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2014年10月

ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 いや、アフラックのコマーシャルじゃなくて(ブラック・スワン/江の島 龍恋の鐘)

 ども、学生時代に偏差値でいぢめられてたおぢさん、たいちろ~です。
 先日”ジェフ・ベゾス 果てなき野望(*1)”という本を読んだんですが、この中でアマゾンが社内の人にお勧めの本ってのに”ブラック・スワン”ってのが出てました。いや、ナタリー・ポートマン主演の映画じゃなくて(*2)。
 ”ブラック・スワン”の語源は、昔の人は”白鳥は白い”ってのが常識でだれも疑わなかったにも関わらずオーストラリアで”黒い白鳥”が発見されちゃって、何千年も確認してたことがたった一つの事例でひっくり返されてしまう、つまりどんなに起こり得ないと思っていることもひょっとしたら起っちゃうかもしれないことの比喩
 で、読んでみたんですが、これがけっこう面白いんですな、しかもいかもジェフ・ベゾスの好みっぽい。ということで、今回ご紹介するのはコンジョ曲がりの研究者にしてトレーダーのナシーム・ニコラス・タレブの”ブラック・スワン”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
江の島 恋人の丘にある”龍恋の鐘”です

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【本】ブラック・スワン(ナシーム・ニコラス・タレブ、ダイヤモンド)
 サブタイトルは”不確実性とリスクの本質”とあるように、”ベル型カーブ”に代表されるリスク管理の考え方をボコボコに批判した本。
 この本をリアルに主張したら変人扱いされること間違いなしですが、でも、説得力あるんだよな~、この本
【道具】江の島 龍恋の鐘
 江の島にら伝わる”天女と五頭龍”伝説に因んでつくられた”龍恋の鐘”。この鐘を鳴らした二人は決して別れないといわれてるそうです。恋人達のおまじないなら笑って済ませられますが、マジに言ってるんなら元になる統計データをぜひ見せていただきたいものです
 ところで、女子力ってもし数値化できたとしたらその分布はこんなベル型カーブを描くんでしょうか・・・(リスキーなネタフリだなぁ)


 ブラック・スワンとリスクといえば、まず思い出されるのがアフラックのCM。ブラック・スワンと本田翼のかけあいのやつです(*3)。なんで人が保険に入るかというと”大きな病気や交通事故なんかに合うはずないけど、いざそうなっちゃたら困るな~~ せめてお金だけでもなんとかするか!”というノリから(これを”リスク転嫁”と言います)
 つまり、ほとんどあり得ないけど万が一にどう対応するかというリスクマネジメントなんですが、本書をベースにこのCM作ったんならこれは正しい選択ではないかと。

 人が将来に対して何かを決定しないといけない時によく使うのに”正規分布”ってのがあります。一番良くわかる例が入試の時の偏差値ってヤツ。テストの結果を横軸に点数を縦軸にその点を取った人の人数をプロットすると多くの場合正規分布(ガウス分布)、つまりベル型カーブを描く(*4)というのを前提に標準偏差を計算して”お前の偏差値ではこの大学は難しい”とか言われるの。覚えてますか?
 実際このようなカーブを描くものも多いですが、そうはならないケースもかなりある。タレブは前者を”月並みの国”、後者を”果ての国”のデキゴトに分類しています。で、ジェフ・ベゾスの率いるアマゾンに代表されるインターネットは果ての国になります。
 本書に掲載されている分類をピックアップすると

  月並みの国                      果ての国
・弱いランダム性                   強いランダム性
・ベル型カーブやその変形に分布       マンデルブロ的か補足不能に分布
・勝ち馬はパイ全体の一部を受け取る    勝者総取りの法則
・(一般的には)物理的な量に対応。      数値に対応する
 身長など                         財産額など
・自然に起こるのは平等              極端な勝者の総取りの不平等
・合計は一つの事例やデータで決まらない 合計は一握りの極端な事例で決まる
・しばらく観察すればどうなっているか     どうなっているか見極めるには長い時間が
  見極めがつく(予測や推測が容易)     かかる(過去の情報かの予測は困難)
・集団の支配                     まぐれの支配
・歴史は流れる                    歴史はジャンプする

 ってとこです
ダレブに言わせると、ベル型カーブなんて”壮大な知的サギ”(GIF Great Intellectual Fraud)ともうボロクソ。逆に”果ての国”はもうジェフ・ベゾスが好きそうなキーワードがてんこ盛り。”勝者総取りの法則(*5)”やら”勝者の不平等”やら”歴史はジャンプする”やら

