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2015年2月

物事にはすべて理由があり、行動には意図がある。それを考える時には自分の願望を載せないことだ(宇宙軍士官学校 -前哨-/日本丸Ⅱ世)

 ども、オールデーズなSFファンのおぢさん、たいちろ~です。
 ”宇宙軍士官学校 -前哨-”の2巻目読んでます。相変わらずSFオタク趣味満載なストーリー展開。結構モトネタばらしの会話してまして、”幼年期の終り”に”百億の昼と千億の夜”に”エンダーのゲーム”にと(*1)。まあ、三冊とも読んでる私も私ですが・・・
 このシリーズってSFネタといいオタクネタといい、けっこう好みにジャストミートなんだよな~ これが。ということで、今回ご紹介するのは”宇宙軍士官学校 -前哨-”の第二巻であります。


写真はたいちろ~さんの撮影(*2)
寄港で一般公開された大型練習帆船”日本丸Ⅱ”です

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【本】宇宙軍士官学校 -前哨-(鷹見一幸、ハヤカワ文庫)
 21世紀初頭、異星人によるオーバーテクノロジーの供与を受けてから15年。宇宙軍の士官となるべく集められた有坂恵一たちに与えられた訓練ミッションは練習戦艦”アルケミス”により敵対する宇宙船と戦うこと・・・
【乗り物】日本丸Ⅱ世
 1984年に就航した大型練習帆船。総トン数2,570トン、全長110.09 m。帆船ですが、ディーゼルエンジンも搭載されていて機走も可能なスグレモノ。
ちなみに”平洋の白鳥”と謳われた初代”日本丸”は横浜日本丸メモリアルパークで見ることができます。


 さて練習戦艦”アルケミス”ですが、練習戦艦とは言いながら全長300m、先端部直径50m(イラストでは艦橋部、エンジン部はもっとでかい)と地球規模で見れば堂々たる大戦艦。上記の日本丸が全長110m、実際の宇宙船でいうとアポロ11号を打ち上げた”サターンVロケット”は全高110.6m、直径10.1mですから全長だけでも約3倍。そのデカさは相当なものです。
 で、こんだけ巨大な宇宙船で何をするかというと戦闘シミュレーション。メディカルルームのカプセルに入ってバーチャルリアリティで戦うという設定ですが(*3)、じゃあなんでわざわざこんなでかい宇宙船をリアルに用意する必要があるんだ? みたいな疑問が発生するワケで(このあたりは3巻のネタで出てきますが・・)

 実は、今回のお題は実は本編と直接関係のない”序章”から。
 話の内容ってのは”宇宙軍士官学校”に関する世論調査の結果をうんぬんする調査部第二課の村田係長や宮田班長、担当の国友が、調査報告をする場面です。三社の調査会社に調査を依頼してるんですが、なぜそんなことをするかという国友の質問に対して、宮田班長は”調査会社は空気を読んで、次の仕事が欲しいのでクライアントが望む数字を用意する傾向があるから信用できない”と

  否定的な現実を見せられるより、肯定的な虚偽を受け入れたいと願うのが人間だ
    (中略)
  プロジェクトに肯定的な世論調査の数字を出してくる会社と
  肯定的な数字が出してくる会社があったとした場合、どっちの数字を採用したい?
  欲しいのは肯定的な数字だ。違うか?

 つまり、調査結果を回答する方も受け取る方もフラットではなく心理的なバイアスがかかるってことですな。

 これが、神様的な能力を持つ異星人相手となればなおさらのこと。上記の見識を持つ宮田班長にしても、地球人類をバラ色の未来に導くって異星人のアクションに疑問を持っていないご様子。村田係長のツッコミから

  村田係長:人類の輝ける星、それが宇宙軍士官学校生なのだ・・・
       子供たちや、その親に、そう思い込ませたのは、誰なんだろうな
  国友  :・・そう思い込ませたって・・ だってそれは本当のことじゃないですか!
  村田係長:それが真実だという証拠はどこにある?

