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2014年2月2日 - 2014年2月8日

探偵が活躍しちゃうと”連続殺人事件”にならないってのが難しいところです(八つ墓村/桜)

 ども、大量殺人事件に心ときめかすおぢさん、たいちろ~です。
 先日、百鬼夜行シリーズの”塗仏の宴”(*1)を読みました。この小説に登場する村人が大量に惨殺されるってのが出てきますがこのモデルになったのが1938年に発生した”津山事件(津山三十人殺し)”といわれる事件。実はこの事件をモデルにした小説で超メジャーなのが横溝正史の”八つ墓村”です。そういや昔読んだな~と思いながら40年ぶりぐらいに再読してみました。ということで、今回ご紹介するのはミステリー小説の古典”八つ墓村”であります。

写真は野村芳太郎監督の映画”八つ墓村”より。桜の木の下を駆け抜ける田治見要蔵。
  Photo_2


【本】八つ墓村 (横溝正史、角川文庫)
【DVD】八つ墓村 (原作 横溝正史、松竹他)
 戦国時代、三千両の黄金を携えた8人の武者がある村に落ちのびてきた。欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺したがその後怪異があい次ぎ、村人はその8人を祀った。その村は”八つ墓村”と呼ばれるようになった。
 大正時代、八つ墓村で田治見家当主の要蔵が発狂し、村人32人を惨殺するという事件が発生した。昭和になり要蔵の子孫である寺田辰也が八つ墓村に帰郷すると、次々と殺人事件が発生する。村人たちは恐れ、犯人と思われる辰也を鍾乳洞に追い詰める・・
 名探偵金田一耕助シリーズ長編第4作。
 野村芳太郎、市川崑などの監督で3度映画化、TVドラマとしても6回放映。
【花】
 バラ科サクラ亜科サクラ属の総称。日本の春を代表する花の一つ。
 花の咲き具合とういのは気象庁職員の目視によるとのことで、各地にある”標本木”が蕾が5~6輪ほころびると”開花宣言”が出され80%以上のつぼみが開くと”満開”というんだそうです。


 たぶん読んだのは1970年代の後半だったかと。ちょうど野村芳太郎監督版が松竹から上映されたのが1977年だったので、そのころだったかと。CMで流れる”祟りじゃ~っ”てのが流行ってて。
 ちょうどこの前年に角川映画(*2)の第一作”犬神家の一族(*3)”が公開されたとこで、角川書店がけっこう”横溝正史”のブームを煽ってたんで、何冊かよみましたね。表紙の杉本一文がまたおどろおどろしくて、ナイスチョイスです(現在、この表紙は変わっているようですが、Kindle版では見ることができるみたいです)。

 改めて読んでみたんですが、”え~っ、こんな話だっけ?!”って思うぐらい読書感が違ってましたね。前半、八つ墓明神の祟りで人が次々と殺されるっってのは同じなんですが、後半は村人から殺人事件の犯人として追跡される寺田辰弥が洞窟の中でえんえん追いかけっこ推理小説というより冒険小説のノリです。野村芳太郎監督版の映画も観ましたが、こっちは映像的にかなり美しく鍾乳洞の中を撮ってました。
 話のエンディングもこんなんだっかたかな~。原作では(殺された人には申し訳ないですが)まずまずハッピーエンドになってますが、映画版ではそんなんなし。リアルにこれあったら一生女性不審に陥りそうな内容です。

 おどろおどろな印象としても、たぶん映画のCMかなんかで出てきた要蔵のほうがインパクトがあったのかも。なんせ、田治見家当主の要蔵が桜の木の下を片手に日本刀、片手に猟銃、銃弾ベルトをクロスにかけて懐中電灯が鬼の角のように光ってる頭に鬼の角のように懐中電灯を挿して駆け抜けていくシーンってのはすごいんですよね(*4)。そっちのほうが記憶に残っていて、あとのほうはふっとんじゃってるみたいです。原作では10ページに満たないエピソードですが、これをあんだけ印象的なシーンにしたのは野村芳太郎監督の賜物かも。でも、”桜は人を狂わせる”という言葉がありますが、こういう狂い方は勘弁して欲しいなぁ。もうすぐお花見シーズンだし・・・
 ちなみにこの事件、原作では4月下旬で桜のシーンにしたのは野村芳太郎監督の演出みたい。実際の事件は5月21日と開花の遅い岡山の山間部でももう桜はちっていたんではないかと思われます。(岡山県津山市にある津山城の桜の見ごろは4月上旬~5月中旬頃)