 なぜ、ベル型カーブでものを考えるといかんかというのを本書からピックアップするとこんな感じ

〔講釈の誤り〕
 はっきりしたパターンを欲しがる自分のプラトン性を満足させる講釈で自分を誤魔化す

〔追認の誤り〕
 見えてる一部だけを見て、見えてない部分を一般化する、”今まで起ったコトがないから大丈夫”ってやつです。まあ、”昨日まで病気しなかったから、今日も健康!”って思いたくなる気持もわからんでもないですが。

〔物言わぬ証拠の歪み〕
 まれな事象(おおむね悪いこと)の起るオッズ(確率)を見誤らせる
 LTCMの破綻の時に言ってたやつでしょうかね(*5)

〔お遊びの誤り〕
 カジノのゲームはルールもオッズも分かっている=消毒されて飼いならされた不確実性。現実社会ではそんなことはありえないのに、ついつい同じようなもんだとおもってしまう

 ほかにもいくつか出てきますが、ほとんどこんなノリです。言ってみればおおむね起る正規分布にたよって思考停止しがちだってことでしょうか。

 本書の冒頭でブラック・スワンの特徴として上げているのは”異常であること”、”とても大きな衝撃があること”、”異常であるにもかかわらず、それが起ってから適当な理屈をつけたり、予測可能だったことにしてしまう”の3点。これって、福島第一原発の事故にあてはまりませんか? だったらこの3つにできれば”対策の不備は起った後ならなんとでも突っ込める(*8)”ってのを付け加えたいですね。QCD(*8)を無視すりゃなんだってできますが、それにはコストの応分な負担が伴うもの。別に東京電力の肩を持つ訳じゃありませんが、もし東日本大震災地震が起こる前に膨大なコストをかけて防波堤を作るからその分電気料金をUPしますって言われたら”起るかどうかの地震になんでそんなコストをかけるんだ!”って言ってませんか? きっと・・・

 本書はビジネス書としてはぶっちゃけ話満載でけっこう面白かったです。ただし本書の内容を他人に得意げに話すかどうかは、本人のリスクマネジメントの問題ということで


《脚注》
(*1)ジェフ・ベゾス 果てなき野望(ブラッド・ストーン、日経BP社)
  サブタイトルは”アマゾンを創った無敵の奇才経営者”とあるように、アマゾンの創業者である”ジェフ・ベゾス”の人生とアマゾンの成長を扱った本。面白かったです。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)いや、ナタリー・ポートマン主演の映画じゃなくて
 ナタリー・ポートマン主演の映画は2010年に公開された”ブラック・スワン”のこと。ナタリー・ポートマンって”レオン”(監督 リュック・ベッソン、主演 ジャン・レノ)以来のファンなんだけど、これまだ見てないな~
(*3)ブラック・スワンと本田翼のかけあいのやつです
 ”保険なんて必要ない!”って言ってるブラック・スワンですが、いざ病気になると本人はちゃんと保険に入ってたりして。しかも本田翼が看病してくれたりとか、合コンで知り合った美人のおねいさんがお見舞いにきてくれたりとなかなかアナドレナイ奴です。



(*4)多くの場合正規分布、つまりベル型カーブを描く
 最近は必ずしもそうじゃなくてテストでもピークが二つ出てくるフタコブラクダ型、つまり出来る子の集団とそうでない子の集団に分かれる場合もあるんだとか。
(*5)勝者総取りの法則
 インターネットは”マタイ効果”つまり”勝者の所に富は集まる”が効きやすいマーケット。アマゾンや楽天、Yhhoo!にGoogleなんか見てると良くわかります。
(*6)LTCMの破綻の時に言ってたやつでしょうかね
 LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)はノーベル経済学賞を受けた学者も参加し”ドリームチームの運用”といわれた伝説のファンド。1998年にアメリカ金融業界を大混乱に巻き込みつつ実質破綻。破綻のトリガーとなったロシアの債務不履行が起こる確率は100万年に3回だと計算してたそうです(wikipediaより)
 ちなみに、タレブはノーベル経済学賞が大嫌いなようです
(*7)対策の不備は起った後ならなんとでも突っ込める
  しかし、それ以上の高さの津波に対する備えは、まったく施されていなかった
   (中略)
  それこそ、自然災害に対する東電の油断と奢り、
  さらに言えば慢心が存在したのではないか、と思われる

  (”死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日”より 門田隆将、PHP)

