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2014年9月21日 - 2014年9月27日

”人は本そのものを集め、それらを自宅の本棚に置くのが好きなのです” 確かに一昔前ならねぇ(ジェフ・ベゾス 果てなき野望/Kindle)

 ども、Kindleを買おうかどうか迷ってるおぢさん、たいちろ~です。
 iPad miniもいいんだけど、本読むだけだしな~ 価格的にはfier HD7が魅力だし、HD6もキャンペーン中だけど6インチはちょと小さいかもしれなし~
 電子ブックリーダーって調べると意外と昔からあって(*1)、現在のタブレット型だけで見てもパナソニックの”シグマブック”やソニーの”リブリエ”の発売って2004年と10年ぐらいの昔。でも、電子ブックが普及してきた感があるのはやっぱりKindleの登場あたりからでしょうか?(*2)
 ということで、今回ご紹介するのはそんな電子ブック&世界最大のインターネット本屋さんのお話”ジェフ・ベゾス 果てなき野望”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。アマゾンのHPのKindlefire HD7です

Kindle


【本】ジェフ・ベゾス 果てなき野望(ブラッド・ストーン、日経BP社)
 サブタイトルは”アマゾンを創った無敵の奇才経営者”とあるように、アマゾンの創業者である”ジェフ・ベゾス”の人生とアマゾンの成長を扱った本。
 原題は”The Everything Store:Jeff Bezos and the Age of Amazon(訳すと”すべての物を売るお店:ジェフ・ベゾスとアマゾンの時代”って感じでしょうか)。
 面白いのが日本語版と原書でタイトルの扱いの違い日本語版は”ジェフ・ベゾス”という経営者に焦点を当ててるのに対し、原書は”アマゾン”という会社にウエイトを置いてるとこ。そのせいか日本語版の表紙はピカード艦長を彷彿とさせる(*3)”ジェフ・ベゾス”がど~んと出てるのに対し、原書はアマゾンから配送される”箱”の写真になってます。まあ、日本人って”経営者論”みたいの好きだからな~~ マニアックな見方ですいません。
【道具】Kindle
 Amazon.comが販売する電子ブックリーダー端末&ソフトウェア&電子書籍関連サービスの名前(ここでは電子ブックリーダーとして扱っています)
 電子ペーパーを使ったモノクロ版”Kindleシリーズとフルカラーの”Kindle Fireシリーズ”がありますが、後者はほとんどタブレット端末そのもの。家電のお店でiPad売ってたお姉さんに”どう違うんですか?”と聞いたら”本を読むだけだったらKindleが良くできてるけど、いろいろ使いたいならiPad”というお答え。う~ん、良くわからん


 ビジネスの世界では生態系、いわゆる”エコシステム”を作ったモンが勝つってのがあります。一昔前の”なんでも自前”みたいなのではなく、自前でやらない部分を得意な会社と協調して、なかなか他社の参入ができないような環境を構築して、この中でインフラを握ったものが儲けるってビジネスモデルです。日本の成功例でいうとファミコンの黎明期とかでしょうか(*4)。
 これをインターネットの時代にワールドワイドに展開したのがアップルのiPod。元々はコンピューターベンダーのアップルが”iPod”というハードウェアだけじゃなくiTunes(*5)というメディアプレーヤー(むしろ音楽の管理ソフトウェア化してる?)とiTunes Storeという音楽や動画なんかのコンテンツ配信サービス=インラインショップぶっこみでビジネスしています。

 前置きが長くなりましたが、本書を読むとKindle登場の背景にはこの”iTunes”への恐怖ってのがあったそうです。元々、ベゾスが最初にインターネットショップを立ち上げるにあたり対象商品を検討した中に書籍と並んで音楽ってのも入ってたんですね。その中で「書籍が一番いい」という理由で本屋さんになったということだそうです。書籍にしたのはどの店で買っても同じ品質(差別化要素がない)、取次がある、多品種でリアル店舗ではすべての在庫を持つことができない、など。まあ、音楽も似たようなもんでしょう。本書では音楽配信サービスにアマゾンが出遅れた理由にスティーブ・ジョブスが音楽好きに対し、ベゾスはそっちにあんまし興味がない人だからってのを上げています。経営トップの趣味に大きく影響されるってのもある意味すごい話です。