        (中略)
       つまり、選ばれたエリートとして扱われ、
       人類の代表として太陽系外へ赴くのではなく、
       単なる消耗品として扱われ、とんでもなく遠くの凄惨な戦場に
       送りこまれる可能性だってあるということだ
       しかし、そういった可能性については誰も言及しない
       そんなはずはない、そんなことはあり得ない。とみんな思いこんでいる
       おまえのようにな

 まあ、コンジョ曲がりと思われるか思われるかもしれませんが、目の前にあるコトの意味を疑ってかかるのは必要かも。

  だがな、物事にはすべて理由があり、行動には意図がある
  人類にこれだけ親切にしてくれるその理由は何だろう?
  どんな意図があって、こういう行動をとるのだろう? と考えることもたいせつだ
  そして、一番たいせつなのは、そこに自分の願望を載せないことだ
  こうあって欲しい。と思う正反対の答え、
  いわば最悪の答えをそこに予想しておくのも必要なんだぞ

国友は、”善意を疑えってことですか?”とくってかかってますが、大は占領政策や布教活動、小は結婚サギに至るまで、目の前に見えている行動が心底善意の賜物かどうかはわかんないもの。ましてや何を考えてるかわかんない、思考パターンすら違っていそうな異星人のこと。これぐらいの気構えが必要かもしんないですなぁ

 ”宇宙軍士官学校”はけっこうノリが気にいっている作品。いま、一気読みの最中です


《脚注》
(*1)”幼年期の終り”に”百億の昼と千億の夜”に”エンダーのゲーム”にと
幼年期の終り(アーサー・C・クラーク、ハヤカワ文庫)
 宇宙から飛来した異星人は圧倒的なテクノロジーにより地球を制圧した。”オーバーロード”と呼ばれる彼らはその姿を見せることなく人類を支配してから50年。はたして彼らの目的は何か? ファースト・コンタクトSFの最高峰。
百億の昼と千億の夜(光瀬龍 ハヤカワ文庫)
 ギリシアの哲人”プラトン”、釈迦国の王子”悉達多(シッタータ)”、”阿修羅”、ナザレの救世主”イエス”。遥か昔から未来まで、世界を外から支配する超越者と人類の存亡をかけた戦いが続く・・・神と終末をテーマにした日本SFの最高傑作。
 萩尾望都によるコミック化(秋田文庫)も傑作です
エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類はコミュニケーションの取れない未知の異星人”バガー”の侵略をからくも二度にわたり阻止した。そして第三次攻撃に備るべく艦隊指揮官を養成するバトル・スクールを創設、天才少年”エンダー”を育成した・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞したSFの名作
(*2)写真はたいちろ~さんの撮影
 何気に画像が粗いのは撮影したのが2004年5月、今でいうガラケーで撮影したモンだから。画素数は240×268=0.6メガピクセル。iPhone6だと8メガピクセルですんで、たった10年かそこらで130倍の高性能化したってことです。すごいなぁ
(*3)カプセルに入ってバーチャルリアリティで戦うという設定ですが
 ネットワーク経由でつながって戦うという意味では”新世紀エヴァンゲリオン”に出てくる”ダミープラグ”みたいなモンでしょうか?

こういうときには”まっ!”と答えた方がいい?(宇宙軍士官学校 -前哨-/コックピット)

 ども、老後は社会人大学にでもいってみようかな~とか考えているおぢさん、たいちろ~です。
 最近は定年後にもう一度大学に入り直して勉強する高齢者ってのが増えているそうです。まあ、大学から見れば、少子高齢化で新しいマーケットの開拓って考えるとアリかなって気もしますし、社会人側から見ればまだまだ元気なうちに向学心に燃えて新たなチャレンジって思えば良いことではないかと。私みたく大学でほとんど勉強せんかったから反省してもっかい勉強するのもいいかな~と考えています。
 ただ、単なる勉強であればできそいうですが、これが”戦う学校”となれば話は別。ということで、今回ご紹介するのはそんな戦う人のための架空の学校”宇宙軍士官学校 -前哨-”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
上から2011年の横田基地の友好祭にて。”C-130輸送機(*1)”のコックピットとその天井部
下は宝塚の手塚治虫記念館で開催された”マクロス ザ ミュージアム(*2)”にて。”VF-1 バルキリー(*3)”のコックピットのレプリカです。
C1300663
C130
8165360