 もしあなたがこの意見に”そうだ、そうだ”と言うんなら、東京で東南海地震が起こって”今後30年以内に60%の確率で起きるって言われてたのに、なぜお前は東京から逃げ出さなかったんだ!”と文句を言われても怒らないコンジョがある人のはずです
(*8)QCD
 生産技術における品質 (Q Quality)、コスト (C Cost)、納期 (D Delivery)のこと。つまり品質の良いものを安く納期通り(往々にして早く)作れっていうことです。ここで難しいのはコストをかければ品質向上や納期短縮ができるとは限りませんが、コストをかけずに高品質や短納期を実現するのはよっぽどのブレ-クスルーでもなきゃ難しいです。”だからブレークスルーしろ!”ってのはもっと難しいんですが・・・


若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(日本人がコンピュータを作った!/FACOM138A)

 ども、コンピューター産業史ってけっこう気に入っているおぢさん、たいちろ~です。
 先日”℃りけい(*1)”という本のブログを書いた時に”TK-80(*2)”なんぞをどうしたこうしたって話をネタにしたんですが、このあたりの本を読みたいな~と思って探したら”日本人がコンピュータを作った!”ってのがありました。で、読んでみるとこれがけっこう面白ンですな。古色蒼然な話のはずなんですが、なかなかどうして今読んでも感慨深いというか。
 ということで、今回ご紹介するのはコンピューターの黎明期を支えた人達のお話”日本人がコンピュータを作った!”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
富士通のリレー式コンピューター”FACOM138A”です。

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【本】日本人がコンピュータを作った!(遠藤諭、アスキー新書)
 ビジコンの島正利、NECの渡邊和也、富士通の山本卓眞、通産官僚の平松守彦など、日本のコンピュータ業界の黎明期を支えた10名をまとめたインタビュー集。
 ”電算機屋かく戦えり”の改訂版
【道具】リレー式コンピューターFACOM138A
 ”国産コンピュータを世界にアピールした池田敏雄”に登場するリレー式コンピューター”FACOM100”の後継機種。1960年代のコンピュータでありながら、驚いたことに今でもちゃんと動きます


 本書から気にいった言葉をいくつか

〔渡邊和也〕NECのTK-80やPC-8001のチームリーダー

  

会社の上層部に『コンピュータを遊びに使うなんて不謹慎だ』と言われた時代でした

 コンピュータに使われる半導体というのは作るとなると何千個もできちゃうものなんですが、そんなに作って何に使うんだ?ということになったんだとか。今なら半導体なんてじゃぶじゃぶに使うモンですが、当時の発想はそんなモンです。
 で渡邊和也がアメリカに行くことになって色々調べると出てきたのが、アメリカでは”コンピュータなんかオモチャに使う時代だよ”という言葉
 そりゃまあ、大型コンピュータがメインストリームの時代、よもや7年後に任天堂がファミリーコンピュータで一大ゲーム機市場を作るなんて考えてもいなかったんでしょうなぁ・・・

〔後藤英一〕パラメトロンによるコンピュータを作った東京大学の先生

  ずっと後になって、MITのマッカーシーと親しくなっったんだが、彼に言われたよ。
  『パラメトロンとは面白いことを考えたもんだが、
  なんでそんなに遅い素子を作ったんだい?』ってね。
  そんなこといわれたって、予算はMITの1000分の1ぐらいしかなかったんだから

  パラメトロンというのはフェライトコアという素子を使って作った論理素子のこと。動作は遅いものの消耗の激しい真空管や高価なトランジスタ(当時1ケ8000円もしたとか!)に比べ安定していて安価にできるからこれを使ったのが採用の理由。

  (日本人は)オリジナリティには乏しいけど、
  デベトップメントしてパーッと売るのは得意だろ。
  いいものを安く売るていうのは大切だしさ、このメリットをわざわざ改める必要はないね

 この人のユニークなのは課題設定が極めて現実的なところでしょうか。パラメトロンうんぬんは、スピードを犠牲にしてでも低予算でまず動くものを作るとか、オリジナリティうんぬんにしても、マーケットを拡大するのにこだわる点はどこかとか。テクノロジーの話をすると最先端技術がど~とか独自性による差別化とかすぐ言い出しかねないんですが、こういった現実的な課題設定もけっこう有効なんでしょうね。


〔和田弘〕通産省電気研究所で日本で初めてトランジスタコンピュータを作った人

  日本再建のためのキーは二つある、と思っていました
  原子力とエレクトロニクスです

 今では福島原発事故に代表されるように原発はほとんど悪役扱いですが、1950年代の前半で先見性のある人の認識ってこうだったようです。代表的なのが手塚治虫の”鉄腕アトム(*3)”なんてったって電子頭脳を持ち原子力で動くロボットが活躍する未来ですから。主人公が”アトム(原子)”、お兄さんが”コバルト”に妹が”ウラン”。今だったらちょっとNGなネーミングだろうなぁ

