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2014年10月26日 - 2014年11月1日

ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 いや、アフラックのコマーシャルじゃなくて(ブラック・スワン/江の島 龍恋の鐘)

 ども、学生時代に偏差値でいぢめられてたおぢさん、たいちろ~です。
 先日”ジェフ・ベゾス 果てなき野望(*1)”という本を読んだんですが、この中でアマゾンが社内の人にお勧めの本ってのに”ブラック・スワン”ってのが出てました。いや、ナタリー・ポートマン主演の映画じゃなくて(*2)。
 ”ブラック・スワン”の語源は、昔の人は”白鳥は白い”ってのが常識でだれも疑わなかったにも関わらずオーストラリアで”黒い白鳥”が発見されちゃって、何千年も確認してたことがたった一つの事例でひっくり返されてしまう、つまりどんなに起こり得ないと思っていることもひょっとしたら起っちゃうかもしれないことの比喩
 で、読んでみたんですが、これがけっこう面白いんですな、しかもいかもジェフ・ベゾスの好みっぽい。ということで、今回ご紹介するのはコンジョ曲がりの研究者にしてトレーダーのナシーム・ニコラス・タレブの”ブラック・スワン”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
江の島 恋人の丘にある”龍恋の鐘”です

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【本】ブラック・スワン(ナシーム・ニコラス・タレブ、ダイヤモンド)
 サブタイトルは”不確実性とリスクの本質”とあるように、”ベル型カーブ”に代表されるリスク管理の考え方をボコボコに批判した本。
 この本をリアルに主張したら変人扱いされること間違いなしですが、でも、説得力あるんだよな~、この本
【道具】江の島 龍恋の鐘
 江の島にら伝わる”天女と五頭龍”伝説に因んでつくられた”龍恋の鐘”。この鐘を鳴らした二人は決して別れないといわれてるそうです。恋人達のおまじないなら笑って済ませられますが、マジに言ってるんなら元になる統計データをぜひ見せていただきたいものです
 ところで、女子力ってもし数値化できたとしたらその分布はこんなベル型カーブを描くんでしょうか・・・(リスキーなネタフリだなぁ)


 ブラック・スワンとリスクといえば、まず思い出されるのがアフラックのCM。ブラック・スワンと本田翼のかけあいのやつです(*3)。なんで人が保険に入るかというと”大きな病気や交通事故なんかに合うはずないけど、いざそうなっちゃたら困るな~~ せめてお金だけでもなんとかするか!”というノリから(これを”リスク転嫁”と言います)
 つまり、ほとんどあり得ないけど万が一にどう対応するかというリスクマネジメントなんですが、本書をベースにこのCM作ったんならこれは正しい選択ではないかと。

 人が将来に対して何かを決定しないといけない時によく使うのに”正規分布”ってのがあります。一番良くわかる例が入試の時の偏差値ってヤツ。テストの結果を横軸に点数を縦軸にその点を取った人の人数をプロットすると多くの場合正規分布(ガウス分布)、つまりベル型カーブを描く(*4)というのを前提に標準偏差を計算して”お前の偏差値ではこの大学は難しい”とか言われるの。覚えてますか?
 実際このようなカーブを描くものも多いですが、そうはならないケースもかなりある。タレブは前者を”月並みの国”、後者を”果ての国”のデキゴトに分類しています。で、ジェフ・ベゾスの率いるアマゾンに代表されるインターネットは果ての国になります。
 本書に掲載されている分類をピックアップすると

  月並みの国                      果ての国
・弱いランダム性                   強いランダム性
・ベル型カーブやその変形に分布       マンデルブロ的か補足不能に分布
・勝ち馬はパイ全体の一部を受け取る    勝者総取りの法則
・(一般的には)物理的な量に対応。      数値に対応する
 身長など                         財産額など
・自然に起こるのは平等              極端な勝者の総取りの不平等
・合計は一つの事例やデータで決まらない 合計は一握りの極端な事例で決まる
・しばらく観察すればどうなっているか     どうなっているか見極めるには長い時間が
  見極めがつく(予測や推測が容易)     かかる(過去の情報かの予測は困難)
・集団の支配                     まぐれの支配
・歴史は流れる                    歴史はジャンプする