 でも、最大の驚きは”名探偵金田一耕助がな~~んの役にも立っていない”ってとこでしょうか。連続作人事件での名探偵って、初手から活躍しちゃうと連続殺人にはならないってのはわかりますが、それにしても金田一耕助がやってるのって、寺田辰弥を最後に救出するのとすべてを解決してから真実を説明しているだけ。事件の解決に寄与したとは思えない状況。
 どうも、この頃読んだ本とか映画とかがごっちゃになっているようです。ミステリーってのは名探偵による推理を楽しむことに加えて、その雰囲気を楽しむってのもあります。そういった意味では、読みなおしてみると”八つ墓村”って実は後者の方だったのかも。たまには古典的な作品を読みなおしてみるってのもいいかな~
 まあ、どっちにしても”八つ墓村”が名作であることにはかわりませんが。


《脚注》
(*1)塗仏の宴(京極夏彦、講談社文庫)
 作家 関口巽の元に元警察官の光保公平が訪れる。かれはかつて勤務していた韮山の”戸人村(へびとむら)”が存在しなくなっているのでそれを調査して欲しいと依頼する。その村で起こった”大量殺人事件”もなかったことにされている謎とは(宴の支度)
 宗教団体、徐福の研究者、武道家集団、占い師。事件にかかわる人々は存在しないはずの”戸人村”に向かう。妹の中禅寺敦子は誘拐され、友人の関口巽は逮捕され、刑事の木場修太郎は行方不明。そんな中憑物落としの”京極堂”こと中禅寺秋彦もまた事件の解決のために戸人村へ向かう。自分の黒歴史と対峙するために(宴の始末)
 京極夏彦による百鬼夜行シリーズの第6作。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)角川映画
 当時角川書店社長だった角川春樹がしかけた本と映画のメディアィックスの成功例。
 横溝正史の”悪魔が来りて笛を吹く”や、森村誠一の”人間の証明”、”野性の証明”、高木彬光の”白昼の死角”、大藪春彦の”蘇える金狼”、”野獣死すべし ”など初期のころは推理小説の映画化も多数。
 ”八つ墓村”はこの映画が松竹の制作延期になったため角川書店が自ら映画製作に進出することを決意させたという因縁の作品だそうです。(wikipediaより)
(*3)犬神家の一族(横溝正史、角川書店)
 信州財界の大物・犬神佐兵衛の莫大な遺産を巡り娘たち降りかかった連続殺人事件を解決する金田一耕助を主人公とする推理小説。
 市川崑監督の映画版(1976年公開)では池の中から突き出した佐清(すけきよ)にすごいインパクトがあってシンクロよろしく水中から足を出して”すけきよ~”というギャグもありました。
 先日読んだ”JA 女子によるアグリカルチャー”(鳴海なる)ではお雑煮から出てる人の足形の大根を観て、小学1年生の野沢りんごが”犬神家”とつぶやいてるシーンがありましたが、よく小学生が知ってるな~~~
(*4)田治見家当主の要蔵が~
 実際の津山事件の犯人”都井睦雄翌”の犯行当日の様子とほぼ同じだったようです。
 この格好で来られたらさぞ恐ろしかったでしょう。

古典・名作も別に未来の文学者に褒めてもらうために書いてるわけではない(カッパ・ブックスの時代/バンクスマツ)