〔池田敏雄〕富士通のコンピュータの基礎を築いた開発者(死後に専務)

  池田さんは来る日も来る日も遅刻ですから、
  ある時月給ゼロ、ボーナスゼロという状況になってしまった。
  いかに天才といえどもこれでは生活できないわけです
(富士通会長 山本卓眞)

 池田敏雄は富士通の初期のコンピュータ”FACOM100”などを開発した人。この人に関する本をいくつか読んだんですが、ものすごい天才なんですが反面勤怠は無茶苦茶。こんだけ才能がある人だから上司もかばってくれますが、凡人がマネをしたら絶対懲戒免職になります、はい。

〔平松守彦〕IBMの日本進出時の交渉やコンピュータ産業のスキームを作った通産省の官僚

  コンピュータは”思想”なんです
  私は、コンピュータを知ったとき、これはただの機械ではない、
  人間の頭を情報化社会型にしていく思想なんだと思いました

   (中略)
  パソコンネットワークなどはまさにそのとおりで、
  これによって新しい文化ができるだろうと、予測しました

 ここで”あれ?”って思った人はカンの鋭い人でしょうか。実はこの本の原典”電算機屋かく戦えり”が出版されたのは1996年とインターネットが社会に普及し始めたころのこと。これに続く発言なんてまさに象徴的でしょうか

  日本でもいまのような文字だけのパソコンネットワークだけでなく
  音声や映像も含めたマルチメディアのコンピュータネットワークというのが
  必ず出てくると思うんです

 本書の意味って、過去の時点で夢見た未来を現在から振り返ってみるってとこでしょうか。時代背景を知らない若い人からすれば違和感はあるでしょうが、新しい技術や文化の黎明期特有の高揚感みたいなの伝わってくる本です(おぢさんのノスタルジーと言われればそれまでですが・・・)
 若い人にも読んで欲しい一冊です。

《脚注》
(*1)℃りけい(わだぺん。、青木 潤太朗 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
 ゴーグルに耳にスパナな物理部部長の伊藤トノエ、飛行機オタクの曾野彩、全国模試トップレベルだけど変なシャツがお好みの菊池蘭、パソコン大好きな堀聖など理系の”サイエンスクラブ(通称 サイクラ)”に集う高校生たちの日常を描く漫画。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)TK-80
 NECが1976年に発売したワンボードマイコンキット。TKはトレーニングキット(教育機材)の略です。当初は200台も売れればと思ってたのが2年間で2万5千台も売れたんだとか。
(*3)鉄腕アトム(手塚治虫、講談社)
 手塚治虫の代表作にして日本のロボット技術に多大な影響を与えた作品。雑誌”少年”への連載開始が1952年、フジテレビで日本で初の国産テレビアニメとして放映されたのが1963年。


飯は世につれ、世は飯につれ、ってとこでしょうか?(料理漫画/石割桜)

 ども、単身赴任時代は自炊派だったおぢさん、たいちろ~です。
 今年の春から娘と同居になりましたが、あんまし娘が料理もせんもんで(両方とも社会人なので)、相変わらず料理はお父さんの自炊です。ということもありまして、料理に関する漫画はわりと良く読みます。最近ですと”ワカコ酒”、”野武士のグルメ”、”花のズボラ飯”、まかない君”などなど。で、こうやって並べて見ると料理漫画とはいえ、けっこう世相を反映してるんだな~と。
 ということで、今回のお題は”料理漫画に見る世相の移り変わり”なんぞをやってみようかと。


写真はたいちろ~さんの撮影。盛岡市の”石割桜”です(花が咲いてなくてすいません)