【本】宇宙軍士官学校 -前哨-(鷹見一幸、ハヤカワ文庫)
 21世紀初頭、地球人類は異星人から自らの科学力をはるかに超える技術の供与を受けた。そして15年の時が流れた。教導者(インストラクター)と呼ばれる異星人は地球に対し人類が銀河文明評議会に評価されるためとして、一つの要望をもちかける。それは人類の子供を教育して傭兵とすること。このプログラムに従って治安維持軍の有坂恵一は教官となるべくコロニー”アルケミス”に着任する・・・
 ”前哨”と書いて”スカウト”と読みます
【乗り物】コックピット(cockpit)
 飛行機や宇宙船などの操縦席のこと。
 写真で見るとおわかりのように、C-130輸送機はアナログ式のコックピットメーターがてんこ盛り、天井にはロータリー型(回すタイプ)やトグル型(上下にパチパチ切り替えるタイプ)が配置されています。輸送機なので火器管制システムがなくてもこの量です。
 方やバルキリー”グラスコックピット”と呼ばれる液晶ディスプレイに集約表示したタイプ。操作系もいたってシンプルです。これだけのシステムで戦闘機、ホバークラフト、人型ロボットの操作をこなすんですからたいしたもンです。


 ”宇宙軍士官学校”を読む気になったのは、ついこの前まで”エンダーのゲーム(*4)”を一気読みしてたから。同じバトルスクールモノだということで手を出して見たんですがずいぶん趣きが違いますね~~ 物語の世界観はどっちかっつーと”幼年期の終り(*5)”だし、有坂恵一たちのノリも士官学校というよりオタクな高校生っぽいし。まあ、リアルにドンパチやってるエンダーの世界と将来戦うかもしれないっていう切迫感の違いでしょうかね

 で、この手の”ファースト・コンタクト”モノで面白いのはそのベースにある価値観というか価値基準の違い。まあ、地球人類同士だって文化が違えばそんなのありますが。恵一の仲間であるスェーデン人の”ライラ”がドローン(ロボット)を友達のように扱うのを見て(*6)

  異星人とのカルチャーギャップより、
  日本人とのカルチャーギャップのほうが大きいような気がしてきたわ

と言ってますが、フレンチ・トーストにミルクに納豆を食べてるライラだって日本人から見れば変です・・

 まあ、価値基準っていうのは単なる知識の問題ではなく、何を重視してリアクションするかってコトです。恵一専用のドローンに名前を付けるときの会話

  恵一:ロボ、ってのはどう?
  ロボ:安直だね。でもいいよ、ケイイチがつけてくれた名前だから

     (中略)
  恵一:よろしく頼むよ、ロボ
  ロボ:わかった・・・
     こういうときには”まっ!”と答えた方がいい?

恵一は”どこから仕入れてくるんだ、そういうネタを!”って突っ込んでいますが、対するロボはデータベースを検索したら”ロボ”と呼ばれたキャラクターはそういう話し方をしているとの答え。恵一は”すごいデータベースだな”と感心してますが、確かにすごいデータベースです。
 まあ、今の日本人でもあまり知らないネタでしょうから補足しますとここで言ってる”ロボ”ってのは横山光輝原作のSFテレビドラマ”ジャイアントロボ”に登場する巨大ロボット”ジャイアントロボ”こと”GR-1”のこと。このロボットは操作者の草間大作の命令を了解すると”まっ!”っと答えます。今でもリメイクされている作品ですがオリジナルのTVシリーズが放映されたのは1967年ですからかれこれ半世紀近く前。リアルタイムで見てたのはおぢさん世代ってことです。
 まあ、異星人のデータベースがこんなことを蓄積しているってのも凄いですが、この場面でこの答えを”選択”できるってのが実はもっとすごいんではないかと。これってリアルな日本人でも(まあ、ご年配のオタクでなければ)ちょっと思いつかないネタでしょうなぁ・・・

 オタクなネタもそうですが、工学系にもこんなネタが。部屋に案内された恵一に部屋の操作を説明するロボですが、この操作系が音声または”トグルスイッチ”付きのプレート。この時の恵一とロボの会話

  恵一:ボタンじゃないんだ・・・
  ロボ:ボタンは地球人の文化。<教導者>はボタンを使わない
     今、動いているものが確認できるスイッチのほうが確実だから

今の日本人が作れば間違いなくタッチパネルのタブレットにしそうです。なんてアナログなと思われるかもしれませんが、実はこのコンセプトって今でもあるんですな。この代表例がどこのご家庭にもある”ブレーカー”。実は最近ネットワーク接続型の最新式エコタイプのブレーカーに切替があったんですが、この最新式でもトグルスイッチが採用されていてちょっとびっくり。まあ、ブレーカーが動作するってことは電源が切れているわけでどんな状況でも確実に動作し、状況が視認できるって意味ではトグルスイッチを採用することに意味はありそうです。
 かくほどさように、何をどう採用するかっていう”価値基準”ってのはこういう異星人=異文化と接するところで気づかされるモンなんでしょうかね。