 ども、古い世代の本の読み手のおぢさん、たいちろ~です。
 長いこと本なんぞを読んでいると”あれ、このレーベルの本って最近見ないな~”ってことがあります。まあ、栄枯盛衰は世の習い、いつの間にか消えてくってのはしょうがないんでしょうが、意外とビックネームなレーベルも無くなってることもあります。
 思いつくところでは、マニアックなSFのラインナップを誇った”サンリオSF文庫(サンリオ)”、学校図書館の定番だった”旺文社文庫(旺文社)”、ライトノベル系では第一作が石津嵐版”宇宙戦艦ヤマト”だった”ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)”、イラストに道原かつみを起用した”銀河英雄伝説(田中芳樹)”の”徳間デュアル文庫(徳間書店)”、縦19cm、横11cmとサイズが特殊だった”GomaBooks(ごま書房)”、アニメや特撮の豆本を出していた”大百科シリーズ(勁文社)”などなど。H系では”美少女文庫”のご先祖様”ナポレオン文庫(フランス書院)”や、金子國義の表紙が芸術的だった”富士見ロマン文庫(富士見書房)”なんつ~のもありましたな(*1)。
 でも、このレーベルまで消えてるとは思いませんでした。ということで、今回ご紹介するのは消えたレーベルを扱った本”カッパ・ブックスの時代”であります。


写真はwikipediaのHPより。バンクスマツです。
Photo


【本】カッパ・ブックスの時代(新海均、河出書房新社)
 知識人向けに出版された”岩波新書(岩波書店)”に対し、大衆向けに出版された”カッパ・ブックス(光文社)”。その誕生から終焉までをカッパ・ブックスの最後の編集部員だった新海均が描いたノンフィクション。
【花】バンクスマツ(バンクス松)
 マツ科マツ属。自家受粉を避けるために花粉を風に乗って飛ばす”風媒花”という特徴があります。生物は進化の過程でいろいろな形質を獲得しますが、この松が適応したのは火事。松かさは樹上に何年もとどまって、50℃以上の熱を受けない限り種子を散布することはないんだとか。よっぽど山火事が多かったんでしょうかね。


 さて、”カッパ・ブックス”というレーベルを出していたのは”光文社”という出版社ですが、この出版社を聞いて何を思い出すでしょうか? 
 お嬢様方だったら、”JJ”や”CLASSY.”、奥様方だったら”女性自身”、定年後のおぢさま方だったら”処女探し(*2)”の”週刊宝石”あたりでしょうか? まあ、出版社なんか気にしない方のほうが多いか・・・
 ある世代のおぢさんにとってはやっぱりラッパを吹くカッパのマークの”カッパ・ブックス”でしょうか。本書の冒頭にミリオンセラーになった17冊が出ていますが、私の記憶だと

・カッパブックスで読んだ本
  頭の体操 第一集、第二集、第三集、第四集(ともに多湖輝)
  日本沈没(上・下)(小松左京)、民法入門(佐賀潜)
・カッパ・ブックスかどうかは分かんないけど読んだ本
  点と線ゼロの焦点砂の器(ともに松本清張)、
・記憶があいまいだけど確か持ってた本
  冠婚葬祭入門続冠婚葬祭入門(ともに塩月弥栄子)

あたり。松本清張を除けば出版はだいたい1960年代後半から70年代前半ぐらいですから読んだのは中学校ぐらいだったかな。よくお世話になったモンです(*3)。

 で、この大躍進を支えたのが光文社社長で天才的なプロデューサー編集者でもあった”神吉晴夫”とその部下で同じく天才的なイノベーター編集者の”長瀬博昭”。(プロデューサー、イノベーターの発言は長瀬博昭の部下だった上野征洋のもの。本書より)。本書の前半はこの2人の活躍に焦点を当てています。

 この二人の話で面白かったのを挙げて見ます。まずは神吉晴夫から

  彼(近松門左衛門)は、当時の京・大阪の裏だなのかみさんたちの井戸端会議での
  ウワサ話、心中や人殺し、暴行事件をとりあげて、町人たちを喜ばすために
  そのニュースを人形浄瑠璃にしたものじゃないか
  作者・近松門左衛門は、三百年後の文学者たちから、
  これこそ日本を代表する芸術作品だと褒めてもらうために書いたかというと、
  そんなもんじゃない。
  サービス精神で書いたものが、
  結果において、人間精神の底にふれたものになっているからこそ、
  今日もなお、生命をもっている

 これは”百年たっても千年たっても残る、なぜ古典となるような本を出さないのか”と言われたことに対する反論。
 確か”ドラゴン桜(*4)”(三田紀房)の中で桜木先生が”源氏物語”をして

