハエトリグサ”。モウセンゴケ科ハエトリグサ属の食虫植物。二枚貝のような形で周辺にはトゲが並んでいる葉の部分で虫を捕獲します。
〔サラセニア〕
 ウツボカズラ目サラセニア科に属する食虫植物。筒状の葉が落とし穴になっていてそれで虫を捕獲します。仮面ライダーの登場する改造人間”サラセニアン”のモトネタ
 wikipediaによると食虫植物が虫を捉えるのは”日光や水は十分であるが、窒素やリン等が不足しているため他の植物があまり入り込まないような土地、いわゆる痩せた土地に生息するものが多く、不足する養分を捕虫によって補っている”そうなので、ダヴェットの説明の”水辺には昆虫が豊富に生息しているから”という説明はあまり正確ではありません。念のため。
(*2)アメリカはハンパなく面積が広いので
 今回舞台になっているノースカロライナ州の面積は約13万9400平方キロ。日本だと北海道と九州、四国の面積の合計(約13万8500平方キロ)に匹敵します。これで全米第28位なんですからねぇ

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