 ”宇宙軍士官学校”は本人があとがきで”ジュヴナイルっぽい(*7)”って言ってますが確かに”大人のためのジュヴナイル”って感じがしますな。ってか、扱っているネタが大人のおぢさん向け。作者の鷹見一幸って私とほぼ同世代なんですが、まあ体験したアニメやSFモノが共通な分だけ笑いのツボが同じなんでしょうか。
 若い人もそうですが、けっこうおぢさん世代にも受けるSFかも。ご一読のほどを


《脚注》
(*1)C-130輸送機
 ロッキード社が製造し、アメリカや日本の自衛隊などで運用されている軍用輸送機。通称”ハーキュリーズ”。就航が1956年と第二次世界大戦直後でありながら、タイプを変えつついまだに使われているというスグレモノです。
(*2)マクロス ザ ミュージアム
 1982年に放映された ”超時空要塞マクロス”(タツノコプロ)の放送30周年記念に宝塚市の手塚治虫記念館で2013年に開催された企画展。上記のバルキリーの実物大コックピットや、変形プロセス、各種機体模型の展示とかけっこう楽しめました。
(*3)VF-1 バルキリー
 ”超時空要塞マクロス”などに登場する架空の戦闘機。地上から宇宙までをカバーし、”F-14 トムキャット”を彷彿とさせるファイター(戦闘機)、VTOL機能を備えたガウォーク、加えて人型ロボットのバトロイドに変形するというスグレモノです。
 写真は初代マクロスに登場するエースパイロット”一条輝”機の精巧なレプリカだそうです。
(*4)エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類はコミュニケーションの取れない未知の異星人”バガー”の侵略をからくも二度にわたり阻止した。そして第三次攻撃に備るべく艦隊指揮官を養成するバトル・スクールを創設、天才少年”エンダー”を育成した・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞したSFの名作
 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)幼年期の終り(アーサー・C・クラーク、ハヤカワ文庫)
 20世紀後半の地球、異星人の乗る宇宙船が世界中の上空に出現、異星人は自らの姿を見せぬまま人類を支配した。人類に与えられたオーバーテクノロジーにより人類社会は黄金時代を迎え、異星人のことを”オーバーロード”と呼んだ。はたしてオーバーロードの意図とは、そしてオーバーロードを超える”オーバーマインド”とは?
 クラークによるSF史に残る傑作。
(*6)ドローン(ロボット)を友達のように扱うのを見て
 ずいぶん昔ですが産業用ロボットに”百恵”だの”淳子”だの名前を付ける日本人は変っていうような記事を読んだことがあります。外国の人にとって人型機械を作るのって創造主への挑戦って捉え方らしいですが、日本人にはそういうタブー意識がないそうで。これはどうも手塚治虫の”鉄腕アトム”の影響だって説を聞いたことがありますが。
(*7)ジュヴナイルっぽい
 ジュヴナイル(ジュブナイル)ってのはティーンエイジャー(13~19歳ぐらい)を読者とする小説のこと。最近はあんまり使いませんが、まあライトノベルとほぼ同義ぐらいでしょうか。”大人のためのジュヴナイル”ってのも変な言い方ですが、まあ、30歳超えてもラノベ読んでる時代ですから、ご容赦ください

鑑識じゃ、ラジオシャックを爆弾ストアって呼んでるぐらいだよ(コフィン・ダンサー/ハルニレ)

 ども、棺桶に人生の片足突っ込んでるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、ニュースを見てましたらアメリカの家電量販店で第2位の”ラジオシャック”が経営破綻(*1)(米連邦破産法十一条を申請)したそうです。
 ラジオシャックって行ったことないですが、店舗はコンビニほどの広さですが、昨年までは4,400店舗ほどあって専門知識の豊富な店員を集めてマニアには受けてたそうです。まあ、言ってみればパソコン黎明期にマニアのお兄ちゃんがやってたパソコンショップの大規模版みたいなモンだったんでしょうか?(*2) ネット通販の普及で行き詰ったんだとか。まあ、経営破綻ですから会社としては棺桶に片足つこんでる状態と言えましょうか。
 ところで、今読んでる本にたまたまこの”ラジオシャック”の名前が出てまして。ということで、今回ご紹介するのはその名前が出ててきた本、リンカーン・ライムシリーズの”コフィン・ダンサー”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。北海道大学のハルニレの道
北海道大学の関係者の皆さん、こんなネタで使ってすいません。