 で、”アップルが電子書籍の分野に攻めてくるかもしれない”という話になるわけですが、いざKindleというハードウェアをアマゾン自前で作るって話になった時に社内は大反対だったそうです(まあ、元々メーカーのアップルとは逆の流れですが)。でもベゾスは強硬に推進。本書からの抜粋

  アップルが音楽で成功したように、アマゾンが書籍で成功するためには
  洗練されたハードウェアから使いやすいデジタル書店まで用意して
  顧客の体験をすべて管理する必要があると、ベゾスは皆の反対を一蹴する

確かにアップルのビジネスモデルを見てりゃこのような考え方は他の経営陣も分かってたんでしょうが、いざ自分達がやるとなりゃ大変なんでしょう。でもこういう無茶ぶりな意思決定ができるってのも強力なリーダーシップの持ち主たるベゾスみたいな人がいないとできないんでしょうねぇ
 この後なんだかんだあってKindleは発売にこぎつけるんですが、そのなんだかんだの最たるものが”本のデジタル化”。元々電子データー化されてた音楽と違って特に昔の本はデジタル化されていないんで、このデータを作んなきゃいけない。考えて見れば当たり前の話で、リーダー(=ハードウェア)だけあっても本(=ソフトウェア)がなきゃ売れるはずがない。だもんでデジタル化された本をそろえなきゃならないわけですが、本書によるとそうとう無茶苦茶なこともやったみたいです。まあ、最大のバイヤーにして既存の本屋さんの脅威であるアマゾンからの依頼だから扱いが難しかったんでしょうなぁ。

 Kindleの登場にあたって興味深いのがリアル店舗のバーンズ&ノーブルCEOスティーブ・リッジオの言葉

  本が持つ物理的な価値は、デジタルで複製できるようなものではありません
  人は本そのものを集め、それらを自宅の本棚に置くのが好きなのです
  本の価値は物理的存在として消費者の心に根付いており
  本の価値が完全に複製できる日は来ないと私は思います

まあ、私も本を集めるの好きですが、部屋中本だらけにすると奥様が怒るしなあ
もうちっとマクロな意見で言うと、この人は百科事典の衰退を見てなかったんでしょうか?(*6)

 本書は500ページ近い本なのでKindleの話に絞りましたが、確かにジェフ・ベゾスという経営者はユニークな人なんでしょう。他社が参入したがらないほど利益率を低くするなんてなかなかできる話じゃないですし(*7)。けっこう面白いネタが満載なのでぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)電子ブックリーダーって調べると意外と昔からあって
 世界初の電子ブックプレーヤーはソニーの”DATA Discman DD-1”で1990年の発売とすでに四半世紀。さすがに元気があった頃のソニーは一味違いますな~~
(*2)Kindleの登場あたりからでしょうか?
 Kindle Paperwhiteの日本発売は2012年11月。impressのhpによると2013年度の電子書籍市場規模は推計936億円。市場規模もそうですが2012年度頃からPCやケータイから電子ブックリーダーへシフトしてきてるのが分かります。
 そう言えば、最近ケータイ小説って聞きませんが、どこ行ったんでしょう?
(*3)ピカード艦長を彷彿とさせる
 ”ピカード艦長”は”Star Trek:The Next Generation(新スタートレック)”に登場する宇宙船”U.S.Sエンタープライズ”の艦長。演じるのは”パトリック・スチュワート”。本書によるとジェフ・ベゾスはかなりのトレッキーだそうなので、絶対狙ってやってるよな~
 ちなみに、本書では”DUNE 砂の惑星”(フランク・ハーバート ハヤカワ文庫)の話題が出てきますが、こっちの映画版(監督 デヴィッド・リンチ、アルバトロス)にもガーニイ・ハレック役でパトリック・スチュワートが出てきます。
(*4)ファミコンの黎明期とかでしょうか
 任天堂はファミコンのハードウェアでもうけるのではなくゲームというソフトウェアで儲けるとか、サードパーティのソフト(ROMカセット、なんと懐かしい言葉!)の生産委託で儲けるビジネスモデルを確立しました。
(*5)iTunes
 元々はMacintosh専用ソフトでしたが、2003年にはWindows版も登場。これ最初に聞いた時はけっこう驚きましたね。だってアップル謹製のMacのソフトがライバルとも言えるWindowsで動くんですぜ! (まあ、ExcelみたくMac・Win両方動くソフトって昔からない訳じゃないんですが)
(*6)百科事典の衰退を見てなかったんでしょうか?
 高度成長期の子供がいる家にはだいたいちょ~分厚い百科事典が本棚に鎮座ましましてたもんですが、今はもう見ないんじゃないかなぁ。あの頃は”知の象徴”、”百科辞典を変えるほどの小金持ち”のアイコンみたいなモンでしたが、今では質はともかく量ではインターネットの圧勝です。
(*7)他社が参入したがらないほど利益率を低くする
 本書では”スティーブ・ジョブスの失敗”といってますが、これはiPhoneをびっくりするほど利益が上がる価格にしたために、競合他社をスマホ市場に引き寄せてしまったとの事例。だからといって”低利益率にしろ”といえる経営者ってなかなかいないんですよねぇ