 ってとこです
ダレブに言わせると、ベル型カーブなんて”壮大な知的サギ”(GIF Great Intellectual Fraud)ともうボロクソ。逆に”果ての国”はもうジェフ・ベゾスが好きそうなキーワードがてんこ盛り。”勝者総取りの法則(*5)”やら”勝者の不平等”やら”歴史はジャンプする”やら

 なぜ、ベル型カーブでものを考えるといかんかというのを本書からピックアップするとこんな感じ

〔講釈の誤り〕
 はっきりしたパターンを欲しがる自分のプラトン性を満足させる講釈で自分を誤魔化す

〔追認の誤り〕
 見えてる一部だけを見て、見えてない部分を一般化する、”今まで起ったコトがないから大丈夫”ってやつです。まあ、”昨日まで病気しなかったから、今日も健康!”って思いたくなる気持もわからんでもないですが。

〔物言わぬ証拠の歪み〕
 まれな事象(おおむね悪いこと)の起るオッズ(確率)を見誤らせる
 LTCMの破綻の時に言ってたやつでしょうかね(*5)

〔お遊びの誤り〕
 カジノのゲームはルールもオッズも分かっている=消毒されて飼いならされた不確実性。現実社会ではそんなことはありえないのに、ついつい同じようなもんだとおもってしまう

 ほかにもいくつか出てきますが、ほとんどこんなノリです。言ってみればおおむね起る正規分布にたよって思考停止しがちだってことでしょうか。

 本書の冒頭でブラック・スワンの特徴として上げているのは”異常であること”、”とても大きな衝撃があること”、”異常であるにもかかわらず、それが起ってから適当な理屈をつけたり、予測可能だったことにしてしまう”の3点。これって、福島第一原発の事故にあてはまりませんか? だったらこの3つにできれば”対策の不備は起った後ならなんとでも突っ込める(*8)”ってのを付け加えたいですね。QCD(*8)を無視すりゃなんだってできますが、それにはコストの応分な負担が伴うもの。別に東京電力の肩を持つ訳じゃありませんが、もし東日本大震災地震が起こる前に膨大なコストをかけて防波堤を作るからその分電気料金をUPしますって言われたら”起るかどうかの地震になんでそんなコストをかけるんだ!”って言ってませんか? きっと・・・

 本書はビジネス書としてはぶっちゃけ話満載でけっこう面白かったです。ただし本書の内容を他人に得意げに話すかどうかは、本人のリスクマネジメントの問題ということで


《脚注》
(*1)ジェフ・ベゾス 果てなき野望(ブラッド・ストーン、日経BP社)
  サブタイトルは”アマゾンを創った無敵の奇才経営者”とあるように、アマゾンの創業者である”ジェフ・ベゾス”の人生とアマゾンの成長を扱った本。面白かったです。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)いや、ナタリー・ポートマン主演の映画じゃなくて
 ナタリー・ポートマン主演の映画は2010年に公開された”ブラック・スワン”のこと。ナタリー・ポートマンって”レオン”(監督 リュック・ベッソン、主演 ジャン・レノ)以来のファンなんだけど、これまだ見てないな~
(*3)ブラック・スワンと本田翼のかけあいのやつです
 ”保険なんて必要ない!”って言ってるブラック・スワンですが、いざ病気になると本人はちゃんと保険に入ってたりして。しかも本田翼が看病してくれたりとか、合コンで知り合った美人のおねいさんがお見舞いにきてくれたりとなかなかアナドレナイ奴です。