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【本】コフィン・ダンサー(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 武器密売人”フィリップ・ハンセン”の犯罪の証言者”エドワード・カーニー”が殺された。FBIの”フレッド・デルレイ”は科学捜査の専門家で四肢麻痺の”リンカーン・ライム”はフリーの殺し屋で棺の前で踊る男の刺青を持つ”コフィン・ダンサー”の捜査協力を依頼される。かつて部下を殺されたライムは美貌の警察官”アメリア・サックス”や科学捜査部員”メル・クーパー”と共に残された証拠物件からコフィン・ダンサーを追いつめようとする・・・
 ”ボーン・コレクター”に続く”リンカーン・ライムシリーズ”の2冊目
【花】ハルニレ(春楡)
 ニレ科の落葉高木。別名ニレ。
 かつて、アメリカの金持ちの(*3)はこれで作られていたそうです。ちなみに日本では桐、檜(ひのき)、樅(もみ)などです。
 ちなみにニレは英語では”エルム(elm)”。同じ殺人鬼ネタでも”エルム街の悪夢(*4)”とは関係なさそうです。


 リンカーン・ライムシリーズって、物的証拠に思いっしきこだわるってのがありますが、それがハンパじゃありません。それこそ形がはっきり残っている物体から、砂、埃や繊維くずといった微小な物質、指紋や足跡といった残留物までさまざま。これをもとに犯人の行動などを推理するってものです。で、この推理で”この物体はここにしかない”といったことを特定できるものと、あんまりにもたくさんあり過ぎて役に立たないものが出てきます。で、ラジオシャックのネタはこんな感じ。爆破に使われた遺留品に対して。

  ライム :どれもこれも既製品ばかりだよ、フレッド。爆薬と導爆線以外はね
       まあ、それもハンセンから手に入れたものばかりだろう
       ほかの部品は、どれも<ラジオ・シャック>に行けば買える
  サックス:ほんとなの?
  クーパー:ああ、ほんとうさ。
       鑑識課じゃ、あの店を爆弾ストアって呼んでるぐらいだよ

 日本で言えば、犯行に使われた凶器がザ・ダイソーで買った100円の包丁だったってとこでしょうか?(*5) 本書が書かれたのは1998年。推理小説家のディバーだって、まさか17年後にメジャーな小売店が経営破綻すると推理できなかったんでしょうなぁ

 でも、リンカーン・ライムって人はまあ、ちまちました証拠物件から殺し屋の行動を予測するもんです。前作の”ボーン・コレクター”では犯人が意図的に残した証拠物件から次の犯行現場を予測するって形でしたが、今回の”コフィン・ダンサー”は殺し屋が意図せずにこのした残留物から次の行動を予測して、かつ罠に嵌めようとするまさに頭脳戦、てか狐と狸のばかし合いというか。
 推理小説というか、サスペンス物としてはこっちのほうが面白いかな~~
 特に魅力的なのが、カーニーの妻で飛行機会社の社長にして天才的なパイロット”パーシー・クレイ”。部下であるサックスや戦友的な刑事のセリットーやFBIのフレッドと違って、ライムに正面切ってタメ張れるスーパー・キャリアウーマン
 体が動かないライムがコンピュータの操作が遅れたためにパーシーと同じ重要参考人が救えず、落ち込んでる時の会話

  パーシー:答えになっていないわ。どこが違う? どこが違うか言ってみてよ
  ライム :きみは歩くことができる。受話器を持ち上げることができる・・
  パーシー:歩くですって? いいこと、私は高度5万フィートにいるのよ
       ドアを開ければ、ものの数秒かで体中の血が沸騰する
       悪いけど、刑事さん、私とあなたの間は
       これっぽっちも違いがあるとは思えないわ
       私もあなたも、二十世紀の科学の産物よ
       そう、もし私に翼があったら、自力で空を飛ぶわ。でも、翼はないし
       永遠に生えてくることもない
       私たちは二人とも、生きているためには・・ ほかのものに頼るしかないの