ぴーがーぴょーろろろろろろー 80~90年代にパソコン通信をやってた世代には感慨深いネタですな(℃りけい/FM-8)

 ども、娘がリケジョなおとうさんのおぢさん、たいちろ~です。
 ”リケジョ”すなわち”理系女子”ですが、どんなイメージをお持ちでしょうか?
 論理的、専門分野にはやたら詳しい、頭の回転が速そうとかポジティブな反面、ファッションには無頓着で常に白衣に眼鏡、コミュニケーションはやや下手だけどマニアックな会話は得意みたいな。
 まあ、ここまで書くと”色眼鏡の狂詩曲(*1)”やカップヌードルのCM(*2)みたいな偏見に満ちたモンでしょうが、うちの娘を見ている限りリケジョも普通の女性です、たぶん。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなリケジョな高校生のお話”℃りけい”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。富士通の初期のパソコン”FM-8”です。

Fm84010103


【本】℃りけい。(わだぺん。、青木 潤太朗 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
 ゴーグルに耳にスパナな物理部部長の伊藤トノエ、飛行機オタクの曾野彩、全国模試トップレベルだけど変なシャツがお好みの菊池蘭、パソコン大好きな堀聖、怒らせると怖い科学部部長の武者小路真理、”地学マイナー上等”の白衣が似合う”ザ・優秀”な地学部部長の丹波鮎、いつも瞑目する生物部部長の加賀冬美。
 物理部、化学部、生物部、地学部と理系の”サイエンスクラブ(通称 サイクラ)”に集う高校生たちの日常を描く漫画。
【道具】FM-8(FUJITSU MICRO 8)
 1981年に富士通が初めて発売した8ビットパソコン。メインCPU MC6809(モトローラ)、メインメモリは64KB(Mではない!)、外部記憶装置はカセットテープ(これも死語?)を使ってたという今から思えば古色蒼然たるシロモノ。
 当時のパソコンといえばPC-8001(NEC)、MZ-80(シャープ)、ベーシックマスター(日立)、Apple II(アップル)、ちょっと遅れてMacintosh(アップル)という時代。でもこの前ってハードごと自分で組み立てるか、TK-80(*3)みたく基盤むき出し、ディスプレイもなしの時代でしたから・・・


 一言で”リケジョもの”といってもけっこうバリエーションに富んでいます。まあ、物理と化学だけでもやってることはぜんぜん違う訳で、細分化された現代科学では分野だけジャンルがあるんでしょうね。コミック系で私が読んだだけでも

 数学系:数学女子(安田まさえ、竹書房)
     数学ガール(日坂水柯、結城浩(原作)、メディアファクトリー)
 理論物理学:神様のパズル(内田征宏、機本伸司(原作)、ソフトバンククリエイティブ
 水産系:サイエンス・ガールズ! (みりんぼし、飛鳥新社)

 アニメや特撮で女性科学者が出てくるのも、MAGIシステムを開発したエヴァンゲリオンの赤木ナオコ・リツコ母娘とか、ちょっとマッドなロケットガールの化学主任三原素子とか、特捜戦隊デカレンジャーのメカニック担当白鳥スワン(演じるは石野・狼なんか怖くない・真子)とかまあ探せばけっこう出てきます。
 確かに私が現役大学生のころは理系女子って希少生物扱いでしたが、今や4人に一人がリケジョの時代(*4)。女性が機械に弱いなんて今は昔のこと。パソコンだってサクサク使っちゃいます(*5)。

 ということで、今回ご紹介の”℃りけい。”にもパソコン少女が出てきます。自作もok、”ホーリー”こと堀 聖さん、成績優秀、三代続くパソコンオタクの菊池 蘭さん。
 蘭さんの発言から