(*4)多くの場合正規分布、つまりベル型カーブを描く
 最近は必ずしもそうじゃなくてテストでもピークが二つ出てくるフタコブラクダ型、つまり出来る子の集団とそうでない子の集団に分かれる場合もあるんだとか。
(*5)勝者総取りの法則
 インターネットは”マタイ効果”つまり”勝者の所に富は集まる”が効きやすいマーケット。アマゾンや楽天、Yhhoo!にGoogleなんか見てると良くわかります。
(*6)LTCMの破綻の時に言ってたやつでしょうかね
 LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)はノーベル経済学賞を受けた学者も参加し”ドリームチームの運用”といわれた伝説のファンド。1998年にアメリカ金融業界を大混乱に巻き込みつつ実質破綻。破綻のトリガーとなったロシアの債務不履行が起こる確率は100万年に3回だと計算してたそうです(wikipediaより)
 ちなみに、タレブはノーベル経済学賞が大嫌いなようです
(*7)対策の不備は起った後ならなんとでも突っ込める
  しかし、それ以上の高さの津波に対する備えは、まったく施されていなかった
   (中略)
  それこそ、自然災害に対する東電の油断と奢り、
  さらに言えば慢心が存在したのではないか、と思われる

  (”死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日”より 門田隆将、PHP)

 もしあなたがこの意見に”そうだ、そうだ”と言うんなら、東京で東南海地震が起こって”今後30年以内に60%の確率で起きるって言われてたのに、なぜお前は東京から逃げ出さなかったんだ!”と文句を言われても怒らないコンジョがある人のはずです
(*8)QCD
 生産技術における品質 (Q Quality)、コスト (C Cost)、納期 (D Delivery)のこと。つまり品質の良いものを安く納期通り(往々にして早く)作れっていうことです。ここで難しいのはコストをかければ品質向上や納期短縮ができるとは限りませんが、コストをかけずに高品質や短納期を実現するのはよっぽどのブレ-クスルーでもなきゃ難しいです。”だからブレークスルーしろ!”ってのはもっと難しいんですが・・・


若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(日本人がコンピュータを作った!/FACOM138A)

 ども、コンピューター産業史ってけっこう気に入っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日”℃りけい(*1)”という本のブログを書いた時に”TK-80(*2)”なんぞをどうしたこうしたって話をネタにしたんですが、このあたりの本を読みたいな~と思って探したら”日本人がコンピュータを作った!”ってのがありました。で、読んでみるとこれがけっこう面白ンですな。古色蒼然な話のはずなんですが、なかなかどうして今読んでも感慨深いというか。
 ということで、今回ご紹介するのはコンピューターの黎明期を支えた人達のお話”日本人がコンピュータを作った!”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
富士通のリレー式コンピューター”FACOM138A”です。

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【本】日本人がコンピュータを作った!(遠藤諭、アスキー新書)
 ビジコンの島正利、NECの渡邊和也、富士通の山本卓眞、通産官僚の平松守彦など、日本のコンピュータ業界の黎明期を支えた10名をまとめたインタビュー集。
 ”電算機屋かく戦えり”の改訂版
【道具】リレー式コンピューターFACOM138A
 ”国産コンピュータを世界にアピールした池田敏雄”に登場するリレー式コンピューター”FACOM100”の後継機種。1960年代のコンピュータでありながら、驚いたことに今でもちゃんと動きます


 本書から気にいった言葉をいくつか

〔渡邊和也〕NECのTK-80やPC-8001のチームリーダー

  

会社の上層部に『コンピュータを遊びに使うなんて不謹慎だ』と言われた時代でした

 コンピュータに使われる半導体というのは作るとなると何千個もできちゃうものなんですが、そんなに作って何に使うんだ?ということになったんだとか。今なら半導体なんてじゃぶじゃぶに使うモンですが、当時の発想はそんなモンです。
 で渡邊和也がアメリカに行くことになって色々調べると出てきたのが、アメリカでは”コンピュータなんかオモチャに使う時代だよ”という言葉
 そりゃまあ、大型コンピュータがメインストリームの時代、よもや7年後に任天堂がファミリーコンピュータで一大ゲーム機市場を作るなんて考えてもいなかったんでしょうなぁ・・・

〔後藤英一〕パラメトロンによるコンピュータを作った東京大学の先生

  ずっと後になって、MITのマッカーシーと親しくなっったんだが、彼に言われたよ。
  『パラメトロンとは面白いことを考えたもんだが、
  なんでそんなに遅い素子を作ったんだい?』ってね。
  そんなこといわれたって、予算はMITの1000分の1ぐらいしかなかったんだから