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【本】美味しんぼ(原作 雁屋哲、作画 花咲アキラ、小学館)
 東西新聞文化部の記者”山岡士郎”は”究極のメニュー”作りに取り組むことになった。これに対しライバル紙の帝都新聞が実の父”海原雄山”監修による”至高のメニュー”の企画を開始。かくして”究極vs至高”、父と子の対決が始まる。
 途中までは読みました
【本】クッキングパパ(うえやま とち、講談社)
 プロ並みの料理の腕を持つサラリーマン”荒岩一味”が家族や友人のために料理をふるうというご家族料理漫画。奥様の”荒岩虹子”はニチフク新聞文化部の記者を務めるバリバリのキャリアウーマン
 飛ばし飛ばし読んでます
【本】孤独のグルメ(原作 久住昌之、作画 谷口ジロー、扶桑社文庫)
 雑貨輸入商を営む”井之頭五郎”が近所や出張先で立ち寄った店で食事をする様を描いた漫画。2012年より松重豊というどこからどう見てもおっさんな俳優が主演でテレビドラマ化。
【本】野武士のグルメ(久住昌之、晋遊舎)
【本】漫画版 野武士のグルメ(原作 久住昌之、作画 土山しげる、幻冬舎)
 定年退職した昭和のおっさん”香住武”がご近所の食堂などで飯食ってモノローグする漫画。この漫画の最大の特徴はお料理漫画にも関わらず、食堂に思いっきしダメ出しすることかも。
(漫画版は読みましたが、原作は読んでません、すいません)
【本】花のズボラ飯(原作 久住昌之、作画 水沢悦子、秋田書店)
 夫が単身赴任のためやむなくひとり飯することになった本屋にパート勤務の”駒沢花”の手抜き的自炊生活を描いた漫画。
【本】まかない君(西川魯介、白泉社)
 お年頃の従姉”凜”、”佳乃”、”弥生”の3姉妹と同居することになった浩平君が、家の料理造りを任されるという漫画。 西川魯介は眼鏡フェチ、クトゥール神話パロディネタのマニアックな漫画家ですが、本書はなぜかまじめな料理漫画です
【本】ワカコ酒(新久千映、徳間書店)
 酒呑みの舌をもって生まれたがゆえに今宵も居場所を求めてさすらう”村上ワカコ 26歳”のひとり酒を描いた漫画。新刊が出るたび会社のおひとり様女子に貸しています。
【花】石割桜
 盛岡市にある巨大な花崗岩の割れ目から育った桜。
 ”野武士のグルメ”で釜石の小料理屋に入った香住武が突然振られた話題。
 本編には関係ありませんが、花がないとさびしいので入れて見ました、すいません

 これらの作品と当時の世相を年表っぽくまとめるとこんな感じです

  1983年   ”美味しんぼ”がビッグコミックスピリッツで連載開始
  1985年   ”クッキングパパ”がモーニングに初掲載
  1989年12月 東証大納会で日経平均株価が史上最高値の38,957円44銭を記録
  1994年   ”孤独のグルメ”が月刊PANJAに連載
  1997年11月 北海道拓殖銀行が営業継続を断念
  1997年11月 山一證券が自主廃業を選択
  1998年10月 日本長期信用銀行が破綻認定、国有化
  1998年12月 日本債券信用銀行が債務超過により、国有化
  2008年 1月 ”孤独のグルメ”読み切りとしてSPA!で連載復活
  2008年 9月 リーマン・ブラザーズが破綻(リーマン・ショック)
  2009年 1月 ”野武士のグルメ(原作)”が出版
  2009年 5月 ”花のズボラ飯”が”Eleganceイブ”で連載開始(6月号)
  2011年 3月 東日本大震災が発生、福島第一原子力発電所事故
  2012年 1月 ”孤独のグルメ”テレビ東京系でテレビドラマシリーズ化
  2012年 6月 ”まかない君”がヤングアニマルで連載開始
  2012年11月 衆議院議員総選挙で民主党が歴史的大敗、自由民主党が政権を獲得
  2013年 5月 ”ワカコ酒”の第一巻出版
  2013年11月 ”野武士のグルメ(漫画版)”が幻冬舎plusに連載
   (一部は掲載誌の号数から想定)

 こうやってみると、社会情勢とノリって連動してるもんだと思いますねぇ。”経済事情”と”家庭事情”から見るとこんな感じでしょうか?

〔経済事情〕
1)バブル期
 後先考えず、日本が一番リッチだったバブル期。このころ登場したのが、美味いモン食いたい嗜好の”美味しんぼ”高級素材をバンバン使って(会社の金だけど)美味い料理を食うってやっぱ、バブルだよな~
 ”クリスマス・イブに高級レストランの予約が取れない”なんてバブルならではの話かとありましたねぇ

2)バブル崩壊期
 1989年末に日経平均株価が史上最高値を付けたのをピークに坂道を転がるように不況に突っ込み、金融機関が混乱を極めた1990年代後半(*1)。この不況下に登場したのが”孤独のグルメ”。確かにバブルな話じゃないですね。さらに言うと、この作品が再度登場するのがリーマン・ショックのころになります

3)リーマン・ショック期
 アメリカの話だとたかをくくってるうちにあれよあれよと世界不況になったリーマン・ショック期。このころ出たのが”野武士のグルメ(原作)”と”花のズボラ飯”貧乏臭いスレスレ(ストライク?)なネタの漫画でしたな

