« 2014年11月23日 - 2014年11月29日 | トップページ | 2014年12月21日 - 2014年12月27日 »

2014年11月30日 - 2014年12月6日

インターネットの時代でも、可能性と不信の中で我々は生きてきゃならんのだ(第五の権力/ジャスミン)

 ども、インターネットのそこそこヘビーユーザーなおぢさん、たいちろ~です。
 こんなやくたいもないブログですが、そんでも書き出して6年にもなるんだよな~ なんでこんなこと始めたかというと単に”面白そう”だし”ヒマ”だったから。”インターネットにおける情報発信の意味は”とか”ネットの未来に一石を投じる”なんてしちめんどくさいこと考えてたわきゃありません。
 でも、これが国家だとか社会の改革を目指す勢力にとっちゃ話は別。今までとは別の次元での”力”があるわけです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな人達(とそれに影響される私たち)にとってのインターネットのありようを論じた本”第五の権力”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。近所のジャスミンです

0380


【本】第五の権力(エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン、ダイヤモンド社)

  国家権力は”行政、立法、司法”いわゆる三権で統治されている。
  これに加え、20世紀型の報道機関は政府を監視する役割をになう
  ”第四の権力”といわれた
  これからの時代は誰もがオンラインでつながることで
  私たち一人ひとり、80億人全員が新しい権力、つまり”第五の権力”を
  握るかもしれない
 (本書より抜粋)

 インターネットによる国家、革命、戦争、復興などの未来を考察した本
 サブタイトルは”Googleには見えている未来”ですが、内容的には原題の
  The New Digital Age
   Reshaping The Future Of People,
   Nations And Business
 (新しいデジタル時代 人々,国家、ビジネスの未来の再構築)
のほうがしっくりきます
【花】ジャスミン
 モクセイ科ソケイ属の植物の総称。ちいさな白い花をつけてかぐわしい香がします
 チュニジアにおける革命(民主化運動)を”ジャスミン革命(*1)”というのはジャスミンを代表する花が”ジャスミン”だからだそうです。


 この本の感想を一言でいうと

  インターネットやコネクティビティ(*2)の生み出す新しい可能性と
  いにしえから引きずっている国家や反体制への不信の中で
  我々は生きてきゃならんのだ

ということです

 この本の作者は二人で、インターネット世界の諸王のひとりGoogle会長の”エリック・シュミット”と、アメリカ国務長官の政策アドバイザー、米国外交問題評議会や国家テロ対策センター所長諮問委員会のメンバーでもある”ジャレッド・コーエン”。つまり、経済・政治の中枢にある人が書いてる本です。さすがにそんな人達の本ですのでそのへんにあるインターネット論とは一味違います。国家から反体制、革命といった話題までこんだけリアルに語れるのってなかなかないもんなぁ

 この本でユニークだったのは”絶対に正しい主体ってのはない”って前提に立ってるように感じたこと。ネットの遮断や検閲、ハッキングにネット偽装、犯罪や反社会的な行為ですが、これを犯罪者もやれば国家もやる(可能性がある)んですな。国家は政治体制の安定のためにやるし、テロリストは革命のためにやる、ある人や団体はより良い社会を作ろうと(本人は考えてる)したらやるし、犯罪者は利益のためにやる。
 確かにインターネットが生み出す可能性って、個人の生活を良くするし、今までなかった絆ができたりイノベーションを生み出したり、復興なんかでも大きな効果があります。
 一番大きな例としては、全体としては良くない国家を打倒する革命を支援したりもあります(*3)。しかし問題はインターネットは所詮は”技術”であって、それを何のためにどう使うかは”人”がどう考えるかってこと。でもってそれを現実世界にどう反映させてくか。
 かつて(といっても3~4年前ですが)”ジャスミン革命”ってのがありました。この革命であったのが、暴動側が情報共有にFacebookを使っただのYoutubeやTwitterなどのネットメディアも重要な役割を果たしたとか、テクノロジーが革命を後押ししたって話題です(*4) でも、重要なのはテクノロジーがあって革命が起った訳ではなく、元々革命を誘発するような社会的な不満があって、テクノロジーは革命の発露を後押しした(やりやすくした)に過ぎないってことです。

 本書ではそのへんをうまくまとめていて

 ・技術はそれ自体では諸悪を解放する万能薬にはならないが、
  賢明に利用すれば大きな違いを生む
 ・仮想世界は既存の世界秩序を覆したり、組み替えたりすることはないが、
  現実世界でのあらゆる動きを複雑にしていく
 ・国家は2種類の外交政策と2種類の国内政策を、
  つまり仮想世界と現実世界でそれぞれ異なる政策を実行することになる

 本書はどちらかというとインターネットの未来に楽観的ではありますが、かといって楽観的にすぎないだけの見識もあるかな(むしろ国家によっては辛辣かも)。300ページ近い本であんましうまく説明できませんが、ネットの話をするんなら読んどいた方がいいかも。惜しくらむは、もうちょっといい邦題が付けれんかったのかなぁ ぐらいです