  パラメトロンというのはフェライトコアという素子を使って作った論理素子のこと。動作は遅いものの消耗の激しい真空管や高価なトランジスタ(当時1ケ8000円もしたとか!)に比べ安定していて安価にできるからこれを使ったのが採用の理由。

  (日本人は)オリジナリティには乏しいけど、
  デベトップメントしてパーッと売るのは得意だろ。
  いいものを安く売るていうのは大切だしさ、このメリットをわざわざ改める必要はないね

 この人のユニークなのは課題設定が極めて現実的なところでしょうか。パラメトロンうんぬんは、スピードを犠牲にしてでも低予算でまず動くものを作るとか、オリジナリティうんぬんにしても、マーケットを拡大するのにこだわる点はどこかとか。テクノロジーの話をすると最先端技術がど~とか独自性による差別化とかすぐ言い出しかねないんですが、こういった現実的な課題設定もけっこう有効なんでしょうね。


〔和田弘〕通産省電気研究所で日本で初めてトランジスタコンピュータを作った人

  日本再建のためのキーは二つある、と思っていました
  原子力とエレクトロニクスです

 今では福島原発事故に代表されるように原発はほとんど悪役扱いですが、1950年代の前半で先見性のある人の認識ってこうだったようです。代表的なのが手塚治虫の”鉄腕アトム(*3)”なんてったって電子頭脳を持ち原子力で動くロボットが活躍する未来ですから。主人公が”アトム(原子)”、お兄さんが”コバルト”に妹が”ウラン”。今だったらちょっとNGなネーミングだろうなぁ

〔池田敏雄〕富士通のコンピュータの基礎を築いた開発者(死後に専務)

  池田さんは来る日も来る日も遅刻ですから、
  ある時月給ゼロ、ボーナスゼロという状況になってしまった。
  いかに天才といえどもこれでは生活できないわけです
(富士通会長 山本卓眞)

 池田敏雄は富士通の初期のコンピュータ”FACOM100”などを開発した人。この人に関する本をいくつか読んだんですが、ものすごい天才なんですが反面勤怠は無茶苦茶。こんだけ才能がある人だから上司もかばってくれますが、凡人がマネをしたら絶対懲戒免職になります、はい。

〔平松守彦〕IBMの日本進出時の交渉やコンピュータ産業のスキームを作った通産省の官僚

  コンピュータは”思想”なんです
  私は、コンピュータを知ったとき、これはただの機械ではない、
  人間の頭を情報化社会型にしていく思想なんだと思いました

   (中略)
  パソコンネットワークなどはまさにそのとおりで、
  これによって新しい文化ができるだろうと、予測しました

 ここで”あれ?”って思った人はカンの鋭い人でしょうか。実はこの本の原典”電算機屋かく戦えり”が出版されたのは1996年とインターネットが社会に普及し始めたころのこと。これに続く発言なんてまさに象徴的でしょうか

  日本でもいまのような文字だけのパソコンネットワークだけでなく
  音声や映像も含めたマルチメディアのコンピュータネットワークというのが
  必ず出てくると思うんです

 本書の意味って、過去の時点で夢見た未来を現在から振り返ってみるってとこでしょうか。時代背景を知らない若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(おぢさんのノスタルジーと言われればそれまでですが・・・)
 若い人にも読んで欲しい一冊です。

《脚注》
(*1)℃りけい(わだぺん。、青木 潤太朗 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
 ゴーグルに耳にスパナな物理部部長の伊藤トノエ、飛行機オタクの曾野彩、全国模試トップレベルだけど変なシャツがお好みの菊池蘭、パソコン大好きな堀聖など理系の”サイエンスクラブ(通称 サイクラ)”に集う高校生たちの日常を描く漫画。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)TK-80
 NECが1976年に発売したワンボードマイコンキット。TKはトレーニングキット(教育機材)の略です。当初は200台も売れればと思ってたのが2年間で2万5千台も売れたんだとか。
(*3)鉄腕アトム(手塚治虫、講談社)
 手塚治虫の代表作にして日本のロボット技術に多大な影響を与えた作品。雑誌”少年”への連載開始が1952年、フジテレビで日本で初の国産テレビアニメとして放映されたのが1963年。


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