4)東日本大震災以後
 今だリーマンショクの影響から抜けきれないまま、東日本大震災による混乱もあいまっって不況だった2011年以降。この頃といえば、難しそうな顔したおっさんが普通の食堂で飯食ってる”孤独のグルメ(TVドラマ版)”。まあ、景気のいい顔とは言えんもんなぁ、松重豊って。
 そんな中でも、自民党のなんとなく景気昂揚政策の効果が出てきたのか、女性一人でも呑みに行こうかって雰囲気になってきて登場するのがおひとり様呑みの”ワカコ酒”(*2)です。

 この20年を見ると、家庭事情も大きく変化してきてるんですね。こっちから各作品を見るとこんな感じです

〔家庭事情〕
1)共稼ぎ世帯の増加
 サラリーマン”荒岩一味”がなぜ料理を作るのか? 根が好きだってのもあるんでしょうが、荒岩さん家って共稼ぎ世帯なんですね。つまり、家事をそれぞれ負担するってのが違和感ない家なんでしょうね。
 1985年の連載開始当時に31歳、小学2年生の息子がいるので、結婚したのは1970年代の後半と思われますが、このころ(1980年)の共稼ぎ世帯は614万世帯。方や主人が働いて奥様は専業主婦というのが1,114万世帯でしたので共稼ぎ世帯は全体の36%とまだ少数派(*3)。
 それに”ニューファミリー(*4)”なんていう夫婦や親子が恋人的、友達的なもノリもありましたしね。

2)単身赴任の増加
 単身赴任家庭の推計(*5)だと1975年は22.6万人(単身赴任率 0.8%)、2000年までが60万人程度(1.9%)で踊り場になりますが、その後さらに増加し、2010年には72.6万人(2.3%)まで増加。経験上言わせてもらえば、単身赴任なんて家族との触れ合いは少ないわ、金はかかるわとほとんど良いことないですが、上記の共稼ぎの増加や子供の教育で動けない事情もままあります。
 そんな中に登場するのが単身赴任で残された奥様が主人公の”花のズボラ飯”。まあ、単身赴任経験者としては、誰に食べさせる訳でもないご飯に気合入れて作ったりしないわな~と納得しちゃう作品です。

3)平成版”メッシー君”?
 バブル絶世期には女性に食事を奢るだけの彼氏”メッシー君”、車で女性を送り迎えするだけの”アッシー君”、女性にプレゼンをするだけの”ミツグ君”なんてのがありました(今でもあるのかなぁ)。で、バブル弾けて20年、家メシ世代の”メッシー君”が”まかない君”でしょうか? なんせ、女性が3人もいるにも関わらず”凜”、”佳乃”はまったく料理をしないし、”弥生”は”呪われたエプロン”と言われるほどの料理ベタですし。まあ、本人は嬉々としてやってるからいいけど。
 世代的にはクッキングパパの”荒岩一味”の息子世代でしょうか? まあ、親父の背中を見てりゃこうなるのもわかる気がしますが。そういえば、一時期自分で弁当を作ってくる”お弁当男子”なんてのもありましたね~~

4)女性の社会進出
 雇用機会均等法が施行されたのは今や昔の1986年。今や国策としての女性の社会進出ですが、ありそうでなかったのが女性のひとり呑みのネタ。一昔前なら美空ひばりか小林幸子の世界です(*6)
 女子会ブームを経ていよいよ登場したのが、女性が居酒屋でおっさんに混じってひとり呑みするという”ワカコ酒”。テレビドラマ化するそうですが、社会的な認知がそこまで進んだってことでしょうね

 けっこう長くなりましたが、まさに”飯は世につれ、世は飯につれ”。面白いな~と思っちゃいました。


《脚注》
(*1)1989年末に日経平均株価が史上最高値を付けたのを
 ”パチン”と弾けたような印象のあるバブルですが日経平均株価の年間平均が現在の
15,300円(2014年10月10日終値)を割り込んだのは1997年
のこと。株価が持ち直したとはいえ、今でも混乱期なみなんですね~~
(*2)おひとり様呑みの”ワカコ酒”
 実はワカコさんって、ちゃんと彼氏がいます。にも関わらず彼氏にたかろうとしないのは、女性の自立がそこまで進んだってことでしょうか?
(*3)共稼ぎ世帯は全体の36%とまだ少数派
 世帯数で逆転するのは1991年で、現在(2013年)は共稼ぎが1,065万世帯、専業主婦世帯が745万世帯、構成比59%とほとんど逆転しています(内閣府男女共同参画局hより)
(*4)ニューファミリー
 第二次大戦後生まれの若い夫婦と子供から成る家庭をいう語。従来の価値観から大きく変化した消費動向をもつとされる。(Web版大辞林より)
 だいたい団塊の世代(1947年~49年生まれ)あたりだそうです。
(*5)単身赴任家庭の推計
 調べてみて以外だったのは、直接単身赴任を調べた統計はないんだそうです。国勢調査では”世帯主が有配偶男の単独世帯数”の扱いでこの数値を記載しました(働く人と企業の未来像hpより)
(*6)美空ひばりか小林幸子の世界です
 悲しい酒 :1966年に発売された美空ひばりのヒット曲
  ひとり酒場で飲む酒は 別れ涙の味がする♪
 おもいで酒:1979年に発売された小林幸子のヒット曲
  あの人どうしているかしら 噂を聞けばあいたくて おもいで酒に酔うばかり♪