《脚注》
(*1)ジャスミン革命
 2010~11年にかけてチュニジアで起こった民主化運動。一青年の焼身自殺事件に端を発する反政府デモが国内全土に拡大し、軍部の離反によりザイン・アル=アービディーン・ベン=アリー大統領がサウジアラビアに亡命し、23年間続いた政権が崩壊した事件(wikipediaより)
(*2)コネクティビティ
 ネットワークへの接続のしやすさなど、複数のものを連結する際の簡易性のこと。本書では携帯電話やスマホとほぼ同義に使われてます
(*3)全体としては良くない国家を打倒する~
 民主主義国家が必ずしも正しい選択をするとは限らないし、独裁者やその一族が支配する国家が絶対的な悪ってのは短絡的すぎるんではないかと。民主主義だって短期的な人気取り政策に迎合すれば中長期的にはあかんたれの国家になっちゃうしねぇ・・・
(*4)テクノロジーが革命を後押ししたって話題です
 よその国の話だと思われるかも知れませんが、社会的な大事件でテクノロジーが大きな役割を果たすってのはままあります。日本でも1995年に発生した阪神・淡路大震災で当時普及期だったパソコン通信やインターネットが災害情報提供に威力を発揮したなんて話題もありましたし。


メガソーラーのケーブル盗難って、今どきあんたらアパッチ族ですか!(日本アパッチ族/大阪砲兵工廠跡地)

 ども、さすがにアパッチ族をリアルタイムに見てたほどおぢんではないおぢさん、たいちろ~です。
 先日ニュースをみてたら滋賀県でメガソーラーのケーブル盗難が相次いでるとのこと(*1)。まあ、銅が高く売れるってことらしいですが、なんでメガソーラーかっつ~と

  銅線が野外に大量に置いてある
  敷地面積が広く管理者の目が届きにくい
  立地場所が人里離れた場所にあって犯行が目立たない

からだとか。まあ、ハイテクなメガソーラーに銅泥棒というローテクな組み合わせがユニークなニュースなんでみょ~に印象に残る話だったんですが、この話を聞いた第一印象って

  今どき、あんたらアパッチ族ですか!

 ということで、今回ご紹介するのは日本SFの巨匠小松左京の処女長編”日本アパッチ族”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
大阪砲兵工廠跡地の大阪ビジネスパークに建つTWIN21(大阪ツインタワー)です。戦前・戦中派の大阪人にとっては隔世の感があるんでしょうなぁ

0360

【本】日本アパッチ族(小松左京 ハルキ文庫他)
 終戦前後の大阪、憲法改正により成立した失業罪により大阪砲兵工廠跡地に追放刑となった木田福一。死に瀕した彼を救ったのは大酋長”二毛の親分”こと二毛次郎をリーダーとする”アパッチ族”、鉄を食う人達だった・・・
【旅行】大阪砲兵工廠跡地
 大日本帝国陸軍の兵器工廠(造兵廠)の跡地。現在でいうと大阪ビジネスパーク(OBP)、大阪城公園の一部、JR森ノ宮電車区あたりです。(地図はwikipediaより)
 1980年代後半にOBPでアメリカ軍の不発弾が発見されたので撤去あたって避難するってのがありました。なかなか戦後が終わってなかったって話です。

Photo

 ”アパッチ族”てのは終戦直後の大阪砲兵工廠跡に出没したくず鉄泥棒のことです。さすがにリアルタイムに見てた世代ではないんですが、なぜこんなの知ってるかというと小松左京の小説”日本アパッチ族”読んでたから。初めて読んだのって高校の時だったかなぁ(*2)

 久しぶり読んでみたんですが、改めて小松左京の力量の凄さを感じましたなぁ 9ケのさもありそうな理屈をコネることで、1ケのありえないことをマジで信じさせるって。小松左京の名作”日本沈没”や”復活の日”なんかもそうですがやっぱりSFはこうあるべきだと(*2)。”日本沈没”のテーマは”日本人が国を失い放浪の民族になったらどうなるのか”だそうで、そのために日本列島を沈めちゃう、で、地球物理学を引っ張り出してプレート・テクトニクスがど~のこ~のとか大技かましてみんなを丸めこんじゃう手法だったし(*4)。

 ”日本アパッチ族”では、”鉄を食べる人類の発生”がキーワードになってます。実際にはありえなさそうなネタですが、いかにこれを納得(ひょっとしたらありえるかもしれん!)と思わせるのがポイントです。で、どうやってるかというとこんな感じ(かなりネタバレです)

〔鉄を食べる人類の発生〕
 実際に鉄を酸化させ、そのエネルギーで代謝し活動する”鉄バクテリア”とか、石油を食べて増殖する微生物ってのは存在します。まあ、高等生物レベルでありうるかというと、牛みたいに草の繊維を分解する細菌類と共生関係にあるのもいるし。
 ”日本アパッチ族”では、食鉄細菌の存在を示唆するにとどまってますが、その代わりアパッチの体の生理とか構造変化、セックスにいたるまでけっこう専門用語をてんこもり、まるまる1節使ってご説明。さらに他に食べものがないという極限状態で、鉄を食べちゃう=生き残るための生理の変化みたいなのを並べ立ててます。こんなことされると”ひょっとしたらありえるかもしれん!”と思っちゃいます

