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私たちが宇宙にいるのは厳密にいって、圧倒的に優秀な文化との衝突のおかげなのです(死者の代弁者/豚)

 ども、80年代のSFもなかなかいいな~と思ってるおぢさん、たいちろ~です。
 今回のお題は先日読んだオースン・スコット・カードの”エンダーのゲーム(*1)”の続編、”死者の代弁者”です。高校時代の友人推しとあって読んでみたんですが、なんじゃこりゃ~と思うぐらい全然別物。主人公のエンダーやバガー戦争の後の歴史なんてのは地続きですが、前作は異星人との戦争という”スペースオペラ(*2)”の系譜とも言えるSF(サイエンス・フィクション)ですが、”死者の代弁者”は異星人との文化の違いとそれに起因する殺人事件というSF(スペキュレイティブ・フィクション(*3))とでも言いましょうか?
 悪い意味でないですが、SF慣れしてない人(慣れている人でも)わかりにくい小説。言葉がわかりにくいとか、数代にわたる物語とかいう点では、あえて言うならガルシア=マルケスの”百年の孤独(*4)”に近い読後感とでも言いましょうか。


写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園の子豚です

071316


【本】死者の代弁者(オースン・スコット・カード、早川文庫)
 昆虫型異星人の”バガー”との戦争から3000年後。人類はルジタニアにて第二の知的生命体”ピギー”と遭遇した。バガーを全滅させたという反省から慎重にコミュニケーションをとる人類。そんな中、ピギーを研究していた異類学者ピポがピギーに殺されるという事件が発生する。
 異類皆殺し(ゼノサイド)を遂行した”エンダー”は、”死者の代弁者”となりルジタニアに赴く・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞のダブルクラウンに輝く”エンダーのゲーム”の続編
【動物】
 哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科の動物で、イノシシを家畜化したもの。
 異星人”ピギー”は豚(Pig)に似ているからですが、おだてられなくても木に登るかとができるので、まったく同じではなさそうです


 ”死者の代弁者”で大きなキーワードになっているのは物語を語ること。広い意味でのコミュニケーションとでも言いましょうか。”バガー”と戦争が勃発した要因の一つに人類とバガーとの間にまったくコミュニケーションが成立しなかったこと。でも、なかなかこれが難しいんですな。特に異質な存在との間では。
 本書では異人性について4つの分類で語られています

〔ユートレニング〕
 私たちの世界ではあるが別な都市や国の人間として認識するよそ者。
 まあ、日本人から見て、文化や宗教が違っても良好かそこそこ落し所が見つけられる外国人(アメリカ人とかぎりぎり中国人あたり)ってなくくりでしょうか

〔フレムリング〕
 私たちが人間ではあるが別な世界なものとして認識するよそ者。
 言ってる意味は理解できるものの文化や宗教のバックボーンが違いすぎて、うまく落し所が見つかんない人達。北○鮮やイ○ラ○国ってこのくくり?

〔ラマン〕
 私たちが人間ではあるが別な種のとして認識するよそ者。
 ”人間”というものをどう定義するかにもよりますが、広義で”知性のあるもの”すればエンダーの世界ではピギー(ラマン説もあり)、通信ネットワーク上に誕生した人工知性”ジェイン”、バガーの生き残り”窩巣女王”あたり。
 現時点のリアルではジェインほど発達した人工知性はありませんが、ゲームキャラを”俺の嫁”と呼ぶ人もいるぐらいなので、ラマンの登場は近い?

〔ラマン〕
 どんな交流も可能でなく、行動の目的や理由の見当もつかず、知能があるのか自意識があるのかすら知ることができない真の異種族(エイリアン)。”エンダーのゲーム”の時代のバガーがこれ。

 上記の区分は相対的なものですんで、立場や状況が変わればどっちに転ぶかは変わりますがおおむね下に行けばいくほどコミュニケーションが成立しにくくなるもの。このあたりはSFではファーストコンタクトテーマ(*5)といわれるジャンルですが、そりゃ、人間同士だって今だにわかりあえるって状態にはほど遠いのに、文明・文化どころか生物としての成り立ちから違う異星人と会っていきなり分かりあえっても難しいでしょうね。だからお互いに警戒しちゃう。本書では人類とピギーの領域の間にフェンスを設けて接触を極力少なくし(全面的に禁止しないところが知的好奇心?)、科学技術を渡さないように制限しちゃいます。でも、これって恐怖の裏返しのようです

  すべて(科学技術や兵器)はバガーとわれわれとの接触の直接的な産物なのです
   (中略)
  私たちが宇宙にいるのは厳密にいって、圧倒的に優秀な文化との衝突のおかげなのです
  それなのにわずか二、三世代のうちに、わたしたちはバガーの機械をわが物として
  バガーを凌駕し滅ぼしました
  それこそ、わたしたちのフェンスが意味するものです
  ビギーが同じことをわたしたちにするのではないか、とわたしたちは恐れています
  しかも、ピギーたちはそれが意味しているところを知っている
  知っていて、憎んでいるのです