 いや~、なかなかの啖呵です。容姿的には残念な人のパーシーですが、美貌のサックスが嫉妬するのもわかります。

 ストーリーはこれ以上ここには書きませんが、二転三転ととって面白い。前作ともどもぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)経営破綻
 2月5日にデラウェア州連邦破産裁判所に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請したとのこと。アメリカ企業の破綻だとカッコよく”チャプターイレブン”と言いましょう。
(*2)パソコンショップの大規模版みたいなモン~
 NECがやってた”ビット・イン”や、ジャンク屋っぽい小さなパソコンショップみたいなのがありましが、今どきのビジネスとしてはどうなんでしょうか?
 ちなみに”ラジオシャック(RadioShack)”のシャックは丸太(掘っ建て)小屋って意味だそうです。
(*3)棺
 英語で棺は”コフィン(coffin)”、”キャスケット(casket)”。日本のような長方形なのがキャスケット、ドラキュラが寝てるような肩の所が広がっているのが”コフィン”。文庫版の表紙はちゃんとこの形になってます。
(*4)エルム街の悪夢
 夢の中で鉄の爪で相手を引き裂く殺人鬼”フレディ・クルーガー”が登場するホラー映画。怖いので観てませんが、ポスター観るだけでも思いっし危なそうな殺人鬼です。
(*5)ザ・ダイソーで買った100円の包丁~
 ”ザ・ダイソー”は”大創産業”が運営する百均ショップのこと。公式HPによると国内2,800+海外840店と合計でラジオシャックより二回りほど少ない店舗数(2014年3月現在)
 ちなみに”ダイソー”で検索すると化学メーカーの”ダイソー株式会社(旧社名 大阪曹達株式会社)”になります、はい


本読みには本読みにしか分からんツッコミってのがあるモンで・・・(読書狂の冒険は終わらない!/梅/好文亭)

 ども、ヲタクではありません、単なるビブリオマニア(*1)なおぢさん、たいちろ~です。
 以前にも書きましたが、最近読んだ本を肴にぐだぐだ酒を呑む会ってのをやってます。まあ、堕落した文芸部とでも言いましょうか。本をあんまり読まない人から見れば”それの何が面白いねん?”と言われそうですが、それはそれで特異な世界があるわけで。好きな作家がかぶっているとみょ~に嬉しかったりとか、未知のジャンルがちょっと気になったりとかそういった類のモンですが、話がどこに飛んでってもそれなりに話ができるってのが面白いんですな。
 で、この手の人種の中でもトップクラスな二人が対談するとどうなるか? ということで、今回ご紹介するのは超絶クラスのビブリオマニアなヒロインを主人公にした小説を書いた人、三上延と、倉田英之による”読書狂の冒険は終わらない!”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
上は水戸偕楽園の梅(月宮殿)、下は偕楽園の好文亭の庭です。

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【本】読書狂の冒険は終わらない!(三上延、倉田英之、集英社新書)
 こなた超絶的な本の知識を持つ美貌の古本屋店主”篠川栞子”さんが探偵役を務める古書ミステリー”ビブリア古書堂の事件帖(*2)”の作者、かなた大英図書館特殊工作部のエージェントにしてビルを丸ごと本棚にする重度のビブリオマニア、ザ・ペーパーこと読子・リードマンを主人公とする”R.O.D(*3)”の作者。こんな本の読み手二人が”本”をネタに対談を行ったらどうなるか?!
 これを企画した編集者、偉いゾ!
【花】
 バラ科サクラ属の落葉高木。梅の別名を”好文木(こうぶんぼく)”と言います。これは晋の武帝が学問にはげめば梅の花が咲き、学問をやめると開かなかったという故事から。まあ、読書=学問とは限りませんが。
【旅行】好文亭
 梅で有名な水戸偕楽園には”好文亭”ってのがありますが、これは元々水戸藩第九代藩主徳川斉昭の別荘。こんな所で本の置き場を気にせず読書三昧の生活を送りたいモンですなぁ・・・


 さて、稀代のビブリオマニアなヒロインを生み出したお二人による対談ですから、さぞや面白い本を勧めてくれるんだろうかと思ってたんですが、のっけから(三上延のまえがき)でいきなり”勧めベタ”ですって話から。この本は延々”こんな本が面白かった”という話をだべってるって感じ。読んだ話がどうだとか、本にまつわるあるあるネタがこうだとか、まさにぐだぐたとって雰囲気。でも、これがまた面白いんですな。さすがにビブリオマニアは一味違います。
 ということで、本の話は本書を読んでもらうとして、心に残った本のあるあるネタからいくつかを。