〔追放刑の成立〕
 追放刑となった木田福一。じゃあなぜ”追放刑”なる法律が成立したかというと死刑の廃止とセットでどさくさ紛れに成立しちゃったという設定。まあ、死刑廃止という人道主義的な議論に目がくらんで、追放刑が隠れちゃってるというワケ。でも、この手の政治手法ってありそうなんだよな~ 福祉や年金財政を改善するために消○税増税しちゃうみたいな・・・(*5) こんな状況を提示されると”ひょっとしたらありえるかもしれん!”と思っちゃいます

〔追放された=弾圧された人々による自治権の獲得〕
 元々は”追放したあとは自由にやってくれ”という趣旨だったのが、いろいろ理屈つけて国家が弾圧(ってか完全にジェノサイト)するってのはどうなのよって心理にもってくのはさすが。実際に抑圧かどうかはさておき、自治権の確立ってのは心理としては普遍的なようで、イ○ラー○国の樹立宣言だとか、台○の民主化デモとか今でもやってるもんなぁ 武力弾圧を進める政府や軍部に対し平和的解決を求めるアパッチみたいな構図になると”ひょっとしたらありえるかもしれん!”と思っちゃいます

〔アパッチ大戦争の発生〕
 で、結局政府・軍部VSアパッチ族の間で戦争が発生します
 この”大アパッチ戦争”の原因となるのが実は鉄鋼産業をめぐる状況があったりなんかします。鉄鋼不況や国際競争の激化、さらにアパッチ族の生み出す良質ローコストな鉄鋼(なんせ糞が良質の鉄鋼!)の供給がからんで鉄鋼関連企業が結託して裏で糸を引くって内容です。鉄鋼をめるぐ経済状況にアパッチ族の生理をえんえんんと語られてます。
 そもそも戦争(及び戦線の拡大)の原因の一つに経済的要因があるわけで、ましてや
本書が書かれた1964年は終戦後から20年、まだまだ戦前・戦中派が多数派だし、”鉄は国家なり(*6)”がまだまだ通じたころですから、今以上にリアリティがあったんでしょうなぁ
 当時の人に”鉄鋼産業をめぐる攻防が・・”みたいな話をすると”ひょっとしたらありえるかもしれん!”と思っちゃったんじゃないかと(ちょっとくどいか)

 ”日本アパッチ族”は文句なしに面白い小説。
 ”日本沈没”や”復活の日”を先に読んだら(まあ、ほとんどの人がそうでしょうが)、この本って”日本沈没”なんかのセルフパロディーかと思っちゃいそうですが、実はこっちの方が先に出版されてます。さすがに小松左京、初期のころから凄かったんですねぇ

《脚注》
(*1)滋賀県でメガソーラーのケーブル盗難が相次いで~るとのこと
 滋賀県内の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で7月以降、銅製の送電用ケーブルの盗難が多発している。特に10月に入って5施設が相次いで被害を受けた。県もメガソーラーの住所の公表を控えるなど対策に乗り出している(京都新聞hp 2014年10月24日より抜粋)
(*2)初めて読んだのって高校の時だったかなぁ
 初出は1964年出版の光文社カッパノベルス。今の若い人が読むと世相風俗が分かりにくいかもしれませんが、おぢさん世代にはちょっとノスタルジーにひたれるかもしれません
(*3)”日本沈没”や”復活の日”なんかもそうですが
日本沈没
 大規模な地殻変動により日本列島が沈む。日本政府はD計画を発動し日本人を全世界に脱出させるべく奔走する・・・
 1970年代SFを代表する傑作。1973年、2006年に映画化
復活の日
 スパイによって持ち出された猛毒性ウイルスが事故により拡散、人類のほとんどが死滅した。僅かに生き残った人達を救うため、南極に向けられたミサイルの発射を阻止すべく吉住はアメリカに向かう・・・
 映画化されたのは1980年と”日本沈没”より後ですが、長編小説としては”日本アパッチ族”に次ぐ2作目。すごいです
(*4)地球物理学を引っ張り出して~
 1973年版の映画で山本総理に日本沈没の理論を説明する地球物理学者役で竹内均東大教授(本人)が登場。けっこうマジです。
 現在、大規模地震が発生するとニュースに出てくる”ユーラシアプレートの下に太平洋プレートが沈み込んでうんぬん”の説明を違和感なく理解できるのはたぶんこの作品のせいではないかと
(*5)福祉や年金財政を改善するために~
 個人的には財政健全化のためには消○税増税もやむなしという立場なんですが。むしろ選挙のために増税先送りにしてセットで福祉関連法案をうやむやにしちゃう方が問題ではないかと・・・
(*6)鉄は国家なり
 オリジナルはドイツの首相ビスマルクの演説より。かつては鉄鋼産業は国家の基幹産業だったわけです。今でこそあんまり言いませんが、私が入社した30年前って基幹産業といえば”かねへん(金属機械産業)、いとへん(繊維産業)”がまだ通用するの時代でしたし。

« 2014年11月23日 - 2014年11月29日 | トップページ | 2014年12月21日 - 2014年12月27日 »

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