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2014年7月27日 - 2014年8月2日

”隠逸の志”いいな~ とっとと年金もらって晴耕雨読の毎日を送りたいものです(光圀伝/水戸黄門像)

 ども、会社では人畜無害なおっさんキャラで通っている(はず)のおぢさん、たいちろ~です。
 人は多かれ少なかれ後天的なキャラのイメージってのに左右されます。ヴェートーヴェンってななんだか難しそうな人っぽいし、芥川龍之介は苦虫かみつぶしたようなおっさんだし、三島由紀夫は筋肉ムキムキで”愛国ニッポン”ってな存在だし。まあ、教科書だのニュースで紹介される映像によるところが大きいんでしょうが、テレビドラマによるものもあるでしょう。その典型が”水戸黄門”こと第2代水戸藩主”徳川光圀”。白髪に白髭、杖をつきつき全国を漫遊する好々爺ってイメージです。まあ、誰が演じたかというより(*1)、誰が演じても同じフォーマット。ですが別に黄門様だって木の股から生まれたわけじゃなく若い時もあるわけです。
 ということで今回ご紹介するのは、そんなイメージをま~~ったく無視した黄門様の物語”光圀伝”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。上はJR水戸駅前の黄門様ご一行の像、下は偕楽園千波湖の黄門様像です。

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【本】光圀伝(冲方丁、角川書店)
 ”なんで、おれなんだ?” 優秀な兄を差し置いて世子(跡継ぎ)となった水戸藩初代藩主”徳川頼房”の三男”徳川光圀”。そんな懊悩をかかえつつ学問、詩歌の才能を開花させる光圀はやがて二代目藩主となり”大日本史”の編纂に乗り出す・・・
 ”マルドゥック・シリーズ(*2)”の冲方丁による徳川光圀の生涯を描いた歴史小説。
【人物】水戸黄門像
 NAVERまとめによると水戸市内に水戸黄門像は8体あるんだそうです。
  ”黄門”というのは中納言の唐名で、徳川光圀が権中納言となったのは63歳の時ですから黄門様の像がぢぢいなのは正解。でもなぜだかみんなテレビ版のイメージなんだよな~


 全部で700ページを超える本なので、まあ、気にいった人物から。

〔読耕斉〕
 若こぼき日の光圀が論破合戦を挑んでボコボコにされながら、酔っぱらって反吐を吐きかけられイーブンになったという友人(どんな友人や?!) その正体は林羅山(*3)の子息にして英才。
 本書では「音の響きが”独行”、”独耕”に通じ、隠者然とした潔白さと若者らしい意気盛んな有様が、ともに字面から感じ取られる」と評してますが、むしろ”晴耕雨読”じゃないかなぁ
 名前がそれっぽいせもあってか志望が”隠者”。読耕斉と光圀の会話

  読耕斉:もしおれが二人のように西山にいけたなら(*4)、
      それこそ荘子のように志のままに遊んで暮らしただろう
      これぞ、隠逸の志だ
  光圀 :隠逸を志と呼ぶか
       (中略)
  読耕斉:それがおれの志だ。
      兼好法師のように庵に隠れ、
      あるいは一休禅師のように碧空夜天を屋根として暮らし
      世を離れて真実の聖賢の道を求められたなら、
      どれほどこの心も清々とすることだろう

 いいな~、こういうの。私もとっとと年金もらって晴耕雨読の毎日を送りたいものです。 もっとも、こういうのは自他共に認める才能の持ち主がいうからかっこいいんであって、凡人が言えば単なる引きこもり希望なんでしょうが・・・

〔左近〕
 光圀の嫁”泰姫”の侍女として水戸家に入った女性。笑顔を見せたことがないという怜悧な美貌の少女で、博識と冷静な判断力、観察力を兼ね備えたクール&ビューティ。精神的な意味で光圀がもっとも信頼をよせる人の一人。後の”左近の局”。数多の交際希望の男たちをよせつけず、生涯独身を貫き、光圀の最期をみとるという役どころ。好きですね~ こういう女性って!
 ”光圀伝”は主に光圀の視点で書かれていますが、左近の視点で光圀を描いても面白いかも