  古典の作品はスケベなやつらがヒマつぶしに書いたものなんだ。
  だから中身はたいしたこと書いちゃいない。
  まあいいとこ、当時のオバハンとオッサンの世間話ってやつだ。

って話をしてますが、一脈通じるものがあります。

  いいのか悪いのかは別として、
  本はとっておくものから、捨てる(消費する)ものへ変えた。
  大量生産と大量消費時代にピタリはまったベストセラー。
  長瀬はよく、このことを判っていた。
  そして『マンネリスムが最大の敵だ』とよく語っていた。

 これは、上記の上野征洋が長瀬博昭について語ったものから。
 子供のころはお金がなかったんでなかなか買えなかったし、確かに捨てるってこともほとんどしませんでしたね~~(*5) 本書の扱っている時代もほぼ高度成長時代と重なっているんで、こういった発想の転換が必要なんでしょうね。
 今や紙の本だけで年間8万冊、インターネットだ同人誌ブームだと大量生産の時代。さらには電子書籍の拡大により”大量蓄積”すら可能になった昨今、本をめぐる光景はどう変わってくんでしょうかね

 本書の後半は、神吉晴夫の経営策(主に成果評価主義や抜擢人事)に反発して中高年を中心に労働争議が勃発。このあたりを中心に描かれています。これにより優秀な編集者がスピンアウトして祥伝社の”ノン・ブック”、ごま書房の”GomaBooks”、かんき出版の”かんきブック”なんかに受け継がれていったとのこと。この辺読んでて思い出したのが”バンクスマツ”って奴。これは火事になって種をばらまくって木ですが、まさに社内が火事ボ~ボ~でそこなら飛んでった種(編集者)がいろんなところで芽吹いてった感じがです。

 本書はカッパ・ブックスの興亡を縦軸に、当時のベストセラーシーンを横軸に描かれていて、おぢさん世代には懐かしい書名がいっぱい出てきてそれを追っかけるだけでも楽しいです。でも、ちょっと不満を言うなら、カッパ・ブックスが衰退に至る原因をもうちょっと踏み込んで欲しかったな~~ 長きに渡る労働争議と優秀な編集者の離反、トップの無責任な経営、新レーベル立ち上げの失敗、女性誌へのリソースシフトなどいろいろあったようですが、そのへんだけでも1冊書けそうなネタなのに・・・

《脚注》
(*1)マニアックなSFのラインナップを誇った~
 他のレーベルで再版されているものもありますがほとんどは絶版になってて、モノによっては古書市場で良い値で取引されてるんだとか。あのキティちゃんを販売してるサンリオが何を思ったか出版した”サンリオSF文庫”なんて1万円近くするものもあるそうなんで、本棚をひっくりかえせば意外とお宝本があったりするかも。
(*2)処女探し
 確か、一般のお嬢さんのピンナップ写真を観て処女かどうかを当てるという企画でした。もちろん自己申告制。いかにもやってそう(何を?)な人が処女だったり、清楚を絵に描いたようなお嬢さんがお済ませになっておられるとかのギャップ萌えを楽しむゲーム。子供のころに読みましたが”正直に答えてるんだろうか?!”と思ったモンです。
(*3)よくお世話になったモンです
 逆にナゼか読んでないのが”「NO」と言える日本”。1989年に発行されたソニーの盛田昭夫元会長と前東京都知事の石原慎太郎の共著。バブルイケイケ、石原慎太郎は海部俊樹と自民党総裁の座を争ってた時代です。今読んだら笑えるんだろうな~~
(*4)ドラゴン桜(三田紀房、講談社)
 落ちこぼれ高校生が1年間で東大合格を目指すという受験漫画。”東大に合格する”という一点のみに絞った受験ノウハウは秀逸。効果があるかどうかは知らんけど。
 ちなみに神吉晴夫は光文社の親会社である講談社に入社後、光文社に移籍しています
(*5)捨てるってこともほとんどしませんでしたね~~
 先日事情があって本を1.500冊ほど処分しました。なんせ、押し入れの中の大半を占拠していたもので。結婚した時にも実家の本を処分しましたが、そん時は1階の部屋にいた両親から”お前が引っ越したら、障子が開きやすくなった”と言われました。根太が歪むほど本があったんでしょうか・・・


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