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若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(日本人がコンピュータを作った!/FACOM138A)

 ども、コンピューター産業史ってけっこう気に入っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日”℃りけい(*1)”という本のブログを書いた時に”TK-80(*2)”なんぞをどうしたこうしたって話をネタにしたんですが、このあたりの本を読みたいな~と思って探したら”日本人がコンピュータを作った!”ってのがありました。で、読んでみるとこれがけっこう面白ンですな。古色蒼然な話のはずなんですが、なかなかどうして今読んでも感慨深いというか。
 ということで、今回ご紹介するのはコンピューターの黎明期を支えた人達のお話”日本人がコンピュータを作った!”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
富士通のリレー式コンピューター”FACOM138A”です。

Facom138a4010111


【本】日本人がコンピュータを作った!(遠藤諭、アスキー新書)
 ビジコンの島正利、NECの渡邊和也、富士通の山本卓眞、通産官僚の平松守彦など、日本のコンピュータ業界の黎明期を支えた10名をまとめたインタビュー集。
 ”電算機屋かく戦えり”の改訂版
【道具】リレー式コンピューターFACOM138A
 ”国産コンピュータを世界にアピールした池田敏雄”に登場するリレー式コンピューター”FACOM100”の後継機種。1960年代のコンピュータでありながら、驚いたことに今でもちゃんと動きます


 本書から気にいった言葉をいくつか

〔渡邊和也〕NECのTK-80やPC-8001のチームリーダー

  

会社の上層部に『コンピュータを遊びに使うなんて不謹慎だ』と言われた時代でした

 コンピュータに使われる半導体というのは作るとなると何千個もできちゃうものなんですが、そんなに作って何に使うんだ?ということになったんだとか。今なら半導体なんてじゃぶじゃぶに使うモンですが、当時の発想はそんなモンです。
 で渡邊和也がアメリカに行くことになって色々調べると出てきたのが、アメリカでは”コンピュータなんかオモチャに使う時代だよ”という言葉
 そりゃまあ、大型コンピュータがメインストリームの時代、よもや7年後に任天堂がファミリーコンピュータで一大ゲーム機市場を作るなんて考えてもいなかったんでしょうなぁ・・・

〔後藤英一〕パラメトロンによるコンピュータを作った東京大学の先生

  ずっと後になって、MITのマッカーシーと親しくなっったんだが、彼に言われたよ。
  『パラメトロンとは面白いことを考えたもんだが、
  なんでそんなに遅い素子を作ったんだい?』ってね。
  そんなこといわれたって、予算はMITの1000分の1ぐらいしかなかったんだから

  パラメトロンというのはフェライトコアという素子を使って作った論理素子のこと。動作は遅いものの消耗の激しい真空管や高価なトランジスタ(当時1ケ8000円もしたとか!)に比べ安定していて安価にできるからこれを使ったのが採用の理由。

  (日本人は)オリジナリティには乏しいけど、
  デベトップメントしてパーッと売るのは得意だろ。
  いいものを安く売るていうのは大切だしさ、このメリットをわざわざ改める必要はないね

 この人のユニークなのは課題設定が極めて現実的なところでしょうか。パラメトロンうんぬんは、スピードを犠牲にしてでも低予算でまず動くものを作るとか、オリジナリティうんぬんにしても、マーケットを拡大するのにこだわる点はどこかとか。テクノロジーの話をすると最先端技術がど~とか独自性による差別化とかすぐ言い出しかねないんですが、こういった現実的な課題設定もけっこう有効なんでしょうね。


〔和田弘〕通産省電気研究所で日本で初めてトランジスタコンピュータを作った人

  日本再建のためのキーは二つある、と思っていました
  原子力とエレクトロニクスです

 今では福島原発事故に代表されるように原発はほとんど悪役扱いですが、1950年代の前半で先見性のある人の認識ってこうだったようです。代表的なのが手塚治虫の”鉄腕アトム(*3)”なんてったって電子頭脳を持ち原子力で動くロボットが活躍する未来ですから。主人公が”アトム(原子)”、お兄さんが”コバルト”に妹が”ウラン”。今だったらちょっとNGなネーミングだろうなぁ

〔池田敏雄〕富士通のコンピュータの基礎を築いた開発者(死後に専務)

  池田さんは来る日も来る日も遅刻ですから、
  ある時月給ゼロ、ボーナスゼロという状況になってしまった。
  いかに天才といえどもこれでは生活できないわけです
(富士通会長 山本卓眞)

 池田敏雄は富士通の初期のコンピュータ”FACOM100”などを開発した人。この人に関する本をいくつか読んだんですが、ものすごい天才なんですが反面勤怠は無茶苦茶。こんだけ才能がある人だから上司もかばってくれますが、凡人がマネをしたら絶対懲戒免職になります、はい。

〔平松守彦〕IBMの日本進出時の交渉やコンピュータ産業のスキームを作った通産省の官僚

  コンピュータは”思想”なんです
  私は、コンピュータを知ったとき、これはただの機械ではない、
  人間の頭を情報化社会型にしていく思想なんだと思いました

   (中略)
  パソコンネットワークなどはまさにそのとおりで、
  これによって新しい文化ができるだろうと、予測しました

 ここで”あれ?”って思った人はカンの鋭い人でしょうか。実はこの本の原典”電算機屋かく戦えり”が出版されたのは1996年とインターネットが社会に普及し始めたころのこと。これに続く発言なんてまさに象徴的でしょうか

  日本でもいまのような文字だけのパソコンネットワークだけでなく
  音声や映像も含めたマルチメディアのコンピュータネットワークというのが
  必ず出てくると思うんです

 本書の意味って、過去の時点で夢見た未来を現在から振り返ってみるってとこでしょうか。時代背景を知らない若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(おぢさんのノスタルジーと言われればそれまでですが・・・)
 若い人にも読んで欲しい一冊です。

《脚注》
(*1)℃りけい(わだぺん。、青木 潤太朗 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
 ゴーグルに耳にスパナな物理部部長の伊藤トノエ、飛行機オタクの曾野彩、全国模試トップレベルだけど変なシャツがお好みの菊池蘭、パソコン大好きな堀聖など理系の”サイエンスクラブ(通称 サイクラ)”に集う高校生たちの日常を描く漫画。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)TK-80
 NECが1976年に発売したワンボードマイコンキット。TKはトレーニングキット(教育機材)の略です。当初は200台も売れればと思ってたのが2年間で2万5千台も売れたんだとか。
(*3)鉄腕アトム(手塚治虫、講談社)
 手塚治虫の代表作にして日本のロボット技術に多大な影響を与えた作品。雑誌”少年”への連載開始が1952年、フジテレビで日本で初の国産テレビアニメとして放映されたのが1963年。


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