  かちちち・・・ かちちち・・・ かちちちちちかちちかちちちー
  ぴーがーぴょーろろろろろろー
  ザービヒャランツンヒャランツン ガーーザーージーー
  ・・・ってダイヤルアップトーン式でテレホーダイしてた あの頃よ
  ・・・しかし、「ウッハ これで世界中の人たちとボーダーレスにコミュニケーションだぜ」
  って広まってきたネットがねぇ・・・
  ひきこもりやら匿名のテロリズムやらを助長する技術になろうとはよ・・
  ITとは難しいのう ---

 いや~、80~90年代にパソコン通信をやってた世代には感慨深い発言ですな。前半の擬音なんて、今のインターネット世代にはわからんネタだろうなぁ・・・(*6)
 これに対する物理部部長の伊藤トノエと副部長の曾野彩のツッコミ

  トノエ:・・・久しぶりに蘭ちゃんの「理系ハイ・タイプ懐古」がはじまったな
  彩  :・・・長いんだよな このモードに入ると

 そうなんだよな~ 往年のパソコン少年って年とるとこのタイプになるんだよな~
 オタクという言葉の発生と時期を同じくするパソコン少年って(*7)、時代の先端にも関わらずやれ暗いだのパソコンに向かってぶつぶつやってるだの、チャットなんて文字のやりとりの何が面白だのいわれた迫害の歴史
 まあ、言ってみれば戦中の苦しい時代の話をトクトクとするぢぢいと同じ感覚でしょうか? 本書の中では”理系ハイの中で一番やっかいで、手に負えない”扱いになってますが、暖かい目で見てやってください。今回のブログネタのことです・・・

 ”℃りけい。”は、理系モノの中でも、学問ではなくてクラブ活動として理系やってる作品。その分だけ肩に力が入ってなくて気軽に楽しめるかな。理系離れがうんぬんされている昨今。これで理系に興味を持つ学生が増えればいいかな~~

《脚注》
(*1)色眼鏡の狂詩曲(筒井康隆 中央公論社)
 カリフォルニアのSFファンから送られてきた日本をテーマにしたSF。そこには偏見に満ちた日本人像が・・・
 偏見も突き抜けると笑えるという筒井康隆初期の名作
(*2)カップヌードルのCM
 ”現代のサムライ”篇に登場するお侍さん&集団ヲタク&でんぱ組inc(アキバ系のアイドルらしいです)のコラボによる日本を紹介する?CM。ここまで突き抜けると感心しちゃいます。映像はこちらからどうぞ
 ちなみに日清食品グループの海外売上比率は約18%(総売上4,176億円 内海外737億円 2013年3月期決算より)。グローバルに展開してるんですよね~~ このCMも海外でやってるんかしら?!
(*3)TK-80
 NECが1976年に発売したワンボードマイコンキット。TKはトレーニングキットの略みたいです。CPUはインテルの8080A互換のNEC製μPD8080Aを採用。懐かしい型番やな~~
(*4)4人に一人がリケジョの時代
 理学・工学・農学・医歯薬学の大学学部学生のうち女性の比率は25%(理学26.4%、工学12.0%、農学44.3%、医学32.5%、歯学39.2%、薬学57.6% 2014年度文部科学省学校基本調査より)。さすがに工学系は少ないようですが、農学部なんて半分弱が女性って学問もあるんですね
(*5)パソコンだってサクサク使っちゃいます
 実は私の奥様もブログなんぞをやってまして、奥様友達の中では”パソコンに強い人”ってことになっとるんだそうです。だったら、ファイルのコピペぐらい覚えてくれよ~
 奥様ブログはこちらからだうぞ
(*6)前半の擬音なんて~
 当時はまだ接続先のアクセスポイントに電話をする方式でした。電話をするには黒電話(死語)のようにダイヤルでパルスを発生させるパルス式とボタンを押すトーン式がありまして、”かちちち”はダイヤルを回す(これも死語なんだろうなぁ)音を発生させたものです。”ぴーがー”以下はセッションを確立するための定番の音。
 当時はパソコンのデジタル信号をアナログデータに変換して電話回線に送る方式でしたのでこんな音が聞こえてたんですね。
(*7)オタクという言葉の発生と時期を同じくするパソコン少年って
 ”おたく”の語源については、コラムニストの中森明夫が”漫画ブリッコ”でコミックマーケットに集まる人を”おたく”と命名したのが定説。1983年のことです。
 パソコン史ではベストセラーとなるPC-8001の発売が1979年、写真のFM-8はこのちょっとあとの発売。商用パソコン通信のはしりであるアスキーネットの実験運用が開始されたのは1985年、定額制電話料金の”テレホーダイ”のサービスが始まったのはちょっと下って1995年のことです