〔三上:そうなんですよ。切り絵の表紙がかっこいいんですよ〕
 本の印象ってけっこう表紙に左右されるんですね。でも、意外と表紙を描いた人は誰かってわかんないの多いんですね。最近でこそライトノベルの表紙の萌え絵が売れ行きを左右するってぐらい認知度が上がってきてますが、一昔前だとそんな話ってあんましなくって。その中でも例外的なのが角川文庫。わりと定番化してたり、ころころ替えたりとか。本書で出てきてる話題だと横溝正史シリーズの杉本一文。エアブラシによるおどろおどろな表紙って、さも怖そげなミステリーって感ありましたね。Kindle版の表紙でも使われてますんで定番中の定番かと。
 これに対する双璧が江戸川乱歩シリーズの表紙を担当した宮田雅之。上記の三上の発言がこれ。私も好きで画集とか持ってましたねぇ。本書の中で三上が”一寸法師”の表紙で”小学校三年生で、なんでこんな不気味な表紙の本を買ったんだろう”って言ってますが、とっても良くわかります。こちらもKindle版の角川文庫で今でも使っていますんで定番なんでしょう。

〔三上:長いと挫折しますよね〕
 一般の評論と決定的に違うのがこれ。本書の中で倉田が言ってますがガイドブックって”分からない”とは書けないけど、この本では好き嫌いや個人的体験ベースなんで挫折話もありって。確かに本の話をすると途中で止まっているとか、あきらめたとかの話って以外に盛り上がるんですよね。初手から手を出さないとか(*4)。一概に長いから挫折するわけではないですが、やっぱし長いと切れやすい。倉田は”指輪物語”は全部読んだけど”ホビットの冒険”はダメだったとか(*5)、三上は”指輪物語”の三冊目までだったとか。この人達でもそんなんですから、まあ一般人でいたしかたないことでしょう。ちなみに私は1冊目で挫折しました

〔倉田:昔、講談社文庫に挿入されていた栞にマザーグースの詩を載せてましたよね〕

 上記のように表紙の話ってのは時々出てきますが、さすがに栞ってのはねぇ。こんなの話題に出てくるのって初めてじゃないかなぁ・・ まあ、”ビブリア古書堂の事件帖”には栞を使ったトリックってのをやってるぐらいだしなぁ・・
 よく使っていたのは確かハンプティ・タンプティだったかな。マザーグースって、最初は北原白秋訳、スズキコージ表紙(旧版)の”まざあ・ぐうす”があって、谷川俊太郎訳、堀内誠一表紙の”マザー・グースのうた”が出てその後谷川俊太郎訳、和田誠表紙の”マザー・グース”が出たんだっけ。和田誠版だとCDなんかもあってちょっとしたブームだったかなぁ。クックロビン聞きたくで買いました(カセットテープだっけ?)(*6)
 栞の話題になっているのは谷川俊太郎訳、和田誠表紙版。スズキコージ版、堀内誠一版だと絵本っぽかったけど和田誠版になると急にイラストテイストだったんでけっこう驚きましたけど。

〔倉田:古書のリサイクルセンターを呼んで運んだら、1トンあったって〕
 さすがに三上も”1トン? 冊数じゃなくて重さなんですか?”とのお返事。まあ、紙の表示って重さも使うんであながち間違っちゃいないんですが・・・(*7)
 だいたい本の量を聞かれて冊数で答えられるのはまだまだ少ない方メートルで答えるのもアリですが、このあたりだと本棚に収納できるとか床に積んであるレベルでしょうか。私とか友人だと”ダンボール箱でXX箱”って言い方になってきます。まあ、収納が立体的にできるとか一応箱単位で整理ができるってメリットはありますが、現実問題引っ張り出して探すとなると相当体力が要ります(なんせ重いんで)
 先ほど測ってみましたが、箱の大きさや何を入れるかにもよりますダンボール箱にいっぱい本を入れると18~25Kg程度。単純計算だと、ダンボール箱5~60箱ぐらいになります

〔倉田:三上さんの本棚を見て嬉しかったのは、同じ本が何冊もあったこと〕
 三上はこれに続けて”見つからないと、買わざるをえないんですよね”、とか”ネットで届いてから「ああ、買ってたっけ」と気づくんですよ”とか言ってますが、そうなんですよね~~ 私は読む用、保存用、布教用って買い方はしませんが、ダブリはけっこう出ます。特にBOOKOFFなんかを利用してると、中身を見てても”これ買ったっけ? まあ、次はないかもしれんから買っておこう!”みたいなノリで買っちゃって、家に帰って見たらやっぱしあったとか・・・ さすがにダンボール箱開けたら全部同じ漫画の同じ巻だったってのはないですが。