 引用が長くなりましたが、人類の影響と腐敗からピギーを庇護するフェンスためにフェンスがあるという意見に対するエンダーの言葉。コミュニケーションの意図的な断絶でもありますが、方や善意でやってることが方や悪意でとらえるなんてありうることですがね。これなんかまだ分かりやすい方で、本書の中でもピギーにとって最大の名誉が地球人にとっては殺人事件にしかならないなんてことが起こってます。

 で、この異質な存在同士をつなぐのが”死者の代弁者”ことエンダー(*6)の役割です。 この人は前作では”バガーに勝つための最終兵器”的存在でしたが、本書ではずいぶん変わったなぁ、おっさんになってるし。哲学的な会話も多いんでどちらかというと宗教家っぽい扱いになっていますが、本質的には名探偵って気もします。カオスのかけらから事実を再構成して語るとことか?! 死者を代弁するってのもそれを明らかにすることが生者の幸せにつながってるのかどうかちょっと疑問だし、いろいろ偉い人をまるめこんで反乱を起こさせてるってのも、見方によっては知能犯っぽいとこもあるしな~~

 ”死者の代弁者”は一般人というよりSFの玄人受けするような本でしょうか? 
 哲学的で高尚な会話って、どちらかというとハイレベルなSFに向かっていたディープなSFマニア向けなのかな~~

PS.
 ところでこの本、すでに絶版になっているようです。
 せっかく”エンダーのゲーム”も映画化されて新訳も出したんだから、ちょっとは商売ッ気だしてこれも復刻しろよ~~ 早川書房!


《脚注》
(*1)エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫)
 人類はコミュニケーションの取れない未知の異星人”バガー”の侵略をからくも二度にわたり阻止した。る侵攻をかろうじて撃退した。その第三次攻撃に備るべく艦隊指揮官を養成するバトル・スクールを創設、天才少年”エンダー”を育成した・・・
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞したSFの名作。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)スペースオペラ
 ヒーローやヒロインが宇宙をまたにかけて活躍するSFのジャンルのひとつ。ジョージ・ルーカスの”スター・ウォーズ”や松本零士の”宇宙海賊キャプテンハーロック”、寺沢武一の”コブラ”あたりが代表例かな。
 でも、最近この言葉も聞かなくなったなぁ。ジャンルとしてあまりにも定着しすぎて(てか、宇宙のでてくる映画ってほとんどこれ?)今さらってことでしょうか・・・
(*3)スペキュレイティブ・フィクション(Speculative Fiction)
 哲学な趣きを持ちこんだSF。思弁小説と訳されてます。
 SFが低俗な娯楽みたいに思われていた時代の”SFの文学的地位の向上”といったこともあったんでしょうかね。この言葉も最近聞かないなぁ
 ちなみにSFには”セーラー服”の略って説もありましたが・・・
(*4)百年の孤独(ガルシア=マルケス)
 ホセ・ブエンディアとウルスラ・イグアランから始まるブエンディア一族の歴史を描いたガルシア=マルケスによる魔術的リアリズムな長編小説。
 面白いちゃ面白い小説ですが、わかりにくいのも”死者の代弁者”と良く似ています。 詳しくはこちらをどうぞ
(*5)ファーストコンタクトテーマ
 異なる文明または種族が初めて出会った時に何が起こるかを扱ったSFのジャンル。まあ、SFに限ったことではありませんが。異星人とのこれをしくるとだいたい星間戦争になります。比較的うまくいってるのって”幼年期の終り”とか(アーサー・C・クラーク、早川文庫)数少ないし
(*6)”死者の代弁者”ことエンダー
 ”死者の代弁者”ではエンダーの名は”バガーたちの異類皆殺し”として悪名を轟かしていますが、なんだかな~ だいたい
 我々がしなければならなかったのは、戦うことじゃない。愛し合うことだった
なんていうセリフは、勝ったから言えるセリフで、”人類滅亡の日まであと365日”がまんまの状況だったらそんなこと言えないと思いますが・・・

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コメント

スタートレックの”ファーストコンタクト”、ゼフラム・コクレーンがワープ飛行テストに成功する2063年4月5日まで47年を切りました。
その前に第3次世界大戦があるという設定ですが、現実的に小さな紛争が連発しているのを見ると、なんだか少し可能性がありそうな・・・。
複数の宗教関係者が言うには、神は悪魔には絶対負けないけど、唯一神が負けたことがあるらしい。
それは”イスラエル”でのこと。かの地には神はいないそうで、そこから大戦がはじまるそうですよ。

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