私たちが宇宙にいるのは厳密にいって、圧倒的に優秀な文化との衝突のおかげなのです(死者の代弁者/豚)

 ども、80年代のSFもなかなかいいな~と思ってるおぢさん、たいちろ~です。
 今回のお題は先日読んだオースン・スコット・カードの”エンダーのゲーム(*1)”の続編、”死者の代弁者”です。高校時代の友人推しとあって読んでみたんですが、なんじゃこりゃ~と思うぐらい全然別物。主人公のエンダーやバガー戦争の後の歴史なんてのは地続きですが、前作は異星人との戦争という”スペースオペラ(*2)”の系譜とも言えるSF(サイエンス・フィクション)ですが、”死者の代弁者”は異星人との文化の違いとそれに起因する殺人事件というSF(スペキュレイティブ・フィクション(*3))とでも言いましょうか?
 悪い意味でないですが、SF慣れしてない人(慣れている人でも)わかりにくい小説。言葉がわかりにくいとか、数代にわたる物語とかいう点では、あえて言うならガルシア=マルケスの”百年の孤独(*4)”に近い読後感とでも言いましょうか。


写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園の子豚です

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【本】死者の代弁者(オースン・スコット・カード、早川文庫)
 昆虫型異星人の”バガー”との戦争から3000年後。人類はルジタニアにて第二の知的生命体”ピギー”と遭遇した。バガーを全滅させたという反省から慎重にコミュニケーションをとる人類。そんな中、ピギーを研究していた異類学者ピポがピギーに殺されるという事件が発生する。
 異類皆殺し(ゼノサイド)を遂行した”エンダー”は、”死者の代弁者”となりルジタニアに赴く・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞のダブルクラウンに輝く”エンダーのゲーム”の続編
【動物】
 哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科の動物で、イノシシを家畜化したもの。
 異星人”ピギー”は豚(Pig)に似ているからですが、おだてられなくても木に登るかとができるので、まったく同じではなさそうです


 ”死者の代弁者”で大きなキーワードになっているのは物語を語ること。広い意味でのコミュニケーションとでも言いましょうか。”バガー”と戦争が勃発した要因の一つに人類とバガーとの間にまったくコミュニケーションが成立しなかったこと。でも、なかなかこれが難しいんですな。特に異質な存在との間では。
 本書では異人性について4つの分類で語られています

〔ユートレニング〕
 私たちの世界ではあるが別な都市や国の人間として認識するよそ者。
 まあ、日本人から見て、文化や宗教が違っても良好かそこそこ落し所が見つけられる外国人(アメリカ人とかぎりぎり中国人あたり)ってなくくりでしょうか

〔フレムリング〕
 私たちが人間ではあるが別な世界なものとして認識するよそ者。
 言ってる意味は理解できるものの文化や宗教のバックボーンが違いすぎて、うまく落し所が見つかんない人達。北○鮮やイ○ラ○国ってこのくくり?

〔ラマン〕
 私たちが人間ではあるが別な種のとして認識するよそ者。
 ”人間”というものをどう定義するかにもよりますが、広義で”知性のあるもの”すればエンダーの世界ではピギー(ラマン説もあり)、通信ネットワーク上に誕生した人工知性”ジェイン”、バガーの生き残り”窩巣女王”あたり。
 現時点のリアルではジェインほど発達した人工知性はありませんが、ゲームキャラを”俺の嫁”と呼ぶ人もいるぐらいなので、ラマンの登場は近い?