〔倉田:本が主で、余ったお金でご飯を食べるという考え方でした〕
 ”なんでオタクっていつも食費から削るのよ!”(*8)と言いますが、そうですか、本が主で食費が従ですか。単身赴任を始めた時に”せめて本代ぐらいリミッターをかけずに買いましょうか”とか考えた程度ですから、私もまだまだですなぁ・・・

 まあ、あまり本を読まない人には何が面白いんだかわからん話でしょうが、本読みには本読みにしか分からんツッコミってのがあるモンで・・・ お殿様みたいにお金があって別荘に梅のある庭園なんぞ持てる身分であればまた違うネタにでもなるんでしょうがねぇ・・・
 実は対談っていう文体を読むのってあんまり得意じゃないんですが、これは面白かったというかスイスイ読めましたね。 本好きの人にはお勧めの1冊、そうじゃない人には冷ややかに見られるだけかもね。


《脚注》
(*1)愛書狂・読書狂
 ビブリオマニアってのは愛書狂、読書狂、いわゆる”本を愛している人”のこと。本オタク。世界大百科事典によると愛書家(ビブリオフォリア bibliophile)が極端に高じた状態が愛書狂(ビブリオマニア bibliomania)。wikipediaでは”強迫神経症の一種で、社会生活もしくは当人の健康に悪影響を及ぼすもの”ってありますが、ずいぶんな言われようだなぁ
(*2)ビブリア古書堂の事件帖(三上延、メディアワークス文庫)
 北鎌倉にある古本屋”ビブリア古書堂”の美貌の女主人”篠川栞子”さんを主人公にしたミステリー。本にまつわるネタ満載のとっても面白い本です。
(*3)R.O.D(倉田英之、集英社スーパーダッシュ文庫)
 世界の歴史を影であやつる”ジェントルメン”は大英図書館特殊工作部の責任者”ジョーカー”に不老不死の秘密が書かれていると言われる”グーテンベルク・ペーパー”の輸送と護衛を命じる。ジョーカーがその任務に選んだのは特殊工作部のエージェントにして”紙”を自在に操る”読子・リードマン”だった・・・
 OVAを含めいろんなシリーズがメディアミックスされていますが、本編は中断中。お~い、続きどうなってる?!
(*4)初手から手を出さないとか
 この前の本の呑み会で”グイン・サーガ(栗本薫、ハヤカワ文庫)は読まんのか?”と言われましたが、栗本薫が死去するまででも正伝、外伝合わせて152巻。ちょっと勘弁してください状態です。
(*5)”指輪物語”は全部読んだけど”ホビットの冒険”はダメだったとか~
 ともにトールキンで評論社文庫より出版。”指輪物語”は新版で10巻ですが、1977年の旧版だと全6巻。現物が手元にないんですが、すんごいびっしり活字で埋まってたように記憶しています。ちなみに私が挫折したのは旧版のほうです。
(*6)クックロビン聞きたくで買いました
 ”誰が駒鳥殺したの”(原題はWho Killed Cock Robin)”。政治家などが失脚した時に”Who Killed XXX”は常套句だそうです。”僧正殺人事件”(ヴァン=ダイン)、”ポーの一族”(萩尾望都)など引用も多数。まあ、魔夜峰央の”パタリロ”に出てくる”クックロビン音頭”のモトネタ聴きたかったんですけど・・・
(*7)紙の表示って重さも使うんで
 紙を表すには質(上質紙とか再生紙とか)やサイズ(A4とかB5とか)などのほかに重さ(坪量、連量)があります。会社のコピー用紙にもちゃんと書いてありました
(*8)なんでオタクっていつも食費から削るのよ!
 ”宮河家の空腹”(美水かがみ、角川書店)より。しっかり者の”宮河ひかげ”とその姉でオタクな”宮河ひなた”な姉妹を描いたマンガ+アニメ。後先考えずに本や同人誌などを買ってくるひなたに対するひかげちゃんのツッコミより。これに対するひなたの切り返し
  大人になればわかるわよ 食よりも優先すべき何かがあるって


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