知性をインプットしたのは、神か、遺伝子か、環境か、はたまたどこかのイカレたプログラマーか?(ゼノサイド/リンゴ)

 ども、な~んの知恵もないまま馬齢を重ねてるおぢさん、たいちろ~です。
  ”人間に知恵を与えた存在は何か?
 のっけから、哲学的というか宗教的というかの話題ですが、SFなんかでもよく出てくる話題です。最近では”猿の惑星:創世記(*1)”なんかもそうでしょうか。まだ見てないけど。まあ、人類に知性が発生したなら人類以外のモノにも発生してもおかしくないわけで、そうなってくるともうSFの独断場。
 ということで、今回ご紹介するのは最近ハマって読んでますオースン・スコット・カードの”エンダー・シリーズ(*2)”の第三作”ゼノサイド”であります。
(今回はかなりネタバレですのでご注意ください)


写真はたいちろ~さんの撮影。近所のリンゴ”姫国光”の花です。

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【本】ゼノサイド(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類以外の知的生命体”ペケニーノ”が発見された惑星”ルジタニア”。だかそこには人類に致命的な”デスコラーダ・ウィルス”のはびこる星でもあった。宇宙を統べる”スターウェイズ議会”は粛清艦隊の派遣を決定、ルジタニアに残ったエンダーは最悪の事態を避けるべく奔走する。一方、中国系植民星パスで神の声を聞く者”ハン・チンジャオ”はネットワークに発生した知性”ジェイン”の謎に迫りつつあった・・・
【花】リンゴ
 バラ科リンゴ属の落葉高木樹。日本では青森とか長野とか寒冷地で生産されてて、熱帯地方で熱帯での栽培は難しいとのこと。
 リンゴといえばアダムとイヴが食べた”善悪を知る果実(禁断の果実)”が有名ですが、これは後で創作された話だそうで、旧約聖書の舞台となったメソポタミア地方にはリンゴは分布してなくて、食用に適していなかったんだそうです。まあ、メソポタミアって暖ったかそうなイメージだもんね(wikipediaより)


 ”人類はどうして生まれたか?、どのように知的生命体になったか?”ってのは、いわゆる”創生神話”のたぐいです。代表的なのが”創生記”に出てくる”善悪の知識の木の実(禁断の果実)”。一般的にはリンゴですが、この話って素体であるアダムとイブに”リンゴ”という媒体を使って外挿的に知恵をもたらしたと言えるんじゃないかと(*3)。
 今回ご紹介の”ゼノサイド”ではいろんなパターンの知恵の挿入が見てとれます

〔ペケニーノ〕
 ルジタニアの原生生物”ペケニーノ”。エンダーの世界ではこの生物にキリスト教を布教するってかなりおちゃめなシチュエーションですが、キリストのアナロジーやら”ペケニーノに知性を与えたのはデスコラーダ・ウィルス”という仮説やらで、デスコラーダ・ウィルスが精霊の生まれ変わりだという信仰が発生しちゃいます。
 作中では”風変わりだが、筋は通っている”との評価。で、このウィルスが外の世界から送られてきたものらしいってことで、神様っぽいのも想定されてます。ますます宗教だよな~ オチはテラ・フォーミング(*4)っぽい話題になってますが。

〔バガー〕
 人類が最初に遭遇した”バガー”。この生物の最大の特徴は”窩巣女王”を中心とした社会を営む生物で、離れていても意思が通じ合うこと。集合体としてひとつの個性になってるんですが、どうもこれは”結びつける者”、”呼ばれる者”といったものがどっかから飛んできて憑依するメカニズムになっているようです。
 でなけりゃ、単体で生き残った”窩巣女王”がいきなりスターシップを建造するなんて離れ業できないよな~