〔ラマン〕
 どんな交流も可能でなく、行動の目的や理由の見当もつかず、知能があるのか自意識があるのかすら知ることができない真の異種族(エイリアン)。”エンダーのゲーム”の時代のバガーがこれ。

 上記の区分は相対的なものですんで、立場や状況が変わればどっちに転ぶかは変わりますがおおむね下に行けばいくほどコミュニケーションが成立しにくくなるもの。このあたりはSFではファーストコンタクトテーマ(*5)といわれるジャンルですが、そりゃ、人間同士だって今だにわかりあえるって状態にはほど遠いのに、文明・文化どころか生物としての成り立ちから違う異星人と会っていきなり分かりあえっても難しいでしょうね。だからお互いに警戒しちゃう。本書では人類とピギーの領域の間にフェンスを設けて接触を極力少なくし(全面的に禁止しないところが知的好奇心?)、科学技術を渡さないように制限しちゃいます。でも、これって恐怖の裏返しのようです

  すべて(科学技術や兵器)はバガーとわれわれとの接触の直接的な産物なのです
   (中略)
  私たちが宇宙にいるのは厳密にいって、圧倒的に優秀な文化との衝突のおかげなのです
  それなのにわずか二、三世代のうちに、わたしたちはバガーの機械をわが物として
  バガーを凌駕し滅ぼしました
  それこそ、わたしたちのフェンスが意味するものです
  ビギーが同じことをわたしたちにするのではないか、とわたしたちは恐れています
  しかも、ピギーたちはそれが意味しているところを知っている
  知っていて、憎んでいるのです

 引用が長くなりましたが、人類の影響と腐敗からピギーを庇護するフェンスためにフェンスがあるという意見に対するエンダーの言葉。コミュニケーションの意図的な断絶でもありますが、方や善意でやってることが方や悪意でとらえるなんてありうることですがね。これなんかまだ分かりやすい方で、本書の中でもピギーにとって最大の名誉が地球人にとっては殺人事件にしかならないなんてことが起こってます。

 で、この異質な存在同士をつなぐのが”死者の代弁者”ことエンダー(*6)の役割です。 この人は前作では”バガーに勝つための最終兵器”的存在でしたが、本書ではずいぶん変わったなぁ、おっさんになってるし。哲学的な会話も多いんでどちらかというと宗教家っぽい扱いになっていますが、本質的には名探偵って気もします。カオスのかけらから事実を再構成して語るとことか?! 死者を代弁するってのもそれを明らかにすることが生者の幸せにつながってるのかどうかちょっと疑問だし、いろいろ偉い人をまるめこんで反乱を起こさせてるってのも、見方によっては知能犯っぽいとこもあるしな~~

 ”死者の代弁者”は一般人というよりSFの玄人受けするような本でしょうか? 
 哲学的で高尚な会話って、どちらかというとハイレベルなSFに向かっていたディープなSFマニア向けなのかな~~

PS.
 ところでこの本、すでに絶版になっているようです。
 せっかく”エンダーのゲーム”も映画化されて新訳も出したんだから、ちょっとは商売ッ気だしてこれも復刻しろよ~~ 早川書房!


《脚注》
(*1)エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類はコミュニケーションの取れない未知の異星人”バガー”の侵略をからくも二度にわたり阻止した。る侵攻をかろうじて撃退した。その第三次攻撃に備るべく艦隊指揮官を養成するバトル・スクールを創設、天才少年”エンダー”を育成した・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞したSFの名作。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)スペースオペラ
 ヒーローやヒロインが宇宙をまたにかけて活躍するSFのジャンルのひとつ。ジョージ・ルーカスの”スター・ウォーズ”や松本零士の”宇宙海賊キャプテンハーロック”、寺沢武一の”コブラ”あたりが代表例かな。
 でも、最近この言葉も聞かなくなったなぁ。ジャンルとしてあまりにも定着しすぎて(てか、宇宙のでてくる映画ってほとんどこれ?)今さらってことでしょうか・・・
(*3)スペキュレイティブ・フィクション(Speculative Fiction)
 哲学な趣きを持ちこんだSF。思弁小説と訳されてます。
 SFが低俗な娯楽みたいに思われていた時代の”SFの文学的地位の向上”といったこともあったんでしょうかね。この言葉も最近聞かないなぁ
 ちなみにSFには”セーラー服”の略って説もありましたが・・・
(*4)百年の孤独(ガルシア=マルケス)
 ホセ・ブエンディアとウルスラ・イグアランから始まるブエンディア一族の歴史を描いたガルシア=マルケスによる魔術的リアリズムな長編小説。
 面白いちゃ面白い小説ですが、わかりにくいのも”死者の代弁者”と良く似ています。 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)ファーストコンタクトテーマ
 異なる文明または種族が初めて出会った時に何が起こるかを扱ったSFのジャンル。まあ、SFに限ったことではありませんが。異星人とのこれをしくるとだいたい星間戦争になります。比較的うまくいってるのって”幼年期の終り”とか(アーサー・C・クラーク、早川文庫)数少ないし
(*6)”死者の代弁者”ことエンダー
 ”死者の代弁者”ではエンダーの名は”バガーたちの異類皆殺し”として悪名を轟かしていますが、なんだかな~ だいたい
 我々がしなければならなかったのは、戦うことじゃない。愛し合うことだった
なんていうセリフは、勝ったから言えるセリフで、”人類滅亡の日まであと365日”がまんまの状況だったらそんなこと言えないと思いますが・・・