〔藤井紋太夫〕
 光圀に仕える小姓。少年時代より優秀で、のちに三代目藩主の”綱條”の大老となり最後には光圀に刺殺される人。テレビや講談では悪役らしいですが本書ではそんなに悪い人にはおもえんな~ まあ、光圀が晩年に強烈なしっぺ返しを食らったのは確かですが。
 ネタバレになりますが、そもそも”光圀”の大義を10倍返しにしたような”大政奉還”を企図した人ですが、水戸学ってのはそういう側面を内包しているようで、明治維新の原動力となったのも水戸学。
 ”風雲児たち”(みなもと太郎 SPコミックス)”の中で、東照宮の建立を持って自らを神格化し体制の安定を図る徳川家康に対し、尊皇攘夷にかぶれる光圀をアホの子扱いするってのがありますが、視点を変えるといろんな見方ができるもんですなぁ

〔水戸光圀〕
 気にいった人というより、まあ主人公ですので。
 なんつっても、固いんだこの人。ありあまる文才と知性がありながら大義がどうの藩の事業がどうのと。まあ為政の最高責任者なので当たり前っちゃ当たり前ですが、もうちょっと肩の力を抜いて生きたってようさそうなもん。だからこそ読耕斉に憧れる面もあるのかも。
 そんな光圀ですがおちゃめな言葉。庶民から称賛されてるのを知っての一言

  あれは、余ではない。彼らの心に生まれた、別人だ

 後の世で、全国漫遊世直し旅(*5)をやってる自分の姿を見せられたら同じこと言いそうだよな~~

 ”光圀伝”は、テレビの水戸黄門とはまったく違う”水戸光圀”の話。ってか年表を見る限りこっちのほうが史実に近いようです。史書ってか伝記モノとしてはけっこう面白かったです。でも、冲方丁ってこっち方向の作家になっちゃうんかなぁ。SF作家としても稀有な人なんだけど。

《脚注》
(*1)誰が演じたかというより
 まあ、足掛け42年続いたナショナル劇場が定番でしょうが、おぢさん世代だと初代の”東野英治郎”でしょうか。西村晃はなんとなく悪役のイメージ強いし、石坂浩二は男前すぎるし、里見浩太朗は助さんっぽいしなぁ。
(*2)マルドゥック・シリーズ
 賭博師シェルにより少女娼婦バロットは瀕死の重傷を負う。彼女は捜査協力と引き換えに禁断の科学技術により優れた身体能力と電子機器を触れずに操作する能力、そして万能兵器のネズミ”ウフコック”を得る。(マルドゥック・スクランブル 圧縮)
 ”光圀伝”や”天地明察(角川文庫)”から冲方丁を読みだした人にはついていけんノリだろうな~~
(*3)林羅山
、江戸時代初期の朱子学派儒学者。徳川家康のブレーンの一人として徳川幕府の制度(士農工商の身分制度)の正当化などを行った人らしいです。
 wikipediaには”徳川時代の最初のエンサイクロペディスト”って記載がありますが、だったら水戸藩は”ファウンデーション”でしょうか?
(*4)二人のように西山にいけたなら
 二人とは孤竹国の王子王位を兄弟で譲り合い隠者となった伯夷(はくい)と叔斉(しゅくせい)のこと。本書では光圀の後継者問題での手本となっている故事です。
(*5)全国漫遊世直し旅
 実際の光圀は日光、鎌倉とか遠くてもせいぜい熱海ぐらいまでしか訪れたことがないんだそうです(wikipediaより)。実際に全国を飛び回ってたのは水戸黄門で助さんのモデルとなった佐々介三郎(宗淳)達。まあ、部下にはいろいろやらせてみとくもんですね。

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