〔ジェイン〕
 アンシブル・ネットワークというコンピューターの中に生まれた知性。元々はエンダーのやってたコンピューターゲームがキーらしいですが、誰かがプログラミングしたわけじゃなくて自然発生したというモノ。
 ジェインの正体を突き止めた”ハン・チンジャオ”がスターウェイズ議会に”アンシブル・ネットワークを止めろ”という報告を送ったことで、ジェインは危機にさらされるという”コンセント問題(*5)”みたいな展開ですが・・・
 理解しあえればいい友達になれそうなきがするんですがねぇ

〔ハン一族〕
 中国系植民星パスに住む神の声を聞く”ハン・フェイツー”と”ハン・チンジャオ”父娘。類まれなる知性の持ち主がなら、踊りを踊るだの床の木目を見続けるだの神経症的な儀式が必要な人達。その実態はスターウェイズ議会の遺伝子操作により生み出されたデザイン・チャイルド。”ハン・チンジャオ”は”生ける頑固”みたいな人ですが、最後は神様扱いされて幸せだったんでしょうか?

〔エンダーの子供たち〕
 ジェインによる”外の世界”へ行く実験中にエンダーの無意識が生み出した存在。オリジナルは3000年前の覇者となったエンダーの兄”ピーター・ウィッギン”と人類社会に多大な影響を与えた著述家の姉”ヴァレンタイン・ウィッギン”。創造主はエンダーのはずなんですが、どう考えてもエンダーの手にあまってるよな~~

 しかしまあ、よくもこんだけ大技のアイデアを詰め込んだなぁと感心する作品です。
 そん中で印象に残ったのが、エンダーの父親違いの息子で異類学者のミロが自由意思に関しての言葉

  なぜなら、聖職者は、神がわれわれの魂を創ったというからだ
  魂がそのなにかであるなら、人間もまた操り人形師に支配されていることになる
  神が人間の意思を創りだしたのであれば、われわれの選択は神の責任だ
  神、遺伝子、環境、
  はたまた古びた端末装置にコードを打ち込むどこかのイカレたプログラマー
  われわれ個人個人がなんらかの外的要因によって生じた結果であるならば
  自由意思など存在する余地はないのさ

 ま、何によって生まれた知性かによらず、やったことの責任は問われるわけですが・・

 ”エンダー・シリーズ”の本編は次作”エンダーの子どもたち”で完結。
 さて、図書館で借りてきましょうか(*6)


《脚注》
(*1)猿の惑星:創世記
 (出演者 ジェームズ・フランコ、監督 ルパート・ワイアット、20世紀フォックス)
 製薬会社ジェネシス社の研究者、ウィルが実験のためアルツハイマー病の新薬を投与した一匹のチンパンジーが驚くべき知能を示したが、突如暴れ出したため射殺。そのチンパンジーの赤ん坊“シーザー"もまた類まれな知性を発揮し始めていく・・
(*2)エンダー・シリーズ(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類はコミュニケーションの取れない未知の異星人”バガー”の侵略をからくも二度にわたり阻止した。る侵攻をかろうじて撃退した。その第三次攻撃に備るべく艦隊指揮官を養成するバトル・スクールを創設、天才少年”エンダー”を育成した・・・(エンダーのゲーム)
 ”エンダーのゲーム”に始まるカードの名作SF
(*3)素体であるアダムとイブに
 この話って、よくよく考えて見ると”食べてはいけない”重要な果実を目の前にぶら下げてるわ、エデンに蛇(サタン)の侵入を易々と許してるわと、神様ってけっこう脇の甘い管理をやってる気がせんでもないですが・・・
(*4)テラ・フォーミング
 人為的に惑星の環境を変化させること。元々はSFネタですが、カール・セーガンやNASAが真面目に研究してるというからまんざら絵空事ではない話。テラ・フォーミングで問題になるのは地球生物用に環境が激変するため、原生生物が絶滅する危機があるってこと。”宇宙戦艦ヤマト”でガミラス星人が遊星爆弾でやってたのも逆パターンのこれですが、やられた方はたまったもんじゃありません
(*5)コンセント問題
 SFに出てくるネタに”狂ったコンピューターをどうやって止めるか?”ってのがあります。一番シンプルな答えは”コンセントを抜け!”なんですが、こんだけ複雑になったネットワークをホントに止めれるかどうかはかなり疑問
 このへんの話を扱った名作としては”未来の二つの顔”(ジェイムズ・P・ホーガン)なんかがオススメです。
(*6)図書館で借りてきましょうか
 amazonで探しましたが、上下巻とも絶版。上巻にいたっては中古も出てこない始末。ちょっと絶版多すぎませんか、ハヤカワ文庫!

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