”遠野”ってコンテンツーリズムのはしりだっかもしれませんねぇ(遠野物語/遠野物語remix/遠野物語バス)

 ども、出不精なわりには旅行は好きなおぢさん、たいちろ~です。
 話は前後しますが、”遠野物語”を読みました(*1)。夏休みに思い立って遠野に行ってきたわけですが、けっこう面白かったです。”遠野物語”は民間伝承を集めた本ということで、文学というより民俗学のジャンルの学術書に近いんかもしれませんが。ただ、明治の本ということで古文に近く難儀をしていると、現代語訳とでもいうか京極夏彦の”遠野物語remix”というのもあったんで、こっちも並行して読了(てか、こっちがメインかな)
 ということで、今回のテーマは”聖地巡礼、遠野物語の里に行く”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
遠野駅前に停車していた遠野物語百周年記念のラッピングバスです。

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【本】遠野物語(柳田國男、角川ソフィア文庫他)
【本】遠野物語remix(京極夏彦、柳田國男、角川文芸出版)
 岩手県遠野の民話蒐集家であった佐々木喜善によって語られた遠野の説話を民俗学者”柳田國男”が編纂した本。天狗や河童、座敷わらしといったメジャーな妖怪からオシラサマといった土着の物語なんかも載っています。
 ”遠野物語remix”は原典を妖怪研究家”京極夏彦”(*2)が現代語訳して順番などを再編集した本。
【乗り物】遠野物語バス
 遠野物語の登場人物を漫画家水木しげるがキャラクター化してバスにラッピングしたもの。中央が”河童”(かたるくん)、右側が”ザシキワラシ(座敷童子)、左側が”オシラサマ”

 ”遠野物語”には、数々の奇異、神様、妖怪のたぐいが登場します。まあ、バスのキャラクターにもなってるのをご紹介。

〔河童〕
 置き去りにされた馬を淵に引きずり込もうとして逆に陸に引きずられた河童。村人に見つかり危うく殺されそうになるが、もういたずらをしないということで放された。その後、河童は村にいない(No.58(*3))
 ということで、下の写真が”カッパ淵”。子供たちが竿の先にキュウリをつけたのでカッパ釣りをして遊んでました。

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 ところでこの河童、人妻んとこに忍び込んで間男して子供を孕ませるというなかなかにスケベなとこもあるようです(No.55)。人間のほうも生まれた子供が気味悪いと村はずれに捨てさりますが、見世物小屋にでも売れば金になるかと引き返すともういなかった(No.56)とか、牧歌的とか言い難い生臭い内容も。
 ちなみに、他の土地の河童の顔は青いんですが遠野の河童は赤いんだそうです(No.59)。確かにバスのキャラクターも赤色ですね。河童の色ってあんまし意識したことなかったんですが、どうも河童って初めてちゃんと見たのって特撮番組の”河童の三平 妖怪大作戦(*4)”で、まだモノクロの時代。あんまし”色彩”って意識なかったんかなぁ・・・
 河童の蘊蓄は京極夏彦の”塗仏の宴-宴の支度-”をどうぞ(”ひょうすべ”の章)

〔ザシキワラシ〕
 旧家にはザシキワラシという神様が住んでいることが少なからずある。この神様は12~13歳の男の子の姿をしている。この神様いる家は豊かになるという(No.17)
 またザシキワラシは女の子の場合もある。ある男が道を歩く娘にどこから来たかと問うと豪農の孫左衛門の家から来たという。ほどなくしてこの家は主従ともに20数人がが死に絶え、生き残った7歳の子供も子供をなすことなく死んでしまった(No.18)

 

福の神の眷属であるザシキワラシですが、バスの写真にあるようなおかっぱ頭に着物というイメージなので小さな女の子だとばっかり思ってたんですが、そうとも限んないんですね。ま、そっちのほうがかわういけど(きまぐれそうで怖い気もありますが・・・)
 ザシキワラシの蘊蓄は京極夏彦の”姑獲鳥(うぶめ)の夏”をどうぞ

〔オシラサマ〕
 昔、ある農家に美しい娘がいた。娘は飼い馬と仲が良くとうとう夫婦になってしまった。父親は怒ってその馬を殺して桑の木に吊り下げた。娘は馬の死を知って驚き、その首にすがりついて泣いた。父親はさらに怒って斧でその馬の首をはねたところ、娘は馬の首に乗ったまま天に昇って行った。オシラサマはこの時神様になったという(No.69)

 下の写真は遠野市”伝承園”にある御蚕神堂(おしらどう)に安置されていたオシラサマ。実はオシラサマって知らなかったんですが、オシラサマは蚕、農業、馬の神さまだそうで、願いをこめた布をオシラサマに着せるという信仰だそうです。

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 まあ、1日かけて遠野あたりをぶらぶらしてたんですが、ふと考えると”遠野”って
日本の原風景
っていうか、田舎なんだな~。住んでいる人には申し訳ない言い方ですが、遠野市社会科副読本ってhpを読んでみると、人口減少に高齢化の進行、農業分野での労働力・後継者不足の深刻化、積極的に工業誘致をしているものの、従業員1人当たりの出荷額は岩手県平均をかなり下回っている状況。つまり、日本の抱えている地方の課題が典型的に表れている町なんじゃないかと。昔の民家を見て回っても歴史的建造物といいうより”昔はどこにでもあった建物をちゃんと保存するって感じだし。
 にもかかわらず”遠野に行ってみよう!”って思ったのって”遠野物語”っていうコンテンツがあったから。そうやって考えると”遠野”って聖地巡礼=コンテンツーリズムのはしりだっかもしれませんねぇ。
 ”民俗学の記念碑的作品をアニメやラノベと一緒にするな!”とか”水木しげる先生のイラストを萌え絵扱いするのか!”とかお怒りの方もいるかもしれませんが、”物語”の世界をリアルに感じたいってニーズはコンテンツーリズムと共通する感覚じゃないかな? 柳田國男が”遠野における民話伝承の研究”ではなくて”遠野物語”、つまり物語という名前にしてそれを一般の人にも分かりやすく紹介、今風に言えば”消費されるコンテンツ”にしたのって、ある意味先見性だったのかな~って気もします。

 ”遠野物語”の原典っては文学の香りのする名文ですが、若い人にはちょととっつきにくいかも。そんな人はぜひ京極夏彦版をどうぞ。昔の日本人がなじんでいた民話・伝承の世界を感じるには良い本だと思います。で、ぜひ遠野を訪れてみてください

《脚注》
(*1)話は前後しますが、”遠野物語”を読みました
 なぜ、前後するかというと”遠野物語”を読みながらふと”知的生産の技術”(梅棹忠夫、岩波新書)なんぞを先に読んじゃったわけで。こういうランダムウォークというか千鳥足というかの本の読み方ってやっちゃうんだよな~~
 そのへんの事情はこちらをどうぞ。
(*2)妖怪研究家”京極夏彦”
 百鬼夜行シリーズで妖怪をベースにした推理小説を書いている京極夏彦ですが、世界妖怪会議評議員という肩書もあるんだとか。まあ、あんだけいろいろ語れればなるわな~
 百鬼夜行シリーズは異色の推理小説ですが面白いんだこれが。お勧めですが文庫1冊1000ページ近いんで、読むには根性がいります、はい。
(*3)No.58
 ”遠野物語”にはひとつの題目につき通し番号がふられています。特にカテゴライズ順に並んでるわけではないのでこういったブログを書くにはとっても便利。”遠野物語remix”にも付けて欲しかったですねぇ。
(*4)河童の三平 妖怪大作戦
 1968~69年にNET系(現テレビ朝日系)で放送された特撮。原作は水木しげるの”河童の三平”。連載したの少年サンデーだったかな。
 主人公の三平を演じたのが”仮面の忍者 赤影”の青影さんこと”金子吉延”。ほかにも白影さんこと”牧冬吉”や、”悪魔くん”のメフィスト、後に”仮面ライダー”で地獄大使を演じる 怪優”潮健児”なんかが登場。今考えるとすごいキャスティングだな~

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